説明

船舶

【課題】可燃性ガスを発生する固形状の貨物を運搬するための船舶において、船側の荷役装置と陸側の荷役設備の間を接続して荷役する際に、固形状の貨物の搬送経路の気密を保ちながら、船内における可燃性ガスと空気との混合による爆発雰囲気の形成を回避できて、安全に荷役を行うことができる船舶を提供する。
【解決手段】可燃性ガスを発生する固形状の貨物をばら積み状態で運搬する船舶1において、該船舶1と陸上側荷役設備50との間で、貨物を荷役するときに、該船舶1側から気密構造の船側荷役設備の一部21,31を左右舷方向に移動して陸側2に張り出して、この張り出し部位において、前記船側荷役設備21,31と前記陸上側荷役設備50との間で気密性を確保した接続を行って、該船側荷役設備21,31と前記陸上側荷役設備50との間で荷役を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然ガスハイドレート(NGH)ペレット等の可燃性ガスを発生する固形状の貨物を運搬するための船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、天然ガスハイドレートが注目され、天然ガスをガスハイドレートペレットの形態のままばら積み状態で運搬することが検討されている。しかし、可燃性ガスを発生する固形状の貨物を搬送する設備の前例がないことから、新たな船舶と陸上設備の貨物受け渡し方法が必要とされている。
【0003】
このガスを包蔵したガスハイドレート貨物の気密を保持して搬送するためのガスハイドレート輸送船として、船長方向に配した船倉(貨物倉)上を移動し、荷役中の船倉の倉口を覆い隠す移動ハウスを設けて、この移動ハウス内に積み荷用荷役設備と揚げ荷用荷役設備とを収容し、移動ハウスと共に各船倉に移動し、移動ハウス内に収容したリクレーマを船倉内で横方向(左右舷方向)と船長方向(前後方向)に移動して荷役を行うガスハイドレート輸送船が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
このガスハイドレート輸送船では、積み荷荷役では、移動ハウスの上部のホッパーで受け入れた貨物を、船長方向に搬送する第1受入れコンベヤと、横方向に搬送する第2受入れコンベヤと、横行台車で船倉内部を横移動するリクレーマを経由して、移動ハウス直下の船倉に運び入れている。
【0005】
また、揚げ荷荷役では、船倉内の貨物を、移動ハウス内のリクレーマの下端でグラブ状の掬取り器で連続的に掬い上げて船倉の上部に搬送し、このリクレーマの上端から横方向に移送する第1払出しコンベヤと、船長方向に移送する第2払出しコンベヤと、尻上がりの第3払出しコンベヤを経由して、払出しブームコンベヤに搬送している。この払出しビームコンベヤは、移動ハウスから張り出して、船体の左右両舷に回動するように構成されており、この払出しブームコンベヤの先端から貨物を陸上揚げ荷設備に落下させて陸揚げしている。
【0006】
また、別の荷役設備を設けたガスハイドレート輸送船として、船体の船首尾方向及び横手方向にそれぞれ一以上の船倉を備えて、例えば、横方向に一列に右舷、中央、左舷の各船倉を前後方向に数列配置し、船倉の後方に搬出入域を設けたガスハイドレート輸送船が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0007】
このガスハイドレート輸送船では、積み荷荷役では、上甲板上に設けられた外殻の上を前後方向に移動する台車に、船外からの貨物を受け入れるシュータ式の積み荷装置を設けて、同じく台車に装着された分配装置から、貨物を右舷、中央、左舷の各船倉に分配している。また、揚げ荷荷役では、船倉内の貨物を、船倉の下側に設けた第2コンベアから縦型のリフト装置で上甲板より上に搬送し、上甲板上に設けられた外殻に設けた開口部から外殻内に挿入された陸側(船外)のコンベアに落下させている。
【0008】
この天然ガスハイドレートペレット等の可燃性ガスを発生する固形バラ積み貨物を搬送する場合には、その搬送経路において、可燃性ガスの大気中への放出や空気の流入を防止しながら、陸側の搬送設備と接続する方法が必要である。
【0009】
このような可燃性ガスを発生する固形状の貨物を運搬するための船舶では、貨物が可燃性ガスを発生することから、重量物である陸上設備が船体と衝突して、可燃性ガスの漏洩や可燃性ガスを内包した区画への空気の侵入が生じた場合には、可燃性ガスと空気との混合による爆発雰囲気の形成の危険性が高まる。そのため、船体と陸上設備との衝突の可能性を極力回避できる接続方法が必要とされる。
【0010】
前者のガスハイドレート輸送船では、積み荷荷役では、陸上荷役装置を移動ハウスの上部のホッパー上に移動して、また、揚げ荷荷役では、移動ハウスから張り出して、船体の左右両舷に回動する払出しブームコンベヤの先端を、陸上揚げ荷設備の上に移動して、荷役を行っている。そのため、重量が大きく衝突時の損傷が大きくなり易い陸上荷役装置を船体の中心近傍に移動させるので、衝突回避の面からは好ましくない。また、ブームコンベヤ部を、船に格納された状態から陸上荷役設備側に旋回して接続を行うために、船上の格納スペースや旋回のためスペースが、船側と陸側に広く必要となる上に、ブームコンベヤ部の片持ち梁構造と、旋回のための機構が必要になるという問題がある。
【0011】
また、後者のガスハイドレート輸送船では、積み荷荷役では、陸上側の荷役装置を船体左右方向に関して中央に配置されたシュータ式の積み荷装置の上に移動し、また、揚げ荷荷役では、陸上側のコンベアを、上甲板上に設けられた外殻に設けた開口部に挿入して、荷役している。そのため、重量が大きく衝突時の損傷が大きくなり易い陸上荷役装置を船体の中心近傍に移動させるので、衝突回避の面からは好ましくないという問題と、陸上側のコンベアが外殻の内部に挿入されているので緊急離脱が難しいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2005−255014公報
