説明

航空機の対気速度センサシステム

【課題】異なる有利な実施形態により、航空機の対気速度を識別する装置及び方法を提供する。
【解決手段】この装置は、複数のピトー静圧管108からなる。複数のピトー静圧管は第1データを生成する。この装置はまた、複数の迎え角センサシステム110からなる。複数の迎え角センサシステムは第2データを生成する。この装置はまた、複数の光検出及び測距センサ112からなる。光検出及び測距センサは第3データを生成する。この装置はまた、複数のピトー静圧管から生成された第1データ、複数の迎え角センサシステムから生成された第2データ、及び複数の光検出及び測距センサから生成された第3データのエラーを検出する信号統合システムからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、センサシステムに関するものであり、さらに具体的には、対気速度センサシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
航空機のセンサシステムは、パイロットに飛行データを提供する。これらのセンサシステムは、パイロットに高度、対気速度、機首方位、ピッチ等のデータを提供し、これによりパイロットが航空機を操作することが可能になる。例えば、パイロットは機首方位データを使用して、航空機が、いつ航空機の目的地の方向に飛行しているかを判断することができる。
【0003】
センサシステムはまた、航空機に搭載されたシステムを制御するコンピュータシステムによっても使用される。例えば、航空機搭載のコンピュータシステムが対気速度を使用して、航空機の速度及び安定性を制御することができる。
【0004】
真対気速度とは、航空機が飛行している大気に対する航空機の実際の速度である。較正対気速度とは、航空機搭載のセンサシステムによって識別された航空機の速度である。較正対気速度は真対気速度と、測定の時点で航空機の周囲の空気の圧縮性及び密度の影響に関して修正されていない点が異なる。本明細書で使用されるように、較正対気速度は対気速度と呼称される。
【0005】
対気速度は、航空機のセンサシステムによって行われる測定の一例である。対気速度を測定するために使用されるセンサシステムにおいては、異なる種類のセンサを使用することが可能である。例えば、ピトー静圧管を使用して対気速度を測定することができる。ピトー静圧管は、航空機周囲の環境における全圧及び静圧を識別することによって対気速度を測定する。
【0006】
異なる状況によって、センサが測定する対気速度の精度が変化し得る。例えば、対気速度センサの内部又は周囲に氷が蓄積する可能性がある。この氷により、対気速度センサが航空機の対気速度を所望の精度よりも劣る精度で表示し得る。
【0007】
航空機の対気速度の検出精度が下がると、センサシステムによってパイロット及び/又は機内のコンピュータシステムへ表示されたデータにより、航空機の性能が低下する可能性がある。例えば、対気速度及び他の情報を使用して航空機の速度を許容範囲に維持することができる。対気速度が所望したような精度でない場合、航空機の制御に障害が起きる可能性がある。
【0008】
したがって、上述した一以上の問題だけでなく、場合により他の問題も考慮に入れた方法及び装置を有することは有利である。
【発明の概要】
【0009】
異なる有利な実施形態により、航空機の対気速度を識別する装置及び方法が提供される。ある有利な実施形態では、装置が提供される。この装置は複数のピトー静圧管からなる。複数のピトー静圧管は各々第1種類のセンサである。複数のピトー静圧管は第1データを生成する。この装置はまた、複数の迎え角センサシステムから成る。複数の迎え角センサシステムは各々第2種類のセンサであって、第2データを生成する。この装置はまた、複数の光検出及び測距センサから成る。複数の光検出及び測距センサはそれぞれ、第3種類のセンサであり、第3データを生成する。この装置はまた、複数のピトー静圧管によって生成される第1データ、複数の迎え角センサシステムによって生成される第2データ、及び複数の光検出及び測距センサによって生成される第3データのエラーを検出する信号統合システムから成る。
【0010】
別の有利な実施形態では、装置は、複数のピトー静圧管、複数の迎え角センサシステム、複数のベンチュリ管、及び信号統合システムから成る。複数のピトー静圧管は各々第1種類のセンサである。複数のピトー静圧管は第1データを生成する。複数の迎え角センサシステムは各々第2種類のセンサであって、第2データを生成する。複数のベンチュリ管はそれぞれ第3種類のセンサであり、第3データを生成する。信号統合システムは、複数のピトー静圧管によって生成される第1データ、複数の迎え角センサシステムによって生成される第2データ、及び複数のベンチュリ管によって生成される第3データのエラーを検出する。
【0011】
さらに別の有利な実施形態では、航空機の対気速度を識別する方法が提供されている。複数のピトー静圧管は、航空機の周囲環境の第1全圧値と第1静圧値を生成する。複数の光検出及び測距センサは、航空機の周囲環境の第2全圧値及び第2静圧値を生成する。複数の迎え角センサシステムは、航空機の周囲環境の第3全圧値及び第3静圧値を生成する。第1全圧値、第1静圧値、第2全圧値、第2静圧値、第3全圧値、及び第3静圧値のエラーは統合されて、統合全圧値及び統合静圧値を形成する。航空機の対気速度は、統合全圧値及び統合静圧値から識別される。
【0012】
さらに別の有利な実施形態では装置が開示されており、この装置は:
各々が第1種類のセンサであり、第1データを生成する複数のピトー静圧管;
各々が第2種類のセンサであり、第2データを生成する複数の迎え角センサシステム;
各々が第3種類のセンサであり、第3データを生成する複数のベンチュリ管;ならびに
複数のピトー静圧管によって生成された第1データ、複数の迎え角センサシステムによって生成された第2データ、及び複数のベンチュリ管によって生成された第3データのエラーを検出する信号統合システム
を備える。
【0013】
ここで、信号統合システムは、第1データ、第2データ、及び第3データのエラーを検出するために、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体、及びコンピュータによって読み取り可能な記憶媒体に記憶されたコンピュータによって読み取り可能なプログラムコードを含む。
【0014】
さらに、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体に記憶されたコンピュータによって読み取り可能なプログラムコードを実行する処理装置を含む。
【0015】
さらに、複数のピトー静圧管が航空機の胴体前部において使用され、複数のベンチュリ管が胴体の翼フェアリング前部において使用される航空機を含む。
【0016】
ここで、第1データは航空機の周囲環境の第1全圧値と第1静圧値を含み、第2データは航空機の周囲環境の第2全圧値と第2静圧値を含み、第3データは航空機の周囲環境の第3全圧値と第3静圧値を含む。
【0017】
ここで、複数のピトー静圧管によって生成された第1データ、複数の迎え角センサシステムによって生成された第2データ、及び複数のベンチュリ管によって生成された第3データのエラーを修正するように構成されている信号統合システムは、第1全圧値、第2全圧値、及び第3全圧値を使用してその環境の第4全圧値を識別し、第1静圧値、第2静圧値、及び第3静圧値を使用して、航空機の周囲環境の第4静圧値を識別する。
