説明

芳香族−脂環族共重合石油樹脂組成物およびその製造方法

【課題】 本発明の課題は、1ケ月以上の長期貯蔵安定性に優れる芳香族−脂環族共重合石油樹脂組成物、特に貯蔵時にゲル状物質の生成がなく、樹脂物性の経時変化が小さい、芳香族−脂環族共重合石油樹脂組成物及びその製造方法を提供することである。
【解決手段】 プロトンNMRスペクトルで、オレフィン性二重結合水素面積比率が13%以下である芳香族−脂環族共重合石油樹脂100重量部に対して、ヒンダードアミン化合物0.05〜2重量部を含有することを特徴とする芳香族−脂環族共重合石油樹脂組成物及びその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合時や1ケ月以上の長期保存においてもゲルが発生しない貯蔵安定性に優れる芳香族−脂環族共重合石油樹脂組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石油類の分解、精製の際に得られる不飽和炭化水素含有留分を原料として、フリーデルクラフツ型触媒の存在下に重合し、石油樹脂を製造する方法は良く知られている。その炭化水素含有留分としては、沸点範囲が20〜110℃のC5留分と沸点範囲が140〜280℃のC9留分の2種類があり、C5留分から得られる脂肪族石油樹脂、C9留分から得られる芳香族石油樹脂、並びにC5留分とC9留分とを共重合して得られる脂肪族/芳香族共重合石油樹脂に分類される。また、ジシクロペンタジエン類を熱重合することで得られる脂環族石油樹脂も知られている。
【0003】
この脂環族石油樹脂の原料となるジシクロペンタジエン、メチルジシクロペンタジエン、ジメチルジシクロペンタジエン等のジシクロペンタジエン類は、フリーデルクラフツ型触媒の存在下で重合する場合、不飽和結合が樹脂中に多量に存在して樹脂の色相悪化やゲル生成が起こり、品質の低下が問題となる。そのため、脂肪族石油樹脂、芳香族石油樹脂、脂肪族芳香族共重合石油樹脂は、一般的に、ジシクロペンタジエン類を蒸留等により除去した留分から、製造されている。
【0004】
一方、ジシクロペンタジエン類を原料としてフリーデルクラフツ型触媒の存在下で重合して石油樹脂を製造する方法も検討されている。カチオン重合性芳香族系炭化水素含有留分(C9留分)とジシクロペンタジエンとを、フリーデルクラフツ型触媒の存在下に重合する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、特許文献1には、ヒンダードアミン化合物の添加及び得られる石油樹脂の1ケ月以上の長期保存においてもゲルが発生しない貯蔵安定性に関しては、記載されていない。さらに、特許文献1で得られる石油樹脂は、我々の検討では保存時にゲルが発生し実用性に乏しかった。また、フリーデルクラフツ型触媒として三弗化ホウ素(ガス)と共触媒としてメタノールなどを用いて石油樹脂を製造する方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、特許文献2には得られる石油樹脂の1ケ月以上の長期保存においてもゲルが発生しない貯蔵安定性に関しては、記載されていない。さらに、特許文献2で用いる三弗化ホウ素(ガス)は各種の無機化合物や有機化合物と反応して錯化合物を形成しやすく、空気中では激しく白煙を生じ、また、毒物でもあることから取り扱いに特別な注意が必要となる。
【0005】
一方、石油樹脂にヒンダードアミン化合物を配合し、熱安定性や耐候性を改良する方法は既に提案されている(例えば、特許文献3参照)。しかし、脂肪族石油樹脂、芳香族石油樹脂、脂肪族芳香族共重合石油樹脂に対する効果だけであり、ジシクロペンタジエン類を原料として用いる脂環族石油樹脂については全く述べられていない。
【0006】
また、ヒンダードアミン化合物を添加したフェノール変性芳香族石油樹脂組成物(例えば、特許文献4参照)、及び脂肪族−芳香族共重合石油樹脂(例えば、特許文献5参照)について、既に提案されている。しかしながら、C9留分とジシクロペンタジエン類から成る芳香族−脂環族石油樹脂については報告されていない。
【0007】
ヒンダードアミン化合物を添加した炭化水素樹脂について提案されている(例えば特許文献6〜8参照)。しかしながら、炭化水素樹脂としてC9留分とジシクロペンタジエン類から成る芳香族−脂環族石油樹脂については報告されていない。また、効果として1ケ月以上の長期保存においてもゲルが発生しない貯蔵安定性に優れることに関しては記載又は示唆されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公昭55−023286号公報(第1頁)
