説明

航空機のペダルシステムをテストする装置及び方法

航空機のペダルシステム(12)をテストする装置(10)であって、航空機のペダル(12’、12’’)を作動させるペダル作動装置(14)と、前記航空機のペダル(12’、12’’)の作動中に、前記航空機のペダル(12’、12’’)に加わる作動力を感知し、該作動力を示す信号を提供する力センサ(26)と、前記航空機のペダル(12’、12’’)の作動に応じて変位する装置(12’、12’’、13)の角変位を感知する変位感知装置(28、30)と、前記航空機のペダル(12’、12’’)に加わる作動力による前記航空機のペダル(12’、12’’)の作動に応じて変位する装置(12’、12’’、13)の角変位を示す出力を生成するように前記力センサ(26)と前記変位感知装置(28、30)の信号を処理するのに適合した制御ユニット(32)とを有するものであることを特徴とする装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機のペダルシステムをテストする装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機、特に旅客機のブレーキ及び方向舵は一般的に航空機のコックピット内に配置されるペダルによって作動可能である。通常、航空機のブレーキと航空機の方向舵を作動させる2つの同一のペダルのペア、1つは航空機の機長用、もう1つは副操縦士用、が備え付けられる。それぞれのペダルのペアの右ペダルは右の航空機ブレーキを作動させ、航空機の方向舵の動きを右に誘導する役目を果たす。それぞれのペダルのペアの左ペダルは左の航空機ブレーキを作動させ、航空機の方向舵の動きを左に誘導する役目を果たす。航空機ブレーキを作動させるために、それらペダルは傾斜軸周りに傾斜可能であるが、一方で航空機の方向舵の作動はそれらペダルを前方、即ち、航空機の前方先端に向かう方向に押すことによって成される。
【0003】
いくつかの航空機タイプ、特に1通路の航空機タイプの場合、航空機のブレーキシステムはワイヤーによるブレーキシステムである。このワイヤーによるブレーキシステムは、例えば、ペダルに加わる作動力、及び/又は、ペダル作動速度などを示すペダルセンサからの信号を受信する電子制御ユニットを有することができる。この電子制御ユニットはペダルセンサによって提供される信号に基づいて、ペダルの作動によって要求される際に航空機ブレーキを作動させるように、ブレーキ作動装置へ伝達される作動信号を生成する。航空機の方向舵システムは、ワイヤーによる操縦システムとすることができる。しかし、代わりに、方向舵の旋回動をさせるために方向舵ペダルの作動中に機械的にペダル作動力をその方向舵に伝達するケーブルを有する機械的なシステムであっても良い。
【0004】
航空機の最終組立中に、航空機のブレーキ及び方向舵ペダルシステムの適切な運転がテストされなければならない。特に、個々のコンポーネントの欠陥やその航空機のブレーキ及び方向舵ペダルシステムの適切な作動を妨げ得る組立における欠陥を発見するために、航空機のブレーキ及び方向舵ペダルシステムのテストが行われなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、航空機のペダルシステムの適切な運転を確実に、時間を節約してテストすることが可能な航空機のペダルシステムをテストする装置及び方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の航空機のペダルシステムをテストする装置は、ペダル作動装置を有する。このペダル作動装置は、航空機のペダルを機械的に作動させる役割を果たす機械的装置であることが好ましい。この本発明の装置は、さらに、ペダル作動装置によって航空機のペダルの作動中に航空機のペダルに加わる作動力を感知する力センサを有する。この力センサは、さらに、このセンサによって測定される作動力を示す信号を提供するのに適合する。本発明の航空機のペダルシステムをテストする装置の変位感知装置は、航空機のペダルの作動に応じて変位する装置の角変位を感知する役割を果たす。最後に、航空機のペダルに加わる作動力によるその航空機のペダルの作動に応じて変位する装置の角変位を示す出力を生成するように、力センサ及び変位感知装置の信号を処理するのに適合した制御ユニットが設けられる。この制御ユニットは、例えば固定されたパーソナルコンピュータやラップトップコンピュータとすることができる。
【0007】
