説明

船舶通航信号用定電流発生器切換システム

【課題】正規用及び代行用の2台の電源の切換時間を圧縮し、灯火の保守メンテナンス負担を軽減することができる船舶通航信号用定電流発生器切換システムを提供する。
【解決手段】商用交流単相電源と定電流供給用コンデンサと出力変成器の一次側巻線とが直列に接続されていると共に出力変成器の二次側巻線に発生する交流定電流の振幅を線形に変化させる複数の入力側切換タップが出力変成器の一次側巻線に設けられた正規用及び代行用の2台の定電流発生器と、電子発光光源を内装した複数の灯火が直列に接続されている負荷回路とを備え、2台の定電流発生器が、出力する交流定電流が逆相となるように直列に接続されていると共に負荷回路と接続され直列回路を形成し、2台の定電流発生器の各々が、出力端を短絡させて直列回路から切り離す回路接点器を有していることによって、前記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED(発光ダイオード)やHIDランプ(高輝度放電灯)などの電子発光光源の電源に関し、さらに詳しくは、船舶通航信号板のように配線距離が長く広範囲に配設された多数の灯火からなる照明設備を正規用及び代行用の2台の電源により交互に点灯させる船舶通航信号用定電流発生器切換システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、港湾や海峡では、天候不順による視界不良時や夜間であっても、船舶を安全に運行させるために、各種視覚情報装置が配設されている。これらの視覚情報装置は、船舶に対して視認距離と停船待機位置を知らせる船舶通航信号や潮流の向きを知らせる潮流信号などをLED表示板などにより提供している。
【0003】
このような船舶通航信号システムでは、広範囲にわたってタングステンランプやハロゲンランプなどの熱発光光源を内装した多数の灯火が配設されるため、これらの多数の灯火に対して電力を供給するためには、非常に長い距離の配線が必要となる。そのため、この配線による電力損失を考慮して各灯火の光度を均一に保つ必要があると共に、何れかの灯火に不点灯が発生しても他の灯火を安定して点灯させる灯火システムが必要である。
【0004】
さらに、前述した灯火システムでは、昼間であるか夜間であるかや、気象状況に応じて灯火の視認性が変化するため、これらの状況の変化に応じて灯火の輝度を調整する必要がある。例えば、周辺照度が高い、すなわち周りが明るい昼間では灯火の視認性が低下するため、灯火の輝度を高くする必要がある。一方、周辺照度が低い、すなわち周りが暗い夜間では灯火の視認性が良好であるため、灯火の輝度を低くすることによって消費電力を削減することができる。
【0005】
このような用途に適した電源装置として、本発明者は、図7に示したような定電流光度調整装置200を開発した。この定電流光度調整装置200は、商用単相交流電源210と、この商用単相交流電源210に直列に接続され、商用単相交流電源210の出力と所定の共振条件を満たす時定数を有し、負荷変動に無関係な一定な正弦波交流電流Iを出力する共振回路220と、一次側巻線230Pが共振回路220の出力に直列接続された出力変成器230とを有している。
【0006】
さらに、比較的長い距離の配線280を介して出力変成器230の二次側巻線230Sにそれぞれ直列接続された複数の灯火240と、任意の期間だけ一次側巻線230Pに流れる正弦波交流を短絡する分流回路250と、電流検出器270により検出された出力変成器230の二次側電流すなわち負荷電流ILに基づいて、共振回路220から出力される正弦波交流電流Iの1サイクルを単位として分流回路250を短絡制御(サイクル制御)することにより、負荷電流ILの大きさを調整するサイクル制御回路260とを有している。
【0007】
このような定電流光度調整装置200は、商用単相交流電源210に対して共振回路220が直列接続されており、所定の共振条件を満たすように、コンデンサ220Aとリアクトル220Bとから決定される時定数と、交流電源出力の周波数、電圧、電流とを選択することにより、負荷の変動に無関係な一定の電流Iが得られる。この電流Iは、出力変成器230の一次側巻線230Pに供給され昇圧され、出力変成器230の二次側巻線230Sに直列接続されたそれぞれの灯火240に一定の負荷電流ILとして等しく供給される。
