説明

芳香族ハロ−置換ジニトリルをハロ−置換シアノカルボン酸に変換する新規な方法

本発明は芳香族ハロ-置換ジニトリルを対応するシアノカルボン酸にニトリラーゼの存在下で変換する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族ハロ-置換ジニトリルをニトリラーゼの存在下で対応するシアノカルボン酸に変換する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ニトリル化合物のシアノ基を加水分解して対応するカルボン酸を得ることは、カルボン酸を得るための通常の方法である。しかしながら、化学合成におけるシアノ基の選択的加水分解反応は一般に複雑な手順である。特定のシアノ基の保護がしばしば必要である。その代わりに、ポリニトリル化合物のシアノ基の一部のみを加水分解して対応するシアノカルボン酸を得るバイオ反応が通常使用されている。
【0003】
バイオ反応は一般に高い選択性を有すると認められている。しかしながら、該反応は多くの場合、野生型の微生物の使用によりしばしば引き起こされる副反応による不純物の生成を伴う。
【0004】
ニトリラーゼはニトリラーゼ活性を有する酵素、即ちニトリル化合物をカルボン酸に変換する反応を触媒する酵素である。この酵素を産生する微生物には、フザリウム ソラニ(Fusarium solani)(非特許文献1参照)、ノカルジア エスピー(Nocardia sp.)(非特許文献2参照)、アルスロバクター エスピー(Arthrobacter sp.)(非特許文献3参照)、ロドコッカス ロドクロス(Rhodococcus rhodochrous)J1(非特許文献4参照)、ロドコッカス ロドクロスK-22(非特許文献5参照)、ロドコッカス ロドクロスPA-34 (非特許文献6参照)及びロドコッカス エスピー(Rhodococcus sp.)ATCC39484 (非特許文献7参照)が含まれる。
【0005】
最近、これらの微生物のニトリル化合物変換能力を利用する試みがなされている。これらの微生物の中で、ロドコッカス エスピーATCC39484株が複数のニトリル基を有する芳香族ポリニトリル化合物を選択的に加水分解する能力を有することが報告された。しかしながら、この微生物のニトリラーゼは芳香族ポリニトリル化合物に対する活性が比較的低いことが報告された(特許文献1)。
【0006】
特許文献2は、芳香族酸を対応するニトリルの生物学的加水分解により製造する方法を開示する。特許文献3は、シアノカルボン酸を、バクテリア起源のモノニトリラーゼを使用して、ジニトリル化合物からのシアノ基の選択的加水分解により製造する方法を開示する。
【0007】
特許文献1は、新規なロドコッカスバクテリウム、及びニトリル化合物のシアノ基を加水分解して対応するカルボン酸を生成する方法を開示する。
特許文献4は、ニトリルを対応するカルボン酸に、ラクタム化合物の存在下で培養したロドコッカス株のニトリラーゼを使用して変換する方法を開示する。
【0008】
非特許文献8は、1,3-ジシアノベンゼンを3-シアノ安息香酸に変換する反応を触媒するために、ロドコッカス ロドクロスニトリラーゼJ1を使用することを開示する。
非特許文献9は、モノニトリルの対応するカルボン酸への変換を触媒するために、ロドコッカス ロドクロスニトリラーゼJ1を使用することを開示する。著者によると、該酵素は、芳香族ハロ-置換ニトリルを基質として使用した場合、僅かしか検出されない活性を示した。
【特許文献1】EP1142997 A1
【特許文献2】US 4,629,700
【特許文献3】EP178106
【特許文献4】EP444640 A2
【非特許文献1】Biochem. J. 167, 685-692 (1977)
【非特許文献2】Int. J. Biochem., 17, 677-683 (1985)
【非特許文献3】Appl. Environ, Microbiol., 51, 302-306 (1986)
【非特許文献4】Eur. J. Biochem., 182, 349-356 (1989)
【非特許文献5】J. Bacteriol., 172, 4807-4815 (1990)
【非特許文献6】Appl. Microbiol. Biotechnol., 37, 184-190 (1992)
【非特許文献7】Biolechnol. Appl. Biochem., 15, 283-302 sp. (1992)
【非特許文献8】Appl. Microbiol. Biotechnol. 29 (1988), 231-233
【非特許文献9】Eur. J. Biochem. 182 (1989), 349-356
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、ハロ-置換芳香族ジニトリル化合物を対応するシアノ安息香酸に変換する酵素触媒反応を、活性及び選択性を増加させることにより改良し、これにより該反応を工業規模に適するものにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、式Iのニトリルを式IIのカルボン酸に変換する方法を提供する:
【化1】

(式中、Xはハロゲンである);ここで、該変換は、ニトリラーゼの存在下で行われる。
