説明

航空機に搭乗している人が本人であることを確認するための方法と装置

航空機に搭乗している人が本人であることを確認するため、生体計測認証手段を、生体計測認証が実施される条件を監視することのできる監視手段と組み合わせた方法。本発明の方法の追加ステップによれば、本人確認に関する情報を地上に向けて送信するための通信手段が設けられ、その情報が航空機の内部が異常事態であることを示している場合には警戒態勢が発動される。この方法を実現する装置も本発明に関係している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機に搭乗している人、より詳細には航空機のコックピットにいる人が本人であることを確認するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
2001年9月11日にニューヨークで起こって多数の人命が失われた事件は、飛行中に許可されていない人が航空機を操縦したことと関係しているが、この事件の後、これまで利用されてきたよりも頑丈な特に防弾材料を用いたゲートを設置して操縦席に近づけなくすることが最大の問題になった。この構造強化にアクセス制御システムが組み合わされ、許可された所定の人だけがゲートのロック・システムを解除できるようにされた。
【0003】
しかしいろいろな手段をこのように組み合わせると許可されていない人がこのゲートを破る機会はほとんどなくなるとはいえ、許可された人がロック・システムを数秒間解除してしまうと、操縦席へのアクセスはこうした手段の設置前と同じになる。ところでこのシステムは、商業用航空機の飛行中、例えば航空機を操縦するクルーに食事を運ぶためや、そのクルーが休息するために定期的に解除される。
【0004】
このようなことがあるため、許可された人が航空機を操縦しているかどうかを確認する新しいシステムが開発された。実際にはこの方法は、操縦席へのアクセスを制限する初期の手段と相補的であり、許可されていない人がセキュリティ・ゲートを突破することに成功したときに残される問題に対処している。
【0005】
この新しい確認システムは、航空機の操縦レベルでの生体計測認証システムを利用している。生体計測による認証は、解決すべき問題にとって好ましい。というのも、バッジや磁気カードといった単純な本人確認手段は悪意のある人に奪われる可能性があるからである。
【0006】
例えばアメリカ合衆国特許出願公開2003/067379には、航空機の操縦を制限するため、航空機の操縦席に設置されていて指紋を識別する生体計測センサーと、生体計測の結果が、許可された人に関して記憶されている生体計測データに対応するかどうかを確認する手段と、その対応の結果を航空機の内外に向けて送信する手段とを組み合わせた生体計測認証システムが開示されている。したがってこのシステムは、操縦席へのアクセスを制限することだけに基づいたセキュリティ・システムと組み合わせることが好ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしこのシステムにも相変わらず欠点がある。それは例えば、生体計測認証が拘束下でなされた場合や、許可されていない人が、許可された人の生体計測データを何らかの手段で取得した場合である。
【0008】
本発明はこのような欠点を解消し、大きな追加コストなしに比較的簡単な手段でより確実に認証する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、第1に、航空機に搭乗している人が本人であることを確認するため、実施された生体計測認証に関する情報を提供する生体計測認証ステップを含む方法に関する。本発明によれば、少なくとも1つの監視手段により、生体計測認証が実施される条件をチェックすることができる。生体計測認証の条件をチェックすることが好ましいのは、生体計測認証がこれまで監視されたことがなく、許可されていない人が許可された人を拘束してむりやり生体計測認証をさせる可能性があるからである。
【0010】
本発明により、好ましい一実施態様として、少なくとも1つの監視手段によって提供される情報を航空機の外部に向けて送信するステップも提案される。この送信ステップが好ましいのは、許可されていない人がその航空機を支配下に置いていることを航空機の外部にいる人が認識していれば本人確認がより効果的になるからである。
【0011】
さらに、情報の送信ステップは、生体計測認証ステップの際に提供される情報を送信する操作を含むことができる。実際、生体計測認証の対応に関する情報を送信することは好ましい。というのも、少なくとも1つの監視手段から提供されるデータを確認する外部の人は、生体計測センサーからの生体計測データと同定すべき人の生体計測データが対応しているかどうかを直接知ることができるからである。
【0012】
