説明

航空機にターボジェットエンジンを取り付けるためのサスペンション

【課題】フレームの局所的な歪みを低減することができる手段を用いて、パイロンにフロントファンターボジェットエンジンを取り付けるための平衡サスペンションを提案する。
【解決手段】サスペンションは、中間ケーシング上の前側取り付け具(10)と、排気ケーシング(8)の外側シェル(83)に接続された少なくとも2つの後側取り付けリンク(114、115)を有する後側取り付け具(11)と、それらの上流端部において中間ケーシング(3)のハブ(35)に固定された一対のスラストバー(12、12’)とを備える。後側取り付け具(11)の2つのリンク(114、115)によって形成される面は、排気ケーシング(8)の面に対して傾斜していることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボジェットエンジンの分野に関し、特に、フロントファンを有するターボジェットエンジン、及びそれらの航空機への取り付けに関する。
【背景技術】
【0002】
フロントファンターボジェットエンジンは、空気吸入ダクトが取り付けられたケーシング内に収容された大径のファンロータを備える。ケーシングは、下流において、小径を有する一次流れケーシングによって延在しており、コンプレッサ、燃焼チャンバ、タービン、及び、排気用の様々なケーシングから構成されている。空気吸入ダクトを介して流入する空気は、ファンロータを通して圧縮された後、2つの同心円筒状流れに分割される。知られているタイプのエンジンにおいて、流入空気は、一次流れと二次流れとに分割される。後者は、エンジン周囲を通過し、低温状態で、分離流として排出されるか、タービン段の下流の一次流れと混合された後に排出される。一次流れは、燃焼チャンバ内で高温ガスを生成するために、燃料と混合される前にさらなる圧縮を受ける。高温ガスは、エンジン軸まわりにファンを回転させ且つ空気圧縮段もまた回転させる一連のタービン段に供給される。次いで、一次流れは、スラストの一部を供給するように排出される。スラストの大部分は、二次流れによって生み出される。二次流れと一次流れとの間の流量比は、バイパス比と称される。エンジンのパワーが増加すると、ファンケーシングと一次流れケーシングとの間の直径比が大きい高バイパス比を有するエンジンを設計することが必要となる。本発明は、複数流れエンジン及びバイパスエンジンに関する。
【0003】
従来の取り付け方法において、エンジンは、パイロンを用いて、翼の上もしくは下において航空機又は機体に固定される。パイロンは、エンジンと航空機構造体との間において、3方向、すなわち、軸方向、横方向、及び垂直方向に力を伝達する剛性のある細長い箱構造体の形態をとる。軸は、エンジンの軸と同一である。パイロンに対するエンジンの載架は、2つの垂直面内でなされる。第1の前側面は、中間ケーシングを通過し、後側面は、排気ケーシングを通過する。これら2つのケーシングは、例えば前側及び後側ベアリングのそれぞれを支持するエンジンの構造要素である。前側面に関して、2つの異なる取り付け方法が民間機において現在使用されており、第1の方法においては、中間ケーシングの外側シェルが使用され、他方の方法においては、このケーシングのハブが使用されている。
【0004】
前側の取り付け方法に関して、取り付けは、本発明の第1の実施形態においては中間ケーシングの外側シェルに対して行われる一方で、第2の実施形態においてはハブに対して行われる。
【0005】
平衡サスペンションの場合、力は、パイロンにエンジンを接続し且つ引っ張り又は圧縮のみにおいて作動するようにスイベルジョイントタイプの接続によって取り付けられているバー、リンク又は等価部品によって伝達される。配置は、3方向における力、すなわち、軸方向Fx、垂直方向Fz、及び横方向Fyを、これら3方向におけるトルク、すなわち、それぞれMx、My、及びMzとともに伝達するように設計されている。パイロンと中間ケーシングと排気ケーシングとの間の取り付けに加え、サスペンションはまた、ピラミッド構造体として知られているものを用いて、中間ケーシングのハブを後側取り付け具又はパイロンに接続するスラストバーを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1493663号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