【0011】
本発明の一実施態様において、ハロゲンXはそれぞれ式I及び式IIの化合物の5-位にある。本発明の別の実施態様において、Xはフルオロ(フッ素)である。本発明の更に別の実施態様において、5-フルオロ-1,3-ジシアノベンゼンが5-フルオロ-3-シアノ-安息香酸に変換される。
【0012】
本発明の一実施態様において、ニトリラーゼは野生型ニトリラーゼである。本発明の別の実施態様において、ニトリラーゼはクローン化ニトリラーゼである。本発明の更なる実施態様において、ニトリラーゼはロドコッカスニトリラーゼである。更なる実施態様において、ニトリラーゼはロドコッカス ロドクロスニトリラーゼである。本発明の別の実施態様において、ニトリラーゼは配列番号1の核酸配列によりコードされたニトリラーゼである。本発明の更に別の実施態様において、ニトリラーゼは配列番号2のアミノ酸配列を有する。
【0013】
本発明はまた、ニトリラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸配列、該核酸配列を含む核酸構築物、及び該核酸配列又は核酸構築物を含むベクターに関する。本発明は更に、該核酸配列によりコードされたアミノ酸配列、及び該核酸配列、核酸構築物、又は該核酸配列若しくは核酸構築物を含むベクターを含む微生物に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の方法は4ないし11のpH、特に4ないし9のpHで実施し得る。一実施態様において、該方法は約7のpHで行われる。
【0015】
0.01〜25質量%のニトリルを該方法で使用することができる。一実施態様において、0.1〜10質量%のニトリルが使用される。更なる実施態様において、0.5〜5質量%のニトリルが使用される。ニトリルに応じて種々の量のニトリルを反応に使用することができる。最少量(0.01〜5質量%に等しい量)のニトリルを、対応するアルデヒド及びシアン化水素酸と平衡状態のニトリル(シアノヒドリン)の場合は使用し得る。
【0016】
通常、反応混合物中の基質濃度、即ち式Iの化合物の濃度は20g/l〜40g/lの範囲にある。
【0017】
本発明の文脈において、ハロゲンはフルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨードである。
本発明の文脈において、選択性は、所望の生成物である生成物の合計量の割合と定義される。
本発明の文脈において、位置選択性とは、式Iの化合物の一方だけのニトリル基を式IIの対応するカルボン酸に選択的に加水分解することである。
【0018】
本発明の方法は0℃〜80℃の温度で実施し得る。一実施態様において、反応は10℃〜60℃で行われる。更なる実施態様において、反応は15℃〜50℃で実施される。
【0019】
本方法において、少なくとも0.1U/mgニトリラーゼから5U/mgニトリラーゼまでの全活性を得ることが可能である。一実施態様において、全活性は0.1U/mgニトリラーゼから0.2U/mgニトリラーゼまでである。一実施態様において、全活性は0.5U/mgニトリラーゼから2U/mgニトリラーゼまでである。全活性は基質が95%変換した後に測定される。
【0020】
本発明の核酸、核酸構築物又はベクターを含む成長細胞を本発明の方法に使用することができる。静止細胞又は崩壊細胞もまた使用することができる。崩壊細胞とは例えば、例えば溶媒での処理により浸透性になった細胞、又は酵素処理、機械的処理(例えばフレンチプレス又は超音波)、又はその他の方法で崩壊された細胞を意味する。このようにして得られた粗製抽出物を本発明の方法に使用し得る。精製した又は部分的に精製した酵素もまた該方法に使用することができる。固定化された微生物又は酵素も同様に反応に使用することができる。
【0021】
本発明の方法で調製されたカルボン酸は、反応水溶液から抽出又は結晶化又は抽出及び結晶化により単離することができる。この目的に、反応水溶液を鉱酸(例えばHCl又はH2SO4)又は有機酸のような酸を用いて、有利には2未満のpH値に酸性化し、次に有機溶媒で抽出する。抽出は数回繰り返して収率を増加させることができる。使用できる有機溶媒は原則として、適当な場合は塩の添加後、水と界面を示す全ての溶媒である。可能な溶媒は、トルエン、ベンゼン、ヘキサン、メチルtert-ブチルエーテル又は酢酸エチルのような溶媒である。生成物は、イオン交換体に結合させ、引き続きHCl、H2SO4、ギ酸又は酢酸のような鉱酸又はカルボン酸で溶離することにより精製することもできる。或いは、生成物を、標準的手順に従って反応混合物から直接結晶化させそして単離してもよい。
【0022】
水相又は有機相の濃縮後、生成物を通常良好な化学的純度で、即ち90%を超える化学的純度で単離することができる。しかしながら、抽出後、生成物を有する有機相を部分的にだけ濃縮し、そして生成物を結晶化させることもできる。このために、溶液を0℃〜10℃の温度に冷却してもよい。結晶化はまた有機溶液から直接行うこともできる。結晶化した生成物を再生結晶化のために再び同じ又は異なる溶媒に溶解し、そしてもう一度結晶化させることができる。
【0023】
