説明

芳香族カルボン酸のエステルの連続的製造方法

本発明は、次式(I)
Ar−COOH (I)
[式中、Arは、原子数5〜50の場合により置換されたアリール基を表す]
で表される少なくとも一種の芳香族カルボン酸と、次式(II)
−(OH) (II)
[式中、Rは、炭素原子数1〜100の場合により置換された炭化水素残基を表し、そして
nは、1〜10の数を表す]
で表される少なくとも一種のアルコールとを、少なくとも一種のエステル化触媒の存在下に、モノモード−マイクロ波アプリケータのマイクロ波の伝播方向にその長軸がある反応管中でマイクロ波照射下に反応させてエステルとする、芳香族カルボン酸エステルの連続的製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業的規模で、マイクロ波照射の下に芳香族カルボン酸のエステルを連続的に製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エステルは工業的に非常に重要な物質群であり、多様な用途があり、例えば可塑剤もしくは潤滑剤としてまたは化粧料及び医薬品の成分として使用されている。実証されている多くの場合に使用されるエステルの製造方法は、触媒の存在下でのカルボン酸とアルコールとの縮合である。この際、反応混合物は、通常、数時間加熱され、そして生じた水は除去される。加えて、密閉系中で加圧及び高温下にエステル化を行う方法も知られている。例えば、国際公開第2007/126166号パンフレット(特許文献1)は、200〜350℃の温度及び10barまでの圧力下でのアルコールによる脂肪酸の慣用の熱エステル化法を開示している。しかし、進行中に生ずる反応水を過剰のアルコールと共に連続的に除去するその数時間に渡る反応では、メチルエステルへの不完全な反応しか達成されず、そのため粗製生成物の煩雑な仕上げ処理もしくは二次処理が必要である。更に、このような高温反応では反応混合物の腐食性も問題であり、これは一方では反応容器を痛め、他方ではこうして製造されたエステル中に望ましくない金属含分を招く。
【0003】
エステル合成のためのより新しい方策は、マイクロ波により援助されたカルボン酸とアルコールとの反応であり、それによって、特に、満足な収量のために必要な反応時間が大きく短縮される。
【0004】
Q.Yangら(Synth.Commun.2008,38,4107−4115)(非特許文献1)は、マイクロ波照射の下で、様々なカルボン酸をアルコールで酸で触媒してエステル化する方法を開示している。この反応は、実験室規模で100℃で行われ、高い転化率を与える。
【0005】
米国特許第2005/0274065号明細書(特許文献2)は、触媒の存在下に及び/またはマイクロ波エネルギーの影響下に、脂肪酸をアルコールでエステル化する方法を開示している。一つの具体的な実施形態では、受け器中に存在する反応物を連続的にポンプ循環し、その際にマイクロ波アプリケータ中にある攪拌容器中に通す。マイクロ波アプリケータに数回通して始めて、高いエステル化度が達成される。
【0006】
しかし、このようなマイクロ波援助反応の実験室から工業的規模へのスケールアップ、それ故、工業的な用途に重要な空時収量で年間数トン、例えば数十トン、数百トンまたは数千トンの生産に適したプラントの開発は、これまで実現できていない。これの原因は、一つは、反応物中へのマイクロ波の侵入深度が通常数ミリメータ乃至数センチメータに限定され、このことが、特にバッチプロセスで行われる反応では小さな容器に限定されるかまたは攪拌反応器では非常に長い反応時間を招くことである。より多量の物質量をマイクロ波で照射するのに望ましい場の強さの増強は、特にこれまで化学反応のスケールアップに好ましく使用されてきたマルチモード装置では、その際起こる放電現象及びプラズマ形成によって厳しく制限される。更に、マイクロ波オーブン中に入射されるマイクロ波がその壁及び反応物の所で多かれ少なかれ不制御に反射することによって起き、マルチモード−マイクロ波装置中で反応物の局所的な過熱を招くマイクロ波場の不均一性が規模拡大の際の問題である。加えて、反応の際にしばしば変化する、反応混合物のマイクロ波吸収係数は、安全で再現性のある反応の実行という点で困難性を招く。
【0007】
国際公開第90/03840号パンフレット(特許文献3)は、実験室規模の連続式マイクロ波反応器中で、様々な化学反応、例えばエステル化を行うための連続的方法を開示している。しかし、達成される収量、並びにマルチモードで稼働されるマイクロ波の24mlの反応容積は、工業分野へのスケールアップを可能としない。反応物のマイクロ波吸収に関してのこの方法の効率は、マルチモード−マイクロ波アプリケータ中でアプリケータ空間中に程度の差はあれ均一に分布してしまいそしてチューブコイル上に集中しないマイクロ波エネルギーの故に低い。入射されるマイクロ波出力を強く高めると、望ましくないプラズマ−放電、またはいわゆる熱暴走効果を招く恐れがある。更に、アプリケータ空間中でマイクロ波場が、ホットスポットと称される経時変化する空間的な非均一性を示し、これが大規模での安全でかつ再現性のある反応の実行を不可能にする。
【0008】
更に、一つの空間方向にだけ広がりそして正確な寸法の導波管によって反応容器に集中される単一波方式で作動する、モノモードもしくはシングルモードマイクロ波アプリケータが知られている。確かに、この装置はより高い局所的な場の強さを可能にするが、形状に対する要求の故に(例えば、電場の強さは、それの波頂で最も高くなり、そしてノードのところで0に近くなる)、従来実験室規模の小さな反応容積(≦50ml)に制限されてきた。
【0009】
例えば、Chematら(J.Microwave Power and Electromagnetic Energy 1998,33,88−94(非特許文献2))は、モノモードマイクロ波キャビティ内での様々な連続式に行われるエステル化を記載しており、ここでマイクロ波導波管は反応管に対して垂直に向いている。この際、不均一系触媒エステル化において、加速された反応が観察される。しかし、マイクロ波照射に利用できる体積が僅か20mlであり、そのため、有利な収量を達成するためには反応体を照射域に何度も通す必要がある。反応管の横断面積を相当に大きくすることは、アプリケータの形状の理由から可能ではなく、またマイクロ波の低い侵入深さの故からもスケールアップには適していない。
【0010】
Pipusら(First European Congress on Chemical Engineering,Firenze,Italy,May4−7,1997;AIDIC:Milan,Italy,1997;pp.45−48(非特許文献3))は、マイクロ波放射線で加熱された連続式管状反応器中で安息香酸をエタノールで均一系触媒及び不均一系触媒でエステル化する方法を開示している。7atmの圧力及び140℃の温度下に、反応器中127秒間の滞留時間で30%の転化率が達成される。
【0011】
Wilsonら(Org.Process Res.Dev.2004,8,535−538(非特許文献4))は、2,4,6−トリメチル安息香酸及びメタノールからなる混合物を、4mlの容積を有するガラスコイル中で、モノモーダルのマイクロ波場に通してその際にエステル化する、連続式マイクロ波反応器を開示している。この構造の形状条件の故に、該方法は、工業的な用途に転用されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第2007/126166号パンフレット
【特許文献2】米国特許第2005/0274065号明細書
【特許文献3】国際公開第90/03840号パンフレット
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Q.Yangら,Synth.Commun.2008,38,4107−4115
【非特許文献2】Chematら,J.Microwave Power and Electromagnetic Energy 1998,33,88−94
