説明

航空機用エンジンユニット

本発明は、ターボシャフトエンジンと、パイロンと、このパイロンとエンジンとの間に配された複数のエンジンマウントとを備えた航空機用エンジンユニットに関する。本発明によれば複数のエンジンマウントは、ターボシャフトエンジンの横方向軸線(Y)に沿って加わる応力のみを受けるよう構成されたマウント(6a)を具備してなる。当該マウント(6a)は、垂直軸線(Z)に沿って互いに平行に配置された二つの回転シャフト(48)によって、パイロンに対して堅固に連結された第1のフィッティング(40)に対して組み付けられた中間フィッティング(46)と、前後方向軸線(X)に沿って配置されると共に上記中間フィッティングに対して堅固に連結されたスラグ(56)とを具備してなる。当該スラグは、軸線Xに沿った遊びが存在するよう第2のフィッティング(58)に対して取り付けられており、この第2のフィッティングはターボシャフトエンジンに対して連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、たとえばターボジェットのようなターボエンジンと、エンジンマウント用パイロンと、このエンジンマウント用パイロンとジェットエンジンとの間に介在させられた複数のエンジンマウントとを具備してなるタイプの航空機用エンジンアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
こうしたエンジンアセンブリ用のエンジンマウント用パイロンは、公知の様式で、ジェットエンジンと、当該アセンブリを装備する航空機の翼との間に接続インタフェースを形成するよう設計されている。このパイロンは、航空機のエンジンによって生じる力を航空機の構造体に伝達することができ、しかもエンジンと航空機との間の燃料、電気、油圧、空気圧システムの配管のために使用される。
【0003】
パイロンは、力を伝達するために、剛構造体、たとえば「枠体(box)」型構造体を備える。すなわち、横断リブによって互いに連結された桁材および側面パネルのアセンブリから形成された構造体を備える。
【0004】
アセンブリシステムはエンジンとパイロンの剛構造体との間に介在させられるが、このシステムは概して、通常は、エンジンファンケーシングに固定された前部エンジンマウント(マウント群)および同エンジンの中央ケーシングに固定された後部エンジンマウント(マウント群)に分類される複数のエンジンマウントを具備してなる。
【0005】
さらに、上記アセンブリシステムは、エンジンによって生じるスラスト力に抗するための機構を具備してなる。従来、この機構は、第一にエンジンファンケーシングの後部に対して、そして第二にパイロンの剛構造体に取り付けられたエンジンマウント(たとえば後部エンジンマウント)に対して連結された、たとえば二つの横方向ロッドの形態であった。
【0006】
参考までに言うと、エンジンマウント用パイロンは、当該パイロンと航空機の翼との間に介在させられた第2のアセンブリシステムと関連付けられ、この第2のシステムは通常は二つまたは三つのエンジンマウントからなることに留意されたい。
【0007】
最後に、上記パイロンは、システムの隔離および支持のための、そして一方では空力フェアリングを支持する補助構造体を備える。
【0008】
従来技術による一般的な形態では、ジェットエンジンからエンジンマウント用パイロンの剛構造体へ伝達される全ての力およびモーメントに申し分なく抗するためのエンジンマウントの構造は、たいてい複雑であり、しかもコストがかかる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
それゆえ本発明の目的は、従来技術による形態に関連して先に説明した欠点を少なくとも部分的に克服する航空機用アセンブリを提案すると共に、少なくともそうしたアセンブリを備えた航空機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
