説明

色変化シアノアクリレート接着剤

シアノアクリレート系接着剤組成物が開示される。シアノアクリレート系接着剤組成物は、シアノアクリレートモノマーと、シアノアクリレート系接着剤に安定色を提供する非求核アニオンと対を作るミッヒラーのハイドロールカチオン又は誘導体化されたミッヒラーのハイドロールカチオンを包含する漂白性染料と、を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
この出願は、米国仮特許出願60/824,970(2006年9月8日出願)の利益を主張し、これは、参照として本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
一般に、本開示は、色変化シアノアクリレート接着剤及びこれの使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
シアノアクリレート接着剤は、「スーパーグルー(super glues)」としても知られており、数秒で硬化することが知られている汎用的な接着剤の一群であり、多種多様な表面に強く接着する。これらの注目すべき特質にもかかわらず、この接着剤部類の消費者人気を制限するいくつかの問題が存在する。
【0004】
シアノアクリレート接着剤についての問題の1つは、これらの接着剤が即座に皮膚に固着することである。この問題は、シアノアクリレート接着剤が通常無色であり、基材に適用するときに観察が困難であるという事実によって悪化する。エンドユーザーが、接着剤が存在する箇所(又は存在しない箇所)について、並びに、接着剤が硬化したかどうかについて観察できないと、多くの場合、皮膚が接着剤自体又は他の基材に意図せず固着する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
あるシアノアクリレート接着剤は、接着剤を適用した箇所と適用しない箇所を区別するある性能をエンドユーザーに提供すべく、淡く色付けされる。しかし、これらの色合いは淡いため、薄く適用された接着層を認識できないことが多い。薄く適用された接着層を認識できるように、色合いの強度を上昇すると、完成プロジェクトにおいて、硬化した接着剤が目に見えるまま残り、これは消費者にとって好ましくない可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
代表的な実施においては、シアノアクリレートモノマーと、漂白性染料、例えば、非求核アニオンと対を作ると非硬化シアノアクリレート系接着剤に安定色を提供するミッヒラーのハイドロールカチオン又はミッヒラーのハイドロールカチオン誘導体と、を包含するシアノアクリレート系接着剤組成物が開示される。
【0007】
別の代表的な実施においては、方法は、適切に安定化されたシアノアクリレートモノマーと、漂白性染料、例えば、非求核アニオンと対を作り、染料対を形成するミッヒラーのハイドロールカチオン又は誘導体化されたミッヒラーのハイドロールカチオンとを組み合わせることを包含する。安定化されたシアノアクリレートモノマー及び染料対は、シアノアクリレート系接着剤組成物を形成する。染料対は、シアノアクリレート系接着剤組成物に安定色を提供する。
【0008】
本発明に従う接着剤のこれらの及び他の態様は、当業者には、実施例と共に以下の「発明を実施するための形態」から容易に明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0009】
従って、本開示は、色変化シアノアクリレート接着剤及びその使用方法を目的とする。特に、シアノアクリレート接着剤は、非硬化状態において着色しており、硬化すると無色又は淡い色になる。別の実施形態においては、シアノアクリレート接着剤は、非硬化状態において第一色であり、硬化すると第二色に変化する。これらの色変化接着剤により、エンドユーザーは、分配された接着剤の形状を容易に観察することが可能になり、加えて、固着層の均一性を視覚的に評価する手段が提供され、並びに、過剰な接着剤が適用された箇所が確定される。これらの色変化接着剤は、接着剤の硬化の状態を示す手段をエンドユーザーに与えることができる。一実施例では、接着操作中に接着剤が色付きであるならば硬化していない、つまり、前記接着剤が十分に硬化すると無色又は淡い色になる。通常、露出した接着剤が無色又は淡い色であるならば、十分に硬化しているので、皮膚に固着する恐れなしに触れることが可能である。本発明はそれだけには限定されないが、下記で提供される実施例の考察を通じて、本発明の様々な態様の理解が得られるであろう。
【0010】
特に明記しない限り、明細書及び特許請求の範囲において使用される形状、量、物理的特性を表す全ての数は、全ての場合に、用語「約」によって修飾されていると理解されるべきである。従って、反対に示されない限り、以下の明細書と添付の特許請求の範囲において述べられる数パラメーターは、全ての変化が本明細書に開示される教示を利用する当業者によって得られようとする所望の特性に依存する近似値である。
【0011】
端点による数値範囲の列挙は、その範囲内に包含される全ての数(例えば1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、及び5を包含する)並びにその範囲内のあらゆる範囲を包含する。
【0012】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用するとき、単数形「a」、「an」、及び「the」は、その内容について別段のはっきりした指示がない限り、複数の指示対象を有する実施形態を網羅する。本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用するとき、用語「又は」は、その内容について別段のはっきりした指示がない限り、一般的に「及び/又は」を包含する意味で採用される。
【0013】
用語「ポリマー」は、ポリマー、コポリマー(例えば、2つ以上の異なるモノマーを使用して形成されるポリマー)、オリゴマー及びこれらの組み合わせ、並びに混和性ブレンド中に形成され得るポリマー、オリゴマー、又はコポリマーを包含するとして理解されるであろう。
【0014】
用語「アルキル」とは、S、O、Si又はNから独立して選択される1つ以上のヘテロ原子置換基を任意に含有する直鎖又は分枝鎖の一価炭化水素基を指す。アルキル基としては、一般に1〜20個の原子又は1〜10個の原子を有するものが挙げられる。アルキル基は、置換されていなくてもよく、又は組成物の特定の機能を妨害しない置換基で置換されていてもよい。置換基としては、例えば、アルコキシ、ヒドロキシ、メルカプト、アミノ、アルキル置換アミノ又はハロが挙げられる。本明細書で使用するとき、「アルキル」の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、イソブチル及びイソプロピル、及び同類のものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0015】
語句「安定色」は、本明細書の実施例に記載される試験方法で測定して、色又は色強度が少なくとも14日間視覚的に持続することを意味すると理解されるであろう。例えば、密封容器内で、色又は色強度(例えば、青色)が少なくとも14日間視覚的に持続するならば、流動性シアノアクリレート接着剤は「安定色」を所有すると言われる。ある実施形態においては、試料は、少なくとも6ヶ月間、又は少なくとも1年間、又は少なくとも2年間、有効に着色したままである。
【0016】
連続的に可逆性である、すなわち連続露出の際に酸と塩基へ交互に色を反転する従来のpH指標とは違って、本発明の漂白性染料は、色変化シアノアクリレート組成物中で処方されるとき、不可逆的に漂白される傾向がある。
【0017】
本明細書に記載のシアノアクリレート系接着剤組成物は、シアノアクリレートモノマーと、漂白性染料に安定色を提供する非求核アニオンと対を作る漂白性染料カチオンと、を包含する。このシアノアクリレート系接着剤は、硬化すると無色又は淡い色となる。多くの実施形態においては、非求核アニオンと対を作る漂白性染料カチオンは、基材に適用される前に、シアノアクリレートモノマーとブレンドされる。ある実施形態においては、非求核アニオンと対を作る漂白性染料カチオンは、シアノアクリレートモノマーを基材に配置する前に、シアノアクリレートモノマーとブレンドされない。これらの実施形態においては、非求核アニオンと対を作る漂白性染料カチオンを、基材に配置することができ、それから、シアノアクリレートモノマーを、非求核アニオンと対を作る漂白性染料カチオンに配置する。
【0018】
漂白性染料カチオン(単数又は複数)を選択して、要望通り、いかなる色をも製造することができる。多くの実施形態においては、漂白性染料カチオンは、青色又は藍色(deep blue color)を製造する。多くの実施形態においては、漂白性染料カチオンは、ミッヒラーのハイドロール(すなわち、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンズヒドロール)又はその誘導体から形成される。
【0019】
ミッヒラーのハイドロール又は4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンズヒドロールは、市販されており(シグマ・アルドリッチ、(ミズーリ州63103、セントルイス(St. Louis))から)、以下の化学構造を有する:
【0020】
【化1】

【0021】
ミッヒラーのハイドロールは、染料ベースであり、その遊離(純)形態において無色であり、この染料ベースは、そのアミン置換基により求核であり、シアノアクリレートモノマーの即時重合を引き起こすので、本明細書に記載のシアノアクリレートへの導入に先立ち酸性化される。酸性になると、ミッヒラーのハイドロールカチオンは、青(シアン)色を提供する。色強度は、酸性化された染料濃度によって異なる。熟成の際に染料(色)安定性を維持する適切な酸安定剤又は非求核アニオンの選択を、以下に記載する。いかなる特定の理論にも束縛されないが、ミッヒラーのハイドロールカチオンは、シアノアクリレート接着剤組成物の硬化と同時に劣化する(例えば、漂白される)染料であると考えられる。
【0022】
誘導体化されたミッヒラーのハイドロールは、漂白性染料カチオンとして使用され得る。有用な誘導体化されたミッヒラーのハイドロールとしては、例えば、以下の分子が挙げられる:
化学構造:
【0023】
【化2】

【0024】
を有するビス[4−(4−モルホリニル)フェニル]メタノール(CAS番号123344−13−8)
化学構造:
【0025】
【化3】

【0026】
を有する1,1−ビス(4−ジメチルアミノフェニル)エタノール(CAS番号33905−89−4)
化学構造:
【0027】
【化4】

【0028】
を有する1,1−ビス(4−ジメチルアミノフェニル)エチレン(CAS番号22057−85−8)
(この化合物は、メチレン基へのプロトン付加によって前の構造により提供されるものと同一の漂白性染料カチオンに変換すると考えられる。)
化学構造:
【0029】
【化5】

【0030】
を有するビス(4−ジメチルアミノ)−2−メチルフェニル)メタノール)(CAS番号43001−46−3)
化学構造:
【0031】
【化6】

【0032】
を有するビス(3−ブロモ−4−ジメチルアミノフェニル)メタノール
化学構造:
【0033】
【化7】

【0034】
を有するN−[ビス(4−ジメチルアミノフェニル)メチル]モルホリン(CAS番号21295−86−3)
化学構造:
【0035】
【化8】

【0036】
を有するN−[ビス[4−(ジメチルアミノ)フェニル]メチル]−N’−n−ブチル−尿素(CAS番号27086−41−5)
化学構造:
【0037】
【化9】