【非特許文献3】Pipusら,First European Congress on Chemical Engineering,Firenze, Italy,May4−7,1997;AIDIC:Milan,Italy,1997;pp.45−48
【非特許文献4】Wilsonら,Org.Process Res.Dev.2004,8,535−538
【非特許文献5】K.Lange,K.H.Loecherer,Taschenbuch der Hochfrequenztechnik”,Band2,Seite K21ff
【非特許文献6】D.Bogdal,Microwave−assisted Organic Synthesis,Elsevier 2005
【非特許文献7】“Microwave Synthesis”von B.L.Hayes,CEM Publishing 2002
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
それ故、芳香族カルボン酸及びアルコールを、マイクロ波照射下で、工業的規模でもエステルに転化することができる、芳香族カルボン酸のエステルの製造方法が求められていた。この際、できるだけ高い、すなわち定量的なまでの転化率及び収量が達成されるべきである。更に、該方法は、できるだけエネルギー節約型のエステル製造を可能にするべきであり、すなわち使用されるマイクロ波の出力は、反応物によってできるだけ定量的に吸収されるべきであり、それ故該方法は、高いエネルギー効率を供するべきである。この際、副生成物は全く生じないかまたは副次的な量でのみ生ずるべきである。更にエステルは、できるだけ低い金属含有量及び低い個有色を有するべきである。加えて、該方法は、安全かつ再現可能な反応の実行を保証するべきである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
驚くべきことに、モノモード−マイクロ波アプリケータのマイクロ波の伝播方向にその長軸がある反応管中で、マイクロ波照射を用いて短時間加熱するだけで、連続的な方法で芳香族カルボン酸をアルコールと直接反応させることによって、工業的に重要な量で芳香族カルボン酸のエステルを製造できることことが見出された。この際、マイクロ波アプリケータ中に入射されるマイクロ波エネルギーは、実際上定量的に反応物によって吸収される。加えて、本発明の方法は、プロセス実行の間の高い安全性を有し、かつ調節される反応条件の高い再現性を供する。本発明の方法に従い製造されるエステルは、慣用の製造方法と比較して、追加的なプロセスステップ無しでは達成できない高い純度及び低い固有色を示す。
【0016】
本発明の対象は、カルボン酸エステルの連続式製造方法であって、次式(I)
Ar−COOH (I)
[式中、Arは、原子数5〜50の場合により置換されたアリール基を表す]
で表される少なくとも一種の芳香族カルボン酸を、次式(II)
−(OH) (II)
[式中、
は、炭素原子数1〜100の場合により置換された炭化水素残基を表し、そして
nは、1〜10の数を表す]
で表される少なくとも一種のアルコールと、
少なくとも一種のエステル化触媒の存在下及びマイクロ波照射下に反応管中で反応させてエステルとし、前記反応管の長軸は、モノモード−マイクロ波アプリケータのマイクロ波の伝播方向にある、前記方法である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
好ましくは、Arは、芳香族系に結合した少なくとも一つのカルボキシル基を有するアリール基である。芳香族系とは、(4n+2)π電子を有する環状全共役(durchkonjugierte)系と介され、ここでnは自然数であり、好ましくは1、2、3、4または5である。該芳香族系は、単環式もしくは多環式、例えば二環式または三環式であることができる。該芳香族系は、好ましくは、6〜25個の原子、特に好ましくは6〜18個の原子を有する。該芳香族系は好ましくは炭素原子から形成される。更に別の好ましい実施形態の一つでは、これは、炭素原子の他に、一つまたはそれ以上のヘテロ原子、例えば窒素、酸素及び/または硫黄を含む。このような芳香族系の例は、ベンゼン、ナフタレン、インドール、フェナントレン、ピリジン、フラン、ピロール、チオフェン及びトリアゾールである。該芳香族系は、カルボキシル基の他に、一つまたはそれ以上の、例えば一つ、二つ、三つまたはそれ以上の同一かまたは異なる他の置換基を有することができる。適当な他の置換基は、例えば、アルキル基、アルケニル基、ハロゲン化アルキル基、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシ基、ポリ(アルコキシ)基、ハロゲン基、カルボキシル基、アミド基、シアノ基、ニトリル基、及び/またはニトロ基である。これらの置換基は、該芳香族系の任意の位置に結合することができる。しかし前記アリール基は、最大でも、それが原子価数を持つだけの置換基を有する。
【0018】
特定の実施形態の一つでは、式(I)のアリール基Arは更に別のカルボキシル基を有する。それで、本発明の方法は、例えば二つまたはそれ以上のカルボキシル基を有する芳香族カルボン酸の反応にも適してる。エステル化度は、反応混合物中の酸(I)とアルコール(II)との間の化学理論量を介して制御することができる。
【0019】
アルキルアリールカルボン酸、例えばアルキルフェニルカルボン酸のエステル化のための本発明の方法が特に適している。これは、カルボキシル基を有するアリール基Arが追加的に少なくとも一つのアルキル残基またはアルケニル残基を有する芳香族カルボン酸である。該方法は、炭素原子数1〜50、好ましくは炭素原子数2〜20、特に炭素原子数1〜12、例えば炭素原子数1〜4の少なくとも一つのアルキル基を有するアルキル安息香酸のエステル化に特に有利である。
【0020】
更に、本発明の方法は、アルキル基Arが、一つまたはそれ以上、例えば二つ、三つまたはそれ以上のヒドロキシル基及び/またはヒドロキシアルキル基を有する芳香族カルボン酸のエステル化に特に適している。この際、特に少なくとも当モル量の式(II)のアルコールとのエステル化では、カルボキシル基のエステル化が選択的に起こり; ポリエステルを生成するフェノール性OH基のエステル化は起こらない。
【0021】
適当な芳香族カルボン酸は、例えば、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸; ナフタレンカルボン酸、ピリジンカルボン酸及びナフタレンジカルボン酸の各種異性体、並びにトリメリト酸、トリメシン酸、ピロメリト酸及びメリト酸; メトキシ安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシメチル安息香酸、ヒドロキシメトキシ安息香酸、ヒドロキシジメトキシ安息香酸、ヒドロキシイソフタル酸、ヒドロキシナフタレンカルボン酸、ヒドロキシピリジンカルボン酸及びヒドロキシメチルピリジンカルボン酸、ヒドロキシキノリンカルボン酸の各種異性体; 並びにo−トリル酸、m−トリル酸、p−トリル酸、o−エチル安息香酸、m−エチル安息香酸、p−エチル安息香酸、o−プロピル安息香酸、m−プロピル安息香酸、p−プロピル安息香酸、3,4−ジメチル安息香酸、及びチオフェンカルボン酸である。異なるアリール−及び/またはアルキルアリールカルボン酸の混合物も同様に適している。
【0022】
