説明

芝生用目砂擦込み装置

【課題】芝生用目砂擦込み装置として、芝生地面に大小の起伏があっても全体に均一な目砂擦込みを行え、構造的に極めて簡素であって低コストで製作でき、芝生保守に使用される様々な作業車に適用できるものを提供する。
【解決手段】作業車1の後部に、ばね鋼材からなる左右一対の支持シャフト2,2を介して取り付けられた横長の接地ブラシ3を備え、接地ブラシ3は、両支持シャフト2,2のばね弾性によって地面Gに対して押接するように構成されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフ場等の芝生地において、散布された目砂(目土ともいう)を芝草の間に擦り込むのに使用される目砂擦込み装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ゴルフ場等の芝生地では、芝生の根張りをよくするために、定期的に目砂を散布して芝草の間に擦り込むことが行われている。従来、このような目砂の擦込みを機械的に行う手段として、作業車によって擦込みマット(特許文献1)やブラシ枠(特許文献2〜4)を牽引する方法が汎用されている。また、作業車の車体下部にブラシ枠を垂直揺動可能に枢支すると共に、該ブラシ枠をコイルスプリングを介して芝生地面に押接するようにしたグリーン保守用作業装置も提案されている(特許文献5,6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−37605号公報
【特許文献2】特表平8−511435号公報
【特許文献3】特開平9−238505号公報
【特許文献4】特開平10−215604号公報
【特許文献5】実開平4−136005号公報
【特許文献6】特開平6−319302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、特にゴルフ場のグリーンには大小の起伏があるため、上記従来の擦込みマットやブラシ枠を作業車で牽引する方法では、作業車が起伏部分を通過する際に擦込みマットやブラシ枠が跳ね上がることが多く、これによって目砂の擦り込みが断続的になり、グリーン全体に均一な目砂擦込みを行えない上、擦込みが充分な部分と不充分な部分とで縞模様になって見栄えも悪化するという問題があった。また、上記提案のグリーン保守用作業装置では、ブラシ枠の跳ね上がりは抑制できるが、該ブラシ枠の取付部分が複雑な構造になる上、作業車として目砂擦込み専用の仕様を必要とするため、その製作コストならびに芝生地の管理コストが高く付くという難点があった。
【0005】
本発明は、上述の事情に鑑みて、芝生用目砂擦込み装置として、芝生地面に大小の起伏があっても全体に均一な目砂擦込みを行える上、構造的に極めて簡素であって低コストで製作できると共に、芝生保守に使用される様々な作業車に適用できるものを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための手段を図面の参照符号を付して示せば、請求項1の発明に係る芝生用目砂擦込み装置は、作業車1の後部に、ばね鋼材からなる左右一対の支持シャフト2,2を介して取り付けられた横長の接地ブラシ3を備え、接地ブラシ3は、両支持シャフト2,2のばね弾性によって地面Gに対して押接するように構成されてなるものとしている。
【0007】
請求項2の発明は、上記請求項1の芝生用目砂擦込み装置において、支持シャフト2は、その前端部2aで作業車1側に保持され、該作業車1の後方へ延出した後端部2bで接地ブラシ3を支持してなるものとしている。
【0008】
請求項3の発明は、上記請求項1又は2の芝生用目砂擦込み装置において、支持シャフト2の中間部が側面視ジグザグ状の複数段に曲成されてなるものとしている。
【0009】
請求項4の発明は、上記請求項1〜3の何れかの芝生用目砂擦込み装置において、支持シャフト2の上下傾動手段を備え、該支持シャフト2の上下傾動によって接地ブラシ3が接地状態と上方へ持ち上がった非接地状態とに転換する構成としている。
【発明の効果】
【0010】
次に本発明の効果について図面の参照符号を付して示す。まず請求項1の発明に係る芝生用目砂擦込み装置によれば、作業車1がゴルフ場のグリーンのように大小の起伏がある芝生地を走行しても、接地ブラシ3はばね力で地面に押接しているために跳ね上がりを生じない上、その接地位置と作業車1の位置とで地面の左右方向の傾斜が異なっていても、該接地ブラシ3が作業車1とは独立して地面の傾斜に追従して左右方向に傾動し、もって全体に均一な目砂擦込みを行える。しかも、接地ブラシ3を地面に押接させるばね力は、ばね鋼材からなる左右の支持シャフト2自体の弾性復元力によってもたらされ、別途にばね部材を用いる必要がないから、該接地ブラシ3の取付構造が極めて簡素になり、それだけ目砂擦込み機構部の組立製作コストが少なくて済む。