【0038】
を有するN−[ビス[4−(ジメチルアミノ)フェニル]メチル]−N’−(4−エトキシフェニル)−尿素(CAS番号37171−10−1)
化学構造:
【0039】
【化10】

【0040】
を有するN−[ビス[4−(ジメチルアミノ)フェニル]メチル]−N’−(4−メチルフェニル)−尿素(CAS番号123344−13−8)
化学構造:
【0041】
【化11】

【0042】
N−[ビス[4−(ジメチルアミノ)フェニル]メチル]−N’−フェニル−尿素(CAS番号34851−49−5)
化学構造:
【0043】
【化12】

【0044】
を有するN−[ビス[4−(ジメチルアミノ)フェニル]メチル]−アニリン(CAS番号6245−51−8)
化学構造:
【0045】
【化13】

【0046】
を有するN−[ビス[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−メチル]−ベンゼンスルホンアミド(CAS番号3147−38−4)。
【0047】
これらのミッヒラーのハイドロール誘導体は、市販されているか、又は米国特許若しくは米国公開特許出願:第4,407,960号;第3,874,884号;第3,856,552号;第4,006,018号;第3,646,135号;及び2005−1488010に記載されており、これらは全て参照として本明細書に組み込まれる。
【0048】
漂白性染料カチオンは、いずれかの有用な量でシアノアクリレート接着剤に存在することができる。多くの実施形態においては、漂白性染料カチオンは、1ppm以上、又は10ppm以上、又は50ppm以上、又は100ppm以上、又は250ppm以上、又は500ppm以上、又は1000ppm以上の量でシアノアクリレート接着剤に存在し得る。ある実施形態においては、漂白性染料カチオンは、1ppm〜1000ppm、又は10〜500ppm、又は1〜100ppmの量でシアノアクリレート接着剤に存在し得る。
【0049】
非求核アニオンは、典型的に高強度の酸に由来する。こうした酸の強度は、酸性度指標、すなわち、プロトン化の際、容易に測定される色変化を提供する一連の数が増すと(increasingly)弱くなる硝酸アニリン塩基の員によって分類されることが多い。水性酸性溶液の「強度」の容認された尺度は、pH、水素イオン濃度(又は活性)の負の対数、及び弱酸〜中程度に強酸の水溶液中のイオン化定数Kと同様の負の対数pKである。非常に強い酸においては、強酸が水と反応して、塩基としての役割を果たし、ヒドロニウムイオン、Hを形成し、より高い酸性度の発現を防ぐので、説明のこれらの手段は機能しなくなる。純粋な無水酸の最終的なプロトン供与酸性度の測定のために、H(ハメット(Hammett)酸性度関数)目盛が作製された(L.P.ハメット&A.J.デイラップ(L.P. Hammett & A.J. Deyrup)、米国化学会誌(J Amer. Chem. Soc.)、54 2721、4239(1932)、55 1900(1933))。その数字目盛は、組成物が測定可能なpH範囲内に入るまで、各酸を水で段階的に希釈することよって提供されたので、これは、pH目盛の拡張と呼ばれた。色指示する非常に弱い塩基が提供され、プロトン化形態は、段階的な重ね合わせによって相互に関係付けることができた非水性pH様挙動を有した。H目盛は、有用であるが、無水酸はそれぞれ、溶媒特性において異なるので、比較のための一般的な非水性媒体を提供しない。ほとんど全ての一般的な「良好」溶媒は、非常に強い酸によりプロトン化されるか、又は非常に強い酸と反応する。更に、溶液中で中性種及びイオン種の両方を保持するために、必要に応じて比較的高い誘電率が許容される。ニトロメタンは、こうした溶媒(L.C.スミス&L.P.ハメット(L.C. Smith & L.P. Hammett)、米国化学会誌(J Amer. Chem. Soc.)、67 23(1945))であるように見えたが、単純な緩衝剤平衡を提供することができなかった;この挙動は解明されなかった(及び解明されないままである)。
【0050】
ハメット(Hammett)酸性度関数は、純粋又はほとんど純粋である酸に適用され、状況は、シアノアクリレートモノマーにおける溶液中での使用と非常に異なる。従って、通常の水性緩衝剤系に類似した手段により、極性有機溶媒における酸強度を評価することは、適切であり、これは採用される酸の強度に依存する。
【0051】
無水「スルホラン」(テトラメチレンスルホン;テトラヒドロチオフェン−1,1−二酸化物;CAS RN126−33−0)は、高誘電率44の酸不活性非解離良好溶媒であり(E.M.アーネット&C.F.ドーティ(E.M. Arnett & C.F. Douty)、米国化学会誌(J Amer. Chem. Soc.)、86 409(1964))、融点がその水含有量の感度の高い尺度であることは更に有利である(R.L.バーウェルJr&C.H.ラングフォート(R.L. Burwell Jr & C.H. Langford)、米国化学会誌(J Amer. Chem. Soc.)、81 3799(1959))。微量の水、及び強酸によって激しく変色する不純物を除去するために厳密な精製を必要とするが、それは簡単な緩衝剤及び色指標平衡を与えるように見える。
【0052】
従って、我々は、無水スルホラン中で等モル量の非常に強い酸及びその塩を組み合わせることによって、一般の緩衝剤系の非水性類縁体を作製し、緩衝化された酸の強度を、酸性度指示薬Iによって評価する。(こうした水性1:1緩衝剤においては、水性pHは、水性酸についてのpKに等しい。)こうした測定を行う手順は、この開示の試験方法の節に詳述される。任意の組成物の酸緩衝剤の強度は、簡潔化のため、以下の等式に従って、モル吸光係数ε、及びεの比によって表される可能性がある;ここでεは、酸フリー溶媒であるスルホランにおける酸性度指示薬Iのモル吸光係数であり、εは、緩衝化された試験溶液におけるその酸性度指示薬の見掛けのモル吸光係数である(試験方法の節に記載される):
消光比=ε/ε=N 及び (ε−ε)/ε=C=(1−N)
強度比E=(ε−ε)/εである等モル(1:1)緩衝剤においては(特定の酸性度指示薬Iについて)、Eは酸自体の強度を表す。酸性度指示薬の共役酸、IH、の強度に関してこれを示すために、馴染みの深い負の対数形態を使用することが便利である:pA=−log(E/N)=+log(N/E)
酸性度指示薬の(共役酸)強度についての「pK」を考慮すると、その目盛における緩衝剤の酸の強度は、「pK」になる;ここで「pK」=「pK」+pAである。こうした1つの自己無撞着目盛は、試験方法の節において指示薬の下で記載されるような酸性度指示薬の全てに対して計算的に提供される。
【0053】
機能する炭素酸においては、指示薬Iが4−メトキシ−2−ニトロアニリンである場合、上記のスルホラン溶媒中の選択された1:1緩衝剤系について、(ε−ε)/εと定義される強度比Eは、0.1より大きい(「pK」<+2.0に対応する)強度比E、好ましくは0.25より大きい(「pK」<+1.5に対応する)強度比Eを有する。機能する非炭素酸、例えばオキソ酸においては、上記のスルホラン溶媒中で測定される酸強度比Eは、指示薬が4−クロロ−2−ニトロアニリンであるとき0.2より大きい酸強度比E、好ましくは0.5より大きい(「pK」<−1.0に対応する)酸強度比E、又はより好ましくは指示薬が2−クロロ−6−ニトロアニリンであるとき0.50より大きい(「pK」<−2.3に対応する)酸強度比E、又は更により好ましくは指示薬が2,6−ジニトロアニリンであるとき0.5より大きい(「pK」<−5.4に対応する)酸強度比Eを有する。全ての緩衝剤比に適用できる、数学的に同等な酸強度尺度、「pK」は、試験方法の節に記載される。強度比Eは、滴定によって確認することができる。
【0054】
炭素酸は、例えば酸素又は窒素上に酸性水素を有する酸より非常により弱いことにおいて、定性的に異なり、これは科学文献で確立されている。炭素酸が本明細書で利用される硝酸アニリン酸性度指示薬を使用して測定可能である十分な酸強度を所有することは、珍しい。炭素酸をこのように強くするためには、そのアニオンが非求核であることが必要である。エポキシ化合物をホモポリマー化する強い非炭素酸と比較して、これらの比較的弱い炭素酸も同様にエポキシ化合のホモポリマー化への観察は、それらのアニオンの同等な非求核性質を実証する。
【0055】
非求核アニオンとしては、α,β−高度フッ素化若しくはペルフルオロ化(C〜C)アルキルスルホネートアニオンを挙げることができる。更なる実施形態においては、非求核アニオンとしては、ビス(α,β−高度フッ素化若しくはペルフルオロ化−スルホニル)メタン、トリス(α,β−高度フッ素化若しくはペルフルオロ化−アルキルスルホニル)メタン、ビス(α,β−高度フッ素化若しくはペルフルオロ化−アルキルスルホニル)イミド、又はこれらの混合物に由来するものが挙げられる。なお更なる実施形態においては、非求核アニオンは、トリフルオロメタンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸、フルオロスルホン酸、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)メタン(メチレンジスルホン)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(イミド酸)、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド(エチルイミド酸)、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタン(メチド酸)、三フッ化ホウ素ビス−酢酸、並びにエーテル化合物、メタノール、プロパノール、及びテトラヒドロフラン誘導体のような他の三フッ化ホウ素錯体から形成されてよい。反応、分解、又は加水分解して上に列挙されたいずれかの酸を形成する類似の試薬もまた有用である。前述の非求核アニオンが誘導される酸の組み合わせもまた、この発明の実行に有用である可能性がある。ある実施形態においては、非求核アニオンは、トリフルオロメタンスルホン酸、メチド酸、三フッ化ホウ素メタノール、三フッ化ホウ素ビス−酢酸、イミド酸、及び/又はエチルイミド酸から形成される。特定の好ましい実施形態においては、非求核アニオンは、イミド酸、三フッ化ホウ素ビス−酢酸、及び/又はメチド酸から形成される。
【0056】