【0018】
第1全圧値、第2全圧値、及び第3全圧値を使用して、その環境の第4全圧値を識別するにあたって、信号統合システムは、第1全圧値、第2全圧値、及び第3全圧値から、第1中間値を識別して、その環境の統合全圧値を形成する。
【0019】
ここで、第1静圧値、第2静圧値、及び第3静圧値を使用して、その環境の第4静圧値を識別するように構成されている信号統合システムは、第1静圧値、第2静圧値、及び第3静圧値から第2中間値を識別して、その環境の統合静圧値を形成する。
【0020】
ここで信号統合システムはさらに、第1中間値及び第2中間値から航空機の対気速度を識別する。
【0021】
特徴、機能及び利点は、本発明の様々な実施形態において個別に達成することができる、または下記の説明及び図面を参照することによってさらに詳細を理解することができる更に別の実施形態と組み合わせることができる。
【0022】
有利な実施形態を特徴づけていると思われる新規特性は添付の請求項に記載されている。有利な実施形態だけでなく、使用の好ましいモード、更なる目的及びその利点はしかしながら、添付の図面と併せて読むときに、本発明の有利な実施形態の下記の詳細説明を参照することによって最適に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は有利な実施形態による航空機の図である。
【図2】図2は有利な実施形態によるデータ処理システムの図である。
【図3】図3は有利な実施形態による対気速度監視環境の図である。
【図4】図4は有利な実施形態によるベンチュリ管の図である。
【図5】図5は有利な実施形態による信号統合システムの図である。
【図6】図6は有利な実施形態による全圧値の図である。
【図7】図7は有利な実施形態による全圧値の第2の図である。
【図8】図8は有利な実施形態による航空機の対気速度を識別するプロセスのフロー図である。
【図9】図9は有利な実施形態によるエラーを検出するプロセスのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
ここで図面、特に図1を選択して見てみると、有利な実施形態による航空機が図示されている。航空機100は、有利な実施形態を実施することができる航空機の一例である。
【0025】
航空機100は、胴体部102と尾部104からできている。胴体部102は、航空機に乗っている乗客と乗務員を収容する航空機100の本体である。胴体部102はまた、飛行データ処理システム114も含む。
【0026】
胴体部102はまた、前部106も含む。前部106は翼116の前に位置する胴体部102の一領域である。前部106は、操縦室118及び飛行データ処理システム114を含む。
【0027】
前部106はまた、対気速度センサシステム108、110、112、及び120も含む。これらの実施例では、対気速度センサシステム108は、ピトー静圧管から成り、対気速度センサシステム110は、迎え角センサから成る。対気速度センサシステム112は、これらの実施形態では光検出及び測距(LIDAR)センサから成る。対気速度センサシステム120は、これらの実施例ではベンチュリ管から成る。
【0028】
対気速度センサシステム110は、航空機100の迎え角、全地球測位システムセンサ122からの全地球測位システムデータ及び慣性センサシステム126からの慣性システムデータを使用して、航空機100の対気速度を識別する。航空機100の迎え角は、航空機100の長手方向の主軸と、局所的な空気流量との間の角度である。全地球測位システムデータは、航空機100の高度を含む。慣性センサシステム126は、複数のシューラー同調慣性基準装置である。例えば、シューラー同調慣性基準装置を民間の輸送機に使用することができる。さらに、慣性センサシステム126はレーザー・ジャイロ慣性基準装置から成る。
【0029】
対気速度センサシステム110は、迎え角、全地球測位システム122からの全地球測位データ、及び慣性システムデータを組み合わせて、航空機100の周囲環境の静圧及び全圧を識別する。ある有利な実施形態では、揚力モデルを使用して、静圧及び全圧は、迎え角、全地球測位システム122からの全地球測位データ、及び慣性システムデータから識別される。揚力モデルの実施例は、参照することによって本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2010/0100260として発行された、出願中の米国特許出願第12/255233号明細書に説明されている。
【0030】
対気速度センサシステム110は、ピトー静圧管を使用して航空機100の対気速度を識別する。ピトー静圧管は、航空機100の周囲環境の静圧及び全圧を測定することによって対気速度を識別する。ピトー静圧管は、飛行方向を指し、管の先端で空気のよどみ点(全)圧を、そして管側部に沿って大気(静)圧を測定する片持ち管から成る。あるいは、ピトー静圧管はピトー圧のみを測定し、静圧は、航空機の胴体前部の側面に沿ってフラッシュポートによって測定することができる。対気速度センサシステム110は、航空機100の周囲環境の静圧及び全圧を識別する。
【0031】
ある有利な実施形態では、対気速度データシステム112が設けられ、対気速度センサシステム120は設置されていない。しかしながら、他の有利な実施形態では、対気速度データシステム112と対気速度センサシステム120の両方が設置されている。
【0032】
対気速度センサシステム120は、ベンチュリ管を使用して航空機100の対気速度を識別する。ベンチュリ管は、少なくとも2つの部分を有するパイプであり、各部分は異なる直径を有する。空気は、航空機100が空気中を移動する際に対気速度センサシステム120に進入する。空気は一つの部分に流れ込み、それから別の部分に流れ込む。気圧はパイプの各部分において異なる。
【0033】
2つの部分の流体の圧力差と、航空機100の周囲環境の静圧を識別することができる。静圧は、空気がパイプに進入するポイントにおいて識別することができる。圧力差は、ベンチュリ管の両方の部分の気圧を測定し、一つの部分の圧力を他の部分の圧力から引き算することによって測定することができる。圧力差を利用して、航空機100の周囲環境の全圧を取得することができる。
【0034】
対気速度データシステム112は、尾部104において使用される。対気速度データシステム112は、これらの実施例では光検出及び測距(LIDAR)センサから成る。対気速度データシステム112はレーザーを使用して、ある時間帯に航空機100が移動した距離を監視する。距離と時間帯を使用して航空機100の対気速度が識別される。
【0035】
飛行データシステム114は、対気速度センサシステム108、110、及び120から全圧及び静圧を受信する。
【0036】
ここで、有利な実施形態によるデータ処理システムを示す図2を参照する。データ処理システム200を使用して、図3のコンピュータシステム308を実行することができる。データ処理システム200を航空機データシステムとして使用して、図1の航空機100等の航空機の対気速度を識別することができる。
【0037】
