説明

航空機用の水廻り作業車

【課題】第1に、ワンマン式なので、人件費が低減されると共に、第2に、車輌製作コスト、その他のコスト面にも優れた、ウォーター車やラバトリー車等の、航空機用の水廻り作業車を提案する。
【解決手段】この水廻り作業車9は、シャーシ10上に、運転席を備えたキャブ3と、タンク4と、昇降装置5にて昇降可能な作業台6とが、搭載されており、航空機の水廻り作業に供される。そして、予備走行装置11が設けられており、この予備走行装置11は、縦に伸縮可能な伸縮機構12と、伸縮機構12に取付られ旋回も可能な走行輪13と、駆動源と、作業台6に付設された操作部14と、を備えている。もって、この水廻り作業車9は、予備走行装置11の走行輪13と前輪19によっても、走行,操舵可能となっている。予備走行装置11には、ジャッキローラー装置21が代表的に利用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機用の水廻り作業車に関する。すなわち、空港にて航空機の水廻り作業に供される、水廻り作業車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
《技術的背景》
空港では、ウォーター車やラバトリー車と称される水廻り作業車が、一般的に使用されている。
ウォーター車は、航空機の給水や排水の水廻り作業に使用され、作業台からの作業に基づき、タンクに積込まれた水を航空機に供給したり、航空機からの排水をタンクに積込んで運搬する。
ラバトリー車は、航空機のトイレ汚水を処理する水廻り作業に使用され、作業台からの作業に基づき、航空機からのトイレ汚水をタンクに積込んで、他所へと運搬する。
【0003】
《従来技術》
図4は、この種従来例1に係る水廻り作業車1の運用方法の側面説明図である。図5は、この種従来例2に係る水廻り作業車2の運用方法の側面説明図である。図中3はキャブ、4はタンクである。
まず、図4に示した従来例1の水廻り作業車1について述べる。この水廻り作業車1は、作業に際し、まず図4の(1)図に示したように、航空機Aヘ向け、キャブ3内の運転席での前進操作に基づき、前進走行する。
航空機Aに近付くと、作業台6を航空機Aの作業ポイントB下の作業定位置へ安全に移動させるため、車輌の前後向きを反転してから、(2)図に示したように、誘導員Cの指示に従って、キャブ3内の運転席からの後進操作に基づき、後退走行する。もって、車輌後部から航空機A下の作業定位置へと、接近,進入して行く。
そして(3)図に示したように、作業定位置において停車した後、昇降装置5にて上昇させた作業台6上から、航空機Aへの水廻り作業,実作業が行われる。
作業終了後は、(4)図に示したように、キャブ3内の運転席での前進操作に基づき、前進走行し、もって航空機Aから離れて行く。
【0004】
次に、図5に示した従来例2の水廻り作業車2では、まず図5の(1)図に示したように、航空機Aヘ向け、キャブ3内の運転席で前進操作に基づき、前進走行する。
航空機Aに近付くと、車輌の前後向きはそのまま、キャブ3をそれまでの上昇位置から降下位置に降下させてから、(2)図に示したように、航空機Aの作業ポイントB下の作業定位置へと、キャブ3内の運転席で前進操作に基づき、更に前進走行する。もって、車輌前部から航空機A下の作業定位置へと、接近,進入して行く。
このように、従来例2の水廻り作業車2は、キャブ3が昇降式となっている。そして(1)図のように、航空機Aから離れている通常走行時は、運転席での視界確保のため上昇位置にあるが、それ以外の(2)図,(3)図,(4)図のように、航空機A近くでは、航空機A下面との接触,衝突防止のため降下位置とされる。
そして(3)図に示したように、作業定位置において停車した後、ブーム式昇降装置7にて、キャブ3横に配設された作業台6を上昇させ、もって作業台6上から、航空機Aへの水廻り作業,実作業が行われる。
作業終了後は、(4)図に示したように、車輌後部に設けられた補助運転席8での後退操作に基づき、後退走行し、もって航空機Aから離れて行く。もって航空機Aから十分離れたら、キャブ3を上昇させて、キャブ3内の運転席での前進操作に基づき、前進走行して行く。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
《問題点》
ところで、上述したこの種従来例の水廻り作業車1,2については、次の課題が指摘されていた。
《第1の問題点》
第1に、従来例1の水廻り作業車1については、ツーマン式であるがゆえの人件費が、問題として指摘されていた。
