説明

芝の処理のための殺菌性活性化合物、組成物

本発明は、QoI部位においてミトコンドリア呼吸を阻害する殺菌剤(QoI阻害薬)、接触殺菌剤、脱メチル化反応阻害薬及び顔料を含んでいる、望ましくない植物病原性菌類防除するのに非常に適している新規組成物に関する。さらに、該殺菌性組成物は、イネ科植物〔特に、芝草(turf grass)〕における菌類(mold)及び菌類(fungus)による感染を防除することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、QoI部位においてミトコンドリア呼吸を阻害する殺菌剤(QoI阻害薬)、接触殺菌剤、脱メチル化反応阻害薬及び顔料を含んでいる、望ましくない植物病原性菌類防除するのに非常に適している新規組成物に関する。さらに、該殺菌性組成物は、イネ科植物〔特に、芝草(turf grass)〕における菌類(mold)及び菌類(fungus)による感染を防除することができる。
【背景技術】
【0002】
品質の優れた芝草種は、ゴルフコースのグリーン、フェアウェイ及びティーボックスに植えられており、さらに、芝生育成場(turf farm)や他の多くの場所で栽培されている。晩夏及び初秋には気候が温暖であって、晩秋及び初冬には積雪条件下にある、カナダや米国北部などの北部地域においては、ダラースポット〔スクレロチニア・ホメオカルパ(Sclerotinia homeocarpa)〕及び雪腐病菌類〔例えば、ミクロドキウム・ニバレ(Microdochium nivale)、チフラ・インカルナタ(Typhula incarnata)、及び、チフラ・イシカリエンシス(Typhula ishikariensis)〕などの特定の菌類(mold)が、芝草栽培者にとって慢性的な問題となっている。
【0003】
芝草は、晩夏及び秋に処理されないままに放置された場合、晩夏及び秋には、スクレロチニア・ホメオカルパ(Sclerotinia homeocarpa)に起因する損傷を受けやすくなり、晩秋及び冬を通して春までは、雪腐病菌類に起因する損傷を受けやすくなる。スクレロチニア・ホメオカルパ(Sclerotinia homeocarpa)は、南部で栽培される殆どの芝草を攻撃する。ベントグラス、コモンバミューダグラス、ハイブリッドバーミューダグラス及びシバ属多年草は、スクレロチニア・ホメオカルパ(Sclerotinia homeocarpa)の攻撃に対して最も感受性が高い。ダラースポット病は、春から秋の終わりまで発生し、春、初夏及び秋の温暖な日中(約70°F〜約85°F)及び低温の夜間(約60°F)の湿度が高い期間にもっとも活性が高い。
【0004】
菌類の感染が広範囲に及ぶ場合、当該芝草の回復は、かなり遅れて成育期間にまで入る可能性があり、また、その芝草の回復する能力に対して著しい影響を与え得る。その結果、デッドパッチ(dead patch)の領域が残る。さらに、これらの菌類によって弱体化された又は損傷を受けた芝草は、春には回復するのが極めて遅く、そして、しばしば、クリーピングベントグラス(Agrostis palustris)及びスズメノカタビラ(Poa annua)などの望ましくない日和見雑草のイネ科植物種が侵入する。
【0005】
雪腐病を予防するための典型的なプログラムでは、冬季の万年雪に覆われる前に菌類を阻害する殺菌剤を芝草に施用することが必要である。典型的なプログラムは、万年雪に覆われる前の3回の施用と春にその万年雪の覆いがなくなった後における追加の施用からなる。数種類の商業的な殺菌剤製品が、ダラースポット及び雪腐病菌種に対する使用に関して認可されている。
【0006】
COMPASSTM(トリフロキシストロビン;(αE)−α(メトキシイミノ)−2−[[[(E)−[1−[3−(トリフルオロメチルフェニル]エチリジン]−アミノ]オキシ]メチル]ベンゼン酢酸メチルエステル)は、芝草における斑点病、フザリウムパッチ病及びブラウンパッチ病の防除に関して認可されている芳香族ジオキシム系殺菌剤である。トリフロキシストロビンは、キノン外部阻害薬(quinone outside inhibitor)(QoI)であって、米国特許第5,238,956号に記載されている芳香族ジオキシム系殺菌剤の部類の一員である。
【0007】
ROVRAL GREEN GTTM(イプロジオン;3−(3,5−ジクロロフェニル)−N−(1−メチルエチル)−2,4−ジオキソ−1−イミダゾリジンカルボキシイミド)は、250mL/100mの薬量で紅色雪腐病(pink snow mold)を防除するための、及び、375mL/100mの薬量で雪腐褐色小粒菌核病(gray snow mould)を防除するための、ジカルボキシイミド系殺菌剤である。イプロジオンは、米国特許第3,755,350号に記載されている3−フェニルヒダントイン化合物の部類の一員である。
【0008】
芝草における雪腐病〔特に、雪腐褐色小粒菌核病 チフラ・インカルナタ(Typhula incarnata)、及び、チフラ・イシカリエンシス(Typhula ishikariensis)〕の蔓延を防除するイプロジオンの効力は、菌類接種源の変動する量、雪腐病接種菌がその下で増殖する積雪の変動する期間及び全国各地の毎年の変動する冬季気温に起因して、非常に変わりやすい。かくして、ある範囲の雪腐病菌類を効果的に防除するためには、比較的高い薬量及び複数回の施用が必要とされ得る。
【0009】