エンジンの取り付けに関連する問題は、一方では、バー及びU字型金具取り付け点の小領域によって生じる点力の伝達に起因するものを含むケーシングの歪みであり、他方では、エンジンの軸に沿ったスラストベクトルに関するパイロンにおけるスラスト伝達のオフセットに起因する問題である。2つの力によって形成されたトルクは、その軸に沿ったエンジンの屈曲を引き起こし、固定部分と回転部分との間の間隙を変え、これにより、性能レベル及び燃料効率を低下させる。摩擦による部品の摩耗及びエンジンの耐用年数の低減もまたもたらす。本現象は、高バイパス比及びファンケーシングと一次流れケーシングとの間のより大きな直径比を有するエンジンにおいて、さらに顕著であり、変形の範囲がより大きい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明は、フレームの局所的な歪みを低減することができる手段を用いて、パイロンにフロントファンターボジェットエンジンを取り付けるための平衡サスペンションを提案する。
【0009】
この目的は、航空機パイロンにターボジェットエンジンを取り付けるための平衡サスペンションを用いて達成される。ターボジェットエンジンは、フロントファンと、放射アームによって相互接続された外側シェル及びハブを有するファンの下流の中間ケーシングと、同一軸XX上に外側シェルを有する排気ケーシングとを備え、サスペンションは、中間ケーシング上の前側取り付け具と、排気ケーシングの外側シェルに接続された少なくとも2つの後側取り付けリンクを有する後側取り付け具と、それらの上流端部において中間ケーシングのハブに固定された一対のスラストバーとを備え、後側取り付け具の上記2つのリンクによって形成される面は、排気ケーシングの面に対して傾斜していることを特徴としている。
【0010】
これらのリンクの傾斜は、エンジンの前側ケーシングにおける力及び歪みを低減することができ、これにより、大径ケーシングの質量及び挙動を最適化することができる。
【0011】
この特徴に関して異なる実施形態が考案され得る。以下の特徴は、個別に又は組み合わせで存在し得る。
【0012】
後側取り付け具は、交差部材を備え、2つの後側取り付けリンクは、交差部材の端部を排気ケーシングの外側シェルに接続している。
【0013】
後側取り付け具は、軸XXに沿ったトルクMxを受けるリンクを備え、このリンクは、2つの後側取り付けリンクの間に位置している。
【0014】
2つの後側取り付けリンクは、ラグが排気ケーシングの面に対して傾斜している面内にあるU字型金具継ぎ手によって排気ケーシングに接続されている。
【0015】
2つの後側取り付けリンクによって形成される上記面は、エンジンの重心の近傍においてターボジェットエンジンの軸を切断している。この配置は、重心が後端部により近く位置しているエンジンについて特に有利である。
【0016】
2つのスラストバーは、それらの下流端部において上記後側取り付け具の交差部材に固定されている。より具体的には、2つのスラストバーは、揺動レバーによって後側取り付け具に接続されている。
【0017】
他のタイプの構造において、2つのスラストバーは、それらの下流端部において上記箱構造体に固定されており、より具体的には、箱構造体への取り付け具のためのピラミッド構造体に固定されている。
【0018】
より具体的には、スラストバーの面及び後側取り付けリンクの面は、エンジン軸上に集中している。
【0019】
スラストバーの面及び後側取り付けリンクの面は、集合点でエンジン軸の近傍に集中している。この場合、集合点は、エンジン軸XXの高さよりも上であり且つこの軸からファンの直径の1/4よりも短い距離に位置しているのが好ましい。
【0020】
前側取り付け具は、交差部材と、部材を中間ケーシングの外側シェルに接続している2つの前側取り付けリンクとを備える。
【0021】
前側取り付け具は、2つの前側取り付けリンクの間において軸XXに沿ったトルクMxを受けるリンクを備える。
【0022】
前側取り付け具は、ブーメラン型バーによって軸XXに沿ったエンジントルクMxを受けるシステムを含む。
【0023】
この配置は、エンジンの前側面におけるより小さい歪みを引き起こすサスペンションシステムを形成する。
【0024】
したがって、本発明に係る解決策は、ケーシングにおける歪みの不在又は少なくとも低減による利点を有する。推進手段アセンブリの質量は、例えば非常に小さい大きさの力を受ける前側取り付け具の質量が低減することの結果として低減され得る。以上に説明されたように、歪みの低減は、燃料効率の改善をもたらす。
【0025】
用語「集合点」は、軸上の厳格な集中に限定されるように解釈されるべきではない。この点の位置は、エンジンの重量又はダクトにおける空気力学的な力等の他の負荷に応じて、エンジン軸に対してある垂直な距離にわたって変化し得る。
【0026】
