説明

芳香族化合物製造方法

【課題】低級炭化水素を触媒と接触反応させて芳香族炭化水素を製造する際、高い芳香族炭化水素収率を維持しつつ、長時間安定して芳香族炭化水素を製造する。
【解決手段】低級炭化水素を触媒と接触反応させて芳香族炭化水素及び水素を得る反応工程と、前記反応工程で使用された触媒に水素を接触させることにより触媒活性を再生する再生工程を備え、前記反応工程と前記再生工程を繰り返すことにより芳香族炭化水素及び水素を製造する。前記反応工程において、前記低級炭化水素に一酸化炭素を添加し、反応温度を800℃より高くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタンを主成分とする天然ガス、バイオガス、メタンハイドレートの高度利用に関するものである。特に、メタンからプラスチック類などの化学製品原料であるベンゼン及びナフタレン類を主成分とする芳香族化合物と高純度の水素ガスを製造するための触媒化学変換技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
天然ガス、バイオガス、メタンハイドレートは、地球温暖化対策として最も効果的なエネルギー資源と考えられ、その利用技術に関心が高まっている。メタン資源は、そのクリーン性を活かして、次世代の新しい有機資源、燃料電池用の水素資源として注目されている。
【0003】
メタンからベンゼン等の芳香族化合物と水素を製造する方法としては、例えば非特許文献1のように、触媒の存在下でメタンを反応させる方法が知られている。この際の触媒としては、ZSM−5に担持されたモリブデンが有効とされている。
【0004】
しかしながら、これらの触媒を使用した場合でも、炭素析出が多いことやメタンの転化率が低いという問題がある。特に、炭素析出は触媒の劣化現象に直結する問題である。
【0005】
これらの問題を解決するために、特許文献1では、触媒反応温度300℃〜800℃の条件で、メタンにCO2又はCOを添加した混合ガスを触媒反応に供している。CO2又はCOを添加することにより炭素の析出が抑制され、触媒劣化を防ぎ、安定して芳香族を生成することを可能としている。
【0006】
また、特許文献2、3では、芳香族製造反応とその製造反応に用いた触媒を再生する反応を交互に切り替えて、触媒の経時劣化を抑え、触媒反応を持続させている。つまり、反応原料である低級炭化水素と触媒の維持又は再生のための水素含有ガス(又は水素ガス)を周期的に切り替えて触媒と接触させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−060514号公報
【特許文献2】特開2003−026613号公報
【特許文献3】特開2008−266244号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】JOURNAL OF CATALYSIS、1997、Volume165、p.150−161
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記従来技術で述べた課題のうち、非特許文献1に例示される触媒の炭素析出による劣化は、特に固定床方式の反応系で長時間安定的に芳香族炭化水素等を製造するために、その解決が極めて重要である。
【0010】
そこで、特許文献1では、反応温度が300〜800℃の条件で、原料ガスにCO2又はCOを添加して触媒と接触反応させることにより、炭素の析出を抑制し、触媒劣化を防ぐ方法が提案されている。この方法によれば、大幅に触媒の安定性が向上するものの、最大ベンゼン収率が低下する傾向がある。
【0011】
一方、特許文献2では、反応ガスと水素ガスまたは水素含有ガスとを一定周期で切り替えることにより、難除去性コークの析出を防止し、長時間安定的に芳香族化合物を得る方法が提案されている。この方法は、析出炭素が蓄積する前に再生処理を行うもので、触媒の活性を示す指標であるベンゼン収率を長時間維持することができる。なお、このベンゼン収率は、反応初期におけるベンゼン収率に依存する。
【0012】
