説明

色の変化に対して保護された耐塩素性エラスタン繊維

【課題】織物または編み物を製造するために必要な処理工程により変色せず、塩素処理水環境で使用できるポリウレタン尿素の弾性繊維を提供する。
【解決手段】ポリウレタン尿素繊維がジアルキルスルホスクシネートで被覆されたハイドロタルサイトを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は織物を製造するために必要な処理工程により変色されず、スイミングプールのような塩素処理水環境で使用することができる、例えばスイムウェアーのためのポリウレタン、特にポリウレタン尿素の弾性繊維に関する。本発明は被覆されたハイドロタルサイトを含有するポリウレタン尿素の弾性繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
ここで使用されるように、繊維は主に知られた紡糸処理、例えば乾式紡糸法または湿式紡糸法および溶融紡糸により製造することができるステープル繊維および/または連続フィラメントを含む。
【0003】
ポリウレタン尿素の弾性繊維は、85%以上の範囲で、例えばポリエーテル、ポリエステルおよび/またはポリカーボネートをベースとするセグメントポリウレタン尿素から形成され、十分に知られている長鎖合成ポリマーからなる。ポリウレタンの弾性繊維は同様にポリウレタン尿素繊維に形成することができる。基本的な相違は、重合にアミンの代わりにジオールを使用することである。予め確認された繊維から形成されるヤーンはポリアミドまたはポリエステルまたは綿またはビスコースのような他の繊維のような硬質繊維と結合し、ループ形状編み物を製造するために使用され、これが体型を整える婦人用下着、ストッキングおよびスポーツウェアーを含む織物に有用であり、例は水着および水泳パンツである。ループ形状編み物または織物を製造するために、繊維は異なる処理を通過し、熱硬化または成形の間に185℃または100℃より高い高温にさらされることがある。この熱暴露はポリウレタン尿素繊維に色の好ましくない変化を生じることがあり、これが特に淡い色の織物およびポリウレタン尿素繊維の高い質量割合(全織物の質量に対して10質量%より大きい)を有する織物の製造を傷つけることがある。更にスイミングプールの水が衛生の理由からしばしば活性塩素含量が一般に0.5〜3.5ppmまたはこれより高い程度に塩素処理される。ポリウレタン尿素繊維がこのような環境にされされる場合に、これが織物の物理的特性、たとえばテナシティーの減損または損傷を生じることがあり、これにより織物の部分に早すぎる摩耗および引き裂きを生じることがある。
【0004】
熱硬化または成形の進行中のような熱処理による繊維製造の進行中のポリウレタン尿素繊維の色の変化は商業的に受け入れられない、それというのも特に淡い色の織物の製造を共通した根拠で事実上不可能にするからである。更に製造される織物が高い濃度のポリウレタン尿素繊維を含有する場合は、例えば色合いを正しく適合できない。反対にこれらの繊維から製造される織物の使用者が塩素の作用に気づいていない場合は塩素による一定の程度の繊維の分解が許容される。従って、例えば織物製造の進行中の熱処理による色の変化の回避は、特に淡い色の色合いで織物を製造するために必要であり、同様に例えば10質量%より高い、ポリウレタン尿素繊維の高い濃度を有する織物を製造するために必要である。同時に繊維材料は塩素に誘発される分解に十分な耐性を有するべきである。
【0005】
スイムウェアーに適用するために弾性ポリウレタン尿素ヤーンの塩素処理水耐性を改良するために、ポリウレタン尿素をしばしば低分子の一ヒドロキシル官能性、二ヒドロキシル官能性または多ヒドロキシル官能性ポリマーとしてポリエステルから製造した。しかし脂肪族ポリエステルは高い程度の生物活性を有する。これによりこのポリマーから製造されるポリウレタン尿素が微生物および菌類により容易に分解する欠点を有する。更にポリエステルをベースとするポリウレタン尿素の塩素処理水耐性が十分でないことが決定された。