非求核アニオンは、シアノアクリレート接着剤中にあらゆる有用な量で存在できる。多くの実施形態においては、非求核アニオンの酸は、シアノアクリレート接着剤中に、酸/染料のモル比1〜5、又は1〜2.5で存在できる。特定の実施形態においては、非求核アニオンの酸は、シアノアクリレート接着剤中に、酸/染料のモル比1〜5、又は1〜3、又は1.5〜2.5で存在できる。慎重な処方により、より少ない量(等量)の特定の求核アニオンの存在が、時には許容される可能性がある。
【0057】
本明細書に記載のシアノアクリレート接着剤としては、例えば、2−シアノアクリレート、例えば、メチル−2−シアノアクリレート、エチル−2−シアノアクリレート、プロピル−2−シアノアクリレート、イソプロピル−2−シアノアクリレート、ブチル−2−シアノアクリレート、イソブチル−2−シアノアクリレート、アミル−2−シアノアクリレート、ヘキシル−2−シアノアクリレート、シクロヘキシル−2−シアノアクリレート、オクチル−2−シアノアクリレート、2−エチルヘキシル−2−シアノアクリレート、アリル−2−シアノアクリレート、プロパルギル−2−シアノアクリレート、フェニル−2−シアノアクリレート、ベンジル−2−シアノアクリレート、メトキシエチル−2−シアノアクリレート、エトキシエチル−2−シアノアクリレート、テトラヒドロフルフリル−2−シアノアクリレート、2−クロロエチル−2−シアノアクリレート、3−クロロプロピル−2−シアノアクリレート、2−クロロブチル−2−シアノアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル−2−シアノアクリレート、ヘキサフルオロイソプロピル−2−シアノアクリレート、及び/又は同様のものが挙げられる。多くの実施形態においては、これらの反応体は、実質的に/事実上無水である。
【0058】
本明細書に記載のシアノアクリレート系接着剤組成物は、硬化前に液体又はゲル(十分な量の増粘剤が組み合わせられる場合)である。多くの実施形態においては、液体又は流動性シアノアクリレート系接着剤組成物は、所望に応じ、0.001Pa.s(1cP)〜5Pa.s(5000cP)の範囲の粘度を有する。
【0059】
本明細書に記載の色変化2−シアノアクリレート系接着剤組成物は、必要に応じ、追加の着色剤、ラジカル重合安定剤、増粘剤、硬化促進剤、架橋剤、可塑剤及び/又はチキソトロープ剤を任意に包含できる。望ましくは、全ての添加剤は、実質的に無水であるべきであり、漂白性色安定性、粘度安定性又は両方に有害である可能性がある求核化合物フリーであるべきである。更に、酸性化合物の選択は、2−シアノアクリレート系組成物の硬化速度及び製品寿命に影響する。従って、添加すべきそれらの好適な量の選択及び組み合わせは、目標とする硬化性能、製品寿命、色変化性能及び様々な他の態様を考慮することによって決定できる。
【0060】
色変化シアノアクリレート系接着剤が非硬化状態から硬化状態へ進むときに、第一着色状態から第二着色状態への色変化を達成するために、追加の着色剤を提供することができる。追加の着色剤は、いかなる有用な染料又は顔料であることもできる。ある実施形態においては、追加の着色剤は、指示薬染料であり(ミッヒラーのハイドロール又は誘導体のような漂白性染料ではなく)、これはシアノアクリレート系接着剤が非硬化状態から硬化状態へと進むときに、色を更に変えることができる。ある実施形態においては、追加の着色剤は、(硬化又は非硬化状態における)所望の色に依存して、2つ以上の顔料又は染料を包含する。第一着色非硬化状態から最終着色硬化状態までの、又は第一着色非硬化状態から最終無色硬化状態までのシアノアクリレート系接着剤の色変化を、シアノアクリレート系接着剤の硬化反応又は変化の経過を示すために使用することができる。反応経過への参照として、視覚色度標準が準備及び提供されてもよい。例えば、硬化接着剤中の酸性化されたミッヒラーのハイドロールカチオンの濃度が減少すると、強度が減少する、簡単な一連の3つの印刷された色整合点は、接着剤が適切に硬化したかどうかを確定するために有用である可能性があり、更に初期組成物が有用な接着剤組成物となるために十分に非重合化されているかどうか識別するのを助ける。
【0061】
ラジカル重合安定剤としては、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、カテコール、ピロガロール及び同類のものを挙げることができる。ある実施形態においては、ラジカル重合安定剤は、1重量ppm〜1重量%の範囲で存在し得る。
【0062】
固着時間を低減するために、アニオン重合促進剤を非硬化シアノアクリレート接着剤に添加することができ、アニオン重合促進剤としては、ポリアルキレンオキシド及びそれらの誘導体、クラウンエーテル及びそれらの誘導体、シラクラウンエーテル及びそれらの誘導体、カリックスアレーン誘導体、チアカリックスアレーン誘導体及び同類のもの、並びに任意の前述の部類の促進剤のあらゆる組み合わせ又はブレンドが挙げられる。いくつかの有用な促進剤が、米国特許第6,835,789号に開示されており、矛盾しない範囲において本明細書に組み込まれる。ある実施形態においては、促進剤は、200〜5000ppmの範囲で存在する。接着剤の硬化を促進するために、非硬化シアノアクリレート接着剤の適用前に、求核重合促進剤、例えば、N,N−ジメチル−p−トルイジン溶液のようなアミンを被接着面に適用してもよい。
【0063】
典型的に、シアノアクリレート接着剤の熱的性能は、重合接着剤の硬化架橋時又は硬化架橋後に、架橋剤、すなわち、多官能モノマーを添加することによって改善される。有用な架橋剤としては、ビスシアノアクリレート、アリル−2−シアノアクリレート、プロパルギル−2−シアノアクリレート、多官能アクリレート及び(メタ)アクリレート、及び前述の組み合わせを挙げてもよい。
【0064】
増粘剤としては、粘度変性剤、ゲル形成剤、チキソトロピー性及び/又は高分子添加剤、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、メチルメタクリレート/アクリレートコポリマー、メチルメタクリレート/メタクリレートコポリマー、セルロース誘導体、ヒュームドシリカ、疎水性シリカ、及び同類のものを挙げることができる。ある実施形態においては、増粘剤を0.1〜20重量%の範囲で添加できる。ある実施形態においては、増粘剤を添加して、0.0005Pa.s(5cP)〜5Pa.s(5000cP)の範囲の粘度を提供することができる。特定の実施形態においては、増粘剤を添加して、2.5Pa.s(2500cP)〜100Pa.s(100,000cP)の範囲の粘度を提供することができる。ある実施形態においては、PMMA及びヒュームドシリカは、組成物中で組み合わせられて、シアノアクリレート接着剤ゲルを形成する。
【0065】
剛性接着剤から強化接着剤又は可撓性接着剤まで、接着剤の弾性率を調節するために、可塑剤を添加できる。可塑剤としては、例えば、フタレートエステル、シトレートエステル、グリセロールトリアセテート、特定の多官能(メタ)アクリレート及び同類のものを挙げることができる。ある実施形態においては、可塑剤を0.01〜30重量%の範囲で添加できる。
【0066】
加えて、所望に応じ、香料、充填剤、架橋剤、重合開始剤、有機溶媒又は同類のものを任意に添加することができる。
【0067】
本発明は、本明細書に記載の特定の実施例に限定されると考えるべきではなく、むしろ添付の特許請求の範囲に適正に述べられるように、本発明の全態様をカバーすると理解されるべきである。本明細書を再検討すると、様々な修正、等価の方法、並びに本発明を適用できる非常に多くの構造が、本発明が対象とする当業界の技術者には容易に明らかになるであろう。
【0068】
試験方法
凝固時間
一滴のシアノアクリレート接着剤(以後「CA」)をガラス顕微鏡スライド上に配置し、第二スライドを第一スライド上に重ね合わせ、固着領域におけるスライド上面に適度の指圧を加えて、薄い接着層を作製することにより、凝固時間を確定した。固着層が閉鎖されるとき(第二スライドを所定の位置に置くとき)、ストップウォッチを開始する。第一スライドを保持する一方、第二スライドの非固着末端部を、30度以下の小範囲で端から端までゆっくり動かし、もはや動き得なくなるときを確定する。第二スライドがもはや動き得なくなるとき、ストップウォッチの時間を凝固時間として記録する。
【0069】
色評価
時間と共に試料色に変化が生じたかどうかを確定するため、定量的色評価を行った。この定量的評価は、試料を、実験試料と同じ量及び瓶型に包装される2.0×10−4M、1.5×10−4M、1.0×10−4M、及び0.5×10−4Mの濃度の水性メチレンブルー溶液(好ましくは酢酸により酸性化される)からなる既知の比色分析標準と比較することによって行われた。3が最も濃い青色に対応し、0が無色に対応する、0、1、2、2.5及び3の定量的色目盛を採用した。2−、1.5−、1.0−、及び0.5×10−4Mのメチレンブルー濃度は、それぞれ3、2.5、2、及び1の色評価に対応する。無色試料は、0と評価されるであろう。
【0070】
漂白
上記の凝固時間試験の終わりに当たり、漂白を評価した。この場合、凝固時間試験を行ったおよそ1時間後、試料を視覚的に検査し、無色に漂白されたならば「無色」、又は色若しくは色相が残っていたならば「色付きである」として識別した。この試験からの結果は、「凝固時間漂白」と分類される。
【0071】
酸強度測定
この試験方法の目的は、例えば、精製スルホラン(テトラメチレンスルホン)中の半中和された「緩衝剤」溶液で表現される、試験される酸の強度を確立することであり、そこから、酸性度指示薬Iのプロトン化度を決定するための、UV−Vis分光分析によって強度が明らかになり、それに関する強度比Eとして表される。より一般的には、全ての比の緩衝剤から、又は滴定により、得られる数学的に等価の酸強度「pK」を、強度比を計算するために使用してよい。
【0072】
スルホランの精製
この試験方法のためには、99.999%純ガリウムの融点29.765℃(較正された温度計を使用して測定する)と比較して少なくとも26.0℃、又は好ましくは少なくとも28.0℃、又はより好ましくは28.4℃以上の融点を有し、実質的に透明である、すなわち、複光束分光光度計の参照セル中に純水を有し、試料セル中にこのスルホランが存在するとき、領域350〜550nmにわたり、安定なゼロに近い吸光度基準を与える、スルホランが必要である。この及びその後の全ての吸光度測定のために、550nmにおける指数がゼロに近いことが見出されるべきである。
【0073】