フタロシアニン類は、インク用及びコーティング用の顔料や芝草塗料用の顔料など、多くの用途を有する既知顔料である。例えば、DE 2,511,077及びJP 03/221576を参照されたい。銅フタロシアニンは、芝生の品質を高めるために使用されてきたが、それは、別の特定の活性成分との組合せにおいてのみ使用されてきた。例えば、米国特許第5,599,804号には、特定のフタロシアニン類を特定の比率で亜リン酸若しくはそのアルカリ土類金属塩と組み合わせて又は亜リン酸の特定のモノエステル塩と組み合わせて施用することによって芝草における菌類と闘う方法及び芝生の品質を高める方法が記載されている。米国特許第5,643,852号には、特定のフタロシアニン類を特定の比率で(i)亜リン酸若しくはそのアルカリ土類金属塩又は亜リン酸の特定のモノエステル塩及び(ii)特定のエチレンビスジチオカルバメート系接触殺菌剤と組み合わせて施用することによって芝草における芝生の品質を高める方法が記載されている。米国特許第5,336,661号には、(i)亜リン酸の特定のモノエステル塩及び(ii)金属性エチレンビスジチオカルバメート系接触殺菌剤を特定の比率で施用することによってベントグラスを処理する方法及び芝生の品質を高める方法が記載されている。この特許には、さらにまた、アルミニウムトリス(O−エチルホスホネート)(ホセチル−Al)とマンガン−亜鉛エチレンビスジチオカルバメート錯体(マンゼブ)の組合せを含んでいて特定の形態(FORE殺菌剤)で使用される特定の組成物も記載されており、ここで、この組成物は、未知量のフタロシアニン化合物「Pigment Blue 15」を含んでいたものと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5,238,956号明細書
【特許文献2】米国特許第3,755,350号明細書
【特許文献3】DE2,511,077
【特許文献4】特開2003−221576号公報
【特許文献5】米国特許第5,599,804号明細書
【特許文献6】米国特許第5,643,852号明細書
【特許文献7】米国特許第5,336,661号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
例えば、活性スペクトル、毒性、選択性、施用量、残留物の形成及び望ましい製造などに関して、現在の殺菌剤に対する生態学的要請及び経済学的要請は絶えず増えているので、並びに、さらに、例えば、抵抗性に関する問題も存在し得るので、少なくとも幾つかの領域において上記不利点を克服するのに役立つ新規殺菌剤を開発することが絶えず求められている。
【0012】
本発明は、少なくとも幾つかの局面で上記目的を達成する活性化合物組合せ又は組成物を提供する。
【0013】
驚くべきことに、本発明による活性化合物組合せ又は組成物が、個々の成分の活性の相加効果を示すのみではなく、相乗効果も示すということが分かった。従って、第1に、個々の物質の慣習的な施用量を低減させることが可能である。第2に、本発明による活性化合物組合せは、個々の化合物が、それらに関する限りもはや(充分な)活性を示さないような量で使用された場合でさえ、植物病原体に対して高い活性を示す。原理上は、これによって、第1に、活性スペクトルを拡大することが可能となり、及び、第2に、取扱い中の安全性が向上し得る。
【0014】
本発明の活性化合物組合せは、相乗的な殺菌活性に加えて、例えば以下のような広い意味で同様に相乗的と呼ぶことが可能な驚くべきさらなる特性も有している:例えば植物病害の抵抗性病原体に対する、活性スペクトルの拡大;活性化合物の低減された施用量;当該個々の化合物が全く活性を示さないか又は実質的に活性を示さない施用量であっても、本発明の活性化合物組合せを用いて害虫が充分に防除されること;製剤中又は使用中(例えば、粉砕中、篩い分け中、乳化中、溶解中又は施用中など)における有利な挙動;向上した貯蔵安定性及び/又は光安定性;有利な残留物形成;改善された毒物学的又は環境毒物学的な挙動;植物の改善された特性、例えば、向上された成長、増加した収穫高、より良好に発達した根系、大きくなった葉面積、より緑色になった葉、より強くなった苗条、少なくなった必要とされる種子、低減された植物毒性、植物の防御システムの動員、植物との良好な適合性。かくして、本発明による活性化合物組合せ又は組成物を使用することは、幼植物の茎を健康に維持することに大きく貢献する。このことは、例えば、処理された穀物種子が冬季に生き残るのを増大させ、さらに、品質及び収量も保護する。さらに、本発明による活性化合物組合せは、浸透移行性の増強に寄与し得る。たとえ当該組合せの個々の化合物が充分な浸透移行特性を有していなくても、本発明による活性化合物組合せは、この浸透移行特性を有し得る。同様に、本発明による活性化合物組合せは、その殺菌作用のより高い持続性ももたらし得る。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(A)少なくとも1種類のフタロシアニン顔料;
並びに、
(B)
(i)少なくとも1種類のQoI阻害薬殺菌剤;及び、
(ii)接触殺菌剤と
(iii)DMI−殺菌剤からなる群から選択される少なくとも1種類の殺菌剤;
を含んでいる活性化合物組合せが同種の殺菌剤を含んでいるが当該顔料は含んでいない組成物よりも優れた菌類防除能力を示すということが見いだされた。
【発明を実施するための形態】
【0016】
QoI阻害薬 殺菌剤(i)としては、アゾキシストロビン、エネストロビン、ピコキシストロビン、ピラクロストロビン、クレソキシム−メチル、トリフロキシストロビン、ジモキシストロビン、メトミノストロビン、オリサストロビン、ファモキサドン、フルオキサストロビン、フェンアミドン、ピリベンカルブなどがあり、好ましいのは、アゾキシストロビン、ピラクロストロビン、トリフロキシストロビン及びフルオキサストロビンであり、特に好ましいのは、トリフロキシストロビンである。
【0017】
接触殺菌剤(ii)としては、PP−殺菌剤〔例えば、フルジオキシニル〕、ジカルボイミド系〔例えば、イプロジオン、クロゾリネート、プロシミドン、及び、ビンクロゾリン〕、AH−殺菌剤〔例えば、ビフェニル、クロロネブ、ジクロラン、キントゼン(PCNB)、テクナゼン(TCNB)、及び、トルクロホス−メチル〕、ジチオカーバメート系〔例えば、ファーバム、マンゼブ、マンネブ、メチラム、プロピネブ、チウラム、ジネブ、及び、ジラム〕、フタルイミド系〔例えば、キャプタン、カプタホール、及び、ホルペット〕、クロロニトリル系〔例えば、クロロタロニル〕、スルファミド系〔例えば、ジクロフルアニド、及び、トリルフルアニド〕、グアニジン系〔例えば、ドジン、グアザチン、及び、イミノクタジン〕、トリアジン系〔例えば、アニラジン〕、キノン系〔例えば、ジチアノン〕、ペンシクロン(pencyuron)、バリダマイシン、無機殺菌剤〔例えば、銅及び硫黄製品〕などがある。好ましい接触殺菌剤は、イプロジオン、フルジオキシニル及びクロロタロニルであり、特に好ましいのは、それらの作用機序がシグナル伝達に関与するイプロジオン、及び、フルジオキシニルである。
【0018】