【0008】
これにより、出力変成器230から各灯火240への配線280が非常に長い場合であっても、各灯火240の熱発光光源240Bには、絶縁トランス240Aを介して等しい電流が供給されるものとなり、各熱発光光源240Bを均一な光度で点灯させることができる。なお、任意の熱発光光源240Bが不点灯となっても絶縁トランス240Aにより負荷側の直列回路が断線されることがないので、他の熱発光光源240Bへの影響は生じない。また、分流回路250は、互いに極性が逆方向となるように並列接続されたサイリスタ250A、250Bから構成されており、短絡動作時には、正弦波交流がプラス側の期間はサイリスタ250Aがオンとなり、マイナス側の期間はサイリスタ250Bがオンとなる。
【0009】
図8は、図7に示した従来の定電流光度調整装置200の各部の信号を示す信号波形図で有り、ここでは、共振回路220から出力される電流Iの正弦波8周期(周期T1)分のうち1周期(周期T2)分を短絡する場合が例として示されている。サイクル制御回路260は、電流検出器270を介して検出された負荷電流ILに基づいて、所望の負荷電流ILを得るための波数比R=T2/T1を算出する。例えば、波数比R=1/8の場合には、図8に示すように、電流Iの正弦波8周期(周期T1)分のうち1周期(周期T2)分を短絡するように分流回路250を制御する。その結果、灯火240に供給される電流は、7/8に減少する。そして、波数比Rを変えることにより灯火240に供給される電流を可変することができる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3364407号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、前述した従来の定電流光度調整装置200では、出力変成器230の一次側に流れる電流Iaを所定の波数比Rで短絡させることにより、負荷電流ILの調整を行っているため、例えば、商用単相交流電源210の周波数が50Hzであるとした場合、負荷電流ILの刻み幅は、2%となり、それ以下の電流調整は不可能であるという課題があった。
また、負荷電流ILを低減させるためには、所定の波数比Rで負荷電流ILを短絡させているため、負荷電流ILを低減させていくにつれて灯火240がちらつくという課題があった。
しかも、従来の定電流光度調整装置200では、図7に示したように、共振回路220、分流回路250、サイクル制御回路260などが必要であり、回路構成が複雑となると共に、共振回路220が大型のリアクトル220Bを必要とするため、装置が大型化するという課題があった。
【0011】
さらに、灯火のグローブ(光源を覆っている部材)に埃が付着し次第に輝度が低下するため、灯火の寿命がまだ尽きていないのに、グローブを磨いたり、光源を交換したりしなくてはならないという保守メンテナンス上の課題があった。
【0012】
一方、近年、広範囲にわたって多数の灯火を配設する船舶通航信号システムにおいては、消費電力やメンテナンス性を考慮し、光源として前述したようなタングステンランプやハロゲンランプなどのフィラメントを用いたランプ、いわゆる熱発光光源ではなく、効率よく所望の発光色が得られ、かつ球切れ(フィラメントの断線)の心配がなく長寿命なLEDやHIDランプなどのフィラメントを有していない、いわゆる電子発光光源の導入が検討されている。
【0013】
しかしながら、従来用いられていた、タングステンランプやハロゲンランプなどの熱発光光源では、図9及び図10に示すように、負荷電流に対する光源の輝度が三次曲線に沿った電流−輝度特性を有しているため、例えば、負荷電流が6.6Aの時に輝度が100%であった場合、0.2%の輝度に調整する場合であっても、2.8Aの負荷電流が必要であった。その結果、微少な負荷電流量の供給及び調整は必要ではなく、前述したような定電流光度調整装置200で十分に対応可能であった。
【0014】