【0006】
弾性ポリウレタン尿素繊維の塩素処理水耐性を改良するために、エラスタン繊維での多くの添加剤が記載されている。
【0007】
塩素の安定化を達成する目的で、セグメントポリウレタン尿素のフィラメントへの酸化亜鉛の配合は文献に記載されている(特許文献1参照)。しかし酸化亜鉛は特に酸性条件下(pH3〜4)で織物の染色中にフィラメントの浸出の重大な欠点を有する。これは繊維の塩素処理水耐性を大きく減少する。更に亜鉛含有染色工場の排水が排水を処理するために使用される生物的水処理装置中の細菌を殺す。結果としてこの水処理装置の性能が明らかに損なわれる。
【0008】
セグメントポリウレタン尿素のフィラメントにハイドロタルサイトを配合することにより達成される塩素処理水耐性の改良は文献に記載されている(特許文献2参照)。重金属を使用せずに安定化が達成されると同様に、酸性条件下(pH3〜4)で染色した場合に、分散されたハイドロタルサイトがわずかしか浸出せず、塩素処理水への良好な安定性が保たれることが記載される。しかしハイドロタルサイトがジメチルアセトアミドまたはジメチルホルムアミドのような極性溶剤中でおよびポリウレタン尿素繊維の紡糸溶液中においても凝集しやすいことが欠点として見出された。ポリウレタン尿素繊維のための紡糸溶液中の凝集物は急速に紡糸口金ダイを閉塞させ、頻繁な繊維の破断および/または紡糸口金ダイでの圧力の形成により紡糸作業をしばしば中断しなければならない。従ってこの方法により十分なコンシステンシーを有する延長した時間にわたるPU組成物の紡糸は不可能である。更にこれらのフィラメントが熱硬化または成形処理により織物に更に処理する間に色の好ましくない変化を生じることがある。
【0009】
結晶化の水を含有するハイドロタルサイトおよびこれに付着した脂肪酸を有するポリウレタン尿素組成物は文献に記載されている(特許文献3参照)。この組成物を使用する欠点は、ポリウレタン尿素組成物から製造されたフィラメントを織物に更に処理する場合に、熱硬化または成形作業、すなわち熱処理により好ましくない色の変化を生じることである。
【0010】
ポリウレタン尿素組成物および特にこれから得られるポリウレタン尿素弾性繊維は文献に記載されており(特許文献4参照)、前記繊維はそれぞれポリオルガノシロキサンまたはポリオルガノシロキサンとポリオルガノハイドロシロキサンの混合物で被覆された、ハイドロタルサイトおよび/または他の塩基性金属−アルミニウムヒドロキシ化合物を含有する。この組成物を使用する1つの欠点は、前記ポリウレタン尿素繊維を延長した時間にわたり連続的紡糸作業で製造し、紡糸作業での破断が起こることがあり、紡糸の数日後にパッケージに巻く際に糸が破断しはじめることがある。この組成物を使用する他の欠点は、このポリウレタン尿素組成物から製造されるフィラメントが再び織物に更に処理する際に熱硬化または成形作業、すなわち熱処理による色の好ましくない変化を生じることである。
【0011】
ポリウレタン尿素組成物および特にこれから得られるポリ尿素繊維は文献に記載されており(特許文献5参照)、前記ポリ尿素繊維はハイドロタルサイトおよび繊維の強度を高めるジアルキルスルホスクシネート添加剤を含有する。しかしこのポリウレタン尿素組成物から製造されるフィラメントを織物に更に処理する場合に、熱硬化または成形作業、すなわち熱処理による色の好ましくない変化を生じることがある。
【特許文献1】米国特許第6406788号
【特許文献2】特開昭59−133248号
【特許文献3】欧州特許第558758号
【特許文献4】欧州特許第843029号
【特許文献5】欧州特許第1200518号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、技術水準に比べて、ループ形状の編み物または織物を製造する連続作業での熱硬化または成形の間に生じることがあるこの種のポリウレタン尿素繊維の熱暴露による好ましくない変色を含まず、塩素処理水に対して良好な耐性を有する、特にポリウレタン尿素繊維(エラスタン繊維と呼ばれる)のためのポリウレタン尿素組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題は、本発明により、ポリウレタン尿素繊維に、ジアルキルスルホスクシネートで被覆された微細分散ハイドロタルサイトの有効な量を添加した場合に解決される。