【0011】
請求項2の発明によれば、支持シャフト2が前端部2aで作業車1側に保持され、該作業車1の後方へ延出した後端部2bで接地ブラシ3を支持する構成であるから、既存車を含めて芝生保守に使用される様々な作業車に対し、その保守作業に支障がない形で該目砂擦込み機構部を簡単に組付け可能であり、これによって一台の作業車1を目砂擦込みを含む複数の芝生保守作業に兼用できるから、芝生地の管理コストを大きく低減できる。
【0012】
請求項3の発明によれば、支持シャフト2は、中間部が側面視ジグザグ状の複数段に曲成されているから、接地ブラシ3に対する充分な支持強度を確保して、且つ該接地ブラシ3を地面に押接するための大きなばね力を発現させることができる。
【0013】
請求項4の発明によれば、支持シャフト2の上下傾動手段によって接地ブラシ3が接地状態と非接地状態とに転換するから、該接地ブラシ3を着脱することなく目砂擦り込み作業の開始と停止の切換えを行える。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る芝生用目砂擦込み装置の側面図である。
【図2】同目砂擦込み装置の背面図である。
【図3】同目砂擦込み装置の接地ブラシ取付部分の斜視図である。
【図4】同目砂擦込み装置における支持シャフト上端側の取付具の分解斜視図である。
【図5】同支持シャフト上端側の取付状態を示し、(a)は平面図、(b)は(a)の矢視断面図である。
【図6】同支持シャフト下端側の取付金具を示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図7】同支持シャフト下端側の取付状態を示す縦断側面図である。
【図8】同目砂擦込み装置のアップヒルでの作業状態を示す側面図である。
【図9】同目砂擦込み装置のダウンヒルでの作業状態を示す側面図である。
【図10】同目砂擦込み装置の非作業下の移動状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の芝生用目砂擦込み装置を既存のグリーン清掃車に適用した一実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0016】
図1及び図2に示すように、作業車1は、ゴルフ場において吸引式のグリーン清掃車として使用されている一人乗り三輪型軽自動車であり、後部に吸引した落ち葉やゴミ等を収容する塵埃タンク11を搭載している。この塵埃タンク11は、車体10の後部に立設した左右一対の略逆V字形の支持フレーム12,12に、左右両側でそれぞれ丸棒状と角棒状の上下2本のレバー13,14を介して支持されている。そして、両レバー13,14は、各々の前端部を支持フレーム12の上部に、後端部を塵埃タンク11の側面後端寄り下部に枢着することにより、前部側を高く傾斜した状態で平行配置して平行四辺形リンクを構成しており、下側の角棒状レバー14の前部側と車体10との間に介挿されたエアシリンダー15を伸張作動させることにより、塵埃タンク11を定姿勢のまま後方斜め上に持ち上げるようになっている(図10参照)。
【0017】
しかして、図3でも示すように、左右の角棒状レバー14の各中間部には支持シャフト2が止着具4を介して前端部2aで固着されており、車体10の後方へ延出した両支持シャフト2,2の後端部2b,2bに横長の接地ブラシ3が取付金具5を介して取り付けられている。各支持シャフト2は、ばね鋼材からなる丸棒状で、中間部が3段階に曲成されて上位側から順次に下向き凸の屈曲部21、上向き凸の屈曲部22、下向き凸の屈曲部23によって側面視ジグザグ状をなしている。
【0018】
止着具4は、図4及び図5に示すように、一端側に下向き開放コ字形の係止部40aを有する一対の縦型嵌込み板40,40が他端側同士を貫通する筒軸41を介して溶接一体化された金属製の止着具本体4aと、ゴム等の弾性材料や合成樹脂又は金属からなる帯板4bと、一対の矩形の金属製挟持板4c,4cとで構成されている。その止着具本体4aの各嵌込み板40における係止部40aの対向する両下縁には、それぞれ筒軸41の軸方向と平行に両側へ張出する挟持突片42,42が一体形成されている。そして、各挟持突片42が1つのボルト挿通孔43を備えると共に、各係止部40aの計4つの挟持突片42のボルト挿通孔43に対応して、各挟持板4cには計4つのボルト挿通孔44─が四隅に形成されている。また、止着具本体4aの筒軸41の複数箇所に半径方向に貫通するロック用ねじ孔45が形成されている。