これを達成するために、本発明の目的は、ジェットエンジン(ターボジェット)と、エンジンマウント用パイロンと、このエンジンマウント用パイロンとジェットエンジンとの間に介在させられた複数のエンジンマウントとを具備してなる航空機用エンジンアセンブリである。本発明によれば、複数のエンジンマウントは、ジェットエンジンを横断する方向(横方向)に沿って作用する力に専ら抗するよう構成されたエンジンマウントを具備してなり、このエンジンマウントは、ジェットエンジンの垂直方向に沿って平行に配置された二つの回転軸によって、エンジンマウント用パイロンに対して取り付けられた第1の取り付け部材に対して組み付けられた中間取り付け部材と、ジェットエンジンの前後方向に沿って配置されかつ中間取り付け部材に対して取り付けられたピンとを具備してなり、このピンは、ジェットエンジンに対して取り付けられた第2の取り付け部材に対して、前後方向に沿った間隙が存在する状態で取り付けられている。
【0011】
有利なことを言うと、本発明によるエンジンアセンブリは、簡素かつ安価な構造を備えたエンジンマウント(好ましくは前部エンジンマウント)を具備してなると共に、それは横方向に沿って作用する力にのみ抗する。
【0012】
前後方向に沿った間隙が存在する「モノボール」型接続部と、垂直方向に沿って配置されてなると共に二つの対応する回転軸を用いて得られた二つの回転式接続部との組み合わせによって、簡単な構造を持つこのエンジンマウントが、ジェットエンジンの横方向に沿って作用する力にのみ抗することが可能となる。以下でさらに詳しく説明するように、前部エンジンマウントを用いて、横方向に沿って作用する力に抗するという事実によって、全てのエンジンマウントの構造およびサイジングを、かなりの程度簡素化することができる。
【0013】
この点に関して、横方向に沿って作用する力にのみ抗するよう構成されたエンジンマウントは、好ましくは、第一に、エンジンマウント用パイロンの剛構造体の前部に対して、そして第二に、ジェットエンジンのファンケーシングの環状周縁部に対して取り付けられる。
【0014】
さらに、ジェットエンジンの前後方向(長さ方向)軸線およびジェットエンジンの垂直方向によって規定される平面は、横方向に沿って作用する力にのみ抗するよう構成された上記エンジンマウントに関して対称面を形成している。
【0015】
好ましくは、横方向に沿って作用する力にのみ単に抗するよう構成されたエンジンマウントは第1の前部エンジンマウントを形成し、そして複数のエンジンマウントはまた、やはり横方向に沿って作用する力に抗するよう構成された第2の前部エンジンマウントを具備してなる。この場合、二つの前部エンジンマウントは、ジェットエンジンの垂直方向に互いにオフセットした状態で配置される。
【0016】
すなわち本エンジンアセンブリは、ジェットエンジンの前後方向周りに作用するモーメントには、高さ方向にオフセットした状態であってかつ横方向に沿って作用する力に抗することができる前部エンジンマウント群が抗するよう構成される。
【0017】
だが前部エンジンマウントは、ジェットエンジンのファンケーシングまたは中央ケーシングに対して普通に取り付けることができるので、たとえば、その一方をファンケーシングに、そして他方を中央ケーシングに取り付けることによって、両者を垂直方向に互いに十分離間するよう移動させることは明らかに可能である。
【0018】
上述したように、この際立った分離は次のような利点を有する。すなわち、これによって、前後方向周りのモーメントに関連して、それが抗する必要がある力は、従来技術による一般的な解決策(この解決策では中央ケーシングに対して取り付けられた二つの後部エンジンマウントが上記モーメントに抗するが、これらのマウントは明らかに互いに大きく離間させることはできない)において見られる通常の力よりも当然ながら低いという事実に起因して、エンジンマウントの構造がかなりの程度簡素化される。
【0019】
二つの前部エンジンマウントはいずれも、本発明の範囲から逸脱することなく、異なる高さでファンケーシングに配置できることに留意されたい。
【0020】
また、前後方向周りに作用するモーメントに抗するようジェットエンジンの垂直方向に互いにオフセットした状態で二つの前部エンジンマウントが配置される場合、それらはまた、前後方向に沿ってかつ/または横方向に沿って互いにオフセットした状態となっていてもよいことに留意されたい。
【0021】