【0014】
従って本発明は、熱処理の間に色が変化する傾向を減少し、塩素に対する高い耐性を有し、セグメントポリウレタン尿素85%以上からなるポリウレタン尿素繊維(エラスチン繊維)であり、前記ポリウレタン尿素繊維が、微細分散ハイドロタルサイト、特に一般式(I)
1−x2+Al(OH)x/nn−・mHO (I)
(式中、
2+はマグネシウムを表し、
n−はOH、CO2−またはシリケート、特にCO2−から選択される原子価nのアニオンであり、
xは0より大きく、0.5以下であり、mは0より大きく、1より小さい)のハイドロタルサイト0.30〜10質量%を含有するポリウレタン尿素繊維を提供し、前記ハイドロタルサイトが、被覆されたハイドロタルサイトの質量に対してジアルキルスルホスクシネート1〜15質量%で被覆されていることを特徴とする。
【0015】
ポリウレタン尿素繊維中に微細に分散して存在する、ジアルキルスルホスクシネートが被覆されたハイドロタルサイトの量は、ポリウレタン尿素繊維の質量に対して0.3質量%〜10質量%、有利に0.5質量%〜8質量%、より有利に1.5質量%〜7質量%、およびきわめて有利に2質量%〜6質量%の範囲内である。ハイドロタルサイトの量はエラスタン繊維および/またはその表面の内部に存在することができる。
【0016】
ハイドロタルサイトは、特に有利に、例えば式(2)および(3):
MgAl(OH)16(A2−)・wHO (2)
MgAl(OH)12(A2−)・wHO (3)
に示されるハイドロタルサイトであり、A2−は式(I)に関して前記のものを表し、wは1以上で15以下である。
【0017】
特に有利なハイドロタルサイトの例は、式(4)および(5):
MgAl(OH)16CO・5HO (2)
MgAl(OH)12CO・4HO (3)
に示されるハイドロタルサイトである。
【0018】
前記ジアルキルスルホスクシネートは、被覆されるハイドロタルサイトの質量に対して1〜15質量%の範囲の濃度でハイドロタルサイトを被覆するために使用する。ジアルキルスルホスクシネート1.5〜12質量%で被覆されたハイドロタルサイトを使用することが有利である。ジアルキルスルホスクシネート2〜8質量%で被覆されたハイドロタルサイトを使用することが特に有利である。
【0019】
使用されるジアルキルスルホスクシネートは、有利に一般式(6):
【0020】
【化1】

に相当するジアルキルスルホスクシネートであり、
式中、RおよびRは同じかまたは異なり、独立に5〜18個の炭素原子を有するアルキル基、有利に8個の炭素原子を有するアルキル基を表し、
およびRはより有利に同じであり、エチルヘキシル基:
−CH−CH(CH−CH)−CH−CH−CH−CHを表し、
はNa、KまたはNH、有利にNaを表す。
【0021】
ジアルキルスルホスクシネートは一般的な方法で、参考文献、C.R.Carly、Ind.Eng.Chem.Vol.31、45頁、1939に記載されるように製造することができる。
【0022】
特に有利なジアルキルスルホスクシネートはジイソブチルスルホコハク酸ナトリウム、ビス(n−オクチル)スルホコハク酸ナトリウム、ビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム、ジヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ジアミルスルホコハク酸ナトリウムおよびジシクロヘキシルスルホコハク酸ナトリウムである。
【0023】
式(7):
【0024】
【化2】

(式中、MはNa、KまたはNH、有利にNaを表す)のジアルキルスルホスクシネートを使用して特別な利点が得られる。
【0025】
ビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウムが最も有利なジアルキルスルホスクシネートである。
【0026】
ハイドロタルサイトを被覆するために使用されるジアルキルスルホスクシネートは単独物質としてまたは複数のジアルキルスルホスクシネートの混合物として使用することができる。
【0027】
ハイドロタルサイトの被覆はジアルキルスルホスクシネートを一緒にまたは別々に、任意の所望の順序で、有利にハイドロタルサイトの最終的粉砕の前および/または間に噴霧および/または混合することにより行うことができる。この関係でジアルキルスルホスクシネートを乾燥する前に、ハイドロタルサイト製造の進行中に製造される湿ったフィルターケーキ、ペーストまたはスラリーに混合するか、または適当な方法で、例えば噴霧により最終的粉砕の直前に乾燥材料に添加するか、または蒸気ジェット乾燥の場合にジェットミルに供給する直前に蒸気に添加するかは重要でない。ジアルキルスルホスクシネートを適当な場合は添加する前にエマルジョンに変換することができる。
【0028】
ハイドロタルサイトの製造自体は例えば公知方法により実施する。これらの方法は例えば欧州特許第129805号に記載されている。
【0029】
有利にジアルキルスルホスクシネートを被覆したハイドロタルサイトは、その出発化合物、例えばMgCO、Alおよび水からジアルキルスルホスクシネートおよび溶剤、例えば水またはC〜C−アルコールの存在で製造し、引き続き例えば噴霧乾燥により乾燥し、適当な場合は引き続き、例えばビーズミルにより粉砕する。ジアルキルスルホスクシネート被覆ハイドロタルサイトを繊維添加物として使用する場合は、有利に数平均直径5μm以下を有する被覆されたハイドロタルサイト、より有利に平均直径3μm以下を有する被覆されたハイドロタルサイト、更に有利に平均直径2μm以下を有する被覆されたハイドロタルサイト、特に有利に平均直径1μm以下を有する被覆されたハイドロタルサイトを使用する。
【0030】
ジアルキルスルホスクシネートで被覆されたハイドロタルサイトはポリウレタン尿素組成物にポリウレタン尿素繊維製造の任意の所望の段階で添加することができる。例えばジアルキルスルホスクシネートで被覆されたハイドロタルサイトを溶液またはスラリーの形で他の繊維添加剤の溶液または分散液に添加し、引き続き混合し、または繊維紡糸用紡糸口金ダイの上流でポリマー溶液に噴霧することができる。もちろんジアルキルスルホスクシネートで被覆されたハイドロタルサイトをポリマー紡糸溶液から乾燥粉末としてまたは適当な媒体中のスラリーとして添加することができる。ジアルキルスルホスクシネートで被覆されたハイドロタルサイトは、原則的に適当な場合は、被覆された公知のハイドロタルサイトの前記欠点が混合物中で許容されるという条件で、前記の方法により被覆されていないハイドロタルサイトまたは公知被覆剤(例えば金属脂肪酸またはポリオルガノシロキサンまたはポリオルガノシロキサンとポリオルガノヒドロシロキサンの混合物)を使用して被覆されたハイドロタルサイトとの混合物としてポリウレタン尿素繊維を製造するために使用することができる。
【0031】
ポリウレタン尿素組成物中のジアルキルスルホスクシネートで被覆されたハイドロタルサイトの添加は有利に前記方法により以下のように行う。ジアルキルスルホスクシネートで被覆されたハイドロタルサイトの20%分散液を適当な溶剤、例えばジメチルアセトアミドに混合することにより製造する。適当な場合は分散液をビーズミル、例えばFryma mill model MSZ12(Fryma−Maschinenbau)を使用して粉砕することができる。分散液をポリウレタン尿素紡糸溶液と、12〜16質量%の濃度のジアルキルスルホスクシネートで被覆されたハイドロタルサイトが得られる分散液を生じるように混合する。この分散液はジアルキルスルホスクシネートで被覆されたハイドロタルサイトが沈殿せず、貯蔵後に更に細分化した微細な状態で存在することを保証する。この分散液中のジアルキルスルホスクシネートで被覆されたハイドロタルサイトの数平均直径は有利に3μm以下、より有利に2μm以下、特に有利に1μm以下である。