この試験方法にとっては、最善の市販「試薬」又は「99+%」スルホランでさえ、適当でない。20℃未満で結晶化させ、その後、融解液体を頻繁に又は連続的に排水しながら25℃〜27℃においてゆっくり融解させることによって、より低い純度(ぬれている場合、KOHペレットと共に保存することによって、最初に改善され得る)の「試薬」レベルをもたらし得、これを再利用することができる。固体のままの部分及び/又は市販「99+%」スルホランに、以下の精製レジメンを受けさせる。取扱中の、精製スルホランの凍結を避けるために、作業域を30℃以上に維持することが賢明である。
【0074】
ブンゼン弁又は他の圧力解放装置を備えるストッパー付き500mL三角フラスコ(Erlenmeyer flask)に、300〜350gの「99+%」スルホラン及び1.58gのKMnOを入れる。液体は、最初は濃いマゼンダであり、茶色みがかった色(brown cast)に発展する(MnOから)。これを、45〜55℃に保持されたホットプレート上で少なくとも5日間加温し、必要に応じて、追加の1g部分のKMnOを添加して、弱いマゼンダ色を維持する。あらゆる沈澱した固体から液体をデカントし、遠心分離して(濾過は困難である)、MnOを除去する。上清液体を、圧力解放ストッパー付きの500mL三角フラスコ内にデカントし、これに、少なくとも1日早く作製した、事前調整乾燥混合物15g、等重量の五酸化リン及び170℃で一晩乾燥した100〜200メッシュのシリカゲルを、十分に密閉された瓶内で共に振盪することにより添加する。スルホラン及び乾燥混合物のフラスコを、100℃のホットプレート上で少なくとも1週間加熱すると、すぐに琥珀茶色に変化する。その後、それを冷却し、非常に濃い液体を250mL蒸留フラスコにデカントする。蒸留中の「突沸」を制御するために、その上面が密閉され、長さがフラスコ直径より大きい、外径約3mm、内径約1mmの10〜15フルオロポリマーPFA(又はFEP)管を添加することが望ましい。
【0075】
加熱マントルで加熱されるフラスコは、初めに短いビグリューカラム(Vigreux column)部分(「突沸した」液体を遮断するため)及びその上部に長さ20cmの0.64cm(1/4インチ)パイレックス(登録商標)(Pyrex)らせん(helices)を含有する部分、又は好ましくはポドビールニアク(Podbielniak)(商標)ヘリパック(Helipak)(商標)、(0.32cm(1/8インチ)、ステンレス鋼)を含有する長さ10cmの長い部分を含む簡単な真空分留単位を載せており、いずれの内容物(contents)もウィルマッド−ラボガラス(Wilmad-LabGlass)、(イリノイ州、エルク・グローブ・ビレッジ(Elk Grove Village))から入手可能である。その上部に、還流型冷却器と温度計、及び制御された除去が可能なように位置し、その上、特に蒸留カラムの真空を壊すことなく、受容体フラスコの交換及び再排出するストップコック付きの標準真空蒸留ヘッドがある。蒸留フラスコ上に空気を吹きつけることによって軽減されることが可能であるような、充填部分の「あふれる(flood)」傾向の観察の用意のために、熱部分をくるむわずかなペーパータオルによるカラム又はヘッドの最小の断熱だけが必要である。蒸留装置全体は、PTFE円錘スリーブを備える24/40標準先細接合部で組み立てられるべきであり、スルホランの熱蒸気に耐えるために、E.I.デュポン・ド・ヌムール・アンド・カンパニー(E. I. du Pont de Nemours and Company)(デラウェア州、ウィルミントン(Wilmington))からクリトックスLVP(Krytox LVP)として入手可能なペルフルオロ化真空グリースで完全に真空気密にすべきである。
【0076】
より高い圧力及び温度は変色を生じる可能性があるので、68〜75℃でスルホランの蒸留を可能にするため、真空蒸留用に、6.7Pa(0.05トール)まで系を排気できる液体窒素トラップを有する通常の油ポンプが必要である。妥当な精度を有する電子真空計指数によって、系圧を1.3Pa(0.010トール)から133.3Pa(1.0トール)まで連続的に監視する。留出物は30℃未満で凍結してそれをふさぎ、有害な結末をもたらすので、冷却器を流動する水を制限しなければならない。
【0077】
蒸留は、73℃/13.3Pa(0.10トール)付近で比較的安定となるべきであり、130〜150gの大きな中心カットは、72℃/11.9Pa(0.090トール)〜68℃/6.7Pa(0.050トール)でなされるべきである。その約150mL受容フラスコ中での結晶化の際、このカットは、加温の際、H.プレストン−トーマス(H. Preston-Thomas)ら、メトロロジア(Metrologia)27 3(1990)によって説明されるように、摂氏温度目盛を公式に定めるいくつかの純金属融点のうちの1つである、99.999%ガリウム金属の融点29.765℃よりも2℃、又は好ましくは1.5℃、又はより好ましくは1℃より下でその最後の結晶の溶解を示すべきである。S.F.バーチ(S.F. Birch)及びD.T.マクアラン(D.T. MacAllan)、化学会誌(J. Chem. Soc.)(ロンドン)2556(1951)によって、並びにE.V.ホワイトヘッド(E.V. Whitehead)、R.A.ディーン(R.A. Dean)、及びF.A.フィドラー(F.A. Fidler)、米国化学会誌(J. Amer. Chem. Soc.))73 3632(1951)によって、互いに参照されずに与えられ、及びより低い温度データから外挿法により得られるとされる文献融点28.86℃は、最低29.0℃の直接ガリウム系測定を考慮すると正当化できない。
【0078】
R.Lバーウェル Jr.(R.L Burwell Jr.)、及びC.H.ラングフォード(C.H. Langford)、米国化学会誌(J. Amer. Chem. Soc.)、81 3799(1959)によって与えられるように、スルホランは低い融解熱を有し、つまり非常に大きい凝固点降下を有し、それ故に、融点1.00℃低下ごとに水含有量が0.031mL(0.031m)だけ増加し、水含有量の上限を提供する。
【0079】
それでもなお、大気圧において実質上不揮発性であるので、スルホランは、過度の配慮をもって扱われる必要がなく、それ故に、蒸発冷却によって水分を凝縮することができず、開口バイアル瓶内で簡単に取り扱われるとき、蒸発により重量を減らすこともない。量り上のスルホランの開口バイアル瓶の重量の0.01mgレベルの遅い変化により示されるように、水は、ほとんど又は全く、空気から吸収されない。およそ2.5gの試験試料への1マイクロリットルの水(約1.00mg)の添加によって生じる分光酸性度測定に対する、測定可能な、しかし大きくない効果から、30℃相対湿度20〜40%の空気への、試料の短期間の非保護露出の無視できる効果の敏速な評価が許容される。
【0080】
酸性度指示薬
この研究のために、強酸からプロトンを受容する際に可逆的に色を失う、視覚的に着色した中性酸性度指示薬分子を使用する。電子的効果の矛盾を最小にするために、選択は様々な置換2−ニトロアニリンに制限され、そのために、存在する場合、第二ニトロ基は6位でなければならない。これはこの群の全ての員によって共有される特徴であり、従って中性形態が範囲380〜460nmできれいな対称形の吸光度ピークを有し、これが、そのプロトン化形態のために(可逆的に)消えることを十分精査した。従って、強度のわずかな損失は、中性酸性度指示薬(I)の濃度の減少を表し、減少は(IH)を表す。これは、分光光度計によって、又は、適切にフィルターされた比色計によってさえ、容易に測定される。
【0081】
原則として、全ての酸性度指示薬は、行われたように、段階的な重ね合わせ法によって関連するスルホラン中のそれらの指示薬定数を有する可能性があり、引用された参考文献で報告されるような、Hを測定するために、さまざまに改訂された。
【0082】
M.A.ポール&F.A.ロング(M.A. Paul & F.A. Long)、ケミストリー・レビュー(Chem Rev.)57 1(1957)
M.J.ジョーゲンソン&D.R.ハーター(M.J. Jorgenson & D.R. Hartter)、米国化学会誌(J. Amer. Chem. Soc.)、85 878(1963)
E.M.アーネット&G.W.マック(E.M. Arnett & G.W. Mach)、米国化学会誌(J. Amer. Chem. Soc.)、86 2671(1964)
N.C.マージアノ、G,C,シミノ、& R.C.パーセリニ(N.C. Marziano, G,C, Cimino, & R.C. Passerini)、化学会誌(J. Chem. Soc.)(ロンドン)パーキン(Perkin)II、1915(1973)
D.ファルカシュー&A.ゲンシュー(D. Farcasiu & A. Ghenciu)、J.Prog.Nucl.Mag.Spect.29 129(1996)
実際には、そのアプローチは範囲が狭く、累積的な手順的及び実験的な変動性に悩まされる。本明細書において使用される代わりの系は、完全に客観的で、自己無撞着及び再現可能であり、実験的に選択された特定の酸性度指示薬における酸性度の効果に依存する。便宜上、これらは、アドバンス・ケミストリー・デベロップメント社(Advanced Chemistry Development, Inc)(ACD/Labs)、(カナダ、オンタリオ州、トロント(Toronto))、www.acdlabs.com.により提供される計算方法を採用することにより、全ての既知の及び予測される2−ニトロアニリン誘導体について産み出される可能性があるそれらの計算された「pK」値によって、数値的に関連付けられる可能性がある。このソフトウェアは、ACD/pKバッチ、バージョン9−04、ACD/Labs(著作権)1994−2007である。(それらのバージョン8−14及び8−19により、同一の「pK」値が産み出された)。「pK」値は、化学情報検索サービス機関(Chemical Abstracts Service)を通してアクセスされてよい。これらの酸性度指示薬「pK」値は、本明細書においては、明確にするために、「pK」と呼ばれる。
【0083】
滴定によりEを確定するのに有効である、対数の酸性度値(「pH」、pHに類似する)を計算するために、実験的な分光測光データが使用される。水性pHとpK値、及びそれと似ている多くの文献H値との混同を避けるために、無水スルホランにおける対数酸性度値は「pH」と指定され、誘導される酸強度定数は「pK」と指定される。それらの計算の「pK」値に近いことによって、「pK」が基準となる指示薬(単数又は複数)が識別される可能性がある。
【0084】
本研究のために選択された指示薬を、それらの計算の「pK」値と共に、表Aに示す。
【0085】
【表1】

