説明

芳香族アルデヒドの製造方法

本発明は、(ヘテロ)芳香族アルデヒドを製造する方法を目的とする。アルデヒドは相応するHal′置換された(ヘテロ)芳香族化合物から、特定の単座ホスファンベースの配位子系の存在下でのパラジウム触媒による還元カルボニル化により得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(ヘテロ)芳香族アルデヒドの製造方法を目的とする。特に本発明による方法は、触媒量のパラジウム錯体の存在下にHal′置換された(ヘテロ)芳香族化合物から出発して(ヘテロ)芳香族アルデヒドを製造することを含む。
【0002】
芳香族アルデヒドは有機生物活性剤またはこれらの中間体を製造するために重要な出発物質である。というのは、これらは反応性のアルデヒド官能基のために、C−Cカップリング反応、還元またはその他の誘導反応において容易に使用することができるからである[Organikum、第21版、Wiley−VCH Verlag、2001年、第456〜622頁(ISBN3−527−29985−8)]。
【0003】
芳香族カルボン酸[L.Casser、M.Foa、A.Gardano、J.Organomet.Chem.1976年、121、C55]、エステル[A.Schoenberg、I.Bartoletti、R.F.Heck、J.Org.Chem.1974年、39、3318、J.K.Stille、P.K.Wong、ibid.、1975年、40、532、M.Hidai、T.Hikita、Y.Wada、Y.Fujikura、Y.Uchida、Bull.Chem.Soc.Jpn.1975年、48、2075、T.Ito、K.Mori、T.Mizoroki、A.Ozaki、ibdi.、1975年、48、2091]、アミド[A.Schoenberg、R.F.Heck、J.Org.Chem.1974年、39、3327]、α−オキソアミド[T.Kobayashi、M.Tanaka、J.Organomet.Chem.1982年、233、C64、F.Ozawa、H.Soyama、H.Yanagihara、I.Aoyama、H.Takino、K.Izawa、T.Yamamoto,A.Yamamoto、J.Am.Chem.Soc.1985年、107、3235]、α−オキソエステル[M.Tanaka、T.A.Kobayashi、F.Skakura、N.Itatani、S.Donno、K.Zushi、J.Mol.Cat.1985年、32、115、B.Morin、A.Hirschauer、F.Hugues、D.Commereuc、Y.Chauvin、J.Mol.Cat.1986年、34、317]およびα−オキソ酸[M.Tanaka、T.A.Kobayashi、T.Sakakura、J.Chem.Soc.、Chem.Commun.1985年、837]を製造するために、パラジウム触媒による臭化アリールまたはヨウ化アリールをカルボニル化することは公知である。特に、置換されたベンズアルデヒドの製造は、後の合成単位として使用する可能性のために重要である:
図式1:ハロゲン化アリールのカルボニル化反応
【化1】

【0004】
文献では、ハロゲン化芳香族化合物、複素環化合物およびビニルの、パラジウム触媒による還元カルボニル化が、Heck等により1974年に初めて言及された[A.Schoenberg、R.F.Heck、J.Am.Chem.Soc.1974年、96、7761〜7764]。著者等により、該反応は実質的にハロゲン化アリールに限定されていることが確認されており、これは困難な方法でβ−水素化物の脱離を行うことができるのみである。記載されている反応条件は広い温度範囲(80〜150℃)にわたっており、前記の脱ハロゲン化は、基質に依存した方法で温度と共に増大することができる。80バールを越える圧力(CO/H2 1:1)は同様に収率を向上する。
図式2:Heckによるパラジウム触媒によるカルボニル化のメカニズム
【化2】

【0005】
同年、相応する特許が登録された[US特許3,960,932、R.F.Heck、1974年]。Stille等は、一連の有機ハロゲン化物をBu3SnHおよびPd触媒の存在下に、相応するアルデヒドに変換することができた[V.P.Baillard−Geon、J.K.Stille、J.Am.Chem.Soc.1983年、105(24)、7175〜7176]。該方法は、相応するアルデヒドがその他の反応性官能基の存在下でも得られるという利点を有する。
【0006】