【0032】
本発明によるポリウレタン尿素繊維は様々な目的のための多数の様々な他の添加剤、例えばつや消し剤、充填剤、酸化防止剤、染料、汚染剤、熱、光、UV線および煙に対する安定剤を含有することができる。
【0033】
酸化防止剤、熱、光またはUV線に対する安定剤の例は立体障害フェノール、ヒンデルトアミン光安定剤、トリアジン、ベンゾフェノンおよびベンゾトリアゾールの群からの安定剤である。顔料およびつや消し剤の例は二酸化チタン、酸化亜鉛および硫酸バリウムである。染料の例は酸性染料、分散染料および無金属有機顔料および任意の光沢剤である。前記安定剤は混合物の形でも使用することができ、有機または無機被覆剤を含有する。前記添加剤は有利にジアルキルスルホスクシネートで被覆されたハイドロタルサイトに反対の作用を示さない量で供給するべきである。
【0034】
冒頭に記載したように、ハイドロタルサイトは、所定の条件下でポリウレタン尿素の繊維を製造するための乾式紡糸または湿式紡糸作業に一般に使用されるジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドまたはジメチルスルホキシドのような極性溶剤中で凝集する。これにより配合されたハイドロタルサイトを含有する紡糸溶液が紡糸作業の間に紡糸口金ダイを閉塞させ、ダイ圧力を激しく上昇させおよび/またはパッケージに巻く前またはその間に新たに形成される繊維が破断することにより問題を生じる。本発明によりポリウレタン尿素紡糸溶液にジアルキルスルホスクシネートを配合する際に紡糸溶液に凝集が生じることがなく、ジアルキルスルホスクシネートで被覆されたハイドロタルサイトの平均粒径が実質的に変化せずに残る。これは紡糸口金の耐用時間を増加し、従って作業の一貫性および本発明によるポリウレタン尿素繊維の乾式または湿式紡糸への適合性を増加する。
【0035】
本発明は更にセグメントポリウレタン85%以上を含有する長鎖合成ポリマーを有機溶剤、例えばジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドまたはジメチルスルホキシドに、ポリウレタン尿素組成物に関して20〜50質量%の範囲の割合で、有利にポリウレタン尿素組成物に関して25〜45質量%の範囲の割合で溶解し、引き続きこの溶液を紡糸口金ダイを介して乾式または湿式紡糸法により紡糸し、フィラメントを形成することからなるポリウレタン尿素繊維の製造方法を提供し、ジアルキルスルホスクシネートで被覆されたハイドロタルサイトを、紡糸溶液に、ポリウレタン尿素繊維の質量に対して0.30〜10質量%、有利に0.5〜8質量%、より有利に1.5〜7質量%、特に有利に2〜6質量%の範囲の量で添加し、フィラメント内部に、適当な場合は付加的にフィラメント表面に分配することを特徴とする。
【0036】
0.30質量%未満のジアルキルスルホスクシネートで被覆されたハイドロタルサイトをフィラメント内部に、適当な場合は付加的にフィラメント表面に分散する場合に、塩素によるポリマーの分解に対する有効性が所定の条件下であまり十分でない。
【0037】
フィラメント内部および適当な場合は付加的にフィラメント表面の、10質量%よりかなり多いジアルキルスルホスクシネートで被覆されたハイドロタルサイトの分散は繊維の部分の不利な物理的特性を生じることがあり、従ってあまり勧められない。
【0038】
本発明の改良されたポリウレタン尿素繊維はセグメントポリウレタン、例えばポリエーテル、ポリエステル、ポリエーテルエステル、ポリカーボネート等をベースとするセグメントポリウレタンからなる。この繊維は、主に知られた方法により、例えばWO94/23100号またはWO98/25986号に記載される方法により製造することができる。更にポリウレタン尿素繊維は欧州特許第1379591号に製造が記載されている熱可塑性ポリウレタンからなっていてもよい。
【0039】