DMI−殺菌剤(脱メチル化反応阻害薬)としては、トリアゾール系、例えば、アザコナゾール、ビテルタノール、ブロムコナゾール、シプロコナゾール、ジフェノコナゾール、ジニコナゾール、ジニコナゾール−M、エポキシコナゾール、エタコナゾール、フェンブコナゾール、フルキンコナゾール、フルシラゾール、フルトリアホール、ヘキサコナゾール、イミベンコナゾール、イプコナゾール、メトコナゾール、ミクロブタニル、ペンコナゾール、プロピコナゾール、プロチオコナゾール、シメコナゾール、テブコナゾール、テトラコナゾール、トリアジメホン、トリアジメノール及びトリチコナゾールなどがあり、好ましいのは、プロチオコナゾール、テブコナゾール、プロピコナゾール及びトリチコナゾールであり、特に好ましいのは、プロピコナゾール及びトリチコナゾールである。
【0019】
好ましくは、本発明による組成物は、化合物(B)として、(i)トリフロキシストロビン(QoI阻害薬 殺菌剤として)、(ii)イプロジオン(接触殺菌剤として)及び(iii)トリチコナゾール(DMI−殺菌剤として)を含んでいる。最も好ましくは、本発明による組成物は、(i)トリフロキシストロビン(QoI阻害薬 殺菌剤として)及び(ii)イプロジオン(接触殺菌剤として)を含んでいる。
【0020】
適切な顔料(A)としては、フタロシアニン類などがある。
【0021】
適切なフタロシアニン類は、各イソインドール基が独立して1〜4回置換され得る置換銅フタロシアニン類である。銅フタロシアニン染料のイソインドール基に対して適している置換基の例としては、限定するものではないが、ハロゲン、置換されているか又は置換されていない低級アルキル、低級アルコキシ、アルキルアミノ、アルキルチオ、アンモニウム、スルホナト、スルホナトアルキル、スルフェート、ホスフェート、ホスホネート及びカルボキシレートなどを挙げることができる。イオン性置換基又はイオン化可能な置換基は、対イオンとして、アルカリ金属(好ましくは、リチウム、ナトリウム、又は、カリウム)、アルカリ土類金属(好ましくは、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、及び、バリウム)及び種々のアンモニウムイオンを有することができる。用語「低級アルキル」及び「低級アルコキシ」は、一般に、1〜6個の炭素原子からなるアルキル基及び1〜6個の炭素原子からなるアルコキシ基を意味する。
【0022】
適切な銅フタロシアニン類は、市販されている。そのような適切な銅フタロシアニン類としては、限定するものではないが、「Pigment Blue 16」、「Vat Blue 29」、「Pigment Blue 15」、「Heliogen Green GG」、「Ingrain Blue 14」、「Ingrain Blue 5」、「Ingrain Blue 1」、「Pigment Green 37」及び「Pigment Green 7」などを挙げることができる。好ましい一実施形態では、該銅フタロシアニンは、「Pigment Blue 15」(これは、フタロシアニンブルーとしても知られている)及び「Green pigment」(Green 7)である。
【0023】
好ましくは、本発明による組成物は、成分(A)として、「Green pigment」(Green 7)を含んでいる。
【0024】
本発明によれば、用語「活性化合物組合せ」は、上記で示されている活性化合物の可能なさまざまな組合せ、例えば、レディーミックス、タンクミックス(これは、施用に先立って個々の活性化合物の製剤から、混合及び希釈によって調製される噴霧用混合物を意味するものと理解される)又はそれらの組合せ(例えば、上記で記載されている活性化合物のうちの2種類からなる2成分レディーミックスを別個の第3の物質の製剤を用いてタンクミックスに変換する)。本発明によれば、個々の活性化合物は、数時間又は数日という適切に期間内に、連続的に(即ち、順次に)使用してもよく、また、種子処理の場合には、例えば、異なった活性化合物を含んでいる複数の層を塗布することによっても使用することができる。好ましくは、当該個々の活性化合物を使用し得る順番は、重要ではない。
【0025】
本発明は、さらに、本発明による活性化合物組合せを含んでいる組成物にも関する。好ましくは、該組成物は、農業上適切な担体又は増量剤を含んでいる殺菌剤組成物である。
【0026】
本発明によれば、担体は、特に植物又は植物の部分又は種子への施用に関して、適用性を良好にするために、当該活性化合物と混合されるか又は組み合わされる天然又は合成の有機物質又は無機物質を意味するものと理解される。このような担体は、固体又は液体であり得るが、一般に、不活性であり、そして、農業において使用するのに適しているべきである。
【0027】
適切な固体担体は、以下のものである:例えば、アンモニウム塩、及び、粉砕された天然鉱物、例えば、カオリン、クレー、タルク、チョーク、石英、アタパルジャイト、モンモリロナイト又はケイ藻土、及び、粉砕された合成鉱物、例えば、微粉砕シリカ、アルミナ、及び、天然シリケート又は合成シリケート、樹脂、蝋、固形肥料、水、アルコール(特に、ブタノール)、有機溶媒、鉱油及び植物油、並びに、さらに、それらの誘導体。上記担体の混合物を使用することも可能である。粒剤に適している固体担体は、以下のものである:例えば、粉砕して分別した天然鉱物、例えば、方解石、大理石、軽石、海泡石及び苦灰岩、並びに、さらに、無機及び有機の粗挽き粉からなる合成顆粒、並びに、さらに、有機材料、例えば、おがくず、ココナッツ殻、トウモロコシ穂軸及びタバコの葉柄などからなる顆粒。適切な乳化剤及び/又は泡形成剤は、以下のものである:例えば、非イオン性及びアニオン性の乳化剤、例えば、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル類、例えば、アルキルアリールポリグリコールエーテル類、アルキルスルホネート類、アルキルスルフェート類、アリールスルホネート類、及び、さらに、タンパク質加水分解物。適切な分散剤は、以下のものである:例えば、リグノスルファイト廃液及びメチルセルロース。
【0028】
適切な液化ガス増量剤又は担体は、周囲温度及び大気圧下では気体である液体、例えば、エーロゾル噴射剤、例えば、ブタン、プロパン、窒素及び二酸化炭素などである。
【0029】
