説明

色較正係数算出装置および色較正係数算出プログラム

【課題】目標物を実出力装置で擬似的に再現する際に、本構成を有しない場合に比べて経時的に安定した精度が得られる較正係数を算出する色較正係数算出装置を提供する。
【解決手段】色変換係数算出部2で色変換係数を算出する際に用いた実出力装置色情報23のうちの較正色情報に対応する実出力装置測色情報24を出力装置3の出力特性に従って色変換して新たな目標色情報とし、較正目標色記憶部12に記憶させる。その後の較正処理では、較正色情報記憶部11に記憶されている較正色情報を出力装置3に与え、出力された色の測色値を較正出力色取得部13が取得して出力装置3の特性に従って色変換し、較正出力色情報とする。そして、較正係数算出部14は較正出力色取得部13で得た較正出力色情報を較正目標色記憶部12が記憶している目標色情報へ較正する較正係数を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色較正係数算出装置および色較正係数算出プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
印刷機やプリンタなどの出力装置(以下、目標出力装置と呼ぶ)の出力(以下、目標物と呼ぶ)を別の出力装置(以下、実出力装置と呼ぶ)で擬似的に再現する場合、それぞれの目標出力装置および実出力装置が出力する際の特性が異なり、そのまま実出力装置で出力させても、目標物の色と実出力装置から出力された色とが異なってしまう。そのため、色変換を行って目標物の色を実出力装置で再現している。この場合、ある色情報を目標出力装置に与え、目標物を出力させて測色することにより目標出力装置の出力特性を得るとともに、ある色情報を実出力装置に与え、出力された色を測色することにより実出力装置の出力特性を得る。そして、目標出力装置の測色値から出力装置の出力特性を逆に用いることにより、目標出力装置から出力された色を再現するために実出力装置に与える色情報が得られる。従って、目標出力装置の出力特性による色変換と実出力装置の出力特性を逆に用いた色変換を行って得られた色情報を実出力装置に与えれば、目標物の色が実出力装置で再現されることになる。このような色変換を用いることにより、目標物が擬似的に出力装置で再現される。近年は、色補正を繰り返し行って精度を追い込んでいく技術などの開発が進んでいる。
【0003】
一方、出力装置から出力される色を出力装置の標準状態(初期状態)に補正する較正技術がある。較正方法としては、1次元の変換表をそれぞれの色成分について作成する技術が利用されている。また、単色を補正する技術や、各色成分を重ねて再現する黒の較正を行うグレイバランス較正技術がある。近年は、例えば特許文献1に記載されている色再現域全体を較正対象とした多次元の変換表に対する較正技術がある。また、例えば特許文献2に記載されている較正技術では、色成分ごとの変換表を作成する際に、ある色成分のある濃度の補正量として当該色成分の濃度を含む種々の色における補正量をまとめて計算することにより、色再現域全体に対する変換表を得ている。
【0004】
目標物を実出力装置で擬似的に再現する場合、上述の較正技術と組み合わせることにより、経時的な変化を生じさせないで目標物を擬似的に再現させている。例えば、実出力装置を標準状態に較正した後、標準状態の実出力装置に色情報を与えて出力される色を測色し、実出力装置の出力特性を得る。この出力特性をもとに、目標物を実出力装置で再現するための色変換を行う際に用いる係数(色変換係数)を算出する。色変換係数を算出した後は、実出力装置を較正することにより標準状態に戻し、再現精度を確保している。
【0005】
しかし、実出力装置を較正して標準状態とした後、色変換係数を算出するための実出力装置の出力特性を得るまでに生じた実出力装置の狂い、例えば機構部の変動や面内ムラなどによって、取得した実出力装置の出力特性は標準状態の出力特性とは限らず、誤差を含んでいることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−101167号公報