【特許文献2】特許第4044899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上述の状況を鑑みてなされたものであり、その目的は、可燃性ガスを発生する固形状の貨物を運搬するための船舶において、船側の荷役装置と陸側の荷役設備の間を接続して荷役する際に、固形状の貨物の搬送経路の気密を保ちながら、船内における可燃性ガスと空気との混合による爆発雰囲気の形成を回避できて、安全に荷役を行うことができる船舶を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するための本発明の船舶は、可燃性ガスを発生する固形状の貨物をばら積み状態で運搬する船舶において、該船舶と陸上側荷役設備との間で、貨物を荷役するときに、該船舶側から気密構造の船側荷役設備の一部を左右舷方向に移動して陸側に張り出して、この張り出し部位において、前記船側荷役設備と前記陸上側荷役設備との間で気密性を確保した接続を行って、該船側荷役設備と前記陸上側荷役設備との間で荷役を行うように構成される。
【0015】
この構成によれば、固形状の貨物の搬送経路の気密性を保ちながら、船側の荷役装置と陸上側の荷役設備の接続を行う場合に、この接続部分の位置を船舶側から陸上側に向けて張り出した位置とすることで、比較的規模が大きく大きな重量となり易い陸上荷役設備が船体構造物や船体の上部構造物と衝突する危険性を回避することができ、船体の損傷による大規模な可燃性ガスの放出を防止できる。
【0016】
また、万一、船側の荷役装置と陸上側の荷役装置とが衝突しても、陸側に張り出す船側の荷役装置は軽量で小さいので、衝突時の損傷が少なく、また、衝突箇所が船外となるので、船内で可燃性ガスと空気との爆発雰囲気の形成を回避できる。
【0017】
上記の船舶において、前記陸側に張り出す気密構造の船側荷役設備を、貨物を左右舷方向に移送するコンベヤ機器を気密性を確保した筐体に収納して、該筐体ごと左右舷方向に移動可能とした可動式コンベヤ装置で構成する。
【0018】
この構成によれば、気密性を確保できる筐体ごと、コンベヤ機器を収納した可動式コンベヤ装置を移動するので、荷役のときに、気密性を確保しながら荷役ができるので、可燃性ガスと空気との混合による爆発雰囲気の形成を回避でき、安全に荷役できる。
【0019】
また、陸側に張り出す船側荷役設備の一部を、旋回ではなく、左右舷方向に移動可能な可動式コンベヤ装置で形成したので、設置スペース及び陸側の占有スペースが小さくて済み、船首部などの限られた空間に、陸側に張り出す可動式コンベヤ装置を配置することが比較的容易にできるようになる。
【0020】
上記の船舶において、前記可動式コンベヤ装置の一端側が、右舷側又は左舷側に移動して、船舶側から陸側に張り出して陸上側荷役設備と接続したときに、前記可動式コンベヤ装置の他端側は、船内側の貨物搬送装置と接続可能な位置になるように、前記可動式シャトルコンベヤと船内の貨物搬送装置を配置して設ける。
【0021】
この構成によれば、積み荷荷役のときには、陸側の荷役設備から受けた貨物を、可動式コンベヤ装置を介して円滑に船内側の貨物搬送装置に送ることができ、又、揚げ荷荷役のときには、貨物倉からの貨物を、船内の貨物搬送装置から可動式コンベヤ装置を介して円滑に陸側の荷役設備に受け渡すことができる。
【0022】
上記の船舶において、前記陸側に張り出す気密構造の船側荷役設備を、上下方向に関して、上方側に配置した積み荷用の前記可動式コンベヤ装置と、下方側に配置した揚げ荷用の前記可動式コンベヤ装置とで別々に構成し、積み荷荷役では、前記積み荷用の前記可動式コンベヤ装置を、陸上側の積み荷荷役設備の接続部材よりも下側に張り出し、揚げ荷荷役では、前記揚げ荷用の前記可動式コンベヤ装置を、陸上側の揚げ荷荷役設備の接続部材よりも上側に張り出すように構成する。
【0023】
この構成によれば、荷役のときに、固形状の貨物が上方から下方に移動するようになるので、円滑に陸上荷役設備と船舶の貨物倉と間の荷役を比較的シンプルな構成の荷役システムで円滑に行うことができる。
【0024】
上記の船舶において、前記船側荷役設備と前記陸上側荷役設備との間で気密性を確保した接続を行う際に、前記船側荷役設備の接続部材と、前記陸上側荷役設備の接続部材にそれぞれ開閉弁を設けて、この両方の開閉弁の間の接続空間に連通する不活性ガス供給用の給気管と排気管とを設けて、不活性ガスと空気の置換行程を間に入れて、空気と可燃性ガスを置換するように構成する。
【0025】
この構成によれば、船側荷役設備と陸上側荷役設備との間の接続を行う際に、接続部分において、可燃性ガスと空気とが混合して爆発雰囲気を形成することを回避でき、安全に接続することができる。
【0026】
上記の船舶において、前記可動式コンベヤ装置の他端側と、船内側の貨物搬送装置との接続の間で気密性を確保した接続を行う際に、前記可動式コンベヤ装置の接続部材と、前記船内側の貨物搬送装置の接続部材にそれぞれ開閉弁を設けて、この両方の開閉弁の間の接続空間に連通する不活性ガス供給用の給気管と排気管とを設けて、不活性ガスと空気の置換行程を間に入れて、空気と可燃性ガスを置換するように構成する。
【0027】
この構成によれば、可動式コンベヤ装置と船内の貨物搬送装置との間の接続を行う際に、接続部分において、可燃性ガスと空気とが混合して爆発雰囲気を形成することを回避でき、安全に接続することができる。
【0028】
上記の船舶において、積み荷荷役で用いる前記船舶側荷役設備を、前記陸側に張り出す気密構造の船側荷役設備としての、貨物を左右舷方向に移送するコンベヤ機器を気密性を確保した筐体に収納して、該筐体ごと左右舷方向に移動可能とし、貨物倉の上部に設けた全閉カバー上部に配置した積み荷用可動式コンベヤ装置と、該積み荷用可動式コンベヤ装置に下方で、該積み荷用可動式コンベヤで搬送された貨物を受けて、船体の前後方向に搬送し、各貨物倉の上部で貨物を落下させる機構を備えた前後方向搬送装置とを有して構成する。この構成によれば、比較的シンプルな構成で、陸上荷役設備から受け入れた固形状の貨物を、各貨物倉に効率よく搬送できる。