【0086】
両極端で分光測光法の不確実性の効果を最小にするために、指示薬が完全に非プロトン化、すなわちその中性形態であるならば、吸光度測定値が、予想される値の15%〜75%に入ることが強く推薦される。表Xにおいて星印で識別される6つの指示薬について、計算された「pK」値は、上記の文献参照で報告される実験的に測定された(及び改訂された)pK値とは約0.1pK単位だけ異なるので、計算方法の有効性を支持する。有用であると推定される指示薬についての追加の計算された「pK」値を、表Bに列記する。
【0087】
【表2】

【0088】
「pH」及び「pK」値の計算
L.C.スミス(L.C. Smith)及びL.P.ハメット(L.P. Hammett)、米国化学会誌(J Amer. Chem. Soc.)67 23(1945)の直接的方法を、関心がある系について「pH」及び「pK」を計算するために使用する。選択された各酸性度指示薬のために、モル吸光係数εは、そのスルホラン溶液の吸光度から計算され、好ましくは、酸性度測定値に関しては正確に作られるが、酸を省略する。次に、等式は、形態:
ε=AMG/SUD=AYG/U
をとり、式中:
A=測定された吸光度
M=指示薬の分子量
G=試料溶液の重量(g)
S=そのスルホラン濃縮物の固体指示薬の重量分画
U=使用される指示薬濃縮物の重量(mg)
D=試料溶液の密度、通常1.2622
Y=指示薬濃縮物についてのバッチ定数(=M/SD)である。
【0089】
参照溶液の必要な密度は、水に対して較正されたおよそ0.5〜2mL容積の小さなオストワルト−シュプレンゲル(Ostwald-Sprengel)比重瓶の使用によって、最も容易に確立される。吸引によって比重瓶を満たすために、スペクトル測定がなされた後、その先端をセル内試験溶液に浸漬してよい。
【0090】
酸(又はその緩衝剤)を包含する試料については、その見掛けの吸光係数εは、同一の等式によって、その観察された吸光度Aに関連する。残りの中性指示薬(I)の画分は、N=ε/εであり、その共役酸(IH)の対応する画分は、C=(1−N)=(ε−ε)/εである。
【0091】
酸性度「pH」は:「pH」=「pK」+log(N/C)で与えられ、
式中、「pK」は、指示薬について計算された「pK」であり、上記のように、ACD/Labsソフトウェア バージョン9−04によって産み出される。
【0092】
滴定又は緩衝剤溶液においては、Bミリモルの塩基及びFミリモルの非中和「遊離」酸を含んでいれば、F=T−Bであり、Tは使用される酸の総ミリモルである(BをTの塩として添加すると、Tを中和しないので、F=T)。これより、酸についての「pK」は:「pK」=「pH」+log(F/B)である。
【0093】
これは、先行する等式と共に、酸強度「pK」、及び強度比Eの数学的互換性を構成する。強度比Eは、正確な計量及びTの重量モル濃度が正しいという推定に起因する実験的に既知の比F/Bに基づく。Tの酸が著しく不純である場合、補正がなされなければならない。不活性不純物において、Tの値は、単にT’まで減少され、F’=T’−Bである。しかし、よくあることだが、不純物が酸の塩(典型的にヒドロニウム塩、H)である場合、これは、また総塩基の一部でなければならず、B’=B+(T−T’)であり、比は:
比=F’/B’=F’/(B+T−T’)=(T’−B)/(B+T−T’)となる。
【0094】
当初は「純粋」(金属塩等が存在しない等)である、所定の非常に強い酸試料においては、既存の不純物は、通常水である。有効な純度T'/Tは、重量を量ることができる無水の塩基による、無水スルホラン中での(重量)滴定によって、推定される可能性がある。スルホラン中に存在する既知ではないが制限された量の水は、部分的に非常に強い酸を「中和し」、滴定及び「pK」計算をそれに応じて修正するであろうが、得られた「pK」の妥当性を変えないであろうことに注意すべきである。
【0095】
Eが確定される、半中和された「1:1緩衝剤」中点を見つけるために、妥当な信頼性で端点を確認することが必要である。これは、(おそらく)等モルの緩衝剤について測定された「pH」よりも2又は3単位酸性が低い「pK」を有する指示薬を必要とし、滴定された「pH」は「最善の」指示薬範囲内である(指示薬範囲を通過する)、すなわち0.15〜0.75のN=ε/εである。こうした端点は、信頼性がある。
【0096】
スルホランに容易に溶解するイミダゾールは、通常、滴定又は緩衝剤作製塩基としての優れた選択である。後者の揮発性とその非常に制限されたスルホランへの溶解度にもかかわらず、結果はエチルジイソプロピルアミンからの結果と一致する。それらは、添加剤塩基、CFSONa及びCFSO(BuN)からの結果にも一致し、これらは当然CFSOHに制限される。その低分子量からみれば、スルホラン中のイミダゾールの1.000モル濃縮物が、推薦される。
【0097】
溶解度理由のために、及び溶媒媒質としてのスルホランを過剰に維持するために、酸性度測定は、F及びB約0.1mL(0.1m)以下で最も良くなされる。非常に強い酸のより大きな希釈において、干渉を最小にするために、極度に乾燥したスルホランが必要である。
【0098】
漂白可能な着色シアノアクリレート接着剤の安定化において関心のある酸についてこのように測定された「pK」値のリストは、表Cにある。
【0099】
【表3】

【0100】
強酸の酸強度「pK」を確定するための滴定の使用、及び結果として生じる強度比
スルホラン溶媒中選択された、1:1緩衝剤系HA:Aと指示薬IH:I、において、(ε−ε)/εとして定義される強度比Eは、HA及びAの純濃度が等しいことが知られていない限り、正しくない。測定試料中の強酸構成要素の純濃度を確定するために、これは、下記のように、重力測定分光光度滴定によって最もよく解明及び実証される。
【0101】
原液は、0.28133gのメチレンジスルホンの純粋な無色昇華結晶、MDS、及びスルホランから作製され、全部で9.99476gである。ストッパー付きの1cm溶融石英分光光度セルに、2.41146gの原液を入れる。それは、67.877mg(T=0.24228mmol)のMDSと、23.29mgの指示薬濃縮物Uを含有し、全部でGグラムである。指示薬濃縮物は、6.07mgの4−メトキシ−2−ニトロアニリン(分子重量M=168.15、「pK」=+0.96)をスルホランに溶解し、全部で2193.78mgとすることにより作製され、S=0.002767、従ってY=48147を得る。(スルホラン中の希釈溶液における分光測光法により、この指示薬のε値は、5497となるように確定された。)原液だけを含有する参照セルと比較して、指示薬のスペクトル最大(446nm)における吸光度は、たった0.022である。
【0102】
滴定は、精製イミダゾールの1.0000mスルホラン溶液の小滴14.46mgを添加することから始められ、塩基Bの0.01446mmolを添加し、吸光度0.158を生じる。イミダゾール溶液の追加の増分を添加し、結果を表Dに示す。
【0103】
【表4】

【0104】
?−極端な吸光度に起因する実質的な不確実性を示す。
【0105】
最も信頼性のある6つの「pK」値の平均は、1.24±0.05である(95%信頼限界)。「pH」の急増は、滴定の終点を示唆し、これは純粋な酸において、予想されるようにB/T=1.0で生じることが見られる。強度比E=0.34について、中点(緩衝剤比1:1)の最も信頼性のある値は、「pK」=1.24、及び「pK」=0.96から、等式:E=1/[1+真数(「pK」−「pK」)]より計算される(C値の補間により、Eは0.36として近似されてよい)。
【0106】
材料
別途注記のない限り、材料は全て、シグマ・アルドリッチ(Sigma-Aldrich Corp)(ミズーリ州、セントルイス(St.Louis))から得られたか、又は得ることができる。
【0107】
「PR01」は、2−エチルシアノアクリレートを指す;0.1Pa.s(100cP)、非常に速い硬化、凝固時間10〜30秒:ケメンス社(Chemence, Inc.)(ジョージア州30005、アルファレッタ(Alpharetta))から入手可能。
【0108】
「SB20」は、2−エチルシアノアクリレートを指す;0.005Pa.s(5cP)、エチルハイブリッド、凝固時間0〜20秒、酸性表面に高強度で固着する:ケメンス社(Chemence, Inc.)(ジョージア州30005、アルファレッタ(Alpharetta))から入手可能。
【0109】
「SB14」は、2−エチルシアノアクリレートを指す;0.1Pa.s(100cP)、凝固時間10〜60秒、プラスチック及びゴムに高強度で固着する:ケメンス社(Chemence, Inc.)(ジョージア州30005、アルファレッタ(Alpharetta))から入手可能。
【0110】
「RX−100」は、2−エチルシアノアクリレートを指す;0.1Pa.s(100cP)、非表面感受性、凝固時間10〜30秒:パーサー・テクノロジー(Pacer Technology)(カリフォルニア州91730、ランチョ・クーカモンガ(Rancho Cucamonga))から入手可能。
【0111】
「TX−100」は、2−エチルシアノアクリレートを指す;0.1Pa.s(100cP)、凝固時間10〜30秒:パーサー・テクノロジー(Pacer Technology)(カリフォルニア州91730、ランチョ・クーカモンガ(Rancho Cucamonga))から入手可能。
【0112】
「NO100」は、2−メトキシ−エトキシ−α−シアノアクリレートを指す;0.1Pa.s(100cP)、臭いなし、霜なし、凝固時間30〜50秒:パーサー・テクノロジー(Pacer Technology)(カリフォルニア州91730、ランチョ・クーカモンガ(Rancho Cucamonga))から入手可能。
【0113】
「HC150」は、2−イソプロピルシアノアクリレートを指す;0.15Pa.s(150cP)、クロロシスが低い(low chlorosis)、透明度が高い、エチルシアノアクリレートよりも水分耐性が良好である、凝固時間10〜30秒:パーサー・テクノロジー(Pacer Technology)、(カリフォルニア州91730、ランチョ・クーカモンガ(Rancho Cucamonga))から入手可能。
【0114】
スコッチウェルド(Scotchweld)シアノアクリレート接着剤:3M、(ミネソタ州55144、メープルウッド(Maplewood))から入手可能であり、下表Eに列記される:
【0115】
【表5】