上記で詳細に説明したように、航空機のブレーキシステム及び方向舵は、その航空機のコックピット内に備えられる同じペダルのペアによって作動することができる。航空機ブレーキを作動させるため、ペダルは傾斜軸周りに傾斜するが、航空機の方向舵の作動はそのペダルを前方、即ち、その航空機の前方先端に向かう方向に押すことによって成される。そのペダル上の力を加える位置を適切に選択することによって、本発明の装置は、航空機のブレーキの作動、又は航空機の方向舵の作動のどちらかをテストするのに用いられることができる。装置がブレーキの作動、又は方向舵の作動のどちらのテストに用いられるかによって、変位感知装置はその航空機のブレーキシステムのコンポーネントの変位、又はその航空機の方向舵システムのコンポーネントの変位のどちらかを感知する。
【0008】
航空機のペダルに加わる作動力によるその航空機のペダルの作動に応じて変位する装置の角変位を示す制御装置の前記の出力は、データテーブルの形式、及び/又は航空機のペダルに加わる作動力によるその航空機のペダルの作動に応じて変位する装置の角変位のプロットを示す図の形式で提供されることができる。このテーブル及び/又は図は、制御ユニットの表示ユニット上に表示される、及び/又は制御ユニットに接続されて制御されるプリンターによって印刷されることができる。このテストを行う際に制御ユニットによって得られるデータは、制御ユニットの統合コンポーネント、又は別のメモリユニットのどちらかであるメモリ内に格納されることができる。本発明の航空機のペダルシステムをテストする装置は、航空機のペダルシステムの適切な運転を確実に、時間を節約してテストし、制御ユニットを介してユーザにテスト結果を表示することを可能にする。このように、制御ユニットは本発明のテスト装置のマン−マシン−インターフェースを構成する。
【0009】
さらに、本発明の航空機のペダルシステムをテストする装置の制御ユニットは、ペダル作動装置を制御するのに適合したものとすることもできる。特に、ペダル作動装置は、ペダル作動装置へのそれぞれの制御信号を制御ユニットに出力させる、その制御ユニット内で動く適切なコンピュータープログラムを用いて制御ユニットによって制御されることができる。この制御ユニットによってペダル作動装置に提供される制御信号は、例えば予定通りのペダル作動力や、ペダル作動速度などの様々なテストパラメータを定義した予め定められたテスト条件に従って選択されることができる。
【0010】
本発明の航空機のペダルシステムをテストする装置は、高次のテスト環境に組み込まれることもできる。この高次のテスト環境は、例えば、テストされる航空機が実際地上にある場合の飛行状況などの特定の状況をシミュレートするのに適合したものとすることができる。例えば、本発明の装置は、そのテスト環境によってシミュレートされる特定の状況において、ブレーキペダルや方向舵ペダルの作動中の航空機のブレーキシステム及び/又は航空機の方向舵システムの動きをそれぞれテストするために用いられることができる。
【0011】
本発明の装置のペダル作動装置は、このペダル作動装置の基礎構造に傾斜可能に取り付けられる力伝達レバーを駆動する、例えばリニア直流モータのような、電動モータを有することが好ましい。この電動モータはウォームギアを介してその力伝達レバーと接続されることができる。この基礎構造は、航空機の構造コンポーネントに固定されるのに適合したものが好ましい。力伝達レバーは、航空機のペダルへ作動力を加えるフォースアプリケーションロッドに接続されることができる。
【0012】
航空機のブレーキペダル又は航空機の方向舵ペダルのテストを行うために、前記のペダル作動装置の基礎構造は航空機の構造コンポーネント、好ましくはその航空機のコックピット内に配置されるフロアーパネルに固定されることができる。その後、フォースアプリケーションロッドは適切なクランプ装置によって航空機のペダルに取り付けられることができる。ペダル上の力を加える位置、即ち、フォースアプリケーションロッドのそのペダルへの取り付け位置は、航空機のブレーキシステム又は航空機の方向舵システムのどちらがテストされるかによって選択されることができる。航空機のブレーキシステムがテストされる場合、そのペダル上の力を加える位置は、ペダル作動装置の運転によってペダルが傾斜することを確実にするように選択されるべきである。反対に、航空機の方向舵システムがテストされる場合、そのペダル上の力を加える位置は、ペダル作動装置の運転によって航空機の前方先端の方向にペダルが直進運動することを確実にするように選択されるべきである。
【0013】
