説明

船舶エンジンの排出ガスを利用した船舶バラスト水の処理方法及び処理装置

本発明は、船舶用排出ガス及び船舶バラスト水の処理方法及び装置を提供する。本発明は、(1)微生物の処理対象になる船舶バラスト水を濾過し、船舶バラスト水のタンクに貯蔵・活用する工程、(2)船舶バラスト水を船舶バラスト水のタンクから船舶バラスト水の処理タンクへ移送し、粒子状物質(PM)などが除去された船舶エンジンの排出ガスを熱交換により温度を低くし、船舶バラスト水の水素イオン濃度を調節することで船舶バラスト水中の海洋微生物を一次的に死滅・除去する工程、(3)pH調節で海洋微生物を死滅・処理した船舶バラスト水を船舶バラスト水の排出タンクに移送し、排出ガスとの熱交換で排出される船舶バラスト水の温度を高めて二次的に残留海洋微生物の死滅を誘導すると共に船舶バラスト水に残る二酸化炭素と窒素酸化物などの脱気により船舶バラスト水の水素イオン濃度を海水の水素イオン濃度に近づけるように、排出に適合する水素イオン濃度に変化させる工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶に設置されて船舶バラスト水中の海洋微生物を分離・除去する船舶バラスト水の処理方法及び処理装置に関する。詳細には、船舶エンジンから排出される排出ガスを利用して船舶バラスト水中の水素イオン濃度を酸性に調節することで、前記海洋微生物を死滅させるとともに、大気汚染源の排出ガスを抑制する新たな船舶バラスト水の処理方法及び処理処置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
船舶バラスト水
地球上で生産される財貨の80%が船舶によって国際的に移動されており、このような船舶の移動のために毎年約30〜50億トンの海水が国際的に移動されている。船舶による財貨の国際的な移動により船舶の外部に付着したり、船舶バラスト水に含まれたりして移動した外来の海洋微生物が地域の海洋生態系を脅かしているのは事実である。この経路による外来種の流入は海洋生態系をかく乱する要因の一つとして認識されており、海洋生態系のかく乱による土着生物の絶滅はもちろん海洋生態環境を破壊させることができる観点で単純な海洋汚染よりもっと深刻な現実として認識されている。
【0003】
このような船舶バラスト水(ballast water)は、船舶から貨物が搬出された際、浮力による船舶の重心が高くなり、それにより船舶の安定性が低くなることを防止するために、貨物の搬出量に比例して船舶内に貯蔵される海水である。また、船舶に貨物を積載する際には船舶バラスト水を排出する。その排出量もまた貨物の積載量に比例することになる。このように船舶運航に必ず必要な船舶バラスト水は、国際間の貿易の増加によって船舶バラスト水に含まれる生物個体の地理的移動をもたらすようになり、このような海洋微生物個体の移動が海洋生態系をかく乱する原因として問題とされている。
【0004】
船舶バラスト水の移動に関して具体的に現実をよく見れば、船舶バラスト水の排出から起因する外国のまたは他の地域の海洋未生物種は該当の排出地域の環境に適応する場合、旺盛な繁殖が発生することで該当海域に自然に土着化されるとともに隣近の海域までに拡散される。すなわち、土着海洋生物資源が大いに影響される。状況によって外来種と土着種の間で均衡状態になり有利な状況が展開されることも考えられるが、現実はそうではなく該当海域の生態系はフード・チェーンで持ち上がる大きな変化が起こり、これによって魚種変化による経済的な側面はもちろん種類別水産物生産にも決定的な問題がもたらされる。最終的に、外来海洋未生物種の流入は望まない海洋生態系の変化を誘導し、私たちの生活も自らの思惑に関係なく大いに影響されることになる。
【0005】
参考として、仁川港と釜山港で調査されたニュージーランド、台湾、香港、シンガポール、北太平洋、パキスタンと日本近海などの地で流入された船舶バラスト水の中の海洋未生物種として植物プランクトン、原生動物プランクトン、後生動物プランクトン、その他プランクトンなどを種、属、または上位段階の分類群で区分してみた。その結果、全体分類群の数は7〜53個の範囲であった。一方、分類された海洋微生物の出現分類群の数は、全170個(植物プランクトン:ケイ藻類と渦鞭毛藻類及びその他90個、後生動物プランクトン56個、原生動物プランクトン24個)であった(Yoo et al. 2006)。