好ましくは、第2の前部エンジンマウントはジェットエンジンの中央ケーシングに対して取り付けられ、かつそれは横方向および垂直方向に沿って作用する力にのみ抗するよう構成される。この好ましい形態(ここでは簡単な構造の第1の前部エンジンマウントがファンケーシングの環状周縁部に取り付けられかつ前部エンジンマウントは中央ケーシングに対して取り付けられる)では、これまで見られた、そしてエンジンマウント用パイロンの剛構造体の幅に制限されていた値に比べて、垂直方向に沿って二つの前部エンジンマウント同士を極めて遠く離間させることが全く容易に行える。
【0022】
さらに、上記複数のエンジンマウントはまた、前後方向、横方向、そして垂直方向に沿って作用する力に抗するよう構成された後部エンジンマウントを具備していてもよい。
【0023】
好ましくは、ジェットエンジンの前後方向軸線およびジェットエンジンの垂直方向によって規定される平面は、複数のエンジンマウントのそれぞれを通る。ゆえに、上記平面上に全てのエンジンマウントを集中させたこと、したがって横方向にはエンジンマウントを互いに離間させていないことによって、横方向に沿ったエンジンマウント用パイロンの幅を著しく小さくできることは明らかである。それゆえ、この注目される幅の減少によって、有利なことには、エンジンマウント用パイロンによって生じる環状ファンダクト内でのファン流の乱れを低減することができる。
【0024】
本発明のその他の目的は、上述したようなエンジンアセンブリを少なくとも一つ具備してなる航空機である。
【0025】
本発明のその他の利点ならびに特徴は、以下の詳細な非限定的説明から明らかとなるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照して説明する。
【0027】
図1には本発明の好ましい実施形態による航空機用エンジンアセンブリ1を示すが、このアセンブリ1は航空機の翼(図示せず)の下に取り付けられるよう設計されたものである。
【0028】
概して、エンジンアセンブリ1は、以下の説明ではターボジェット2と見なされるジェットエンジン(ターボジェット)2と、エンジンマウント用パイロン4と、このパイロン4の下方にジェットエンジン2を取り付ける(固定する)複数のエンジンマウント6a,6b,8とを具備してなる。参考までに、アセンブリ1はナセル(図示せず)によって取り囲まれることになり、かつエンジンマウント用パイロン4は航空機の翼の下に当該アセンブリ1を吊り下げるための他の一連のパイロンマウント(図示せず)を具備してなることに留意されたい。
【0029】
慣習に従い、以下の説明では、ジェットエンジン2の前後方向軸線5と平行な当該ジェットエンジンの前後方向(長さ方向)をXで示し、当該ジェットエンジン2の横方向(左右方向)をYで示し、そして垂直すなわち高さ方向をZで示すが、これら三つの方向は互いに直交している。
【0030】
さらに、「前」および「後」との用語は、ジェットエンジン2によって加えられるスラストによって生じる航空機の前進運動の方向(この方向は矢印7によって大まかに示す)に関連付けて解釈すべきである。
【0031】
図1にはエンジンマウント用パイロン4の一つの剛構造体10のみを示す。このパイロン4の図示していないその他の要素、たとえばシステムの隔離および支持のためのものであって、その一方で空力フェアリングを支持する補助構造体は、従来技術において見出されかつ当業者には公知のものと同一あるいは類似の一般的な要素である。ゆえに、それに関しては詳しく説明しない。
【0032】
同様に、アセンブリ1はジェットエンジン2によって生じるスラスト力に抗するための機構(図示せず)を具備するが、これは既存のものと同一あるいは類似しており、それゆえこれ以上は説明しない。
【0033】
ジェットエンジン2は、環状ファンダクト14を画定している大形ファンケーシング12を前端部に有し、かつ後端付近には当該ジェットエンジンのコアを取り囲む小形中央ケーシング16を有する。明らかに、ケーシング12および16は、従来公知の一般的な手法で互いに取り付けられている。
【0034】
図1から分かるように、複数のエンジンマウント6a,6b,8は二つの前部エンジンマウント6a,6bを具備してなり、このそれぞれは、横方向Yに沿って作用する力に抗するよう構成され、かつ垂直方向Zに互いにオフセットした状態で配置されている。