この有利な実施形態では、データ処理システム200は、プロセッサ装置204、メモリ206、固定記憶装置208、通信装置210、入力/出力(I/O)装置212、及びディスプレイ214間の通信を可能にする通信ファブリック202を含む。
【0038】
プロセッサ装置204は、メモリ206にロード可能なソフトウェアの命令を実行する機能を果す。プロセッサ装置204は、特定の実行形態によって一又は複数のプロセッサのセット、あるいはマルチプロセッサコアであってよい。さらに、プロセッサ装置204は、単一チップ上に二次プロセッサを有する基本プロセッサが設置された一又は複数の異種のプロセッサシステムを使用して実行可能である。別の有利な実施例として、プロセッサ装置204は、同じ種類の複数のプロセッサを含む対称的なマルチプロセッサシステムであってよい。
【0039】
メモリ206及び固定記憶装置208は、記憶デバイス216の実施例である。記憶デバイスは、例えば非限定的に、データ、関数形式のプログラムコード、及び/又は好適な他の一時的な及び/又は固定の情報等の情報を記憶することができる全てのハードウェアである。メモリ206はこれらの実施例では、例えばランダムアクセスメモリ、又は他の任意の好適な揮発性又は非揮発性記憶デバイスであってよい。固定記憶装置208は特定の実行形態によって様々な形態を取ることができる。例えば、固定記憶装置208は一又は複数のコンポーネント又はデバイスを含むことができる。例えば、固定記憶装置208はハードドライブ、フラッシュメモリ、再書込み可能な光ディスク、再書込み可能な磁気テープ、又は上記の幾つかの組合せであってよい。固定記憶装置208によって使用される媒体は、取外し可能であってよい。例えば、取外し可能なハードドライブを固定記憶装置208に使用することができる。
【0040】
通信装置210はこれらの実施例では、他のデータ処理システム又はデバイスとの通信を提供する。これらの実施例では、通信装置210はネットワーク・インターフェース・カードである。通信装置210は、有線及び無線通信リンクのいずれか、あるいは両方の使用を介して通信を提供することができる。
【0041】
入力/出力装置212は、データ処理システム200に接続可能なほかのデバイスとのデータの入力及び出力を可能にする。例えば、入力/出力装置212は、キーボード、マウス、及び/又は他の幾つかの好適な入力デバイスを介してユーザ入力の接続部を提供することができる。さらに、入力/出力装置212は出力をプリンタに送ることができる。ディスプレイ214は、ユーザに情報を表示する機構を提供する。
【0042】
オペレーティングシステム、アプリケーション、及び/又はプログラムの命令は、記憶デバイス216に位置していてよく、記憶デバイス216は通信ファブリック202を介してプロセッサ装置204と連通している。これらの有利な実施形態では、命令は固定記憶装置208において関数形式となっている。これらの命令をメモリ206にロードしてプロセッサ装置204によって実行することができる。異なる実施形態の処理は、例えばメモリ206等のメモリに位置していてよい、コンピュータによって実行される命令を使用してプロセッサ装置204によって実施することができる。
【0043】
これらの命令は、プロセッサ装置204のプロセッサによって読み取り及び実行可能なプログラムコード、コンピュータが使用可能なプログラムコード、又はコンピュータによって読み取り可能なプログラムコードと呼ばれる。プログラムコードは、異なる実施形態では、例えばメモリ206又は固定記憶装置208等の、異なる物理的な又はコンピュータによって読み取り可能な記憶媒体上に具現化することができる。
【0044】
プログラムコード218は、関数形式でコンピュータによって読み取り可能な媒体220に位置し、コンピュータによって読み取り可能な媒体220は選択的に取外し可能であり、プロセッサ装置204によって実行するために、データ処理システム200にロードする又は転送することができる。プログラムコード218及びコンピュータによって読み取り可能な媒体220により、コンピュータプログラム製品222が形成される。ある実施例では、コンピュータによって読み取り可能な媒体220は、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体224又はコンピュータによって読み取り可能な信号媒体226であってよい。コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体224は例えば、固定記憶装置208の一部である、例えばハードドライブ等の記憶デバイスに転送するために、固定記憶装置208の一部であるドライブ又は他のデバイスに挿入される、又は配置される光又は磁気ディスクを含むことができる。コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体224はまた、データ処理システム200に接続される、例えばハードドライブ、サムドライブ、又はフラッシュメモリ等の固定記憶装置の形態を取ることもできる。ある場合には、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体224はデータ処理システム200から取外し可能でなくてもよい。
【0045】
あるいは、プログラムコード218はコンピュータによって読み取り可能な信号媒体226を使用してデータ処理システム200に転送することができる。コンピュータによって読み取り可能な信号媒体226は例えば、プログラムコード218を含む伝播されたデータ信号であってよい。例えば、コンピュータによって読み取り可能な信号媒体226は、電磁気信号、光信号、及び/又は他の任意の好適な種類の信号であってよい。これらの信号は例えば、無線通信リンク、光ファイバーケーブル、同軸ケーブル、電線、及び/又は他の任意の好適な種類の通信リンク等の通信リンク上で送信することができる。言い換えれば、通信リンク及び/又は接続部は有利な実施形態において物理的なもの又は無線のものであってよい。
【0046】
ある有利な実施形態では、プログラムコード218を、コンピュータによって読み取り可能な信号媒体226を介して別のデバイス又はデータ処理システムから固定記憶装置208までネットワーク上でダウンロードして、データ処理システム200内部で使用することができる。例えば、サーバデータ処理システムのコンピュータによって読み取り可能な記憶媒体に記憶されたプログラムコードを、サーバからデータ処理システム200へネットワーク上でダウンロードすることができる。プログラムコード218を提供するデータ処理システムはサーバコンピュータ、クライアントコンピュータ、又はプログラムコード218を記憶して送信することができる他の幾つかのデバイスであってよい。
【0047】
データ処理システム200において記載された異なるコンポーネントは、アーキテクチャ制限を課すものではなく、異なる実施形態を実行することが可能である。異なる有利な実施形態は、データ処理システム200において記載されたコンポーネントに追加の又はその代わりのコンポーネントを含むデータ処理システムにおいて実行可能である。図2に示す他のコンポーネントは、記載した有利な実施例から変更することができる。異なる実施形態は、プログラムコードを実行することができる全てのハードウェアデバイス又はシステムを使用して実行することができる。一実施例として、データ処理システム200は無機コンポーネントに統合された有機コンポーネントを含むことができ、及び/又は全体的に人間以外の有機コンポーネントから成っていてよい。例えば、記憶デバイスは有機半導体を含むことができる。
