船舶バラスト水の処理方法
【課題】 船舶バラスト水中に生息する各種生物、すなわち動物プランクトン、植物プランクトン、プランクトンが休眠状態にあるシスト、細菌などの微生物および微小な貝類などの水生生物などを簡便かつ確実に駆除すると共に、処理後のバラスト水中に薬剤成分が残存することなく、安心して海に排出することができ、溶存酸素が適正量であってバラスト水を排出する周辺海域の生物に悪影響を及ぼすことのない、安全性の高いバラスト水の処理方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 船舶バラスト水に過酸化水素濃度が10〜500mg/Lになるような量の過酸化水素または過酸化水素発生化合物を添加した後、バラスト水にせん断応力および/またはキャビテーションを生じさせる物理的手段を付加して、バラスト水中の水生生物を駆除することを特徴とする船舶バラスト水の処理方法により、上記の課題を解決する。
【解決手段】 船舶バラスト水に過酸化水素濃度が10〜500mg/Lになるような量の過酸化水素または過酸化水素発生化合物を添加した後、バラスト水にせん断応力および/またはキャビテーションを生じさせる物理的手段を付加して、バラスト水中の水生生物を駆除することを特徴とする船舶バラスト水の処理方法により、上記の課題を解決する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、船舶バラスト水中に生息する水生生物を、簡便かつ確実に駆除し得る船舶バラスト水の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶は、荷物を積載していないか、あるいはその積載量が少ない場合、喫水面が下がり、バランスを保ち難くなる。そこで、船舶は、海洋を安全に航行するために、バラスト水として海水もしくは淡水を積載している。このようなバラスト水は、荷揚港を出港する前に船内に汲み入れられ、積載港に入港する前あるいは積荷を積載する際に船外に排出される。
【0003】
バラスト水としての海水もしくは淡水は、ポンプなどで吸水されて船舶内部に構成された密閉区画に収容される。このとき、吸水地域に生息するプランクトンや細菌などの各種微生物、微小な貝類などの水生生物が取り込まれる。このようなバラスト水を積載港付近の沿岸や港湾などで排出することによって、周辺海域の生態系が乱されるという問題が起こっている。さらに、バラスト水は、長期間にわたり閉鎖的で光のない状態に保持されることから、溶存酸素量が低下している。このような貧酸素(還元)状態のバラスト水を排出することによって、周辺海域の生物に悪影響を及ぼすことも懸念される。
【0004】
上記のように、バラスト水は暗い還元状態に長時間保持されるために、バラスト水には、光や溶存酸素を必要とするプランクトンや好気性菌は生息しにくく、プランクトンが休眠状態にあるシストや嫌気性菌が繁殖する傾向にある。このシストは、その外壁がプランクトンの細胞壁膜とは全く異なって、非常に強固な構造であるため、極めて耐久性が強い。
【0005】
上記の問題点に鑑み、本出願人は、船舶バラスト水に、有害プランクトンのシストを殺滅するのに有効な量の過酸化水素または過酸化水素発生化合物を維持することからなる有害プランクトンのシストの殺滅方法を提案した(特許第2695071号公報:特許文献1)。
また、船舶バラスト水に塩素系殺菌剤あるいは過酸化水素を添加して、有害藻類のシストを死滅させることからなる船舶バラスト水殺菌方法も提案されている(特開平4−322788号公報:特許文献2)。しかしながら、塩素系殺菌剤を添加した場合には、バラスト水にトリハロメタンが生成し、環境への問題が懸念される。
【0006】
さらに、液中の乱流の内部に存在するせん断現象を利用して、液中の微生物を殺滅する装置が提案されている(特開2003−200156号公報:特許文献3)。しかしながら、この装置では、プランクトンなどの水生生物に対する一定の効果は得られるものの、細菌類などに対しては十分な効果が得られなかった。
【0007】
【特許文献1】特許第2695071号公報
【特許文献2】特開平4−322788号公報
【特許文献3】特開2003−200156号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明は、船舶バラスト水中に生息する各種生物、すなわち動物プランクトン、植物プランクトン、プランクトンが休眠状態にあるシスト、細菌などの微生物および微小な貝類などの水生生物などを簡便かつ確実に駆除すると共に、処理後のバラスト水中に薬剤成分が残存することなく、安心して海に排出することができ、溶存酸素が適正量であってバラスト水を排出する周辺海域の生物に悪影響を及ぼすことのない、安全性の高いバラスト水の処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、船舶バラスト水に過酸化水素または過酸化水素発生化合物を添加した後、バラスト水にせん断応力および/またはキャビテーションを生じさせる物理的手段を付加することにより、バラスト水中に生息するあらゆる水生生物を駆除できると共に、バラスト水の溶存酸素を適正量に維持できること、さらにバラスト水中の過酸化水素が速やかに分解することを意外にも見出し、この発明を完成するに到った。