【0035】
さらに正確に言うと、第1の前部エンジンマウン6aは、第一に、パイロン4の剛構造体10の前部に対して取り付けられており、そして第二に、ファンケーシング12の環状周縁部18に対して、好ましくは図1に概略的に示すようにこの部分18の後部に取り付けられている。
【0036】
さらに、上記第1の前部エンジンマウント6aは、上記環状周縁部18の最も高い部分に設けられており、必然的に、前後方向軸線5とZ方向とで規定された仮想面(図示せず)はそれを通過する。この点に関して、今言及したばかりの仮想面は第1の前部エンジンマウント6aに関して対称面であることに留意されたい。
【0037】
後述するように、本発明に独特の特徴の一つは、第1のエンジンマウント6aがジェットエンジンのY方向に沿って作用する力にのみ抗するよう構成され、X方向およびZ方向に沿って作用する力には抗しないという事実に起因することに留意されたい。
【0038】
さらに、第2の前部エンジンマウント6bは、第一に、パイロン4の剛構造体10の前端部に対して、そして第二に、中央ケーシング16に対して取り付けられており、この結果、それは第1の前部エンジンマウント6aの下方に位置している。さらに、この第2の前部エンジンマウント6bは中央ケーシング16の環状部分の最も高い位置に設けられている。この点に関して、図示する好ましい実施形態では、二つの前部エンジンマウント6a,6bはZ方向にのみ互いにオフセットしており、X方向およびY方向にはオフセットしていないことに留意されたい。だが、本発明の範囲から逸脱することなく、そうしたオフセットを調整することは明らかに可能であろう。
【0039】
さらに、第2のエンジンマウント6bのこの特有の配置によって、必然的に、上述した、前後方向軸線5とZ方向とによって規定される仮想面はやはりそれを通過するが、この仮想面はまた、上記第2の前部エンジンマウント6bに関する対称面を形成している。
【0040】
図1に矢印で概略的に示すように、第2の前部エンジンマウント6bは、ジェットエンジンのY方向に沿ってかつZ方向に沿って作用する力にのみ抗するよう、だが、X方向に沿った力には抗しないよう設計されている。
【0041】
複数のエンジンマウント6a,6b,8はまた単一の後部エンジンマウント8を具備してなるが、このエンジンマウント8には、たとえば、アセンブリ1の抗スラスト力機構を取り付けることができる。この後部エンジンマウント8は、第一に、中央ケーシング16の後部に対して、好ましくはこのケーシング16の後端部にて取り付けられており、そして第二に、パイロン4の剛構造体10に対して、好ましくはX方向で考えた概ねその中央部において取り付けられている。
【0042】
第2の前部エンジンマウント6bと同様に、後部エンジンマウント8は、当業者には公知の何らかの形式に従って、たとえばシャックルおよびフィッティング(取り付け具)のアセンブリとして形成される。だが、この後部エンジンマウント自体は、X方向、Y方向およびZ方向の三つの方向に沿って作用する力に抗するよう設計される。
【0043】
この結果、いま説明した複数のエンジンマウントを使って、X方向に沿った力には後部エンジンマウント8を用いて抵抗し、Y方向に沿った力には三つのエンジンマウント6a,6b,8を用いて抵抗し、そしてZ方向に沿った力には第1の前部エンジンマウント6aおよび後部エンジンマウント8を用いて抵抗することになる。
【0044】
さらに、X方向周りに作用するモーメントには二つの前部エンジンマウント6a,6bを用いて協働で抵抗し、Y方向周りに作用するモーメントには第2の前部エンジンマウント6bおよび後部エンジンマウント8を用いて協働で抵抗し、そしてZ方向周りに作用するモーメントには三つのエンジンマウント6a,6b,8を用いて協働で抵抗することになる。
【0045】
やはり図1を参照すると、図示する好ましい実施形態では、エンジンマウント用パイロン4の剛構造体10は、概ねX方向に沿って延在する中央ケーシング20と、この中央枠体(中央ボックス)20に対して固定された中央枠体22に対して固定されてなると共に概ね垂直方向Zに沿って延在する前部枠体22と、を具備してなることが分かる。
【0046】