【0048】
別の実施例として、データ処理システム200の記憶デバイスは、データを記憶可能な任意のハードウェア装置である。メモリ206、固定記憶装置208、及びコンピュータによって読み取り可能な媒体220は、物理的な形の記憶デバイスの例である。
【0049】
別の実施例では、バスシステムを使用して通信ファブリック202を実行することができ、バスシステムは例えばシステムバス又は入力/出力バス等の一又は複数のバスを含むことができる。当然ながら、バスシステムはバスシステム付属の異なるコンポーネント又はデバイス間でデータを転送させる好適な任意の種類のアーキテクチャを使用して実行することができる。さらに、通信装置は例えばモデム又はネットワークアダプタ等の、データの送受信に使用される一又は複数のデバイスを含むことができる。さらに、メモリは例えば、通信ファブリック202に設置され得るインターフェース及びメモリコントローラハブに含まれるもの等のメモリ206又はキャッシュであってよい。
【0050】
異なる有利な実施形態は、多くの異なる考慮事項を認識し、考慮に入れている。例えば、異なる有利な実施形態は、同相の事象が原因で、対気速度を判断するのに使用される一を超えるセンサが不整合なデータを表示する可能性があることを認識し、考慮に入れている。同相の事象とは、同じ種類の一を超えるセンサに悪影響を与える事象のことである。例えば、氷の蓄積は複数のピトー静圧管に同時に悪影響を与える可能性がある。
【0051】
異なる有利な実施形態は、ある種類のセンサは、他の種類のセンサのように、同じ同相の事象によって影響を受けにくいことを認識する。センサは、センサの設計及び/又はセンサの位置によって同じ事象からの影響を受けない可能性がある。例えば、氷は、対気速度センサの位置又はセンサの設計が氷の影響を受けないため、第2の種類又は第3の種類の対気速度センサに影響を与えない可能性がある。
【0052】
さらに、異なる有利な実施形態は、2つの種類のセンサから受信したデータが不整合である場合に、2つの異なる種類のセンサシステムから対気速度及び/又は気圧データを受信したときに、対気速度及び/又は気圧データを受信する航空機のデータ統合システムがどの種類の対気速度データセンサシステムが正確な値を表示しているかを識別することができないことを認識する。
【0053】
異なる有利な実施形態は、少なくとも3つの異なる種類の対気速度データセンサシステムから気圧及び/又は対気速度データを受信したときに、値を他の2つの種類のセンサを使用して取得した値と比較することによって、航空機のデータシステムがどの単一種類のセンサが不整合な値を表示しているかを識別することができることを認識する。
【0054】
したがって、異なる有利な実施形態は、航空機の対気速度を識別する装置及び方法を提供する。ある有利な実施形態では、一の装置が提供されている。この装置は複数のピトー静圧管からなる。複数のピトー静圧管の各々は第1の種類のセンサである。複数のピトー静圧管は第1データを生成する。この装置はまた、複数の迎え角センサシステムから成る複数の迎え角センサシステムの各々は第2の種類のセンサであり、複数の迎え角センサシステムは第2データを生成する。この装置はまた、複数の光検出及び測距センサからなる。この複数の光検出及び測距センサは第3データを生成する。この装置はまた、複数のピトー静圧管によって生成された第1データと、複数の迎え角センサシステムによって生成された第2データと、複数の光検出及び測距センサによって生成された第3データのエラーを検出する信号統合システムからなる。
【0055】
別の有利な実施形態では、装置は複数のピトー静圧管、複数の迎え角センサシステム、複数のベンチュリ管、及び信号統合システムからなる。複数のピトー静圧管の各々は第1の種類のセンサである。複数のピトー静圧管は第1データを生成する。複数の迎え角センサシステムの各々は第2の種類のセンサであり、複数の迎え角センサシステムは第2データを生成する。複数のベンチュリ管の各々は第3の種類のセンサであり、複数のベンチュリ管は第3データを生成する。信号統合システムは、複数のピトー静圧管によって生成された第1データと、複数の迎え角センサシステムによって生成された第2データと、複数のベンチュリ管によって生成された第3データのエラーを検出する。
【0056】
さらに別の有利な実施形態では、航空機の対気速度を識別する方法が提供されている。複数のピトー静圧管は、航空機の周囲環境の第1全圧値及び第1静圧値を生成する。複数の光検出及び測距センサは、航空機の周囲環境の第2全圧値及び第2静圧値を生成する。複数の迎え角センサシステムは、航空機の周囲環境の第3全圧値及び第3静圧値を生成する。第1全圧値、第1静圧値、第2全圧値、第2静圧値、第3全圧値、及び第3静圧値は統合されて、統合全圧値及び統合静圧値を形成する。航空機の対気速度は、統合全圧値及び統合静圧値から識別される。
【0057】
ここで、有利な実施形態による対気速度の監視環境を示す図3を参照する。対気速度の監視環境300を使用して、図1の航空機100の対気速度を監視することができる。
【0058】
対気速度の監視環境300は、環境302を含む。環境302は、航空機304周囲の物理的な領域である。図1の航空機100は、航空機304の一例である。航空機304にはセンサシステム306とコンピュータシステム308が搭載されている。これらの実施例では、コンピュータシステム308は航空機304の内部に位置しており、センサシステム306は航空機304の外側に位置している。
【0059】
センサシステム306は、航空機304の対気速度310を識別するために、コンピュータシステム308によって使用される。センサシステム306はセンサ種類320、322、324、及び326のセンサからなる。センサ種類320、322、324及び326は異なる種類のセンサであるため、一つの種類のセンサに不整合なデータを生成させるような事象によって、他の種類のセンサが不整合なデータを生成することはない。
【0060】
これらの実施例では、センサ種類320は複数のピトー静圧管312であり、センサ種類322は複数の迎え角センサシステム314であり、センサ種類324は複数の光検出及び測距センサ316であり、センサ種類326は複数のベンチュリ管318である。ある有利な実施形態では、複数の光検出及び測距センサ316が設置され、複数のベンチュリ管318は設置されていないことを注記すべきである。同様に、他の有利な実施形態では、複数のベンチュリ管318が設置され、複数の光検出及び測距センサ316は設置されていない。
【0061】
複数のピトー静圧管312は、航空機304の前部の移動方向に向いた管である。航空機304が移動している間、空気は複数のピトー静圧管312に作用する。航空機304の速度が上がると、空気により複数のピトー静圧管312の全圧が増加する。複数のピトー静圧管312はデータ328を生成する。これらの実施例では、データ328は全圧値330及び静圧値332からなる。全圧値330は、航空機304が移動した結果得られる、航空機304周囲の空気の全圧の値である。静圧値332は環境302の大気の静圧の値である。