上記製剤において、粘着付与剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、並びに、粉末及び顆粒及びラテックスの形態にある天然ポリマー及び合成ポリマー、例えば、アラビアゴム、ポリビニルアルコール及びポリ酢酸ビニル、又は、天然のリン脂質、例えば、セファリン及びレシチン、及び、合成リン脂質などを使用することができる。可能な別の添加剤は、鉱油及び植物油である。
【0030】
使用する増量剤が水である場合、例えば有機溶媒を補助溶媒として使用することもできる。適する液体溶媒は、本質的に以下のものである:芳香族化合物、例えば、キシレン、トルエン又はアルキルナフタレン類、塩素化芳香族化合物又は塩素化脂肪族炭化水素、例えば、クロロベンゼン類、クロロエチレン類又は塩化メチレン、脂肪族炭化水素、例えば、シクロヘキサン又はパラフィン類、例えば、鉱油留分、鉱油及び植物油、アルコール類、例えば、ブタノール又はグリコールとそれらのエーテル及びエステル、ケトン類、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン又はシクロヘキサノン、強極性溶媒、例えば、ジメチルホルムアミド及びジメチルスルホキシド、並びに、さらに、水。
【0031】
本発明の組成物には、例えば界面活性剤などの、さらなる成分も付加的に含有させることができる。適切な界面活性剤は、イオン特性若しくは非イオン特性を有する乳化剤、分散剤又は湿潤剤であるか、又は、そのような界面活性剤の混合物である。これらのものの例は、ポリアクリル酸の塩、リグノスルホン酸の塩、フェノールスルホン酸若しくはナフタレンスルホン酸の塩、エチレンオキシドと脂肪アルコールの重縮合物若しくはエチレンオキシドと脂肪酸の重縮合物若しくはエチレンオキシドと脂肪アミンの重縮合物、置換されているフェノール(好ましくは、アルキルフェノール又はアリールフェノール)、スルホコハク酸エステルの塩、タウリン誘導体(好ましくは、アルキルタウレート)、ポリエトキシル化アルコールのリン酸エステル若しくはポリエトキシル化フェノールのリン酸エステル、ポリオールの脂肪酸エステル、並びに、硫酸アニオン、スルホン酸アニオン及びリン酸アニオンを含んでいる該化合物の誘導体である。該活性化合物のうちの1種類及び/又は該不活性担体のうちの1種類が水不溶性であり及び施用が水で行われる場合は、界面活性剤を存在させることが必要である。界面活性剤の割合は、本発明組成物の5重量%〜40重量%である。
【0032】
着色剤、例えば、無機顔料、例えば、酸化鉄、酸化チタン及びプルシアンブルー(Prussian blue)、並びに、有機染料、例えば、アリザリン染料、アゾ染料及び金属フタロシアニン染料、並びに、微量栄養素、例えば、鉄塩、マンガン塩、ホウ素塩、銅塩、コバルト塩、モリブデン塩及び亜鉛塩などを使用することができる。
【0033】
適切な場合には、付加的な別の成分、例えば、保護コロイド、結合剤、粘着剤、増粘剤、揺変物質、浸透剤、安定化剤、金属イオン封鎖剤、錯体形成物質なども存在させることができる。一般的に、該活性化合物は、製剤目的で慣習的に使用される固体又は液体の任意の添加剤と組み合わせることが可能である。
【0034】
一般に、本発明による組成物は、0.05〜99重量%、好ましくは、5〜60重量%、特に好ましくは、10〜40重量%、極めて特に好ましくは、20〜30重量%の本発明による活性化合物組合せを含有する。
【0035】
別の態様によれば、本発明による組成物は、2〜10重量%、好ましくは、4〜9重量%、特に好ましくは、5〜7重量%の化合物(A)、1〜3.3重量%、好ましくは、1.0〜2.5重量%、特に好ましくは、1.2〜2.0重量%の化合物(Bi)、並びに、20〜50重量%、好ましくは、20〜40重量%、特に好ましくは、20〜30重量%の化合物(Bii)及び/又は化合物(Biii)を含有する(ここで、これら化合物の合計は100重量%になる)。
【0036】
本発明による殺菌剤組成物は、植物病原性菌類を治療的に又は保護的に防除するために使用することができる。本発明による組成物は、健康な芝生又は病気にかかっている芝生に施用することができる。健康な芝生への予防的な施用は、芝生の病害の防除において有用であり得る。1以上の芝生病害を含んでいる芝生への施用は、当該1以上の芝生病害の治療において有用である。本発明によって治療することが可能な菌類病の数種類の病原体について例として挙げることができるが、限定するものではない:
春季、夏期及び秋期の病害:ダラースポット〔ランジア属種(Lanzia.spp.)、及び、モエレロディスクス属種(Moelleiodiscus spp.)〕、ブラウンパッチ〔リゾクトニア・ソラニイ(Rhizoctonia solalii)〕、ラージパッチ〔リゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)〕、ラピッドブライト、さび病〔プッシニア属種(Puccinia spp.)〕、フザリウムブライト〔フザリウム属種(Fusarium spp.)〕、ピンクパッチ、カーブラリア〔クルブラリア属種(Curvularia sp.)〕、及び、壊疽輪紋病〔レプトスファエリア・コラエ(Leptosphaeria korrae)〕、葉枯病、例えば、ドレクスレラ属種(Drechslera spp.)病原菌に起因するヘルミントスポリウム葉枯病、コルチクム(Corticum)赤葉腐病〔ラエチサリア・フシホルミス(Laetisaria fuciformis)〕、及び、炭疽病〔コレトトリクム(Colletotrichum)〕;
冬季の病害:フザリウムパッチ(紅色雪腐病〔ミクロドキウム・ニバリス(Microdochium nivalis)〕)、及び、雪腐褐色小粒菌核病〔チフラ属種(Typhula spp.)〕、紅色雪腐病〔フザリウム・ニバレ(Fusarium nivale)〕。
【0037】
記載されている該組成物は、春に積雪から解放された後における芝生の品質を改善させるのにも有用である。
【0038】
本発明による殺菌剤組成物は、ゴルフコース、芝農園(sod farm)及び高品質の芝生が栽培されている施設の区域における芝草の病害を防除するために使用することができる。
【0039】