【0029】
上記の船舶において、揚げ荷荷役で用いる前記船舶側荷役設備を、貨物倉内の固形貨物を掬い出すリクレーマと横行払出しコンベヤ装置を備え、船体の前後方向に走行する貨物倉内荷役設備と、船舶の右舷側と左舷側に配置され、前記横行払い出しコンベヤ装置からの貨物を受けて、船体の前方に搬送する前方移送用コンベヤ装置と、船体の前方に配置され、前記前方移送用コンベヤ装置からの貨物を受けて、舷側側から船体中央側に搬送する中央移送コンベヤ装置と、前記陸側に張り出す気密構造の船側荷役設備としての、貨物を左右舷方向に移送するコンベヤ機器を気密性を確保した筐体に収納して、該筐体ごと左右舷方向に移動可能とし、最前の貨物倉よりも前方に配置した揚げ荷用可動式コンベヤ装置とを有して構成する。この構成によれば、比較的シンプルな構成で、貨物倉の内部から固形状の貨物を掬い上げて、陸上側荷役荷役設備に効率よく搬送できる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の船舶によれば、可燃性ガスを発生する固形状の貨物を運搬するための船舶において、船側の荷役装置と陸側の荷役設備の間を接続して荷役する際に、固形状の貨物の搬送経路を気密に保ちながら、船内における可燃性ガスと空気との混合による爆発雰囲気の形成を回避できて、安全に荷役を行うことができる。
【0031】
また、船側荷役設備と陸上荷役設備との接続部を船側の位置から陸側に張り出すことで、船体の上方部位に陸上荷役設備が位置することが無くなるので、陸上荷役設備が船体に衝突して大規模な可燃性ガスが漏洩する危険性を著しく軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る実施の形態における船舶の荷役システムの構成を示した模式的な側断面図である。
【図2】本発明に係る実施の形態における船舶のシャトルコンベヤの上下配置を示した模式的な横断面図である。
【図3】本発明に係る実施の形態における船舶における積み荷用シャトルコンベヤの構成を示した図1のA−A断面の模式的な横断面図である。
【図4】本発明に係る実施の形態における船舶における揚げ荷用シャトルコンベヤの構成を示した図1のB−B断面の模式的な横断面図である。
【図5】本発明に係る実施の形態における船舶における貨物倉用荷役設備の構成を示した図1のC−C断面の模式的な横断面図である。
【図6】本発明に係る実施の形態における船舶における積み荷用荷役設備の構成を示した模式的な平断面図である。
【図7】本発明に係る実施の形態における船舶における揚げ荷用荷役設備の構成を示した模式的な平断面図である。
【図8】積み荷用シャトルコンベヤの端部の上側との取り合いの構成を示した模式的な側面図である。
【図9】積み荷用シャトルコンベヤの端部の下側との取り合いの構成を示した模式的な側面図である。
【図10】揚げ荷用シャトルコンベヤの端部の下側との取り合いの構成を示した模式的な側面図である。
【図11】揚げ荷用シャトルコンベヤの端部の上側との取り合いの構成を示した模式的な側面図である。
【図12】積み荷荷役作業における船側荷役設備と陸上側荷役設備との接続前の状態を示した模式的な横断面図である。
【図13】積み荷荷役作業における船側荷役設備と陸上側荷役設備との接続後の状態を示した模式的な横断面図である。
【図14】揚げ荷荷役作業における船側荷役設備と陸上側荷役設備との接続前の状態を示した模式的な横断面図である。
【図15】揚げ荷荷役作業における船側荷役設備と陸上側荷役設備との接続後の状態を示した模式的な横断面図である。
【図16】船側荷役設備と陸上側荷役設備の状態を示した模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照して本発明に係る船舶について説明する。これらの図面では、荷役設備等の構成は模式的に示しており、実際の構造を示すものではない。又、図16に各部の配置が分かり易いように模式的な斜視図を示した。
【0034】
図1〜図7に示すように、本発明に係る第1の実施の形態の船舶1は、船体に、天然ガスハイドレ−ト(NGH)ペレット等の可燃性ガスを発生する固形物を収納する貨物倉12を備えて構成される。この貨物倉12の上に船体前後方向に移動する貨物倉用荷役設備32が設けられているが、この貨物倉用荷役装置32が移動する部分と貨物倉12の全部のハッチ部分を覆う部分に、気密構造の全閉カバー19を設けて、この全閉カバー19と上甲板11で囲まれた荷役区画19aを形成する。この全閉カバー19は移動しないので、容易に優れた気密構造にすることができる。
【0035】
図1及び図2に示すように、船舶1の上甲板11より下には、貨物倉12が設けられる。この貨物倉12は、船底1bの上側の二重底13の上の内底板12a、サイドホッパータンク14の外板12b、二重側壁部15の内側板12c、サイドトップタンク16の外板12d及び前後の横隔壁17で形成される。上部にはハッチ18が設けられ、荷役中はハッチカバーが外され開口し、荷役後はハッチカバーでハッチ18を覆い貨物倉12は閉鎖される。ただし、貨物倉12内は貨物から可燃性ガスが発生するので、ガス圧を適正な圧力に維持管理する。
【0036】
また、上甲板11より上には気密性を有した全閉カバー19で覆われた荷役区画19aを設けて、航行中においては、貨物倉12と荷役区画19aの内部のガス圧を大気圧より高く維持する。これにより、小規模なクラックが発生しても荷役区画19aや貨物倉12に酸素が侵入することを防ぎ、貨物倉12で発生する可燃性ガスと酸素が混合して爆発雰囲気を形成することを防止する。この荷役空間19aを形成する全閉カバー19には、積み荷用開口部19bと揚げ荷用開口部19cとがそれぞれ設けられている。