【0116】
スコッチ(Scotch)(商標)スーパーグルー液(Super Glue Liquid)、カタログ番号AD110、2−エチルシアノアクリレート:3M、(ミネソタ州55144、セントポール(St Paul))から入手可能。
【0117】
「ネクスケア(Nexcare)(商標)ドロップス・リキッド・バンデージ(Drops Liquid Bandage)」、n−ブチルシアノアクリレート、0.005Pa.s(5cP)、凝固時間30−60秒:3M、(ミネソタ州55144、セントポール(St. Paul))から入手可能。
【0118】
トルエンから再結晶化されたミッヒラーのハイドロール:融点102〜102.5℃シグマ・アルドリッチ、(ミズーリ州63103、セントルイス(St. Louis))から入手可能。
【0119】
US3,776,950に開示の手順を使用して合成されるビス(トリフルオロメタンスルホニル)メタン「メチレンジスルホン」「MDS」。
【0120】
US5,874,616に開示の手順を使用して合成されるビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド「イミド酸」。
【0121】
US5,874,616に開示の手順を使用して合成されるビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド「エチルイミド酸」。
【0122】
US5,874,616に開示の手順を使用して合成されるトリフルオロメタンスルホニルアミド「スルホニルアミド」。
【0123】
US5,554,664に開示の手順を使用して合成されるトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタン、「メチド酸」、58.4%固体水性。
【0124】
過剰メタノール中の三フッ化ホウ素−メタノール錯体、約50重量%BF、(BF:2CHOHに対応する):シグマ・アルドリッチ社、(ミズーリ州、セントルイス(St. Louis))から入手可能。
【0125】
三フッ化ホウ素−酢酸錯体、98%:シグマ・アルドリッチ社、(ミズーリ州、セントルイス(St. Louis))から入手可能。
【0126】
ビス−(3−ブロモ−4−ジメチルアミノフェニル)メタノール−ケトン、4,4’−ビス−(ジメチルアミノ)−3,3’−ジブロモベンゾフェノン(E.グリマウクス(E. Grimaux)、科学アカデミー報告書(Comptes Rendus de l'Academie des Sciences)、126 1117−1118、[1898];化学中央誌(Chemisches Centralblatt)[5F.,2J.]1898、I、1105頁)は、C.C.バーカー(C.C. Barker)ら、化学会誌(J. Chem. Soc.)(ロンドン)、3962−63[1959]の方法によってエタノール水溶液中で3%ナトリウム水銀アマルガムを使用して還元され、ビス−(3−ブロモ−4−ジメチルアミノフェニル)メタノールを与える。この製品は、バーカー(Barker)らが3963頁に示すように、酢酸への溶解の際、濃い青色を与え、ケトンのヒドロキシルへの還元を実証する。構造は、NMRによって更に確認される。
【0127】
染料ベース濃縮物A−9ptの酢酸メチル及び1ptのミッヒラーのハイドロール。
【0128】
「MSA濃縮物」−1.8ptのPR01及び0.2ptのメタンスルホン酸からなる溶液。
【0129】
「TFMSA濃縮物」−1.8ptのPR01及び0.2ptのトリフル酸(すなわち、トリフルオロメタンスルホン酸)からなる溶液。
【0130】
顕微鏡スライド、VWRカタログ番号48300−025、事前に洗浄されて選択される、25×75×厚さ1mm。
【0131】
レクサン(Lexan)(商標)ポリカーボネートシート厚さ2.9mmを26.5mm×103mmクーポンに切断する:GEプラスチック(GE Plastics)、(マサチューセッツ州01201、ピッツフィールド(Pittsfield))から入手可能。
【0132】
プロント(Pronto)(商標)表面活性化剤、N,N−ジメチル−p−トルイジンのアセトン溶液:3M、(ミネソタ州55144、セントポール(St. Paul))から入手可能。
【実施例】
【0133】
別途注記のない限り、全ての実施例処方は、重量部で提供される。
【0134】
実施例1及び比較例1
様々な市販のシアノアクリレート組成物を、各々に染料マスターバッチを加えることによって、着色硬化指示組成物に変換した。エチルアセテート中のミッヒラーのハイドロールの10重量%染料ベース溶液、及びPR01中のトリフル酸の10重量%酸溶液を配合することにより、染料マスターバッチを準備した。10重量%染料ベース溶液は、1.35部(「pt」)のエチルアセテート及び0.15ptのミッヒラーのハイドロールを含有した。酸溶液は、1.8ptのPR01及び0.2ptのトリフル酸を含有した。0.3ptの10%染料ベース溶液を添加する前に、9.4ptのPR01と、0.366ptの10%トリフル酸溶液とを組み合わせて、よく混合し、製剤を完全に混合することにより、酸/染料のモル比がおよそ2.2/1であり、およそ3000ppmの染料を含有する染料マスターバッチを得ることにより、染料マスターバッチを調整した。0.25ptの染料マスターバッチと、表1に示す10ptの市販のシアノアクリレートとをHDPE瓶内で組み合わせ、最終染料含有量がおよそ75ppmである試料を調整することにより、最終試料を作製した。
【0135】
得られる試料は、全て藍色であった。試験方法の節に記載されるように凝固時間を算定したが、これらの組成物において、凝固時間は、染料マスターバッチの添加によって本質的に不変であることが示される。凝固時間試験において、全ての試料は、硬化の際、藍色から無色に漂白された。これらの結果は、本発明の酸/染料の組み合わせが、多種多様の市販シアノアクリレート接着剤を色変化組成物に変換するのに好適であることを示している。
【0136】
【表6】

【0137】
比較例1は、硬化の際、US2004/0254272A1の染料の1つであるペンタメトキシレッド(PMR)が、実施例1に示すように採用されるとき、無色形態に漂白されないことを実証している。エチルアセテート中のPMRの2%溶液を調整し、0.25ptのこのPMR溶液に9.75ptのPR01を添加し、PR01中およそ500ppmのPMR染料を含有する溶液PMR−CAを調整した。試料PMR−CAは、15分間置くとかなり増粘し、30分間で完全にゲル化し、2時間で固体になった。この結果は、安定性目的のために系に酸を補完的に充填することなく、こうした溶液を作製できないことを示している。
【0138】
染料マスターバッチのゲル化を回避するために、PMR染料の導入に先立ち、PR01をトリフル酸で安定化することによって、PMR染料濃縮物マスターバッチを作製した。この調製において、1.35ptの酢酸メチルと0.15ptのPMRとを組み合わせることにより、10%PMR溶液であるPMR−10を調整した。PR01、TFMSA濃縮物、及びPMR−10を、それぞれ9.58pt:0.165pt:0.3ptの比で組み合わせ、酸/染料のモル比がおよそ1.5/1であり、およそ3000ppmの染料を含有する染料濃縮物であるPMR−3000を作製した。PR01とTFMSA濃縮物をHDPE容器内で組み合わせ、よく混合して均質溶液を得た後、PMR−10溶液を添加し、均質になるまで更に混合することにより、この溶液を作製した。8.34ptのPR01と1.66ptのPMR−3000を組み合わせて、均質になるまで混合することにより、染料マスターバッチPMR−3000をPR01で更に希釈して、およそ500ppmのPMRを含有する試料PMR−500を準備した。
【0139】
表C1に示すように、0.5ptのPMR−500溶液を4.5gの様々なスコッチウェルド(Scotchweld)シアノアクリレート及びPR01に添加することにより、実施例1のように最終試料を準備し、染料含有量がおよそ50ppmである比較例を提供した。得られた比較試料は全て、紫色であり、試験方法の節に記載されるように、初期凝固時間及び漂白について試験した。結果を表C1に示すが、これは、全ての試料の凝固時間は一般的に妥当であるけれども、おそらく、試料のいくつかは硬化が減速し、硬化の際、これらのPMR含有比較試料はどれも無色に漂白されない、すなわち、全ての実施例が紫の色合いを保持したことを示している。これは、硬化の際、全ての試料が凝固時間試験で完全に漂白されたミッヒラーのハイドロールをベースとする実施例1において準備された試料と対照的である。
【0140】
【表7】

【0141】
実施例2及び比較例2
この実施例は、様々な異なる有機酸及びフッ素性化学物質酸をベースとする色変化シアノアクリレート組成物の溶液及び色安定性を試験する。初めに、PR01中、各酸の10%溶液を配合することにより、各酸を採用する染料マスターバッチを調整した。酸溶液は、表2に示す構成要素及び量を(重量部)を含有した。
【0142】
【表8】

【0143】
表2において調整された酸濃縮物と、PR01及び染料ベース濃縮物Aとを、表3に示す比率(重量部)で混合し、染料マスターバッチを調整した。これは、染料濃縮物を導入する前に、酸濃縮物をHDPE瓶内のPR01に添加し、回転式攪拌器で15分間よく混合することにより、成し遂げられた。染料ベース濃縮物の添加後に、試料を回転式攪拌器に戻し、室温で混合した。無水物/染料のモル比が1/1であるトリフルオロメタンスルホン酸無水物を除いて、およそ3000ppmの染料濃度、及びおよそ約2/1の酸/染料のモル比を提供するように、全ての試料を充填した。混合30分後に試料を調べることにより、比較例C2A−マスター〜C2G−マスターの全てが、凝固又はゲル化したことが明らかになったので、廃棄した。C2A−マスター及びC2B−マスターに関しては、酸単独のアニオンは、過度に求核性であるので、ゲル化を引き起こす。水を含有する比較例C2C−マスター〜C2F−マスターの場合には、ゲル化を引き起こさなかった約40%の水を含有する2D−マスターと比較すると、水含有量でなく、マスターC2C−マスター〜C2F−マスターにおいて採用された酸のアニオンが、ゲル化を引き起こしたことが明らかである。C2G−マスターに関しては、弱酸性であるが、そのイミド酸である2E−マスターと対照的に、染料を安定化させることができない。C2I−マスターに関しては、そのアニオンの求核性に関して、C2H−マスターに酷似していると考えられる。他のフッ素フリー有機スルホン酸は、アニオン求核性において、これらに等しいであろうことが予期される。
【0144】
【表9】

【0145】
残りの染料マスターバッチは全て、藍色に着色した流体であり、実施例1に記載するように0.25ptの染料マスターバッチと9.75ptのPR01とを混合することにより、着色硬化指示シアノアクリレート組成物を処方するために更に採用され、最終染料含有量がおよそ75ppmである試料を提供した。得られた試料を、別個のHDPE瓶で等しい部分に分け、1つを周囲条件で熟成し、その他を49℃で熟成した。試料が熟成したら、瓶を逆さにして、接着剤の流動を観察することによって、定性的粘度観察により、粘度が安定であったか又は増加したかを決定した。この文書の試験方法の節に記載されるように、熟成間に試料の色も監視した。粘度及び色評価結果を表4〜7に示す。凝固時間データを定期的に監視し、得られた結果を表8に報告した。
【0146】
【表10】