トルクリンクは、欧州特許出願公開第1493663号明細書のもとに本出願人によって出願された特許出願において記載されている、ブーメランリンクとして知られているタイプから構成され得る。
【0027】
好ましくは、サスペンションは、それらの下流端部において揺動レバーによって後側取り付け具に接続された、もしくは、パイロンに直接接続された、又は、ハブタイプの取り付け具の場合には前側サスペンション梁に接続された、2つのスラストバーを備える。
【0028】
本発明は、添付された図面を参照しながら、任意の他の特徴及び利点の指示をともなって、ここにより詳細に説明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】後側取り付けリンクの面が排気ケーシングの面に対して傾斜している面における、本発明の実施形態に係るパイロンに取り付けられたターボジェットエンジンの側面図である。
【図2】斜め後方背面図において、等尺斜視における図1のエンジンの前側サスペンションを示している。
【図3】斜め前方正面図において、等尺斜視における図1のエンジンの前側サスペンションを示している。
【図4】エンジン軸上の点に後側取り付けリンクの面及びスラストバーの面が集中している、本発明の他の実施形態に係るパイロンに取り付けられたターボジェットエンジンの側面図である。
【図5】図4において示されるエンジンの前側取り付け具を示している。
【図6】エンジン軸上の点に後側取り付けリンクの面及びパイロンに固定されたスラストバーの面が集中している、本発明の他の実施形態に係るパイロンに取り付けられたターボジェットエンジンの側面図である。
【図7】図6の実施形態におけるパイロンに対するスラストバーの取り付け具の詳細を示している。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1において示されるように、ターボジェットエンジン1は、ターボファンタイプのものであり、そのファンケーシングは、符号2で示されている。ケーシング2の下流において、外側シェル34のみが現れている中間ケーシング3がある。空気が流入する上流端部は、図1における右側にある。
【0031】
圧縮部のケーシング4は、下流位置に現れている。この部分は、環状タイプの燃焼チャンバ5と通じている。タービン段7は、燃焼チャンバの下流に位置している。エンジンの端部において、後側ベアリングを支持する構造部品から構成された知られているタイプの排気ケーシング8がある。力及びモーメントの軸及び成分が方向付けられるところによる座標系は、エンジン軸XXに平行な軸Oxを備え、軸XXは、水平であり且つ上流から下流端部へと延在していると想定される。軸Ozは、縦軸であり、軸Oyは、横軸である。
【0032】
エンジンは、知られている方法で、パイロン9を用いて翼又は機体といった航空機の構造体に固定されている。パイロンの一般的な形状は、剛性のある平行六面体の箱構造体のものである。それは、エンジンと構造体との間の任意の力を伝達する。
【0033】
エンジンを固定してエンジンとパイロンとの間の力を伝達する部品又は部材の組であるサスペンションは、中間ケーシング3の外側シェル34とパイロン9との間の前側取り付け具10と、排気ケーシング8の外側シェル83とパイロンとの間の後側取り付け具11とを備える。スラストは、それらの下流端部において揺動レバーによって相互接続されることができる2つのバー12、12’を用いて受けられ又は伝達される。
【0034】
3つの要素は、図2及び図3においてより詳細に示されている。
【0035】
前側取り付け具10は、図において示されていないボルト等のパイロン9に固定するための手段を用いてその上面が設けられている部材101を備える。部材は、軸XXに対して横方向に置かれている。それは、それぞれ符号102、103である2つの末端U字型金具を備え、2つのリンク104、105が枢動される。これらのリンクの反対側の端部は、中間ケーシング3の外側シェル34に固定された2つのU字型金具31、32に取り付けられている。リンクは、知られている方法で、スイベルジョイントを用いてU字型金具に取り付けられている。シャフトは、U字型金具の2つのラグを通過し、球状表面を有するリングに嵌合されている。リンクはまた、シャフトのリングの表面に相補的な球状表面を有するリングに嵌合されている。したがって、リンクは、3つの直交方向に関して自由であり、その軸に沿った張力又は圧縮力のみを伝達する。
【0036】
前側サスペンションの2つのリンク104、105の組は、力Fy、Fzが方向Oy、Ozにおいて前側取り付け具に伝達されるのを可能とする。
【0037】