反応初期の段階では、炭素析出量が少ないため触媒作用によってメタンから転換された炭化水素が高い確率でベンゼンに変換される。そして、反応温度を800℃以上にするなどしてメタン転化率をあげることで、この反応初期においてより高いベンゼン収率を得ることができる。しかし、反応温度を高温にすることによりメタン転化率を向上させた場合、炭素析出がより顕著となり炭素の蓄積による触媒劣化がはやくなるという問題がある。
【0013】
したがって、高温においても析出炭素の除去に対して有効に作用し、かつ最大ベンゼン収率を低下させないプロセスが強く求められている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決する本発明の芳香族炭化水素製造方法は、低級炭化水素を触媒に接触反応させ、芳香族炭化水素を主成分とする芳香族化合物及び水素を製造する方法であって、前記低級炭化水素に一酸化炭素を添加し、反応温度を800℃より高くする、ことを特徴としている。
【0015】
また、上記芳香族炭化水素製造方法において、前記一酸化炭素濃度を反応ガスに対して0.75%〜20%とするとよい。また、上記芳香族炭化水素製造方法において、前記反応温度を820℃以上とするとよい。
【0016】
また、上記芳香族炭化水素製造方法において、前記低級炭化水素を前記触媒と接触反応させる反応工程と、前記反応工程で使用された触媒を再生する再生工程を繰り返して芳香族炭化水素を製造するとよい。
【発明の効果】
【0017】
以上の発明によれば、低級炭化水素を触媒と接触反応させて芳香族化合物を製造する際、触媒の劣化を抑制すること及び芳香族化合物収率を向上させることに貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】Mo−HZSM5触媒の存在下で触媒反応を連続して行った場合のベンゼン収率の時間変化を示す図。
【図2】Mo−HZSM5触媒の存在下(COを添加して)で触媒反応を連続して行った場合のベンゼン収率の時間変化を示す図。
【図3】(a)触媒反応工程と触媒再生工程を繰り返した場合のベンゼン収率の時間変化を示す図、(b)触媒反応工程と触媒再生工程を繰り返した場合のベンゼン生成速度の時間変化を示す図、(b)触媒反応工程と触媒再生工程を繰り返した場合のメタン転化率の時間変化を示す図。
【図4】一酸化炭素を添加した場合における反応後のガス100μl中のベンゼン量の時間変化を示す図。
【図5】一酸化炭素を添加しない場合における反応後のガス100μl中のベンゼン量の時間変化を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、低級炭化水素の芳香族化合物化触媒(以下、「触媒」と省略する)に低級炭化水素を接触反応させてベンゼン及びナフタレン類を主成分とする芳香族化合物と高純度の水素ガスを製造する方法に関する発明である。そして、接触反応に供される反応ガスに一酸化炭素を添加し、反応温度を800℃より高くして接触反応を行うことを特徴としている。
【0020】
本発明に係る芳香族化合物の製造方法によれば、反応に供される触媒の触媒活性の劣化を抑制するだけでなく、メタンのみを触媒に接触反応させた時よりも最大ベンゼン収率を向上させることができる。
【0021】
また、触媒反応工程と前記触媒を再生する工程を交互に行うことで、難除去性コークが蓄積することなく、高収率を維持したまま長時間反応を行わせることができる。
【0022】
本発明の実施形態に係る芳香族化合物製造方法に用いられる触媒は、例えば、メタロシリケートに触媒金属が担持された形態が挙げられる。
【0023】
触媒金属が担持されるメタロシリケートとしては、例えばアルミノシリケートの場合、シリカ及びアルミナから成り多孔質体であるモレキュラーシーブ5A、フォジャサイト(NaY及びNaX)、ZSM−5、MCM−22が挙げられる。また、リン酸を主成分とする多孔質体でALPO−5、VPI−5等の6〜13オングストロームのミクロ細孔やチャンネルからなることを特徴とするゼオライト担体や、シリカを主成分とし一部アルミナを成分として含むメゾ細孔(10〜1000オングストローム)の筒状細孔(チャンネル)で特徴付けられるFSM−16やMCM−41等のメゾ細孔多孔質担体などが例示できる。さらに、前記アルミナシリケートの他に、シリカ及びチタニアからなるメタロシリケート等も触媒として用いることができる。