しかしながら、カルボン酸はまた、酸でpHを例えば2未満に酸性化した直後、反応水溶液から結晶させることもできる。これは、該水溶液を加熱により濃縮してその容量を10〜90%だけ減少させることを必要とすることがある。一実施態様では、容量を20〜80%だけ減少させる。別の実施態様では、容量を30〜70%に減少させる。結晶化は冷却、例えば温度を0℃から10℃に冷却して実施し得る。
【0024】
この種の後処理で、本発明の生成物は60%〜100%の収率で単離することができる。一実施態様では、収率は80%〜100%である。別の実施態様では、反応に使用したニトリルを基準として、収率は90%〜100%である。更に別の実施態様では、収率は95%〜100%である。別の実施態様では。収率は98%〜100%である。一実施態様では、単離された生成物は化学純度>90%を有する。別の実施態様では、純度は>95%である、更に別の実施態様では、純度は>98%である。
【0025】
本発明の方法の選択性は通常、90%〜100%の範囲である。
このようにして得られた生成物は、薬物又は農薬を製造するための有機合成の出発材料として使用し得る。
【0026】
当業者はロドコッカスニトリラーゼをコードする核酸配列(配列番号1)を、当分野で知られた方法(例えば、Sambrook et al.“Molecular Cloning”, Cold Spring Harbor Laboratory, 1989)によりニトリラーゼを合成しそして発現させることにより産生させることができる。配列番号2は対応するアミノ酸配列を示す。
【0027】
本発明による核酸構築物とは、配列番号1に従う配列のニトリラーゼ遺伝子であって、遺伝子発現を増加させるために1種又はそれ以上の調節シグナルに機能的に連結されたものを意味する。これらの調節配列は、例えばインデューサー又はリプレッサーがこれに結合し、かくして核酸の発現を調節する配列である。これらの新規な調節配列に加えて、これらの配列の自然調節のためこれらの配列を実際の構造遺伝子の前に存在させること、および適切な場合は、自然調節のスイッチが切られ、遺伝子の発現が増大するように、これらの配列を遺伝的に修飾することも可能である。しかしながら、核酸構築物はまたより単純な構造、即ち配列番号1の配列の前に追加の調節シグナルが挿入されておらず、そして調節作用を有する天然プロモータが除去されていない構造を有してもよい。その代わりに、天然調節(natural regulatory)配列を、調節が最早行われず、遺伝子発現が増加するように突然変異させる。核酸構築物は更に、プロモータに機能的に連結した1種又はそれ以上のエンハンサー配列を含んでもよく、それは核酸配列の増加した発現を可能にする。本発明の核酸は該構築物中の1つ又はそれ以上のコピー中に存在し得る。該構築物はまた、構築物の選択に適切な場合は、抗生物質耐性又は栄養要求性−補足遺伝子(auxotrophy-complementing genes)のような更なるマーカーを含んでもよい。
【0028】
本発明の方法のための調節配列の例は、ガンマ-陰性バクテリア中で使用され得るcos、tac、trp、tet、trp-tet、lpp、lac、lpp-lac、lacIq、T7、T5、T3、gal、trc、ara、SP6、λ-PR又はλ-PLプロモータのようなプロモータに存在する。更なる調節配列は、例えばガンマ-陽性プロモータamy及びSPO2中、真菌又は酵母プロモータADC1、MFα、AC、P-60、CYC1、GAPDH、TEF、rp28、ADH中にある。これに関連する他の例は、ピルビン酸デカルボキシラーゼのプロモータ、及び例えばハンセヌラからのメタノールオキシターゼのプロモータである。調節に人工プロモータを使用することも可能である。
【0029】
核酸構築物は、例えばプラスミド、ファージ又は宿主生物中で発現させるための他のDNAのようなベクターに挿入してもよく、それは宿主中での遺伝子の最適な発現を可能にする。これらのベクターは本発明の更なる成果を表わす。エシェリキアコリ(E. coli)中のかかるプラスミドの例はpLG338、pACYC184、pBR322、pUC18、pUC19、pKC30、pRep4、pHS1、pHS2、pPLc236、pMBL24、pLG200、pUR290、pIN-III113-B1、λgt11若しくはpBdCI、ストレプトミセス属中のかかるプラスミドの例はpIJ101、pIJ364、pIJ702若しくはpIJ361、バチルス属中のかかるプラスミドの例はpUB110、pC194若しくはpBD214、コリネバクテリウム中のかかるプラスミドの例はpSA77若しくはpAJ667、真菌中のかかるプラスミドの例はpALS1、pIL2若しくはpBB116、酵母中のかかるプラスミドの例は2μM、pAG-1、YEp6、YEp13若しくはpEMBLYe23、又は植物中のかかるプラスミドの例はpLGV23、pGHlac+、pBIN19、pAK2004又はpDH51である。該プラスミドは可能なプラスミドの少しの選択を表す。更なるプラスミドは当業者によく知られており、例えば、Cloning Vectors (eds. Pouwels P. H. et al. Elsevier, Amsterdam-New York-Oxford, 1985, ISBN 0 444 904018)の本に見ることができる。
【0030】