【0006】
船舶バラスト水の中の各々海洋微生物は、取水海域による分布として分かるが、船舶バラスト水の交換作業で、船舶バラスト水がすべて交換することはできないので相互混載の状態で存在している。ゆえに、このような現象を念頭において海洋微生物などを処理対象の基準にして船舶バラスト水の中の海洋微生物などを死滅処理すると、もっと価値がある有用な結果が導き出される。
【0007】
したがって、このような船舶バラスト水の移動で発生される生態的、経済的被害を阻んで、生物の多様性を保全するために国際海事機関(IMO)では2004年2月「船舶の船舶バラスト水と沈殿物の規制及び管理のための国際協約」を採択した。また、2015年末までに国際航海に勤める船舶に義務的に船舶バラスト水の処理処置を搭載するように規定している。
【0008】
船舶の排出ガス
船舶エンジンの排出ガス現況を見ると、一般的に船舶のエンジン(大部分はディーゼル・エンジン)から排出される排出ガスの算定に関して観察されるデータの基礎として優先的にロイドフェアプレイデータベース(Lloyds-FairplayDatabase)が挙げられる。これによると、2007年度の全世界の総船数は 45,620隻であり、これを基準として二酸化炭素の排出量用を産出すると荷船 36,638隻で 839.95百万トン、旅客船 2,801隻で 93.67百万トン、400GT級以下の船舶 6,281隻で 9.82百万トンとなり、これらの二酸化炭素の総俳出量は 943.44百万トンであった。したがって、これを根拠として類推できる事実は海洋汚染に二酸化炭素等が大きく関連していることである。このため、 '国際海事機関'でもこれに対して規制を推進している。一方、船舶排出ガスの構成成分比率をみると、大略的に CO2:95.48%、N02:2.76%、S02:l.1O%、CO:0.11 %、HC:0.33%及びPM:0.22%ほどであるが(MAN Diesel基準 2004)、2007年各種船舶 45,620隻から出た全世界の二酸化炭素の俳出量は 943.44百万トンと集計されたことがあった。このため、船舶運航で発生される大気汚染となるCO2に対する処理は、海洋微生物の移動問題より重要であり、至急な問題として判断されている。
【0009】
最近までに適用されている船舶バラスト水の処理技術は、大部分の海水が貯蔵される船舶バラスト水の貯層タンクと関連して直接に行われることが一般的である。
【0010】
したがって、海水に含まれている海洋微生物が、船舶バラスト水の貯蔵タンク内で活発に成長する不必要な作用も発生されるので、海洋微生物に対する前処理技術は必ず必要で重要だと判断する。なぜなら、海洋微生物の成長と繁殖は2次的な汚染問題を生じさせる。よって、この問題を最小化させれば、経済的にも有利である。また、海洋微生物の量を事前に調節することで後続海洋微生物の死滅工程がもっと容易に効果的に推進されることができるのである。
【0011】
また、船舶バラスト水の海洋微生物に対する死滅方法を検討すると、過酸化塩化物法、オゾン法、電気分解法、紫外線法、そして脱酸素法などで大略的に分類することができ、そのような方法は、それぞれ下記のような問題点を持つ。
【0012】
過酸化塩化物法とオゾン法などでは、殺菌効果は非常に優れているが、作用後残る過酸化物を別途に中和または除去しなければならないので、これに対する多数の設備が必要であり、必ず船舶バラスト水に関する設備の腐食防止方法も講じなければならない。また、電気分解法も過酸化塩化物法のように殺菌効果は非常に良好だが、海洋微生物の死滅に適切な濃度の過酸化塩化物を適正、適量に生産し難い問題、そして前記のオゾン法のように腐食問題がある。 さらに、紫外線法は、装置設備も簡単で装置運転は比較的容易だが、いつも紫外線ランプの寿命とコンデンサーのような必須装置などを考慮しなければならなく、同時に電気エネルギーが多量で消耗する点も考慮すべき問題がある。また、脱酸所法は、装置設備の側面で非常に簡単であると見えるが、正確な工程分析が最も大事な因子で認識されており、海洋微生物の死滅効果もやや不十分であるといえる。
【0013】