【0062】
静圧及び全圧は、下記の圧縮性流のベルノーイ方程式を使用して航空機100の対気速度を識別するのに使用される。
=CSO(5((P−P)/PSO+1)2/7−1))1/2
この式において、Pは航空機100の周囲環境の全圧であり、Pは航空機100の周囲環境の静圧であり、PSOは海水位における標準日静圧であり、CSOは海水位における音速であり、標準日とは、温度、圧力、及び密度を高度の関数として示す一連の大気データ表を説明するのに使用される用語であり、Vは航空機100の較正対気速度である。
【0063】
複数のピトー静圧管312は胴体336の前部334に位置している。胴体336は、図1の胴体部102の例示の実行形態である。
【0064】
複数の迎え角センサシステム314は航空機304の迎え角を測定する。迎え角とは、気流の方向に対する、航空機304の長手方向の主軸の角度である。迎え角センサシステム314はデータ338を生成する。これらの実施例では、迎え角センサシステム314は、迎え角翼センサ344、全地球測位システム(GPS)受信器346によって識別された高度、及び慣性センサシステム378からの慣性データを使用して、統合全圧値340及び統合静圧値342を生成する。データ338、慣性センサシステム378からの慣性データ、及び全地球測位システム受信器346によって識別された高度は、統合全圧値340の航空機揚力モデルを解くのに使用される。全圧及び静圧を識別するために解かれ得る揚力モデルの一例は下記のようである。


上記式において、Cは揚力係数であり、CL0は迎え角がゼロに等しいときの揚力係数であり、△Cは高揚力及び可動面によって発生した揚力係数の変化であり、CLαはアルファの係数としての揚力係数の勾配であり、αは航空機304の迎え角であり、Wは航空機304の総重量であり、nは航空機304の荷重倍数であり、q_barは動圧であり、Sは航空機304の翼のリファレンス領域である。
【0065】
可動面の例は、昇降舵、水平安定板、補助翼、方向舵、トリム・タブ、スポイラー、フラップ、スラット、及び他の可動面を含む。この揚力モデルは、これらの実施例では単純な揚力モデルである。しかしながら、他の有利な実施形態では、さらに複雑な揚力モデルを使用することができる。複雑な揚力モデルは単純な揚力モデルよりもさらに数学的な特徴を含む。例えば、複雑な揚力モデルは、単純な揚力モデルにはない追加的な数学変数、演算、関数を含むことができる。
【0066】
航空機の揚力モデルの結果は、全圧及び静圧を算出したものである。参照することによって本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2010/0100260として発行された、出願中の米国特許出願第12/255233号明細書に記載されている揚力モデルの一実施例における迎え角翼センサ344、全地球測位システム(GPS)受信器346によって識別された高度、及び慣性センサシステム378からの慣性データを使用して、統合全圧値340及び統合静圧値342が識別される。
【0067】
全地球測位システム受信器346は、航空機304の平均海水位からの高度348を識別する。複数の迎え角センサシステム314は、平均海水位からの高度348を使用して、統合静圧352を生成する。統合静圧352は、平均海水位からの高度348での環境302の静圧値342の近似値である。静圧値342は、これらの実施例では、統合静圧352の値に設定されている。
【0068】
複数の迎え角センサシステム314はまた、全圧値340を生成する。複数の迎え角センサシステム314は航空機304の総重量と、航空機304の慣性データを使用して、統合全圧354を生成する。統合全圧354はこれらの実施例では全圧値340として使用される。
【0069】
複数の光検出及び測距センサ316(LIDAR)は、一以上のレーザーを使用してデータ356を生成する。データ356は、航空機304の対気速度からなる。光検出及び測距センサ316は、一以上のレーザーを使用してある時間間隔の間に移動した距離を識別することによってデータ356を生成する。ある有利な実施形態では、光検出及び測距センサ316は、気団の空気分子からのレイリー後方散乱及び/又はエーロゾル粒子からのミー後方散乱からのドップラーシフトを測定することによって、航空機の真の対気速度を測定する。光検出及び測距センサ316はまた、レイリー後方散乱からの空気の大気温度及び大気圧も測定する。これらのデータから、複数の光検出及び測距センサ316は、航空機304の較正対気速度及び航空機の環境302の全圧と静圧を計算する。
【0070】
ある有利な実施形態では、光検出及び測距センサは後方を観察する方向に向いていてよい。したがって、光検出及び測距センサに氷や大きな雹が接触する可能性が減る。他の有利な実施形態では、光検出及び測距センサはそれぞれ、移動方向ではない方向に沿って、複数の測定を行うことができるが、これらの測定から、移動方向への速度の複数のコンポーネントを識別することによって、対気速度を計算することができる。
【0071】
さらに別の有利な実施形態では、光検出及び測距センサは航空機自体が起した局所的な気流擾乱の領域外の離れたところで対気速度を測定することができる。他の有利な実施形態では、光検出及び測距センサは、航空機から非常に短い距離、局所的な気流擾乱の領域内において測定を行うことができる。上記測定は後で局所的な気流の影響について修正される。
【0072】
ある有利な実施形態では、複数のベンチュリ管318がセンサシステム306に設置されており、複数の光検出及び測距センサ316は設置されていない。複数のベンチュリ管318は、各々が少なくとも2つの部分を有する多数のパイプであり、各パイプの各部分は異なる直径を有する。航空機304が空中を移動すると、複数のベンチュリ管318に空気が進入する。空気は一つの部分に流れ込み、それから他の部分に流れ込む。空気はパイプの各部分において異なる圧力を有する。
【0073】
2つの部分の流体管の圧力差と、航空機304の周囲環境302の静圧358を識別することができる。静圧値358は、空気がパイプに入るポイントにおいて識別することができる。圧力差は、ベンチュリ管の両方の部分の圧力を測定し、一つの部分の圧力を他の部分の圧力から引き算することによって測定することができる。ある有利な実施形態では、複数のベンチュリ管318は、中央部分が吸気口部分よりも狭くなっている、つまり分岐/集束管であるベンチュリ管からなる。中央部分が吸気口部分よりも狭くなっているベンチュリ管に発生する小さい圧力差は、音速以下の高いマッハ数において良好に働くため有利であり、ほぼ全ての音速以下の速度において使用することができる。
【0074】
全圧値360は、航空機304の周囲環境302において生成される。複数のベンチュリ管318はデータ362を生成する。データ362はこれらの実施例では静圧値358及び全圧値360である。ある有利な実施形態では、複数のベンチュリ管318は翼フェアリング364の胴体336の前部に位置している。
【0075】