さらに正確に言うと、前部枠体22の後方に配置された中央枠体20は、好ましくはYZ平面内に配置された横断リブ28によって互いに連結された下側桁材24および上側桁材26のアセンブリによって形成されている。桁材24および26は、XY平面に沿って配置されるか、あるいはXY平面から僅かに傾いた平面に沿って配置されている。
【0047】
下側桁材24および上側桁材26はそれぞれ単一の部材からなっていてもよく、あるいは互いに堅固に固定された複数の桁材セグメントのアセンブリからなっていてもよいことに留意されたい。
【0048】
さらに、中央枠体20は好ましくは、全体的にXY平面内でそれぞれ延在する二つの側壁30,32によって各側面が横方向に閉塞されている。
【0049】
前部枠体22の上側部分は、中央枠体20の前方延長部内に位置している。
【0050】
すなわち、概ねZ方向に沿って延在する前部枠体22は前側桁材34と後側桁材36とを備えるが、これらはいずれもY方向と平行であり、かつ好ましくはXY平面内に配置された横断リブ38によって互いに連結されている。この点に関して、最も高い位置にある横断リブ38は中央枠体20の桁材26の前端部からなり、この前端部はまた前部枠体22の上部を閉塞する役割を果たしていることに留意されたい。同様に、2番目に高い位置にある横断リブ38は、中央枠体20の下側桁材24の前端部からなっている。
【0051】
好ましくは、前部枠体22は、やはり中央枠体20を横方向に閉塞している、二つの側壁30,32によって各側面において横方向に閉塞されている。
【0052】
このようにして、全体として見た剛構造体10と同様に、二つの側壁30,32のそれぞれは概ね「L」字形であり、しかもこのL字の基底部は概ねZ方向に沿ったものとなっている。
【0053】
パイロン4の剛構造体10に関しては、第一に、第1の前部エンジンマウント6aは好ましくはYZ平面内に配置された前側桁材34の上側部分に対して取り付けられており、そして第二に、第2の前部エンジンマウント6bは好ましくは、前部枠体22の下部を閉塞している最も下方の横断リブ38に対して取り付けられていることに留意されたい。
【0054】
Y方向に沿った力にのみ抗することができる、第1の前部エンジンマウント6aについて、ここで図2ないし図4を参照して説明する。
【0055】
簡単な構造を有する前部エンジンマウント6aは、第一に、いくつかの金属製部品のアセンブリから形成されるかもしれない第1のフィッティング(取り付け部材)40を有するが、これは前部枠体22の前側桁材34に対して、さらに大まかに言うとパイロン4の剛構造体10に対して取り付けられている。
【0056】
第1のフィッティング40は、ジェットエンジン2の前後方向軸線5を通る垂直仮想平面に関して対称であり、しかも特に、当該平面の両側に1対ずつ配置された状態で、2対のヘッド44を具備してなる。
【0057】
ヘッド44の各対は、上側ヘッド42aと、Z方向にこの上側ヘッドから離れた位置に存在する下側ヘッド42bとを具備してなり、これら二つのヘッド42a,42bのそれぞれは二重にされかつXY平面内に配置されるであろう。さらに、上側ヘッド42aはZ方向に沿って配置された貫通孔44aを有し、同様に、下側ヘッド42bは、孔44aと向き合う、やはりZ方向に沿って配置された貫通孔44bを有する。
【0058】
図4から分かるようにXY平面内で延在する、好ましくは「V」字形の中間フィッティング(取り付け部材)46は、それぞれZ方向に沿って配置された二つの回転ピン48によって、第1のフィッティング40に対して連結されている。
【0059】
さらに正確に言うと、V字形中間フィッティング46の二つの端部のそれぞれは、二つの回転ピン48のうちの一方を用いて、2対のヘッド44のうちの一方に取り付けられ、それゆえ回転ピンは上記仮想面に関して対称となるよう配置される必要がある。この点に関して、この仮想平面はまた、中間フィッティング46に関しても対称面をなしていることに留意されたい。
【0060】
ゆえに、回転ピン48は、2対のヘッド44のそれぞれにおいて、順に、上側ヘッド42aの孔44a、中間フィッティング46の関係する端部に形成された貫通孔50、そして最後に下側ヘッド42bの孔44bを貫通する。さらに上記貫通孔50は、図3から分かるように、回転ピン48のスイベル52と協働するよう構成されている。