【0010】
かくして、この発明によれば、船舶バラスト水に過酸化水素濃度が10〜500mg/Lになるような量の過酸化水素または過酸化水素発生化合物を添加した後、バラスト水にせん断応力および/またはキャビテーションを生じさせる物理的手段を付加して、バラスト水中の水生生物を駆除することを特徴とする船舶バラスト水の処理方法が提供される。
【0011】
この発明において、「水生生物」とは、動物プランクトン、植物プランクトン、プランクトンが休眠状態にあるシスト、細菌などの微生物などの水生微生物および海生微生物、ならびに微小な貝類などの生物を意味する。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、船舶バラスト水中に生息する動物プランクトン、植物プランクトン、プランクトンが休眠状態にあるシスト、細菌などの微生物および微小な貝類などの水生生物などのあらゆる生物を簡便かつ確実に駆除できる。さらに、この発明によれば、添加した薬剤が処理後のバラスト水に残存することなく、溶存酸素が適正量であり、周辺海域の生物に悪影響を及ぼすおそれがなく、不要となったバラスト水を安心して海に排出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
過酸化水素は、水中で容易に水と酸素に分解する安全性の高い成分である。
この発明で使用する過酸化水素としては、通常、工業用として市販されている濃度3〜60%の過酸化水素水溶液が挙げられる。
また、過酸化水素発生化合物(「過酸化水素供給化合物」ともいう)とは、水中で過酸化水素を発生し得る化合物を意味し、過炭酸、過ホウ酸、ペルオキシ硫酸などの無機過酸、過酢酸のような有機過酸およびこれらの塩類が挙げられる。そのような塩類としては、過炭酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウムなどが挙げられる。
これらをバラスト水に添加するにあたっては、所望の濃度になるように過酸化水素または過酸化水素発生化合物(以下、「過酸化水素類」ともいう)を海水や淡水で適宜希釈または溶解して用いてもよい。
【0014】
また、海水または淡水を含む用水中で発生させた過酸化水素を用いることもできる。過酸化水素を用水中で発生させる方法としては、水またはアルカリ溶液の電気化学的分解、紫外線や放射線などの高エネルギー線を水に照射する方法、あるいは水生生物[例えば、Poecillia vellifere(メダカ目カダヤシ科)]による代謝などの方法が挙げられる。
【0015】
この発明の方法では、まず、船舶バラスト水に過酸化水素濃度が10〜500mg/L、好ましくは10〜300mg/Lになるように添加する。
過酸化水素濃度が10mg/L未満の場合には、バラスト水中に生息する生物を十分に駆除することができないので好ましくない。また、過酸化水素濃度が500mg/Lを超える場合には、その添加量に見合う生物駆除効果が期待できず、また処理後に過酸化水素が残存することもあるので好ましくない。
【0016】
この発明の方法では、次いで、バラスト水にせん断応力および/またはキャビテーションを生じさせる物理的手段を付加する。この物理的手段は、過酸化水素類の添加による水生生物の駆除効果の増強、バラスト水中の溶存酸素の維持、および処理後の過酸化水素類の分解に寄与する。
ここで、「キャビテーション」とは、液体中で局所的に流速が増加し、圧力がその液体の飽和圧力以下となったことにより発生する気泡の生成・消滅に伴って生じる現象を意味する。
【0017】
せん断応力および/またはキャビテーションを生じさせる物理的手段としては、特に限定されず、公知の方法を用いることもできる。
せん断応力を生じさせる物理的手段としては、例えば、複数のスリット状の貫通孔を有する、少なくとも1枚のスリット板をバラスト水の水路の横断面方向に設け、スリット板にバラスト水を通過させる手段が挙げられる。
【0018】
例えば、パイプのようなバラスト水の水路に複数枚のスリット板を設けるのが、せん断応力を効率的に生じさせることができるので好ましい。
水路に複数枚のスリット板を設ける場合、スリット板の板厚、スリット幅、スリット間隔、隣接するスリット同士の距離、スリットの方向などは、水路の形状などの諸条件により適宜設定すればよい。
これらの寸法は特に限定されないが、パイプ内径が100mmであるとき、スリット板の板厚は3〜10mm程度、スリット幅は0.1〜1mm程度、スリット間隔は3〜10mm程度、隣接するスリット同士の距離は5〜15mm程度である。
【0019】
例えば、バラスト水の流れ方向に対してスリット板の開口部と閉塞部が直線上に並ばないように複数のスリット板を設けるのが、せん断応力を効率的に生じさせることができるので好ましい。具体的には、スリットの開口部をスリットの長軸方向に平行にずらすように複数のスリット板を設ける、スリット幅やスリット間隔の異なる複数のスリット板を設ける、スリット開口部の長軸方向が直交するように複数のスリット板を設けるなどの方法が挙げられる。
【0020】
せん断応力を生じさせる物理的手段としては、より具体的には、スリット板(2枚、板厚:4mm、スリット幅:0.3mm、スリット間隔:4mm、隣接するスリット同士の距離:5mm)を備えたパイプ(名称:スペシャルパイプ、日本海難防止協会製、パイプ内径:50mm、パイプ有効長:80mm、)が挙げられる。