DE3242582、EP244328およびEP244329には、パラジウム触媒によりハロゲン化芳香族化合物、特に臭化物およびヨウ化物を、合成ガスの存在下に芳香族アルデヒドへと変換する方法が開示されている。これらの詳細な説明では、主としていくつかの方法技術の詳細が強調されている。JP10−330307には、パラジウム触媒の存在下で臭化芳香族またはヨウ化芳香族をパラジウム触媒により還元カルボニル化することが同様に示されている。単座配位子として、トリス−t−ブチルホスファンが使用されている。この配位子は特に、予想外に高い生成物収率を達成する助けとなることが報告されている。しかし使用される配位子は、自然発火性であり、従って大規模では有利に使用することができない。
【0007】
DE10037961は、特にハロゲン化芳香族化合物のカルボニル化反応のための配位子としてのアダマンチル置換されたホスファン化合物を一般的に開示している。しかし還元カルボニル化におけるHal′置換された(ヘテロ)芳香族化合物への適用は、ここでは明示的に記載されていない。
【0008】
従って本発明の課題は、特に工業的な規模でHal′置換された(ヘテロ)芳香族化合物を、従来技術と比較してさらに有利な方法で、芳香族アルデヒドへと変換するために適切な方法を提供することであった。とりわけ、意図されている方法は、収率、副生成物の範囲および化合物の取り扱いに関して、および工業的な安全性の観点からの利点を有するべきである。さらに、経済的および生態学的な観点から見て、従来技術による方法よりも優れているべきである。
【0009】
これらの、および詳細には挙げられていないが、従来技術から明らかに生じるその他の課題は、本発明の請求項1の対象である方法によって解決される。本発明による方法の有利な実施態様は、従属請求項2〜8において保護される。
【0010】
Hal′置換された(ヘテロ)芳香族化合物およびCOおよびH2から、塩基と、一般式(I)
【化3】

[R1およびR2は、相互に独立に(C5〜C20)−アルキルであり、その際、リン原子に結合しているC原子は第三級中心であり、R3は、第一級の、場合により線状の(C3〜C20)−アルキル基である]の単座ホスファン配位子を有するパラジウム触媒との存在下に、(ヘテロ)芳香族アルデヒドを製造する方法を実施する結果として、設定された課題は、簡単であるが、しかし従来技術と比較して自明ではなく、特に有利である方法で解決される。本願発明による配位子の種類によって、考えられる反応を決定的に改善することができ、これは特に工業的な規模でのアルデヒドの製造の背景に対してコストを節減し、かつ使用される物質のより良好な生態学的および経済的な利用性に貢献する助けとなる。リン配位子の全アルキル置換にも関わらず、これらは全く自然発火性でなく、かつ大規模で容易に取り扱うことができる。
【0011】
一般式(I)の適切なホスファン配位子は、DE10037961から原則として当業者に公知である。2つの第三級アルキル基および1つの第一級アルキル基がリンに存在することによって、特に本発明による反応のために良好な配位子が得られることが判明した。特に有利なホスファンは、2つの多環式および1つの第一級の、場合により線状のアルキル基を有する一般式(I)のホスファンである。多環式の基として、アダマンチル基が有利である。場合により線状のアルキル基として、(C3〜C20)−アルキル基、たとえばn−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基がここでは適切である。リンに2つのアダマンチル基および1つのn−ブチル基を有するホスファン配位子(BuPAd2)は特に有利である。
【0012】
本発明による反応は有利には、触媒反応サイクルにおいて、生じるプロトンが確実に捕捉されうる塩基の存在下で進行する。原則として、当業者は適切な塩基化合物を自由に選択することができる。しかし塩基は有利には安価な無機塩基または有機塩基であってよい。有利に使用される適切な無機塩基は特にアルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩、リン酸一水素塩およびリン酸二水素塩または水酸化物である。特に有利であるのは、K3PO4、K2HPO4、K2CO3、Cs2CO3、NaOH、KOH等からなる群から選択される塩基である。有利に使用される有機塩基は、弱い有機酸、たとえば酢酸、ギ酸、プロピオン酸等のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩である。有利に使用される別の有機塩基は、窒素含有有機分子、たとえばNEt3、N(n−Bu)3、DABCO(登録商標)(1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン)、DBU(登録商標)(1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセ−7−エン、N,N−ジメチルグリシンエチルエステル、ピリジン、テトラメチルグアニジンTMEDA、ヘキサメチレンテトラミン等からなる群から選択される塩基である。さらに有利な塩基は、オリゴマーおよびポリマーに支持されたアミンおよびこれらの誘導体(たとえばグアニジン)である。図1には、一般的な作業手順によるp−CF3−C64−Brの4時間の反応に関する実験結果が、トルエン中100℃で種々の塩基について示されている。使用される塩基の量は、当業者が自由に選択することができ、その際、約1±0.5当量の塩基の量が有利である(図6および図7−条件:4−メトキシブロモベンゼン2ミリモル、Pd(OAc)2 0.33モル%、BuPAd2 1モル%、トルエン2ml、100℃、16時間、CO/H2 5バール)。