【0024】
また、本発明で使用するメタロシリケートは、表面積が200〜1000m2/gであり、そのミクロ及びメゾ細孔は5〜100オングストロームの範囲内のものが望ましい。また、メタロシリケートが例えばアルミノシリケートである場合、そのシリカとアルミナの含有比(シリカ/アルミナ)が通常入手し得る多孔質体と同様にシリカ/アルミナ=1〜8000のものを用いることができるが、本発明の低級炭化水素の芳香族化反応を、実用的な低級炭化水素の転化率及び芳香族化合物への選択率で実施するためには、シリカ/アルミナ=10〜100の範囲内とすることがより好ましい。
【0025】
メタロシリケートは、通常プロトン交換型(H型)のものが用いられる。また、プロトンの一部がNa、K、Li等のアルカリ金属、Mg、Ca、Sr等のアルカリ土類元素、Fe、Co、Ni、Zn、Ru、Pd、Pt、Zr、Ti等の遷移金属元素から選ばれた少なくとも一種のカチオンで交換されていてもよい。また、メタロシリケートが、Ti、Zr、Hf、Cr、Mo、W、Th、Cu、Ag等を適量含有していてもよい。
【0026】
そして、本発明に係る触媒金属としてはモリブデンを用いることが好ましいが、レニウム、タングステン、鉄、コバルトを用いても良い。これらの触媒金属を組み合わせてメタロシリケートに担持してもよい。さらに、これらの触媒金属に、Mg等のアルカリ土類元素又はNi、Zn、Ru、Pd、Pt、Zr、Ti等の遷移金属元素から選ばれた少なくとも一種の元素をメタロシリケートに共担持してもよい。
【0027】
前記触媒金属(を含む前駆体)をメタロシリケートに担持させる場合、触媒金属と担体との重量比は0.001〜50%、好ましくは0.01〜40%の範囲で行う。また、メタロシリケートへ担持させる方法としては、触媒金属の前駆体の水溶液、あるいはアルコール等の有機溶媒の溶液からメタロシリケート担体に含浸担持あるいはイオン交換方法により担持させた後、不活性ガスあるいは酸素ガス雰囲気下で加熱処理する方法がある。例えば、触媒金属の1つであるモリブデンを含む前駆体の例としては、パラモリブデン酸アンモニウム、リンモリブデン酸アンモニウム、12系モリブデン酸の他に、塩化物、臭化物等のハロゲン化物、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の鉱酸塩、炭酸塩、酢酸塩、蓚酸塩等のカルボン酸塩等を挙げることができる。
【0028】
ここでメタロシリケートに触媒金属を担持する方法を触媒金属としてモリブデンを用いた場合を例示して説明する。まず、メタロシリケート担体にモリブデン酸アンモニウム塩の水溶液を含浸担持させ、その担持体を減圧乾燥して溶媒を除いた後、窒素含有酸素気流中又は純酸素気流中にて温度250〜800℃(好ましくは350〜600℃)で加熱処理して、モリブデンを担持したメタロシリケート触媒を製造することができる。
【0029】
触媒金属を担持したメタロシリケート触媒の形態に格別の制約はなく、粉末状、顆粒状等任意の形状のものを用いればよい。また、触媒金属を担持したメタロシリケート触媒に、シリカ、アルミナ、粘土等のバインダーを添加して、ペレット状若しくは押出品に成型して使用してもよい。
【0030】
なお、本発明において、低級炭化水素とはメタンや炭素数が2〜6の飽和及び不飽和炭化水素を意味する。これら炭素数が2〜6の飽和及び不飽和炭化水素としては、エタン、エチレン、プロパン、プロピレン、n−ブタン、イソブタン、n−ブテン及びイソブテン等が例示できる。
【0031】
本発明の実施形態に係る芳香族化合物製造方法で使用する反応器は、例えば、固定床反応器あるいは流動床反応器などを用いればよい。以下、本発明の実施例に係る芳香族化合物製造方法を示してより詳細に説明する。
【0032】
(1)一酸化炭素を添加することによる触媒活性の変化
