説明

船用操舵装置

【課題】転舵反力を精度良く検出することのできる船用操舵装置を提供すること。
【解決手段】舵取り部材としての船外機4を転舵するための転舵機構5を備える。転舵機構5は、ステアリングホイール等の操舵部材3と機械的に連結されていない。転舵用アクチュエータ6の回転運動が、ボールねじ機構等の変換機構11によって、軸7に沿っての移動体10の直線運動に変換され、さらに、リンク機構13を介して、転舵中心軸12回りの船外機4の回動(転舵動作)に変換される。軸7の両端部に負荷される荷重を軸力センサ23,24によって検出し、検出値に基づいて転舵反力を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操舵部材と舵取り部材が機械的に連結されていない船用操舵装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
船の推進装置として、船外機と船内機とがある。
船内機では、船体内部に、船に推進力を与える動力装置と舵取り装置が備えられている。動力装置と舵取り装置とは、一体に設けられる場合と、別体に設けられて、互いの間が動力伝達装置を介して連結される場合とがある。
船外機では、船体に対して外付けの船外機本体に、動力装置を備えている。モーターボート等の小型船舶を例にとると、独立した舵は設けられておらず、船外機自体に、舵取り機構が備えられている。具体的には、船外機本体の向きを変えることにより、舵取りが行われる。
【0003】
特に小型のモーターボートの場合には、船外機本体に取り付けられたハンドルバーを介して、操縦者が直接、操舵するようになっている。
また、運転席に設けられたステアリングホイール等の操舵部材の回転を、プッシュプルケーブル等により舵取部材に機械的に伝達して、船外機本体を操舵する場合もある(例えば特許文献1,2を参照)。
【0004】
また、近年、運転席のステアリングホイール等の操舵部材と船外機とを機械的に連結しない構成の船用操舵装置が提案されている(例えば特許文献3を参照)。
【特許文献1】特許第2509015号公報
【特許文献2】特許第3189190号公報
【特許文献3】特許第2959044号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ケーブル等を用いて、ステアリングホイール等の操舵部材と舵取り部材とを機械的に連結する特許文献1では、ケーブルを伝わって転舵反力が操舵部材に伝わるが、直接伝わるので、船と海水との相対速度が速くて舵取り部材が受ける流水抵抗による転舵反力が大きい場合には、運転士が操舵部材に与えるべき操舵入力トルクが大きくなり過ぎる。
これを回避するために、例えば特許文献2のような油圧ポンプ等による操舵アシスト機構を付加した場合、アシスト力付与の影響で、流水抵抗による転舵反力情報を運転士に十分に伝えきれないことが予想される。
【0006】
一方、ステアリングホイール等の操舵部材と舵取り部材とが機械的に連結されていない特許文献3では、安価で保守が容易であるという利点があるものの、操縦者は流水抵抗による転舵反力情報を得ることができない。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、操舵部材と舵取り機構が機械的に連結されていない船用操舵装置において、転舵反力を正確に検出することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、舵取り部材(4)の転舵反力に応じた軸力(F)を受ける軸(7)を含む転舵機構(5)と、この転舵機構(5)に機械的に連結されていない操舵部材(3)と、上記軸(7)が受ける軸力(F)を検出するための軸力検出手段(23,24)とを備えたことを特徴とするものである。
本発明では、軸が受ける軸力を検出することによって、転舵反力を容易且つ正確に検出することができる。このように正確に検出された転舵反力を用いることで、操舵部材と舵取り部材とが機械的に連結されていない船用操舵装置において、例えば、検出精度の良い転舵反力に応じた適切な反力制御や転舵制御も可能となる。
【0008】