セグメントポリウレタンは原則として特に分子のそれぞれの端部にヒドロキシル基を有し、600〜4000の範囲の分子量を有する線状ホモポリマーまたはコポリマーから、例えばポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルアミドジオール、ポリカーボネートジオール、ポリアクリレートジオール、ポリチオエーテルジオール、ポリチオエステルジオール、ポリ炭化水素ジオールからなる群、またはこの群の化合物の混合物またはコポリマーから製造される。セグメントポリウレタンは更に特に有機ジイソシアネートおよび複数の活性水素原子を有する連鎖延長剤、例えばジポリオール、ジアミンおよびポリアミン、ヒドロキシルアミン、ヒドラジン、ポリヒドラジド、ポリセミカルバジド、水またはこれらの混合物をベースとする。
【0040】
これらのポリマーの一部はほかのものより塩素に誘発される分解に対して繊細である。従ってポリエーテルベースポリウレタン尿素からなるポリウレタン尿素繊維はポリエステルベースポリウレタン尿素からなるポリウレタン尿素繊維よりかなり繊細である。これによりポリエーテルベースポリウレタン尿素からなるポリウレタン尿素繊維が特に有利である。
【0041】
ジアルキルスルホスクシネートで被覆されたハイドロタルサイトは重金属を含まない添加剤であり、一般に毒物学者により安全であると認識され、従って有利である。これは、例えば染色によるポリウレタン尿素繊維の更なる処理が生物的水処理装置の機能を損なうかまたは破壊する排水を生じないことを保証するために利用することができる。
【0042】
ポリウレタン尿素繊維から織物製品への処理の進行中にポリウレタン尿素繊維の部分での好ましくない色の変化により変色が生じる場合は、織物製品の色合いを例えば染色作業に適合することが不可能である。この好ましくない変色は、特に淡い色の色合いで織物製品の製造が不可能でない場合に、適合を困難にする。ジアルキルスルホスクシネートで被覆されたハイドロタルサイトを本発明によるポリウレタン尿素紡糸溶液に配合する場合に、例1および2に示されるように、ポリウレタン尿素組成物およびこれから得られるポリウレタン尿素繊維の変色を回避することができる。紡糸口金の耐用時間、乾式紡糸作業での関係する作業の一貫性および塩素処理水により生じるポリウレタン尿素繊維の分解に対する耐性が高い水準で維持される。
【0043】
本発明は更に、本発明のポリウレタン尿素繊維を使用して製造した、有利に合成硬質繊維、例えばポリアミド、ポリエステルまたはポリアクリル繊維および/または天然繊維、例えばウール、絹または綿との混合物での織物製品、特にループ線状に編んだ、ループ形状に編んだまたは織られた製品を提供する。
【0044】
本発明を限定されない実施例により詳細に説明するが、ほかに記載されない限り、すべての%は繊維の全質量に関する。
【0045】
実施例
実施例は種々の物質で被覆されたハイドロタルサイトを含有する繊維の製造に適したポリウレタン尿素組成物および得られるポリウレタン尿素繊維の色の変化または黄変を示す。ポリウレタン尿素組成物はポリエーテルジオールをベースとして製造され、内部添加剤として種々の物質で被覆されたハイドロタルサイトを含有する。
【0046】
例1および2は平均分子量2000g/モルを有するポリテトラヒドロフラン(PTHF)からなるポリエーテルジオールからのポリウレタン尿素紡糸溶液の製造を特徴付ける。前記ジオールはメチレンビス(4−フェニルジイソシアネート)(MDI)で1:1.65のモル比でブロックされ、ジメチルアセトアミドで希釈され、引き続きジメチルアセトアミド中のエチレンジアミン(EDA)およびジエチルアミン(DEA)の混合物で鎖を延長した。ポリエーテルに関して示された分子量は数平均分子量である。製造したポリウレタン尿素紡糸溶液のポリマー含量は30質量%である。
【0047】
例1
種々の被覆剤で被覆されたハイドロタルサイトをウルトラツラックス(Ultra Turrax)を使用してジメチルアセトアミド溶剤中20%の濃度に分散し、引き続き前記ポリウレタン尿素紡糸溶液に配合し、ポリウレタン尿素紡糸溶液中のポリマーに対する被覆されたハイドロタルサイトの濃度が10質量%であるようにした。