(参考例1)
本発明の参考例1に係る芳香族化合物製造法は、触媒にメタンを接触反応させて芳香族化合物と水素ガスを製造する方法において、反応ガスに対して0.75%の一酸化炭素を添加し、780℃で触媒反応を行った。
【0033】
本発明の参考例1に係るメタロシリケート担体としてH型ZSM5ゼオライト(SiO2/Al23=40)を用い、以下の調製方法により触媒を作成した。
【0034】
イオン交換水2000mlにモリブデン酸アンモニウム456.5gを溶解させた水溶液に、HZSM5を400g加え、室温にて3時間攪拌し、HZSM5にモリブデンを含浸担持した。
【0035】
得られたモリブデン担持HZSM5(Mo−HZSM5)を乾燥後、前記の担持体を大気条件下にて温度550℃で8時間焼成することにより、モリブデンが担持された触媒粉末(Moの重量比が触媒全体に対して6.8wt%の触媒)を得た。さらに、この触媒粉末に無機結合剤を加えてペレット状に押し出し成型、焼成を行い触媒とした。
【0036】
上記の方法で作製した触媒を、固定床流通式反応装置のインコネル800H接ガス部カロライジング処理製反応管(内径18mm)内に充填した。この反応管内の反応温度を780℃、圧力を0.3MPaに設定し、反応ガスに対して0.75%の一酸化炭素を添加したメタンを空間速度(SV:Space Velocity)3000ml/hr/g−MFIの流量で供給し、メタンの芳香族化反応を行った。そして、メタンの芳香族化反応によるベンゼン及び水素ガスの生成反応の触媒活性を評価した。
【0037】
触媒活性は、「ベンゼン収率」、「メタン転化率」、「ベンゼン生成速度」に基づいて評価した。なお、本実施例における「ベンゼン収率」、「メタン転化率」、「ベンゼン生成速度」を以下に示すように定義した。
・「ベンゼン収率(%)」=〔「生成したベンゼン量(mol)」/「メタン改質反応に供されたメタン量(mol)」〕×100
・「メタン転化率(%)」=〔「原料メタン流速」−「未反応のメタン流速」)/「原料メタン流速」〕×100
・「ベンゼン生成速度(nmol/g/s)」=「触媒1gあたり、1秒間に生成したベンゼンのnmol数」
前記反応ガスを供給する前の触媒の前処理は、触媒を空気気流下550℃まで昇温し、2時間維持した後、メタン20%:水素80%の前処理ガスに切り替えて、700℃まで昇温し、3時間維持した。その後、反応ガスに切り替えて所定の温度(780℃)まで昇温し触媒の評価を行った。
【0038】
水素、アルゴン、メタンの分析はTCD−GCで分析し、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン等の芳香族炭化水素の分析はFID−GCで分析した。
【0039】
(参考例2)
本発明の参考例2に係る芳香族化合物製造法は、触媒にメタンを接触反応させて芳香族化合物と水素ガスを製造する方法において、反応ガスに対して6.4%の一酸化炭素を添加し、780℃で触媒反応を行った。
【0040】
本発明の参考例2に係る芳香族化合物製造方法で用いられた触媒は、参考例1で用いられた触媒(Mo−HZSM5)と同様であるため、触媒製造方法の詳細な説明は省略する。また、触媒の前処理、及び各物質の分析方法も参考例1と同様であるため、詳細な説明は省略する。なお、添加ガス以外の反応条件についても参考例1と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0041】
(比較例1)
本発明の比較例1に係る芳香族化合物製造法では、触媒にメタンのみを接触反応させ、780℃で触媒反応を行い芳香族化合物と水素ガスを製造した。
【0042】
本発明の比較例1に係る芳香族化合物製造方法で用いられた触媒は、参考例1で用いられた触媒(Mo−HZSM5)と同様であるため、触媒製造方法の詳細な説明は省略する。また、触媒の前処理、及び各物質の分析方法も参考例1と同様であるため、詳細な説明は省略する。なお、反応に供されるガス以外の反応条件についても参考例1と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0043】