【特許文献2】特開2009−225424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、目標物を実出力装置で擬似的に再現する際に、本構成を有しない場合に比べて経時的に安定した精度が得られる較正係数を算出する色較正係数算出装置および色較正係数算出プログラムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願請求項1に記載の発明は、較正対象の出力装置に与える色情報を較正色情報として記憶する較正色情報記憶手段と、色変換係数を算出する際に前記出力装置に前記較正色情報を与えて取得された出力色を較正の目標とする色として対応する色情報を目標色情報として記憶する較正目標色記憶手段と、前記較正色情報を前記出力装置に与えて出力された色に対応する色情報を較正出力色情報として取得する較正出力色取得手段と、前記較正出力色取得手段で取得した前記較正出力色情報を前記較正目標色記憶手段に記憶されている前記目標色情報へ較正する較正係数を算出する較正係数算出手段を有することを特徴とする色較正係数算出装置である。
【0009】
本願請求項2に記載の発明は、較正の対象とする色の情報を色変換係数を用いて変換した色の情報を前記較正色情報として記憶する較正色情報記憶手段と、前記較正色情報を前記出力装置に与えて出力された色に対応する色情報を較正出力色情報として取得する較正出力色取得手段と、前記較正出力色取得手段で取得した前記較正出力色情報を前記較正色情報へ較正する較正係数を算出する較正係数算出手段を有することを特徴とする色較正係数算出装置である。
【0010】
本願請求項3に記載の発明は、本願請求項1または請求項2に記載の発明における前記較正係数算出手段が、あらかじめ設定されている色に対する重要度に応じて前記較正係数を算出することを特徴とする色較正係数算出装置である。
【0011】
本願請求項4に記載の発明は、コンピュータに、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の色較正係数算出装置の機能を実行させるものであることを特徴とする色較正係数算出プログラムである。
【発明の効果】
【0012】
本願請求項1に記載の発明によれば、本構成を有しない場合に比べて、目標物を実出力装置で擬似的に再現する際に行う色変換で用いる色変換係数に適合した高精度の較正を安定して行う較正係数を算出することができるという効果がある。
【0013】
本願請求項2に記載の発明によれば、較正の対象とする色について色変換に合わせた較正を、本構成を有しない場合に比べて高精度に行う較正係数を算出することができるという効果がある。
【0014】
本願請求項3に記載の発明によれば、色の重要度に応じた較正を行う較正係数を算出することができる。
【0015】
本願請求項4に記載の発明によれば、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の発明の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施の形態を含む色処理システムの一例の構成図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態を含む色処理システムの一例における動作の一例を示す流れ図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における較正処理の概念図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態を含む色処理システムの一例の構成図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態を含む色処理システムの一例における動作の一例を示す流れ図である。
【図6】目標出力装置で出力される色を実出力装置で再現する場合の色処理の一例の説明図である。
【図7】本発明の各実施の形態で説明した機能をコンピュータプログラムで実現した場合におけるコンピュータプログラム及びそのコンピュータプログラムを格納した記憶媒体とコンピュータの一例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の第1の実施の形態を含む色処理システムの一例の構成図である。図中、1は色較正係数算出部、2は色変換係数算出部、3は出力装置、11は較正色情報記憶部、12は較正目標色記憶部、13は較正出力色取得部、14は較正係数算出部、21は目標出力装置色情報、22は目標出力装置測色情報、23は実出力装置色情報、24は実出力装置測色情報、25は係数算出部である。図1に示す例において、較正の対象とする装置を出力装置3として示している。この出力装置3が出力する色を較正する際に用いる係数である較正係数を色較正係数算出部1で算出する。また図1に示す例では、出力装置3を用いて目標とする出力装置(目標出力装置)の出力を擬似的に再現する際の色変換に用いる係数である色変換係数を算出する色変換係数算出部2についても示している。