図4の(2)図に示したように、この水廻り作業車1は、航空機A下の作業定位置へと後退走行する際、車輌前部のキャブ3内の運転席の作業員Dからでは、後部視界が悪い。そこで、航空機A,他の作業車輌,機材,人等との接触など、事故防止の観点から、誘導員Cを配することが、必須的に行われている。
すなわち、車輌後部から航空機A下の作業定位置へと接近,進入して行く際、車輌前部のキャブ3内の運転席で後進操作をする運転者、つまり作業員Dの他に、後方での接触事故防止の観点から車外後方で指揮をする誘導員Cを、必要としていた。つまり、後退走行のためだけに、専用の誘導員Cを要していた。
このように、従来例1に関しては、作業車Dと誘導員Cとの2名が必要となり、車輌製作コストは低いものの、人件費が嵩むという問題があった。
【0006】
《第2の問題点》
第2に、従来例の水廻り作業車2については、車輌構造の複雑さによる車輌製作コストおよびメンテナンスコストが、問題として指摘されていた。
図5の(2)図に示したように、この水廻り作業車2は、航空機A下の作業定位置へ、前進走行によって接近,進入して行く。車輌前部から作業定位置へと向かうので、車輌前部のキャブ3内の運転席で前進操作を行う運転者、つまり作業員Dの視界は良好である。
このように従来例2は、従来例1のように作業員Dの外に誘導員Cを要するツーマン式ではなく、ワンマン式で問題はなく、人件費面に優れている。
しかしながら、この従来例2については、このようなワンマン式実現のため、a.キャブ3が昇降式とされ、b.車輌後部に補助運転席8を設けることも要し、c.キャブ3横に作業台6を配して、d.ブーム式昇降装置7で昇降等を行うようにし、e.これらを搭載するための専用シャーシを要する等々、車輌製作コストが嵩むという問題があった。
更に、このように機構部分が多く構成が複雑なので、その分、故障修理対象が増加し、メンテナンスも面倒であり、これらのコスト面で問題があった。
【0007】
《本発明について》
本発明の航空機用の水廻り作業車は、このような実情に鑑み、上記従来技術の課題を解決すべくなされたものである。
そして本発明は、第1に、ワンマン式なので、人件費が半減されると共に、第2に、車輌製作コストやメンテナンスコストに優れた、航空機用の水廻り作業車を提案することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
《各請求項について》
このような課題を解決する本発明の技術的手段は、特許請求の範囲に記載したように、次のとおりである。
請求項1については、次のとおり。請求項1の航空機用の水廻り作業車は、シャーシ上に、運転席を備えたキャブと、タンクと、昇降装置にて昇降可能な作業台とが、少なくとも搭載されており、航空機の水廻り作業に供される。
そして、予備走行装置が設けられている。該予備走行装置は、縦に伸縮可能な伸縮機構と、該伸縮機構に取付けられ旋回も可能な走行輪と、駆動源と、該作業台に付設された操作部と、を備えている。もって該水廻り作業車は、該予備走行装置によっても、走行,操舵可能となっていること、を特徴とする。
【0009】
請求項2については、次のとおり。請求項2の航空機用の水廻り作業車では、請求項1において、該予備走行装置は、該伸縮機構が、ジャッキローラー装置の入れ子構造のジャッキよりなり、該走行輪が、該ジャッキローラー装置のローラーよりなること、を特徴とする。
請求項3については、次のとおり。請求項3の航空機用の水廻り作業車では、請求項1において、該水廻り作業車は、航空機への給水用および航空機からの排水用のウォーター車として使用される。そして、該作業台からの作業に基づき、該タンクに積込まれた水をホースを介して航空機内に供給したり、航空機内からの排水をホースを介して該タンクに積込んで運搬すること、を特徴とする。
請求項4については、次のとおり。請求項4の航空機用の水廻り作業車では、請求項1において、該水廻り作業車は、航空機のトイレ汚水処理用のラバトリー車として使用される。そして、該作業台からの作業に基づき、航空機内からのトイレ汚水を、ホースを介して該タンクに積込んで他所へと運搬すること、を特徴とする。
【0010】
請求項5については、次のとおり。請求項5の航空機用の水廻り作業車では、請求項1において、該キャブは、車輌前部に搭載され、該作業台は、車輌後部に搭載され、該予備走行装置の該伸縮機構および走行輪は、該作業台に隣接して車輌後側に配設されていること、を特徴とする。