【0048】
表1による被覆されたハイドロタルサイトと混合したポリウレタン尿素紡糸溶液をナイフ塗布してフィルムを形成した。空気循環乾燥棚中で70℃の温度で10時間にわたり溶剤を蒸発した。すでに製造したフィルムは厚さ1mmであった。
【0049】
エラスタン溶液からナイフ塗布したフィルムを使用してより正確に試験することができ、エラスタン繊維のための材料の黄変を評価することができる。
【0050】
フィルムを毎分5mの速度および195℃の温度でステンターを通過することにより黄変を試験した。このステンターの通過は織物の製造での空気熱硬化の処理工程に相当する。フィルムがステンターを通過するのに要した時間は50秒であった。
【0051】
黄変の結果は表1に示される。ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムで被覆されたハイドロタルサイトを含有するポリウレタン尿素組成物からのフィルムのみが黄変の兆候を示さないことが明らかである。ほかのすべてのフィルムは激しい黄変を示した。
【0052】
【表1】

【0053】
例2
前記のポリウレタン尿素紡糸溶液を以下のストックバッチによる以下の添加剤と混合した。
【0054】
第1ストックバッチはジメチルアセトアミド(DMAC5)55.3質量%、シアノックス(Cyanox)(登録商標)1790((1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,5−ジメチルベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H、3H、5H)−トリオン、Cytec社)11.1質量%、エーロゾル(Aerosol)OT(登録商標)100(ビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム、Cytec社)7.6質量%、濃度30%紡糸溶液26.0質量%および染料Makrolex(登録商標)Violet(Bayer社)0.001質量%からなっていた。このストックバッチを紡糸溶液に添加し、すでに製造した繊維中のシアノックス1790の濃度が繊維ポリマーの固形分に対して1質量%であるようにした。
【0055】
この紡糸溶液を、二酸化チタン、タイプRKB3(Kerr−McGee Pigments社)30.9質量%、DMAC44.5質量%および濃度30%紡糸溶液24.6質量%からなる第2ストックバッチと混合し、すでに製造した繊維中でポリウレタン尿素ポリマーに対して0.20質量%の二酸化チタン含量が得られるようにした。
【0056】
引き続きこのポリウレタン尿素紡糸溶液を第3ストックバッチと混合した。このバッチはシルウェット(Silwet)(登録商標)L7607(ポリアルコキシ変性ポリジメチルシロキサン、粘度50mPas(25℃)、分子量1000g/モル、OSI Specialties)5.5質量%、ステアリン酸マグネシウム5.5質量%、DMAC45.0質量%および濃度30%紡糸溶液44.0質量%からなり、ポリウレタン尿素ポリマーの固形分に対して0.27質量%のステアリン酸マグネシウム含量が得られるように添加する。
【0057】
この紡糸溶液を、表2に示される被覆されたハイドロタルサイト13.8質量%、ジメチルアセトアミド55.2質量%および濃度30%紡糸溶液31.0質量%からなる第4ストックバッチと混合し、すでに製造されたエラスタン繊維中でポリウレタン尿素ポリマーに対して表2に示される被覆されたハイドロタルサイト3.0質量%が得られるようにした。
【0058】
すでに製造した紡糸溶液を、典型的な紡糸装置中で紡糸口金ダイを介して乾式紡糸し、線密度15dtexを有するフィラメントを製造し、3つの個々のフィラメントを同時に一緒にまとめて全線密度44dtexを有する合体したフィラメントヤーンを形成した。粘度5cSt/25℃の粘度を有するポリジメチルシロキサンからなる紡糸仕上げ剤を塗りロールを介して繊維の質量に対して4.0質量%の含浸量で塗布した。引き続き繊維を毎分900mの速度で巻いた。