コンピュータシステム308は次に信号統合366を実行する。信号統合システム366は、データ328、データ338、データ356、及び/又はデータ362のエラー368を、統合全圧値370及び統合静圧値372を生成することによって検出する。一以上の事象が原因で一以上のセンサシステム306が不整合なデータを生成したために、データ328、データ338、データ356、及び/又はデータ362のエラーが見つかる可能性がある。
【0076】
例えば、複数のピトー静圧管312の吸気口において氷が蓄積する可能性があり、複数のピトー静圧管312が不整合な全圧値330及び/又は静圧値332を生成し得る。
【0077】
信号統合システム366は、統合全圧値380及び統合静圧値372を生成することによってエラー368を検出し、隔離する。統合静圧値372とは、静圧値332、342、及び358のうちの幾つか又は全ての値から生成された値である。これらの実施例では、統合静圧値372は静圧値332、342、及び358の中間値376である。
【0078】
同様に、統合全圧値380とは、全圧値332、全圧値340、及び全圧値360のうちの幾つか、又は全ての値から生成された値である。これらの実施例では、統合全圧値380は、全圧値332、340、及び360の中間値374である。
【0079】
一旦、統合全圧値380及び統合静圧値372が生成されると、信号統合システム366は対気速度310を生成する。これらの実施例では、対気速度310は航空機304の較正対気速度である。
【0080】
複数の光検出及び測距センサ316が設置されている有利な実施形態では、複数の光検出及び測距センサ316によって生成された対気速度が対気速度310と比較される。光検出及び測距センサ316によって生成された対気速度と対気速度310との差が一定量を超えると、対気速度310の値が変更され得る。例えば、対気速度310は、複数の光検出及び測距センサ316によって生成された対気速度との間の中間点に変更され得る。
【0081】
図3に示す対気速度監視環境300は、物理的又はアーキテクチャ制限を暗示するものではなく、異なる実施形態を実行することが可能である。記載されたコンポーネントに追加の他のコンポーネント、又はその代わりの他のコンポーネントを使用することができる。あるコンポーネントは、ある有利な実施形態において不必要である場合がある。また、ブロックは幾つかの機能性コンポーネントを説明するために示したものである。異なる有利な実施形態において実行するときに、これらの一以上のブロックを組み合わせて、及び/又は異なるブロックに分けることができる。
【0082】
例えば、ある有利な実施形態では、複数のベンチュリ管318が設置されていない。他の有利な実施形態では、複数の光検出及び測距センサ316が設置されていない。ある有利な実施形態では、複数のベンチュリ管318は航空機304の垂直安定板に位置している。
【0083】
ここで、有利な実施形態によるベンチュリ管を示す図4を参照する。ベンチュリ管400は、複数のベンチュリ管318のベンチュリ管の一実施例である。
【0084】
ベンチュリ管400は、この有利な実施形態では胴体402から延在している。胴体402は図3の胴体336の例示の実行形態である。矢印403は、胴体402の順方向を指している。矢印403によって指示されている順方向は、この有利な実施形態において操縦室が位置する方向である。当然ながら、他の有利な実施形態において、ベンチュリ管400は他の好適な場所に位置していてよい。
【0085】
ベンチュリ管400は、管404及び管406からなる。管404及び406は、支柱401を介して胴体402から延びている。管404のポート408により、領域410を移動する空気が管404に進入することができる。空気は管404を通ってコネクタ412へ流れる。管404を通って移動する空気は、コネクタ412を通って移動する。コネクタ412は管404をセンサ414につなげている。管404内の気圧は、センサ414を使用して測定される。この有利な実施形態では、センサ414はコネクタ412に装着されている。当然ながら、センサ414は、管、チャネル、又は他の好適なデバイスを使用してコネクタ412に接続することができる。
【0086】
同様に、ポート416により、領域410を流れる空気が管406に進入することが可能になる。管406は管404と同様のものであるが、管404とは直径が異なる。この有利な実施形態では、管406の直径は管404の直径の2倍である。したがって、ベンチュリ管400は分岐/集束ベンチュリ管である。
【0087】
管406の中を流れる空気はコネクタ418を通って流れる。コネクタ418は管406をセンサ420につなげている。管406の気圧は、センサ420を使用して測定される。センサ420は、この有利な実施形態では、コネクタ418に装着されている。当然ながら、センサ414は、管、チャネル、又は別の好適なデバイスを使用して、コネクタ412に接続することができる。
【0088】
コンピュータシステム422は、図3のコンピュータシステム308の例示の実行形態である。コンピュータシステム422は、センサ414及びセンサ420から圧力の値を受信する。コンピュータシステム422は次に、圧力値の差を計算する。コンピュータシステム422は圧力値の差を使用して、領域410の環境の、例えば図3の全圧値360等の全圧値を生成する。
【0089】
ある有利な実施形態では、一以上の静圧センサもまた設置され得る。例えば、静圧センサはポート408及び/又はポート416に実質的に隣接して位置づけすることができる。静圧センサによって生成された静圧値は、上記有利な実施形態のコンピュータシステム422に送られる。
【0090】
ここで、有利な実施形態による信号統合システムを示す図5を参照する。信号統合システム500は、図3の信号統合システム366の例示の実行形態である。
【0091】
信号統合システム366は、図3のコンピュータシステム308のプロセスとして実行される。しかしながら、信号統合システム500はその代わりに一以上のコンポーネント502を使用して実行可能である。コンポーネント502は、複数の回路504、複数の集積回路506、及びプログラマブル論理アレイ508であってよい。
【0092】
図6〜7は、航空機のセンサシステムからの全圧値を使用して統合全圧値を生成する信号統合システムの実施例を示す。当然ながら、統合静圧値は、統合全圧値と同じような方法で生成することができる。
【0093】
ここで、有利な実施形態による全圧値を示す図6に注目する。全圧値600は、図3の全圧値332、340、及び360の例示の実行形態である。
【0094】
図示した全圧値600は、図3のセンサシステム306等のセンサシステムによって生成された後のものである。センサの列602は、全圧値の列604の値を生成したセンサのアイデンティティを表示する。この実施例では、ピトー静圧管606により約26及び約23の値が生成された。同様に、迎え角センサシステム608により、約24及び約22の値が生成された。ベンチュリ管610により、約14及び約11の値が生成された。
【0095】
例えば図3の信号統合システム366等の信号統合システムは、全圧値600を処理する。信号統合システムによって最後に生成された統合全圧値が約24であったと仮定しよう。各種類のセンサに対し、生成された2つの値の内の中間値と、最後の統合全圧値が選択される。
【0096】