請求項6については、次のとおり。請求項6の航空機用の水廻り作業車では、請求項5において、該予備走行装置は、通常走行時は、該伸縮機構が短縮され、もって該走行輪は接地しない。
これに対し、航空機近くから航空機下の作業定位置へ向けての走行時は、該作業台の操作部により、該伸縮機構が伸長されて該走行輪が後輪より下位にて接地し、もって前輪と共に該水廻り作業車を、車輌後方に向け走行,操舵せしめることが可能となっていること、を特徴とする。
【0011】
《作用等について》
本発明は、このような手段よりなるので、次のようになる。
(1)水廻り作業に際し、水廻り作業車は、まず、航空機に向け前進走行する。
(2)航空機に近付くと、前後の向きが反転せしめられた後、航空機下の作業定位置へと、後退走行により接近,進入して行く。
(3)そして後退走行は、本発明では、車輌後部の作業台の操作部での操作に基づき、行われる。後退走行は、予備走行装置の伸縮機構を伸長し、走行輪を接地させて、走行輪を駆動,操舵することにより、行われる。
(4)このように後退走行は、作業員が車輌後部の作業台で予備走行装置を操作することにより、行われるので、作業員の後部視界は良好であり、作業員1名にて安全に実施可能である。
(5)このような後退走行の後、航空機下の作業定位置で停車し、作業台を上昇させて、航空機への水廻り作業が実施される。
(6)作業が終了すると、前進走行により航空機から離れ行く。
(7)そして、この水廻り作業車は、ジャッキローラー装置等を利用した予備走行装置を、付加しただけの比較的簡単な構成よりなる。
(8)さてそこで、本発明の航空機用の水廻り作業車は、次の効果を発揮する。
【発明の効果】
【0012】
《第1の効果》
第1に、ワンマン式であり、人件費が半減される。本発明の航空機用の水廻り作業車では、予備走行装置が後退走行専用に設けられており、航空機下での後退走行は、作業員が、車輌後部の作業台にて予備走行装置を操作することにより、行われる。
前述したこの種従来例1のように、車輌前部のキャブ内からの操作ではなく、車輌後部の作業台からの操作であり、操作する作業員の後部視界は良好である。
従って、従来例1のツーマン式のように、航空機,他の作業車輌,機材,人等との接触など、後部視界の悪さに起因した事故防止の観点から、後退走行のためだけに専用の誘導員を配することを、要しない。作業員1名のワンマン式で問題はなく、人件費が削減される。
【0013】
《第2の効果》
第2に、車輌製作コストやメンテナンスコストに優れている。本発明の航空機用の水廻り作業車では、上述した第1の点が、ジャッキローラー装置等を利用した予備走行装置を設けたことにより、実現される。
すなわち、伸縮機構,走行輪,駆動源,操作部等よりなり、比較的簡単な構成の予備走行装置の付加により、上述したワンマン式が容易に実現される。
前述したこの種従来例2のように、a.昇降式のキャブ、b.車輌後部の補助運転席、c.キャブ横の作業台、d.ブーム式昇降装置、e.専用シャーシ等を要し、もって車輌製作コスト,故障修理コスト,メンテナンスコスト等が、嵩むようなこともない。従来例2に比し、大幅なコストダウンのもとで、ワンマン式が実現される。
このように、この種従来例に存した課題がすべて解決される等、本発明の発揮する効果は、顕著にして大なるものがある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る航空機用の水廻り作業車について、発明を実施するための形態の説明に供し、(1)図は、平面図、(2)図は、側面図である。
【図2】同発明を実施するための形態の説明に供し、(1)図は、走行輪が接地した状態の要部背面図、(2)図は、走行輪が接地しない状態の背面図である。
【図3】同発明を実施するための形態の説明に供し、運用方法の側面説明図であり、(1)図は、航空機へ向け移動中の状態を、(2)図は、作業定位置へ接近中の状態を、(3)図は、作業定位置において実作業中の状態を、(4)図は、航空機から離れるべく移動中の状態を、それぞれ示す。
【図4】この種従来例1に係る航空機用の水廻り作業車の説明に供し、運用方法の側面説明図であり、(1)図は、航空機へ向け移動中の状態を、(2)図は、作業定位置へ接近中の状態を、(3)図は、作業定位置において実作業中の状態を、(4)図は、航空機から離れるべく移動中の状態を、それぞれ示す。
【図5】この種従来例2に係る航空機用の水廻り作業車の説明に供し、運用方法の側面説明図であり、(1)図は、航空機へ向け移動中の状態を、(2)図は、作業定位置へ接近中の状態を、(3)図は、作業定位置において実作業中の状態を、(4)図は、航空機から離れるべく移動中の状態を、それぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。