これに対して、光源としてLEDやHIDランプなどの電子発光光源を用いる場合には、負荷電流に対する光源の輝度が一次曲線に沿った電流−輝度特性であるため、例えば、LEDを用いた場合であって、前述と同様に負荷電流が6.6Aの時に輝度が100%とした場合、0.2%の輝度に調整する場合、必要な電流は、0.01A程度の微少な負荷電流となるため、微少な負荷電流量の供給と調節が要求される。したがって、前述したような定電流光度調整装置200では、微少な負荷電流量を精度良く調整することができないため、電子発光光源を用いた船舶通航信号システムには対応できないという問題があった。
【0015】
しかも、電子発光光源を用いた船舶通航信号システムにおいては、輝度を0.2%に下げた場合、必要な電流は輝度が100%の時の0.2%で良いのに対して、従来の熱発光光源を用いた灯火システムでは、輝度を0.2%に下げた場合であっても、輝度が100%の時の40%以上の電流が必要であり、エネルギー効率がきわめて悪いという問題があった。
【0016】
また、船舶通航信号システムでは、停電をなくすために図11に示すように正規用の定電流光度調整装置200の他に代行用の定電流光度調整装置500を装備しているが、前述したような従来の定電流光度調整装置200では、正規用の定電流光度調整装置200の開閉器201をONにした状態から、この開閉器201をOFFにして、代行用の定電流光度調整装置500の開閉器501をONにして、正規用及び代行用の電源の切換を行う。その場合、負荷回路600に電圧が掛かっている状態であるので、開閉器201においてアークが発生する。そのため、アークが完全に切れてから開閉器501をONにしないと代行用の定電流光度調整装置500が短絡事故を起こすため、電源の切換時間が長期化する。特に巨大船を対象とした船舶通航信号システムにおいては、電源の切換時間が長期化して負荷回路の停電状態が長期化すると、慣性の大きな巨大船が長く不安な状態に陥る。従って、正規用及び代行用の電源の切換時間を圧縮することが、長年の課題であった。
【0017】
さらに、地球温暖化が深刻な社会問題となっている昨今、省エネルギー化によりCO排出量削減に寄与する電子発光光源を用いた船舶通航信号システムの開発に高い関心が集まっている。
【0018】
そこで、本発明が解決しようとする技術的課題、すなわち、本発明の目的は、LEDやHIDランプなどのいわゆる電子発光光源を用いた複数の灯火が直列に接続されている負荷回路に対して簡単な回路構成で輝度調整の高精度化及び負荷電流低減時における灯火のちらつき防止を図ると共に、正規用及び代行用の2台の電源の切換時間を圧縮し、さらに、灯火の保守メンテナンス負担を軽減することができる船舶通航信号用定電流発生器切換システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
まず、本請求項1に係る発明は、商用交流単相電源と定電流供給用コンデンサと出力変成器の一次側巻線とが直列に接続されていると共に前記出力変成器の二次側巻線に発生する交流定電流の振幅を線形に変化させる複数の入力側切換タップが前記出力変成器の一次側巻線に設けられた正規用及び代行用の2台の定電流発生器と、電子発光光源を内装した複数の灯火が直列に接続されている負荷回路とを備えた船舶通航信号用定電流発生器切換システムであって、前記2台の定電流発生器が出力する交流定電流が逆相となるように直列に接続されていると共に前記負荷回路と接続され直列回路を形成し、前記2台の定電流発生器の各々が該定電流発生器の出力端を短絡させて前記直列回路から切り離す回路接点器を有していることにより、前記課題を解決したものである。
【0020】
なお、本発明において、「電子発光光源」とは、LEDやHIDランプなどのフィラメントを有しておらず、負荷電流に対する光源の輝度が一次曲線に沿った電流−輝度特性である光源を総称しているが、耐久性や耐衝撃性、寿命などの点で電子発光光源にLEDを用いることが特に好ましい。また、本発明において、「商用単相交流電源」とは、電力会社から供給される電圧が100V又は200Vで周波数が50Hz(東日本)又は60Hz(西日本)である電源を意味しているが、周波数が400Hz程度以下の低周波交流電源であれば、商用単相交流電源に換えて利用可能である。さらに、本発明において、「定電流発生器」とは、従来の定電流電源装置のように負荷に対して所定の定電流が流れるように電圧を変化させるものではなく、負荷変動に関係なく、すなわち負荷が短絡状態であっても常に一定の電流を供給可能であるという点で従来の定電流電源装置とは定電流発生原理が全く異なるものである。