【0018】
この例では、色較正係数算出部1は、較正色情報記憶部11、較正目標色記憶部12、較正出力色取得部13、較正係数算出部14を含んで構成されている。較正色情報記憶部11は、較正の際に較正対象の出力装置3に与える色の情報を較正色情報として記憶する。較正色情報としては、あらかじめ決められた色の情報を記憶している。この色の情報は、後述する実出力装置色情報23のいくつかあるいは全部である。もちろん、実出力装置色情報23以外の色が含まれていてもよいが、それらの色については以下に説明する較正目標色の変更は行わない。また、実出力装置色情報23を記憶し、そのうちのいくつかあるいは全部を較正色情報として使用する構成であってもよい。
【0019】
較正目標色記憶部12は、較正の目標とする色の情報である目標色情報を記憶する。目標色情報としては、初期の状態では較正色情報としておけばよい。また、色変換係数算出部2で算出した色変換係数を用いて色変換を行う場合には、色変換係数算出部2で色変換係数を算出する際に、実出力装置色情報23のうちの較正色情報を出力装置3に与えて取得された出力色を較正の目標とする色として、対応する色情報を目標色情報とする。
【0020】
較正出力色取得部13は、較正色情報記憶部11に記憶されている較正色情報を出力装置3に与えて出力された色に対応する色情報を較正出力色情報として取得する。
【0021】
較正係数算出部14は、較正出力色取得部13で取得した較正出力色情報を較正目標色記憶部12に記憶されている目標色情報へ較正する較正係数を算出する。較正係数を算出する方法としては、周知の方法を利用すればよい。例えば特許文献2に記載されている、あらかじめ設定されている色に対する重要度に応じて重み付けを行い、較正係数を算出する方法を採用してもよい。
【0022】
色変換係数算出部2は、この例では係数算出部25を含んでいる。係数算出部25は、目標出力装置色情報21と目標出力装置測色情報22の対、および、実出力装置色情報23と実出力装置測色情報24の対を用いて、出力装置3で目標出力装置の出力を擬似的に再現するための色変換に用いる色変換係数を算出する。目標出力装置色情報21と目標出力装置測色情報22は、目標出力装置に対して目標出力装置色情報21を与え、その目標出力装置色情報21に対応して目標出力装置から出力された色を測色することによって目標出力装置測色情報22を得たものである。また、実出力装置色情報23と実出力装置測色情報24についても、出力装置3に対して実出力装置色情報23を与え、その実出力装置色情報23に対応して出力装置3から出力された色を測色することによって実出力装置測色情報24を得たものである。上述したが、実出力装置色情報23は較正色情報そのもの、あるいは較正色情報を含んでいるものとする。
【0023】
図2は、本発明の第1の実施の形態を含む色処理システムの一例における動作の一例を示す流れ図である。ここではそれぞれの色情報の具体例として、出力装置3に与える場合の色情報の色空間をCMYK、測色した色情報の色空間をLABであるものとして説明する。もちろん、それぞれの色情報の色空間としてはこの例に限られるものではなく、設計の際に予め決めておけばよい。
【0024】
まずS81において、出力装置3を標準状態に較正する。この較正の処理では、較正色情報記憶部11に記憶されている較正色情報(CMYK)を出力装置3に与え、出力された色の測色値(LAB)を較正出力色取得部13が取得して色変換し、較正出力色情報(CMYK)とする。この色変換は、予め得ておいた出力装置3の入出力特性、具体例としてはCMYKを与えてLABが得られるという入出力特性をもとに、例えば特性モデルを作成して出力側(LAB)から入力側(CMYK)を算出する逆モデルを使用して、測色値(LAB)から較正出力色情報(CMYK)への色変換を行えばよい。もちろん、色変換の方法はこの例に限られるものではない。
【0025】