上記軸力検出手段が複数設けられた場合には、複数の軸力検出手段を用いて、転舵反力をより精度の良く検出することが可能となる。 また、本発明は、上記転舵機構(5)は、転舵用アクチュエータ(6)によって駆動されて上記軸(7)の軸長方向に移動し、移動に伴って上記軸(7)に軸力(F)を生じさせる移動体(10)と、この移動体(10)および舵取り部材(4)を互いに連結するリンク機構(13)とを含み、上記軸(7)の第1および第2の端部(7a,7b)は、船体(2)に取り付けられた第1および第2の取付部材(8,9)に、それぞれ、連結されており、上記軸力検出手段(23,24)は、上記軸(7)の各端部(7a,7b)と各端部(7a,7b)にそれぞれ対応する取付部材(8,9)との間に作用する荷重を、それぞれ、検出するための一対の荷重検出手段(23,24)を含む場合がある。
【0009】
この場合、上記軸の軸方向の何れの方向に向かう軸力が作用しても、これを一対の荷重検出手段で分担して受け、全体としての軸力を検出することができる。例えば、移動体が上記軸上を第2の端部側に移動した場合、上記軸は、第1の端部側に向かう軸力を受ける。したがって、上記軸の第1の端部に対応する荷重検出手段は、圧縮荷重を検出し、上記軸の第2の端部に対応する荷重検出手段は、引張り荷重を検出する。圧縮荷重および引張り荷重の絶対値の合力が軸力に相当するので、この合力を求めることにより、正確な軸力を把握することができる。
【0010】
また、本発明は、上記転舵機構(5)は、転舵用アクチュエータ(6)によって駆動されて上記軸(7)の軸長方向に移動し、移動に伴って上記軸(7)に軸力(F)を生じさせる移動体(10)と、この移動体(10)および舵取り部材(4)を互いに連結するリンク機構(13)とを含み、上記軸(7)の第1および第2の端部(7a,7b)は、上記軸(7)に平行なチルト中心軸(37)の回りに揺動自在に支持された第1および第2の取付部材(8,9)に、それぞれ、連結されており、上記第1の取付部材(8)は、上記(7)軸およびチルト中心軸(37)の何れか一方に、軸方向相対移動不能に連結されるとともに、他方に、軸方向相対移動自在に連結されており、上記第2の取付部材(9)は、上記軸(7)およびチルト中心軸(37)に、軸方向相対移動不能に連結されており、上記軸力検出手段(23,24)は、上記軸(7)の第2の端部(7b)と第2の取付部材(9)との間に作用する荷重を検出するための荷重検出手段(24)を含む場合がある。
【0011】
この場合、移動体が上記軸の軸方向の何れの方向に移動しても、常に、上記軸の第2の端部と第2の取付部材との連結部分に、負荷が作用し、上記軸の第1の端部と第1の取付部材との連結部分には、負荷が作用しない。したがって、第2の端部に対応して設けられた単一の荷重検出手段のみで、軸に働く軸力を検出することが可能となる。
また、本発明において、上記転舵用アクチュエータ(6)の回転駆動力を、移動体(10)を上記軸(7)の軸長方向に移動させる力に変換するための変換機構(11)を含む場合がある。例えば、電動モータの駆動力を、ボールねじ機構、ラックアンドピニオン機構等の変換機構を用いて、移動体を移動させる力に変換することができる。
【0012】
なお、上記において、括弧内の英数字は、後述する実施形態における対応構成要素の参照符号を表すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の好ましい実施の形態を、添付図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る船用操舵装置1が適用された船の模式図である。図1を参照して、船体2の前部には、ステアリングホイール等の操舵部材3が取り付けられている。また、船体2の後部には、舵取り部材を兼用する推進ユニットとしての船外機4と、船外機4の向きを変えることにより、転舵を達成するための転舵機構5とが設けられている。船外機4は、プロペラ4aと、プロペラ4aを図示しないドライブシャフトを介して駆動するための内燃機関4bを内蔵した船外機本体4cとを備えている。
【0014】