本発明による活性化合物組合せ又は組成物は、そのままで使用することが可能であるか、又は、それらのそれぞれの物理的及び/若しくは化学的特性に応じて、以下のようなそれらの製剤の形態若しくはその製剤から調製される使用形態で使用することが可能である:エーロゾル、カプセル懸濁液剤、冷煙霧濃厚剤(cold−fogging concentrate)、温煙霧濃厚剤(warm−fogging concentrate)、カプセル化粒剤、細粒剤、種子処理用フロアブル剤、即時使用可能な溶液剤(ready−to−use solution)、散粉性粉剤、乳剤、水中油型エマルション剤、油中水型エマルション剤、大型粒剤、微粒剤、油分散性粉剤、油混和性フロアブル剤、油混和性液剤、泡剤(foam)、ペースト剤、農薬粉衣種子、懸濁製剤(suspension concentrate)、サスポエマルション製剤、可溶性濃厚剤(soluble concentrate)、懸濁液剤(suspension)、水和剤(wettable powder)、可溶性粉剤(soluble powder)、粉剤及び粒剤、水溶性顆粒剤及び錠剤、種子処理用水溶性粉剤、水和剤(wettable powder)、活性化合物が含浸されている天然生成物及び合成物質、並びに、さらに、ポリマー物質中にマイクロカプセル化したもの及び種子用のコーティング物質中にマイクロカプセル化したもの、並びに、さらに、ULV冷煙霧製剤(ULV cold−fogging formulation)及びULV温煙霧製剤(ULV warm−fogging formulation)。
【0040】
上記製剤は、自体公知の方法で、例えば、当該活性化合物又は当該活性化合物組合せを少なくとも1種類の溶媒又は希釈剤、乳化剤、分散剤及び/又は結合剤又は固着剤、撥水剤、適切な乾燥剤並びに紫外線安定剤、並びに、適切な場合には、染料及び顔料、並びに、さらに、さらなる加工助剤と混合させることによって、調製することができる。
【0041】
上記活性化合物組合せ又は組成物を用いた植物及び植物の部分の本発明による処理は、慣習的な処理方法を用いて、例えば、浸漬、散布、噴霧、灌漑、気化、散粉、煙霧、ばらまき、泡状化、塗布、拡散(spreading−on)、灌水(灌注(drenching))、点滴潅漑などによって、直接的に行うか、又は、該活性化合物組合せ又は該組成物を植物及び植物の部分の周囲、生息環境若しくは貯蔵空間に作用させることにより行い、また、繁殖器官(propagation material)の場合、特に種子の場合は、さらに、乾燥種子処理用粉末、種子処理用溶液、スラリー処理用水溶性粉末として、被覆することによって、1層以上のコーティングを施すことなどによっても行う。
【0042】
本発明による組成物には、適切な装置を用いて植物又は種子に対して施用可能な即時使用可能な(ready−to−use)組成物のみではなく、使用前に水で希釈することが必要な商業的な濃厚物も包含される。
【0043】
本発明による活性化合物組合せは、商業用製剤の中に、及び、そのような製剤から調製された使用形態の中に、殺虫剤、誘引剤、不妊剤、殺細菌剤、殺ダニ剤、殺線虫剤、殺菌剤、成長調節剤又は除草剤などの別の活性化合物との混合物として存在することができる。
【0044】
本発明は、寒地型芝草と暖地型芝草を包含する全ての芝草で実施可能である。寒地型芝草の例は、以下のものである:イチゴツナギ類(イチゴツナギ属種(Poa spp.))、例えば、ナガハグサ(Poa pratensis L)、オオスズメノカタビラ(Poa trivialis L.)、コイチゴツナギ(Poa compressa L.)、スズメノカタビラ(Poa annua L.)、アップランドブルーグラス(upland bluegrass)(Poa glaucantha Gaudin)、ウッドブルーグラス(wood bluegrass)(Poa nemoralis L.)、及び、ムカゴイチゴツナギ(bulbous bluegrass)(Poa bulbosa L.);ベントグラス類及びコヌカグサ(コヌカグサ属種(Agrostis spp.))、例えば、クリーピングベントグラス(Agrostis palustris Huds.)、イトコヌカグサ(Agrostis tenuis Sibth.)、ベルベットベントグラス(Agrostis canina L.)、サウスジャーマンミックスドベントグラス(South German Mixed Bentgrass)(コヌカグサ属種(Agrostis spp.)〔これは、イトコヌカグサ(Agrostis tenuis Sibth.)、ベルベットベントグラス(Agrostis canina L.)及びクリーピングベントグラス(Agrostis palustris Huds.)を含んでいる〕、及び、コヌカグサ(Agrostis alba L.);ウシノケグサ類(fescues)(フェスツク属種(Festucu spp.))、例えば、レッドフェスク(red fescue)(Festuca rubra L. spp. rubra)、クリーピングフェスク(creeping fescue)(Festuca rubra L.)、チューイングスフェスク(chewings fescue)(Festuca rubra commutata Gaud.)、シープフェスク(sheep fescue)(Festuca ovina L.)、ハードフェスク(hard fescue)(Festuca longifolia Thuill.)、ヘアフェスク(hair fescue)(Festucu capillata Lam.)、オニウシノケグサ(Festuca arundinacea Schreb.)、及び、メドウフェスク(meadow fescue)(Festuca elanor L.);ライグラス類(ドクムギ属種(Lolium spp.))、例えば、1年生ライグラス(annual ryegrass)(Lolium multiflorum Lam.)、ホソムギ(Lolium perenne L.)、及び、ネズミムギ(Lolium multiflorum Lam.);並びに、カモジグサ類(カモジグサ属種(Agropyron spp.))、例えば、フェアウェイウィートグラス(fairway wheatgrass)(Agropyron cristatum(L.)Gaertn.)