較正係数算出部14は、較正出力色取得部13で得た較正出力色情報を目標色情報へ較正する較正係数を算出する。目標色情報は、例えば較正目標色記憶部12に予め較正色情報を目標色情報として記憶させておくか、あるいは較正色情報記憶部11に記憶されている較正色情報を目標色情報として使用すればよい。上述したが、較正係数を算出する方法は周知の方法を利用すればよい。例えば特許文献2に記載されている技術では、出力装置3が再現する色範囲に対し、色再現上の重要度などに応じて重みづけを行い、この重みを基にして各色成分についての1次元の補正曲線を生成している。重みにより色域全体について均衡のとれた較正が行われ、また、単色、無彩色、2次色、特定色などの特定の箇所についての再現性を保証する較正が行われることになる。
【0026】
なお、以後の出力装置3による出力の際には、与えられた色情報に対して較正係数算出部14で算出した較正係数を用いて色修正の処理を行ってから出力装置3に与えることとなる。もちろん、較正係数が再計算された場合や、他の較正係数が選択あるいは設定される場合には、その較正係数に従って色修正の処理が行われることになる。
【0027】
このような較正を行った後に、S82において、まず色変換係数算出部2で色変換係数を算出する際に用いる実出力装置色情報23(CMYK)および実出力装置測色情報24(LAB)の対を取得する。この処理は、実出力装置測色情報23(CMYK)をS81で得た較正係数を用いて色修正の処理を行って出力装置3に与え、出力された色を測色して実出力装置測色情報24(LAB)とすればよい。実出力装置色情報23としては較正色情報記憶部11に記憶されている較正色情報、あるいはさらに他の色情報を含んでいてよい。続いて色変換係数算出部2では、得られた実出力装置色情報23と実出力装置測色情報24の対とともに、色再現の目標とする目標出力装置から得た目標出力装置色情報21と目標出力装置測色情報22との対を用い、係数算出部25で色変換係数を算出する。この色変換係数は、目標出力装置に与える色情報を出力装置3に与えるための色情報に変換するものである。目標出力装置から出力される色を出力装置3で再現する場合には、与えられた色情報に対して、算出した色変換係数を用いた色変換を施し、さらに較正係数を用いて色修正の処理を行ってから出力装置3に与えることになる。
【0028】
S83では、S82で使用した実出力装置色情報23のうちの較正色情報(CMYK)に対応する実出力装置測色情報24(LAB)を、出力装置3の出力特性に従って色変換して新たな目標色情報(CMYK)とし、較正目標色記憶部12に記憶させる。本来は目標色情報は較正色情報となるはずであるが、S81で較正を行ってからS82で実出力装置測色情報23を得るまでに出力装置3が変動している場合がある。出力装置3が変動していると、得られた目標色情報は較正色情報と異なっている場合がある。
【0029】
その後に目標出力装置から出力される色を出力装置3で再現する場合に行う較正処理としては、S84において、較正目標色記憶部12が記憶している目標色情報への較正を行う。すなわち、較正色情報記憶部11に記憶されている較正色情報(CMYK)を出力装置3に与え、出力された色の測色値(LAB)を較正出力色取得部13が取得して出力装置3の特性に従って色変換し、較正出力色情報(CMYK)とする。色変換はS81の処理で述べたとおりである。そして、較正係数算出部14は較正出力色取得部13で得た較正出力色情報(CMYK)を較正目標色記憶部12が記憶している目標色情報へ較正する較正係数を算出する。この後に目標出力装置から出力される色を出力装置3で再現する場合には、与えられた色情報に対して色変換係数を用いた色変換を施し、新たに算出された較正係数を用いて色修正の処理を行ってから出力装置3に与えることになる。
【0030】
図3は、本発明の第1の実施の形態における較正処理の概念図である。図中、Aは較正色情報記憶部11に記憶されている較正色情報の色、Bは上述のS83で較正目標色記憶部12に記憶される目標色情報の色、PおよびQは較正出力色取得部13が取得した較正出力色情報の色を示している。例えば図2のS81の処理で、色Aの較正色情報を出力装置3に与え、較正出力色取得部13が取得した較正出力色情報の色が色Pであったとする。この場合には、較正色情報の色Aへ較正する較正係数を較正係数算出部14で算出することになる。
【0031】