本実施の形態の船用操舵装置1では、操舵部材3と転舵機構5との機械的な結合をなくしている。転舵機構5は、操舵部材3の操作に応じて駆動される、例えば、ブラシレスモータ等の電動モータからなる転舵用アクチュエータ6を有している。転舵機構5は、転舵用アクチュエータ6の駆動力を用いて、船外機4の向きを変えることにより、転舵する。 船体2の幅方向W1(船体2の中心線C1と直交する方向に相当)に沿って延びる軸7の第1の端部7aおよび第2の端部7bが、それぞれ対応する第1の取付ブラケット8(第1の取付部材)および第2の取付ブラケット9(第2の取付部材)を介して、それぞれ船体2に固定されている。
【0015】
軸7には、上記の転舵用アクチュエータ6を内蔵し、軸7の軸長方向(船体2の幅方向W1に相当)に沿って移動可能な移動体10が設けられている。この移動体10と軸7とは、例えばボールねじ機構からなる変換機構11を介して互いに連結されている。一方、船外機本体4cは、転舵中心軸12の回りに回動自在に船体2に取り付けられており、船外機本体4cと移動体10とは、伝達機構としてのリンク機構13を介して、互いに連結されている。
【0016】
リンク機構13は、一端が移動体10に固定された第1ブラケット14と、船外機本体4cに固定された一端(図示せず)を有し、船外機本体4cとともに、転舵中心軸12の回りに回動自在な第2ブラケット15とを備えている。第1ブラケット14の他端と第2ブラケット15の他端とは、連結軸16を介して回動自在に連結されている。
転舵用アクチュエータ6が駆動されると、その転舵用アクチュエータ6の駆動力は、変換機構11を介して、軸7の軸長方向への、移動体10の直線運動に変換される。さらに、この移動体10の直線運動は、リンク機構13を介して、転舵中心軸12回りの船外機4の、転舵方向X1への回動に変換され、転舵が達成されるようになっている。
【0017】
図1を参照して、操舵部材3は、船体2に対して回転可能に支承された回転シャフト17の一端に連結されている。この回転シャフト17には、操舵部材3に操作反力を与えるための反力用アクチュエータ18が設けられている。反力用アクチュエータ18は、回転シャフト17と一体の出力シャフトを有するブラシレスモータ等の電動モータを含む。
操舵部材3の操作入力値を検出するために、回転シャフト17に関連して、操舵部材3の操舵角を検出するための操舵角センサ20が設けられている。
【0018】
また、転舵機構5に含まれる、上記の軸7に関連して、転舵角(船外機4の向き)を検出するための転舵角センサ22が設けられている。また、転舵反力に関連する、上記軸7の軸力を検出するための一対の軸力センサ23,24が設けられている。
また、船体2の航行速度(船速)を検出する船速センサ25、転舵用アクチュエータ6に供給される駆動電流を検出する電流センサ26、反力用アクチュエータ8に供給される駆動電流を検出する電流センサ27が設けられている。
【0019】
転舵用アクチュエータ6は、マイクロコンピュータ等を含む電子制御ユニット(ECU)により構成された主制御部28から、駆動回路29を介して駆動電流の供給を受けるようになっている。また、反力用アクチュエータ18は、マイクロコンピュータ等を含む電子制御ユニット(ECU)により構成された反力制御部30から、駆動回路31を介して駆動電流の供給を受けるようになっている。主制御部28と反力制御部30とは、例えばCAN(Controller Area Netwark)を用いた通信ライン32を介して、必要な信号の授受を行うことができるようになっている。
【0020】
主制御部28には、操舵角センサ20、転舵角センサ22、軸力センサ23,24、船速センサ25の出力信号が入力されており、これらの信号に基づいて、主制御部28は、転舵用アクチュエータ6を適切に制御する。
主制御部28は、例えば、軸力センサ23,24による検出結果を用いて軸7に働く軸力(転舵反力に相当)を演算し、その演算結果に応じた反力指示信号を、通信ライン32を介して、反力制御部30に出力する。反力制御部30は、取得された情報に基づいて、電流センサ27による検出結果を参照しながら、反力用アクチュエータ18をフィードバック制御し、これにより、操舵部材3に、その操作方向と逆方向の力(反力)を付与する動作をなす。
【0021】