好ましい実施形態の一つでは、Rは脂肪族基を表す。これは好ましくは1〜24個、特に好ましくは2〜18個、特に3〜6個の炭素原子を有する。この脂肪族基は線状、分枝状または環状であることができる。これは更に飽和または不飽和であることができ、好ましくはこれは飽和である。その炭化水素残基は、置換基、例えばハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、ヒドロキシ基、C〜Cアルコキシアルキル基、シアノ基、ニトリル基、ニトロ基及び/またはC〜C20アリール基、例えばフェニル基を有することができる。前記のC〜C20アリール基は、それらが場合によりハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、ヒドロキシル基、C〜C20アルキル基、C〜C20アルケニル基、C〜Cアルコキシ基、例えばメトキシ基、エステル基、アミド基、シアノ基、ニトリル基及び/またはニトロ基によって置換されていてもよい。特に好ましい脂肪族基は、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル及びtert−ブチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−オクチル、n−デシル、n−ドデシル、トリデシル、イソトリデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、及びメチルフェニルである。
【0023】
更に別の好ましい実施形態の一つでは、Rは、場合により置換されたC〜C12アリール基、または環員数5〜12の場合により置換されたヘテロ芳香族基を表す。好ましいヘテロ原子は、酸素、窒素及び硫黄である。前記のC〜C12アリール基もしくは環員数5〜12のヘテロ芳香族基には、更なる環が縮合してもよい。それ故、前記アリールもしくはヘテロ芳香族基は単環式または多環式であることができる。適当な置換基の例はハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、並びにアルキル基、アルケニル基、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシ基、エステル基、アミド基、ニトリル基及びニトロ基である。
【0024】
具体的な実施形態の一つでは、基Rは、一つまたはそれ以上、例えば二つ、三つ、四つ、五つ、六つまたはそれ以上の更なるヒドロキシ基、但し基Rの炭素原子数もしくはアリール基の原子価数より多くないヒドロキシル基を有する。ヒドロキシル基は、隣接する炭素原子にまたは炭化水素残基の更に除去された炭素原子に結合することができるが、多くても炭素原子一つ当たり一つのOH基である。それ故、本発明の方法は、ポリオール類、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ソルビトール、ペンタエリトリトール、フルクトース及びグルコースのエステル化にも適している。この際、該エステル化は、全エステル(Vollester)または部分エステルまで行うことができる。この際、エステル化度は、例えば、反応混合物中のカルボン酸とアルコールとの化学理論量を介して制御することができる。
【0025】
カルボン酸(I)が二つもしくはそれ以上のカルボキシル基をそしてアルコール(II)が二つまたはそれ以上のヒドロキシル基を含む場合または両反応体がそれぞれ少なくとも一つのカルボキシル基及び少なくとも一つのヒドロキシル基を有する場合には、本発明の方法に従いオリゴマー及びポリマーを製造することができる。このような重縮合では、マイクロ波照射中に上昇する反応混合物の粘度を、装置設計の際に考慮すべきである。
【0026】
更に別の好ましい実施形態の一つでは、Rは、ヘテロ原子が割り込んだアルキル基を表す。特に好ましいヘテロ原子は酸素及び窒素である。但し、基Rが窒素原子を含む場合は、この窒素原子は酸性プロトンを持たない。
【0027】
それ故、Rは好ましくは次式(III)の基を表す。
【0028】
−(R−O)−R (III)
式中、
は、炭素原子数2〜18、好ましくは2〜12、特に2〜4のアルキレン基、例えばエチレン、プロピレン、ブチレンまたはこれらの混合物を表し、
は、水素、または炭素原子数1〜24の炭化水素残基、または式−R−NR1011の基を表し、
nは、1〜500の数、好ましくは2〜200の数、特に3〜50の数、例えば4〜20の数を表し、そして
10、R11は、互いに独立して、炭素原子数1〜24、好ましくは炭素原子数2〜18の脂肪族基、環員数5〜12のアリール基もしくはヘテロアリール基、ポリ(オキシアルキレン)単位数1〜50のポリ(オキシアルキレン)基を表し、ここでポリオキシアルキレン単位は炭素原子数2〜6のアルキレンオキシド単位から誘導され、またはR10とR11は、それらが結合する窒素原子と一緒になって、環員数4、5、6またはそれ以上の環を形成する。
【0029】
適当なアルコールの例は、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、tert−ブタノール、ペンタノール、ネオペンタノール、n−ヘキサノール、iso−ヘキサノール、シクロヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、デカノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール、エイコサノール、エチレングリコール、2−メトキシエタノール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、フェノール、ナフトール、及びこれらの混合物である。更に、天然の原料から得られる脂肪アルコール混合物、例えばココナッツ脂肪アルコール、パーム核脂肪アルコール及び獣脂アルコールも適している。
【0030】
本方法は、安息香酸メチルエステル、安息香酸エチルエステル、安息香酸n−ヘキシルエステル、安息香酸o−トリルエステル、p−トリル酸メチルエステル、p−ヒドロキシ安息香酸メチルエステル、p−ヒドロキシ安息香酸エチルエステル、ニコチン酸メチルエステル、ニコチン酸エチルエステル、ニコチン酸フェニルエステルの製造に特に適している。
【0031】
カルボン酸(I)が二つまたはそれ以上のカルボキシル基をそしてアルコール(II)が二つまたはそれ以上のヒドロキシル基を含む場合には、本発明の方法に従いポリマーを製造することもできる。この際、マイクロ波照射の間に上昇する反応混合物の粘度を装置設計の際に考慮すべきである。
【0032】
本発明の方法では、芳香族カルボン酸(I)及びアルコール(II)は任意の比率で互いに反応させることができる。好ましくは、カルボン酸とアルコールとの反応は、それぞれカルボキシル基及びヒドロキシル基のモル当量を基準にして、20:1〜1:20、好ましくは10:1〜1:10、特に3:1〜1:3、例えば1.5:1〜1:1.5の比率で行われる。具体的な実施形態の一つでは、カルボン酸とアルコールは当モルで使用される。芳香族カルボン酸(I)が一つまたはそれ以上のヒドロキシル基を有する場合には、反応は、好ましくは、少なくとも当モル割合のアルコール(II)と行われ、特に好ましくは芳香族カルボン酸(I):アルコール(II)との比率を、1:1.01〜1:50、特に1:1.5〜1:20、例えば1:2〜1:10として行われる。
【0033】
多くの場合に、過剰のアルコールを用いて、すなわちヒドロキシル基とカルボキシル基とのモル比を少なくとも1.01:1.00、特に50:1〜1.02:1、例えば10:1〜1.1:1として作業することが有利であることが判明した。この際、カルボキシル基は実際上定量的にエステルに転化される。この方法は、使用されるアルコールが易揮発性の場合に特に有利である。ここで易揮発性とは、アルコールが常圧下に好ましくは200℃未満、特に好ましくは160℃未満、例えば100℃未満の沸点を持ち、それ故蒸留によってエステルから分離できることを意味する。
【0034】
エステル化は、本発明の方法においては、均一系触媒、不均一系触媒またはこれらの混合物の存在下に行われる。この際、酸性触媒もアルカリ性触媒も適している。本発明において好ましいエステル化触媒は、酸性無機、有機金属または有機触媒、及び複数種のこのような触媒の混合物である。
【0035】