【0021】
そして、本請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の構成に加えて、前記出力変成器の二次側巻線に発生した交流定電流の振幅を微調整する複数の出力側切換タップが、前記出力変成器の二次側巻線に設けられていることにより、前記課題をさらに解決したものである。
【0022】
また、本請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に係る発明の構成に加えて、前記電子発光光源が、LEDであることにより、前記課題をさらに解決したものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明の船舶通航信号用定電流発生器切換システムは、出力電圧がV(ボルト)である商用単相交流電源と静電容量C(ファラッド)の定電流供給用コンデンサと出力変成器の一次側巻線とが直列に接続されていると共に前記出力変成器の二次側巻線に発生する交流定電流の振幅を線形に変化させる複数の入力側切換タップが前記出力変成器の一次側巻線に設けられた正規用及び代行用の2台の定電流発生器と、電子発光光源を内装した複数の灯火が直列に接続されている負荷回路とを備えたというきわめて簡単な構成によって、蓄積電荷Qは固定であるため、出力変成器の一次側巻線には、静電容量C(ファラッド)に対応した定電流Iが流れるので、前記出力変成器の二次側巻線に直列接続された負荷(点灯する電子発光光源の数や配線の長さになどによって決まる)が増減した場合であっても、例えば、負荷が短絡した場合であっても電源電圧に影響が波及せず、出力変成器の二次側へ常に安定した定電流供給が実現できる。その結果、出力変成器の二次側を短絡させた状態で定電流発生器の動作状態を点検することができる。また、複数の灯火が一筆書きのように一本の配線で直列に接続されるため、2本の配線で各灯火に電力を供給する場合に比べて配線の量を大幅に削減でき省資源化に貢献する。
【0024】
さらに、前記一次側巻線に流れる定電流Iと選択された入力側切換タップまでの巻数Tとの積I・T(アンペアターン)が、前記二次側巻線に発生する交流定電流Iと二次側巻線の巻数Tとの積I・T(アンペアターン)が一定、すなわちI・T=I・Tの関係が成立し、Iが前述したように一定で、Tを固定とした場合、各入力側切換タップまでの巻数Tに比例した交流定電流Iが前記出力変成器の二次側巻線に発生するので、電子発光光源に通電される負荷電流を100%通電から、例えば、0.2%という微少な通電まで入力側切換タップの切り換えによって精度良く調整することができる。
【0025】
しかも、この調整は出力変成器の二次側巻線に発生する正弦波である交流定電流Iの振幅の大きさを変化させることによって達成されるため、負荷電流を低減させていった場合であっても灯火がちらつくことなく、良好な視認性を発揮させることができる。さらに、電流式のタップ切換は、電圧式のタップ切換と異なり、タップ間に電位差が発生しないため絶縁破壊などの故障の発生が抑制され、装置の安全性が向上する。
【0026】
加えて、以下のような各請求項に特有の構成に対応した格別の効果を奏することができる。
【0027】
すなわち、本請求項1に係る船舶通航信号用定電流発生器切換システムによれば、2台の定電流発生器が出力する交流定電流が逆相となるように直列に接続されていると共に前記負荷回路と接続され直列回路を形成し、前記2台の定電流発生器の各々が該定電流発生器の出力端を短絡させて前記直列回路から切り離す回路接点器を有していることにより、2台の定電流発生器の回路接点器の両方を短絡させた場合、負荷回路には電流が流れず、各定電流発生器は出力端を短絡させた状態で動作試験を実施することができる。また、どちらか一方の回路接点器を開放することによって、開放された側の定電流発生器が負荷回路に瞬時に接続される。さらに2台の定電流発生器を切り換える場合、一方の回路接点器を短絡させると同時に他方の回路接点器を開放させることにより、切換時間を殆ど要することなく2台の定電流発生器の切換が実現する。しかも、両方の回路接点が開放状態になったとしても、2台の定電流発生器の出力が逆相になるように接続されていることにより、2台の定電流発生器が出力する交流定電流が互いに相殺されるため、負荷回路に過電流が流れることが回避される。したがって、正規用及び代行用の2台の定電流発生器が常に運行状態で、瞬時交代が可能な24時間運用港内通航情報伝達管理システムに適合した定電流発生器切換システムが実現できる。