特に,米国特許第6,722,933号は、海洋微生物が急激に増殖されるように、すなわち、適量の微生物用餌を投与し一定の時間が経過した後酸素欠乏を急激に誘導するために、メタ重亜硫酸ナトリウムを加えて酸素を制御(酸素欠乏状態で発生できる硫化水素を生成したり硫が遊離したりする)して、気体窒素を注入したり真空装置を利用して排気する方法である。つまり船舶バラスト水の中の酸素を除去する方法を選択し、海洋微生物の死滅を推進、規制している。ただ、前記特許は海洋微生物の餌供給、メタ重亜硫酸ナトリウムの使用、窒素ガスの使用などで改善の余地があるといえる。すなわち、餌による2次汚染、メタ亜硫酸ナトリウムによる腐食問題、同時にメタ亜硫酸ナトリウムによる2次汚染、そして酸素除去のみのための窒素使用などは、また他の新しい問題を誘発させる。また、米国特許公開第 2007/0261626号で優先的に論議した核心技術は、船舶バラスト水の中の溶存酸素量を高めるとともに、海洋微生物に対する餌を供給し海洋微生物の急激な増殖をはかった後、大気圧より低く減圧(underpressurized condition)する技術で、真空度を−2〜4psiの範囲で処理して海洋微生物を除去する方法である。しかし、餌による海洋微生物の増殖は、残った餌による2次汚染が予測されるとともに、大容量タンクに対する減圧は実際にその調整などの運転が容易ではないという問題もある。
【0014】
このような船舶バラスト水の処理方法は、腐食防止処理や低減処理などで問題がおこる可能性が十分ある。したがって、従来の船舶バラスト水の処理技術は、死滅方法による死別処理工程以後に処理された船舶バラスト水の中和工程が大分伴うのである。
【0015】
結果的に、このように生み出された多くの問題から、船舶バラスト水の処理技術の中で海洋微生物の死滅処理方法を全般的に再検討し、それと同時に処理効果をもっと向上させる経済的な処理方法が必ず必要だという結論を導出するようになった。
【0016】
ゆえに、前処理概念として海水をあらかじめ精密に濾過して海洋微生物を1次的に除去することで海洋微生物を効果的に死滅・処理できる土台を用意し、船舶バラスト水のpHの調節で船舶バラスト水の中の海洋微生物を死滅・処理する方法を用いるようになった。実際に船舶バラスト水の処理方法に関して公知された技術を見ると、船舶バラスト水のpHを調節して海洋微生物を死滅させる方法、またpHを調節する技術を提供することにおいて船舶エンジンから排出する船舶エンジン排気ガス(stack gas from marine engine)を活用する方法で、このようなそれぞれの内容を探すのはむずかしい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許第6,722,933号
【特許文献2】米国特許公開第2007/0261626号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明が解決しようとする課題は、海洋微生物の死滅・処理に先立って精密な濾過の方法で海洋微生物を選別的に分離・除去して海洋微生物の死滅・処理の効率性を高めて、また海洋微生物を死滅・処理する場合に伴う前記のような不作用を生じる後処理を最小化する非常に効果的で経済的な観点の船舶バラスト水の処理方法を提供することである。そして、本発明は、このような目的を遂げるため優先的に船舶バラスト水用の海水を精密濾過し、船舶バラスト水のpHを調節して海洋微生物を死滅させる技術を提供し、また、船舶のエンジンから排出される排出ガスをpH調節に積極活用することで、船舶排出ガスの制御問題に対応することである。
【0019】
本発明のこのような差別化した技術的な目的としては、海水に対する事前処理として海洋微生物を選別的に分離し、海洋微生物の死滅・処理を効果的に遂行するようにし、また、CO2などを活用して船舶バラスト水の水素イオン濃度の変化を誘導することは、国際海事機関の環境汚染防止指針にも合致することであり、そして、船舶バラスト水に対する新しい処理方法を提供することでもある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
前記課題を解決するために、本発明は船舶バラスト水の中の海洋微生物を死滅させる方法において、船舶バラスト水の水素イオン濃度を高めて海洋微生物を死滅させることを特徴とする船舶バラスト水の処理方法を提供する。海水に含まれた海洋微生物は、大体低いpHで死滅するため、pH調節で船舶バラスト水の中の海洋微生物を死滅させることが可能である。この場合、望ましい船舶バラスト水の水素イオン濃度は、pH5.0以下で、もっと望ましくは、pHは4.0〜5.0である。これは、数多い文献検証を通じて得た分析結果であり、もっと低いpHは腐食問題などの不作用をもたらす。したがって、pHを低めるが、海洋微生物のみを死滅させることができるように、pH調節に対して適正な技術が必要である。