【0061】
このようにして、上記二つの回転ピン48を設けたことによって、Z方向に沿って配置されかつ上記仮想垂直面に関して対称に配置された二つの回転式接続部を得ることができることが分かる。
【0062】
前部エンジンマウント6aは、X方向に沿って配置されると共に、中間フィッティング46を形成するV字の二つのブランチ間の接合部において、この中間フィッティング46に対して取り付けられたピン56を具備してなり、このピン56は仮想垂直面と直径に沿って交差している。それゆえ、ピン56および中間フィッティング46から形成されたアセンブリは「Y」字形を有し、その下側ブランチはX方向に沿って前方に向けられている。
【0063】
ピン56は、X方向に間隙が存在する状態で、ジェットエンジン2に対して取り付けられた第2のフィッティング(取り付け部材)58に、さらに正確に言うとファンケーシング12の環状周縁部18の上側部分に取り付けられている。
【0064】
すなわち、ピン56と第2のフィッティング58との間に形成された機械的接続部は「モノボール」型のものであり、言い換えれば、それは、Y方向およびZ方向に沿ってのみ作用する力に抗し、その一方で、X方向には間隙をもたらす。この結果、ピン56は、このピンが貫通すると共に、第2のそしておそらくは二重の、YZ平面内に配置されたフィッティング58のヘッド60に形成された孔(図示せず)に対して、X方向に沿って極めて制限された様式でスライド可能となる。
【0065】
X方向に沿った間隙を有するモノボール型接続部と、Z方向に沿って配置された二つのボールジョイントとの組み合わせによって、ジェットエンジン2のY方向に沿って作用する力にのみ抗するための、他のエンジンマウントと組み合わされた第1の前部エンジンマウント6aが得られる。
【0066】
明らかに、当業者であれば、単に非限定的実施例として今説明したエンジンアセンブリ1に対して、さまざまな変更を加えることができる。この点に関して、エンジンアセンブリ1は、航空機の翼の下に吊り下げ可能であるような形態として示されているが、このアセンブリ1はまた、翼の上に搭載可能であるような別の形態とすることもできる。
【0067】
さらに、エンジンマウント6b,8に関して他の構造を採用することも当然ながら可能である。例証的実施例として、第2の前部エンジンマウント6bは、X方向、Y方向およびZ方向の三つの方向に沿って作用する力に抗するよう構成できる。この場合、後部エンジンマウント8は、ジェットエンジンのY方向およびZ方向に沿って作用する力にのみ抗し、X方向に沿って作用する力には抗しないよう構成されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の好ましい実施形態による航空機用エンジンアセンブリの斜視図である。
【図2】図1のエンジンアセンブリの第1の前部エンジンマウントの拡大斜視図であり、このエンジンマウントはジェットエンジンのファンケーシングとエンジンマウント用パイロンの剛構造体との間に介在させられている。
【図3】図2に示す第1の前部エンジンマウントの側面図である。
【図4】図2および図3に示す第1の前部エンジンマウントの平面図である。
【符号の説明】
【0069】
1 エンジンアセンブリ
2 ジェットエンジン
4 エンジンマウント用パイロン
6a,6b,8 エンジンマウント
10 剛構造体
12 大形ファンケーシング
14 環状ファンダクト
16 小形中央ケーシング
18 環状周縁部
20 中央枠体
22 前部枠体
24 下側桁材
26 上側桁材
28 横断リブ
30,32 側壁
34 前側桁材
36 後側桁材
38 横断リブ
40 第1のフィッティング
42a 上側ヘッド
42b 下側ヘッド
44 ヘッド
44a,44b 貫通孔
46 中間フィッティング
48 回転ピン
50 貫通孔
52 スイベル
56 ピン
58 第2のフィッティング
60 ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジェットエンジン(2)と、エンジンマウント用パイロン(4)と、前記エンジンマウント用パイロン(4)と前記ジェットエンジン(2)との間に介在させられた複数のエンジンマウント(6a,6b,8)と、を具備してなる航空機用エンジンアセンブリ(1)であって、