この後にS82で色変換係数を求めるために、例えば色Aを実出力装置色情報23としてS81で求めた較正係数に従って較正処理後に出力装置3に与え、得られた出力を測色して、色Aに対応する実出力装置測色情報24を得る。この実出力装置測色情報24を出力装置3の出力特性に従って色変換すると、色Bが得られたとする。理論上は較正を行っていることから、出力装置3からは色Aが出力されているはずであるが、出力装置3の状態は温度湿度や面内ムラ、測色器の変動など様々な要因によって変動する。そのため、較正係数の算出から色変換係数の算出までに出力装置3の特性が変化している場合があり、この変化が色の違いとして現れた場合を示している。S83では、この色Bの情報を新たな目標色情報として較正目標色記憶部12に記憶させる。
【0032】
その後、S84において目標出力装置から出力される色を出力装置3で再現する場合に行う較正処理は、較正目標色記憶部12が記憶している目標色情報への較正を行う。例えば色Aの較正色情報を出力装置3に与え、較正出力色取得部13が取得した較正出力色情報の色が色Qであったとする。この場合には、較正色情報の色Aではなく、目標色情報の色Bへ較正する較正係数を較正係数算出部14で算出する。
【0033】
色変換係数算出部2で目標出力装置の色を出力装置3で再現させるための色変換係数を求めた際には、出力装置3から色Aではなく色Bで出力される状態であったことになる。そのため、色Aに較正してしまうと色Bのつもりで色変換した色が色Aで再現されることになり、色の誤差が生じる。色Bに較正すれば、色Bのつもりで色変換された色は色Bで再現され、誤差が生じないことになる。もちろん、目標出力装置の色を出力装置3で再現させる場合以外では、色Aへの較正を行ってもよい。
【0034】
図4は、本発明の第2の実施の形態を含む色処理システムの一例の構成図である。ここでは第1の実施の形態と異なる点について主に説明してゆく。この第2の実施の形態では、較正色情報記憶部11に記憶する較正色情報を、色変換係数算出部2で算出した色変換係数に応じて設定する場合について示している。
【0035】
較正色情報記憶部11は、較正の際に較正対象の出力装置3に与える色の情報を較正色情報として記憶するが、その較正色情報として、較正の対象とする色の情報を、色変換係数を用いて変換した色情報を用いる。もちろん、このほかにも通常の較正処理で用いている色情報を較正色情報として含めてもよい。
【0036】
また較正係数算出部14は、較正出力色取得部13で取得した較正出力色情報を、較正色情報記憶部11に記憶されている較正色情報へ較正する較正係数を算出する。この第2の実施の形態においても、較正係数を算出する方法としては、例えば特許文献2に記載されている、あらかじめ設定されている色に対する重要度に応じて重み付けを行い、較正係数を算出する方法など、周知の方法を利用すればよい。
【0037】
図5は、本発明の第2の実施の形態を含む色処理システムの一例における動作の一例を示す流れ図である。ここではそれぞれの色情報の具体例として、出力装置3に与える場合の色情報の色空間をCMYK、測色した色情報の色空間をLABであるものとして説明する。もちろん、それぞれの色情報の色空間としてはこの例に限られるものではなく、設計の際に予め決めておけばよい。
【0038】
S81において出力装置3を標準状態に較正した後、S82において実出力装置色情報23(CMYK)および実出力装置測色情報24(LAB)の対を取得して、目標出力装置色情報21と目標出力装置測色情報22との対とともに用いて色変換係数を算出する。これらのS81およびS82の処理については第1の実施の形態において図2を用いて説明した処理であるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0039】
S91において、較正の対象とする色の情報(CMYK)をS82で算出した色変換係数を用いて変換し、較正色情報(CMYK)として較正色情報記憶部11に記憶させる。例えば目標出力装置で再現される特定の色について出力装置3でも当該色を再現する場合には、その特定の色を較正の対象とする色として色変換係数を用いて色変換し、較正色情報を得て較正色情報記憶部11に記憶させればよい。
【0040】