酸性無機触媒としては、本発明の意味において、例えば硫酸、リン酸、ホスホン酸、次亜リン酸、硫酸アルミニウム水和物、明礬、酸性シリカゲル及び酸性水酸化アルミニウムが挙げられる。更に、例えば、一般式Al(OR15のアルミニウム化合物及び一般式Ti(OR15のチタン酸塩も酸性無機触媒として使用可能であり、ここで基R15は、それぞれ同一かまたは異なることができ、そして互いに独立してC〜C10アルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、iso−ペンチル、sec−ペンチル、neo−ペンチル、1,2−ジメチルプロピル、iso−アミル、n−ヘキシル、sec−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニルまたはn−デシル、C〜C12シクロアルキル基、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル及びシクロドデシルから選択され、好ましいものは、シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘプチルである。好ましくは、Al(OR15またはTi(OR15中の基R15はそれぞれ同一であり、イソプロピル、ブチル及び2−エチルヘキシルから選択される。
【0036】
好ましい酸性有機金属触媒は、例えば、ジアルキルスズ酸化物(R15SnOから選択され、ここでR15は上述に定義した通りである。酸性有機金属触媒として特に好ましい物の一つはジ−n−ブチルスズ酸化物であり、これはいわゆるオキソスズ(Oxo−Zinn)またはFascat(登録商標)ブランドとして商業的に入手できる。
【0037】
好ましい酸性有機触媒は、例えばホスフェート基、スルホン酸基、スルフェート基またはホスホン酸基を有する、酸性有機化合物である。特に好ましいスルホン酸類は、少なくとも一つのスルホン酸基及び炭素原子数1〜40、好ましくは炭素原子数3〜24の少なくとも一つの飽和もしくは不飽和の線状、分枝状及び/または環状炭化水素残基を含む。特に好ましいものは、芳香族スルホン酸類、特に一つもしくはそれ以上のC〜C28アルキル基を有するアルキル芳香族系モノスルホン酸類、特にC〜C22アルキル基を有するアルキル芳香族系モノスルホン酸類である。適当な例は、メタンスルホン酸、ブタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、2−メシチレンスルホン酸、4−エチルベンゼンスルホン酸、イソプロピルベンゼンスルホン酸、4−ブチルベンゼンスルホン酸、4−オクチルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジドデシルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸である。また、酸性イオン交換体も酸性有機触媒として使用することができ、例えば、約2モル%のジビニルベンゼンで架橋されたスルホン酸基含有ポリ(スチレン)樹脂を使用し得る。
【0038】
本発明方法の実行に特に好ましいものは、ホウ酸、リン酸、ポリリン酸及びポリスチレンスルホン酸である。特に好ましいものは、一般式Ti(OR15のチタン酸塩、特にチタンテトラブチレート及びチタンテトライソプロピレートである。
【0039】
酸性無機、有機金属または有機触媒を使用することが望ましい場合には、本発明では0.01〜10重量%、好ましくは0.02〜2重量%の触媒が使用される。
【0040】
更に別の好ましい実施形態の一つでは、マイクロ波照射は、酸性の固形触媒の存在下に行われる。このような不均一系触媒は、反応混合物中に懸濁しそして反応混合物と一緒に反応管中にポンプ輸送することができる。特に好ましい実施形態の一つでは、場合によっては溶剤と混合された反応混合物を、反応管中に固定された固定床触媒上に導きそしてこの際マイクロ波放射に曝露する。適当な固形触媒は、例えばゼオライト、シリカゲル、モンモリロナイト及び(部分)架橋ポリスチレンスルホン酸であり、これらは場合によっては触媒活性金属塩が含浸されていてもよい。固形相触媒として使用することができる、ポリスチレンスルホン酸に基づく適当な酸性イオン交換体は、例えばRohm & Haas社からAmberlyst(登録商標)のブランド名で入手することができる。
【0041】
本発明のエステル製造方法は、カルボン酸、アルコール及び触媒を混合し、その後、この混合物を反応管中でマイクロ波で照射することによって行われ、ここでこの反応管の長軸は、モノモード−マイクロ波アプリケータ中のマイクロ波の伝播方向にある。
【0042】
好ましくは、マイクロ波による反応混合物の照射は、マイクロ波発生器と接続された中空導体内部に存在するマイクロ波に対しほぼ透明な反応管中で行われる。好ましくは、反応管は、中空導体の中央対称軸と軸状に整列される。
【0043】
マイクロ波アプリケータとして機能する中空導体は、好ましくは空洞共振器として構成される。更に、好ましくは、中空導体に吸収されないマイクロ波はそれの端部で反射される。好ましくは、空洞共振器の長さは、その中に定常波が生ずるように寸法決めされる。反射タイプの共振器としてマイクロ波アプリケータを構成することによって、発生器から供給される同じ出力での電場強度の局所的強化及び高められたエネルギー利用が達成される。
【0044】
空洞共振器は、好ましくはE01n−モードで稼働され、ここでnは整数を表し、共振器の中央対称軸に沿うマイクロ波の電場最大点の数を示す。この稼働の際、電場は、空洞共振器の中央対称軸の方向に方向づけされる。これは、中央対称軸の範囲おいて最大を有し、そして外套面に向かうにつれて0の値まで減少する。この電場形態は、中央対称軸の周りに回転対称的に存在する。nが整数である長さを有する空洞共振器を使用することによって、定常波の形成が可能となる。反応管中を流れる反応物の所望の流速、必要な温度、及び共振器中での必要な滞留時間に応じて、共振器の長さが、使用されるマイクロ波放射線の波長に相対して選択される。好ましくは、nは1〜200、特に好ましくは2〜100、特に4〜50、就中3〜20の整数、例えば3、4、5、6、7、8、9または10である。
【0045】
空洞共振器のE01n−モードは、英語ではTM01n−モードとも称される。例えば、K.Lange,K.H.Loecherer,Taschenbuch der Hochfrequenztechnik”,Band2,Seite K21ff(非特許文献5)を参照されたい。
【0046】
マイクロ波アプリケータとして機能する中空導体中へのマイクロ波エネルギーの入射は、適当な寸法のホールまたはスリットを介して行うことができる。本発明の特に好ましい実施形態の一つでは、マイクロ波による反応混合物の照射は、マイクロ波の同軸変換を備えた中空導体中に存在する反応管中で行われる。この方法に特に好ましいマイクロ波装置は、空洞共振器、マイクロ波場を中空共振器にカップリングするためのカップリングデバイス、及び共振器に反応管を通すための二つの相対する末端壁上のそれぞれの一つの開口から構成される。空洞共振器中へのマイクロ波のカップリングは、好ましくは、空洞共振器中に突出するカップリングピンを介して行われる。好ましくは、カップリングピンは、カップリングアンテナとして機能する、好ましくは金属製の内部導体管として構成される。特に好ましい実施形態の一つでは、このカップリングピンは、末端開口部の一つを通って空洞共振器中に突出する。特に好ましくは、反応管は、同軸変換器の内部導体管に接続し、そして特にはそれの空洞を通って空洞共振器中に通される。好ましくは、反応管は、空洞共振器の中央対称軸と軸状に整列される。このためには、空洞共振器は、好ましくは、反応管を通すために相対する二つの末端壁上にそれぞれ一つの中央開口を有する。
【0047】
カップリングピン中へのまたはカップリングアンテナとして機能する内部導体管中へのマイクロ波の伝送は、例えば、同軸線路を用いて行うことができる。好ましい実施形態の一つでは、マイクロ波場は中空導体を介して共振器に伝送され、この際、空洞共振器から突出するカップリングピンの末端が、中空導体の壁中に存在する開口を介して中空導体中へ通じており、そして中空導体からマイクロ波エネルギーが取り出されてそして共振器中にカップリングされる。
【0048】