サスペンションは、2つの第1のリンク104、105の間に取り付けられ且つ先の2つのリンクと同じ方法で2つのU字型金具間に取り付けられたトルク受けリンクを備えることができる。この配置は、トルクMxが受けられるのを可能とするであろう。
【0038】
この例において、後側取り付け具11は、図において示されていないボルト等のパイロン9に固定するための手段を用いて設けられている交差部材111を備える。部材は、2つの後側取り付けリンク114、115が取り付けられた2つの末端U字型金具112、113を備える。これらのリンクの反対側の端部は、排気ケーシング8の外側シェル83に固定された2つのU字型金具81、82に取り付けられている。後側取り付けリンクは、前側取り付け具の場合のように、スイベルジョイントを用いてU字型金具に取り付けられている。トルクMxが前側サスペンションによって受けられるか否かに応じて、2つのリンク114、115の間に補助的なトルク受けリンクが配置され得る。
【0039】
最後に、サスペンションは、2つのスラストバー12、12’を備える。これらの2つのバーは、図2において示されるように、それらの上流端部において、軸XXを通過する垂直面に対して対称である2つの点で中間ケーシング3のハブ35に固定されている。この例において、バーは、それらの下流端部において、横バー121の2つの端部に取り付けられている。この場合においても、接続は、U字型金具及びスイベルタイプのものである。横バー121は、その中央において枢動ジョイントによって部材111に接続された揺動レバー120を形成する。知られているタイプの揺動レバーの取り付け具は、2つのバー12、12’の間の力の平衡を保つのを可能とし、スラストを軸方向に伝達するのを可能とする。図示された例において、揺動レバーは、2つの予備の横方向取り付け具を備えている。
【0040】
したがって、この取り付け具は、平衡である。
【0041】
本発明によれば、2つの後側取り付けリンク114、115によって形成される面は、排気ケーシング8の面に対して上流方向に傾斜している。軸XXを含むその交差点Cは、排気ケーシング8の面と軸XXを含むバー12の面の交差点との間に位置している。この目的のために、リンク114、115は、後側取り付け具11を通過する垂直面(Oz、Oy)に対して傾斜している。
【0042】
この配置のために、前側取り付け具の面(Oz、Oy)内の合力は小さい。これは、中間ケーシングの変形によって引き起こされたフレームの歪みを低減させる。
【0043】
本発明の他の特徴によれば、排気ケーシングの外側シェル83上のU字型金具81、82は、垂直に対して傾斜しており、ラグは、リンク114、115の軸の延長上にある。ラグは、面(Ox、Oz)に対して垂直であり且つ面(Oy、Oz)に対して傾斜している面内に位置している。
【0044】
本発明の他の実施形態において、図4及び図5において示されるように、前側サスペンションは、ハブに対する取り付け具を有するタイプのものであり、この取り付け具は知られている。図5において詳細に示される前側取り付け具210は、箱構造体9へと延在しているピラミッド構造体91に固定されたプレート92にボルトによって固定されたプレート211を備える。プレートは、スラストリンク212、212’によって、また、突起213によってハブに取り付けられている。
【0045】
バー212、212’は、それらの上流端部において、U字型金具及びスイベル接続によってハブ35に固定されており、それらの下流端部において、プレート211上に形成されたU字型金具に固定されている。2つのバーは、エンジン軸を通過する垂直面の各側上に1つずつ配置されている。中間ケーシング3を通過する面(Oy、Oz)内の力は、軸方向に向けられ且つ方向Oy、Ozにおける力のみを伝達するスイベルによってハブに接続されている、プレート211に固定されたシャフトである突起213によって受けられる。
【0046】
本発明によれば、後側取り付けリンク115、114の面は、上流方向に傾斜しており、この実施形態においては、点Cにおいてスラストバー212、212’の面に集中している。点Cは、軸上にあるのが好ましいが、そこからわずかに離隔されてもよい。
【0047】
好ましくは、集合点は、重心の近傍に位置している。特に、この配置は、後方に移動された重心を有する推進システムに有効である。
【0048】
この集中のために、サスペンションシステムは、エンジン軸XX上で受けられないスラストが中間ケーシングのアームのいかなる変形をも生じさせないように形成される。エンジン軸XXを含む対称の垂直面を参照して集合点における全体のモーメントを算出することができる。集合点の性質のために、後側リンク、スラストバー、及びスラスト自体は、ゼロのレバーアームモーメントに影響を及ぼす。集合点に対するそのレバーアームが非ゼロであることから、モーメントに影響を及ぼす可能性がある力のみが、前側サスペンションの面内の力である。しかしながら、エンジンは、平衡を保たれ、したがって、全体のモーメントは、ゼロに等しい。したがって、前側サスペンションの面内の力はゼロであり、前側ケーシングは、ほんの小さな変形しか被らない。