【特許文献2】特開昭56−106912号公報(第1頁)
【特許文献3】特公平3−35335号公報(第1頁)
【特許文献4】特開2005−187735号公報(第1頁)
【特許文献5】特開2006−028285号公報(第1頁)
【特許文献6】特開2001−152115号公報
【特許文献7】特開2003−213073号公報
【特許文献8】特開2006−274191号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、重合時や1ケ月以上の長期保存においてもゲルが発生しない貯蔵安定性に優れ、且つコスト的にも有利な芳香族−脂環族共重合石油樹脂組成物及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、オレフィン性二重結合水素面積比率が特定の値以下である芳香族−脂環族共重合石油樹脂に対して、ヒンダードアミン化合物を特定量含有することにより、貯蔵時にゲル状物質の生成がなく且つ物性の経時変化が小さい、1ケ月以上の長期保存においてもゲルが発生しない貯蔵安定性に優れる芳香族−脂環族共重合石油樹脂組成物を見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は、プロトンNMRスペクトルで、オレフィン性二重結合水素面積比率が13%以下である芳香族−脂環族共重合石油樹脂100重量部に対して、ヒンダードアミン化合物0.05〜2重量部を含有することを特徴とする芳香族−脂環族共重合石油樹脂組成物、及びその製造方法に関するものである。
【0012】
本発明における芳香族−脂環族共重合石油樹脂は、プロトンNMRを測定した際に観測されるスペクトルで、4.5〜6.0ppmに観測されるオレフィン性二重結合水素面積比率が13%以下のものであり、好ましくは4〜13%である。このオレフィン性二重結合水素の面積比率が13%を超えると、芳香族−脂環族共重合石油樹脂は製造直後から既にゲル状物質が発生する。
【0013】
本発明における芳香族−脂環族共重合石油樹脂を得るための原料油は特に限定はなく、石油類の熱分解により得られる、沸点範囲が140〜280℃のC9留分、及びジシクロペンタジエン類からなる混合物を原料油として用いることが好ましい。
【0014】
C9留分を構成する成分に特に限定はなく、例えばスチレン、そのアルキル誘導体であるα−メチルスチレンやβ−メチルスチレン、ビニルトルエン、インデン及びそのアルキル誘導体等に代表される炭素数8〜10のビニル芳香族炭化水素類;ジシクロペンタジエン及びその誘導体等に代表される環状不飽和炭化水素類;その他炭素数10以上のオレフィン類、炭素数9以上の飽和芳香族類等が挙げられる。
【0015】
また、ジシクロペンタジエン類としては、例えば、ジシクロペンタジエン、メチルジシクロペンタジエン、ジメチルジシクロペンタジエン等のジシクロペンタジエン誘導体を挙げることができる。
【0016】
なお、本発明においてC9留分とジシクロペンタジエン類からなる混合物を芳香族−脂環族共重合石油樹脂の原料油として用いる場合、C9留分とジシクロペンタジエン類の混合割合は、得られる芳香族−脂環族共重合石油樹脂組成物が軟化点及び色相に優れたものとなることから好ましくはC9留分10〜90重量%、ジシクロペンタジエン類90〜10重量%、さらに好ましくはC9留分10〜80重量%、ジシクロペンタジエン類90〜20重量%である。
【0017】
本発明における芳香族−脂環族共重合石油樹脂の製造方法は特に制限はなく、例えば、C9留分とジシクロペンタジエン類の混合物に触媒を加え加熱し重合することにより製造できる。重合に用いる触媒としては、一般的にフリーデルクラフツ型触媒が使用でき、例えば三塩化アルミニウム、三臭化アルミニウム、三フッ化ホウ素あるいはそのフェノール錯体、ブタノール錯体等が挙げられる。中でも三フッ化ホウ素のフェノール錯体、三フッ化ホウ素のブタノール錯体が好ましい。重合温度は0〜100℃が好ましく、特に好ましくは0〜80℃である。また、触媒量及び重合時間は、例えば、C9留分及びジシクロペンタジエン類からなる混合物(原料油)100重量部に対して触媒0.1〜2.0重量部で0.1〜10時間の範囲が好ましい。反応圧力は大気圧〜1MPaが好ましい。
【0018】
本発明における芳香族−脂環族共重合石油樹脂は加工性の面から、重量平均分子量(Mw)が500〜5,000が好ましい。
【0019】
本発明で用いられるヒンダードアミン化合物としては、ヒンダードアミン化合物と称される範疇に属する化合物であれば特に限定はなく、その中でも特に1ケ月以上の長期保存においてもゲルが発生しない貯蔵安定性の優れる芳香族−脂環族共重合石油樹脂組成物が得られることから、下記一般式に示す2,2,6,6−テトラアルキル−4−ピペリジル基を有する化合物であることが好ましい。