このパイプに設けられたスリット板のように、スリット板がバラスト水の流れ方向に前後に移動し、スリットに詰まりを除去する機構を備えていてもよい。
【0021】
また、キャビテーションを生じさせる物理的手段としては、種々の市販されている微細気泡発生装置を好適に用いることができる。
【0022】
この発明の方法においては、海水または淡水への過酸化水素類の添加は、海水または淡水に物理的手段を付加する前および/または後のいずれであってもよいが、海水または淡水を汲み上げて過酸化水素類を添加した後、バラストタンクに注入されるまでの間に、海水または淡水に物理的手段を付加して、過酸化水素類が添加された海水または淡水にせん断応力および/またはキャビテーションを生じさせるのが、水生生物の駆除効果の点から好ましい。
【0023】
さらに、この発明の方法による処理を行なった後のバラスト水を、少なくとも3時間(例えば、3〜40時間)保持するのが、バラスト水中の水生生物、特に耐久性の強いシストを確実に駆除できる点から好ましい。
【0024】
上記の保持時間は、過酸化水素類の添加時の濃度、バラスト水の温度、バラスト水中に生息する水生生物の種類や量などによって適宜選択すればよい。一般に、過酸化水素の添加濃度が低い場合には長時間、高い場合には短時間、処理後のバラスト水を保持すればよい。
処理後のバラスト水を保持する時間が3時間未満の場合には、バラスト水中に生息する水生生物を十分に駆除することができないので好ましくない。また、40時間を超えて過酸化水素をバラスト水に接触させても、それらの時間に見合う効果が期待できないので好ましくない。また、バラスト水の温度が、例えば、15℃以下のように低い場合には、高濃度で長時間の処理が好ましい。
【0025】
一般に、船舶の航海は、外洋航行の場合には1〜2週間以上、日本近海を航行する場合には数時間〜数十時間である。したがって、航行時間や温度条件などに応じて、過酸化水素類の添加濃度や処理後の保持時間を適宜設定すればよい。
【0026】
また、この発明の方法は、既存の船舶バラスト水の処理方法、例えば、加熱、蒸気注入あるいは紫外線照射などの処理方法と適宜組み合わせて実施することもできる。
【0027】
さらに、バラスト水に物理的手段を付加した後、第一鉄イオン濃度が0.1〜400mg/Lになるような量の第一鉄イオンまたは第一鉄イオン供給化合物、カタラーゼ濃度が0.01〜50mg/Lになるような量のカタラーゼ、およびヨウ素濃度が0.1〜100mg/Lになるような量のヨウ素またはヨウ素供給化合物から選択される少なくとも1種を添加するのが好ましい。これらは過酸化水素の分解助剤として作用し、バラスト水中の過酸化水素の分解を促進する。
【0028】
第一鉄イオンおよび第一鉄イオン供給化合物としては、硫酸第一鉄、塩化第一鉄、硫酸第一鉄アンモニウムなど、水に可溶であって、水中で二価の鉄イオンを形成し得る化合物が挙げられる。これらをバラスト水に添加するにあたっては、所望の濃度になるように第一鉄イオン類を海水や淡水で適宜希釈または溶解して用いてもよい。
その添加濃度は、第一鉄イオン濃度として0.1〜400mg/L程度である。
【0029】
カタラーゼは、過酸化水素を分解する反応を触媒する酵素であり、牛、豚などの動物の肝臓、腎臓、赤血球に多く含まれている。また、Aspergillus niger、Micrococcus lysodeikticusなどの細菌を培養することにより得られる。この発明では、それらの培養物や培養抽出物を用いることができ、その分子量は10万〜50万程度が好ましい。これらをバラスト水に添加するにあたっては、所望の濃度になるようにカタラーゼを海水や淡水で適宜希釈または溶解して用いてもよい。
その添加濃度は、0.01〜50mg/L程度である。
【0030】
ヨウ素供給化合物とは、水に可溶であって、水中でヨウ素イオンを形成し得る化合物を意味し、ヨウ化カリウム、ヨウ化アンモニウムなどが挙げられる。これらをバラスト水に添加するにあたっては、所望の濃度になるようにヨウ素またはヨウ素供給化合物を海水や淡水で適宜希釈または溶解して用いてもよい。
その添加濃度は、0.1〜100mg/L程度である。
【0031】
実施例
この発明を以下の試験例により具体的に説明するが、これらがこの発明の範囲を限定するものではない。
【0032】
試験例1(海水中の溶存酸素濃度の維持能力確認試験)
佐賀県の某所にて海水(pH:8.0、温度:16℃、塩分濃度3.2%)を採取し、容量1トンのタンクに注入した。タンクの海水をフレキシブルチューブに通して流速300L/分で抜き出しながら、チューブに設けた注入口から過酸化水素(45重量%水溶液)を添加し、スリット板(2枚、板厚:4mm、スリット幅:0.3mm、スリット間隔:4mm、隣接するスリット同士の距離:5mm)を備えたパイプ(名称:スペシャルパイプ、日本海難防止協会製、パイプ内径:50mm、パイプ有効長:80mm、)に流速300L/分で通過させ、遮光シートで覆い、室温で静置した容量500リットルのタンクに貯留した。
貯留開始から1分間の海水(約300リットル)を廃棄し、その後に貯留した処理海水を使って試験を行なった。