望ましい一実施態様では、監視手段と生体計測認証を実施する手段とが航空機のコックピットの中にあり、本人確認法は、少なくとも1つの監視手段を利用してコックピットにいる人数を数えるステップを含んでいる。このステップにより、コックピットにいることを許可された人だけがコックピットにいることが保証される。もちろん、本人であることを確認する前に、操縦士および/または副操縦士は、コックピットの中にいる許可されていないすべての人にコックピットから出るよう要求することになる。
【0013】
本発明は、生体計測認証ステップの際に提供される情報および/または監視手段から提供される情報によって警戒態勢を発動できるという利点も有する。実際、本人確認法によるデータが航空機の外部にいる人に送信されると、この人は、許可されていない人が操縦していないかどうかを確認し、必要な場合には警報を発することができる。好ましいことに、アメリカ合衆国特許出願公開2003/067379に記載されている解決法とは異なり、この簡単な確認法によって航空機の安全が問題になることはなく、例えば航空機の自動操縦モードが自動的かつ不可逆的に開始される。
【0014】
本人確認法の開始は、所定の異常事態の検出と結びついていることが好ましい。この方法がこのように開始されることは、従来のシステムに照らして特に好ましい。定期的な間隔で本人確認結果を確認するというのは操縦士にとってハードな仕事になる可能性があるが、こうすることで操縦士がこの仕事に拘束されなくなるため、操縦士の仕事がかなり増えることが特に避けられる。逆に、本発明の方法の開始は、異常事態にだけ関係している。
【0015】
第2に、本発明では、上記の方法を実現するための装置も提供される。
【0016】
したがって本発明は、航空機に搭乗している人が本人であることを確認するため少なくとも1つの生体計測認証手段を備える装置であって、その生体計測認証手段が存在する領域を監視する少なくとも1つの監視手段をさらに備えることを特徴とする装置にも関する。生体計測認証手段に加えて少なくとも1つの監視手段が存在していることで、その認証手段が拘束なしに使用されているかどうかや、改造されていないかどうかを監視することができる。
【0017】
この装置は、少なくとも1つの監視手段からの情報を航空機の外部に向けて送信する通信手段も備えることが好ましい。この通信手段により、航空機の外部にいる監視者が、生体計測認証が実施されている状態に関する情報を受け取ることができる。
【0018】
さらに、少なくとも1つの生体計測認証手段からの情報を航空機の外部に向けて送信する通信手段が設置されている。すると監視者は、認証時の状態と、生体計測データ間の対応の結果を同時に確認することができる。
【0019】
別の手段として、または重複する手段として、少なくとも1つの視覚的手段を航空機に搭載し、少なくとも1つの生体計測認証手段によって実施された生体計測認証結果を提示することができる。本発明によるこの追加の特徴は、確かにこの問題に対する同じくらい好ましい別の解決法である。実際、航空機の外部に向けて一連のデータをもう一度送るのではなく、生体計測データ間の対応を知らせるデータを送ることを目的として、本発明の装置では、監視手段の視野内に光手段を設置することができる。本発明により、必要な場合には信頼性を高めるという理由で、地上に向けた通信手段を、監視手段の視野内にある光手段と組み合わせることもできる。
【0020】
死角がまったくないようにするため、2つの監視手段を少なくとも1つの生体計測認証手段と組み合わせることが好ましい。この場合の利点は、許可されていない人がコックピットにいると、監視手段によって必ず発見されることである。
【0021】
さらに、少なくとも1つの監視手段は、広角レンズを利用することができる。監視手段が1つしか設定されていない場合には、この特徴が特に有効である。なぜなら監視手段は、監視すべき領域の全体ではないにせよ、より広い監視領域をカバーできるからである。
【0022】
少なくとも1つの監視手段はビデオ・カメラであることが好ましい。頻繁にビデオ画像を利用することは、単純な撮影装置よりももちろん好ましい。しかしこれまでの説明からして、本発明でこのようなシステムの利用が排除されることはない。
【0023】
生体計測認証手段に関しては、すべてを列挙するわけではないが、本発明においていくつかの可能性が考えられる。その中でも特に、指紋、虹彩、顔の認識による認証が考えられる。可能なそれぞれの方法には利点と欠点があり、その利点と欠点は、生体計測のさまざまな分野における技術の進歩と直接結びついている。出願の時点では、指紋の認識が好ましい方法であるように思われる。なぜなら、このタイプの認識に適したセンサーは、認証すべき人の手の届く範囲により容易かつ人間工学的なやり方で設置すること(例えば操縦桿の上に設置すること)ができ、しかも他の認証システムの場合とは違ってその人が動かないようにする必要もないからである。さらに、この技術は他の技術よりも確実であることがわかっているため、例えば許可された人を認証手段が認識しないなどの認証エラーに関するリスクがより少ない。