【0021】
このように、pH調節を通じて海洋微生物の死滅方法を適用する場合に、船舶バラスト水のタンクとともに別途の船舶バラスト水の処理タンクを設けて海洋微生物の死滅作業を行うのが望ましい。この場合は、前処理方法の一つとして処理予定の船舶バラスト水の酸素溶解度を高めて海洋微生物を活発に活動することが実際的に多少有利ではあるが、総体的に船舶バラスト水の海洋微生物の処理という観点で重要な技術的問題が生じる。ただ、船舶バラスト水に対して前処理の概念として、該当海水に対して精密に濾過することでその大きさが50μm 以上の海洋微生物を事前分離するのが、船舶バラスト水のタンク内部への海洋微生物の繁殖と成長の防止対策の一つであり、結果的に海洋微生物の死滅・処理を補完する一つの方法として見なされている。
【0022】
本発明のまた一つの特徴は、前述したようにpHを調節する際に船舶エンジンから排出される排出ガスを利用することである。すなわち、船舶エンジンの排出ガスを濾過して粒子状物質(PM)などを分離・除去して濾過された船舶エンジンの排出ガスを船舶バラスト水に注入して水素イオン濃度を高めることによって、船舶バラスト水の中の海洋微生物を死滅・除去するようにする。この時、船舶エンジンの排出ガスは熱交換という方法を通じて船舶排出ガスの温度を低めたあとに、前記船舶バラスト水に注入するのが望ましい。このように処理する理由は、CO2でpHを調節する場合、ヘンリーの法則(Henry's Law)によって冷却すれば船舶バラスト水の処理タンクのCO2溶解度が増加するCO2気体の特性と合う画期的な処理工程といえる。
【0023】
付加的な効果として、海洋微生物が死滅・処理された船舶バラスト水と、船舶バラスト水の排出タンク内で船舶エンジンの排出ガスが熱交換を通じて排出される船舶バラスト水の温度を上昇させることで、船舶バラスト水の処理タンクで死滅されなかった残存する海洋微生物を2次的に死滅・処理するようになり、同時に排出船舶バラスト水からCO2を排除・分離して排出船舶バラスト水のpHを一般海水に近づけるようにし、船舶バラスト水の排出条件に基づいて処理することができるようになる。
【0024】
また、前記船舶バラスト水の水素イオン濃度は、船舶エンジンの排出ガスだけではなく、酸性物質(例えば、液体状態の酢酸または塩酸など)を投入することで調節できる。すなわち、本発明は船舶エンジンの排出ガスを利用するが、適正pHを合わせるために酸性物質を必要によって加えることで、水素イオン濃度を変化させる工程を含めることができるようにしてもよい。本発明は、排出ガスによるpHの調節という革新的な方法の提供と共に地球大気汚染の防止または減少という優れた効果を具体的に実現する。
【発明の効果】
【0025】
本発明による船舶エンジンの排出ガスを利用する船舶バラスト水の処理方法は、船舶バラスト水の中の水素イオン濃度(pH)の調節を通じて船舶バラスト水の中の海洋微生物を除去することで、従来の他の技術と比較して海洋微生物を死滅・処理する場合に起こる不作用を防ぐことができる。また、腐食防止のような補完的な設備を最小化するかたわら精密濾過で前処理した海水を船舶バラスト水で活用することで海洋微生物の死滅効果を高め、より経済的で、効率が極大化された船舶バラスト水の処理方法を提供する。
【0026】
また本発明によると、船舶から発生される排出ガスを活用して船舶バラスト水の中の水素イオン濃度(pH)を調節する。これにより、地球大気汚染の主な原因となる排出ガスの抑制に実践的に参加することができる。そのためCO2を独立的に処理するために別途の設備が不必要になり、より環境にやさしく、より特別な経済的な効果を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の望ましい実施例として船舶エンジンの排出ガスを活用した船舶バラスト水の処理方法の順序図である。
【図2】本発明の望ましい実施例として船舶エンジンの排出ガスを活用した船舶バラスト水の処理方法を実施するための装置の概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図1および図2を参照して、本発明の望ましい実施例として、船舶エンジンの排出ガスを利用した船舶バラスト水の処理方法を詳細に説明する。