【0028】
また、本請求項2に係る船舶通航信号用定電流発生器切換システムによれば、請求項1に係る船舶通航信号用定電流発生器切換システムが奏する効果に加えて、出力変成器の二次側巻線に発生した交流定電流の振幅を微調整する複数の出力側切換タップが、前記出力変成器の二次側巻線に設けられていることにより、灯火のグローブに埃が付着し輝度が低下した場合であっても前記出力側切換タップの切り換えによって灯火に流れる負荷電流を増加させて輝度の低下を補償することができるので、熱発光光源に比べて長寿命である電子発光光源を運用途中で特別な保守を繰り返すことなく、電子発光光源の寿命が尽きるまで安全要求輝度100%を維持することができる。
【0029】
また、本請求項3に係る船舶通航信号用定電流発生器切換システムによれば、請求項1又は請求項2に係る船舶通航信号用定電流発生器切換システムが奏する効果に加えて、電子発光光源がLEDであることにより、LEDは半導体を用いたpn接合と呼ばれる固体構造で作られており、この構造の中で電子の持つエネルギーを直接、光エネルギーに変換することで発光し、巨視的には熱や運動の介在を必要としないので、優れた耐久性や耐衝撃性、長寿命化、高効率化を実現できる。
【0030】
しかも、ハロゲンランプのような熱発光光源においては、過電流によってフィラメントが溶断することを防ぐために過電流継電器を設置する必要があったが、LEDは、多少の過電流が流れたとしても素子が溶断することがなく過電流継電器を設置する必要がないので、装置構成の簡略化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明の船舶通航信号用定電流発生器切換システムは、商用交流単相電源と定電流供給用コンデンサと出力変成器の一次側巻線とが直列に接続されていると共に前記出力変成器の二次側巻線に発生する交流定電流の振幅を線形に変化させる複数の入力側切換タップが前記出力変成器の一次側巻線に設けられた正規用及び代行用の2台の定電流発生器と、電子発光光源を内装した複数の灯火が直列に接続されている負荷回路とを備えており、前記2台の定電流発生器が出力する交流定電流が逆相となるように直列に接続されていると共に前記負荷回路と接続され直列回路を形成し、前記2台の定電流発生器の各々が該定電流発生器の出力端を短絡させて前記直列回路から切り離す回路接点器を有していることによって、LEDやHIDランプなどのいわゆる電子発光光源を用いた複数の灯火が直列に接続されている負荷回路に対して簡単な回路構成で輝度調整の高精度化を図ると共に、正規用及び代行用の2台の電源の切換時間を圧縮し、さらに、灯火の保守メンテナンス負担を軽減することができるものであれば、その具体的な実施の態様は、如何なるものであっても何ら構わない。
【0032】
本発明の一実施例を図1乃至図6に基づいて説明する。
ここで、図1は、本発明の実施例である船舶通航信号用定電流発生器切換システムの主要構成要素の一つである正規用の定電流発生器の回路図であり、図2は、船舶通航信号用定電流発生器切換システムの主要構成要素の別の一つである負荷回路の回路図である。図3乃至図6は、正規用の定電流発生器と代行用の定電流発生器の切換動作を説明するための回路接点器の状態図である。
【0033】
本発明の実施例である船舶通航信号用定電流発生器切換システムの主要構成要素の一つである正規用の定電流発生器100は、図1に示すように、商用単相交流電源110と一定の静電容量C(ファラッド)を有するコンデンサ120と出力変成器130の一次側巻線130Pとが直列に接続されている。
【0034】