【0147】
【表11】

【0148】
【表12】

【0149】
【表13】

【0150】
表4〜7における結果は、比較例C2H及びC2Iが、制限された安定性のみを提供し、これらの比較例が共に、7日間未満の熱熟成の間に、瓶内で硬化し、同様に、室温及び49℃での熟成の両方において、それらの色を失ったことを示している。
【0151】
室温及び49℃で熟成された液体試料の凝固時間を表8に示す。PR01の対照試料は、5〜6秒の初期凝固時間を有し、室温熟成が進むと、14〜56日間の全ての試験時間において、およそ3秒の凝固時間が観察された。表8におけるデータは、様々な酸をベースとする染料マスターバッチを含有する市販シアノアクリレートが、これらが処方された対照と同じように硬化したので、PR01中の染料マスターバッチの存在が、硬化速度を変更しなかったことを示している。これらの発明試料は全て、凝固時間試験において硬化されると、藍色から無色に漂白された。
【0152】
【表14】

【0153】
実施例3
この実施例は、様々な比のトリフル酸及びメタンスルホン酸を含有する一連の色変化シアノアクリレートの安定性を試験する。表9に示された構成要素及び量(重量部)を採用する2つの染料マスターバッチを調整し、酸/染料のモル比がおよそ2/1であり、およそ3000ppmの染料を含有する試料を提供した。次に、これらの染料マスターバッチを互いにブレンドし、表10に示したトリフル酸含有量のモル比(重量部)を提供した。
【0154】
【表15】

【0155】
【表16】

【0156】
実施例1に記載されるように0.25ptの各染料マスターバッチと9.75ptのPR01とをブレンドし、およそ75ppmの染料を含有する試料を得ることにより、これらの5つの染料マスターバッチから5つの色変化シアノアクリレート組成物を準備した。このように調整された試料は全て、藍色であり、凝固時間を調査した後、室温で熟成し、16日後、色又は粘度のあらゆる変化を評価した。これらの結果を表11に示し、これらは、試料中のトリフル酸/メタンスルホン酸の比が上昇すると、すなわち、メタンスルホン酸、つまり求核アニオン含有量が減少すると、色及び粘度に関して安定性が上昇することを示している。
【0157】
【表17】

【0158】
実施例4
この実施例は、色変化シアノアクリレートの凝固時間及び漂白速度に対する、促進剤の効果を試験する。この実施例においては、酸/染料のモル比がおよそ2/1であり、およそ3000ppmの染料ミッヒラーのハイドロールカチオンを含有する0.13gの染料マスターバッチ3E−マスターを、スコッチ(Scotch)(商標)スーパーグルー液(Super Glue Liquid)の5g瓶に添加してよく混合し、およそ75ppmの染料を含有する藍色に着色した試料を得た。試験をレクサン(Lexan)(商標)ポリカーボネートについて行ったこと以外は試験方法の節に記載されたようにして、この色変化シアノアクリレート及びAD110対照の凝固時間を測定した。ポリカーボネート(以後「PC」)についての凝固時間はかなり長く、長引いた、すなわちガラス上で観察される迅速な堅い凝固よりも長引いたことがわかった;PC上の凝固時間は、より連続であり、ここでは、クーポンは、初期には容易に移動することができ、その後、粘度が上昇するとより困難を伴い、最終的には、クーポンはいまだ移動できたが、移動するために著しい力が必要である固い段階になった。固着閉鎖(closure)後の1〜3分間の時間枠において、接着剤の粘度上昇が、検出でき、10〜15分の間に、固着強度は著しく構築されたが、クーポンは、いまだ中程度の手の力で動き得た。固着強度の探査を15分でやめた。硬化の全ての位相を通して、染料含有試料は、対照接着剤よりもわずかに速く硬化が進んだ。15分間の観察の間の色変化に関して、両試料の固着領域は、モノマーを吸収するPCに起因して曇り、染料含有試料が淡青〜灰色であったこと以外は、わずかに灰色になった。22℃及び50%RHの一定温度及び湿度の部屋(CTH)に16時間置いた後、試料は十分に硬化したように見え、染料含有試料から微かな青い色相が消えた。
【0159】
行われた次の実験は、染料含有試料の硬化速度に対する硬化促進剤の効果を試験した。スプレー瓶ポンプ機構を1回押圧し、PCクーポンの1つに、プロント(Pronto)(商標)表面活性剤(SurfaceActivator)を吹き付けた後、促進剤を数分間乾燥させた。コーティングしていないクーポンにシアノアクリレートを適用し、固着はすぐに完了した。硬化直後に試料が無色に漂白され、3〜4秒の凝固時間が記録された。この場合、固着領域は透明であり、促進剤を採用しなかった場合に上で観察された、曇った外観を示さなかった。上の結果は、適切な促進剤を採用することにより、本開示の着色硬化指示のPCにおける凝固時間及び漂白速度を、多数分からものの数秒まで低下できることを示している。
【0160】
実施例5
この実施例は、シアノアクリレートゲルの凝固時間及び色安定性における染料濃度の効果を試験する。この組成物の試料を調整するために採用された構成要素は、酸/染料のモル比がおよそ2/1であり、およそ3000ppmのミッヒラーのハイドロールカチオン、及び表12に示した比率(重量部)で使用されるCA−50ゲルを含有する染料マスターバッチ3E−マスターであった。試料5Dは1ptの試料5A及び8ptのCA−50ゲルからなり、染料含有量はおよそ5ppmであった。適切な比のゲルと染料マスターバッチをヘラで手動混合することにより、試料を処方し、均質に青色に着色した硬化指示ゲルをポリプロピレン容器に移した。試験方法の節に記載した試験を使用して、試料色及び凝固時間を評価し、表12に示す。データは、染料濃度が減少すると、ゲルの色強度が減少したことを示している。全ての試料は、凝固時間試験の間に無色に漂白された。純粋な無色ゲルの試料について凝固時間を試験したところ、凝固時間は16秒であり、実施例5A〜5Dにおける染料の存在が、凝固時間を遅らせなかったことがわかった。
【0161】
【表18】

【0162】
実施例6
この実施例は、色変化シアノアクリレート組成物の安定性に対する酸/染料比の効果を試験する。このシリーズにおいては、表13に示した比率(重量部)で構成要素を使用して、実施例1に記載する手順により、PR01、トリフル酸、及びミッヒラーのハイドロールからなる染料濃縮物を調整して、およそ3000ppmの染料を含有する染料マスターバッチを得た。
【0163】
【表19】

【0164】
実施例1に記載するように0.25ptのマスターバッチと9.75ptのPR01を組み合わせることにより表13のマスターバッチをPR01と更に配合し、表14の色変化シアノアクリレートを提供し、およそ75ppmの染料を含有する試料を得た。試験方法の節に記載するように試料の色及び凝固時間を評価し、表14に報告する。
【0165】
【表20】

【0166】
実施例7
この実施例は、色変化シアノアクリレート組成物の凝固時間、色、及び漂白に対する染料濃度の効果を試験する。この実施例においては、9.43ptのPR01、0.333ptのTFMSA濃縮物、及び0.3ptの染料ベース濃縮物Aを採用して、実施例1に記載された手順により、PR01、トリフル酸、及びミッヒラーのハイドロールからなる染料マスターバッチを調整して、酸/染料のモル比がおよそ2/1であり、およそ3000ppmの染料を含有する染料マスターバッチを得た。染料マスターバッチを更にPR01と配合し、表15に開示された比率(重量部)を使用して、表15の色変化シアノアクリレートを提供した。試験方法の節に記載されるように、試料の色、凝固時間、及び漂白を評価し、表15に報告する。試料7D〜7Fは参照溶液よりもかなり濃かったので、3+に分類した。凝固時間結果は、硬化阻害が観察されず、全ての試料が本質的に同じ凝固時間を有することを示している。凝固時間試験において、全ての試料が無色に漂白された。
【0167】
【表21】