【0029】
図1は、本発明の望ましい実施例として船舶エンジンの排出ガスを利用した船舶バラスト水の処理方法の順序図である。図1に図示されたように、本発明による船舶バラスト水の処理方法は、流入される海水を流入部の濾過装置を利用し濾過して、これを船舶バラスト水として活用する工程S10、濾過された船舶バラスト水を船舶バラスト水タンクに移送する工程S20、船舶バラスト水を船舶バラスト水の処理タンクに移送する工程S30、船舶エンジンの排出ガスを船舶バラスト水の処理タンクの中の船舶バラスト水に注入し船舶バラスト水の水素イオン濃度を高めて、必要によって酸性物質を船舶バラスト水の処理タンクの中の船舶バラスト水に加えて船舶バラスト水の水素イオン濃度を調節する工程S40、死滅・処理の後に排出される船舶バラスト水の温度を高めて船舶バラスト水に含まれている二酸化炭素を排気させると共に, 船舶バラスト水の中の水素イオン濃度を正常の一般海水の水素イオン濃度に近づける工程S50、そして死滅・処理された船舶バラスト水を排出の前に再び濾過して排出する工程S60を含む。
【0030】
前記流入される海水を流入部の濾過装置で濾過して船舶バラスト水として活用する工程S10は、船舶バラスト水として使用される海水を船舶へ流入する工程で、濾過装置を通じて50μm 以上の海洋微生物をあらかじめ分離・除去し、船舶へ流入される海水が、濾過された船舶バラスト水で活用されることができるように貯蔵する。濾過された船舶バラスト水を船舶バラスト水のタンクに移送する工程S20は、濾過を通じて海洋微生物が濾過された海水を、船舶バラスト水で活用するために船舶バラスト水のタンクへ移送する工程を言う。
【0031】
前記船舶バラスト水を船舶バラスト水の処理タンクへ移送する工程S30は、船舶バラスト水の中に生きている海洋微生物を死滅するために船舶バラスト水の処理タンクへ移送する工程である。すなわち、船舶が、一定期間あるいは一定の距離を移動した際には、船舶水を排出しなければならない。その場合、船舶バラスト水は船舶バラスト水の処理タンクへ移送され、海洋微生物を死滅・除去させる準備をする。特に、船舶バラスト水の処理タンクは、船舶バラスト水の中の海洋微生物を死滅・除去する装置として、耐酸性物質などで船舶バラスト水の処理タンクの内部を事前に処理して酸性をもつ物質の注入または船舶エンジンの排出ガスの注入などで生じる腐食を防止するようにする。
【0032】
船舶エンジンの排出ガスを船舶バラスト水の処理タンクの中の船舶バラスト水に注入し、船舶バラスト水の水素イオン濃度を高めて、必要によって酸性物質を船舶バラスト水の処理タンクの中の船舶バラスト水に加えて船舶バラスト水の水素イオン濃度を調節する工程S40は、船舶バラスト水の処理タンクへ移送された船舶バラスト水に船舶エンジンの排出ガスを注入し、船舶バラスト水の水素イオン濃度を高めることで船舶バラスト水の中の海洋微生物を死滅させる工程を言う。特に、前記船舶エンジンの排出ガスは別途の濾過フィルタを通じて粒子状物質(PM)などの異物を除去し、また熱交換などの方法で冷却処理して船舶バラスト水の中に注入される。この場合、船舶エンジンの排出ガスを注入する前に圧縮空気を船舶バラスト水の処理タンクへ注入して船舶バラスト水の処理タンクの中の船舶バラスト水の中の海洋微生物を増殖させることもできる。前記船舶エンジンの排出ガスを注入する時、圧縮空気の注入によって船舶バラスト水の中の海洋微生物の増殖で海洋微生物の死滅効果を特別にはかることができるが、特別な意味は持たない。船舶エンジンの排出ガスは、船舶エンジンから排出されるガスとして二酸化炭素(C02)が代表的なガスである。本発明による船舶バラスト水の処理方法は、二酸化炭素の活用で地球大気汚染の制御という1次的で、確実な効果を提供することができる。また船舶排出ガスの注入によって船舶バラスト水の中の水素イオン濃度は、pHの換算で5.0以下に維持するのが望ましく、特に、4.0〜5.0に維持するのがもっとも望ましい。これは海洋微生物が死滅されるpHの範囲と共に影響を与える関連設備などの腐食問題なども考慮した結果である。したがって、前記船舶バラスト水の中の水素イオン濃度の適正値を、注入される二酸化炭素の量で調節しなければならないのである。すなわち、二酸化炭素の注入によって、適切な船舶バラスト水のpH値が得られた際には、二酸化炭素の注入を中断することが望ましい。