【0037】
次に、船側積み荷荷役設備について、図1〜図11を参照しながら説明する。図1に示すように、この船側積み荷荷役設備は、船体の前後方向の略中心位置に設けた積み荷用シャトルコンベヤ(積み荷用の可動式コンベヤ装置)21と、船体中心線上で、船体の前後方向に延びる積み荷用前後方向搬送装置22を備えて構成される。
【0038】
また、図2に示すように、この積み荷用シャトルコンベヤ21は、荷役区間19aの上方側に設けられた上部積み荷設備格納部19aaに配置され、積み荷用シャトルコンベヤ21の全体が、図13に示すように、左右舷方向(船体横方向)に移動し、船側1aの位置より張り出して、移動後に、張り出した端部側が、陸上荷役設備と接続できると共に、他の端部側が船首尾方向(船体前後方向)に貨物を搬送するための船体側の積み荷用前後方向搬送装置22の上側接続部22uと接続できるように、横方向に走行する台車21cに搭載して構成する。
【0039】
この積み荷用シャトルコンベヤ21は、図3に示すように、貨物を略水平方向に搬送する搬入用の水平搬送コンベヤ21aと、この水平搬送コンベヤ21aを収容して、かつ、内部を気密に保つ筐体21bとを備えて構成する。また、この筐体21bの左舷側に左舷側上部接続部21puと左舷側下部接続部21pdを設け、右舷側に右舷側上部接続部21suと右舷側下部接続部21sdを設ける。
【0040】
これらの左舷側上部接続部21pu、左舷側下部接続部21pd、右舷側上部接続部21su、右舷側下部接続部21sdには、図8及び図9に示すように、それぞれ、船側第1開閉弁21pua、第2開閉弁21pda、船側第1開閉弁21sua、第2開閉弁21sdaをスライド弁等で形成して設けて、筐体21bの気密性を確保できるようにする。
【0041】
図8及び図9に示すように、この左舷側上部接続部21puと右舷側上部接続部21suは、水平搬送コンベヤ21aのそれぞれの端部より少し内側(中央側)に設け、水平搬送コンベヤ21aに、陸上側積み荷設備40の開閉弁42を有する接続部材41と接続して、貨物を落下させる時の落下通路となるようにする。また、図8及び図9に示すように、左舷側下部接続部21pdと右舷側下部接続部21sdは、水平搬送コンベヤ21aのそれぞれの端部に設け、水平搬送コンベヤ21aから搬送された貨物が、上側接続部22uを経由して、積み荷用前後方向搬送装置22の水平搬送コンベヤ22aに落下する時の落下通路となるようにする。
【0042】
次に、積み荷用前後方向搬送装置22について説明する。この積み荷用前後方向搬送装置22は、図1、図2、図3及び図6に示すように、上部積み荷設備格納部19aaの下の下部積み荷設備格納部19abに船首尾方向(船体前後方向)に貨物を略水平方向に搬送するための水平搬送コンベヤ22aを船体中央線上に備えており、積み荷用シャトルコンベヤ21のある上部積み荷設備格納部19aaに、第3開閉弁22uaを備えた上側接続部22uを設けて構成する。また、各貨物倉12のハッチ18の開口部の位置毎に下側排出部22dを設ける。
【0043】
そして、上側接続部22uを通過して落下してくる貨物を水平搬送コンベヤ22aで搬送すると共に、搬送されてくる貨物を荷役対象の貨物倉12の上の下側排出部22dを選択して、選択した下側排出部22dから貨物を貨物倉12に落下させるように構成される。
【0044】
また、図8及び図9に示すように、積み荷用シャトルコンベヤ21の左舷側下部接続部21pd、又は、右舷側下部接続部21sdと、積み荷用前後方向搬送装置22の上側接続部22uとの積み荷用船内接続部分においては、この接続部空間6aの内部の気体を不活性ガスを介して可燃性ガスと空気に置き換えられるように、この接続部空間6aに不活性ガス供給配管6bと排気配管6cを設ける。これらの配管は、左舷側下部接続部21pd、又は、右舷側下部接続部21sdか、上側接続部22uのいずれかに設ければよい。
【0045】
つまり、積み荷荷役で用いる船舶側荷役設備を、陸側2に張り出す気密構造の船側荷役設備としての、貨物を左右舷方向に移送するコンベヤ機器21aを気密性を確保した筐体21bに収納して、この筐体21bごと左右舷方向に移動可能とし、貨物倉12の上部に設けた全閉カバー19内の上部に配置した積み荷用シャトルコンベヤ(積み荷用可動式コンベヤ装置)21と、この積み荷用シャトルコンベヤ21に下方で、この積み荷用シャトルコンベヤ21で搬送された貨物を受けて、船体の前後方向に搬送し、各貨物倉12の上部で貨物を落下させる機構を備えた積み荷用前後方向搬送装置22とを有して構成する。
【0046】
次に、船側揚げ荷荷役設備について、図1、図2、図4及び図5を参照しながら説明する。この船側揚げ荷荷役設備は、揚げ荷用シャトルコンベヤ(揚げ荷用の可動式コンベヤ装置)31と、貨物倉用荷役設備32を備えて構成される。
【0047】
この揚げ荷用シャトルコンベヤ31は、図4に示すように、固形物を略水平方向に搬送する水平搬送コンベヤ31aと、この水平搬送コンベヤ31aを収容して、かつ、内部を気密に保つ筐体31bとを備えて構成する。
【0048】
更に、この揚げ荷用シャトルコンベヤ31は、図2に示すように、前部揚げ荷荷役設備格納部19acに配置され、揚げ荷用シャトルコンベヤ31の全体が、左右舷方向(船体横方向)に移動し、前部揚げ荷荷役設備格納部19acの開口部19cから船側1aの位置より張り出して、移動後に、張り出した端部側が、陸上荷役設備と接続でき、また、他の端部側が船首尾方向(船体前後方向)に貨物を搬送するための船体側の貨物倉用荷役設備32の下側接続部32fdと接続できるように、横方向に走行する台車(図4)31cに搭載して構成する。
【0049】