【0049】
したがって、本発明に係る解決策は、ケーシングにおける歪みの不在又は少なくとも低減による利点を有する。推進手段アセンブリの質量は、例えば非常に小さい大きさの力を受ける後側取り付け具の質量が低減することの結果として低減され得る。以上に説明されたように、歪みの低減は、燃料効率の改善をもたらす。
【0050】
用語「集合点」は、軸上の厳格な集中に限定されるように解釈されるべきではない。この点の位置は、エンジンの重量又はダクトにおける空気力学的な力等の他の負荷に応じて、エンジン軸に対してある垂直な距離にわたって変化し得る。この垂直距離は、エンジンファンの吸入直径の1/4よりも短い。この場合、全体のモーメントは、非ゼロであるが、ゼロに近い。
【0051】
図6において示される変形例において、サスペンションは、ファンケーシングに対する前側取り付け具を有するタイプのものであり、スラストバーの下流端部は、揺動レバーによって箱構造体に直接接続されている。
【0052】
エンジンは、中間ケーシング3の外側シェル34上の前側取り付け具10によってパイロン9に取り付けられている。これは、図2の変形例のものと同じ種類の取り付け具である。
【0053】
後側取り付け具311は、排気ケーシングの外側シェル83をパイロンに接続している。それは、パイロンに固定された交差部材312と、外側シェル83に固定されたU字型金具の間に2つのリンク314、315を備える。他の実施形態におけるもののように、リンク314、315は、排気ケーシングを通過する面(Oz、Oy)に対して傾斜している同一面内にそれらがあるように取り付けられている。有利には、外側シェル83に対する接続のためのU字型金具もまた、リンク314、315と同一角度で傾斜している。
【0054】
2つのスラストバー312、312’は、中間ケーシング3のハブをパイロン9に接続している。ハブ35に対するこれらのバーの上流側取り付け具は、バー12、12’について図2において示されたものと同一である。2つのバーの下流端部は、揺動レバー320を用いてパイロン9に固定されている。揺動レバーは、図7において示されている。
【0055】
2つのバー312、312’は、それぞれ、スイベルジョイント322a、322bにより、部材321に固定されたラグ上のピボットによって取り付けられている横揺動レバー322に取り付けられている。ジョイントは示されていないが、図面をより明確にするために、それらを収容する開口のみが図示されている。予備ジョイントもまたこの例において設けられているが、それらは、本発明によって提案されるものではない。部材321は、パイロンに直接ボルト締めされている。この配置のために、一方では後側取り付け具のリンク314、315上の力の方向、他方ではスラストバー312、312’上の力の方向は、集中させられ得る。これらの方向は、エンジン軸上の又は少なくともエンジン軸の近傍における点Cにおいて集中している。
【符号の説明】
【0056】
1 ターボジェットエンジン
2 ファンケーシング
3 中間ケーシング
4 圧縮部のケーシング
5 燃焼チャンバ
7 タービン段
8 排気ケーシング
9 パイロン
10、210 前側取り付け具
11、311 後側取り付け具
12、12’、212、212’、312、312’ スラストバー
31、32、81、82、102、103、112、113 U字型金具
34、83 外側シェル
35 ハブ
91 ピラミッド構造体
92、211 プレート
101、321 部材
104、105、314、315 リンク
111、312 交差部材
114、115 後側取り付けリンク
120、320 揺動レバー
121 横バー
213 突起
322 横揺動レバー
322a、322b スイベルジョイント
C 集合点
Fx、Fy、Fz 力
Mx トルク
Ox、Oy、Oz 軸