前記複数のエンジンマウント(6a,6b,8)は、前記ジェットエンジン(2)と交差する横方向(Y)に沿って作用する力に専ら抗するよう構成されたエンジンマウント(6a)を具備してなり、
前記エンジンマウント(6a)は、
前記ジェットエンジン(2)の垂直方向(Z)に沿って平行に配置された二つの回転軸(48)によって、前記エンジンマウント用パイロン(4)に対して取り付けられた第1の取り付け部材(40)に対して組み付けられた中間取り付け部材(46)と、
前記ジェットエンジン(2)の前後方向(X)に沿って配置されかつ前記中間取り付け部材(46)に対して取り付けられたピン(56)と、を具備してなり、
前記ピン(56)は、前記ジェットエンジン(2)に対して取り付けられた第2の取り付け部材(58)に対して、前後方向(X)に沿った間隙が存在する状態で取り付けられていることを特徴とする航空機用エンジンアセンブリ(1)。
【請求項2】
横方向(Y)に沿って作用する力にのみ抗するよう構成された前記エンジンマウント(6a)は、
第一には、前記エンジンマウント用パイロン(4)の剛構造体(10)の前部に対して、
第二には、前記ジェットエンジン(2)のファンケーシング(12)の環状周縁部(18)に対して取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の航空機用アセンブリ(1)。
【請求項3】
前記ジェットエンジン(2)の前後方向軸線(5)および前記ジェットエンジンの垂直方向(Z)によって規定される面は、横方向(Y)に沿って作用する力にのみ抗するよう構成された前記エンジンマウント(6a)に関して、対称面をなしていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の航空機用アセンブリ(1)。
【請求項4】
単に横方向(Y)に沿って作用する力にのみ抗するよう構成された前記エンジンマウント(6a)は第1の前部エンジンマウントを形成し、かつ前記複数のエンジンマウント(6a,6b,8)は、横方向(Y)に沿って作用する力に抗するよう構成された第2の前部エンジンマウント(6b)を具備してなり、二つの前記前部エンジンマウント(6a,6b)は、前記ジェットエンジン(2)の垂直方向(Z)に互いにオフセットした状態で配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の航空機用アセンブリ(1)。
【請求項5】
前記第2の前部エンジンマウント(6b)は、前記ジェットエンジン(2)の中央ケーシング(16)に対して取り付けられており、かつ横方向(Y)および垂直方向(Z)に沿って作用する力にのみ抗するよう構成されていることを特徴とする請求項4に記載の航空機用アセンブリ(1)。
【請求項6】
複数の前記エンジンマウント(6a,6b,8)はさらに、前後方向(X)、横方向(Y)および垂直方向(Z)に沿って作用する力に抗するよう構成された後部エンジンマウント(8)を具備してなることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の航空機用アセンブリ(1)。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のエンジンアセンブリ(1)を少なくとも一つ具備してなることを特徴とする航空機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−509318(P2008−509318A)
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−524380(P2007−524380)
【出願日】平成17年8月1日(2005.8.1)
【国際出願番号】PCT/FR2005/050637
【国際公開番号】WO2006/021721
【国際公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(501446228)エアバス・フランス (93)