次いで、船外機4を船体2に支持する構造について説明する。図2を参照して、船外機本体4cは、一対のクランプブラケット33,34とスイベルブラケット35とによって、船体2に支持されている。各クランプブラケット33,34は、船体2のトランサム(後尾板)36を把持することによって船体2に固定されている。スイベルブラケット35は、クランプブラケット33,34に、水平回動中心軸としてのチルト中心軸37の回りに、チルト方向Y1に回動自在に連結されている。
【0022】
チルト中心軸37は、一対の取付ブラケット8,9間に架設された状態で、一対のクランプブラケット33,34に貫通されている。各取付ブラケット8,9と対応するクランプブラケット33,34との間には、それぞれ、ワッシャ38が介在している。各取付ブラケット8,9の、対応するクランプブラケット33,34への取付は、スイベルブラケット35に両クランプブラケット33,34を軸支するための上記チルト中心軸37の両端部に螺合されるナット39によって、共締め状態でなされている。
【0023】
船外機本体4cは、スイベルブラケット35に、上記の転舵中心軸12の回りに回動自在に取り付けられている。これにより、船外機4を転舵中心軸12の回りに可動させることによって、転舵角(船体2の中心線C1に対して推進力の方向がなす角)を変化させることができる。また、スイベルブラケット35をチルト中心軸37回りに回動させることによって、船外機4のトリム角(水平面に対して推進力の方向がなす方向)を変化させることができる。
【0024】
移動体10は、軸7を挿通させる筒状のハウジングによって構成されている。変換機構11は、軸7に形成されたねじ軸11aと、図示しないボールを介して、上記ねじ軸11aと螺合する回転筒としてのボールナット11bとにより構成されている。ボールナット11bは、移動体10の内周に保持された一対の軸受40によって、回転可能に且つ軸方向移動不能に保持されている。
【0025】
転舵用アクチュエータ6を構成するブラシレスモータは、可動部6aと、固定部6bとを備えている。可動部6aは、例えば、ボールナット11bの外周に固定された筒状のマグネットからなる。固定部6bは、例えば、可動部6aの周囲を隙間を設けて取り囲む環状に配列され且つ移動体10の内周に固定された複数のヨークに、コイルを巻き付けて構成されている。
【0026】
第1のブラケット14に設けられる、連結軸16のための連結孔14aは、船体の中心線C1と平行に延びる長孔に形成されている。
図3Aおよび図3Bを参照して、上記の軸7の第1および第2の端部7a,7bは、それぞれ、対応する軸力センサ23,24を介して、対応する取付ブラケット8,9に固定されている。具体的には、軸力センサ23,24は、荷重検出手段としての、例えばロードセルによって構成されており、各軸力センサ23,24の一方の端面には、ねじ軸41が突出形成され、他方の端面には、ねじ筒42が突出形成されている。
【0027】
各軸力センサ23,24のねじ軸41は、軸7の対応する端部7a,7bから延設されたねじ筒43に螺合している。また、各軸力センサ23,24のねじ筒42には、対応するブラケット8,9のねじ挿通孔44に挿通された固定ねじ45が螺合している。これにより、各軸力センサ23,24には、軸方向の双方向の荷重を検出することができるようになっている。
【0028】
次いで、図4のフローチャートを参照して、軸7に働く軸力を求めるための主制御部28による処理の流れを説明する。
まず、軸7の左右の軸力センサ23,24からの信号に基づいて、左軸力FLおよび右軸力FRが検出される(ステップS1)。次いで、検出された左軸力FLと右軸力FRに基づいて、軸7に働く軸力Fが求められる(ステップS2)。
【0029】
具体的には、式F=FR+(−FL)により、演算される。ただし、引っ張り側を正とし、圧縮側を負としている。
次いで、求められた軸力Fに応じた反力指示信号が、通信ライン32を介して、反力制御部30へ出力される(ステップS3)。
操舵部材3が、図5に示すように、左回りに操舵トルクTが付与されて左操舵されるときは、移動体10が、右の軸力センサ24側へ移動し、軸7は左方への軸力Fを受けることになる。この場合、左の軸力センサ23は圧縮荷重(すなわち、検出される左軸力FLは負となる)を受け、右の軸力センサ24は引っ張り荷重(すなわち、検出される右軸力FRは正となる)を受ける。したがって、求められた軸力Fは、正(F>0)となる。
【0030】