さらに、出力変成器130の二次側巻線130Sに発生する交流定電流Iの振幅を線形に変化させるための複数の入力側切換タップ130Aが、出力変成器130の一次側巻線130Pに設けられている。この入力側切換タップ130Aは、要求される輝度(%)の変更段階、例えば、図9に示すように、100%、30%、25%、10%、5%、1%、0.2%と一次側巻線130Pの巻数が比例関係になるように設けられている。なお、図1においては、5%、1%、0.2%に対応する入力側切換タップは、記載を省略している。
【0035】
そして、出力変成器130における電圧降下は、コンデンサ120の端子間電圧に比べて十分に小さいため、商用単相交流電源110の出力電圧がV(ボルト)で一定であり、コンデンサ120の静電容量C(ファラッド)が固定、例えば、200μFであることによって、出力変成器130の一次側巻線130Pには、静電容量C(ファラッド)に対応した定電流Iが流れる。さらに、この定電流Iと選択された入力側切換タップまでの巻数Tとの積I・T(アンペアターン)と、二次側巻線130Sに発生する交流定電流Iと二次側巻線130Sの巻数Tとの積I・T(アンペアターン)とが一定、すなわちI・T=I・Tの関係が成立するため、Iが前述したように一定で、二次側巻線130Sの巻数Tを固定とした場合、各入力側切換タップまでの巻数Tに比例した交流定電流Iが出力変成器130の二次側巻線130Sに発生する。
【0036】
その結果、入力側切換スイッチ130Bによって、所望の入力側切換タップ130Aを選択することにより、出力変成器130の二次側巻線130Sに一次側巻線130Pの巻数Tに比例した交流定電流Iを発生させることができる。例えば、Tが1000ターンでありTがTの3倍の3000ターンとした場合、Iを20Aの定電流とすることによって、IとしてIの3分の1の6.6Aの定電流が得られる。そして、Tを全巻数の30%である300ターンに切り替えることによって、Iとして、6.6Aの30%である1.98Aの定電流が得られる。
【0037】
また、本実施例を構成する正規用の定電流発生器100は、図1に示すように、出力変成器130の二次側巻線130Sに、例えば、全巻数に対して0%、1%、3%、5%という細かい間隔で巻数を減少させる複数の出力側切換タップ130Cが設けられている。そして、出力側切換スイッチ130Dによって、所望の出力側切換タップ130Cを選択することにより、前述したI・T=I・Tの関係において、二次側巻線130Sの巻数Tを若干減少させることができるため、負荷に供給される交流定電流Iの振幅を微増(数%の上昇)させることができる。これにより、灯火のグローブに埃が付着して輝度が低下した際に初期の輝度を維持するように微調整することができる。ここで、灯火の輝度の微調整用の切換タップを出力変成器130の二次側に設ける理由は、一次側に設けた入力側切換タップ130Aの巻数の線形関係を変更することなく、負荷電流を微増することができるからである。なお、本実施例を構成する代行用の定電流発生器は、図1で示した正規用の電流発生器と全く同じ回路であるので、図示を省略する。
【0038】
そして、正規用及び代行用の2台の定電流発生器が、出力する交流定電流が逆相となるように直列に接続される。ここで、2台の定電流発生器は、同じ商用交流単相電源110から給電を受けているので、図1に示した回路において、出力端OUTのA端子同士あるいはB端子同士を接続することによって、2台の定電流発生器が、出力する交流定電流が逆相となるように直列に接続される。そして、開放されている出力端OUT間に負荷回路が接続され2台の定電流発生器と負荷回路とが直列回路を形成している。さらに2台の定電流発生器の出力端OUTの各々に、該出力端OUTを短絡させて前記直列回路から切り離す回路接点器が接続されている(図3乃至図6参照)。
【0039】
負荷回路は、例えば、港湾や海峡の管制信号板、電光情報掲示板などの用途に応じて、適宜必要数の灯火が直列に接続されている。その一例として負荷回路の回路構成を図2に示す。なお、本実施例に於いては、灯火を構成する電子発光光源としてLEDを用いている。
【0040】