また、この筐体31bの左舷側に左舷側上部接続部31puと左舷側下部接続部31pdを設け、右舷側に右舷側上部接続部31suと右舷側下部接続部31sdを設ける。これらの左舷側上部接続部31pu、左舷側下部接続部31pd、右舷側上部接続部31su、右舷側下部接続部31sdには、図10と図11に示すように、それぞれ、船側第4開閉弁31pua、第5開閉弁31pda、船側第4開閉弁31sua、第5開閉弁31sdaをスライド弁等で形成して設けて、筐体31bの気密性を確保できるようにする。
【0050】
この左舷側上部接続部31puと右舷側上部接続部31suは、図11に示すように、水平搬送コンベヤ31aのそれぞれの端部より少し内側(中央側)に設け、中央側搬送コンベヤ32fから水平搬送コンベヤ31aに、貨物を落下させる時の落下通路となるようにする。また、左舷側下部接続部31pdと右舷側下部接続部31sdは、図10に示すように、水平搬送コンベヤ31aのそれぞれの端部に設け、陸上側揚げ荷設備50の開閉弁52を備えた接続部材51に接続したときに、水平搬送コンベヤ31aから搬送された貨物が落下する時の落下通路となるようにする。
【0051】
一方、貨物倉用荷役設備32は、図5に示すように、ハッチ18の上の貨物倉荷役設備格納部19adに配置され、リクレーマ(バケットエレベーター)32a、横行台車32b,走行台車(トロリー)32c、横行払出しコンベヤ(ガントリコンベヤ)32d,前方向搬送コンベヤ(アンロードコンベヤ)32e、及び、中央側搬送コンベヤ32fを備えて構成される。
【0052】
このリクレーマ32aは、全閉カバー19に設けられたレール19dに沿って前後方向に走行する走行台車32cに設けられたレール上を走行する横行台車32bに吊り上げられて構成される。このリクレーマ32aは、ピストン(バケットエレベータシリンダ)32aaの伸びにより、先端側を貨物倉12内に降下させると共に、走行台車32cの前後方向移動と、横行台車32bの横移動とによって、貨物倉12の内部を縦横に移動しながら、下端のバケット状の掬取り器32abで、貨物倉12内部の貨物を連続的に掬い上げて、貨物倉12の上部の横行払出しコンベヤ32dに搬送する。
【0053】
この横行払出しコンベヤ32dは、走行台車32cに設けられており、貨物をリクレーマ32aの上端から横方向に移送して、両舷側に備えた前方向搬送コンベヤ32eの一方に搬送する。図7に示すように、この前方向搬送コンベヤ32eは、貨物を、船首尾方向(船体前後方向)に略水平方向に搬送し、荷役区画19aの前方の中央側搬送コンベヤ32fに落下させる。この中央側搬送コンベヤ32fは、前方向搬送コンベヤ32eの船首側の下方に、右舷側と左舷側の両方に設けられ、貨物を右舷側又は左舷側から中央側に搬送する。
【0054】
図4に示すように、この中央側搬送コンベヤ32fの中央側の下に、下側接続部32fdが設けられ、この下側接続部32fdを通過して、貨物を、シャトルコンベヤ31の水平搬送コンベヤ31aに落下させるように構成する。更に、水平搬送コンベヤ31aで搬送されてくる貨物を、陸上側揚げ荷荷役設備50に落下させるように構成する。
【0055】
また、揚げ荷用シャトルコンベヤ31の左舷側上部接続部31pu、又は、右舷側上部接続部31suと、貨物倉用荷役設備32の下側接続部32fdとの揚げ荷用船内接続部においては、図11に示すように、この接続部空間8aの内部の気体を不活性ガスを介して可燃性ガスと空気を置き換えられるように、この接続部空間8aに不活性ガス供給配管8bと排気配管8cを設ける。これらの配管は、左舷側上部接続部31pu、又は、右舷側上部接続部31suか、下側接続部32fdのいずれかに設ければよい。
【0056】
つまり、揚げ荷荷役で用いる船舶側荷役設備を、貨物倉12内の固形貨物を掬い出すリクレーマ32aと横行払出しコンベヤ装置32を備え、船体の前後方向に走行する貨物倉内荷役設備32と、船舶1の右舷側と左舷側に配置され、横行払い出しコンベヤ装置32dからの貨物を受けて、船体の前方に搬送する前方移送用コンベヤ装置32eと、船体の前方に配置され、前方移送用コンベヤ装置32eからの貨物を受けて、舷側側から船体中央側に搬送する中央移送コンベヤ装置32fと、陸側2に張り出す気密構造の船側荷役設備としての、貨物を左右舷方向に移送する水平搬送用コンベヤ(コンベヤ機器)31aを気密性を確保した筐体31bに収納して、この筐体31bごと左右舷方向に移動可能とし、最前の貨物倉12よりも前方に配置した揚げ荷用可動式コンベヤ装置31とを有して構成する。
【0057】
次に陸上側の荷役設備について説明する。図12及び図13に示すように、陸上側積み荷荷役設備40は、船側と接続する陸側接続部材41に陸側開閉弁42を備えて構成される。この陸側接続部材41は、岸壁に沿って走行する走行台車43の上に配置された旋回コンベヤ44の先端側の下部に設けられる。この旋回コンベヤ44は、陸側接続部材41の上下方向を含めた位置調整が可能なように、水平旋回及び仰角調整ができるように構成されると共に、上下角度タワー45のタワー側搬出用コンベヤ46から搬送されてくる貨物を中間コンベヤ47を介して、陸側接続部材41に搬送するように構成される。
【0058】
また、陸上側揚げ荷設備50は、図2、図4、図14及び図15に示すように、船側との接続部である陸上側接続部材51に陸側開閉弁52を備えて形成され、この陸側接続部材51から落下してくる貨物を搬送する搬送用コンベヤ53を備えている。この搬送コンベヤ53により、陸上側の貯蔵設備(図示しない)や貨物の消費設備(図示しない)に貨物を搬送する。
【0059】
次に、積み荷時(ローディング時)の船側積み荷荷役設備と陸上側積み荷設備40と間の荷役方法について図12及び図13を参照して説明する。以下、船舶は左舷(ポートサイド)側を接岸する場合について説明するが、右舷(スターボード)側を接岸する場合には、「左舷」と「右舷」とが入れ替わる。
【0060】