その後に目標出力装置から出力される色を出力装置3で再現する場合に行う較正処理としては、S92において、較正色情報記憶部11が記憶している較正色情報への較正を行う。すなわち、較正色情報記憶部11に記憶されている較正色情報(CMYK)を出力装置3に与え、出力された色の測色値(LAB)を較正出力色取得部13が取得して出力装置3の特性に従って色変換し、較正出力色情報(CMYK)とする。色変換はS81の処理で述べたとおりである。そして、較正係数算出部14は較正出力色取得部13で得た較正出力色情報(CMYK)を較正色情報記憶部11が記憶している較正色情報へ較正する較正係数を算出する。この後に目標出力装置から出力される色を出力装置3で再現する場合には、与えられた色情報に対して色変換係数を用いた色変換を施し、新たに算出された較正係数を用いて色修正の処理を行ってから出力装置3に与えることになる。
【0041】
較正色情報は、目標出力装置で再現される特定の色を出力装置3で再現する場合に出力装置3に与える色情報である。S92の較正処理によって、S91で得た較正色情報への較正を行えば、目標出力装置において再現される特定の色が出力装置3でも再現されるように較正されることになる。もちろん、目標出力装置の色を出力装置3で再現させる場合以外でも、較正色情報における較正が行われることになる。
【0042】
具体例として目標出力装置で灰色を出力する場合を考えると、出力装置3で灰色を出力させる場合に出力装置3に与える色は無彩色の灰色とは限らず、彩度を有した色の場合がある。この場合に無彩色の灰色を出力装置3に与えて較正を行っても、目標出力装置での灰色を較正したことにならない。この第2の実施の形態では、目標出力装置における灰色を出力装置3で灰色として再現させる場合に出力装置3に与える色、すなわち、目標出力装置に与える灰色を色変換係数算出部2で算出した色変換係数を用いて変換した色の情報を較正色情報として用い、較正処理を行う。従って、目標出力装置で出力される灰色を出力装置3で再現する場合に出力装置3に与える色で較正処理が行われ、目標出力装置での灰色で較正したことになる。このことは灰色に限られるものではなく、他の色についても、色変換係数を用いた色変換を行って較正色情報とすればよい。
【0043】
この第2の実施の形態でも、較正係数算出部14で較正係数を算出する方法は周知の方法を利用すればよい。例えば特許文献2に記載されている重み付けを行う技術を用いてもよい。特許文献2では較正の対象点として各色成分の値を分割した値の組み合わせを用いているが、この第2の実施の形態で用いる場合には、その値の組み合わせについて色変換係数を用いた色変換を施した較正色情報を用い、重み付けした較正係数の算出を行えばよい。
【0044】
図6は、目標出力装置で出力される色を実出力装置で再現する場合の色処理の一例の説明図である。図中、41は色変換部、42は色較正部である。上述の第1および第2の実施の形態で算出した較正係数および色変換係数を用いて、目標出力装置の出力を実出力装置である出力装置5で再現する場合の色処理の一例を図6に示している。
【0045】
色変換部41は、色変換係数算出部2で算出した色変換係数を用いて、与えられた画像の色変換を行う。この場合に与えられる画像は、目標出力装置で出力することを前提とした画像である。
【0046】
色較正部42は、色較正係数算出部1で算出した較正係数を用いて、色変換部41で色変換された画像の各色成分に対して較正の処理を行う。較正された画像は出力装置3に渡され、画像が出力される。出力された画像は、色変換部41での色変換によって目標出力装置から出力される色を再現した色となり、また、色較正部42による較正処理により出力装置3の変動による色の違いが抑えられている。
【0047】
図7は、本発明の各実施の形態で説明した機能をコンピュータプログラムで実現した場合におけるコンピュータプログラム及びそのコンピュータプログラムを格納した記憶媒体とコンピュータの一例の説明図である。図中、51はプログラム、52はコンピュータ、61は光磁気ディスク、62は光ディスク、63は磁気ディスク、64はメモリ、71はCPU、72は内部メモリ、73は読取部、74はハードディスク、75はインタフェース、76は通信部である。
【0048】
上述の本発明の各実施の形態で説明した各部の機能を全部あるいは部分的に、コンピュータで実行するプログラム51によって実現してもよい。その場合、そのプログラム51およびそのプログラムが用いるデータなどは、コンピュータで読み取る記憶媒体に記憶させておけばよい。記憶媒体とは、コンピュータのハードウェア資源に備えられている読取部73に対して、プログラムの記述内容に応じて、磁気、光、電気等のエネルギーの変化状態を引き起こして、それに対応する信号の形式で、読取部73にプログラムの記述内容を伝達するものである。例えば、光磁気ディスク61,光ディスク62(CDやDVDなどを含む)、磁気ディスク63,メモリ64(ICカード、メモリカード、フラッシュメモリなどを含む)等である。もちろんこれらの記憶媒体は、可搬型に限られるものではない。