【0019】
角棒状レバー14に対する支持シャフト2の取り付けに際しては、図3,図5,図6に示すように、止着具本体4aの両嵌込み板40,40の各係止部40aを角棒状レバー14に上方から係嵌させ、その角棒状レバー14の下面に帯板4bを接当した状態で、各係止部40aに下方から挟持板4cを当てがい、該挟持板4cの各ボルト挿通孔44と各挟持突片42のボルト挿通孔43に、下方側からボルト46aを挿通し、このボルト46aの突出した上端部にナット46aを螺合緊締する。これにより、角棒状レバー14が帯板4bを介して止着具本体4aと挟持板4cとの間で挟着され、もって止着具4が当該角棒状レバー14に固定される。一方、支持シャフト2は、止着具本体4aの筒軸41に前端部2aを挿入し、該筒軸41の各ロック用ねじ孔45にロックねじ47を螺挿して、その先端側で内部の支持シャフト2を押圧することにより、止着具4に固定される。
【0020】
接地ブラシ3は、図3及び図6に示すように、刷毛30を下向きに植設した横長のブラシ本体31と、該ブラシ本体31の上面の前後側縁に沿って固着された一対のアングル材32,32とで構成されるブラシ枠3aの2基が平行に配置してなる。
【0021】
取付金具5は、図5に示すように、上部に締着リング部51を有する略矩形の金属厚板からなり、その締着リング部51が一側方の割り溝52によって開環状をなし、上方から該割り溝52を通過して垂直方向に穿設されたねじ孔53を備えると共に、下部には前後方向に透通する左右一対のボルト挿通孔54,54を有している。
【0022】
支持シャフト2の後端部2bに対する接地ブラシ3の取り付けに際しては、図3及び図7に示すように、各ブラシ枠3aの各アングル材32における垂直片32aの左右二カ所の外面側同位置に、それぞれボルト33a及びナット33bを介してボルト取付金具5を固着すると同時に、この2基のブラシ枠3a,3a同士を連結する。一方、支持シャフト2の後端部2bに筒軸6を套嵌すると共に、該筒軸6の複数箇所に設けた半径方向に貫通するロック用ねじ孔61にロックねじ62を螺挿して、その先端側で内部の支持シャフト2を押圧して固定する。そして、左右各側で直線上に配置した4個のボルト取付金具5─の締着リング部51─に、前記支持シャフト2に一体化した筒軸6を通し、各ボルト取付金具5のねじ孔53に締付ボルト55を螺挿して締め付けることにより、該筒軸6をボルト取付金具5─に固定すればよい。
【0023】
ここで、支持シャフト2は、図1の如く作業車1がフラットな地面G上に位置する時に、接地ブラシ3が該支持シャフト2の弾性復元力によって地面Gに押接するように取り付けられている。すなわち、該支持シャフト2がばね鋼材からなることを利用し、該支持シャフト2を車体10側の角棒状レバー14に対して取り付ける際に、屈曲部21〜23の曲がりが自然状態(無負荷状態)よりも強まるように設定している。
【0024】
なお、支持シャフト2の弾性復元力の設定度合は、例えば図8に示すように、作業車1の車体10が傾斜30°程度のアップヒルを乗り越えて平坦面上に達した段階で、まだ傾斜面を脱していない後部の接地ブラシ3が充分に地面に摺接し得るように調整すればよい。また、支持シャフト2は、例えば図9に示すように、傾斜30°程度のダウンヒルにおいて、作業車1が下りきって平坦面上に達し、まだ接地ブラシ3を傾斜面に接地した状態での支持シャフト2の曲がりが弾性復元性の範囲に納まるように、その太さと屈曲部21〜23の屈曲度合を設定すればよい。
【0025】
上記構成の芝生用目砂擦込み装置は、ゴルフ場のグリーン等において、予め散布された目砂を芝草の間に擦り込むのに使用される。この目砂の擦り込み操作は、作業車1の走行に伴う接地ブラシ3の地面への摺接によって自動的になされるが、ゴルフ場のグリーンのように芝生地に大小の起伏があっても、接地ブラシ3は支持シャフト2のばね力で常に地面に押接しているために跳ね上がりを生じない。また、接地ブラシ3の接地位置と作業車1の位置とで地面の左右方向の傾斜が異なっていても、該接地ブラシ3が作業車1とは独立して地面の傾斜に追従して左右方向に傾動できる。従って、この目砂擦込み装置によれば、起伏のある芝生地全体に均一な目砂擦込みを行える。
【0026】
しかして、目砂擦込みの作業を行わずに作業車1を走行させる場合は、図10で示すように、エアシリンダー15を伸張作動させればよい。すなわち、該伸張作動によって両レバー13,14が後端側を持ち上げるように傾動し、もって塵埃タンク11が定姿勢のまま後方斜め上に持ち上がるが、同時に角棒状レバー14に固定された支持シャフト2も一体に傾動するから、接地ブラシ3が持ち上がって地面Gから離れることになる。