具体的な実施形態の一つでは、マイクロ波による反応混合物の照射は、マイクロ波の同軸変換器を有するE01n円形中空導体中に軸対称的に存在するマイクロ波に対して透明な反応管中で行われる。この際、反応管は、カップリングアンテナとして機能する内部導体管の空洞を通して空洞共振器中に通される。更に別の好ましい実施形態の一つでは、マイクロ波による反応混合物の照射は、マイクロ波の軸状伝送(axialer Einspeisung)を備えたE01n空洞共振器中に通したマイクロ波に対して透明な反応管中で行われ、この際、空洞共振器の長さは、マイクロ波のn=2またはそれ以上の場の最大が生ずるように調節される。更に別の好ましい実施形態の一つでは、マイクロ波による反応混合物の照射は、マイクロ波の軸状伝送を備えたE01n空洞共振器中に通したマイクロ波に対して透明な反応器中で行われ、ここで空洞共振器の長さは、マイクロ波のn=2またはそれ以上の場の最大を有する定常波が生ずるように調節される。更に別の好ましい実施形態の一つでは、マイクロ波による反応混合物の照射は、マイクロ波の同軸変換(koaxialem Uebergang)を備えた円筒状E01n空洞共振器中に軸対称的に存在するマイクロ波に対して透明な反応管中で行われ、この際、空洞共振器の長さは、マイクロ波のn=2またはそれ以上の場の最大が生ずるように調節される。更に別の好ましい実施形態の一つでは、マイクロ波による反応混合物の照射は、マイクロ波の同軸変換を備えた円筒状E01n空洞共振器中に軸対称的に存在するマイクロ波に対し透明な反応管中で行われ、この際、空洞共振器の長さは、マイクロ波のn=2またはそれ以上の場の最大を有する定常波が生ずるように調節される。
【0049】
マイクロ波発生器、例えばマグネトロン、クライストロン及びジャイロトロンは当業者には既知である。
【0050】
本発明の方法の実行に使用される反応管は、好ましくは、マイクロ波に対しほぼ透明で、高融点の材料から作られる。特に好ましくは、非金属製の反応管が使用される。ここで、マイクロ波に対しほぼ透明とは、できるだけ少ないマイクロ波エネルギーを吸収しそしてこれを熱に変換する原材料と解される。マイクロ波エネルギーを吸収してこれを熱に変える物質の能力の目安としては、しばしば、誘電損失率tanδ=ε’’/ε’が用いられる。誘電損失率tanδは、誘電損失ε’’と誘電率ε’との比率と定義される。様々な材料のtanδ値の例は、例えばD.Bogdal,Microwave−assisted Organic Synthesis,Elsevier 2005(非特許文献6)に記載されている。本発明において適した反応管には、2.45GHz及び25℃で測定して、0.01未満のtanδ値、特に0.005未満、特に0.001未満のtanδ値を有する材料が好ましい。マイクロ波に対し透明でかつ温度安定性の好ましい材料としては、先ず第一には、鉱物ベースの原材料、例えば石英、酸化アルミニウム、サファイア、酸化ジルコニウム、窒化ケイ素及び類似物が考慮される。温度安定性のプラスチック、例えば特にフルオロポリマー、例えばテフロン、及びエンジニアリングプラスチック、例えばポリプロピレン、またはポリアリールエーテルケトン、例えばガラス繊維強化ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)も原材料として適している。反応中の温度条件に耐えるためには、特に上記のプラスチックでコーティングされた材料、例えば石英または酸化アルミニウムが反応器材料として有効であることが判明した。
【0051】
本発明の方法に特に適した反応管は、1ミリメータ〜約50cm、特に2mm〜35cm、就中5mm〜15mm、例えば10mm〜7cmの内径を有する。反応管とは、直径に対する長さの比率が5超、好ましくは10〜100,000、特に好ましくは20〜10,000、例えば30〜1,000の容器と解される。ここで、反応管の長さとは、マイクロ波照射が行われる反応管の長さと解される。反応管中には、攪拌バフル及び/または他の混合要素を設置することができる。
【0052】
本発明の方法に特に適したE01空洞共振器は、好ましくは、使用したマイクロ波放射線の少なくとも半分の波長に相当する直径を有する。好ましくは、空洞共振器の直径は、使用したマイクロ波放射線の半分の波長の1.0〜10倍、特に好ましくは1.1〜5倍、特に2.1〜2.6倍である。好ましくは、E01空洞共振器は丸い横断面を有し、これはE01円形中空導体とも称される。特に好ましくは、これは筒状の形状を有し、特に円筒状の形状を有する。
【0053】
該反応管は、通常は、入口に計量ポンプ及びマノメーター、及び出口に圧力保持デバイス及び熱交換器を備える。それ故、反応は、非常に幅の広い圧力及び温度範囲で可能である。
【0054】
カルボン酸、アルコール及び触媒からなる反応混合物の調製は、連続式、断続式または半バッチ式プロセスで行うことができる。例えば、反応混合物の調製は、上流の(半)バッチプロセスで、例えば攪拌容器中で行うことができる。好ましい実施形態の一つでは、原料としてのカルボン酸及びアルコール、並びに触媒を、互いに独立して場合により溶剤で希釈して、反応管中に入れる少し前になって初めて混合する。触媒はそのままでまたは原料のうちの一つとの混合物として反応混合物に加えることができる。例えば、カルボン酸、アルコール及び触媒の混合を混合域中で行い、それから反応混合物を反応管中に送ることが有利であることが判明した。更に、好ましくは、原料及び触媒は液体の形で本発明方法に供給される。このためには高融点及び/または高粘度の原料は、例えば溶融状態で及び/または溶剤を混合して、例えば溶液、分散液またはエマルションとして使用することができる。触媒は、反応管に入れる前に、原料の一つまたは原料混合物に加えられる。不均一系も本発明の方法に従い反応させることができ、この場合、反応物を輸送するための然るべき工業的な装置が必要である。
【0055】
反応混合物は、内部導体管中に通した末端、またはその反対側の末端から反応管中に供給することができる。そのため、反応混合物は、マイクロ波アプリケータ中を、マイクロ波の伝播方向に対して並行にまたは逆並行に通すことができる。
【0056】
管の横断面、照射域の長さ(以下、反応物がマイクロ波放射線に曝される反応管の長さと解される)、流速、空洞共振器の形状、及び入射されるマイクロ波出力を変えることによって、最大の反応温度が可能な限り速く達成されるようにそして最大温度での滞留時間が短くなって、副反応もしくは二次反応の発生が出来るだけ少なくなるように、反応条件が調節することが好ましい。反応物は、反応をより完全にするために、場合によっては中間冷却後に、反応管に数回通すことができる。ゆっくりと進行する反応の場合には、反応管を出た後の反応生成物を、なおも或る一定の時間、反応温度に維持することがしばしば有利であることが判明した。反応生成物を、反応管から出た直後に、例えば外套冷却または放圧によって冷却すると多くの場合に有利であると判明した。また、触媒を、反応管から出た後に直ぐに失活することが有利であると判明した。これは、例えば、中和によって、または不均一系触媒反応の場合には濾過によって行うことができる。
【0057】
好ましくは、マイクロ波照射によって生ずる温度上昇は、例えば、マイクロ波強度、流速の調節及び/または反応管の冷却、例えば窒素流による冷却によって最大500℃まで制限する。特に、120℃から最大400℃、特に150℃から最大300℃の温度、例えば180℃から270℃の温度で反応を行うことが有利であると判明した。
【0058】
マイクロ波照射の期間は、様々なファクター、例えば反応管の形状、入射されるマイクロ波エネルギー、特定の反応、及び所望とする転化率などに依存する。通常は、マイクロ波照射は、30分間未満の期間、好ましくは0.01秒間〜15分間、特に好ましくは0.1秒間〜10分間、特に1秒間〜5分間、例えば5秒間〜2分間の期間にわたり行われる。マイクロ波放射線の強度(出力)は、反応物が、空洞共振器から出る際に所望の最大温度を有するように調節される。好ましい実施形態の一つでは、反応生成物は、マイクロ波照射が完了した後直接、できるだけ早く120℃未満、好ましくは100℃未満、特に60℃未満の温度に冷却する。
【0059】