《本発明の概要》
以下、本発明の航空機A用の水廻り作業車9について、図1,図2を参照して説明する。まず、本発明の概要について説明する。
この水廻り作業車9は、シャーシ10上に、運転席を備えたキャブ3と、タンク4と、昇降装置5にて昇降可能な作業台6とが、少なくとも搭載されており、航空機Aの水廻り作業に供される。
そして、予備走行装置11が設けられている。この予備走行装置11は、縦に伸縮可能な伸縮機構12と、伸縮機構12に取付けられ旋回も可能な走行輪13と、駆動源と、作業台6に付設された操作部14と、を備えている。もって水廻り作業車9は、予備走行装置11によっても走行,操舵可能となっている。
なお、キャブ3は車輌前部に搭載され、作業台6は、車輌後部に搭載され、予備走行装置11の伸縮機構12および走行輪13は、作業台6に隣接して車輌後側に配設されている。
本発明の概要については、以上のとおり。
【0016】
《水廻り作業車9について》
以下、このような水廻り作業車9について、図1,図2を参照して、更に詳細に説明する。
まず、水廻り作業車9について、一般的に説明する。水廻り作業車9は、航空機Aへの給水用および航空機Aからの排水用のウォーター車として使用される。すなわち、他所でタンク4に積込まれた水を、作業台6からの作業に基づき、ホース15を介して航空機A内に圧送,供給したり、航空機A内からの排水(廃水や残留水)を、作業台6からの作業に基づき、ホース15を介してタンク4に吸込み,積込んで、他所へと運搬する。
他方、この水廻り作業車9は、航空機Aのトイレ汚水処理用のラバトリー車として使用される。すなわち、航空機A内からのトイレ汚水を、作業台6からの作業に基づき、ホース15を介してタンク4に吸込み,積込んで、他所へと運搬する。
そして、車輌前部のシャーシ10上には、運転席を備えたキャブ3が、搭載されている。車輌中央部のシャーシ10上には、タンク4が搭載されている。図1の(1)図中、16は、タンク4上に付設されたマンホール、17は、ホース接続口、18は、収納庫である。図示しないが、ホース15を介した吐出用や吸込み用のポンプや、その駆動源として例えば油圧式装置等も、搭載されている。
又、車輌後部には、リフターつまり作業台6が搭載されている。作業台6は、例えばシザーズ式のリフト機構よりなる昇降装置5にて、作業員Dを載せて上昇,降下可能となっている。
水廻り作業車9について、一般的には以上のとおり。
【0017】
《予備走行装置11について》
次に、予備走行装置11について説明する。予備走行装置11は、伸縮機構12、走行輪13、作業台6後部に付設された操作部14、駆動源等を有してなる。
そして予備走行装置11は、通常走行時は、伸縮機構12が短縮されており、走行輪13は接地していない(図1の(2)図、図2の(2)図中の実線表示、等を参照)。
これに対し、航空機A近くから航空機A下の作業定位置へ向けての走行時は、作業台6に設けられた操作部14により、伸縮機構12が伸長されて、走行輪13が後輪20より下位にて接地し、もって前輪19と共に水廻り作業車9を、車輌後方に向け走行せしめることが可能となっている(図1の(2)図中の想像線表示、図2の(1)図中の実線表示、図2の(2)図中の想像線表示、後述する図3の(2)図中の実線表示、等を参照)。
【0018】
ところで、伸縮機構12および走行輪13として、図示例では、ジャッキローラー装置21のジャッキ22およびローラー23が、用いられている。
すなわち、縦に伸縮可能な伸縮機構12として、図示例では、ジャッキローラー装置21を構成する入れ子構造のジャッキ22が、採用されている。又、このジャッキ22に、ジャッキローラー装置21を構成するローラー23が取付けられ、もって走行輪13となっている。
そして図示例では、このような伸縮機構12の下側の外筒に、横フレーム24が取付け固定され、この横フレーム24の一端部下に、ベアリング等を介し水平旋回可能にカバー部25が、取付けられている。そして、このカバー部25内に、走行輪13が、水平軸にて回動可能,走行可能に軸支されている。
図示例では、伸縮機構12として、このようにジャッキローラー装置21のジャッキ22が用いられているが、勿論これに限定されるものではなく、例えばシーザーズ式のリフト機構を用いることも可能であり、走行輪13もローラー23ではなく、通常車輪の使用も可能である。
【0019】