、ニセコムギダマシ(crested wheatgrass)(Agropyron desertorum(Fisch.)Schult.)、及び、ウェスタンウィートグラス(western wheatgrass)(Agropyron smithii Rydb.)。他の寒地型芝草としては、以下のものを挙げることが出来る:オオハマガヤ(beachgrass)(Ammophila breviligulata Fern.)、コスズメノチャヒキ(Bromus inermis Leyss.)、ガマ類、例えば、オオアワガエリ(Phleum pratense L.)、サンドカットテイル(sand cattail)(Phleum subulatum L.)、カモガヤ(Dactylis glomerata L.)、アレチタチドジョウツナギ(weeping alkaligrass)(Puccinellia distans(L.)Parl.)、及び、クシガヤ(crested dog’s−tail)(Cynosurus cristatus L.)。
【0045】
暖地型芝草の例としては、以下のものを挙げることが出来る:ギョウギシバ(Cynodon spp. L. C. Rich)、シバ(Zoysia spp. Willd.)、イヌシバ(St. Augustinegrass)(Stenotaphrum secundatum Walt Kuntze)、チャボウシノシッペイ(Eremochloa ophiuroides Munro Hack.)、ホソバツルメヒシバ(Axonopus affinis Chase)、アメリカスズメノヒエ(Paspalum notatum Flugge)、キクユグラス(Pennisetum clandestinum Hochst. ex Chiov.)、ヤギュウシバ(Buchloe dactyloids(Nutt.)Engelm.)、メダカスゲ(Blue gramma)(Bouteloua gracilis(H.B.K.)Lag. ex Griffiths)、サワスズメノヒエ(Paspalum vaginatum Swartz)、及び、アゼガヤモドキ(sideoats grama)(Bouteloua curtipendula(Michx. Torr.)。寒地型芝草が、一般に、本発明によって処理するのが好ましい。イチゴツナギ、ベントグラス及びコヌカグサ、フェスク並びにライグラスがさらに好ましい。ベントグラスが最も好ましい。
【0046】
本発明による活性化合物組合せの施用量は、葉を処理する場合、以下のとおりである:100〜10000g/ha、好ましくは、1000〜5500g/ha、特に好ましくは、1000〜3500g/ha(当該施用が、灌水又は滴下によって行われる場合、施用量を低減することが可能であり、特に、ロックウール又はパーライトなどの不活性底土が使用される場合は、施用量を低減することが可能である)。
【0047】
これらの施用量は、例としてのみ挙げられており、本発明の意味において限定を目的とするものではない。
【0048】
本発明による活性化合物組合せ又は組成物は、かくして、処理後特定の期間、上記病原体による攻撃に対して植物を保護するために使用することができる。保護がもたらされる期間は、当該活性化合物で植物を処理した後、一般に、1〜28日、好ましくは、1〜14日に及び、又は、種子処理後、最大で200日間に及ぶ。
【0049】
本発明による活性化合物組合せの良好な殺菌活性について、下記実施例によって実証する。個々の活性化合物の殺菌活性は弱いが、該組合せは、活性を単に加えたものを超えた活性を示す。
【0050】
殺菌剤において、2種又は3種の活性化合物の所与の組合せの殺菌活性が当該活性化合物組合せに関してS.R.Colby(”Calculating Synergistic and Antagonistic Responses of Herbicide Combination”, Weeds 196715, 20−22)に従って以下のように計算された期待される活性よりも高い場合、相乗効果が常に存在している:
Xは、活性化合物Aを(g/ha)の施用量で使用した場合の効力であり;
Yは、活性化合物Bを(g/ha)の施用量で使用した場合の効力であり;
は、活性化合物A及び活性化合物Bをそれぞれ(g/ha)及び(g/ha)の施用量で使用した場合の効力である;
とした場合、
2は、活性化合物A、B及びCをそれぞれ(g/ha)、(g/ha)、及び(g/ha)の施用量で使用した場合の効力である;
【0051】
【数1】

又は
【0052】
【数2】

ここで、該効力は%で測定される。0%は、対象の効力に相当する効力を意味し、100%の効力は、感染が観察されないことを意味する。
【0053】
実際の殺菌活性が計算された活性よりも高い場合、当該組合せの活性は相加的なものを超えていてる。即ち、相乗効果が存在している。この場合、実際に観察された効力は、期待される効力Eについて上記式を用いて計算した値よりも高くなければならない。
【0054】
本発明について、下記実施例によって例証する。(しかしながら、本発明は、該実施例に限定されない。)
【実施例】
【0055】
顔料と一緒にQoI阻害薬殺菌剤及び接触殺菌剤及び脱メチル化反応阻害薬を含んでいる種々の組成物が含量を含まずに3種類の殺菌剤を含んでいる組成物よりも優れていることを確認するために、以下の場所において試験を行った:1.マサチューセッツ大学(場所:Vermont);2.ウィスコンシン大学(場所:Sentry);3.ウィスコンシン大学(場所:Iron Mountain);4.ウィスコンシン大学(場所:Champion MI);5.ウィスコンシン大学(場所:Edina MN);6.オレゴン州立大学(場所:Sun River);7.ワシントン州立大学(場所:McCall);8.ワシントン州立大学(場所:Chewelah);及び、9.ワシントン州立大学(場所:Pullman)。
【0056】
記載されている組成物を施用するための一般的な手順は、次の通りである。処理区画は、例えば、無作為完全乱塊法における、6フィート×7フィート(3.8m)の3反復であった。処理は、10月下旬から11月中旬にかけて実施した。幾つかの例では、該組成物は、11008フラットファンTeeJetノズルを有する二輪自走式CO加圧(40psi=2.8バール)スプレーヤーを用いて、80GPAで施用した。