【0013】
原則として、当業者は本発明による反応を実施する溶剤を自由に選択することができる。出発物質はしばしば液状の形で存在しているという事実に基づいて、これに関して溶剤の使用は省略することもできる。しかし本発明による反応において溶剤を使用することを所望する場合、反応に使用される成分が相応して良好に溶解し、かつ他方で、本発明による反応に対して不活性であることが証明されている溶剤を使用することが有利である。適切な溶剤は、炭化水素、特に芳香族炭化水素およびこれらの過フッ化誘導体、エーテル、カルボン酸アミド、カルボン酸エステル、チオエーテル、カーボネート、ニトリル、ハロゲン化ベンゼンなどである。その他の不活性溶剤は、イオン性液体または超臨界液であり、これらはすでに当業者に公知のはずである(イオン性液体に関しては、Wasserscheid、P.、Welton、T.編、ドイツ、2003年、第364頁以降、Wiley−VCH Verlag GmbH&Co. KGaA出版社、Weinheim、ドイツ)、超臨界液に関しては、Jessop、P.G.、Ikariya、T.Noyori、R.Science 1995年、269、1065〜1069、Chem. Rev.1999年、99、第475〜493頁、Chem.Commun.1999年、第1235〜1236頁)。有利な溶剤は、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、NMP(N−メチルピロリドン)、DMGE(ジメチルグリコールエーテル)、トルエン、アニソール、ベンゼン、クロロベンゼン、DMF(ジメチルホルムアミド)、DMAC(ジメチルアセトアミド)、1,4−ジオキサン、MTBE、THF、アセトニトリル、ベンゾニトリル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、ジブチルエーテル、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート等からなる群から選択される溶剤である。図2は、本発明による反応で使用される場合の溶剤の選択に関する結果を示している。記載の例は、100℃で4時間の反応における一般的な作業手順により示される溶剤と塩基との組み合わせにおいて得られたものである。
【0014】
当業者はどのようなCO圧力で本発明による反応を実施するかを決定することができる。意外なことに、高すぎるCO圧力がむしろ本発明による反応にとっては意図したところとは逆の効果をもたらし、0.05〜10MPa、有利には0.05〜2MPa、およびとりわけ有利には0.05〜1.5MPaの範囲の圧力が有利に設定されることが証明された。圧力の指示はここでは反応混合物中のCOの圧力に関する(図5)。H2の圧力は相応して以下に記載するCOおよびH2の有利な混合比により相応して調整することができる。
【0015】
COおよびH2の混合比は同様に、当業者により意図されている反応に関連させて調整することができる。有利には、1:10〜10:1の範囲近辺で変動する混合比を使用する。さらに有利な混合比(モル比)は、1:5〜5:1の比であり、さらに有利には1:2〜2:1である。とりわけ有利には、1.25:1〜1:1.25のCO:H2比を本発明による反応で使用する。この関連で合成ガスの使用は極めて有利である。
【0016】
基質に対して使用される触媒の量に関して、原則としてより高い量の触媒は、より良好な変換率を達成する助けともなることに言及することができる。使用すべき触媒の量は使用される(ヘテロ)芳香族化合物に対して、有利には0.001モル%〜10モル%の範囲である。さらに有利には、触媒の使用は0.01モル%〜1モル%の範囲であり、かつ極めて有利には0.05モル%〜0.5モル%の範囲である(図8−条件:4−メトキシブロモベンゼン2ミリモル、Pd(OAc)2/BuPAd2 1:3、NEt3 1.1当量、トルエン2ml、80℃、16時間、CO/H2 5バール)。
【0017】
均一なパラジウム触媒系は、ホスファンの量の増大によってパラジウム金属の堆積に対して安定化されていてもよいことは一般に公知である。しかしパラジウムと比較して高すぎるホスファンの量によって、(ヘテロ)芳香族化合物の達成可能な変換率は低減することが判明した。従って、本発明による反応におけるパラジウム:ホスファン比(モル比)は有利には、1:0.1〜1:20、好ましくは1:1〜1:10および特に有利には1:1〜1:8の範囲であってよい。