この実施例では、ピトー静圧管606の26と23の間の中間値と、最後の統合全圧値の24が選択されて24が形成される。同様に、迎え角センサ608に生成された2つの値の中間値と、最後の統合全圧値の24が選択されて24が形成される。さらに、ベンチュリ管610に生成された2つの値の中間値と、最後の統合全圧値の24が選択されて14が形成される。
【0097】
ここで、有利な実施形態による全圧値の第2の図である図7を参照する。全圧値700は統合され、図6の全圧値600から生成される。
【0098】
全圧値700は、ピトー静圧管702の全圧値の24、迎え角システム704の全圧値の24、ベンチュリ管706の全圧値の14を含む。信号統合システムは、全圧値700を用いて統合全圧値を生成する。信号統合システムは、3つの値から中間値を選択することによって、統合全圧値を生成することができる。この実施例では、最高の値が24で最低の値が14であるため、値24が選択される。中間値として選択されるべき残りの値は24である。したがって、信号統合システムは、航空機の統合全圧値として24を生成する。
【0099】
この実施例では、ベンチュリ管706が他の種類のセンサと十単位も違う値を生成した。信号統合システムは、ベンチュリ管706を不整合なデータを生成しているとして識別することができる。ある有利な実施形態では、信号統合システムは、ベンチュリ管706が統合全圧値と閾値量又はパーセントを超える差がある全圧値を生成したことを診断ログに記入することができる。
【0100】
ここで、有利な実施形態による航空機の対気速度を識別するプロセスのフロー図を示す図8を参照する。このプロセスは、図3のコンピュータシステム308で実行されている信号統合システム366によって実施することができる。このプロセスはまた、図5のコンポーネント502によって実施することも可能である。
【0101】
このプロセスは、複数のピトー静圧管によって、航空機の周囲環境の第1全圧値及び第1静圧値を生成することによって開始する(動作802)。このプロセスは次に、複数の光検出及び測距センサを使用して、航空機の周囲環境の第2全圧値及び第2静圧値を生成する(動作804)。このプロセスは次に、複数の迎え角センサシステムを使用して航空機の周囲環境の第3全圧値及び第3静圧値を生成する(動作806)。
【0102】
このプロセスは次に、第1全圧値、第1静圧値、第2全圧値、第2静圧値、第3全圧値、及び第3静圧値のエラーを検出して、統合全圧値及び統合静圧値を形成する(動作808)。このプロセスでは、最後の統合静圧値又は全圧値と、特定の種類のセンサそれぞれから中間値を選択することによってエラーが検出される。プロセスは次に、残りの値の中間値を取ることによって統合静圧値又は全圧値を生成する。
【0103】
次に、このプロセスは統合全圧値及び統合静圧値から航空機の対気速度を識別する(動作810)。プロセスは、ベルノーイの原理に基づく下記式を使用して航空機の対気速度を識別することができる。
=CSO(5((P−P)/PSO+1)2/7−1))1/2、この式において、Vは航空機の較正対気速度であり、Pは航空機の周囲環境の全圧であり、Pは航空機の周囲環境の静圧であり、PSOは海水位における標準日静圧であり、CSOは海水位における音速であり、標準日、及びVは航空機100の較正対気速度である。プロセスはその後終了する。
【0104】
ここで、有利な実施形態によるエラーを検出するプロセスのフロー図である図9を参照する。このプロセスは、図3のコンピュータシステム308による信号統合エラー修正システム366によって実施することができる。このプロセスはまた、図5のコンポーネント502によっても実施可能である。
【0105】
このプロセスは、静圧値を生成する各センサからの静圧値、及び全圧値を生成する各センサからの全圧値を受信することから開始する(動作902)。これらの実施例では、航空機は少なくとも3つの異なる種類のセンサと、各種類のセンサの少なくとも2つを有する。このプロセスは次に、最近の統合静圧値を受信する(動作904)。ある有利な実施形態では、最近の統合静圧値は、図9のプロセスの事前実施における動作908中に生成された値である。当然ながら、上記値がない場合、デフォルト値を使用することができる。
【0106】
プロセスは次に、各種類のセンサに対し、動作904において受信した各種類のセンサの少なくとも2つのセンサによって生成された静圧値と、動作906において受信した最後の統合全圧値の中間値を選択する(動作906)。プロセスは次に、動作906中に生成された値の中間値を選択して、統合静圧値を形成する(動作908)。プロセスはその後終了する。
【0107】
異なる実施形態のフロー図及び説明は、異なる有利な実施形態における装置及び方法の幾つかの可能な実行形態のアーキテクチャ、機能性、及び動作を示すものである。これに関しては、フロー図又は説明の各ブロックは、ある動作又はステップのモジュール、セグメント、機能、及び/又は一部を示すことができる。ある代替実行形態では、ブロックに注記された単一機能、または複数の機能は図面に記された順番通りでなくてもよい。例えば、ある場合には、含まれる機能性によって、順番に示した2つのブロックを実質的に同時に実施することができる、又はブロックをしばしば反対の順番に実施することができる。
【0108】
例えば、プロセスは、動作902〜908において静圧値ではなく、全圧値を生成することができる。さらに、プロセスは、ある種類のセンサが不整合なデータを生成している及び/又は他の種類のセンサによって生成された値との差が特定量又はパーセントを超えるデータを生成している場合に、動作908の後に記録を残すことができる。
【0109】
さらに、プロセスはエラーを検出するのに、図9の静圧値の代わりに対気速度の値を使用することができる。さらに具体的には、プロセスは静圧値の代わりに動作902〜908において統合対気速度の値を生成することができる。
【0110】
上記有利な実施形態では、プロセスは動作902における静圧値の代わりに対気速度の値を受信することができる。プロセスは次に、動作904において最近の静圧値の代わりに最近の対気速度の値を受信することができる。同様に、プロセスは各種類のセンサに対して、受信した対気速度の値と動作906における最近の対気速度の値の中間値を選択することができる。最後に、プロセスは動作906において生成された値の中間値を選択して、動作908において統合対気速度の値を形成することができる。
【0111】
したがって、異なる有利な実施形態は、航空機の対気速度を識別する装置及び方法を提供する。ある有利な実施形態では、装置が提供されている。この装置は、複数のピトー静圧管からなる。複数のピトー静圧管のそれぞれは第1種類のセンサである。複数のピトー静圧管は第1データを生成する。この装置はまた、複数の迎え角センサシステムからなる。複数の迎え角センサシステムの各々は、第2種類のセンサであり、複数の迎え角センサシステムは第2データを生成する。この装置はまた、複数の光検出及び測距センサからなる。光検出及び測距センサは第3データを生成する。この装置はまた、複数のピトー静圧管によって生成された第1データ、複数の迎え角センサシステムによって生成された第2データ、及び複数の光検出及び測距センサによって生成された第3データのエラーを修正する信号統合システムからなる。