【0020】
【化1】

ここで、一般式中のR1〜R4は互いに同一であっても相違していても良く炭素数1〜4のアルキル基であり、R5は水素又は置換基を持っていても良い炭素数1〜8のアルキル基もしくはアルコキシ基である。R1〜R4における炭素数1〜4のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられ、その中でもメチル基が好ましい。R5の置換基を持っていても良い炭素数1〜8のアルキル基としては、例えばメチル基、オクチル基等が挙げられ、置換基を持っていても良い炭素数1〜8のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、オクトキシ基等が挙げられる。これらの中でもR5としては、水素、メチル基、オクチル基等が好ましく、特に好ましくは水素、メチル基である。
【0021】
そして、具体的な一般式に示す2,2,6,6−テトラアルキル−4−ピペリジル基を有する化合物としては、例えばビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]などが挙げられ、その中でもビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]等が好ましい。
【0022】
一般式に示す2,2,6,6−テトラアルキル−4−ピペリジル基を有する化合物は、分子量400〜4,000のものが知られており、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)としてチバ・ジャパン(株)や(株)ADEKAから市販されており、これらの市販品も本発明で用いることができる。
【0023】
本発明の芳香族−脂環族共重合石油樹脂組成物は、上記芳香族−脂環族共重合石油樹脂100重量部に対して、ヒンダードアミン化合物0.05〜2重量部、好ましくは0.1〜1.0重量部を含有してなるものである。このヒンダードアミン化合物の含有量が0.05重量部未満である場合、得られる芳香族−脂環族共重合石油樹脂組成物の1ケ月以上の長期貯蔵安定性が劣る。
【0024】
本発明の芳香族−脂環族共重合石油樹脂組成物の製造方法は、芳香族−脂環族共重合石油樹脂100重量部に対して、ヒンダードアミン化合物0.05〜2重量部を配合することが可能であれば如何なる方法も用いることが可能である。通常、芳香族−脂環族共重合石油樹脂は常温下でも酸化を受けて過酸化物を形成し易く、1ケ月以上の長期貯蔵した芳香族−脂環族共重合石油樹脂を加熱溶融すると、形成された過酸化物の分解が起こり、ゲル状物質の発生や、軟化点や色相といった樹脂物性の経時変化を起こし易くなる。従って、より1ケ月以上の長期貯蔵安定性に優れる芳香族−脂環族共重合石油樹脂組成物を得るためには、芳香族−脂環族共重合石油樹脂の重合反応終了後に共存する溶媒や低分子化合物を留去した直後の溶融状態にある芳香族−脂環族共重合石油樹脂に、溶融させたヒンダードアミン化合物を配合する方法が好ましい。さらに、溶融状態の芳香族−脂環族共重合石油樹脂の酸化、特に酸素による酸化を防止できることから、係る配合時の配合器内の酸素濃度が、好ましくは1000ppm以下、さらに好ましくは100ppm以下、特に好ましくは10ppm以下である。
【0025】
本発明における芳香族−脂環族共重合石油樹脂組成物は軟化点が80〜160℃が好ましく、特に好ましくは90〜150℃、色相が13以下が好ましく、特に好ましくは12以下である。
【0026】
なお、本発明の芳香族−脂環族共重合石油樹脂組成物は、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて、通常、樹脂組成物に配合される添加剤として、例えばフェノール系抗酸化剤、リン系抗酸化剤、硫黄系抗酸化剤、ラクトン系抗酸化剤、紫外線吸収剤、顔料、炭酸カルシウム、ガラスビーズなどを配合しても良い。
【発明の効果】
【0027】
以上示されたように、本発明の芳香族−脂環族共重合石油樹脂組成物は、1ケ月以上の長期貯蔵安定性に優れ、特に貯蔵時にゲル状物質の生成がなく、樹脂物性の経時変化が小さいため、ホットメルト接着剤、感圧接着剤、粘着テープ、床用接着剤、タイヤ、印刷インキ、アスファルトなどの用途に好適に使用することができる。
【実施例】
【0028】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限を受けるものではない。尚、実施例、比較例において用いた原料油、重合仕込み量及びCPD含有率、添加剤、及び得られた組成物の分析、試験法は下記の通りである。