【0018】
反応の間に設定される温度は、当業者が決定することができる。意図された反応が十分に早い時間内に進行する程度に高いが、しかし可能であれば本発明による反応中で副生成物の範囲をできる限り低く維持することができる程度に低いほうがよい。50℃より高い温度および200℃より低い温度が有利であることが判明した。70℃より高く、かつ170℃より低い範囲の温度は特に有利である。異なった系に関して、一般的な作業手順と同様に得られる結果は図3および図4に示されている。
【0019】
(ヘテロ)芳香族化合物という表現は、芳香族化合物およびヘテロ芳香族化合物の両方が一緒に含まれると解釈すべきである。Hal′−置換された(ヘテロ)芳香族化合物として、この目的のために当業者にとって適切な全ての化合物を選択することができ、有利にはHal′モノ置換された(ヘテロ)芳香族化合物を使用すべきである。工業的な規模でのブロモ−もしくはクロロ(ヘテロ)芳香族化合物の使用はさらに有利である。というのは、ヨウ化(ヘテロ)芳香族は一般により重要な出発物質だからである。Hal′置換された(ヘテロ)芳香族化合物は、この場合、有利には適切に置換された(C6〜C18)−アリール−、(C3〜C18)−ヘテロアリール化合物であってよい。
【0020】
パラジウム触媒はたとえばパラジウム(0)化合物またはパラジウム(II)塩または適切な錯体前駆体と、一般式(I)の配位子との反応によってインサイチューで製造することができる。さらに、パラジウム配位子錯化合物は、金属塩または適切な錯体前駆体と、一般式(I)の配位子との反応およびその後の単離によって得ることができる。
【0021】
金属塩の例は、パラジウムの金属塩化物、臭化物、ヨウ化物、シアン化物、硝酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、アセチルアセトネート、ヘキサフルオロアセチルアセトネート、テトラフルオロボレートまたはトリフレートである。
【0022】
適切な錯体前駆体の例は以下のものである:
塩化シクロオクタジエンパラジウム、ヨウ化シクロオクタジエンパラジウム、塩化1,5−ヘキサジエンパラジウム、ヨウ化1,5−ヘキサジエンパラジウム、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)、
トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)、
塩化ビス(アセトニトリル)パラジウム(II)、
臭化ビス(アセトニトリル)パラジウム(II)、
塩化ビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)、
臭化ビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)、
ヨウ化ビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)、ビス(アリル)パラジウム、ビス(メタリル)パラジウム、塩化アリルパラジウム二量体、塩化メタリルパラジウム二量体、二塩化テトラメチルエチレンジアミンパラジウム、二臭化テトラメチルエチレンジアミンパラジウム、二ヨウ化テトラメチルエチレンジアミンパラジウム、ジメチルテトラメチルエチレンジアミンパラジウム。
【0023】
本発明では、約300:1:3の比の基質:パラジウム触媒:配位子と、適切な量のトルエンおよび塩基とをオートクレーブ中で混合する手順が有利に使用される。引き続き、オートクレーブをたとえば合成ガスで複数回フラッシュし、かつ該混合物をたとえば20バールの合成ガス圧で、有利には95〜105℃に加熱する。反応混合物は、この圧力で約4時間、上記の設定温度に維持される。混合物が冷却されたら、濾別し、かつ濾液を当業者に公知の方法で後処理する。しかし反応混合物は一般に純粋なので、その後の反応で直ちに使用することができる。
【0024】
本発明の時点で、ここに示した単座配位子系を還元カルボニル化における適切な触媒系として使用することによって、極めて低い副生成物の範囲で95%を上回る場合もあるほど良好な(ヘテロ)芳香族化合物の収率が得られることが可能となることは全く示唆はなく、これは従来技術の最も知られた系(tBu3P)と比較して、ふたたび、著しい改善である。
【0025】
(C1〜C8)−アルキル基は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基またはオクチル基およびこれらの全ての結合異性体であるとみなすべきである。
【0026】