【0027】
この芝生用目砂擦込み装置では、接地ブラシ3を地面に押接させるばね力は、ばね鋼材からなる左右の支持シャフト2自体の弾性復元力によってもたらされ、別途にばね部材を用いる必要がないから、該接地ブラシ3の取付構造が極めて簡素になり、それだけ目砂擦込み機構部の組立製作コストが少なくて済む。
【0028】
上記実施形態では作業車1としてグリーン清掃車を利用しているが、本発明の芝生用目砂擦込み装置の作業車としては、目砂散布車、芝刈り車、薬剤散布車等、グリーン清掃車以外の様々な仕様のものを利用でき、当然に目砂擦込み専用の仕様でもよい。しかして、実施形態の支持シャフト2のように、その前端部2aで作業車1側に保持され、該作業車1の後方へ延出した後端部2bで接地ブラシ3を支持する構成であれば、既存車を含めて芝生保守に使用される様々な作業車に対し、その保守作業に支障がない形で該目砂擦込み機構部を簡単に組付け可能であり、これによって一台の作業車1を目砂擦込みを含む複数の芝生保守作業に兼用できるから、芝生地の管理コストを大きく低減できる。
【0029】
なお、上記実施形態では、作業車1側に対し、孔開けや溶接等の加工を施すことなく、支持シャフト2を止着具4を介して取り付けるようにしているから、その取付作業が容易である上、該作業車1を目砂擦込み以外の作業に用いる場合に、目砂擦込み機構部を簡単に取り外すことができると共に、その取り外し状態での作業車1の外観が損なわれないという利点もある。また、止着具4に対して支持シャフト2が脱着可能であるから、該支持シャフト2が傷損した場合の交換も容易である。更に、実施形態では支持シャフト2に対して接地ブラシ3を取付金具5を介して取り付けているから、接地ブラシ3が損傷したり寿命に達した場合の交換も容易である。
【0030】
一方、支持シャフト2は、直線状やくの字状等の様々な形状に設定できるが、実施形態のように中間部が側面視ジグザグ状の複数段に曲成された形状とすれば、接地ブラシ3に対する充分な支持強度を確保して、且つ該接地ブラシ3を地面に押接するための大きなばね力を発現できるという利点がある。更に、実施形態のように支持シャフト2の上下傾動によって接地ブラシ3が接地状態と非接地状態とに転換する構成では、該接地ブラシ3を着脱することなく目砂擦り込み作業の開始と停止の切換えを行えるという利点がある。
【0031】
また、接地ブラシ3を前記エアシリンダー15の如き上下傾動手段によって持ち上げた状態で作業車1を移動する際に、該接地ブラシ3が揺動するのを防止又は抑制するために、適当な保持機構や吊持機構等を作業車1に付設してもよい。その他、本発明においては、支持シャフト2の車体側に対する取付構造、支持シャフト2の上下傾動手段の動作機構、支持シャフト2に対する接地ブラシ3の取付構造、接地ブラシ3の形態等、細部構成については実施形態以外に種々設計変更可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 作業車
2 支持シャフト
2a 前端部
2b 後端部
21〜23 屈曲部
3 接地ブラシ
G 地面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業車の後部に、ばね鋼材からなる左右一対の支持シャフトを介して取り付けられた横長の接地ブラシを備え、
前記接地ブラシは、両支持シャフトのばね弾性によって地面に対して押接するように構成されてなる芝生用目砂擦込み装置。
【請求項2】
前記支持シャフトは、その前端部で作業車側に保持され、該作業車の後方へ延出した後端部で前記接地ブラシを支持してなる請求項1に記載の芝生用目砂擦込み装置。
【請求項3】
前記支持シャフトの中間部が側面視ジグザグ状の複数段に曲成されてなる請求項1又は2に記載の芝生用目砂擦込み装置。
【請求項4】
前記支持シャフトの上下傾動手段を備え、該支持シャフトの上下傾動によって前記接地ブラシが接地状態と上方へ持ち上がった非接地状態とに転換する請求項1〜3の何れかに記載の芝生用目砂擦込み装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−77(P2011−77A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−146695(P2009−146695)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【出願人】(510244868)株式会社北善塔 (1)
【Fターム(参考)】