航空機のペダルを作動させるために、ペダル作動装置の電動モータは、ウォームギアの長さを短くし、従って、前方方向、即ち航空機のペダルに向かう方向へ力伝達レバーが傾斜運動するように運転されることができる。この力伝達レバーの傾斜運動によって、電動モータの駆動力はフォースアプリケーションロッドへ伝達され、よって航空機のペダルに伝達される。この電動モータの運転は、制御ユニット内で動くコンピュータプログラムの基準となる予め定義されたテストパラメータに従って、制御ユニットによって制御されることができる。
【0014】
航空機のペダルの作動中のその航空機のペダルに加わる作動力を感知する力センサは、フォースアプリケーションロッドに接続されることが好ましい。フォースアプリケーションロッドは、ペダル作動装置の電動モータによって提供される作動力を直接航空機のペダルに加える装置であるので、このフォースアプリケーションロッド上でのセンサの位置決めは、航空機のペダルに加わる力の特に確実で正確な測定を可能にする。
【0015】
既に上述したように、本発明の装置は、航空機のブレーキの作動、又は航空機の方向舵の作動のどちらかをテストするために使用されることができる。この装置が航空機のブレーキの作動をテストするために用いられる場合、変位感知装置は角変位、即ち航空機のペダルの作動に応じた航空機のペダルの傾斜を感知する装置であることが好ましい。一般的に航空機のブレーキシステムはワイヤーによるブレーキシステムであるので、航空機のペダルの作動に応じたその航空機のペダルの変位はこのブレーキシステムの適切な運転にとって重要なパラメータである。
【0016】
このペダルの変位感知装置は、航空機のペダルに直接取り付けられる電位差計であっても良い。しかし、このペダルの変位感知装置はペダル作動装置の傾斜可能な力伝達レバーに取り付けられることが好ましい。言い換えれば、このペダルの変位感知装置は、航空機のペダルの角変位に直接対応する力伝達レバーの変位又は傾斜角度を感知することが好ましい。ペダル作動装置の統合コンポーネントを構成するペダルの変位感知装置を用いることによって、テストのためのペダルの変位感知装置を航空機ペダルへ取り付けることを省くことができる。従って、航空機における本発明のテスト装置の取り付けは非常に簡素化されたものである。
【0017】
本発明の装置が航空機の方向舵の作動をテストするために用いられる場合、変位感知装置は航空機のペダルの作動に応じた航空機の方向舵の角変位を感知する装置であることが好ましい。一般的に、航空機の方向舵システムは機械的なケーブルシステムであるので、航空機のペダルの作動に応じた実際の方向舵の変位は方向舵システムの適切な運転にとって重要なパラメータである。この方向舵の変位感知装置は、航空機の方向舵に直接取り付けられる電位差計であっても良い。航空機の方向舵システムのコンポーネントを構成する方向舵の変位センサは、その方向舵の変位センサを本発明の装置の制御ユニットに単純に接続することによって変位感知装置として用いられることが好ましい。
【0018】
より好ましい態様において、本発明の航空機のペダルシステムをテストする装置は、さらに信号増幅装置を有する。この信号増幅装置は、制御ユニットと力センサとの間で交換される信号を増幅するように、制御ユニットと力センサ間で接続されることができる。好ましくは、この信号増幅装置は制御ユニットと変位感知装置との間で交換される信号を増幅しない。しかし、その制御ユニットと変位感知装置との間で交換される信号も同様に増幅するのに適合するように信号増幅装置を変更することも可能である。
【0019】
本発明の装置は、装置の様々なコンポーネント、特にペダル作動装置のコンポーネントへの電源を調整するのに適合した電源調整装置を有することもできる。例えば、この電源調整装置は、電動モータ、力センサ、及び航空機のペダルへ作動力を加えている状態でその航空機のペダルの角変位を感知する電位差計への電源を調整するのに適合したものとすることができる。
【0020】
本発明の装置は、制御ユニットとペダル作動装置との間で交換される信号を増幅し、また装置の様々なコンポーネント、特にペダル作動装置のコンポーネントへの電源を調整する役割を果たす単一のインターフェースコンポーネントを有することが好ましい。本発明の航空機のペダルシステムをテストする装置の信号レベルは比較的低い。従って、この装置は電磁波障害に対して電磁感受性が低い。
【0021】
本発明の装置は、さらに制御ユニットとその信号増幅電源調整インターフェースコンポーネントとの間で交換される信号を変換するアナログ−デジタル変換器を有することができる。
【0022】