【0033】
また、船舶エンジンの排出ガスを注入して望む水準の水素イオン濃度を得ることができない場合、または、船舶エンジンの排出ガスの供給がなだらかではない場合には、酸性物質を船舶バラスト水の処理タンクに加えて船舶バラスト水の水素イオン濃度を調節し、船舶バラスト水の中の海洋微生物を死滅させる。酸性をもつ物質としては、酢酸または塩酸などが代表的で、酸性物質の貯蔵タンクに貯蔵されている酢酸または塩酸を船舶バラスト水の処理タンクに注入し、船舶バラスト水の水素イオン濃度を高めるようにする。すなわち、本発明による船舶エンジンの排出ガスを活用した船舶バラスト水の処理方法は、船舶エンジンの排出ガスを注入して、必要によって酸性物質を注入する工程S40を具備することによって、選択的に船舶バラスト水の処理タンクの中の船舶バラスト水の水素イオン濃度を調節することができる。そして、海洋微生物が死滅された船舶バラスト水は、船舶バラスト水の排出タンクへ移送され、再濾過して排出することが可能な程度になり、すぐ排出することができる。
【0034】
水素イオン濃度の変化による船舶バラスト水の中に生きている代表的な海洋微生物の死滅率を、以下の表1に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
表1のように、水素イオン濃度が、pH5.0以下の場合で大体の海洋微生物が死滅され、pH4.0では、ほとんどの海洋微生物が死滅されることを確認することができる。
【0037】
前記死滅・処理工程を行った後、排出予定の船舶バラスト水の温度を高めて船舶バラスト水に含まれている二酸化炭素が排気されるようにし、船舶バラスト水の中の水素イオン濃度を正常の一般海水の水素イオン濃度と合わせる工程S50は、熱い船舶エンジンの排出ガス(700〜900度)と排出される船舶バラスト水との熱交換を通じて船舶バラスト水の排出タンクの中の船舶バラスト水の温度を高めることで、船舶バラスト水に含まれている二酸化炭素を容易に排気させる、そして、二酸化炭素を排気させることで船舶バラスト水の水素イオン濃度を調節する工程である。なお、排出前の船舶バラスト水の温度は、排出船舶バラスト水の中に残っている海洋微生物の死滅を考慮すると、55℃以上に維持されるのが望ましい。
【0038】
死滅・処理された船舶バラスト水を濾過して、濾過された船舶バラスト水を排出する工程S60は、死滅・処理工程S40で船舶バラスト水に注入されたC02と酸性物質を熱交換により排気することによって排出船舶バラスト水のpHを一般海水に近づけるように処理した船舶バラスト水を、濾過装置で再濾過する工程を言う。
【0039】
次に、船舶エンジンの排出ガスを活用した船舶バラスト水の処理方法を実施するための装置を、例を挙げて説明する。図2は、本発明の望ましい実施例として船舶エンジンの排出ガスを活用した船舶バラスト水の処理方法を実施するための装置の概要図である。
【0040】
図2に図示されたように、海水流入部を通じて流入された海水は、流入部濾過装置12によって1次的に濾過された後、船舶バラスト水タンク1に貯蔵されて船舶バラスト水として活用される。船舶バラスト水の処理タンク2は、船舶バラスト水の中の海洋微生物を死滅・処理する場所で船舶バラスト水が自由に移動することできるように、船舶のバランスを保つために運用される船舶バラスト水タンク1と接続される。船舶バラスト水を船舶外部へ排出しようとする場合には、船舶バラスト水処理タンク2で海洋微生物を死滅・処理する。その後、船舶バラスト水の処理タンク2に接続されている船舶バラスト水の排出タンク3と排出船舶バラスト水の濾過装置14を通って、船舶バラスト水を処理して直ちに船舶バラスト水を排出する。船舶バラスト水の排出部には、残渣物の流出タンク5を別途設置するのが望ましい。
【0041】