【0112】
したがって、異なる有利な実施形態により、航空機データシステムとパイロットが、特定の種類のセンサがある事象、例えばある種類の全てのセンサが不整合なデータを生成する原因となる氷等によって影響された場合においても、値の不整合性が許容範囲の値に制限された対気速度の値を受信することが可能になる。航空機データシステムは、その種類のセンサからのデータを除外して、その種類のセンサのメンテナンスが必要であること、又はメンテナンスを行うまでは使用すべきでないことを報告することができる。
【0113】
少なくとも3つの種類のセンサが全圧値及び静圧値を生成するために、航空機の対気速度は、ある種類のセンサ全てが不整合なデータを生成している場合でも、識別可能である。さらに、航空機の対気速度は、2つの種類のセンサが全て不整合なデータを生成している場合でも、各種類のセンサが特定の共通モードの事象に影響されていないために、識別することができる。さらに、不整合なデータを生成する種類のセンサは、他の2つの種類のセンサが整合データを生成し、航空機の対気速度を識別するのに使用できるため、特定することが可能である。
【0114】
異なる有利な実施形態の説明は、図示及び説明の目的のために記載されたものであって、包括的、又は開示された形の実施形態に限定するものではない。多数の修正及び変更が当業者に明らかである。さらに、異なる有利な実施形態は、他の有利な実施形態と比較して、異なる利点を提供し得る。選択された単一の実施形態、又は複数の実施形態は、実施形態の原理、実際の用途を最もよく説明するため、そして当業者が、特定の使用に適した様々な修正事項を有する多様な実施形態の開示を理解することができるように選択され、記載されたものである。
【符号の説明】
【0115】
100 航空機
102 胴体部
104 尾部
106 前部
108 対気速度センサシステム
110 対気速度センサシステム
112 対気速度センサシステム
114 飛行データ処理システム
116 翼
118 操縦室
120 対気速度センサシステム
122 全地球測位システムセンサ
126 慣性センサシステム
400 ベンチュリ管
401 支柱
402 胴体
404 管
406 管
408 ポート
410 領域
412 コネクタ
414 センサ
416 ポート
418 コネクタ
420 センサ
422 コンピュータシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のピトー静圧管であって、複数のピトー静圧管の各々が第1種類のセンサであり、第1データを生成する複数のピトー静圧管と;
各々が第2種類のセンサである複数の迎え角センサシステムであって、第2データを生成する複数の迎え角センサシステムと;
各々が第3種類のセンサである複数の光検出及び測距センサであって、第3データを生成する複数の光検出及び測距センサと;
複数のピトー静圧管によって生成される第1データと、複数の迎え角センサシステムによって生成される第2データと、複数の光検出及び測距センサシステムによって生成される第3データのエラーを検出する信号統合システム
を含む装置。
【請求項2】
信号統合システムが、
第1データ、第2データ、及び第3データを統合する処理装置
を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
信号統合システムが、複数の回路、複数の集積回路、及びプログラマブル論理アレイのうちから選択されるコンポーネントを含む、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
複数のピトー静圧管が航空機胴体の前部において使用される航空機をさらに含む、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
第1データが航空機の周囲環境の第1全圧値及び第1静圧値を含み、第2データが航空機の周囲環境の第2全圧値及び第2静圧値を含み、第3データが航空機の周囲環境の第3全圧値及び第3静圧値を含む、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
複数のピトー静圧管によって生成された第1データ、複数の迎え角センサシステムによって生成された第2データ、及び複数の光検出及び測距センサによって生成された第3データのエラーを検出するにあたって、信号統合システムが第1全圧値、第2全圧値、及び第3全圧値を使用して環境の第4全圧値を識別し、第1静圧値、第2静圧値、及び第3静圧値を使用して航空機の周囲環境の第4静圧値を識別する、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
第1全圧値、第2全圧値及び第3全圧値を使用して環境の第4全圧値を識別するにあたって、信号統合システムが、第1全圧値、第2全圧値、及び第3全圧値から第1中間値を識別して、環境に対する統合全圧値を形成する、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
第1静圧値、第2静圧値及び第3静圧値を使用して環境の第4静圧値を識別するにあたって、信号統合システムが、第1静圧値、第2静圧値、及び第3静圧値から第2中間値を識別して、環境に対する統合静圧値を形成する、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
信号統合システムがさらに、第1中間値及び第2中間値から、航空機の対気速度を識別する、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
複数の迎え角センサシステムの各々が:
航空機の前方の胴体において使用される複数の迎え角翼センサと;
航空機の慣性データを生成する慣性センサシステムと;
揚力モデル及び慣性データを使用して、航空機の平均海水位からの高度と統合静圧値とを生成する全地球測位システム受信器
を含む、請求項1ないし9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
航空機の対気速度を識別する方法であって:
複数のピトー静圧管によって、航空機の周囲環境の第1全圧値及び第1静圧値を生成し;
複数の光検出及び測距センサによって、航空機の周囲環境の第2全圧値及び第2静圧値を生成し;
複数の迎え角センサシステムによって、航空機の周囲環境の第3全圧値及び第3静圧値を生成し;
第1全圧値、第1静圧値、第2全圧値、第2静圧値、第3全圧値、及び第3静圧値のエラーを検出して、統合全圧値及び統合静圧値を形成し;
統合全圧値及び統合静圧値から航空機の対気速度を識別する
ことを含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−86830(P2012−86830A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−185886(P2011−185886)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(500520743)ザ・ボーイング・カンパニー (773)
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company