【0057】
幾つかの場所は、冬季を通して断続的な積雪が有り、連続的な積雪の期間もあった。雪が溶けた直後、又は、雪を機械的に除去した直後、紅色雪腐病(M.nivale)及び/又は雪腐褐色小粒菌核病(Typhula spp.)の発病度(感染面積(%))並びに芝草品質(1〜9の尺度に基づいた評価:9が最も優れている)について、個々の区画を評価した。
【0058】
表1は、雪腐病を防除するために組み合わされた3種類の殺菌剤の顔料を全く含んでいない標準的な組合せ〔SYNGENTA製INSTRATA(登録商標)〕との比較で、種々の量のQoI阻害薬殺菌剤(トリフロキシストロビン)及び接触殺菌剤(イプロジオン)及び脱メチル化反応阻害薬(トリチコナゾール)並びに顔料(フタロシアニン Green pigment)を含んでいる組成物の芝生の品質(TQ)又は芝生の色(TC)に対する効果について示している。尺度は、1〜9(1=劣っている、及び、9=優れている)。INSTRATA(登録商標)は、顔料を全く含まずに3種類の殺菌剤を含んでいる雪腐病用の製品であるので、対照として使用した。
【0059】
【表1】

【0060】
A+B+C+Dを含んでいる組成物は、INSTRATA(登録商標)+顔料の等価物である。言い換えれば、そのような組成物を使用することで、3種類の殺菌剤のみを含んでいる(即ち、含量を含んでいない)組成物に対する顔料と一緒に3種類の殺菌剤を含んでいる組成物の優れた効果を実証するために、直接的な比較を実施することができる。結果は、顔料と一緒に3種類の殺菌剤を含んでいる組成物が使用された全ての場所において、TQ及びTCがINSTRATA(登録商標)よりも優れているということを示している。このことは、顔料と一緒に3種類の殺菌剤を含んでいる組成物を使用する場合、INSTRATA(登録商標)を使用する場合よりも、芝生の回復が良好であり及び良い状態に見えるということを意味している。
【0061】
場所9(組成物は、2種類の殺菌剤(A+B)とCを含んでいる)の結果は、2種類の殺菌剤と顔料からなる組成物が、INSTRATA(登録商標)よりも僅かに優れているとまではいかないが、INSTRATA(登録商標)と少なくとも同様に良好であるということを示している。このことは、INSTRATA(登録商標)が3種類の殺菌剤を含んでいる(顔料は含んでいない)ので、驚くべきことである。言い換えれば、2種類の殺菌剤と顔料を使用することにより、3種類の殺菌剤を使用した場合と同様の効果を達成することができる。
【0062】
表2は、INSTRATA(登録商標)との比較で、種々の量のQoI阻害薬殺菌剤(トリフロキシストロビン)及び接触殺菌剤(イプロジオン)及び脱メチル化反応阻害薬(トリチコナゾール)並びに顔料(フタロシアニン Green pigment)を含んでいる組成物の%病害発生(disease infestation)に対する効果について、場所毎に示している。
【0063】
【表2】

【0064】
表2の結果は、顔料と一緒に3種類の殺菌剤を含んでいる組成物がINSTRATA(登録商標)とほぼ同様の病害発生割合(%)を治療することを示している。言い換えれば、開示されている組成物は、菌類の駆除において、INSTRATA(登録商標)と同程度に有効である。フタロシアニンなどの顔料を付加的に含んでいる組成物の優れた利点としては、以下のものを挙げることができる:冬季が終わって春季の深緑の期間における芝生のより良好な回復;芝生のより良好な健康状態;及び、より良好な美観(芝生が視覚的により良好に見える)。
【0065】
該QoI阻害薬殺菌剤、接触殺菌剤、脱メチル化反応阻害薬及び顔料は、組成物の中で任意の比率で存在させることができる。適切な比率の例が表3に示されている。
【0066】
【表3】

【0067】
トリフロキシストロビンとイプロジオンとフタロシアニン Green pigmentの代表的な別の組成としては、表4に示されている組成などがある(これらは、水に懸濁されている)。
【0068】
【表4】

【0069】
表5は、1.47g/Lのトリフロキシストロビンと29.41g/Lのイプロジオンと3.14g/Lのトリチコナゾールと6g/Lのフタロシアニンを含んでいる組成物の市販されているINSTRATA(登録商標)の溶液よりも優れた効果について示している。上記4成分組成物及びINSTRATA(登録商標)は、「Westmount Golf & Country Club」(Kitchener, Ontario, Canada)において、ベントグラス/Poa区画に施用した。
【0070】
【表5】

【0071】
上記結果に示されているように、トリフロキシストロビンとイプロジオンとトリチコナゾールとフタロシアニンからなる4成分組成物の施用は、INSTRATA(登録商標)よりも優れている。当該4成分組成物は、INSTRATA(登録商標)よりも優れた病害防除(病害に冒された面積(%)により測定)を提供する〔2%に対して0%〕のみではなく、TQも6.6に対して8.7〜9と優れている。さらに、INSTRATA(登録商標)(300mL/m)に対して著しく少ない量の当該組成物(100mL/100m〜177.5mL/m)を使用して、優れた結果を達成することができる。このことは、土壌中に施用される化学物質がより少ないという点で環境の観点から重要であるばかりではなく、費用がより少ないという点で経済的な観点からも重要である。
【0072】
理論に縛られるものではないが、さまざまな殺菌剤が顔料と相乗効果的に作用し、それによって、優れた効果が観察されるものと考えられる。
【0073】
さらなる試験を欧州で実施した。データは、以下に示されている。
【0074】
試験は、2種類の活性成分〔トリフロキシストロビン(QoI阻害薬殺菌剤)、及び、イプロジオン(接触殺菌剤)〕と顔料(フタロシアニン)の組合せの芝生の品質に対する効力及び効果について評価するために設計した。殺菌活性化合物は、2種類の異なった濃度で、個別的に施用したか、又は、組み合わせて(顔料は非含有)施用したか、又は、顔料も含ませて組み合わせて施用した。これらの処理を、市販されている標準的な製品と比較した。
【0075】