【0024】
本発明によれば、少なくとも1つの生体計測認証手段と少なくとも1つの監視手段を組み合わせて航空機のコックピットに配置する。本発明は航空機の特定の領域(例えば商業飛行をするスタッフ専用の領域)内で実現できるが、本発明の主な利点は、航空機を操縦する人、すなわちコックピットにいる人が本人であることを確実に確認できることである。
【0025】
好ましくは、本発明では、少なくとも1つの生体計測認証手段を、航空機の通常の進行方向に向かって、同定する人が座るはずの座席の背もたれの前方に配置することができる。この特徴により、航空機の操縦者は、生体計測認証を行なうのに操縦席から移動しなくて済む。特に、この配置により、認証すべき人がベルトを緩めなくてもよくなる。
【0026】
より一層好ましいのは、少なくとも1つの生体計測認証手段が航空機の操縦桿の上に配置されていることである。このようにすると、操縦士の側に必要とされる労力が最少になる。というのも、操縦士は、航空機を操縦しているときに最適であると考えられる自分の位置にいてまったく余分な動きをすることがないからである。その場合、操縦桿は、少なくとも1つの生体計測認証手段からの情報を通信する特別な手段を備えることができる。この追加手段により、特に、航空機の操縦桿に直接関係する情報との干渉が起こることが避けられる。
【0027】
本発明は、上記の本人確認装置を備える航空機のコックピットにも関する。このような装置を備える航空機も本発明の対象である。
【0028】
本発明の利点がよりよくわかるようにするため、特別な1つの実施態様に関する説明を添付の図面に基づいて以下に行なう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
図1に、航空機のコックピット1を示してある。これは、長距離の飛行を行なうための航空機に一般に設けられているコックピットである。コックピット1の入口にあるセキュリティ・ゲート2が閉鎖状態だと、許可されていない人がコックピット1に侵入することが阻止される。操縦士の座席3、副操縦士の座席4、3番目のメンバーの座席5が、航空機をできるだけ人間工学的に操縦できるように配置されている。
【0030】
本発明によれば、生体計測認証手段がコックピット1に設置されている。この生体計測認証手段は当業者に知られており、一般に、複数の要素を利用する。
【0031】
第1に、生体計測認証は、記憶された生体計測データを必要とする。
【0032】
第1の実施態様では、許可された人に関する生体計測データの記憶は、例えば特定の航空会社の航空機のコックピットに入ることを許可された人に関するあらゆる生体計測データを含む全体データ・ベースを管理する情報手段によって実行される。
【0033】
第2の実施態様では、許可された人に関する生体計測データの記憶は、特定の1回の飛行または特定の1機の航空機に関して許可された人に関する生体計測データだけを管理する情報手段によってなされる。この実施態様では、生体計測データはあまり多くなく、実施手段はそれほど複雑ではない。
【0034】
好ましい一実施態様では、許可された人に関する生体計測データは、許可されたそれぞれの人の生体計測データを含むバッジを介して記憶される。この好ましい実施態様は、航空機に搭載する特別な記憶手段を用いなくてもよいという利点を有する。この実施態様と図1によると、バッジ読取装置6が航空機のコックピット1に設置されている。設置場所は、生体計測認証領域の近くであることが好ましい。バッジ読取装置6は、付随する生体計測センサーの近くに配置されていることがさらに好ましい。
【0035】
生体計測センサーの位置は、センサーのタイプによって異なる可能性がある。実際、生体計測センサーが指紋を認識する生体計測センサー7であるならば、それを認証すべき人の手の届く位置に置くことが好ましかろう。逆に生体計測センサーが顔の特徴を数値として認識するのであれば、その顔を認識する生体計測センサー8を、認証すべき人の正面の顔の高さに置くことが好ましかろう。図1にこれら2つのタイプのセンサーが存在しているからといって、本発明を実施する際にそのどちらかが独立に機能する可能性が排除されるわけではない。この好ましい実施態様では、指紋を認識する生体計測センサーを用いて本発明の方法を最適化するため、このタイプの生体計測センサーを操縦士の親指の届く位置(例えば航空機の操縦桿の上)に配置することが好ましかろう。操縦桿が完全に電気式である場合には、図2からわかるように、指紋を認識する生体計測センサー7を操縦桿9の上に配置する。より適しているのは、指紋を認識する生体計測センサー7を、操縦桿の上部で、自動操縦装置10の上にあってクルーが再び操縦するための装置の横に配置することである。この図2では、操縦桿が支持体11に取り付けられていることが確認できる。この支持体11には、バッジ読取装置の生体計測データと生体計測センサーのデータを比較するシステム(図示せず)に向けてそのセンサーの情報を送信するための特別なケーブル12が収容されている。