本発明による定義の文脈で(C5〜C20)−アルキル基とは、5個〜最大で20個のC原子を有する適切な基である。
【0027】
基(C1〜C8)−アルコキシは、基(C1〜C8)−アルキルに相応するが、ただし、これは酸素原子を介して分子に結合している。
【0028】
(C2〜C8)−アルコキシアルキルとは、アルキル鎖が少なくとも1の酸素官能基により中断されている基を意味し、その際、2つの酸素原子が相互に結合していることはあり得ない。炭素原子の数は、基に含有されている炭素原子の総数を示している。
【0029】
(C3〜C5)−アルキレン橋とは、3〜5個のC原子を有する炭素鎖であり、この鎖は、2つの異なったC原子を介して意図される分子に結合している。
【0030】
前のいくつかの段落にこれまで記載した基は、ハロゲンおよび/またはヘテロ原子を有し、N、O、P、S、Si原子を有する基によりモノ置換またはポリ置換されていたもよい。これらは特に、その鎖中にこれらのヘテロ原子を1つ以上有するか、またはこれらのヘテロ原子を介して分子に結合している上記の種類のアルキル基である。第一級の、場合により線状の(C3〜C20)−アルキル基は、本発明による定義の文脈では、(C1〜C8)−アルキル基に相応するとみなされるが、しかし、分岐が最も早ければC2、さらに有利にはC3、より有利にはC4、特に有利にはC5の原子または基に存在している。
【0031】
本発明の文脈での(C1〜C8)−アシルオキシは、最大で8個のC原子を有する上記の(C1〜C8)−アルキル基であり、これはCOO官能基を介して分子に結合している。
【0032】
本発明の文脈での(C1〜C8)−アシルは、最大で8個のC原子を有する上記の(C1〜C8)−アルキル基であり、これはCO官能基を介して分子に結合している。
【0033】
(C6〜C18)−アリール基は、6〜18個のC原子を有する芳香族基を意味すると理解される。特に、これらはフェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、ビフェニル基または関連する分子に縮合した前記の種類の系、たとえばインデニル系のような化合物を含み、場合により(C1〜C8)−アルキル、(C1〜C8)−アルコキシ、(C2〜C8)−アルコキシアルキル、NH(C1〜C8)−アルキル、N((C1〜C8)−アルキル)2、OH、O(C1〜C8)−アルキル、NO2、NH(C1〜C8)−アシル、N((C1〜C8)−アシル)2、F、Cl、CF3、(C1〜C8)−アシル、(C1〜C8)−アシルオキシ、(C7〜C19)−アラルキル基、(C4〜C19)−ヘテロアラルキルにより置換されていてもよい。
【0034】
(C7〜C19)−アラルキル基は、(C1〜C8)−アルキル基を介して分子に結合している(C6〜C18)−アリール基である。
【0035】
(C3〜C18)−ヘテロアリール基は、本発明の文脈で3〜18個のC原子の5員、6員もしくは7員の芳香族環であり、これはたとえば窒素、酸素または硫黄のようなヘテロ原子を環中に含んでいる。このようなヘテロ原子は特に1−フリル、2−フリル、3−フリル、1−ピロリル、2−ピロリル、3−ピロリル、1−チエニル、2−チエニル、3−チエニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−インドリル、3−インドリル、4−インドリル、5−インドリル、6−インドリル、7−インドリル、3−ピラゾリル、4−ピラゾリル、5−ピラゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、5−イミダゾリル、アクリジニル、キノリニル、フェナントリジニル、2−ピリミジニル、4−ピリミジニル、5−ピリミジニル、6−ピリミジニルのような基であるとみなされる。ヘテロ芳香族化合物は、上記の(C6〜C18)−アリール基と同様に置換されていてよい。
【0036】
(C4〜C19)−ヘテロアルキルは、(C7〜C19)−アラルキル基に相応するヘテロ芳香族系を意味すると理解される。
【0037】
ハロゲン(Hal)は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素である。Hal′は、塩素、臭素、ヨウ素である。
【0038】
実施例:
一般的な実験の記載