本発明の航空機のペダルシステムをテストする装置の制御ユニットは、データベースサーバに接続されることができる。この制御ユニットとデータベースサーバとの間の接続は、ローカルエリアネットワーク(LAN)によって成され得る。その場合、テストデータは制御ユニットのメモリ不良の場合にデータが失われるリスクを低減するデータベースサーバのメモリ内に容易に格納されることができる。
【0023】
この制御ユニットは、さらに所定の作動力での変位感知装置によって感知される角変位値とその所定の作動力での予定通りの角変位値とを比較するのに適合したものとすることができる。好ましくは、2つの異なる所定の作動力値で測定された2つの異なる角変位値は、これらの2つの異なる所定の作動力値での2つの異なる予定通りの角変位値と比較される。この予定通りの角変位値は、例えば、制御ユニットやデータベースサーバのメモリ内に格納されることができる。さらに、所定の作動力での変位感知装置によって感知された角変位値と予定通りの角変位値との差が所定のリミットを超えた場合、制御ユニットは警告信号を出力するのに適合したものとすることができる。この警告信号は制御ユニットの表示ユニット上に色の付いたメッセージの形式で表示されることができる。しかし、制御ユニット又は別の警告信号出力装置のどちらかによって音の警告信号を出力することもできる。
【0024】
特に、制御ユニットは、感知された最少及び/又は最大角変位値、及び/又は、感知された最少及び/又は最大作動力、及び/又は、感知された摩擦値、及び/又は、感知された対称性値をそれぞれの予定通りの値と比較するのに適合するものとすることができる。警告信号は感知された値と予定通りの値との差が所定のリミットを超えた際に出力されることができる。
【0025】
本発明の航空機のペダルシステムをテストする方法は、ペダル作動装置によって航空機のペダルを作動させる工程と、力センサによって、航空機のペダルの作動中にその航空機のペダルに加わる作動力を感知し、その作動力を示す信号を提供する工程と、変位感知装置によって、航空機のペダルの作動に応じて変位する装置の角変位を感知する工程とを有する。ブレーキの作動又は方向舵の作動のどちらをテストするかによって、変位感知装置は航空機のブレーキシステムのコンポーネントの変位又は航空機の方向舵のコンポーネントの変位のどちらかを検知する。力センサと変位感知装置の信号は制御ユニットによって処理される。その場合、制御ユニットは航空機のペダルに加わる作動力による航空機のペダルの作動に応じて変位する装置の角変位を示す出力を生成する。
【0026】
本発明の方法は、さらに電動モータ、例えばウォームギアを介して力伝達レバーに接続されるリニア直流モータによって、航空機のペダルに作動力を加えるフォースアプリケーションロッドに接続される力伝達レバーを駆動する工程を有することが好ましい。
【0027】
航空機のペダルの作動中にその航空機のペダルに加わる作動力はフォースアプリケーションロッドに接続される力センサによって感知されることができる。
【0028】
航空機のブレーキの作動をテストする場合、変位感知装置は角変位、即ち航空機のペダルの作動に応じた航空機のペダルの傾斜を感知することが好ましい。航空機のブレーキシステムがワイヤによるブレーキシステムである場合、航空機のペダルの作動に応じた航空機のペダルの変位はブレーキシステムの適切な運転のために重要なパラメータである。
【0029】
しかし、航空機の方向舵の作動をテストする場合、変位感知装置は航空機のペダルの作動に応じた航空機の方向舵の角変位を感知することが好ましい。航空機の方向舵システムが機械的なケーブルシステムである場合、航空機のペダルの作動に応じた実際の方向舵の変位は方向舵システムの適切な運転のために重要なパラメータである。
【0030】
本発明の方法は、さらに制御ユニットと力センサとの間で交換される信号を増幅する工程を有することができる。さらに、ペダル作動装置のコンポーネントへの電源は調整されることができる。
【0031】
制御ユニットと信号増幅電源調整装置との間で交換される信号はアナログ−デジタル変換器によって変換されることができる。
【0032】
航空機のペダルシステムのテストを行う際に得られるデータは制御ユニットに接続されるデータベースサーバのメモリ内に格納されることが好ましい。従って、制御ユニットのメモリ不良の場合にデータを失うリスクは最小限にされ得る。
【0033】