XX エンジン軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機のパイロン(9)にターボジェットエンジンを取り付けるための平衡サスペンションであって、ターボジェットエンジンが、フロントファン(2)と、放射アーム(36)によって相互接続された外側シェル(34)及びハブ(35)を有するファンの下流の中間ケーシング(3)と、同一軸XX上に外側シェル(83)を有する排気ケーシング(8)とを備え、サスペンションが、中間ケーシング上の前側取り付け具(10、210)と、排気ケーシング(8)の外側シェル(83)に接続された少なくとも2つの後側取り付けリンク(114、115、314、315)を有する後側取り付け具(11、311)と、それらの上流端部において中間ケーシング(3)のハブ(35)に固定された一対のスラストバー(12、12’、212、212’、312、312’)とを備え、後側取り付け具(11、311)の2つのリンク(114、115、314、315)によって形成される面が、排気ケーシング(8)の面に対して傾斜していることを特徴とする、サスペンション。
【請求項2】
後側取り付け具が、交差部材(111、312)を備え、2つの後側取り付けリンク(114、115、314、315)が、部材の端部を排気ケーシングの外側シェル(83)に接続している、請求項1に記載のサスペンション。
【請求項3】
後側取り付け具(11、311)が、軸XXに沿ったトルクMxを受けるリンクを備え、このリンクが、2つの後側取り付けリンクの間に位置している、請求項2に記載のサスペンション。
【請求項4】
2つの後側取り付けリンク(114、115、314、315)が、ラグが排気ケーシングの面に対して傾斜している面内にあるU字型金具継ぎ手によって排気ケーシングに接続されている、請求項2及び3に記載のサスペンション。
【請求項5】
2つの後側取り付けリンクによって形成される前記面が、エンジンの重心の近傍においてターボジェットエンジンの軸を切断している、請求項1から4のいずれか一項に記載のサスペンション。
【請求項6】
2つのスラストバー(12、12’)が、それらの下流端部において前記交差部材(111)に固定されている、請求項2から5のいずれか一項に記載のサスペンション。
【請求項7】
2つのスラストバー(12、12’)が、揺動レバー(210)によって後側取り付け具に接続されている、請求項6に記載のサスペンション。
【請求項8】
スラストバー(312、312’)の下流端部が、パイロン(9)に接続されている、請求項1から7のいずれか一項に記載のサスペンション。
【請求項9】
スラストバー(312、312’)及び後側サスペンションリンク(314、315)が、集合点(C)においてエンジン軸上に又はエンジン軸の近傍に集中している、請求項8に記載のサスペンション。
【請求項10】
集合点(C)が、エンジン軸XXの高さよりも上であり且つこの軸からファンの直径の1/4よりも短い距離に位置している、請求項9に記載のサスペンション。
【請求項11】
2つのスラストバー(212、212’)が、それらの下流端部において前側取り付け具(210)によってパイロンに固定されている、請求項1に記載のサスペンション。
【請求項12】
前側取り付け具(210)が、中間ケーシングのハブ(35)に接続されている、請求項11に記載のサスペンション。
【請求項13】
スラストバー(212、212’)の面及び2つの後側取り付けリンク(114、115)の面が、集合点(C)においてエンジン軸上に又はエンジン軸の近傍に集中している、請求項11又は12に記載のサスペンション。
【請求項14】
集合点(C)が、エンジン軸XXの高さよりも上であり且つこの軸からファンの直径の1/4よりも短い距離に位置している、請求項13に記載のサスペンション。
【請求項15】
前側取り付け具(10)が、交差部材と、部材を中間ケーシングのシェルに接続している2つの前側取り付けリンクとを備える、請求項1から10のいずれか一項に記載のサスペンション。
【請求項16】
前側取り付け具(10)が、軸XXに沿ったトルクMxを受けるリンクを備え、このリンクが、2つの前側取り付けリンクの間に位置している、請求項15に記載のサスペンション。
【請求項17】
前側取り付け具が、ブーメラン型リンクを用いて軸XXに沿ったエンジントルクMxを受けるシステムを有する、請求項15及び16に記載のサスペンション。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか一項に記載のサスペンションを有することを特徴とする、航空機用のターボジェットエンジン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−138745(P2009−138745A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−309367(P2008−309367)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(505277691)スネクマ (567)