《予備走行装置11の詳細》
予備走行装置11の構成等について、更に詳述する。まず、伸縮機構12および走行輪13の数は、図示例では各1個となっているが、一方又は双方を複数個とすることも可能である。後者として、ジャッキローラー装置21を複数個設けることも可能である。
伸縮機構12の駆動源、図示例ではジャッキローラー装置21の駆動源としては、図示しないが、油圧式,水圧式,電気式,機械式,その他の各種装置が使用可能である。
なお走行輪13は、図示例では1輪よりなるが、伸縮機構12は1個でも複数輪とすることも考えられる。又、走行輪13に対し、自在輪(自由輪)を、隣接配設することも考えられる。
【0020】
走行輪13の走行駆動源としては、油圧式,電気式,その他の各種装置が使用可能であり、図示例ではモータ26(図1の(2)図を参照)が、使用されている。
更に走行輪13は、左右に旋回可能である。走行輪13の旋回装置としては、油圧式,電気式,その他の各種装置が使用可能であり、図示例ではステアリングシリンダ27(図1の(1)図を参照)が、使用されている。ステアリングシリンダ27の伸縮により、カバー部25そして走行輪13が水平旋回可能、つまり右側向きや左側向きに進行方向を変更可能となっている。
なお図示例では、伸縮機構12が縦に固定され、走行輪13が水平面で旋回可能となっているが、これによらず、伸縮機構12自体を水平面で旋回可能とし、これに走行輪13を取付け固定することにより、走行輪13も共に旋回するようにしてもよい。
又、図示例において伸縮機構12や走行輪13は、車輌エリア内にて使用されるようになっているが、アウトリガを利用し、もって車輌エリア外に張り出して使用するようにしてもよい。
【0021】
なお、安全面等の配慮から、次の内容のインターロックシステムを設けることも、考えられる。第1に、自在輪である前輪19を、その中立位置にてステアリングロック可能とし、そのステアリングロック検出を条件に、予備走行装置11を操作可能とする。
第2に、前輪19のステアリングロック検出を条件に、車輌のエンジン等による走行を不能とする。
第3に、伸縮機構12の伸長状態検出を条件に、作業台6の昇降装置5を操作不能化する。第4に、作業台6の上昇位置検出を条件に、予備走行装置11の操作を不能化する。
予備走行装置11については、以上のとおり。
【0022】
《作用等》
本発明の航空機A用の水廻り作業車9は、以上説明したように構成されている。そこで、以下のようになる。
(1)空港での航空機Aの水廻り作業に際し、水廻り作業車9は、図3の(1)図に示したように、まず作業対象の航空機Aに向け、前進走行して行く。
すなわち作業員Dが、キャブ3内の運転席で前進操作することにより、通常走行により前進走行,前進移動して行く。なおその際、予備走行装置11は、伸縮機構12が短縮されており、走行輪13は接地していない。
【0023】
(2)航空機Aに近付くと、水廻り作業車9は、まず車輌の前後の向きが反転せしめられる。それから、図3の(2)図に示したように、航空機Aの作業ポイントB下の作業定位置へと、後退走行,後退移動する。もって、車輌後部から航空機A下の作業定位置へと、接近,進入して行く。
【0024】
(3)そして本発明にあっては、このような水廻り作業車9の後退走行は、専用の予備走行装置11を用いて行われる。
すなわち作業員Dは、キャブ3内から降下位置のままの作業台6へと移って、車輌後部の作業台6で操作部14を操作する。そして、伸縮機構12を伸長して走行輪13を下げ、後輪20より下位にて接地させる。もって、前輪19と走行輪13により、図示例では3輪式にて、水廻り作業車9を車輌後方に向け走行,操舵させて行く。
【0025】
(4)このように、航空機A下での水廻り作業車9の後退走行は、通常走行,前進走行時とは異なり、作業員Dが車輌後部の作業台6にて、予備走行装置11の操作部14を操作することにより、行われる。
車輌前部のキャブ3内からの後進操作ではなく、車輌後部の作業台6からの後進操作であり、作業員Dの後部視界は良好である。従って後退走行は、誘導員Cを要することもなく、作業員D1名でも、接触事故の虞なく、安全に実施可能である(本発明に関する図3の(2)図と、前述した従来例1に関する図4の(2)図とを、比較対照)。
【0026】
(5)さて、このような後退走行の後、水廻り作業車9は、航空機Aの作業ポイントB下の作業定位置で停車する。これと共に予備走行装置11は、伸縮機構12が短縮され、走行輪13の接地は解除される。