(比較例2)
本発明の比較例2に係る芳香族化合物製造法は、触媒にメタンを接触反応させて芳香族化合物と水素ガスを製造する方法において、反応ガスに対して1.2%の二酸化炭素を添加し、780℃で触媒反応を行った。
【0044】
本発明の比較例2に係る芳香族化合物製造方法で用いられた触媒は、参考例1で用いられた触媒(Mo−HZSM5)と同様であるため、触媒製造方法の詳細な説明は省略する。また、触媒の前処理、及び各物質の分析方法も参考例1と同様であるため、詳細な説明は省略する。なお、添加ガス以外の反応条件についても参考例1と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0045】
(比較例3)
本発明の比較例3に係る芳香族化合物製造法は、触媒にメタンを接触反応させて芳香族化合物と水素ガスを製造する方法において、反応ガスに対して3.0%の二酸化炭素を添加し、780℃で触媒反応を行った。
【0046】
本発明の比較例3に係る芳香族化合物製造方法で用いられた触媒は、参考例1で用いられた触媒(Mo−HZSM5)と同様であるため、触媒製造方法の詳細な説明は省略する。また、触媒の前処理、及び各物質の分析方法も参考例1と同様であるため、詳細な説明は省略する。なお、添加ガス以外の反応条件についても参考例1と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0047】
図1は、Mo−HZSM5触媒存在下で、上記参考例1、2及び比較例1〜3に示した反応条件で触媒反応を連続して行った場合のベンゼン収率の時間変化を示す図である。
【0048】
メタンのみを接触反応させた場合(比較例1)は、反応時間が7時間たつと触媒活性を失っているのに対して、二酸化炭素を添加したメタンを接触反応させた場合(比較例2、3)は、触媒活性の低下が抑制されていることがわかる。特に、3.0%の二酸化炭素を添加すると(比較例3)反応時間が15時間経過しても初期の最大ベンゼン収率を維持している。
【0049】
しかし、メタンのみを接触反応させた場合(比較例1)の最大ベンゼン収率が8.0%以上であるのに対して、二酸化炭素を添加した場合(例えば、比較例3)は、7.0%と、最大ベンゼン収率が減少する。比較例2と比較例3との比較により、二酸化炭素の添加量が増加すると、最大ベンゼン収率は低下することがわかる。
【0050】
つまり、反応温度が同じ場合、反応ガスに二酸化炭素を加えることにより、触媒が活性を維持する時間は長くなるが、最大ベンゼン収率が減少してしまう。
【0051】
一方、一酸化炭素を添加したメタンを接触反応させた場合(参考例1)、メタンのみを接触反応させた場合(比較例1)と比較して最大ベンゼン収率が向上している。特に、参考例1と参考例2の比較より、反応ガスに対して一酸化炭素の添加量が増加すると、触媒活性の安定性が向上するとともに、最大ベンゼン収率が向上していることがわかる。
【0052】
(2)一酸化炭素の添加量の違いによる触媒活性の変化
(参考例3)
本発明の参考例3に係る芳香族化合物製造法は、触媒にメタンを接触反応させて芳香族化合物と水素ガスを製造する方法において、反応ガスに対して1.5%の一酸化炭素を添加し、780℃で触媒反応を行った。
【0053】
本発明の参考例3に係る芳香族化合物製造方法で用いられた触媒は、参考例1で用いられた触媒(Mo−HZSM5)と同様であるため、触媒製造方法の詳細な説明は省略する。また、触媒の前処理、及び各物質の分析方法も参考例1と同様であるため、詳細な説明は省略する。なお、添加ガス以外の反応条件についても参考例1と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0054】
(参考例4)
本発明の参考例4に係る芳香族化合物製造法は、触媒にメタンを接触反応させて芳香族化合物と水素ガスを製造する方法において、反応ガスに対して3.0%の一酸化炭素を添加し、780℃で触媒反応を行った。
【0055】