経時的に処理海水を容量2リットルのビーカーで採取して試験海水とし、試験海水中の溶存酸素濃度(mg/L)を溶存酸素計(堀場製作所製、型式:U−10)で測定した。
比較として、海水をスペシャルパイプに通過させない場合についても同様に試験した。
得られた結果を供試薬剤およびスペシャルパイプ(SP)通過の有無と併せて表1に示す。なお、供試薬剤の濃度は有効成分濃度を示す。
【0033】
【表1】
【0034】
表1から、特定濃度の過酸化水素を添加し、スペシャルパイプによる物理的手段を付加した海水は、その溶存酸素濃度が高くなることがわかる。
【0035】
試験例2(過酸化水素の分解性確認試験)
佐賀県の某所にて海水(pH:8.0、温度:16℃、塩分濃度3.2%)を採取し、容量1トンのタンクに注入した。タンクの海水をフレキシブルチューブに通して流速300L/分で抜き出しながら、チューブに設けた注入口から過酸化水素(45重量%水溶液)を添加し、試験例1と同様のパイプに流速300L/分で通過させ、遮光シートで覆い、室温で静置した容量500リットルのタンクに貯留した。なお、供試分解助剤として塩化第一鉄を添加する場合には、パイプの出口側に接続したチューブに設けた注入口から、塩化第一鉄水溶液を添加した。
貯留開始から1分間の海水(約300リットル)を廃棄し、その後に貯留した処理海水を使って試験を行なった。
経時的に処理海水を容量2リットルのビーカーで採取して試験海水とし、試験海水中の過酸化水素濃度(mg/L)を過マンガンカリウム法で測定した。
得られた結果を供試薬剤およびスペシャルパイプ(SP)通過の有無と併せて表2に示す。なお、供試薬剤の濃度は、過酸化水素は有効成分濃度を、塩化第一鉄は第一鉄イオン濃度を示す。
【0036】
【表2】
【0037】
表2から、特定濃度の過酸化水素を添加し、スペシャルパイプによる物理的手段を付加した海水は、過酸化水素の分解が進行すること、および塩化第一鉄の添加により、さらに過酸化水素の分解が進行することがわかる。
【0038】
試験例3(殺菌効果確認試験)
佐賀県の某所にて海水(pH:8.0、温度:16℃、塩分濃度3.2%)を採取し、容量1トンのタンクに注入した。タンクの海水をフレキシブルチューブに通して流速300L/分で抜き出しながら、チューブに設けた注入口から過酸化水素(45重量%水溶液)または(過酢酸:6重量%、過酸化水素:8重量%含有)を添加し、試験例1と同様のパイプに流速300L/分で通過させ、遮光シートで覆い、室温で静置した容量500リットルのタンクに貯留した。なお、供試分解助剤として塩化第一鉄を添加する場合には、パイプの出口側に接続したチューブに設けた注入口から、塩化第一鉄水溶液を添加した。
貯留開始から1分間の海水(約300リットル)を廃棄し、その後に貯留した処理海水を使って試験を行なった。
経時的に処理海水を滅菌容器に採取して試験海水とし、試験海水中の海洋性細菌数、陸棲細菌数および大腸菌群数を平板法により生菌数として計数した(n=5、単位は個/mL)。海洋性細菌および陸棲細菌の培地として、それぞれMarine Agar2216培地(Difco社製)およびニュートリエント寒天培地(Difco社製)を使用し、20℃で48時間培養した。また、大腸菌群の培地として、X-GAL培地(日水製薬社製)を使用し、36℃で24時間培養した。
海洋性細菌数、陸棲細菌数および大腸菌群数に関して得られた結果を供試薬剤およびスペシャルパイプ(SP)通過の有無と併せて、それぞれ表3〜5に示す。なお、供試薬剤の濃度は、過酸化水素および過酢酸は有効成分濃度を、塩化第一鉄は第一鉄イオン濃度を示す。
【0039】
【表3】
【0040】
【表4】
【0041】
【表5】
【0042】
表3〜5から、特定濃度の過酸化水素を添加し、スペシャルパイプによる物理的手段を付加した海水は、その生菌数が減少することがわかる。
【技術分野】
【0001】
この発明は、船舶バラスト水中に生息する水生生物を、簡便かつ確実に駆除し得る船舶バラスト水の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶は、荷物を積載していないか、あるいはその積載量が少ない場合、喫水面が下がり、バランスを保ち難くなる。そこで、船舶は、海洋を安全に航行するために、バラスト水として海水もしくは淡水を積載している。このようなバラスト水は、荷揚港を出港する前に船内に汲み入れられ、積載港に入港する前あるいは積荷を積載する際に船外に排出される。
【0003】
バラスト水としての海水もしくは淡水は、ポンプなどで吸水されて船舶内部に構成された密閉区画に収容される。このとき、吸水地域に生息するプランクトンや細菌などの各種微生物、微小な貝類などの水生生物が取り込まれる。このようなバラスト水を積載港付近の沿岸や港湾などで排出することによって、周辺海域の生態系が乱されるという問題が起こっている。さらに、バラスト水は、長期間にわたり閉鎖的で光のない状態に保持されることから、溶存酸素量が低下している。このような貧酸素(還元)状態のバラスト水を排出することによって、周辺海域の生物に悪影響を及ぼすことも懸念される。
【0004】