最後に、本発明の方法は、所定の作動力での変位感知装置によって感知される角変位値とその所定の作動力での予定通りの角変位値とを比較する工程を有することができる。さらに、所定の作動力での変位感知装置によって感知された角変位値と予定通りの角変位値との差が所定の値を超えた場合、警告信号が出力されることができる。
【0034】
特に、感知された最少及び/又は最大角変位値、及び/又は、感知された最少及び/又は最大作動力、及び/又は、感知された摩擦値、及び/又は、感知された対称性値はそれぞれの予定通りの値と比較されることができる。感知された値と予定通りの値との差が所定の値を超えた際に、警告信号が出力されることができる。
【0035】
詳細に上述されたテストは、航空機の最終組立中に、機長用ペダルのペアの両ペダルをブレーキペダルへ利用するために、及び副操縦士用ペダルのペアの両ペダルをブレーキペダルへ利用するために行われることができる。同様に、そのテストは、機長用ペダルのペアの両ペダルを方向舵ペダルへ利用するために、及び副操縦士用ペダルのペアの両ペダルを方向舵ペダルへ利用するために行われることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の航空機のペダルシステムをテストする装置の好ましい態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
ここで、本発明について、本発明の航空機のペダルシステムをテストする装置の好ましい態様を示す図1を参照しながら詳細に説明する。
【0038】
航空機のペダルシステム12をテストする装置10は、航空機のペダル12’、12’’を作動させるペダル作動装置14を有する。図1に示す航空機のペダルシステム12は2つの同一のペダルのペア12のうちの1つであり、第1のペダルのペア12は航空機の機長用に、第2のペダルのペア12は副操縦士用に航空機のコックピット内に設けられる。それぞれのペダルのペア12の右側ペダル12’’は右の航空機のブレーキ(不図示)を作動させ、及び航空機の方向舵13の動きを右に誘導する役目を果たす。それぞれのペダルのペア12の左側ペダル12’は左の航空機ブレーキ(不図示)を作動させ、及び航空機の方向舵13の動きを左に誘導する役目を果たす。その航空機のブレーキを作動させるため、それらのペダル12’、12’’は傾斜軸T周りに傾斜可能であるが、航空機の方向舵13の作動はそれらのペダル12’、12’’を前方、即ち、その航空機の前方先端に向かう方向に押すことによって成される。
【0039】
航空機のブレーキシステムはワイヤーによるブレーキシステム、即ち、例えばペダル作動力及び/又はペダル作動速度を示すペダルセンサ(不図示)からの信号がペダルセンサから受信された信号に従って電磁ブレーキ作動装置を制御する電子制御ユニットで処理される。反対に、航空機の方向舵13は、方向舵13の旋回運動をさせるためにペダルの作動力を方向舵ペダル13に伝達する機械的なケーブルシステム(不図示)によって駆動される。
【0040】
ペダル作動装置14にはウォームギア20を介して力伝達レバー18に接続されるリニア直流モータ16が設けられる。この力伝達レバー18は、基礎構造22に傾斜可能に取付けられ、この基礎構造22は航空機の構造コンポーネントに固定されるのに適合するものである。フォースアプリケーションロッド24は傾斜可能なその力伝達レバー18に接続され、電動モータ16によって起される作動力を航空機のペダル12’’へ加える役割を果たす。
【0041】
力センサ26は、ウォームギア20、力伝達レバー18、及びフォースアプリケーションロッド24を介して電動モータ16によって航空機のペダル12’’に加わる作動力を感知するためにフォースアプリケーションロッド24に取り付けられる。ペダルの変位感知装置28としての役割を果たす第1の電位差計はペダル作動装置14の傾斜可能な力伝達レバー18に取り付けられる。従って、このペダルの変位感知装置28は、航空機のペダル12’’へそれぞれの作動力を加えている状態でその航空機のペダル12’’の角変位に直接対応する力伝達レバー18の変位や傾斜角度を感知するのに適合する。方向舵の変位感知装置30としての役割を果たす第2の電位差計は航空機の方向舵13に直接取り付けられ、従って、航空機のペダル12’’へそれぞれの作動力を加えている状態でその航空機の方向舵13の角変位を直接測定する。
【0042】
ペダル作動装置14はラップトップコンピュータで構成される制御ユニット32に接続される。この制御ユニット32は、制御ユニット32にペダル作動装置14の電動モータ16へのそれぞれの制御信号を出力させる、制御ユニット32内で動くコンピュータプログラムに従って、ペダル作動装置14の電動モータ16を制御するのに適合する。この制御ユニット32によって提供される制御信号は、例えば、予定通りのペダル作動力や、ペダル作動速度などの様々なテストパラメータを定義した予め定められたテスト条件に基づいて選択される。