本発明の参考例4に係る芳香族化合物製造方法で用いられた触媒は、参考例1で用いられた触媒(Mo−HZSM5)と同様であるため、触媒製造方法の詳細な説明は省略する。また、触媒の前処理、及び各物質の分析方法も参考例1と同様であるため、詳細な説明は省略する。なお、添加ガス以外の反応条件についても参考例1と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0056】
(参考例5)
本発明の参考例5に係る芳香族化合物製造法は、触媒にメタンを接触反応させて芳香族化合物と水素ガスを製造する方法において、反応ガスに対して11.9%の一酸化炭素を添加し、780℃で触媒反応を行った。
【0057】
本発明の参考例5に係る芳香族化合物製造方法で用いられた触媒は、参考例1で用いられた触媒(Mo−HZSM5)と同様であるため、触媒製造方法の詳細な説明は省略する。また、触媒の前処理、及び各物質の分析方法も参考例1と同様であるため、詳細な説明は省略する。なお、添加ガス以外の反応条件についても参考例1と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0058】
(参考例6)
本発明の参考例6に係る芳香族化合物製造法は、触媒にメタンを接触反応させて芳香族化合物と水素ガスを製造する方法において、反応ガスに対して20%の一酸化炭素を添加し、780℃で触媒反応を行った。
【0059】
本発明の参考例6に係る芳香族化合物製造方法で用いられた触媒は、参考例1で用いられた触媒(Mo−HZSM5)と同様であるため、触媒製造方法の詳細な説明は省略する。また、触媒の前処理、及び各物質の分析方法も参考例1と同様であるため、詳細な説明は省略する。なお、添加ガス以外の反応条件についても参考例1と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0060】
図2は、Mo−HZSM5触媒存在下で、上記参考例1〜6及び比較例1に示した反応条件で触媒反応を連続して行った場合のベンゼン収率の時間変化を示す図である。
【0061】
一酸化炭素を添加したメタンを接触反応させた場合(参考例1〜6)、添加する一酸化炭素の量にかかわらず、メタンのみを接触反応させた場合(比較例1)と比較して触媒活性の低下が抑制されるとともに、最大ベンゼン収率が向上している。一酸化炭素の量が増加することで、触媒の低下抑制効果が向上することがわかる。また、一酸化炭素の添加量が20%であっても、最大ベンゼン収率はほとんど損なわれることがなく、一酸化炭素の添加量が6.4%の場合(参考例2)には、最大ベンゼン収率が9%を超えている。
【0062】
(3)触媒反応工程と触媒再生工程を繰り返した場合の、一酸化炭素の添加量の違いによる触媒活性の変化
(実施例1)
本発明の実施例1に係る芳香族化合物製造法は、触媒にメタンを接触反応させて芳香族化合物と水素ガスを製造する方法において、反応ガスに対して3.0%の一酸化炭素を添加し、820℃で触媒反応を行った。さらに、1時間の触媒反応(反応工程)と3時間の触媒再生反応(再生工程)を交互に行った。
【0063】
本発明の実施例1に係る芳香族化合物製造方法で用いられた触媒は、参考例1で用いられた触媒(Mo−HZSM5)と同様であるため、触媒製造方法の詳細な説明は省略する。また、触媒の前処理、及び各物質の分析方法も参考例1と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0064】
HZSM5にモリブデンを担持した触媒を、固定床流通式反応装置のインコネル800H接ガス部カロライジング処理製反応管内に充填した。この反応管内の反応温度を820℃、圧力を0.15MPaに設定し、反応ガスに対して3.0%の一酸化炭素を添加したメタンを空間速度3000ml/hr/g−MFIの流量で供給し、メタンの芳香族化反応(反応工程)を行った。反応工程は、1時間行った。反応工程後、前記反応管内の温度を820℃、圧力を0.15MPaに設定し、再生ガスとして水素ガスを空間速度3000ml/hr/g−MFIの流量で供給し、触媒の再生反応(再生工程)を行った。再生工程は、3時間行った。そして、メタンの芳香族化反応によるベンゼン及び水素ガスの生成反応の触媒活性を評価した。