好ましくは、反応は、1bar(大気圧)〜500bar、特に好ましくは1.5〜200bar、特に3bar〜150bar、就中10bar〜100bar、例えば15〜50barの圧力で行われる。高められた圧力下での作業が有利であると判明し、この際、原料、生成物、場合により存在する溶剤、及び/または反応中に生成する反応水の沸点(常圧下)以上で作業される。特に好ましくは、圧力は、反応混合物がマイクロ波照射中に液状の状態に留まり、沸騰しない高さに調節される。
【0060】
副反応を避けて出来るだけ純粋な生成物を製造するためには、原料及び生成物を不活性保護ガス、例えば窒素、アルゴンまたはヘリウムの存在下に扱うことが有利であると判明した。
【0061】
たとえ原料としてのカルボン酸及びアルコールがしばしば扱いやすい反応混合物を与えるとしても、例えば反応媒体の粘度を低下させ及び/または反応混合物を(特にこれが不均一系である場合に)流動性にするために、溶剤の存在下に作業することが多くの場合に有利であると判明した。そのためには、原則的に、使用する反応条件の下に不活性でありかつ原料または生ずる生成物と反応しないものであれば、全ての溶剤を使用できる。適当な溶剤の選択にあたっての重要なファクターの一つは、一方では溶解特性をそして他方ではマイクロ波放射線との相互作用の程度を決定するそれの極性である。適当な溶剤を選択するにあたっての特に重要なファクターの一つは、それの誘電損失ε’’である。誘電損失ε’’は、マイクロ波放射線と物質との相互作用の際に熱に変換されるマイクロ波放射線の割合を示す。最後に挙げた値は、本発明の方法を実施するための溶剤の適性にとって特に重要な規準であることが判明した。
【0062】
できるだけ少ないマイクロ波吸収を示し、それゆえ反応系の加温にわずかな貢献しかしない溶剤中で作業することが特に有利であると分かった。本発明の方法に好ましい溶剤は、室温及び2450MHzで測定して、10未満、好ましくは1未満、例えば0.5未満の誘電損失ε’’を有する。様々な溶剤の誘電損失に関する一覧は、例えば、“Microwave Synthesis”von B.L.Hayes,CEM Publishing 2002(非特許文献7)に記載されている。本発明の方法には、特に、10未満のε’’値を有する溶剤、例えばN−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミドまたはアセトン、特に1未満のε’’値を有する溶剤が適している。1未満のε’’値を有する特に好ましい溶剤の例は、芳香族及び/または脂肪族炭化水素、例えばトルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラリン、ヘキサン、シクロヘキサン、デカン、ペンタデカン、デカリン並びに商業的な炭化水素混合物、例えばベンジン留分、ケロシン、ソルベントナフサ、(登録商標)Shellsol AB、Solvesso(登録商標)150、Solvesso(登録商標)200、Exxsol(登録商標)、Isopar(登録商標)及びShellsol(登録商標)タイプである。好ましくは10未満、特に1未満のε’’値を有する溶剤混合物も、本発明方法の実行に同様に好ましい。
【0063】
更に別の好ましい実施形態の一つでは、本発明の方法は、より高いε’’値、例えば5またはそれ以上のε’’値、特に10またはそれ以上のε’’値を有する溶剤中で行われる。この実施形態は、それ自体が、すなわち溶剤及び/または希釈剤の存在無しで、非常に低いマイクロ波吸収を示す反応混合物の反応において特に有効であると判明した。例えば、この実施形態は、10未満、好ましくは1未満の誘電損失ε’’を有する反応混合物において特に有効であると判明した。しかし、溶剤の添加によってしばしば観察される加速された反応混合物の加熱は、最大温度を維持するための措置を必要とする。
【0064】
溶剤の存在下に作業する場合には、反応混合物中でのそれの割合は好ましくは1〜95重量%、特に好ましくは2〜90重量%、特に5〜85重量%、就中10〜75重量%、例えば30〜60重量%である。特に好ましくは、反応は溶剤無しで行われる。
【0065】
更に別の好ましい実施形態の一つでは、反応混合物に、それに不溶性のマイクロ波を強く吸収する物質を加える。これは、反応混合物の強い局所的な加熱を招き、そしてその結果、反応を更に加速させる。一つの適したこのような熱収集体は例えばグラファイトである。
【0066】
約1cm〜1mの波長及び約300MHz〜30GHzの周波数を有する電磁放射線がマイクロ波と称される。原則的にこの周波数範囲が本発明方法に適している。好ましくは、本発明方法には、工業用、学術用、医学用、家庭用または類似の用途に許可されている周波数を有するマイクロ波放射線、例えば915MHz、2.45GHz、5.8GHzまたは24.12GHzの周波数を有するマイクロ波放射線が使用される。
【0067】
本発明方法の実施のために空洞共振器中に入射するべきマイクロ波出力は、特に、目的とする反応温度に、加えて反応管の形状、それ故、反応容積に、並びに加熱域を通る際の反応物の流速に依存する。これは、通常は、200W〜数100kW、特に500W〜100kW、例えば1kW〜70kWである。これは、一つまたは複数のマイクロ波発生器によって発生させることができる。
【0068】
好ましい実施形態の一つでは、反応は耐圧性で化学的に不活性な管中で行われ、この際、生ずる反応水、並びに場合により原料、及び存在する場合には溶剤は圧力上昇をもたらす。反応の終了の後に、過剰圧を、反応水、過剰の原料、並びに場合により溶剤の揮発及び分離のために及び/または反応生成物の冷却のために、放圧により使用することができる。更に別の実施形態の一つでは、生じた反応水を、冷却及び/または放圧の後に、慣用の方法、例えば相分離、蒸留、ストリッピング、フラッシング及び/または吸収によって分離する。
【0069】
特に高い転化率を達成するためには、多くの場合に、得られた反応生成物を、反応水を除去した後に、並びに場合によっては生成物及び/または副生成物を排出した後に、再びマイクロ波照射に付すことが有利であることが分かった。この際、場合により、使用する各反応体の比率を、消費されたまたは不足の原料の分補うことができる。
【0070】
本発明方法の利点は、モノモード−マイクロ波アプリケータのマイクロ波の伝播方向に及び特に(例えば同軸変換を備えた)E01空洞共振器の内部にその長軸がある反応管の内部の対称的マイクロ波場の中央で、反応物が非常に均一に照射されることである。この際、本発明の反応器設計は、反応を非常に高い圧力及び/または温度で行うことも可能とする。温度及び/または圧力を高めることによって、既知のマイクロ波反応器と比べても、転化率及び収量の明らかな向上が観察され、しかもこの際、望ましくない副反応及び/または着色を招かない。この際、驚くべきことに、空洞共振器中に入射されたマイクロ波エネルギーの利用の下に非常に高い効率が達成され、これは、入射されたマイクロ波出力の通常は50%超、しばしば80%超、一部では90%超、特別な場合では95%超、例えば98%超であり、それ故、慣用の製造方法並びに従来技術のマイクロ波方法に対して経済的かつエコロジー的な利点を供する。
【0071】
加えて、本発明の方法は、制御された安全でかつ再現性のある反応の実行を可能にする。反応物が、マイクロ波の伝播方向に並行して移動するため、(例えば波頂及びノードにおいて)マイクロ波場の強度が変化することよって生ずる局所的な過熱を招く制御不能な場の分布による既知の過熱現象が、反応物の上記の流動運動によって均される。上記の利点は、1kW超、例えば2〜10kW、特に5〜100kW、一部ではより大きな高いマイクロ波出力を用いて作業することも可能とし、それ故、空洞共振器中での短い滞留時間だけとの組み合わせで、一つのプラントで1年間当たり100トンまたはそれ以上の多量の生産量を成し遂げることを可能とする。
【0072】