【0036】
これまで説明してきた認証条件を満たすと考えられるあらゆるタイプの生体計測認証を本発明のような本人確認装置で利用できる。特に、網膜の血管分布を読み取ることによる認証、サーモグラフィによる認証、立体映像による認証、声紋による認証、歯のX線写真による認証、耳の人体計測的特性による認証、手の認識による認証、心臓の鼓動による認証、においによる認証などが考えられるが、これですべてではない。さらに、これらの生体計測認証手段を互いに組み合わせて認証を確実にすることができる。例えばシステムの1つが故障したり、システムの1つに認証上の問題があることがわかったりした場合には、それでも第2のシステムにより、許可される人を認証することができよう。
【0037】
これら生体計測認証手段に関連して、認証を実施する条件をチェックする方法にはいくつかの形態が可能である。
【0038】
例えば航空機のコックピットにいる人の体重を測定するシステムを設置することができよう。コックピット内のクルーのほぼ最大重量に対応する所定の最大重量を超えた場合には、正常な条件で認証がなされなかったことがその時点で確認され、コックピット内に余計な人がいることが結論できよう。
【0039】
しかし好ましいことに、本発明によれば、条件のチェックは、ビデオ監視手段によってなされる。実際、ビデオによる監視には、許可されているいないに関係なく、余計な人がいるかいないかを目で確認できると同時に、その余計な人が航空機を操縦している人を拘束して生体計測認証をさせようとしているかどうかも見ることができるという利点がある。カメラによるこの監視には、最終的に、生体計測認証が何らかのサポートを得て実施されたのではないかどうかを確認できるという利点がある。サポートがあれば、許可された人の生体計測データがあらかじめ偽造されたことになろう。図1では、3台のビデオ・カメラ13が航空機のコックピット1が配置され、死角が残らないようにされている。
【0040】
ソフトウエア手段を利用すると、ビデオ・カメラで取得した画像を分析し、コックピットにいる人数を明らかにすることができる。生体計測センサーを用いて明らかにされた人数がコックピットにいる人数(ソフトウエア手段と少なくとも1台のビデオ・カメラを用いて明らかにされた数)に対応している限り、生体計測認証が第三者による拘束下で行なわれたのではないと考えることができる。逆の場合には、認証段階で拘束があったと見なすことができよう。もちろんここでは、認証操作を実施する前に許可されていないあらゆる人をコックピットの外に出すよう操縦士に要求することが好ましい。
【0041】
最後に、光手段(図示せず)を生体計測認証システムに付随させることができる。例えば着色光手段を設けることができる。肯定的な認証結果は緑色の光信号で通知されるのに対し、否定的な認証結果は赤色の光信号で通知されることになろう。その場合、これらの光信号は、ビデオ監視手段を通じてだけ見ることができ、航空機の外部に向けて認証結果を追加して送信する必要はない。
【0042】
全体として、生体計測認証手段と監視手段を組み合わせることには利点がいくつかある。実際には、許可されていない人が許可された人を拘束して生体計測を行なわせ、従来のセキュリティ・システムと本人確認システムの全体を突破する可能性がある。ここではあらゆる形態の拘束を考える。特に、許可されていない人が何らかの武器を用いて許可された人の生命を脅かす可能性がある。従来のシステムが想定していなかった別の可能性は、許可された人の生体計測データの偽造である。生体計測認証は、例えば容易に盗まれる可能性のあるバッジによる単純な確認よりも確実だが、許可された人の指紋が何らかの媒体に再現されているという状況が考えられる。許可されていない人は、この媒体を用いると、特に問題なく認証段階をすり抜けることになろう。最後に、最悪の状況では、許可されていない人が、もはや生きていない許可された人の器官を認証に用いる可能性がある。したがって本発明には、これらの問題点を解決するとともに、生態計測認証が正常な条件下で実施されているかどうか、すなわち特別な拘束や偽造なしに、あるいは少なくとも生態計測認証を行なう人の近くの環境に邪魔者がいない状態で実施されているかどうかを監視できるという利点がある。
【0043】