触媒および配位子を不活性のシュレンクフラスコ中に秤量し、溶剤を添加し、かつ混合物を約30分間攪拌した(予め形成)。引き続き出発材料および標準液(ドデカン0.25当量)を添加した(GC試料!)。その間に、固体の塩基を別の5mlバイアルに秤量し、複数回排気処理し、かつアルゴンでエアレーションした。隔壁を介して液体の塩基をバイアルに添加した。この後、基質−触媒溶液2mlを、それぞれのバイアルに注入し、かつ電磁攪拌機により塩基と混合した。この後、該バイアルを準備したオートクレーブ中に配置し、かつアルゴン流下で閉じた。合成ガスで複数回フラッシングをした後、所望の量のガスを室温で添加することができ、かつオートクレーブを加熱した。下方に配置された電磁攪拌機により、個々のバイアルの十分な混合もまた、これが相応して対流によって行われるのではない限り、確保された。反応の後で、人肌の温度のオートクレーブをさらに氷浴中で5℃より低い温度に冷却し、かつ残りのガスをゆっくりと換気した。引き続き、ガスクロマトグラフィーのための試料を個々のバイアルから採取し、セライトで濾過し、かつ酢酸エチルで希釈した。変換率または収率の測定は市販の参照化合物を使用して別々の補正によって実施した。変換率と収率との相違は主として、脱ハロゲン化化合物に貢献する。ベンジルアルコールへの還元または安息香酸への酸化はここでは観察することができなかった。
【0039】
以下の表ではCn=変換率である。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】
【表3】

【0043】
【表4】

【0044】
【表5】

【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】一般的な作業手順による実験結果を示すグラフの図
【図2】一般的な作業手順による実験結果を示すグラフの図
【図3】一般的な作業手順による実験結果を示すグラフの図
【図4】一般的な作業手順による実験結果を示すグラフの図
【図5】一般的な作業手順による実験結果を示すグラフの図
【図6】一般的な作業手順による実験結果を示すグラフの図
【図7】一般的な作業手順による実験結果を示すグラフの図
【図8】一般的な作業手順による実験結果を示すグラフの図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Hal′置換された(ヘテロ)芳香族化合物およびCOおよびH2から、塩基と、一般式(I)
【化1】

[式中、
1およびR2は、相互に独立に(C5〜C20)−アルキルであり、その際、リン原子に結合しているC原子は第三級中心であり、
3は、第一級の、場合により線状の(C3〜C20)−アルキル基である]の単座ホスファン配位子を有するパラジウム触媒との存在下に、(ヘテロ)芳香族アルデヒドを製造する方法。
【請求項2】
無機塩基または有機塩基を反応に添加することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
溶剤を添加しないで、またはNMP(N−メチルピロリドン)、DMGE(ジメチルグリコールエーテル)、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、アニソール、DMF(ジメチルホルムアミド)、DMAC(ジメチルアセトアミド)、1,4−ジオキサン、MTBE、THF、アセトニトリル、ベンゾニトリル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、ジブチルエーテル、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネートからなる群から選択される溶剤の存在下で反応を実施することを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
0.05〜10MPaのCO圧力で反応を実施することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
COおよびH2を、5:1〜1:5の比で使用することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
基質に対して触媒を0.001モル%〜10モル%の量で使用することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
反応において、1:0.1〜1:20のパラジウム:ホスファン比を使用することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
70〜170℃の温度で反応を実施することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−534547(P2008−534547A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−503462(P2008−503462)
【出願日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際出願番号】PCT/EP2006/060387
【国際公開番号】WO2006/103148
【国際公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】