船舶1側の積み荷用シャトルコンベヤ21と陸上側積み荷設備40との接続について説明する。船舶1が入港し、陸側2の岸壁3に接岸すると、図13に示すように、船舶1の上部積み荷設備格納部19aaに配置された船側積み荷荷役設備20の積み荷用シャトルコンベヤ21が左舷方向に移動して、上部積み荷設備格納部19aaの陸側2の積み荷用開口部19bから、左舷側上部接続部21puを船側1aの位置よりも陸側2に張り出す。
【0061】
図8に示すように、この張り出した左舷側上部接続部21puに、船側第1開閉弁21puaと陸上側積み荷設備40の陸側開閉弁42を閉じた状態で接続し、接続部空間5aを形成する。次に、船舶1側若しくは陸上側積み荷設備40の不活性ガス供給装置(図示しない)に不活性ガス供給配管5bを接続する。
【0062】
この不活性ガス供給配管5bから不活性ガスを船側第1開閉弁21puaと陸側開閉弁42との間の接続部空間5aに注入し、空気を排気配管5cから排出して接続部空間5a内の空気を不活性ガスに置換する。この置換後に船側第1開閉弁21puaと陸側開閉弁42とを開弁して、陸上側積み荷設備40と積み荷用シャトルコンベヤ21の左舷側上部接続部21puとの接続を完了する。
【0063】
次に、船舶1側の積み荷用シャトルコンベヤ21と船側積み荷荷役設備の積み荷用前後方向搬送装置22との接続について説明する。図13に示すように、積み荷用シャトルコンベヤ21が左右舷方向に移動して、左舷側上部接続部21puを船側1aの位置よりも陸側3に張り出すと、右舷側下部接続部21sdが、積み荷用前後方向搬送装置22の上側に位置する。
【0064】
図9に示すように、この積み荷用前後方向搬送装置22の上側接続部22uに右舷側下部接続部21sdを接続する。この接続は、右舷側下部接続部21sdの第2開閉弁21sdaと上側接続部22uの第3開閉弁22uaを閉じた状態で行う。次に、船舶1側若しくは陸上側積み荷設備40の不活性ガス供給装置(図示しない)に不活性ガス供給配管6bを接続する。
【0065】
この不活性ガス供給配管6bから不活性ガスを第2開閉弁21sdaと第3開閉弁22uaとの間の接続部空間6aに注入し、空気を排気配管6cから排出して接続部空間6a内の空気を不活性ガスに置換する。この置換後に第2開閉弁21sdaと第3開閉弁22uaとを開弁して、積み荷用前後方向搬送装置22と右舷側下部接続部21sdとの接続を完了する。
【0066】
これらの接続及び各貨物倉12のハッチカバーを開け終わると、陸上側積み荷設備40からの貨物は、陸側接続部材41、左舷側上部接続部21pu、積み荷用シャトルコンベヤ21、右舷側下部接続部21sd、上側接続部22u、積み荷用前後方向搬送装置22を経由して各貨物倉12の開口されたハッチ8部分の上に搬送され、積み荷用前後方向搬送装置22の下側排出部22dから落下させることにより、各貨物倉12の内部に搬入される。この積み荷作業では、図13に示す矢印のように流れる。
【0067】
積み荷作業が完了すると、各貨物倉12のハッチカバーが閉じられる。そして、図8に示す陸上側積み荷設備40との接続部では、船側第1開閉弁21puaと陸側開閉弁42を閉じる。その後、接続部空間5aに、不活性ガス供給配管5bから不活性ガスが供給され、可燃性ガスを排気配管5cから排出し、接続部空間5aの可燃性ガスを不活性ガスに置き換える。また、不活性ガス供給配管5bを陸上の不活性ガス供給設備(図示しない)接続していた場合には、この不活性ガス供給設備と切り離す。この状態で、陸上側積み荷設備40の陸側接続部材41を積み荷用シャトルコンベヤ21左舷側上部接続部21puから切り離す。
【0068】
また、図9に示す船側の接続部では、第2開閉弁21sdaと第3開閉弁22uaを閉じる。その後、接続部空間6aに、不活性ガス供給配管6bから不活性ガスが供給され、可燃性ガスを排気配管6cから排出し、接続部空間6aの可燃性ガスを不活性ガスに置き換える。また、不活性ガス供給配管6bを陸上の不活性ガス供給設備(図示しない)接続していた場合には、この不活性ガス供給設備と切り離す。この状態で、積み荷用シャトルコンベヤ21の右舷側下部接続部21sdを積み荷用前後方向搬送装置22の上側接続部22uから切り離す。
【0069】
その後、積み荷用シャトルコンベヤ21を、右舷方向に移動して、船体中央に戻す。
【0070】
次に、揚げ荷時(アンローディング時)の船側揚げ荷荷役設備と陸上側揚げ荷設備と間の荷役方法について説明する。以下、船舶は左舷(ポートサイド)側を接岸する場合について、図14及び図15を参照して説明するが、右舷(スターボード)側を接岸する場合には、「左舷」と「右舷」とが入れ替わる。
【0071】
船舶1が入港し、陸側2の岸壁3に接岸すると、先ず、船舶1側の揚げ荷用シャトルコンベヤ31と陸上側揚げ荷設備50との接続について説明する。船舶1の前部揚げ荷荷役設備格納部19acに配置された船側揚げ荷荷役設備の揚げ荷用シャトルコンベヤ31が左舷方向に移動して、前部揚げ荷荷役設備格納部19acの陸側3の揚げ荷用開口部19cから、左舷側下部接続部31pdを船側1aの位置よりも陸側3に張り出す。
【0072】
図10に示すように、この張り出した左舷側下部接続部31pdに、船側第4開閉弁31pdaを閉じた状態で、陸上側揚げ荷設備50の陸側接続部材51を陸側開閉弁52を閉じた状態で接続する。次に、船舶1側若しくは陸上側揚げ荷設備50の不活性ガス供給装置(図示しない)に不活性ガス供給配管7bを接続する。
【0073】
この不活性ガス供給配管7bから不活性ガスを船側第4開閉弁31pdaと陸側開閉弁52との間の接続部空間7aに注入し、空気を排気配管7cから排出して接続部空間7a内の空気を不活性ガスに置換する。この置換後に船側第4開閉弁31pdaと陸側開閉弁52とを開弁して、陸上側揚げ荷設備50と揚げ荷用シャトルコンベヤ31の左舷側下部接続部31pdとの接続を完了する。
【0074】