【0168】
実施例8及び9
これらの実施例においては、第一着色状態から第二着色状態に変化した2つの色変化シアノアクリレート組成物を調整し、これは着色から無色への遷移状態を示さず、シアノアクリレート系接着剤が、前の実施例の多くが非硬化状態から硬化状態に進むことを示した。実施例8は、ミッヒラーのハイドロールの漂白性染料、及び非指示薬染料1,8−ジヒドロキシアントラキノンを含有した。実施例9は、ミッヒラーのハイドロール、及びメチルイエロー(4−(ジメチルアミノ)アゾベンゼン)である2つの色変化染料を含有した。
【0169】
実施例8は、2つの異なる染料溶液を採用した。漂白性染料溶液は、PR01中にトリフル酸及びミッヒラーのハイドロールを含有する3E−マスターであり、酸/染料のモル比が2/1であり、染料含有量が3000ppmであった。非漂白性染料溶液は、酢酸メチル中に38.92ptのSB20及び1.2ptの1,8−ジヒドロキシアントラキノン10%溶液を含有し、非指示染料含有量はおよそ3000ppmであった。9.67ptの非漂白性染料溶液に0.333ptの3E−マスターを添加し、1,8−ジヒドロキシアントラキノン染料含有量がおよそ2900ppmであり、ミッヒラーのハイドロールカチオン含有量がおよそ100ppmである明るい緑の色変化シアノアクリレート組成物を提供した。この試料について、試験方法の節に記載されるように凝固時間を試験したところ、凝固時間は1〜2秒であり、これは、親SB20接着剤と同じであった。このシアノアクリレート系接着剤が非硬化状態から硬化状態に進むと、緑色から明るい黄色にほとんど瞬間的に色変化した。
【0170】
実施例9は、2つの異なる染料溶液を採用し、これは両方とも指示染料を含有した。第一染料溶液は、PR01をベースとする実施例1のミッヒラーのハイドロールカチオンマスターバッチ、トリフル酸、及びミッヒラーのハイドロールからなり、酸/染料のモル比がおよそ2.2/1であり、染料含有量がおよそ3000ppmであった。
【0171】
9.25ptのPR01、0.2ptのTFMSA濃縮物、及び0.6ptのメチルイエローの酢酸メチル中5%溶液を組み合わせることにより、実施例1のように第二染料溶液を調整して、酸と染料のモル比が1/1であり、染料含有量が3000ppmであるメチルイエロー染料濃縮物を提供した。
【0172】
8.08ptのPR01、0.25ptのミッヒラーのハイドロールカチオンマスターバッチ、及び1.67ptのメチルイエロー染料濃縮物を組み合わせることにより、接着剤組成物を調整して、およそ75ppmのミッヒラーのハイドロール及び500ppmのメチルイエローを含有する色変化シアノアクリレート組成物を提供した。この試料について、試験方法の節に記載されるように凝固時間を試験したところ、凝固時間はおよそ5秒であり、これは、親PR01接着剤と同じであった。このシアノアクリレート系接着剤が非硬化状態から硬化状態へと進むと、初期の濃赤色から中間の緑色、最後に淡いオレンジ色に色変化した。
【0173】
実施例10
この実施例は、医療グレードブチルシアノアクリレート接着剤が、ミッヒラーのハイドロール染料マスターバッチの添加により、色変化接着剤組成物に変換し得ることを実証する。酢酸メチル中のミッヒラーのハイドロールの10重量%染料ベース溶液、及びネクスケア(Nexcare)(商標)ドロップ・リキッド・バンデージ(Drops Liquid Bandage)(NDLB)中のトリフル酸の10重量%酸溶液を最初に処方することにより、実施例1に記載されるように染料マスターバッチ及び色変化シアノアクリレート接着剤を調整した。10重量%染料溶液は、1.35ptの酢酸メチル及び0.15ptのミッヒラーのハイドロールを含有した。酸溶液は、1.8ptのNDLB及び0.2ptのトリフル酸を含有した。染料マスターバッチは、9.46ptのNDLB、0.30ptの10%トリフル酸溶液、及び0.30ptの10%染料溶液を含有し、これは酸/染料のモル比がおよそ1.8/1であり、染料含有量がおよそ3000ppm染料である染料マスターバッチをもたらした。
【0174】
9.75ptのNDLB及び0.25ptの染料マスターバッチを組み合わせることにより、接着剤組成物を調整し、およそ75ppmの染料を含有する色変化医療グレードシアノアクリレート接着剤組成物を提供した。この藍色試料について、試験方法の節に記載されるように凝固時間を試験したところ、凝固時間はおよそ3〜4秒であり、これは、親NDLB接着剤と同じであった。凝固時間試験中に、このシアノアクリレート系接着剤が非硬化状態から硬化状態へと進むと、初期藍色から無色へと色変化した。一滴のこの接着剤組成物をヒトの手の皮膚に適用し、綿棒で塗り広げて薄い均一層とし、色変化及び凝固時間を観察した。およそ1分間で、接着剤は無色に漂白され、触ると乾燥していた。
【0175】
実施例11
この実施例は、この開示の試験方法の節に記載の手順を使用して、様々な酸と様々なニトロ化アニリン酸性度指示薬との強度比を示す。結果を表16に与え、本発明の機能する酸及び機能しない酸の区別を示す。
【0176】
【表22】

【0177】
実施例12
この実施例は、様々なミッヒラーのハイドロール染料誘導体の色変化特性を試験する。0.44ptのPR01中TFMSAの10%溶液と、0.40ptのTHF中染料ベースの10%溶液とを組み合わせ、よく混合した後、9.16ptのPR01を添加することにより、各染料のマスターバッチを作製する。得られた染料マスターバッチを30分間ゆっくり攪拌し、均質性を確保する。4.91ptのPR01と0.094ptの染料マスターバッチを組み合わせ、30分間ゆっくり攪拌し、色変化シアノアクリレート試料の製剤を完成する。硬化を検出し、生じた任意の色変化に気付くために、1滴の色変化シアノアクリレートを第一ガラス顕微鏡スライド上に置き、第二ガラススライドを第一ガラススライドの上に置き、1分後に観察することにより、得られた試料を試験する。硬化について試料を検査すると、全ての試料が硬化することが明らかである。表17は、色変化挙動を提供する。
【0178】
【表23】

【0179】
実施例13
この実施例は、色変化シアノアクリレート接着剤の挙動に対する酸/染料のモル比の効果を試験する。試験した酸は、酸/染料のモル比が1:1〜5:1の範囲のBF:2CHOH、BF(AcOH)、及びイミド酸であった。2つのBF錯体においては、酸/染料のモル比は、BF錯体のモルではなく、BFのモルに基づいた。SB14中の各酸の10重量%溶液を調整し、これらの酸濃縮物と染料ベース濃縮物A及びSB14とを表18に示す比で組み合わせることにより、酸/染料マスターバッチを処方した。具体的には、SB14を添加して混合する前に、染料ベース濃縮物Aを酸濃縮物に添加して、よく混合し、酸/染料濃縮物の製剤を完成した。0.25部の酸/染料濃縮物と9.75ptのSB14をHDPE瓶内で混合し、色変化シアノアクリレート接着剤の製剤を完成した。
【0180】
【表24】

【0181】
BF:2CHOHをベースとし、酸/染料のモル比が1:1である試料13−6は、調製直後にゲル化し、イミド酸をベースとし、酸/染料のモル比が1:1である試料13−11は、時に、室温で熟成する間に1〜2週間でゲル化した。室温において表19に示すような様々な期間、熟成した後、接着剤の色安定性を評価した。各酸において、酸/染料比の上昇は、漂白時間の上昇をもたらした。
【0182】
【表25】

【0183】
本発明は、上記の特定の実施例に制限されるとみなされるべきではなく、添付の請求項で明確に提示されるように、本発明の全ての態様を網羅すると理解されるべきである。様々な修正、同等の方法、並びに、本発明を適用する可能性がある多くの構造は、本発明が対象とする技術分野の当業者が本発明の明細書を検討することにより、容易に明らかになるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シアノアクリレートモノマーと、
前記シアノアクリレート系接着剤に安定色を提供する非求核アニオンと対を作るミッヒラーのハイドロールカチオン又は誘導体化されたミッヒラーのハイドロールカチオンを含む漂白性染料と、を含むシアノアクリレート系接着剤組成物。
【請求項2】
前記漂白性染料がミッヒラーのハイドロールカチオンである、請求項1に記載のシアノアクリレート系接着剤組成物。
【請求項3】
前記非求核アニオンが、スルホラン溶媒中で4−メトキシ−2−ニトロアニリン指示薬を使用して測定したとき、0.1より大きい強度比値を有する炭素酸に由来する、請求項1に記載のシアノアクリレート系接着剤組成物。
【請求項4】
前記非求核アニオンが、スルホラン溶媒中で4−クロロ−2−ニトロアニリン指示薬を使用して測定したとき、0.2より大きい強度比値を有する非炭素酸に由来する、請求項1に記載のシアノアクリレート系接着剤組成物。
【請求項5】
前記非求核アニオンが、三フッ化ホウ素メタノール、トリフルオロメタンスルホン酸、メチド酸、イミド酸、エチルイミド酸、三フッ化ホウ素酢酸、又はこれらの混合物に由来する、請求項1に記載のシアノアクリレート系接着剤組成物。
【請求項6】
前記ミッヒラーのハイドロールカチオン又は誘導体化されたミッヒラーのハイドロールカチオンが、シアノアクリレート系接着剤中に少なくとも1ppmで存在し、前記非求核アニオンが、シアノアクリレート系接着剤中に非求核アニオン/染料のモル比1〜5で存在する、請求項1に記載のシアノアクリレート系接着剤組成物。
【請求項7】
更に着色剤を含む、請求項1に記載のシアノアクリレート系接着剤組成物。
【請求項8】
更に増粘剤を含む、請求項1に記載のシアノアクリレート系接着剤組成物。
【請求項9】
シアノアクリレートモノマーと、非求核アニオンと染料対を作るミッヒラーのハイドロールカチオン又は誘導体化されたミッヒラーのハイドロールカチオンを含む漂白性染料とを組み合わせることを含み、前記染料対が安定色を有し、前記シアノアクリレートモノマー及び染料対がシアノアクリレート系接着剤組成物を形成する方法。
【請求項10】
前記シアノアクリレート系接着剤組成物を硬化し、無色又は淡く着色した硬化シアノアクリレート系接着剤組成物を形成することを更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
着色剤と、前記シアノアクリレートモノマー及び染料対とを組み合わせ、前記シアノアクリレート系接着剤組成物に安定変化色を提供することを更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記シアノアクリレート系接着剤組成物を硬化し、安定変化色及び安定色とは異なる第二色を有する硬化シアノアクリレート系接着剤組成物を形成することを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記シアノアクリレート系接着剤組成物の色を参照色表と比較し、前記シアノアクリレート系接着剤組成物における変化を確定することを更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記組み合わせ工程前に、基材上に染料対を配置することを更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
基材上に前記シアノアクリレート系接着剤組成物を配置する工程と、前記シアノアクリレート系接着剤組成物を硬化して無色又は淡く着色した硬化シアノアクリレート系接着剤組成物にすることを更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記非求核アニオンが、スルホラン溶媒中で4−メトキシ−2−ニトロアニリン指示薬を使用して測定したとき、0.1より大きい強度比値を有する炭素酸に由来する、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
前記非求核アニオンが、スルホラン溶媒中で4−クロロ−2−ニトロアニリン指示薬を使用して測定したとき、0.2より大きい強度比値を有する非炭素酸に由来する、請求項9に記載の方法。
【請求項18】
前記非求核アニオンが、三フッ化ホウ素メタノール、トリフルオロメタンスルホン酸、メチド酸、イミド酸、エチルイミド酸、三フッ化ホウ素酢酸、又はこれらの混合物に由来する、請求項9に記載の方法。
【請求項19】
前記配置工程前に、表面活性剤を基材に適用することを更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記非求核アニオンを、前記ミッヒラーのハイドロールカチオン又は誘導体化されたミッヒラーのハイドロールカチオンに、非求核アニオン/染料のモル比1〜5の範囲で添加し、前記ミッヒラーのハイドロールカチオン又は誘導体化されたミッヒラーのハイドロールカチオンが前記シアノアクリレート系接着剤組成物中に少なくとも1ppm存在する、請求項9に記載の方法。
【請求項21】
組み合わせ工程後14日間待機し、その後、色の持続を視覚的に確認することを更に含む、請求項9に記載の方法。

【公表番号】特表2010−502823(P2010−502823A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527550(P2009−527550)
【出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際出願番号】PCT/US2007/077679
【国際公開番号】WO2008/030903
【国際公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】