【0049】
これらの記憶媒体にプログラム51を格納しておき、例えばコンピュータ52の読取部73あるいはインタフェース75にこれらの記憶媒体を装着することによって、コンピュータからプログラム51を読み出し、内部メモリ72またはハードディスク74(磁気ディスクやシリコンディスクなどを含む)に記憶し、CPU71によってプログラム51を実行することによって、上述の本発明の各実施の形態で説明した機能が全部あるいは部分的に実現される。あるいは、通信路を介してプログラム51をコンピュータ52に転送し、コンピュータ52では通信部76でプログラム51を受信して内部メモリ72またはハードディスク74に記憶し、CPU71によってプログラム51を実行することによって実現してもよい。
【0050】
コンピュータ52には、このほかインタフェース75を介して様々な装置を接続してもよい。例えば出力装置が、このインタフェース75を介して接続されていてもよい。また、情報を表示する表示手段や利用者からの情報を受け付ける受付手段等も接続されていてもよい。
【0051】
もちろん、部分的にハードウェアによって構成してもよいし、全部をハードウェアで構成してもよい。あるいは、他の構成とともに本発明の各実施の形態で説明した機能の全部あるいは部分的に含めたプログラムとして構成してもよい。もちろん、他の用途に適用する場合には、その用途におけるプログラムと一体化してもよい。
【符号の説明】
【0052】
1…色較正係数算出部、2…色変換係数算出部、3…出力装置、11…較正色情報記憶部、12…較正目標色記憶部、13…較正出力色取得部、14…較正係数算出部、21…目標出力装置色情報、22…目標出力装置測色情報、23…実出力装置色情報、24…実出力装置測色情報、25…係数算出部、41…色変換部、42…色較正部、51…プログラム、52…コンピュータ、61…光磁気ディスク、62…光ディスク、63…磁気ディスク、64…メモリ、71…CPU、72…内部メモリ、73…読取部、74…ハードディスク、75…インタフェース、76…通信部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
較正対象の出力装置に与える色情報を較正色情報として記憶する較正色情報記憶手段と、色変換係数を算出する際に前記出力装置に前記較正色情報を与えて取得された出力色を較正の目標とする色として対応する色情報を目標色情報として記憶する較正目標色記憶手段と、前記較正色情報を前記出力装置に与えて出力された色に対応する色情報を較正出力色情報として取得する較正出力色取得手段と、前記較正出力色取得手段で取得した前記較正出力色情報を前記較正目標色記憶手段に記憶されている前記目標色情報へ較正する較正係数を算出する較正係数算出手段を有することを特徴とする色較正係数算出装置。
【請求項2】
較正の対象とする色の情報を色変換係数を用いて変換した色の情報を前記較正色情報として記憶する較正色情報記憶手段と、前記較正色情報を前記出力装置に与えて出力された色に対応する色情報を較正出力色情報として取得する較正出力色取得手段と、前記較正出力色取得手段で取得した前記較正出力色情報を前記較正色情報へ較正する較正係数を算出する較正係数算出手段を有することを特徴とする色較正係数算出装置。
【請求項3】
前記較正係数算出手段は、あらかじめ設定されている色に対する重要度に応じて前記較正係数を算出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の色較正算出装置。
【請求項4】
コンピュータに、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の色較正係数算出装置の機能を実行させるものであることを特徴とする色較正係数算出プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−169734(P2012−169734A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27038(P2011−27038)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】