この際、連続的に通流される流管中でマイクロ波場中での反応混合物の滞留時間が非常に短いにも拘わらず、不足量で使用された成分を基準にして一般的に80%超、しばしば90%超、例えば95%超の転化率をもって非常に実質的なエステル化が起こり、しかもこの際、副生成物は目立つ量では生じないことは驚くべきことであった。更に、エステル化の際に生ずる反応水を分離せずともこれらの反応条件下に上述の転化率が達成できることも驚きべきことであった。熱外套加熱下での同じ寸法の流管中でのこの反応混合物の対応する反応では、適当な反応温度を達成するためには極めて高い壁温度が必要とされ、これは未定義のポリマー及び着色された化学種の形成を招き、しかし同じ時間間隔において明らかに減少したエステル形成を引き起こす。更に、本発明方法に従い製造された生成物は、粗製生成物の更なる仕上げ処理を必要とすることなく、非常に低い金属含有量を有する。例えば、本発明方法に従い製造された生成物の金属含有量は、主な元素としての鉄に基づいて、通常は25ppm未満、好ましくは15ppm未満、特に10ppm未満、例えば0.01〜5ppmの鉄である。
【0073】
それ故、本発明の方法は、工業的な量において高収量及び高純度でカルボン酸エステルを非常に迅速に、エネルギー節約的にかつ費用効果高く製造することを可能にする。この方法では、反応水の他には、実質的な量で副生成物は生じない。このような迅速でかつ選択的な反応は、従来の方法では達成することができず、ただ高温度に加熱することでは期待できなかったものである。
【実施例】
【0074】
マイクロ波照射下での反応混合物の反応を、筒状空洞共振器(60×10cm)中に軸対称的に存在するセラミック管(60×1cm)中で行った。空洞共振器の末端側の一つのところで、上記のセラミック管は、カップリングアンテナとして機能する内部導体管の空洞中を通って延びていた。マグネトロンから発生される2.45GHzの周波数を有するマイクロ波場は、前記のカップリングアンテナを用いて空洞共振器中にカップリングし(E01空洞アプリケータ、モノモード)、ここで定常波が生じた。
【0075】
マイクロ波の出力は、試験期間にわたりそれぞれ、照射域の端部で反応物の所望の温度が一定に維持されるように調節された。それ故、試験の記載において挙げるマイクロ波出力は、入射されたマイクロ波出力の時間平均値を表す。反応混合物の温度測定は、反応域(絶縁した特殊鋼キャピラリー(φ1cm)中約15cm長)を出た後直ぐにPt100温度センサーを用いて行った。反応混合物によって直接吸収されないマイクロ波エネルギーは、カップリングアンテナとは反対側の空洞共振器末端で反射した。逆行時にも反応混合物に吸収されず、マグネトロンの方向に反射するマイクロ波エネルギーは、プリズムシステム(サーキュレーター)を用いて、水を含む容器中に導いた。入射されたエネルギーとこの水負荷の加熱との差から、反応物中に取り入れられたマイクロ波エネルギーを計算した。
【0076】
高圧ポンプ及び適当な圧力逃し弁を用いて、全ての原料及び生成物もしくは縮合生成物を常に液状の状態に維持するのに十分な作業圧下を、反応管中の反応混合にかけた。カルボン酸及びアルコールから調製される反応混合物を、一定の流速で、反応管中にポンプ輸送して通し、そして照射域中での滞留時間を流速を変更することによって調節した。
【0077】
生成物の分析は、H−NMR分光分析を用いてCDCl中で500MHzで行った。鉄含有率の測定は、原子吸収分光によって行った。
【0078】
例1: 安息香酸メチルエステルの製造
攪拌機、内部温度計及び均圧管を備えた10Lビュッヒ攪拌オートクレーブ中に、2.36kgのメタノール(73.5モル)を仕込み、そして3kgの安息香酸(24.5モル)及び50gのメタンスルホン酸と混合した。
【0079】
こうして得られた混合物を、35barの作業圧で連続的に5L/hで反応管中にポンプ輸送して通し、そして2.0kWのマイクロ波出力に曝した。そのうち96%が反応物によって吸収された。照射域中での反応混合物の滞留時間は約34秒間であった。反応管の末端では、この反応混合物は260℃の温度を有していた。この反応混合物を、反応器から出た後直ぐに、強力熱交換器を用いて室温まで冷却した。
【0080】
理論値の85%の転化率が達成された。この反応生成物は実質上無色であり、鉄の含有率は<1ppmであった。炭酸水素塩溶液で触媒を中和しそして水及び過剰のメタノールを蒸留して分離した後に、減圧蒸留によって2.71kgの安息香酸メチルエステルが>98%の純度で得られた。
【0081】
例2: p−トリル酸ブチルエステルの製造
攪拌機、内部温度計及び均圧管を備えた10Lビュッヒ攪拌オートクレーブ中に、3.12kgのn−ブタノール(42モル)を仕込み、そして2.88kgのp−トリル酸(21モル)及び60gのメタンスルホン酸と混合した。
【0082】
こうして得られた混合物を、25barの作業圧下に連続的に3L/hで反応管中にポンプ輸送して通し、そして3.2kWのマイクロ波出力に曝した。そのうちの92%が反応物によって吸収された。照射域中での反応混合物の滞留時間は約57秒間であった。反応管の末端では、この反応混合物は272℃の温度を有していた。この反応混合物を、反応器から出た後直ぐに、強力熱交換器を用いて室温に冷却した。
【0083】
理論値の82%の転化率が達成された。この反応生成物は実質上無色であり、鉄の含有率は<5ppmであった。炭酸水素塩溶液で触媒を中和しそして水及び過剰のブタノールを蒸留して分離した後、減圧蒸留によって3.3kgのトリル酸ブチルエステルが>97.5%の純度で得られた。
【0084】
例3: p−ヒドロキシ安息香酸メチルエステルの製造
攪拌機、内部温度計及び均圧管を備えた10Lビュッヒ攪拌オートクレーブ中に2.7kgのメタノール(84モル)を仕込み、そしてその中に60℃に加温しながら3.8kgのp−ヒドロキシ安息香酸(27.5モル)及び65gの硫酸(96%濃度)を溶解した。
【0085】
こうして得られた均一な混合物を、38barの作業圧で連続的に6.2L/hで反応管中にポンプ輸送して通し、そして2.8kWのマイクロ波出力に曝した。そのうちの94%が反応物によって吸収された。照射域中での反応混合物の滞留時間は約27秒間であった。反応管の端部では、この反応混合物は267℃の温度を有していた。この反応混合物を、反応器から出た後直ぐに、強力熱交換器を用いて室温に冷却した。
【0086】
理論値の87%の転化率が達成された。この反応生成物は実質上無色であり、そして鉄含有量は<2ppmであった。触媒を炭酸水素アンモニウム溶液で中和しそして水及び過剰のメタノールを蒸留して分離した後、硫酸アンモニウム及び未反応の原料との混合物の状態で3.6kgの粗製p−ヒドロキシ安息香酸メチルエステルが得られた。メタノールから再結晶化することによって、>99%の純度を有する生成物が単離された。
【0087】
例4: オリゴマー性PETの製造
攪拌機、内部温度計及び均圧管を備えた10Lビュッヒ攪拌オートクレーブ中に1.86kgのエチレングリコール(30モル)を仕込み、120℃に加温し、そしてその中に4.14kgのテレフタル酸(25モル)を溶解した。
【0088】
こうして得られた均一な溶液を、30barの作業圧で連続的に6L/hで反応管中にポンプ輸送して通し、そして3kWのマイクロ波出力に曝した。そのうちの92%が反応物によって吸収された。照射域中での反応混合物の滞留時間は約28秒間であった。反応管の端部では、この反応混合物は255℃の温度を有していた。この反応混合物を、反応器から出た後直ぐに、強力熱交換器を用いて室温に冷却した。
【0089】
この反応生成物はかなり粘性が強く、そして実質上無色であった。鉄の含有量は<5ppmであった。
【0090】
反応の前に、滴定により471(mgKOH/g試料)の酸価が測定された。反応後、この値は52であった。それ故、転化率は使用したCOOH官能基に基づいて約89%であった。それ故、重縮合の統計によれば、オリゴマーの平均鎖長は8〜10個のPET単位またはおおよそ1700g/モルであった。
【0091】
例5: 2,6−ピリジンジカルボン酸ジメチルエステルの製造