試験は、個々の病害に応じて、2008年にUK及びドイツのさまざまな場所で、7月末から12月初めの間に実施した。試験設計は、無作為完全乱塊法(4反復、及び、区画面積:4〜6.25m)であった。製品は、1ha当たり400〜500Lの水量での噴霧施用として施用した。施用には、ティージェットノズル又はフラットファンノズルを有する空気加圧噴霧器を使用し、2.2〜3.0バールで作動させた。28日間隔で、2回の施用を実施した。
【0076】
試験は、最初の施用後72日目まで、14〜28日間隔で評価した。芝生の病害:紅色雪腐病〔ミクロドキウム・ニバレ(Microdochium nivale)〕、さび病〔プッシニア属種(Puccinia spp.)〕、赤葉腐病〔ラエチサリア・フシホルミス(Laetisaria fuciformis)〕について、区画当たりの感染した草冠面積(%)として評価した。芝生の品質(色及び/又は密度)は、順序尺度に基づいて判断した。データは、全ての評価の平均として示される。
【0077】
表6は、顔料を全く含んでいない市販されている標準品〔SYNGENTA製DACONIL、及び、SYNGENTA製AMISTAR〕との比較で、種々の量のQoI阻害薬殺菌剤(トリフロキシストロビン)及び接触殺菌剤(イプロジオン)及び顔料(フタロシアニン Green pigment)を含んでいる組成物の芝生の品質(TQ)及び/又は芝生の色(TC)に対する効果について示している。データは、1〜9の尺度(1=劣っている、及び、9=優れている)で示されている。
【0078】
【表6】

【0079】
表6のデータは、化合物Aと化合物Bが化合物Cと組み合わされている区画において芝生の品質が改善されていることを示している。化合物Aと化合物Bの単独による処理及び組合せA+Bによる処理で達成された品質についての点数は、A+B+Cについての点数よりも低かった。この結果は、化合物Cを含有せず、達成された点数が同様に低い市販されている標準品についての点数によって支持される。
【0080】
表7は、DACONIL(登録商標)及びAMISTAR(登録商標)との比較で、種々の量のQoI阻害薬殺菌剤(トリフロキシストロビン)及び接触殺菌剤(イプロジオン)及び顔料(フタロシアニン Green pigment)を含んでいる組成物の%病害発生(disease infestation)に対する効果について、場所毎に示している。
【0081】
【表7】

【0082】
表7のデータは、化合物A+B+Cの組合せが、化合物A+Bのみの組合せ(顔料非含有)と比較して、芝生の病原菌〔プッシニア属種(Puccinia spp.)〕を良好に防除したことを示している。この効果は、化合物A+B+Cの組合せが低いa.i.濃度においてさえ化合物A+Bのみの組合せよりも優れているということが見いだされたことによって強調された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性化合物組合せであって、
(A)少なくとも1種類のフタロシアニン顔料;
並びに、
(B)
(i)少なくとも1種類のQoI阻害薬殺菌剤;及び、
(ii)接触殺菌剤と
(iii)DMI−殺菌剤からなる群から選択される少なくとも1種類の殺菌剤;
を含んでいる、前記活性化合物組合せ。
【請求項2】
化合物(B)として、(i)トリフロキシストロビン(QoI阻害薬殺菌剤として)、(ii)イプロジオン(接触殺菌剤として)及び(iii)トリチコナゾール(DMI−殺菌剤として)を含んでいる、請求項1に記載の活性化合物組合せ。
【請求項3】
化合物(B)として、(i)トリフロキシストロビン(QoI阻害薬殺菌剤として)及び(ii)イプロジオン(接触殺菌剤として)を含んでいる、請求項1に記載の活性化合物組合せ。
【請求項4】
成分(A)として、「Green pigment」(Green 7)を含んでいる、請求項1〜3のいずれかに記載の活性化合物組合せ。
【請求項5】
殺菌活性を有している、請求項1〜4のいずれかに記載の活性化合物組合せ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の活性化合物組合せを含んでいる組成物。
【請求項7】
さらに、助剤、溶媒、担体、界面活性剤又は増量剤を含んでいる、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
芝草の保護において植物病原性菌類を防除する方法であって、請求項1〜5のいずれかに記載の活性化合物組合せ又は請求項6若しくは7に記載の組成物を芝草に施用することを特徴とする、前記方法。
【請求項9】
春季に積雪から解放された後で芝生の品質を改善する方法であって、請求項1〜5のいずれかに記載の活性化合物組合せ又は請求項6若しくは7に記載の組成物を芝草に施用することを特徴とする、前記方法。
【請求項10】
化合物(A)、化合物(Bi)、化合物(Bii)及び化合物(Biii)を、同時に又は連続して施用することを特徴とする、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
芝草の処理において100〜10000g/haを使用することを特徴とする、請求項8〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
芝草の保護において望ましくない植物病原性菌類を防除するための、請求項1〜5のいずれかに記載の活性化合物組合せ又は請求項6若しくは7に記載の組成物の使用。
【請求項13】
春季に積雪から解放された後で芝生の品質を改善するための、請求項1〜5のいずれかに記載の活性化合物組合せ又は請求項6若しくは7に記載の組成物の使用。
【請求項14】
請求項1〜5のいずれかに記載の活性化合物組合せ又は請求項6若しくは7に記載の組成物で処理された芝草。

【公表番号】特表2012−526813(P2012−526813A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510815(P2012−510815)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/031239
【国際公開番号】WO2010/132169
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(506018237)バイエル・クロツプサイエンス・エル・ピー (16)
【Fターム(参考)】