【0043】
制御ユニット32は、さらに力センサ26、ペダルの変位感知装置28、及び方向舵の変位感知装置30によって提供される信号を受信して処理するのに適合する。制御ユニット32と力センサ26との間で交換される信号は、信号増幅電源調整装置34によって増幅される。この信号増幅電源調整装置34は、さらに電動モータ16、力センサ26、及びペダルの変位感知装置28への電源を調整する役割を果たす。アナログ−デジタル変換器36は制御ユニット32と信号増幅電源調整装置34との間で交換される信号を変換するために設けられる。
【0044】
制御ユニット32は表示ユニット38を有し、プリンター(不図示)に接続される。さらに、この制御ユニット32はデータベースサーバ40に接続され、そのため、航空機のペダルシステムのテストを行っている間に制御ユニット32によって得られるデータはデータベースサーバ40のメモリ内に格納されることができる。
【0045】
航空機のブレーキペダル又は航空機の方向舵ペダルのテストを行うために、ペダル作動装置14の基礎構造22は航空機のコックピット内に配置されるフロアーパネルに固定される。その後、フォースアプリケーションロッド24は適切なクランプ装置によって航空機のペダル12’’に取り付けられる。ペダル12’’上の力を加える位置、即ち、フォースアプリケーションロッド24のペダル12’’への取り付け位置は、航空機のブレーキシステム又は航空機の方向舵システムのどちらがテストされるかによって選択される。航空機のブレーキシステムがテストされる場合、ペダル12’’上の力を加える位置は、ペダル作動装置14の運転によってペダル12’’が傾斜軸T周りに傾斜することを確実にするように選択される。反対に、方向舵のブレーキシステムがテストされる場合、ペダル12’’上の力を加える位置は、ペダル作動装置14の運動によって航空機の前方先端の方向にペダル12’’が直進運動することを確実にするように選択される。
【0046】
航空機のペダル12’’を作動させるために、ペダル作動装置14の電動モータ16は、ウォームギア20の長さを短くし、従って、前方方向、即ち航空機のペダル12’’に向かう方向へ力伝達レバー18が傾斜運動するように運転される。この力伝達レバー18の傾斜運動によって、電動モータ16の駆動力はフォースアプリケーションロッド24へ伝達され、よって航空機のペダル12’’に伝達される。この電動モータ16の運転は、制御ユニット32内で動くコンピュータプログラムの基準となる予め定義されたテストパラメータに従って、制御ユニット32によって制御される。
【0047】
航空機のペダル12’’の作動中に、ウォームギア20、力伝達レバー18、及びフォースアプリケーションロッド24を介して電動モータ16によって航空機のペダル12’’に加わる作動力は力センサ26によって感知される。この力センサ26はペダル12’’に加わる作動力を示す信号を制御ユニット32に提供し、力センサ26から制御ユニット32へ伝達される信号は信号増幅電源調整装置34によって増幅される。
【0048】
航空機のブレーキペダルのテストが行われる場合、制御ユニット32は、さらに、航空機のペダル12’’に作動力を加えている状態で、力伝達レバー18の変位又は傾斜角度、よって航空機のペダル12’’の角変位を示す、ペダルの変位感知装置28からの信号を受信する。しかし、航空機の方向舵ペダルのテストが行われる場合、制御ユニット32は、航空機のペダル12’’に作動力を加えている状態で、航空機の方向舵13の角変位を示す、方向舵の変位感知装置30からの信号を受信する。
【0049】
制御ユニット32は、ペダルの変位感知装置28と方向舵の変位感知装置30と同様に力センサ26によって提供される信号をそれぞれ処理し、航空機のペダル12’’に加わる作動力によって、航空機のペダル12’’及び方向舵13の角変位を示す出力をそれぞれ生成する。図1からも明らかなように、航空機のペダル12’’に加わる作動力と航空機のペダル12’’及び方向舵13それぞれの角変位との関係は、航空機のペダル12’’に加わる作動力による航空機のペダル12’’及び方向舵13それぞれの角変位のプロットを示す図の形式での制御ユニット32による出力である。その図は制御ユニット32の表示ユニット38上に表示され、制御ユニット32に接続して制御されるプリンターによって印刷される。