求められた軸力Fの情報は、通信ライン32を介して、反力制御部30に与えられる。反力制御部30では、与えられた軸力Fが正(F>0)であるので、操舵部材3に右回りに、与えられた軸力Fの大きさに応じた反力Rを与えることになる。
なお、上記では、軸7に働く軸力Fが、操舵時の移動体10の移動による負荷によるものに則して説明したが、転舵時の船外機4が流水から受ける外力も、軸力7に軸力Fを生じさせる。したがって、軸力Fを検出することにより、実質的な転舵反力を検出することができるわけである。
【0031】
なお、船外機4に流木等が衝突して、転舵機構5に過大な逆入力が加えられた場合に、すなわち、軸力Fが所定の範囲を逸脱する場合(F<下限値Fmin、または、上限値Fmax<F)に、反力用アクチュエータ18によって操舵部材3にパルスや振動を与えるようにし、これにより、操舵部材3を介して操縦者に異常を知らせるような反力制御を実施することが可能である。また、軸力Fが所定の範囲を逸脱する場合(F<下限値Fmin、または、上限値Fmax<F)に、舵取り部材である船外機4の転舵位置を中点に戻したり、中点に近づけたりする転舵制御を実施することが可能である。
【0032】
このように、本実施の形態によれば、転舵機構5に含まれる軸7が受ける軸力Fを検出することによって、転舵反力を容易且つ正確に検出することができる。これにより、検出精度の良い転舵反力に応じた適切な反力制御や転舵制御が可能となる。
また、一対の軸力センサ23,24を用いて軸力を検出するので、転舵反力をより精度の良く検出することができる。
【0033】
また、転舵力は、船外機4自身の動力に依存しない転舵用アクチュエータ6によって発生されるので、船外機4の運転状態に拘らず、航行条件に適した転舵力を発生させることができる。
次いで、図6は、本発明の別の実施の形態の転舵機構を示している。図6を参照して、本実施の形態が図2の実施の形態と異なるのは、下記である。すなわち、例えば左の軸力センサを廃止して、軸7の第1の端部7aを第1の取付ブラケット8に直接固定している。したがって、軸力センサとしては、右の軸力センサ24が唯一設けられている。
【0034】
また、第1の取付ブラケット8は、チルト中心軸37に、軸方向相対移動自在に連結されている。具体的には、チルト中心軸37の軸方向に関して、第1の取付ブラケット8と対応するクランプブラケット33との間に、隙間46が設けられ、第1の取付ブラケット8とナット39との間に、隙間47が設けられている。
これにより、軸7に働く軸力Fの全体が、軸力センサ24に引っ張り荷重または圧縮荷重として負荷されるようにされている。したがって、軸力Fは右軸力FRと等しくなる(F=FR)。他の構成については、図2の実施の形態と同様であるので、図2と共通の構成については、図2と同じ符号を図6に付して、その説明を省略している。
【0035】
本実施の形態においても、図2の実施の形態と同様に、検出精度の良い転舵反力に応じた適切な反力制御や転舵制御が可能となる。
図6の実施の形態においては、第1の取付ブラケット8を、チルト中心軸37に対して軸方向相対移動自在に連結したが、第1のブラケット8は、軸7およびチルト中心軸37の何れ一方に対して、軸方向相対移動自在に連結されていればよい。
【0036】
したがって、図7に示すように、第1の取付ブラケット8を、軸7に対して軸方向相対移動自在に連結するようにしてもよい。この場合、取付ブラケット8と軸7の第1の端部7aとの間に、隙間49が形成され、取付ブラケット8を貫通して軸7の第1の端部7aにねじ込まれたボルト48の頭部と取付ブラケット8との間に、隙間50が形成されている。
【0037】
また、図示していないが、第1の取付ブラケット8を、軸7およびチルト中心軸37の双方に、軸方向相対移動不能に連結し、第2の取付ブラケット9を、軸7およびチルト中心軸37の何れか一方に対して、軸方向相対移動自在に連結するようにしてもよい。この場合、軸力センサは、軸7の第1の端部7aと第1の取付ブラケット8との間のみに配置されることになる。