上記のように、バラスト水は暗い還元状態に長時間保持されるために、バラスト水には、光や溶存酸素を必要とするプランクトンや好気性菌は生息しにくく、プランクトンが休眠状態にあるシストや嫌気性菌が繁殖する傾向にある。このシストは、その外壁がプランクトンの細胞壁膜とは全く異なって、非常に強固な構造であるため、極めて耐久性が強い。
【0005】
上記の問題点に鑑み、本出願人は、船舶バラスト水に、有害プランクトンのシストを殺滅するのに有効な量の過酸化水素または過酸化水素発生化合物を維持することからなる有害プランクトンのシストの殺滅方法を提案した(特許第2695071号公報:特許文献1)。
また、船舶バラスト水に塩素系殺菌剤あるいは過酸化水素を添加して、有害藻類のシストを死滅させることからなる船舶バラスト水殺菌方法も提案されている(特開平4−322788号公報:特許文献2)。しかしながら、塩素系殺菌剤を添加した場合には、バラスト水にトリハロメタンが生成し、環境への問題が懸念される。
【0006】
さらに、液中の乱流の内部に存在するせん断現象を利用して、液中の微生物を殺滅する装置が提案されている(特開2003−200156号公報:特許文献3)。しかしながら、この装置では、プランクトンなどの水生生物に対する一定の効果は得られるものの、細菌類などに対しては十分な効果が得られなかった。
【0007】
【特許文献1】特許第2695071号公報
【特許文献2】特開平4−322788号公報
【特許文献3】特開2003−200156号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明は、船舶バラスト水中に生息する各種生物、すなわち動物プランクトン、植物プランクトン、プランクトンが休眠状態にあるシスト、細菌などの微生物および微小な貝類などの水生生物などを簡便かつ確実に駆除すると共に、処理後のバラスト水中に薬剤成分が残存することなく、安心して海に排出することができ、溶存酸素が適正量であってバラスト水を排出する周辺海域の生物に悪影響を及ぼすことのない、安全性の高いバラスト水の処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、船舶バラスト水に過酸化水素または過酸化水素発生化合物を添加した後、バラスト水にせん断応力および/またはキャビテーションを生じさせる物理的手段を付加することにより、バラスト水中に生息するあらゆる水生生物を駆除できると共に、バラスト水の溶存酸素を適正量に維持できること、さらにバラスト水中の過酸化水素が速やかに分解することを意外にも見出し、この発明を完成するに到った。
【0010】
かくして、この発明によれば、船舶バラスト水に過酸化水素濃度が10〜500mg/Lになるような量の過酸化水素または過酸化水素発生化合物を添加した後、バラスト水にせん断応力および/またはキャビテーションを生じさせる物理的手段を付加して、バラスト水中の水生生物を駆除することを特徴とする船舶バラスト水の処理方法が提供される。
【0011】
この発明において、「水生生物」とは、動物プランクトン、植物プランクトン、プランクトンが休眠状態にあるシスト、細菌などの微生物などの水生微生物および海生微生物、ならびに微小な貝類などの生物を意味する。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、船舶バラスト水中に生息する動物プランクトン、植物プランクトン、プランクトンが休眠状態にあるシスト、細菌などの微生物および微小な貝類などの水生生物などのあらゆる生物を簡便かつ確実に駆除できる。さらに、この発明によれば、添加した薬剤が処理後のバラスト水に残存することなく、溶存酸素が適正量であり、周辺海域の生物に悪影響を及ぼすおそれがなく、不要となったバラスト水を安心して海に排出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
過酸化水素は、水中で容易に水と酸素に分解する安全性の高い成分である。
この発明で使用する過酸化水素としては、通常、工業用として市販されている濃度3〜60%の過酸化水素水溶液が挙げられる。
また、過酸化水素発生化合物(「過酸化水素供給化合物」ともいう)とは、水中で過酸化水素を発生し得る化合物を意味し、過炭酸、過ホウ酸、ペルオキシ硫酸などの無機過酸、過酢酸のような有機過酸およびこれらの塩類が挙げられる。そのような塩類としては、過炭酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウムなどが挙げられる。
これらをバラスト水に添加するにあたっては、所望の濃度になるように過酸化水素または過酸化水素発生化合物(以下、「過酸化水素類」ともいう)を海水や淡水で適宜希釈または溶解して用いてもよい。
【0014】
また、海水または淡水を含む用水中で発生させた過酸化水素を用いることもできる。過酸化水素を用水中で発生させる方法としては、水またはアルカリ溶液の電気化学的分解、紫外線や放射線などの高エネルギー線を水に照射する方法、あるいは水生生物[例えば、Poecillia vellifere(メダカ目カダヤシ科)]による代謝などの方法が挙げられる。
【0015】
この発明の方法では、まず、船舶バラスト水に過酸化水素濃度が10〜500mg/L、好ましくは10〜300mg/Lになるように添加する。