次に、船舶1側の揚げ荷用シャトルコンベヤ31と船側揚げ荷荷役設備の貨物倉用荷役設備32との接続について説明する。揚げ荷用シャトルコンベヤ31が左舷方向に移動して、左舷側下部接続部31pdを、揚げ荷用開口部9cから船側1aの位置よりも陸側2に張り出すと、右舷側上部接続部31suが、貨物倉用荷役設備32の下側に位置する。
【0075】
図11に示すように、この貨物倉用荷役設備32の下側接続部32fdに右舷側上部接続部31suを接続する。この接続は、右舷側上部接続部31suの第5開閉弁31suaと下側接続部32fdの第6開閉弁32faを閉じた状態で行う。次に、船舶1側若しくは陸上側揚げ荷設備50の不活性ガス供給装置(図示しない)に不活性ガス供給配管8bを接続する。
【0076】
この不活性ガス供給配管8bから不活性ガスを第5開閉弁31suaと第6開閉弁32faとの間の接続部空間8aに注入し、空気を排気配管8cから排出して接続部空間8a内の空気を不活性ガスに置換する。この置換後に第5開閉弁31suaと第6開閉弁32faとを開弁して、貨物倉用荷役設備32と右舷側上部接続部31suとの接続を完了する。
【0077】
これらの接続及び各貨物倉12のハッチカバーを開け終わると、図5に示す貨物倉用荷役設備32のリクレーマ32aを全閉カバー19に設けられたレール19dに沿って走行台車32cを前後方向に走行して、荷役対象の貨物倉12の上に移動する。
【0078】
その後、横行台車32bに吊り上げられているリクレーマ32aを、ピストン32aaを伸ばして、先端側を貨物倉12内に降下させる。そして、下端のバケット状の掬取り器32abで、貨物倉12内部の貨物を連続的に掬い上げて、貨物倉12の上部の横行払出しコンベヤ32dに搬送する。このときに、走行台車32cの前後方向移動と、横行台車32bの横移動とによって、貨物倉12の内部を縦横に移動しながら、貨物を掬い上げる。
【0079】
掬い上げられた貨物は、図7に示すように、横行払出しコンベヤ32dから両舷側の前方向搬送コンベヤ32eの一方を経由して、荷役区画19aの前方の中央側搬送コンベヤ32fに落下させられる。貨物は、この中央側搬送コンベヤ32fで右舷側又は左舷側から中央側に搬送され、下側接続部32fdを通過して、シャトルコンベヤ31の水平搬送コンベヤ31aに落下させられる。この水平搬送コンベヤ31aで搬送されてくる貨物は、陸上側揚げ荷荷役設備50に落下させられて、陸揚げされる。
【0080】
つまり、貨物倉12の貨物は、貨物倉用荷役設備32、下側接続部32fd、右舷側上部接続部31su、揚げ荷用シャトルコンベヤ31、左舷側下部接続部31pd、陸側接続部材51を経由して、陸上側揚げ荷設備50に搬入される。この揚げ荷作業では、図5、図7、図4及び図15に示す矢印のように流れる。
【0081】
揚げ荷作業が完了すると、各貨物倉12のハッチカバーが閉じられる。そして、陸上側揚げ荷設備50との接続部では、船側第4開閉弁31pdaと陸側開閉弁52を閉じる。その後、図10に示す接続部空間7aに、不活性ガス供給配管7bから不活性ガスが供給され、可燃性ガスを排気配管7cから排出し、接続部空間7aの可燃性ガスを不活性ガスに置き換える。また、不活性ガス供給配管7bを陸上の不活性ガス供給設備(図示しない)接続していた場合には、この不活性ガス供給設備と切り離す。この状態で、陸上側揚げ荷設備50の陸側接続部材51を揚げ荷用シャトルコンベヤ31の左舷側下部接続部31pdから切り離す。
【0082】
また、船側では、第5開閉弁31suaと第6開閉弁32faを閉じる。その後、図11に示す続部空間8aに、不活性ガス供給配管7bから不活性ガスが供給され、可燃性ガスを排気配管8cから排出し、接続部空間8aの可燃性ガスを不活性ガスに置き換える。また、不活性ガス供給配管8bを陸上の不活性ガス供給設備(図示しない)接続していた場合には、この不活性ガス供給設備と切り離す。この状態で、揚げ荷用シャトルコンベヤ31の右舷側上部接続部31suを貨物倉用荷役設備32の下側接続部32fdから切り離す。
【0083】
その後、揚げ荷用シャトルコンベヤ31を、左右舷方向に移動して、船体中央に戻す。
【0084】
上記の構成の船舶1によれば、固形状の貨物の搬送経路の気密性を保ちながら、船側の荷役装置21,31と陸上側の荷役設備40,50の接続を行う場合に、この接続部分の位置を船舶1側から陸側3に向けて張り出した位置とすることで、比較的規模が大きく大きな重量となり易い陸上荷役設備40,50が船体構造物や船体の上部構造物と衝突する危険性を回避することができ、船体の損傷による大規模な可燃性ガスの放出を防止できる。
【0085】
また、万一、船側の荷役装置21,31と陸側2の荷役装置40,50とが衝突しても、陸側2に張り出す船側の荷役装置21,31は軽量で小さいので、衝突時の損傷が少なく、また、衝突箇所が船外となるので、船内で可燃性ガスと空気との爆発雰囲気の形成を回避できる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の船舶の荷役システム及び船舶は、固形状の貨物の搬送経路の気密を保ちながら、船側の荷役装置と陸側の荷役設備の接続を行う場合に、この接続部を船側の位置よりも陸側に向けて張り出した位置とすることで、陸上荷役設備が船体と衝突する危険性を回避することができるので、NGHハイドレート等の可燃性ガスを発生する固形状の貨物を運搬するための船舶の荷役システム及び船舶として利用できる。
【符号の説明】
【0087】
1 船舶
1a 船側
2 陸側
5a、6a、7a、8a 接続部空間
5b、6b、7b、8b 不活性ガス供給配管
5c、6c、7c、8c 排気配管
11 上甲板
12 貨物倉
18 ハッチ
19 全閉カバー
19a 荷役区画
19b 積み荷用開口部
19c 揚げ荷用開口部
21 積み荷用シャトルコンベヤ(積み荷用の可動式コンベヤ装置)
21a 水平搬送コンベヤ