【0029】
1.原料
(1)C9留分、ジシクロペンタジエン類の組成:表1、表2
(2)添加剤:
ヒンダードアミン化合物:アデカスタブ光安定剤LA−77((株)ADEKA製、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート)、アデカスタブ光安定剤LA−52((株)ADEKA製、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート)、CHIMASSORB 944FDL(チバ・ジャパン(株)製、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}])
フェノール系抗酸化剤:IRGANOX1010(チバ・ジャパン(株)製)
(3)原料油の種類及び重合仕込み量、CPD含有率、添加剤の種類及び添加量:表3
【0030】
【表1】

【0031】
【表2】

【0032】
【表3】

2.分析方法
(1)原料油の各成分の含有量:JIS K−0114(2000年)に準拠してガスクロマトグラフ法を用いて分析した。
(2)重量平均分子量(Mw):ポリスチレンを標準物質とし、JIS K−0124(1994年)に準拠してゲル浸透クロマトグラフィーにより測定した。
(3)オレフィン性二重結合水素面積比率:芳香族−脂環族共重合石油樹脂をクロロホルム−d(和光純薬工業(株)製)に溶解させ、NMR(核磁気共鳴スペクトル)測定装置(型番GSX270、日本電子(株)製)により測定した。得られたスペクトルについて下記の計算式に基づき面積比率を求めた。
【0033】
オレフィン性二重結合水素面積比率(%)=(オレフィン性二重結合水素ピーク面積)/(全ピーク面積の合計)×100
オレフィン性二重結合水素ピーク:4.5〜6.0ppm
(4)軟化点:JIS K−2531(1960)(環球法)に準拠した方法で測定した。
(5)色相:50重量%トルエン溶液として、ASTM D−1544−63Tに従って測定した。
【0034】
3.貯蔵安定性の試験方法
(1)経時変化測定
芳香族−脂環族共重合石油樹脂組成物10gを50℃の老化試験機に入れ、初期及び以後2週間毎に試料をサンプリングし、トルエン不溶解物によるゲル状物質生成の判定(ゲル状物質生成経時変化)、及び軟化点、色相、分子量の物性の経時変化(物性経時変化)を測定した。
(2)ゲル状物質生成の判定
サンプル5gをトルエン5gで溶解させた後、フラットシャーレに移液し、シャーレ上において、目視で不溶融物が確認できた場合は、ゲル状物質の発生とする。
【0035】
実施例1
内容積2lのガラス製オートクレーブに、原料油としてナフサの分解により得た表1に示した組成AのC9留分150gと、表2に示した組成のジシクロペンタジエン(DCPD)留分350gを仕込んだ(C9留分/ジシクロペンタジエン類=30/70(重量%))。次に、窒素雰囲気下で40℃に冷却した後、フリーデルクラフツ型触媒として三フッ化ホウ素ブタノール錯体(ステラケミファ(株)三フッ化ホウ素ブタノール)をC9留分とジシクロペンタジエン類の混合物からなる原料油100重量部に対して、1.0重量部加えて2時間重合した。その後、苛性ソーダ水溶液で触媒を除去し、油相の未反応油を蒸留して芳香族−脂環族共重合石油樹脂を得た。該共重合石油樹脂のプロトンNMRを測定した結果、オレフィン性二重結合水素面積比率は8%だった。
【0036】
更に、酸素濃度が2ppmの窒素気流下で該共重合石油樹脂100重量部に対し、ヒンダードアミン化合物((株)ADEKA製、商品名アデカスタブ光安定剤LA−77)0.2重量部を100℃、攪拌回転数300rpmの条件下で配合し、芳香族−脂環族共重合石油樹脂組成物を得た。
【0037】
得られた芳香族−脂環族共重合石油樹脂組成物の貯蔵安定性の測定結果(軟化点、色相、重量平均分子量(Mw)、ゲル状物質)を表4に示した。該共重合石油樹脂組成物はゲル状物質生成も経時になく、1ケ月以上の長期貯蔵安定性が良好であった。
【0038】
実施例2〜5
ヒンダードアミン化合物の添加量を表3のようにした以外は実施例1と同様の方法で芳香族−脂環族共重合石油樹脂組成物を得た。
【0039】
得られた芳香族−脂環族共重合石油樹脂組成物の貯蔵安定性の測定結果(軟化点、色相、重量平均分子量(Mw)、ゲル状物質)を表4に示した。該共重合石油樹脂組成物はゲル状物質生成も経時になく、1ケ月以上の長期貯蔵安定性が良好であった。
【0040】
実施例6,7,8
フリーデルクラフツ型触媒として三フッ化ホウ素フェノール錯体(ステラケミファ(株)三フッ化ホウ素フェノール)を1.0重量部にして、重合温度、C9留分、ジシクロペンタジエン類の仕込み量を表3のようにした以外は実施例1と同様の方法で芳香族−脂環族共重合石油樹脂組成物を得た。