監視情報および/または認証情報は、近くを飛んでいる他のあらゆる航空機に向かって、または地上の航空管制センターに向かって送信することができる(後者がはるかに好ましい)。ビデオ・システムの情報と、場合によっては認証の情報を航空機の外部にある受信機に向かって送信するため、好ましい実施態様では、通信のために従来から利用されている、優先権の管理を伴う空中/地上通信システムが利用される。商業用航空機に搭載されているこのシステムは一般に、英語の“航空機通信処理・報告システム”の略号である“ACARS”と呼ばれている。
【0044】
これらの手段のおかげで、航空機の飛行中に異常事態が発生した場合には、潜在的な危険を知らせることができよう。
【0045】
例えば以下の事態が異常であると考えられ、確認手続きを自動的または非自動的に開始させる可能性がある。
− 航空機の当初の飛行計画からの航路の変更、および/または
− 連続した複数の交通管制命令に対する無応答、および/または
− 航空機をハイジャックしようとする試みを、航空機の何らかの通信手段から地上に向けて知らせる信号、および/または
− 航空機の操縦士の一人による緊急呼び出し(当業者には一般にパン−パン−パン呼び出しと呼ばれている)または救助呼び出し(当業者には一般にメーデー−メーデー−メーデー呼び出しと呼ばれている)の送信。
【0046】
異常事態が発生すると、この実施態様では、交通管制官には以下の可能性がある。
− 設置されている監視手段(好ましい実施態様では監視用ビデオ・カメラ)を作動させる、および/または
− 場合によっては、航空機のコックピット1へのアクセス・ゲートのロックを始動させる、および/または
− クルーに生体計測認証手段を利用して自らを認証するよう要求する、および/または
− コックピットに余計な人がいる場合には、その人にやはり認証を行なうよう要求する、および/または
− 操縦席にいるそれぞれの人の生体計測認証に対応する情報を確認する、および/または
− 存在している人が何らかの拘束状態で生体計測認証を実施するかどうかや、ある人が操縦席に隠れようとしているかどうかを監視手段を利用して確認する、および/または
− チェック情報によって異常な認証条件であることがわかった場合に警戒態勢を発動する。
【0047】
この最後の状況では、警戒態勢の発動は、管轄の空港機関に通報するか、チェック時にその航空機が上空を飛んでいる国の軍に通報することからなる。このような警報の結果、航空機の安全が回復することはないが、この警報によって国家機関に容易に危険を知らせることができる。すると国家機関は、国によって異なるが、最良と思われる措置を取ることになろう。したがってこの利点は、自社の航空機で本発明を実施するであろう航空会社にとって非常に興味深い。というのも、警報が出されると、搭乗している乗客の安全は一部が国家機関の責任になるからである。
【0048】
したがって本発明には、実施される手段を通じて異常事態が明らかになった場合に危険を知らせることができるという大きな利点がある。さらに、本発明のおかげで、航空機に搭乗している人の本人確認の信頼性が大きくなる一方で、そのためのコストと搭載される追加手段の重量は比較的わずかに留まる。許可されていない人が飛行中の航空機を制御することに関係するあらゆる状況が本発明では想定されており、通常の状態では操縦士がなすべき特別な義務はない。最後に、本発明には、許可されている人が本人であることを航空機内の別の領域において特に問題なく確認できるという利点がある。
【0049】
本発明が例として上に説明した好ましい実施態様に限定されることはない。本発明は、添付の請求項の範囲内で当業者が思いつくあらゆる別の実施態様にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】航空機のコックピットを上から見た図である。
【図2】航空機の操縦桿の斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機に搭乗している人が本人であることを確認するため、実施された生体計測認証に関する情報を提供する生体計測認証ステップを含む方法であって、生体計測認証条件のチェックが少なくとも1つの監視手段(13)によってなされることを特徴とする方法。
【請求項2】
少なくとも1つの監視手段(13)によって提供される情報を航空機の外部に向けて送信するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
情報を送信する上記ステップが、上記生体計測認証ステップの際に提供される情報を通信する操作を含むことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
上記監視手段(13)と生体計測認証を実施する手段(7、8)とが航空機のコックピットの中にあることと、少なくとも1つの監視手段(13)を利用してコックピットにいる人数を数えるステップを含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