【0065】
(比較例4)
本発明の比較例4に係る芳香族化合物製造法は、触媒にメタンのみを接触反応させ、820℃で触媒反応を行い芳香族化合物と水素ガスを製造した。1時間の触媒反応(反応工程)と3時間の触媒再生反応(再生工程)を交互に行った。
【0066】
本発明の比較例4に係る芳香族化合物製造方法で用いられた触媒は、参考例1で用いられた触媒(Mo−HZSM5)と同様であるため、触媒製造方法の詳細な説明は省略する。また、触媒の前処理、及び各物質の分析方法も参考例1と同様であるため、詳細な説明は省略する。なお、反応ガス以外の反応条件については、実施例1と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0067】
(比較例5)
本発明の比較例5に係る芳香族化合物製造法は、触媒にメタンを接触反応させて芳香族化合物と水素ガスを製造する方法において、反応ガスに対して1.5%の二酸化炭素を添加し、820℃で触媒反応を行った。さらに、1時間の触媒反応(反応工程)と3時間の触媒再生反応(再生工程)を交互に行った。
【0068】
本発明の比較例5に係る芳香族化合物製造方法で用いられた触媒は、参考例1で用いられた触媒(Mo−HZSM5)と同様であるため、触媒製造方法の詳細な説明は省略する。また、触媒の前処理、及び各物質の分析方法も参考例1と同様であるため、詳細な説明は省略する。なお、添加ガス以外の反応条件については、実施例1と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0069】
図3は、Mo−HZSM5触媒存在下で、上記実施例1及び比較例4、5に示した反応条件で触媒反応と触媒再生反応を交互に行った場合のベンゼン収率の時間変化を示す図である。
【0070】
一酸化炭素を添加したメタンを接触反応させた場合(実施例1)、メタンのみを接触反応させた場合(比較例4)と比較して触媒活性の低下が抑制されるとともに、最大ベンゼン収率が向上している。二酸化炭素を添加したメタンを接触反応させた場合(比較例5)もメタンのみを接触反応させた場合(比較例4)と比較して触媒活性の低下が抑制されているが、図3(a)に示すように、最大ベンゼン収率がメタンのみを接触反応させた場合(比較例4)における最大ベンゼン収率を上回ることがない。図3(c)に示すように、一酸化炭素を添加したメタンを接触反応させた場合(実施例1)は、比較例4、5と比較してメタン転化率が向上し、その結果ベンゼン収率が向上している。
【0071】
(4)一酸化炭素を添加した場合の反応温度の違いによる触媒活性の変化
(実施例2)
本発明の実施例2に係る芳香族化合物製造法は、触媒にメタンを接触反応させて芳香族化合物と水素ガスを製造する方法において、反応ガスに対して3.0%の一酸化炭素を添加し、890℃で触媒反応を行った。
【0072】
本発明の実施例2に係る芳香族化合物製造方法で用いられた触媒は、微細粉末状の触媒を用いたこと以外は参考例1で用いられた触媒(Mo−HZSM5)と同様であるため、触媒製造方法の詳細な説明は省略する。すなわち、実施例2で用いられた触媒は、モリブデンをHZSM5に含浸担持した後、この担持体を乾燥し、得られた触媒粉末を焼成した微細粉末状の触媒を用いた。また、触媒の前処理、及び各物質の分析方法も参考例1と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0073】
HZSM5にモリブデンを担持した触媒(0.4g)を、固定床流通式反応装置のガラス製反応管内に充填した。この反応管内の反応温度を890℃、圧力を0.15MPaに設定し、反応ガスとして3.0%の一酸化炭素を添加したメタンを空間速度10000ml/hr/g−MFIの流量で供給し、メタンの芳香族化反応を行った。そして、メタンの芳香族化反応によるベンゼン及び水素ガスの生成反応の触媒活性を評価した。
【0074】
(実施例3)