【0041】
得られた芳香族−脂環族共重合石油樹脂組成物の貯蔵安定性の測定結果(軟化点、色相、重量平均分子量(Mw)、ゲル状物質)を表4に示した。該共重合石油樹脂組成物はゲル状物質生成も経時になく、1ケ月以上の長期貯蔵安定性が良好であった。
【0042】
実施例9
ヒンダードアミン化合物をテトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート(アデカスタブ光安定剤LA−52((株)ADEKA製)に変更し、仕込み量を表3のようにし、実施例1と同様の方法で芳香族−脂環族共重合石油樹脂組成物を得た。
【0043】
得られた芳香族−脂環族共重合石油樹脂組成物の貯蔵安定性の測定結果(軟化点、色相、重量平均分子量(Mw)、ゲル状物質)を表4に示した。該共重合石油樹脂組成物はゲル状物質生成も経時になく、1ケ月以上の長期貯蔵安定性が良好であった。
【0044】
実施例10
ヒンダードアミン化合物をポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}](チバ・ジャパン(株)製 CHIMASSORB 944FDL)に変更し、仕込み量を表3のようにし、実施例1と同様の方法で芳香族−脂環族共重合石油樹脂組成物を得た。
【0045】
得られた芳香族−脂環族共重合石油樹脂組成物の貯蔵安定性の測定結果(軟化点、色相、重量平均分子量(Mw)、ゲル状物質)を表4に示した。該共重合石油樹脂組成物はゲル状物質生成も経時になく、1ケ月以上の長期貯蔵安定性が良好であった。
【0046】
【表4】

比較例1
実施例1で得た芳香族−脂環族共重合石油樹脂にヒンダードアミン化合物を添加しないで、芳香族−脂環族共重合石油樹脂の貯蔵安定性を測定した。測定結果(軟化点、色相、重量平均分子量(Mw)、ゲル状物質)を表5に示した。該共重合石油樹脂は、ヒンダードアミン化合物を用いなかったことから初期にはゲルが発生しなかったが2週間後にはゲルが発生し、1ケ月以上の長期貯蔵安定性が不良であった。
【0047】
比較例2
添加剤としてヒンダードアミン化合物の代わりにフェノール系抗酸化剤(チバ・ジャパン(株)製、IRGANOX 1010)0.2重量部を配合した以外は実施例1に記載と同様の方法で芳香族−脂環族共重合石油樹脂組成物を得た。
【0048】
得られた芳香族−脂環族共重合石油樹脂組成物の貯蔵安定性の測定結果(軟化点、色相、重量平均分子量(Mw)、ゲル状物質)を表5に示した。該共重合石油樹脂組成物は、ヒンダードアミン化合物を用いずフェノール系抗酸化剤のみを用いたことから初期にはゲルが発生しなかったが4週間後にはゲルが発生し、1ケ月以上の長期貯蔵安定性が不良であった。
【0049】
比較例3
原料油として用いたC9留分の組成及び仕込み量を表3のようにした以外は実施例6と同様の方法で石油樹脂組成物を得た。石油樹脂のオレフィン性二重結合水素面積比率は15%であった。
【0050】
得られた石油樹脂組成物の測定結果測定結果(軟化点、色相、重量平均分子量(Mw)、ゲル状物質)を表5に示した。該共重合石油樹脂は、原料としてC9留分を用いなかったことから製造直後からゲル状物質の生成が確認され、1ケ月以上の長期貯蔵安定性が不良であった。
【0051】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロトンNMRスペクトルで、オレフィン性二重結合水素面積比率が13%以下である芳香族−脂環族共重合石油樹脂100重量部に対して、ヒンダードアミン化合物0.05〜2重量部を含有することを特徴とする芳香族−脂環族共重合石油樹脂組成物。
【請求項2】
芳香族−脂環族共重合石油樹脂が、石油類の熱分解により得られる沸点範囲が20〜110℃のC9留分10〜90重量%、及びジシクロペンタジエン類90〜10重量%からなる混合物を原料として用いてなることを特徴とする請求項1に記載の芳香族−脂環族共重合石油樹脂組成物。
【請求項3】
ヒンダードアミン化合物を配合する際の配合器内の酸素濃度が1000ppm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の芳香族−脂環族共重合石油樹脂組成物の製造方法。

【公開番号】特開2011−127006(P2011−127006A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−287202(P2009−287202)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】