生体計測認証ステップの際に提供される情報および/または監視手段(13)から提供される情報によって警戒態勢が発動されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
所定の異常事態の検出がきっかけとなって開始されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
航空機に搭乗している人が本人であることを確認するため少なくとも1つの生体計測認証手段(7、8)を備える装置であって、その生体計測認証手段(7、8)が存在する領域を監視する少なくとも1つの監視手段(13)をさらに備えることを特徴とする装置。
【請求項8】
少なくとも1つの監視手段(13)からの情報を航空機の外部に向けて送信する通信手段を備えることを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
少なくとも1つの生体計測認証手段(7、8)からの情報を航空機の外部に向けて送信する通信手段を備えることを特徴とする、請求項7または8に記載の装置。
【請求項10】
少なくとも1つの生体計測認証手段(7、8)による結果を示すため航空機に搭載した視覚的手段を備えることを特徴とする、請求項7から9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
2つの監視手段(13)を少なくとも1つの生体計測認証手段(7、8)と組み合わせることを特徴とする、請求項7から10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
少なくとも1つの監視手段(13)が広角レンズを利用していることを特徴とする、請求項7から11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
少なくとも1つの監視手段(13)がビデオ・カメラであることを特徴とする、請求項7から12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
少なくとも1つの生体計測認証手段(7、8)が、指紋を認識することによる認証装置であることを特徴とする、請求項7から13のいずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
少なくとも1つの生体計測認証手段(7、8)が、虹彩を認識することによる認証装置であることを特徴とする、請求項7から14のいずれか1項に記載の装置。
【請求項16】
少なくとも1つの生体計測認証手段(7、8)が、顔を認識することによる認証装置であることを特徴とする、請求項7から15のいずれか1項に記載の装置。
【請求項17】
少なくとも1つの生体計測認証手段(7、8)と少なくとも1つの監視手段(13)が組み合わされて航空機のコックピット(1)に配置されていることを特徴とする、請求項7から16のいずれか1項に記載の装置。
【請求項18】
少なくとも1つの生体計測認証手段(7、8)が、航空機の通常の進行方向(14)に向かって、同定する人が座るはずの座席(3、4、5)の背もたれの前方に配置されていることを特徴とする、請求項7から17のいずれか1項に記載の装置。
【請求項19】
少なくとも1つの生体計測認証手段(7、8)が、航空機の操縦桿(9)の上に配置されていることを特徴とする、請求項7から18のいずれか1項に記載の装置。
【請求項20】
上記操縦桿(9)が、少なくとも1つの生体計測認証手段(7、8)からの情報を通信する特別な手段(12)を備えることを特徴とする、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
請求項7から20のいずれか1項に記載の装置を備えることを特徴とする航空機のコックピット(1)。
【請求項22】
請求項7から20のいずれか1項に記載の装置を備えることを特徴とする航空機。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−534369(P2008−534369A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−503546(P2008−503546)
【出願日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際出願番号】PCT/FR2006/000587
【国際公開番号】WO2006/103329
【国際公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(503172666)エアバス (43)
【Fターム(参考)】