核酸構築物は、3’及び/又は5’末端調節配列に加えて、発現を増大させるために、存在する他の遺伝子の発現用に含んでいてもよく、これは選択した宿主生物及び一つ又は複数の遺伝子に依存して最適に発現するように選ばれる。
【0031】
これらの調節配列は遺伝子の特異的発現及びタンパク質発現を可能にするためのものである。これは、例えば宿主生物に依存して、遺伝子が誘発の後にのみ発現若しくは過剰発現するか、又は遺伝子が直ちに発現及び/若しくは過剰発現することを意味し得る。
【0032】
調節配列又は因子は更に正の影響を及ぼし、従って導入された遺伝子の発現を増加させ得る。従って、調節エレメントの増強が、プロモータ及び/又はエンハンサーのような強い転写シグナルを使用することにより、転写のレベルで起こり得る。しかしながら、更に、例えばmRNAの安定性を改良することによって転写を向上させることも可能である。
【0033】
ベクターの他の実施態様において、本発明の核酸構築物又は本発明の核酸を含むベクターを線状DNAの形態で微生物に導入し、そして、ヘテロガス組換え又は相同組換えにより宿主生物のゲノムに組み込むこともできる。この線状DNAはプラスミドのような線状化ベクター又は核酸構築物のみ又は核酸から成ってもよい。
【0034】
生物中で異種遺伝子を最適に発現させるために、核酸配列を該生物に特異的に使用されるコドン使用頻度に合わせて修飾してもよい。コドン使用頻度は、関連する生物における他の公知の遺伝子のコンピュータ分析に基づき容易に確立することができる。
【0035】
本発明の核酸又は核酸構築物に適した宿主生物は、原則として全ての原核生物又は真核生物である。使用する宿主生物はバクテリア、真菌又は酵母のような微生物であり得る。グラム陽性又はグラム陰性のバクテリア、例えば腸内細菌科、シュードモナス科、ストレプトミセス科、マイコバクテリウム科、又はノカルジア科のバクテリア、特にエシェリキア属、シュードモナス属、ノカルジア属、マイコバクテリウム属、ストレプトミセス属又はロドコッカス属のバクテリア、とりわけエシェリキア コリ、ロドコッカス ロドクロス、ノルカジア ロドクロス、マイコバクテリウム ロドクロス又はストレプトミセス リビダンス(lividans)の属及び種のバクテリアである。
【0036】
本発明の宿主生物は更に、それが合成したポリペプチドをフォールディングするための少なくとも1種のタンパク質性物質、及び特に本発明に記載したニトリラーゼ活性を有する核酸配列及び/又はこの物質をコードする遺伝子を含み得、この物質の存在量は、考慮する微生物中の基本的量に対応する量よりも多い。この物質をコードする遺伝子は、染色体又は染色体外要素、例えばプラスミド、中に存在する。
【実施例】
【0037】
1.無細胞抽出物(CFE)生体触媒の調製
エシェリキア コリ(E. coli)DH 10B(ロドコッカス ロドクロスニトリラーゼからのpMS470-3-14-1-4)のグリセリン原液を使用して、カルベニシリン(100mg/l)を補充した1リットルのテリフィック培養(Terrific Broth)(TB)培地に接種した。増殖68時間後、この培養物を使用して、カルベニシリン(100mg/l)を補充した9リットルのTB培地に接種し、IPTGをインデューサーとして使用した。実験室規模の発酵槽内で41時間増殖させた後、細胞を、完全成長発酵ブロス(OD600 = 16.7)を遠心分離し(12227(g, 10分)、細胞湿潤質量バイオマス(cell wet weight biomass)を20mM HEPES/NaOHバッファ(pH 7.0, 湿潤質量細胞1g当りベンゾナーゼ13μg)に細胞1kg+バッファ溶液3kgの割合で再懸濁し、そして細胞をナノジェット中で1600バール(2重走行(double run))で破壊して採取した。CFE1.04リットルが収率86%(湿潤バイオマス328グラム+バッファ880ml)で得られた。
【0038】
2.酵素的変換
反応槽中で5-フルオロ-1,3-ジシアノベンゼン1.5モルを、pH = 7.2に保持した0.1Mリン酸ナトリウムバッファ8lに懸濁させた。2.6質量%CFEニトリラーゼ酵素440 mlをこの懸濁液に加えた。72時間後、25℃で>98%の変換に達し、pH 2.4になるまでリン酸を加えることにより反応を停止させた。生成物が結晶化し、そして濾過により集めた。フィルターケーキをその半分の容量の水で3回洗った(攪拌した)。最後に生成物を空気で乾燥した。収率:97%/1.45モル。
【0039】
3.分析方法
ニトリラーゼ反応による5-フルオロ-1,3-ジシアノベンゼンから3-シアノ-5-フルオロ-安息香酸への変換を、VarianからのInertsil ODS-3 カラム(50 x 4.6 mm I.D., 3μm)上の逆相LCにより測定した。該化合物は、水中の50mMリン酸(pH 2.7)及びアセトニトリルの勾配を使用して溶離した(1.0 ml/分, 40℃)。勾配出発条件は、0の時点で97.5/2.5 v/v%バッファ/アセトニトリル、そしてアセトニトリルの百分率を10分で50%に増加させた。10.1分の時点で、勾配プロフィルは出発条件に戻した。全分析時間は12分であった。注入容量は5μlであり、そして検出は分光光度計を使用してUV 220nmにて行った。3-シアノ-5-フルオロ-安息香酸、1,3-ジシアノ-5-フルオロベンゼン及び3-シアノ-5-フルオロ-安息香酸アミドの保持時間は、それぞれ6.75分、7.75分及び5.2分であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iのニトリルを式IIのカルボン酸に変換する方法であって、該変換をニトリラーゼの存在下で行う、上記の方法。