過酸化水素濃度が10mg/L未満の場合には、バラスト水中に生息する生物を十分に駆除することができないので好ましくない。また、過酸化水素濃度が500mg/Lを超える場合には、その添加量に見合う生物駆除効果が期待できず、また処理後に過酸化水素が残存することもあるので好ましくない。
【0016】
この発明の方法では、次いで、バラスト水にせん断応力および/またはキャビテーションを生じさせる物理的手段を付加する。この物理的手段は、過酸化水素類の添加による水生生物の駆除効果の増強、バラスト水中の溶存酸素の維持、および処理後の過酸化水素類の分解に寄与する。
ここで、「キャビテーション」とは、液体中で局所的に流速が増加し、圧力がその液体の飽和圧力以下となったことにより発生する気泡の生成・消滅に伴って生じる現象を意味する。
【0017】
せん断応力および/またはキャビテーションを生じさせる物理的手段としては、特に限定されず、公知の方法を用いることもできる。
せん断応力を生じさせる物理的手段としては、例えば、複数のスリット状の貫通孔を有する、少なくとも1枚のスリット板をバラスト水の水路の横断面方向に設け、スリット板にバラスト水を通過させる手段が挙げられる。
【0018】
例えば、パイプのようなバラスト水の水路に複数枚のスリット板を設けるのが、せん断応力を効率的に生じさせることができるので好ましい。
水路に複数枚のスリット板を設ける場合、スリット板の板厚、スリット幅、スリット間隔、隣接するスリット同士の距離、スリットの方向などは、水路の形状などの諸条件により適宜設定すればよい。
これらの寸法は特に限定されないが、パイプ内径が100mmであるとき、スリット板の板厚は3〜10mm程度、スリット幅は0.1〜1mm程度、スリット間隔は3〜10mm程度、隣接するスリット同士の距離は5〜15mm程度である。
【0019】
例えば、バラスト水の流れ方向に対してスリット板の開口部と閉塞部が直線上に並ばないように複数のスリット板を設けるのが、せん断応力を効率的に生じさせることができるので好ましい。具体的には、スリットの開口部をスリットの長軸方向に平行にずらすように複数のスリット板を設ける、スリット幅やスリット間隔の異なる複数のスリット板を設ける、スリット開口部の長軸方向が直交するように複数のスリット板を設けるなどの方法が挙げられる。
【0020】
せん断応力を生じさせる物理的手段としては、より具体的には、スリット板(2枚、板厚:4mm、スリット幅:0.3mm、スリット間隔:4mm、隣接するスリット同士の距離:5mm)を備えたパイプ(名称:スペシャルパイプ、日本海難防止協会製、パイプ内径:50mm、パイプ有効長:80mm、)が挙げられる。
このパイプに設けられたスリット板のように、スリット板がバラスト水の流れ方向に前後に移動し、スリットに詰まりを除去する機構を備えていてもよい。
【0021】
また、キャビテーションを生じさせる物理的手段としては、種々の市販されている微細気泡発生装置を好適に用いることができる。
【0022】
この発明の方法においては、海水または淡水への過酸化水素類の添加は、海水または淡水に物理的手段を付加する前および/または後のいずれであってもよいが、海水または淡水を汲み上げて過酸化水素類を添加した後、バラストタンクに注入されるまでの間に、海水または淡水に物理的手段を付加して、過酸化水素類が添加された海水または淡水にせん断応力および/またはキャビテーションを生じさせるのが、水生生物の駆除効果の点から好ましい。
【0023】
さらに、この発明の方法による処理を行なった後のバラスト水を、少なくとも3時間(例えば、3〜40時間)保持するのが、バラスト水中の水生生物、特に耐久性の強いシストを確実に駆除できる点から好ましい。
【0024】
上記の保持時間は、過酸化水素類の添加時の濃度、バラスト水の温度、バラスト水中に生息する水生生物の種類や量などによって適宜選択すればよい。一般に、過酸化水素の添加濃度が低い場合には長時間、高い場合には短時間、処理後のバラスト水を保持すればよい。
処理後のバラスト水を保持する時間が3時間未満の場合には、バラスト水中に生息する水生生物を十分に駆除することができないので好ましくない。また、40時間を超えて過酸化水素をバラスト水に接触させても、それらの時間に見合う効果が期待できないので好ましくない。また、バラスト水の温度が、例えば、15℃以下のように低い場合には、高濃度で長時間の処理が好ましい。
【0025】
一般に、船舶の航海は、外洋航行の場合には1〜2週間以上、日本近海を航行する場合には数時間〜数十時間である。したがって、航行時間や温度条件などに応じて、過酸化水素類の添加濃度や処理後の保持時間を適宜設定すればよい。
【0026】
また、この発明の方法は、既存の船舶バラスト水の処理方法、例えば、加熱、蒸気注入あるいは紫外線照射などの処理方法と適宜組み合わせて実施することもできる。
【0027】
さらに、バラスト水に物理的手段を付加した後、第一鉄イオン濃度が0.1〜400mg/Lになるような量の第一鉄イオンまたは第一鉄イオン供給化合物、カタラーゼ濃度が0.01〜50mg/Lになるような量のカタラーゼ、およびヨウ素濃度が0.1〜100mg/Lになるような量のヨウ素またはヨウ素供給化合物から選択される少なくとも1種を添加するのが好ましい。これらは過酸化水素の分解助剤として作用し、バラスト水中の過酸化水素の分解を促進する。