【0059】
フィラメントを巻き管に編み、引き続き巻き管がステンターを毎分5mの速度および195℃の温度で通過させて、機械により黄変を試験した。編み管がステンターを通過するのに要した時間は50秒であった。
【0060】
黄変の結果は表2に示される。ドデシルスルホコハク酸ナトリウムで被覆されたハイドロタルサイトを含有するポリウレタン尿素組成物からのフィラメントのみが黄変の兆候を示さないことが明らかである。他のすべてのフィラメントは激しい黄変を示した。
【0061】
【表2】

【0062】
紡糸口金ダイの長い耐用時間および乾式紡糸作業での関係する作業の一貫性は14日の紡糸試験に示された。この時間の間にすでに製造したエラスタン繊維に対してジアルキルスルホスクシネートで被覆されたハイドロタルサイト5.0質量%を配合した。例えばジアルキルスルホスクシネートで被覆されたハイドロタルサイトの凝集および紡糸口金ダイでのフィルターの上流の圧力の形成または紡糸作業での糸ラインの破断の起こりうる結果による紡糸作業の中断がなかった。こうして製造したポリウレタン尿素繊維の塩素処理水により生じる分解に対する耐性は高い水準で維持された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱処理の間に色が変化する傾向が減少した、塩素に対する高い耐性を有し、セグメントポリウレタン尿素85%以上からなるポリウレタン尿素繊維であり、前記ポリウレタン尿素繊維が、微細分散ハイドロタルサイト、特に一般式(I)
1−x2+Al(OH)x/nn−・mHO (I)
(式中、
2+はマグネシウムを表し、
n−はOH、CO2−またはシリケート、特にCO2−から選択される原子価nのアニオンであり、
xは0より大きく、0.5以下であり、mは0より大きく、1より小さい)のハイドロタルサイト0.30〜10質量%を含有するポリウレタン尿素繊維において、前記ハイドロタルサイトが、被覆されたハイドロタルサイトの質量に対してジアルキルスルホスクシネート1〜15質量%で被覆されていることを特徴とするポリウレタン尿素繊維。
【請求項2】
セグメントポリウレタン85%以上を含有する長鎖合成ポリマーを、有機溶剤、例えばジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドまたはジメチルスルホキシドに、ポリウレタン尿素組成物に関して20〜50質量%の範囲の割合で溶解し、引き続きこの溶液を、紡糸口金ダイを介して乾式または湿式紡糸法により紡糸し、フィラメントを形成することからなるポリウレタン尿素繊維、特に請求項1記載のポリウレタン尿素繊維の製造方法において、ジアルキルスルホスクシネートで被覆されたハイドロタルサイトを、紡糸溶液に、ポリウレタン尿素繊維の質量に対して0.30〜10質量%の範囲の量で添加し、フィラメント内部に、適当な場合は付加的にフィラメント表面に分配することを特徴とするポリウレタン尿素繊維の製造方法。
【請求項3】
ポリアミド、ポリエステルまたはポリアクリル繊維のような合成硬質繊維および/またはウール、絹または綿のような天然繊維と混合したまたは混合していない、請求項1記載のポリウレタン尿素繊維を使用して製造された織物製品、特にループ線状編み物、ループ形状編み物または織物製品。

【公開番号】特開2006−2336(P2006−2336A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−176964(P2005−176964)
【出願日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(501334855)ドーラスタン ファイバーズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1)
【氏名又は名称原語表記】Dorlastan Fibers Gmbh
【Fターム(参考)】