攪拌機、内部温度計及び均圧管を備えた10Lビュッヒ攪拌オートクレーブ中に3.9kgのメタノール(120モル)を仕込み、そして2kgの2,6−ピリジンジカルボン酸(12モル)及び60gのメタンスルホン酸と混合し、そして60℃に軽く加温することによって互いに溶解した。
【0092】
こうして得られた混合物を35barの作業圧で連続的に4L/hで反応管中にポンプ輸送して通し、そして2.4kWのマイクロ波出力に曝した。それの93%が反応物によって吸収された。照射域中での反応混合物の滞留時間は約42秒間であった。反応管の末端では、この反応混合物は240℃の温度を有していた。この反応混合物は、反応器から出た後直ぐに、強力熱交換器を用いて室温に冷却した。
【0093】
理論値の83%の転化率が達成された。この反応生成物は実質上無色であり、そして鉄含有量は<5ppmであった。触媒を炭酸水素塩溶液で中和し、そして水及び過剰のメタノールを蒸留して分離した後、蒸留して1.8kgの2,6−ピリジンジカルボン酸ジメチルエステルが>99%の純度で得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式(I)
Ar−COOH (I)
[式中、Arは、原子数5〜50の場合により置換されたアリール基を表す]
で表される少なくとも一種の芳香族カルボン酸と、次式(II)
−(OH) (II)
[式中、Rは、炭素原子数1〜100の場合により置換された炭化水素残基を表し、そして
nは、1〜10の数を表す]
で表される少なくとも一種のアルコールとを、少なくとも一種のエステル化触媒の存在下に、モノモード−マイクロ波アプリケータのマイクロ波の伝播方向にその長軸がある反応管中でマイクロ波照射下に反応させてエステルとする、芳香族カルボン酸エステルの連続的製造方法。
【請求項2】
マイクロ波による反応混合物の照射を、マイクロ波発生器に導波管を介して接続された中空導体の内部にあるマイクロ波に対しほぼ透明な反応管中で行う、請求項1の方法。
【請求項3】
マイクロ波アプリケータが空洞共振器として構成される、請求項1及び2の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項4】
マイクロ波アプリケータが、反射型空洞共振器として構成される、請求項1〜3の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項5】
反応管が、中空導体の中央対称軸と軸状に整列される、請求項1〜4の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項6】
反応混合物の照射が、マイクロ波の同軸変換を備えた空洞共振器中で行われる、請求項1〜5の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項7】
空洞共振器がE01nモードで稼働され、この際nは1〜200の整数である、請求項1〜6の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項8】
空洞共振器中に定常波が形成する、請求項1〜7の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項9】
反応物を、マイクロ波照射によって150〜500℃の温度に加熱する、請求項1〜8の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項10】
マイクロ波照射が、大気圧よりも高い圧力下に行われる、請求項1〜9の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項11】
Arが、(4n+2)π電子を有する環状全共役系であり、ここでnは1、2、3、4または5である、請求項1〜10の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項12】
Arが、炭素原子数1〜50のアルキル基を少なくとも一つ有するアルキルアリール基である、請求項1〜11の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項13】
Arが、二つまたはそれ以上のヒドロキシル基及び/またはヒドロキシアルキル基を有する、請求項1〜12の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項14】
Arが、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸; ナフタレンカルボン酸、ピリジンカルボン酸及びナフタレンジカルボン酸の各異性体; トリメリト酸、トリメシン酸、ピロメリト酸及びメリト酸; メトキシ安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシメチル安息香酸、ヒドロキシメトキシ安息香酸、ヒドロキシジメトキシ安息香酸、ヒドロキシイソフタル酸、ヒドロキシナフタレンカルボン酸、ヒドロキシピリジンカルボン酸、ヒドロキシメチルピリジンカルボン酸、ヒドロキシキノリンカルボン酸の各異性体; o−トリル酸、m−トリル酸、p−トリル酸、o−エチル安息香酸、m−エチル安息香酸、p−エチル安息香酸、o−プロピル安息香酸、m−プロピル安息香酸、p−プロピル安息香酸、3,4−ジメチル安息香酸、及びチオフェンカルボン酸から選択される、請求項1〜11の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項15】
が、炭素原子数2〜24の場合により置換された脂肪族基を表す、請求項1〜14の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項16】
が、場合により置換されたC〜C12アリール基、または場合により置換された環員数5〜12のヘテロ芳香族基を表す、請求項1〜14の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項17】
nが1、2、3、4、5または6である、請求項1〜16の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項18】
が、次式(III)の基を表す請求項1〜14の一つまたはそれ以上の方法。
−(R−O)−R (III)
式中、
は、炭素原子数2〜18のアルキレン基またはこれらの混合物を表し、
は、水素、または炭素原子数1〜24の炭化水素残基、または式−R−NR1011の基を表し、
nは、1〜500の数を表し、そして
10、R11は、互いに独立して、炭素原子数1〜24の脂肪族基、環員数5〜12のアリール基またはヘテロアリール基、ポリ(オキシアルキレン)単位数1〜50のポリ(オキシアルキレン)基を表し、ここでポリオキシアルキレン単位は炭素原子数2〜6のアルキレンオキシド単位から誘導され、またはR10とR11は、それらが結合する窒素原子と一緒になって、環員数4、5、6またはそれ以上の環を形成する。
【請求項19】
芳香族カルボン酸(I)及びアルコール(II)を、それぞれカルボキシル基及びヒドロキシル基のモル当量を基準にして20:1〜1:20のモル比で反応させる、請求項1〜18の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項20】
均一系触媒、不均一系触媒またはそれらの混合物の存在下で行われる、請求項1〜19の一つまたはそれ以上の方法。

【公表番号】特表2012−531384(P2012−531384A)
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516545(P2012−516545)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【国際出願番号】PCT/EP2010/003447
【国際公開番号】WO2011/000464
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(398056207)クラリアント・ファイナンス・(ビーブイアイ)・リミテッド (182)
【Fターム(参考)】