船舶バラスト水の処理タンク2の中に生きている海洋微生物を船舶バラスト水のpH調節で死滅・除去させるために、船舶の排出ガスを船舶バラスト水の処理タンク2中へ注入する工程は、まず排出ガスの流入部を通じて流入された排出ガスを排出ガスの濾過装置15により粒子状物質(PM)などを分離・除去する。そして、分離・除去された排出ガスを排出ガスタンク4に貯蔵した後、船舶バラスト水の処理タンク2に注入する。排出ガスは、船舶バラスト水の処理タンク2へ注入する前に排出される船舶バラスト水との熱交換でその温度を低めることが非常に望ましい。つまり、船舶バラスト水の排出タンク3の中で熱交換ができるように配管し、排出ガスが船舶バラスト水の処理タンク2へ注入される前にこの配管を通過するようにして、排出ガスの温度をできるだけ低めることが好ましい。また、船舶バラスト水の処理タンク2に圧縮空気の流入部を設置することが望ましい。圧縮空気タンク6の圧縮空気を船舶バラスト水の処理タンクに注入し船舶排出ガスと船舶バラスト水との撹拌が円満に成り立つことができるように、また、過量の二酸化炭素などを容易に排気することができるように、事前に船舶バラスト水の処理タンク2に圧縮空気の流入部を備えるのが非常に望ましい。
【0042】
以上のように船舶バラスト水の処理方法及び処理処置を望ましい実施例を、例示した図面を参照して説明したが、本明細書に記載された実施例と図面によって本発明が限定されるものではない。すなわち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 船舶バラスト水タンク
2 船舶バラスト水処理タンク
3 排出タンク
4 排出ガスタンク
5 流出タンク
6 圧縮空気タンク
12、14、15 濾過装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶バラスト水の中の海洋微生物を死滅させる方法において、
(a)前記船舶バラスト水を船舶バラスト水のタンクから船舶バラスト水の処理タンクへ移送する工程;
(b)船舶エンジンの排出ガスを前記船舶バラスト水の処理タンク中の船舶バラスト水に注入し前記船舶バラスト水の水素イオン濃度を高める工程;
を含むことを特徴とする船舶バラスト水の処理方法。
【請求項2】
(c)前記船舶バラスト水の処理タンクから処理された船舶バラスト水を船舶バラスト水の排出タンクへ移送する工程;
(d)前記船舶バラスト水の排出タンクの中の船舶バラスト水の温度を高め、前記船舶バラスト水に残存する海洋微生物を死滅させるとともに、前記船舶バラスト水の中の二酸化炭素を排気・除去して前記船舶バラスト水の水素イオン濃度を海水の水素イオン濃度に近づける工程;
を含むことを特徴とする請求項1に記載の船舶バラスト水の処理方法。
【請求項3】
酸性物質を前記船舶バラスト水の処理タンク中の船舶バラスト水に加えて、前記船舶バラスト水の水素イオン濃度を変化させる工程を含むことを特徴する請求項1に記載の船舶バラスト水の処理方法。
【請求項4】
前記船舶エンジンの排出ガスは、煤などの粒子状物質(PM)を濾過・除去され、熱交換によって冷却処理された後、前記船舶バラスト水に注入されることを特徴とする請求項1に記載の船舶バラスト水の処理方法。
【請求項5】
前記(b)の工程において、前記船舶バラスト水の水素イオン濃度を、pH5.0以下まで高めることを特徴とする請求項1に記載の船舶バラスト水の処理方法。
【請求項6】
前記(d)の工程において、排出される前記船舶バラスト水の温度を、55℃以上まで高めることを特徴とする請求項2に記載の船舶バラスト水の処理方法。
【請求項7】
船舶に設置され、船舶バラスト水中の海洋微生物を分離・除去する船舶バラスト水の処理装置において、
前記船舶バラスト水の処理装置は、船舶を安定させるために活用される船舶バラスト水を貯蔵する船舶バラスト水のタンクと、前記船舶バラスト水が自由に移動できるように前記船舶バラスト水のタンクに接続され、pHを調節して前記船舶バラスト水にある海洋微生物を死滅・除去する船舶バラスト水の処理タンクと、を含み、
前記船舶バラスト水の処理タンクに船舶の排出ガスを注入して、船舶バラスト水のpHが調節されるようにすることを特徴とする船舶バラスト水の処理装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−511384(P2013−511384A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539805(P2012−539805)
【出願日】平成22年11月13日(2010.11.13)
【国際出願番号】PCT/KR2010/008022
【国際公開番号】WO2011/062398
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(512131058)シンガン ハイ−テク カンパニー、リミテッド (1)
【Fターム(参考)】