【化1】

上記式中、Xはハロゲンである。
【請求項2】
ニトリラーゼがロドコッカスニトリラーゼである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ニトリラーゼがロドコッカスロドクロスニトリラーゼである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ニトリラーゼがクローン化ロドコッカスロドクロスニトリラーゼである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ニトリラーゼが野生型ロドコッカスロドクロスニトリラーゼである、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
ニトリラーゼが配列番号1に記載の核酸配列によりコードされる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ニトリラーゼが配列番号2に記載のアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
Xが式I及び式IIの化合物の5-位にある、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
Xがフルオロである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
5-フルオロ-1,3-ジシアノベンゼンが5-フルオロ-3-シアノ安息香酸に変換される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
ニトリラーゼがエシェリキア属、ロドコッカス属、ノカルジア属、ストレプトミセス属及びマイコバクテリウム属のいずれかから選ばれるバクテリアで発現される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
ニトリラーゼがエシェリキアコリで発現される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
方法が反応水溶液中で実施される、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
反応がpH4〜11で実施される、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
0.01〜25質量%のニトリルを反応させる、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
方法を0℃〜80℃の温度で実施する、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
式IIの化合物が反応溶液から抽出若しくは結晶化、又は抽出及び結晶化により収率60%〜100%で単離される、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
式IIの化合物の収率が、式Iの化合物の量を基準として約90%〜100%である、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
全活性が0.1U/mgニトリラーゼから5U/mgニトリラーゼまでである、請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
全活性が0.1U/mgニトリラーゼから0.2U/mgニトリラーゼまでである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
全活性が0.5U/mgニトリラーゼから2U/mgニトリラーゼまでである、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
反応混合物中の式IIの濃度が20g/l〜40g/lである、請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2009−508522(P2009−508522A)
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−532192(P2008−532192)
【出願日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【国際出願番号】PCT/SE2006/001074
【国際公開番号】WO2007/035161
【国際公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(391008951)アストラゼネカ・アクチエボラーグ (625)
【氏名又は名称原語表記】ASTRAZENECA AKTIEBOLAG
【Fターム(参考)】