【0050】
この制御ユニット32は、さらに感知された最少及び最大角変位値、感知された最少及び最大作動力値、感知された摩擦値、及び感知された対称性値をそれぞれの予定通りの値と比較する。制御ユニット32は、感知された値と予定通りの値との差が所定のリミットを超えた際に、制御ユニット32の表示ユニット38上に色の付いたメッセージの形式で、警告信号を出力する。
【0051】
テスト実施中の制御ユニット32により得られるデータ、及び2つの所定の作動力値での航空機のペダル12’’と方向舵13それぞれの角変位値と、その2つの所定の作動力値でのそれぞれの予定通りの角変位値との間の上記比較の結果は、最終的にデータベースサーバ40のメモリ内に格納される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機のペダルシステム(12)をテストする装置(10)であって、
航空機のペダル(12’、12’’)を作動させるペダル作動装置(14)と、
前記航空機のペダル(12’、12’’)の作動中に、前記航空機のペダル(12’、12’’)に加わる作動力を感知し、該作動力を示す信号を提供する力センサ(26)と、
前記航空機のペダル(12’、12’’)の作動に応じて変位する航空機のブレーキシステムのコンポーネント(12’、12’’)の角変位を感知する第1の変位感知装置(28)と、
前記航空機のペダル(12’、12’’)の作動に応じて変位する航空機の方向舵システムのコンポーネントの角変位を感知する第2の変位感知装置(30)と、
前記航空機のペダル(12’、12’’)に加わる作動力による前記航空機のペダル(12’、12’’)の作動に応じて変位する前記航空機のブレーキシステムと前記航空機の方向舵システムのコンポーネント(12’、12’’、13)の角変位を示す出力を生成するように前記力センサ(26)と前記変位感知装置(28、30)の信号を処理するのに適合した制御ユニット(32)とを有するものであることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記ペダル作動装置(14)は、前記航空機のペダル(12’、12’’)に前記作動力を加えるフォースアプリケーションロッド(24)に接続する力伝達レバー(18)を駆動する電動モータ(16)を有するものであることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記航空機のペダル(12’、12’’)の作動中に、前記航空機のペダル(12’、12’’)に加わる作動力を感知する力センサ(26)は、前記フォースアプリケーションロッド(24)に接続されるものであることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記第1の変位感知装置(28)は前記航空機のペダル(12’、12’’)の作動に応じて、前記航空機のペダル(12’、12’’)の角変位を感知する装置であり、前記第2の変位感知装置(30)は前記航空機のペダル(12’、12’’)の作動に応じて、航空機の方向舵(13)の角変位を感知する装置であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
さらに、前記制御ユニット(32)と前記力センサ(14)との間で交換する信号を増幅するのに、かつ、前記ペダル作動装置(14)のコンポーネント(16、26、28)への電源を調整するのに適合した信号増幅電源調整装置(34)を有するものであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
さらに、前記制御ユニット(32)と前記信号増幅電源調整装置(34)との間で交換する信号を変換するアナログーデジタル変換器(36)を有するものであることを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記制御ユニット(32)はデータベースサーバー(40)と接続するものである、及び/又は、前記制御ユニット(32)は、感知された最少及び/又は最大角変位値、及び/又は、感知された最少及び/又は最大作動力、及び/又は、感知された摩擦値、及び/又は、感知された対称性値をそれぞれの予定通りの値と比較するのに、かつ、感知された値と予定通りの値との差が所定の値を超えた際に、警告信号を出力するのに適合したものであることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