そして、図3の(3)図に示したように、作業台6が、それまでの降下位置から上昇位置へと昇降装置5にて上昇され、このように上昇した作業台6上の作業員Dにより、航空機Aへの実作業が行われる。ウォーター車又はラバトリー車として、タンク4と航空機Aの作業ポイントBとの間で、ホース15を介し、所期の水廻り作業が実施される。
【0027】
(6)作業終了後は、図3の(4)図に示したように、作業員Dが、キャブ3内の運転席に戻って、前進操作する。もって水廻り作業車9は、通常走行により前進走行,前進移動して、航空機Aから離れた安全な場所へと移動する。
【0028】
(7)ところで、本発明の水廻り作業車9は、前述した図4の従来例1の水廻り作業車1に対し、予備走行装置11を付加した構成よりなる。
すなわち、これまで汎用的に使用されていた既存の従来例1に対し、伸縮機構12,走行輪13,駆動源,操作部14等を付加しただけの、比較的簡単な構成よりなる。そして、既存のシャーシ10やジャッキローラー装置21も利用可能である。
従って、前述した図5の従来例2の水廻り作業車2と比較した場合、同様にワンマン式よりなるものの、大幅なコストダウンが実現される。
作用等については、以上のとおり。
【符号の説明】
【0029】
1 水廻り作業車(従来例1)
2 水廻り作業車(従来例2)
3 キャブ
4 タンク
5 昇降装置
6 作業台
7 ブーム式昇降装置
8 補助運転席
9 水廻り作業車(本発明)
10 シャーシ
11 予備走行装置
12 伸縮機構
13 走行輪
14 操作部
15 ホース
16 マンホール
17 ホース接続口
18 収納庫
19 前輪
20 後輪
21 ジャッキローラー装置
22 ジャッキ
23 ローラー
24 横フレーム
25 カバー部
26 モータ
27 ステアリングシリンダ
A 航空機
B 作業ポイント
C 誘導員
D 作業員

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャーシ上に、運転席を備えたキャブと、タンクと、昇降装置にて昇降可能な作業台とが、少なくとも搭載され、航空機の水廻り作業に供される水廻り作業車であって、予備走行装置が設けられており、
該予備走行装置は、縦に伸縮可能な伸縮機構と、該伸縮機構に取付けられ旋回も可能な走行輪と、駆動源と、該作業台に付設された操作部と、を備えてなり、該水廻り作業車は、該予備走行装置によっても、走行,操舵可能となっていること、を特徴とする航空機用の水廻り作業車。
【請求項2】
請求項1において、該予備走行装置は、該伸縮機構が、ジャッキローラー装置の入れ子構造のジャッキよりなり、該走行輪が、該ジャッキローラー装置のローラーよりなること、を特徴とする航空機用の水廻り作業車。
【請求項3】
請求項1において、該水廻り作業車は、航空機への給水用および航空機からの排水用のウォーター車として使用され、該作業台からの作業に基づき、該タンクに積込まれた水をホースを介して航空機内に供給したり、航空機内からの排水をホースを介して該タンクに積込んで運搬すること、を特徴とする航空機用の水廻り作業車。
【請求項4】
請求項1において、該水廻り作業車は、航空機のトイレ汚水処理用のラバトリー車として使用され、該作業台からの作業に基づき、航空機内からのトイレ汚水をホースを介して該タンクに積込んで他所へと運搬すること、を特徴とする航空機用の水廻り作業車。
【請求項5】
請求項1において、該キャブは、車輌前部に搭載され、該作業台は、車輌後部に搭載され、該予備走行装置の該伸縮機構および走行輪は、該作業台に隣接して車輌後側に配設されていること、を特徴とする航空機用の水廻り作業車。
【請求項6】
請求項5において、該予備走行装置は、通常走行時は、該伸縮機構が短縮され、もって該走行輪は接地しないのに対し、
航空機近くから航空機下の作業定位置へ向けての走行時は、該作業台の操作部により、該伸縮機構が伸長されて該走行輪が後輪より下位にて接地し、もって前輪と共に該水廻り作業車を、車輌後方に向け走行,操舵せしめることが可能となっていること、を特徴とする航空機用の水廻り作業車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−1104(P2012−1104A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138128(P2010−138128)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(000187208)昭和飛行機工業株式会社 (72)