図2に示したように、直列に接続された複数の灯火に内装された電子発光光源300Bの任意の一つが不点灯になっても他の電子発光光源300Bが影響を受けないようにするため、負荷回路300を構成する各灯火には、絶縁トランス300Aを備えている。そして、電子発光光源300Bに加わる逆方向電流を遮断するための逆流防止ダイオード300Cが電子発光光源300Bと直列に接続されている。なお、逆流防止ダイオード300Cを用いて電子発光光源300Bに加わる逆方向電流を遮断することに換えて2つの電子発光光源300Bを互いに極性が逆方向となるように並列接続したものを絶縁トランス300Aの二次側に接続しても良い。この場合、正弦波交流電流の正方向通電時及び逆方向通電時に2つの電子発光光源300Bが交互に点灯し、エネルギー効率が向上すると共に、負荷回路300を構成する灯火のちらつきが一層低減し、その効果は甚大である。
【0041】
次に、本実施例を構成する正規用及び代行用の2台の定電流発生器の切換動作について図3乃至図6に基づき説明する。
【0042】
図3は、正規用の定電流発生器100と代行用の定電流発生器400の出力端OUTのそれぞれに接続された回路接点器101及び回路接点器401が、両方とも短絡状態にある。この時、負荷回路300には、電流が流れない。そして、定電流発生器100、400は、出力端OUTが短絡状態にあるが、本発明による定電流発生器は、前述したように負荷の変動にかかわらず常に定電流を出力するので短絡事故を起こす心配はない。
【0043】
図4は、正規用の定電流発生器100と代行用の定電流発生器400の出力端OUTのそれぞれに接続された回路接点器101及び回路接点器401のうち、回路接点器101だけが開放状態にある。この時、負荷回路300には、正規用の定電流発生器100から電流が供給される。代行用の定電流発生器400は、出力端OUTが短絡状態にあり負荷回路300への電流供給は行っていない。
【0044】
図5は、正規用の定電流発生器100と代行用の定電流発生器400の出力端OUTのそれぞれに接続された回路接点器101及び回路接点器401のうち、回路接点器401だけが開放状態にある。この時、負荷回路300には、代行用の定電流発生器400から電流が供給される。正規用の定電流発生器100は、出力端OUTが短絡状態にあり負荷回路300への電流供給は行っていない。ここで、本発明による定電流発生器は、前述したように電圧制御によって、定電流を得るものではなく、負荷変動に関係なく定電流を発生させるものであるため回路接点器にアークが発生することなく、図4に示した正規用の定電流発生器100からの給電と図5に示した代行用の定電流発生器400からの給電との切換は、瞬時に行うことができる。
【0045】
図6は、正規用の定電流発生器100と代行用の定電流発生器400の出力端OUTのそれぞれに接続された回路接点器101及び回路接点器401が、両方とも開いた状態にある。この時、定電流発生器100と定電流発生器400は、出力端OUTが逆相に接続されているため、それぞれから出力される電流が相殺して負荷回路300には、電流が流れない。
【0046】
また、本発明の船舶通航信号用電流発生器切換システムを構成する定電流発生器100は、出力変成器130の一次側巻線130Pに設けられた入力側切換タップ130Aの設置位置を図9に示した輝度(%)と熱発光光源電流(A)の関係に対応させて設けることによって、従来から用いられている熱発光光源に対しても入力側切換タップ130Aの切り換えにより従来の定電流装置と同様に、所望の輝度に対する電流を出力する電源として使用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、一定の静電容量C(ファラッド)の電流供給用コンデンサに定電圧Vを印加すると静電容量Cに対応した定電流が発生するという原理を応用して、きわめて簡単な構成で負荷変動に因らず定電流を発生する定電流発生器を構成することができると共に、正規用及び代行用の2台の定電流発生器を瞬時に切り換えることができ、さらに海上の異常や危険を知らせるモールス信号も加えることで安全対策面での機能を向上させることができ、港内走行の安全性が増すことにより、大型船舶誘導制御が可能になる。また、小型船の誘導制御も同様に行え、管制官の無線情報に合わせた視覚情報提供の一端を担うことができ、港湾や海峡の船舶通航信号システムの安全性を高めると共に、輝度調整の高精度化、エネルギー効率の高効率化、保守メンテナンス負担の軽減を実現でき、その産業上の利用可能性はきわめて高い。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の船舶通航信号用定電流発生器切換システムの定電流発生器の回路図。