航空機のペダルシステム(12)をテストする方法であって、
ペダル作動装置(14)によって、航空機のペダル(12’、12’’)を作動させる工程と、
力センサ(26)によって、前記航空機のペダル(12’、12’’)の作動中に、前記航空機のペダル(12’、12’’)に加わる作動力を感知し、該作動力を示す信号を提供する工程と、
第1の変位感知装置(28)によって、前記航空機のペダル(12’、12’’)の作動に応じて変位する航空機のブレーキシステムのコンポーネント(12’、12’’)の角変位を感知する工程と、
第2の変位感知装置(30)によって、前記航空機のペダル(12’、12’’)の作動に応じて変位する航空機の方向舵システムのコンポーネント(13)の角変位を感知する工程と、
制御ユニット(32)によって、前記航空機のペダル(12’、12’’)に加わる作動力による前記航空機のペダル(12’、12’’)の作動に応じて変位する前記航空機のブレーキシステムと前記航空機の方向舵システムのコンポーネント(12’、12’’、13)の角変位を示す出力を生成するように、前記力センサ(26)と前記変位感知装置(28、30)の信号を処理する工程とを有する方法。
【請求項9】
さらに、電動モータによって、前記航空機のペダル(12’、12’’)に前記作動力を加えるフォースアプリケーションロッド(24)に接続される力伝達レバー(18)を駆動する工程を有することを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
さらに、前記フォースアプリケーションロッド(24)に接続される力センサ(26)によって、前記航空機のペダル(12’、12’’)の作動中に、前記航空機のペダル(12’、12’’)に加わる作動力を感知する工程を有することを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の変位感知装置(28)は前記航空機のペダル(12’、12’’)の作動に応じて、前記航空機のペダル(12’、12’’)の角変位を感知し、前記第2の変位感知装置(30)は前記航空機のペダル(12’、12’’)の作動に応じて、航空機の方向舵(13)の角変位を感知することを特徴とする請求項8乃至請求項10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
さらに、前記制御ユニット(32)と前記力センサ(26)との間で交換する信号を増幅する工程、及び/又は、前記ペダル作動装置(14)のコンポーネント(16、26、28)への電源を調整する工程を有することを特徴とする請求項8乃至請求項11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
さらに、アナログーデジタル変換器(36)によって、前記制御ユニット(32)と信号増幅電源調整装置(34)との間で交換する信号を変換する工程を有することを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
さらに、航空機のペダルシステム(12)のテストを行う際に得られるデータを前記制御ユニット(32)に接続するデータベースサーバー(40)のメモリ内に格納する工程を有することを特徴とする請求項8乃至請求項13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
さらに、感知された最少及び/又は最大角変位値、及び/又は、感知された最少及び/又は最大作動力、及び/又は、感知された摩擦値、及び/又は、感知された対称性値をそれぞれの予定通りの値と比較し、感知された値と予定通りの値との差が所定の値を超えた際に、警告信号を出力する工程を有することを特徴とする請求項8乃至請求項14のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2011−504835(P2011−504835A)
【公表日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−535229(P2010−535229)
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際出願番号】PCT/EP2007/010378
【国際公開番号】WO2009/068064
【国際公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(504467484)エアバス・オペレーションズ・ゲーエムベーハー (268)