21b 筐体
21c 台車
21pd 左舷側下部接続部
21pda、21sda 第2開閉弁
21pu 左舷側上部接続部
21pua、21sua 船側第1開閉弁
21sd 右舷側下部接続部
21su 右舷側上部接続部
22 積み荷用前後方向搬送装置
22a 水平搬送コンベヤ
22d 下側排出部
22u 上側接続部
22ua 第3開閉弁
31 揚げ荷用シャトルコンベヤ(揚げ荷用の可動式コンベヤ装置)
31a 水平搬送コンベヤ
31b 筐体
31c 台車
31pd 左舷側下部接続部
31pda、31sda 船側第4開閉弁
31pu 左舷側上部接続部
31pua、31sua 第5開閉弁
31sd 右舷側下部接続部
31su 右舷側上部接続部
32 貨物倉用荷役設備
32a リクレーマ
32d 横行払出しコンベヤ
32e 前方向搬送コンベヤ
32f 中央側搬送コンベヤ
32fa 第6開閉弁
32fd 下側接続部
40 陸上側積み荷設備
41 陸側接続部材
42 陸側開閉弁
50 陸上側揚げ荷設備
51 陸側接続部材
52 陸側開閉弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可燃性ガスを発生する固形状の貨物をばら積み状態で運搬する船舶において、該船舶と陸上側荷役設備との間で、貨物を荷役するときに、該船舶側から気密構造の船側荷役設備の一部を左右舷方向に移動して陸側に張り出して、この張り出し部位において、前記船側荷役設備と前記陸上側荷役設備との間で気密性を確保した接続を行って、該船側荷役設備と前記陸上側荷役設備との間で荷役を行うことを特徴とする船舶。
【請求項2】
前記陸側に張り出す気密構造の船側荷役設備を、貨物を左右舷方向に移送するコンベヤ機器を気密性を確保した筐体に収納して、該筐体ごと左右舷方向に移動可能とした可動式コンベヤ装置で構成したことを特徴とする請求項1記載の船舶。
【請求項3】
前記可動式コンベヤ装置の一端側が、右舷側又は左舷側に移動して、船舶側から陸側に張り出して陸上側荷役設備と接続したときに、前記可動式コンベヤ装置の他端側は、船内側の貨物搬送装置と接続可能な位置になるように、前記可動式シャトルコンベヤと船内の貨物搬送装置を配置して設けたことを特徴とする請求項2記載の船舶。
【請求項4】
前記陸側に張り出す気密構造の船側荷役設備を、上下方向に関して、上方側に配置した積み荷用の前記可動式コンベヤ装置と、下方側に配置した揚げ荷用の前記可動式コンベヤ装置とで別々に構成し、積み荷荷役では、前記積み荷用の前記可動式コンベヤ装置を、陸側の積み荷荷役設備の接続部材よりも下側に張り出し、揚げ荷荷役では、前記揚げ荷用の前記可動式コンベヤ装置を、陸側の揚げ荷荷役設備の接続部材よりも上側に張り出すように構成したことを特徴とする請求項2、及び3記載の船舶。
【請求項5】
前記船側荷役設備と前記陸上側荷役設備との間で気密性を確保した接続を行う際に、前記船側荷役設備の接続部材と、前記陸上側荷役設備の接続部材にそれぞれ開閉弁を設けて、この両方の開閉弁の間の接続空間に連通する不活性ガス供給用の給気管と排気管とを設けて、不活性ガスと空気の置換行程を間に入れて、空気と可燃性ガスを置換することを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載の船舶。
【請求項6】
前記可動式コンベヤ装置の他端側と、船内側の貨物搬送装置との接続の間で気密性を確保した接続を行う際に、前記可動式コンベヤ装置の接続部材と、前記船内側の貨物搬送装置の接続部材にそれぞれ開閉弁を設けて、この両方の開閉弁の間の接続空間に連通する不活性ガス供給用の給気管と排気管とを設けて、不活性ガスと空気の置換行程を間に入れて、空気と可燃性ガスを置換することを特徴とする請求項2、3、4又は5に記載の船舶。
【請求項7】
積み荷荷役で用いる前記船舶側荷役設備を、
前記陸側に張り出す気密構造の船側荷役設備としての、貨物を左右舷方向に移送するコンベヤ機器を気密性を確保した筐体に収納して、該筐体ごと左右舷方向に移動可能とし、貨物倉の上部に設けた全閉カバー上部に配置した積み荷用可動式コンベヤ装置と、
該積み荷用可動式コンベヤ装置に下方で、該積み荷用可動式コンベヤ装置で搬送された貨物を受けて、船体の前後方向に搬送し、各貨物倉の上部で貨物を落下させる機構を備えた前後方向搬送装置とを有して構成したことを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6に記載の船舶。
【請求項8】
揚げ荷荷役で用いる前記船舶側荷役設備を、
貨物倉内の固形貨物を掬い出すリクレーマと横行払出しコンベヤ装置を備え、船体の前後方向に走行する貨物倉内荷役設備と、
船舶の右舷側と左舷側に配置され、前記横行払い出しコンベヤ装置からの貨物を受けて、船体の前方に搬送する前方移送用コンベヤ装置と、
船体の前方に配置され、前記前方移送用コンベヤ装置からの貨物を受けて、舷側側から船体中央側に搬送する中央移送コンベヤ装置と、
前記陸側に張り出す気密構造の船側荷役設備としての、貨物を左右舷方向に移送するコンベヤ機器を気密性を確保した筐体に収納して、該筐体ごと左右舷方向に移動可能とし、最前の貨物倉よりも前方に配置した揚げ荷用可動式コンベヤ装置とを有して構成したことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6又は7に記載の船舶。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−202015(P2010−202015A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−48602(P2009−48602)
【出願日】平成21年3月2日(2009.3.2)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】