【0028】
第一鉄イオンおよび第一鉄イオン供給化合物としては、硫酸第一鉄、塩化第一鉄、硫酸第一鉄アンモニウムなど、水に可溶であって、水中で二価の鉄イオンを形成し得る化合物が挙げられる。これらをバラスト水に添加するにあたっては、所望の濃度になるように第一鉄イオン類を海水や淡水で適宜希釈または溶解して用いてもよい。
その添加濃度は、第一鉄イオン濃度として0.1〜400mg/L程度である。
【0029】
カタラーゼは、過酸化水素を分解する反応を触媒する酵素であり、牛、豚などの動物の肝臓、腎臓、赤血球に多く含まれている。また、Aspergillus niger、Micrococcus lysodeikticusなどの細菌を培養することにより得られる。この発明では、それらの培養物や培養抽出物を用いることができ、その分子量は10万〜50万程度が好ましい。これらをバラスト水に添加するにあたっては、所望の濃度になるようにカタラーゼを海水や淡水で適宜希釈または溶解して用いてもよい。
その添加濃度は、0.01〜50mg/L程度である。
【0030】
ヨウ素供給化合物とは、水に可溶であって、水中でヨウ素イオンを形成し得る化合物を意味し、ヨウ化カリウム、ヨウ化アンモニウムなどが挙げられる。これらをバラスト水に添加するにあたっては、所望の濃度になるようにヨウ素またはヨウ素供給化合物を海水や淡水で適宜希釈または溶解して用いてもよい。
その添加濃度は、0.1〜100mg/L程度である。
【0031】
実施例
この発明を以下の試験例により具体的に説明するが、これらがこの発明の範囲を限定するものではない。
【0032】
試験例1(海水中の溶存酸素濃度の維持能力確認試験)
佐賀県の某所にて海水(pH:8.0、温度:16℃、塩分濃度3.2%)を採取し、容量1トンのタンクに注入した。タンクの海水をフレキシブルチューブに通して流速300L/分で抜き出しながら、チューブに設けた注入口から過酸化水素(45重量%水溶液)を添加し、スリット板(2枚、板厚:4mm、スリット幅:0.3mm、スリット間隔:4mm、隣接するスリット同士の距離:5mm)を備えたパイプ(名称:スペシャルパイプ、日本海難防止協会製、パイプ内径:50mm、パイプ有効長:80mm、)に流速300L/分で通過させ、遮光シートで覆い、室温で静置した容量500リットルのタンクに貯留した。
貯留開始から1分間の海水(約300リットル)を廃棄し、その後に貯留した処理海水を使って試験を行なった。
経時的に処理海水を容量2リットルのビーカーで採取して試験海水とし、試験海水中の溶存酸素濃度(mg/L)を溶存酸素計(堀場製作所製、型式:U−10)で測定した。
比較として、海水をスペシャルパイプに通過させない場合についても同様に試験した。
得られた結果を供試薬剤およびスペシャルパイプ(SP)通過の有無と併せて表1に示す。なお、供試薬剤の濃度は有効成分濃度を示す。
【0033】
【表1】
【0034】
表1から、特定濃度の過酸化水素を添加し、スペシャルパイプによる物理的手段を付加した海水は、その溶存酸素濃度が高くなることがわかる。
【0035】
試験例2(過酸化水素の分解性確認試験)
佐賀県の某所にて海水(pH:8.0、温度:16℃、塩分濃度3.2%)を採取し、容量1トンのタンクに注入した。タンクの海水をフレキシブルチューブに通して流速300L/分で抜き出しながら、チューブに設けた注入口から過酸化水素(45重量%水溶液)を添加し、試験例1と同様のパイプに流速300L/分で通過させ、遮光シートで覆い、室温で静置した容量500リットルのタンクに貯留した。なお、供試分解助剤として塩化第一鉄を添加する場合には、パイプの出口側に接続したチューブに設けた注入口から、塩化第一鉄水溶液を添加した。
貯留開始から1分間の海水(約300リットル)を廃棄し、その後に貯留した処理海水を使って試験を行なった。
経時的に処理海水を容量2リットルのビーカーで採取して試験海水とし、試験海水中の過酸化水素濃度(mg/L)を過マンガンカリウム法で測定した。
得られた結果を供試薬剤およびスペシャルパイプ(SP)通過の有無と併せて表2に示す。なお、供試薬剤の濃度は、過酸化水素は有効成分濃度を、塩化第一鉄は第一鉄イオン濃度を示す。
【0036】
【表2】
【0037】
表2から、特定濃度の過酸化水素を添加し、スペシャルパイプによる物理的手段を付加した海水は、過酸化水素の分解が進行すること、および塩化第一鉄の添加により、さらに過酸化水素の分解が進行することがわかる。
【0038】
試験例3(殺菌効果確認試験)
佐賀県の某所にて海水(pH:8.0、温度:16℃、塩分濃度3.2%)を採取し、容量1トンのタンクに注入した。タンクの海水をフレキシブルチューブに通して流速300L/分で抜き出しながら、チューブに設けた注入口から過酸化水素(45重量%水溶液)または(過酢酸:6重量%、過酸化水素:8重量%含有)を添加し、試験例1と同様のパイプに流速300L/分で通過させ、遮光シートで覆い、室温で静置した容量500リットルのタンクに貯留した。なお、供試分解助剤として塩化第一鉄を添加する場合には、パイプの出口側に接続したチューブに設けた注入口から、塩化第一鉄水溶液を添加した。
貯留開始から1分間の海水(約300リットル)を廃棄し、その後に貯留した処理海水を使って試験を行なった。