【0038】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、例えば、変換機構として、ボールねじ機構に代えて、ラックアンドピニオン機構を用いるようにしてもよい。また、本発明の船用操舵装置を、いわゆる船内機によって推進力を得る船に適用するようにしてもよい。その他、請求の範囲記載の範囲内で種々の変更を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施の形態の船用操舵装置が適用された船の模式図である。
【図2】転舵機構の概略断面図である。
【図3】図3Aおよび図3Bは、軸の左右の端部への、軸力センサの取付構造を示す断面図である。
【図4】ECUによる制御の流れを示すフローチャートである。
【図5】操舵時に、操舵部材に負荷される力、並びに転舵機構の軸および軸力センサに負荷される力の関係を説明するための模式図である。
【図6】本発明の別の実施の形態の船要素操舵装置の転舵機構の概略断面図である。
【図7】本発明のさらに別の実施の形態の船要素操舵装置の転舵機構の概略断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1…船用操舵装置、2…船体、3…操舵部材、4…船外機(舵取り部材)、5…転舵機構、6…転舵用アクチュエータ、7…軸、7a…第1の端部、7b…第2の端部、8…第1の取付ブラケット(第1の取付部材)、9…第2の取付ブラケット(第2の取付部材)、10…移動体、11…変換機構、12…転舵中心軸、13…リンク機構、18…反力用アクチュエータ、20…操舵角センサ、22…転舵角センサ、23,24…軸力センサ(軸力検出手段。荷重検出手段)、25…船速センサ、28…主制御部、30…反力制御部、33,34…クランプブラケット、35…スイベルブラケット、37…チルト中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
舵取り部材の転舵反力に応じた軸力を受ける軸を含む転舵機構と、
この転舵機構に機械的に連結されていない操舵部材と、
上記軸が受ける軸力を検出するための軸力検出手段とを備えたことを特徴とする船用操舵装置。
【請求項2】
請求項1において、上記軸力検出手段が複数設けられたことを特徴とする船用操舵装置。
【請求項3】
請求項1において、上記転舵機構は、転舵用アクチュエータによって駆動されて上記軸の軸長方向に移動し、移動に伴って上記軸に軸力を生じさせる移動体と、この移動体および舵取り部材を互いに連結するリンク機構とを含み、
上記軸の第1および第2の端部は、船体に取り付けられた第1および第2の取付部材に、それぞれ、連結されており、
上記軸力検出手段は、上記軸の各端部と各端部にそれぞれ対応する取付部材との間に作用する荷重を、それぞれ、検出するための一対の荷重検出手段を含むことを特徴とする船用操舵装置。
【請求項4】
請求項1において、上記転舵機構は、転舵用アクチュエータによって駆動されて上記軸の軸長方向に移動し、移動に伴って上記軸に軸力を生じさせる移動体と、この移動体および舵取り部材を互いに連結するリンク機構とを含み、
上記軸の第1および第2の端部は、上記軸に平行なチルト中心軸の回りに揺動自在に支持された第1および第2の取付部材に、それぞれ、連結されており、
上記第1の取付部材は、上記軸およびチルト中心軸の何れか一方に、軸方向相対移動不能に連結されるとともに、他方に、軸方向相対移動自在に連結されており、
上記第2の取付部材は、上記軸およびチルト中心軸に、軸方向相対移動不能に連結されており、
上記軸力検出手段は、上記軸の第2の端部と第2の取付部材との間に作用する荷重を検出するための荷重検出手段を含むことを特徴とする船用操舵装置。
【請求項5】
請求項3または4において、上記転舵用アクチュエータの回転駆動力を、移動体を上記軸の軸長方向に移動させる力に変換するための変換機構を含むことを特徴とする船用操舵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−1205(P2008−1205A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−171824(P2006−171824)
【出願日】平成18年6月21日(2006.6.21)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【出願人】(000176213)ヤマハマリン株式会社 (256)