【図2】本発明の船舶通航信号用定電流発生器切換システムの負荷回路の回路図。
【図3】本発明の正規用の定電流発生器と代行用の定電流発生器の切換動作を示す図。
【図4】本発明の正規用の定電流発生器と代行用の定電流発生器の切換動作を示す図。
【図5】本発明の正規用の定電流発生器と代行用の定電流発生器の切換動作を示す図。
【図6】本発明の正規用の定電流発生器と代行用の定電流発生器の切換動作を示す図。
【図7】従来の熱発光光源用の定電流光度調整装置の回路図。
【図8】図7に示した従来の定電流光度調整装置の各部における信号波形図。
【図9】電子発光光源と熱発光光源の電流−輝度特性を示した表。
【図10】図9に示した表に基づいたグラフ。
【図11】従来の正規用の定電流光度調整装置と代行用の定電流光度調整装置の切換動作を示す図。
【符号の説明】
【0049】
100、400 ・・・定電流発生器
101、401 ・・・回路接点器
110 ・・・商用単相交流電源
120 ・・・コンデンサ
130 ・・・出力変成器
130A・・・(出力変成器の)入力側切換タップ
130B・・・(出力変成器の)入力側切換スイッチ
130C・・・(出力変成器の)出力側切換タップ
130D・・・(出力変成器の)出力側切換スイッチ
130P・・・(出力変成器の)一次側巻線
130S・・・(出力変成器の)二次側巻線
300 ・・・負荷回路
300A・・・(負荷回路300の)絶縁トランス
300B・・・(負荷回路300の)電子発光光源
300C・・・(負荷回路300の)逆流防止ダイオード
200、500 ・・・定電流光度調整装置
210 ・・・商用単相交流電源
220 ・・・共振回路
220A・・・(共振回路の)コンデンサ
220B・・・(共振回路の)リアクトル
230 ・・・出力変成器
230P・・・(出力変成器の)一次側巻線
230S・・・(出力変成器の)二次側巻線
240 ・・・灯火
240A・・・(灯火の)絶縁トランス
240B・・・(灯火の)熱発光光源
240C・・・(灯火の)逆流防止ダイオード
250 ・・・分流回路
250A・・・(分流回路の)サイリスタ
250B・・・(分流回路の)サイリスタ
260 ・・・サイクル制御回路
270 ・・・電流検出器
280 ・・・配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用交流単相電源と定電流供給用コンデンサと出力変成器の一次側巻線とが直列に接続されていると共に前記出力変成器の二次側巻線に発生する交流定電流の振幅を線形に変化させる複数の入力側切換タップが前記出力変成器の一次側巻線に設けられた正規用及び代行用の2台の定電流発生器と、電子発光光源を内装した複数の灯火が直列に接続されている負荷回路とを備えた船舶通航信号用定電流発生器切換システムであって、
前記2台の定電流発生器が出力する交流定電流が逆相となるように直列に接続されていると共に前記負荷回路と接続され直列回路を形成し、
前記2台の定電流発生器の各々が該定電流発生器の出力端を短絡させて前記直列回路から切り離す回路接点器を有していることを特徴とする船舶通航信号用定電流発生器切換システム。
【請求項2】
前記出力変成器の二次側巻線に発生した交流定電流の振幅を微調整する複数の出力側切換タップが、前記出力変成器の二次側巻線に設けられていることを特徴とする請求項1記載の船舶通航信号用定電流発生器切換システム。
【請求項3】
前記電子発光光源が、LEDであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の船舶通航信号用定電流発生器切換システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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