経時的に処理海水を滅菌容器に採取して試験海水とし、試験海水中の海洋性細菌数、陸棲細菌数および大腸菌群数を平板法により生菌数として計数した(n=5、単位は個/mL)。海洋性細菌および陸棲細菌の培地として、それぞれMarine Agar2216培地(Difco社製)およびニュートリエント寒天培地(Difco社製)を使用し、20℃で48時間培養した。また、大腸菌群の培地として、X-GAL培地(日水製薬社製)を使用し、36℃で24時間培養した。
海洋性細菌数、陸棲細菌数および大腸菌群数に関して得られた結果を供試薬剤およびスペシャルパイプ(SP)通過の有無と併せて、それぞれ表3〜5に示す。なお、供試薬剤の濃度は、過酸化水素および過酢酸は有効成分濃度を、塩化第一鉄は第一鉄イオン濃度を示す。
【0039】
【表3】
【0040】
【表4】
【0041】
【表5】
【0042】
表3〜5から、特定濃度の過酸化水素を添加し、スペシャルパイプによる物理的手段を付加した海水は、その生菌数が減少することがわかる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶バラスト水に過酸化水素濃度が10〜500mg/Lになるような量の過酸化水素または過酸化水素発生化合物を添加した後、バラスト水にせん断応力および/またはキャビテーションを生じさせる物理的手段を付加して、バラスト水中の水生生物を駆除することを特徴とする船舶バラスト水の処理方法。
【請求項2】
物理的手段が、複数のスリット状の貫通孔を有する、少なくとも1枚のスリット板をバラスト水の水路の横断面方向に設け、スリット板にバラスト水を通過させる手段である請求項1に記載の船舶バラスト水の処理方法。
【請求項3】
物理的手段を付加したバラスト水を少なくとも3時間保持する請求項1または2に記載の船舶バラスト水の処理方法。
【請求項4】
バラスト水に物理的手段を付加した後、第一鉄イオン濃度が0.1〜400mg/Lになるような量の第一鉄イオンまたは第一鉄イオン供給化合物、カタラーゼ濃度が0.01〜50mg/Lになるような量のカタラーゼ、およびヨウ素濃度が0.1〜100mg/Lになるような量のヨウ素またはヨウ素供給化合物から選択される少なくとも1種を添加する請求項1〜3のいずれか1つに記載の船舶バラスト水の処理方法。
【請求項1】
船舶バラスト水に過酸化水素濃度が10〜500mg/Lになるような量の過酸化水素または過酸化水素発生化合物を添加した後、バラスト水にせん断応力および/またはキャビテーションを生じさせる物理的手段を付加して、バラスト水中の水生生物を駆除することを特徴とする船舶バラスト水の処理方法。
【請求項2】
物理的手段が、複数のスリット状の貫通孔を有する、少なくとも1枚のスリット板をバラスト水の水路の横断面方向に設け、スリット板にバラスト水を通過させる手段である請求項1に記載の船舶バラスト水の処理方法。
【請求項3】
物理的手段を付加したバラスト水を少なくとも3時間保持する請求項1または2に記載の船舶バラスト水の処理方法。
【請求項4】
バラスト水に物理的手段を付加した後、第一鉄イオン濃度が0.1〜400mg/Lになるような量の第一鉄イオンまたは第一鉄イオン供給化合物、カタラーゼ濃度が0.01〜50mg/Lになるような量のカタラーゼ、およびヨウ素濃度が0.1〜100mg/Lになるような量のヨウ素またはヨウ素供給化合物から選択される少なくとも1種を添加する請求項1〜3のいずれか1つに記載の船舶バラスト水の処理方法。
【公開番号】特開2006−224030(P2006−224030A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−42670(P2005−42670)
【出願日】平成17年2月18日(2005.2.18)
【出願人】(000154727)株式会社片山化学工業研究所 (82)
【出願人】(505062307)社団法人日本海難防止協会 (3)
【出願人】(591037362)株式会社海洋開発技術研究所 (7)
【出願人】(505062318)株式会社水圏科学コンサルタント (7)
【出願人】(500512162)株式会社エム・オー・マリンコンサルティング (3)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【出願人】(591084296)株式会社シンコー (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月18日(2005.2.18)
【出願人】(000154727)株式会社片山化学工業研究所 (82)
【出願人】(505062307)社団法人日本海難防止協会 (3)
【出願人】(591037362)株式会社海洋開発技術研究所 (7)
【出願人】(505062318)株式会社水圏科学コンサルタント (7)
【出願人】(500512162)株式会社エム・オー・マリンコンサルティング (3)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【出願人】(591084296)株式会社シンコー (5)
【Fターム(参考)】
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