本発明の実施例3に係る芳香族化合物製造法は、触媒にメタンを接触反応させて芳香族化合物と水素ガスを製造する方法において、反応ガスに対して3.0%の一酸化炭素を添加し、870℃で触媒反応を行った。
【0075】
本発明の実施例3に係る芳香族化合物製造方法で用いられた触媒は、実施例2で用いられた触媒(Mo−HZSM5)と同様であるため、触媒製造方法の詳細な説明は省略する。また、触媒の前処理、及び各物質の分析方法は、参考例1と同様であるため詳細な説明は省略する。なお、温度以外の反応条件については実施例2と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0076】
(実施例4)
本発明の実施例4に係る芳香族化合物製造法は、触媒にメタンを接触反応させて芳香族化合物と水素ガスを製造する方法において、反応ガスに対して3.0%の一酸化炭素を添加し、850℃で触媒反応を行った。
【0077】
本発明の実施例4に係る芳香族化合物製造方法で用いられた触媒は、実施例2で用いられた触媒(Mo−HZSM5)と同様であるため、触媒製造方法の詳細な説明は省略する。また、触媒の前処理、及び各物質の分析方法は、参考例1と同様であるため詳細な説明は省略する。なお、温度以外の反応条件については実施例2と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0078】
(比較例6)
本発明の比較例6に係る芳香族化合物製造法では、触媒にメタンのみを接触反応させ、890℃で触媒反応を行い芳香族化合物と水素ガスを製造した。
【0079】
本発明の比較例6に係る芳香族化合物製造方法で用いられた触媒は、実施例2で用いられた触媒(Mo−HZSM5)と同様であるため、触媒製造方法の詳細な説明は省略する。また、触媒の前処理、及び各物質の分析方法は、参考例1と同様であるため詳細な説明は省略する。なお、反応ガス以外の反応条件については実施例2と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0080】
(比較例7)
本発明の比較例7に係る芳香族化合物製造法では、触媒にメタンのみを接触反応させ、870℃で触媒反応を行い芳香族化合物と水素ガスを製造した。
【0081】
本発明の比較例7に係る芳香族化合物製造方法で用いられた触媒は、実施例2で用いられた触媒(Mo−HZSM5)と同様であるため、触媒製造方法の詳細な説明は省略する。また、触媒の前処理、及び各物質の分析方法は、参考例1と同様であるため詳細な説明は省略する。なお、反応ガス以外の反応条件については実施例3と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0082】
(比較例8)
本発明の比較例8に係る芳香族化合物製造法では、触媒にメタンのみを接触反応させ、850℃で触媒反応を行い芳香族化合物と水素ガスを製造した。
【0083】
本発明の比較例8に係る芳香族化合物製造方法で用いられた触媒は、実施例2で用いられた触媒(Mo−HZSM5)と同様であるため、触媒製造方法の詳細な説明は省略する。また、触媒の前処理、及び各物質の分析方法は、参考例1と同様であるため詳細な説明は省略する。なお、反応ガス以外の反応条件については実施例4と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0084】
図4は、Mo−HZSM5触媒存在下で、上記実施例2〜4に示した反応条件で触媒反応を連続して行った場合の反応後のガス中におけるベンゼン量の時間変化を示す図である。また、図5は、Mo−HZSM5触媒存在下で、上記比較例6〜8に示した反応条件で触媒反応を連続して行った場合の反応後のガス中におけるベンゼン量の時間変化を示す図である。
【0085】
図4に示すように、一酸化炭素を添加したメタンを触媒に接触反応させた場合、反応温度の上昇に伴い、反応後のガス中における最大ベンゼン量が増加することがわかる。
【0086】
一方、図5に示すように、メタンのみを触媒に接触反応させた場合、反応後のガス中における最大ベンゼン量はほとんど変化していない。
【0087】
以上、実施例を挙げて示したように、触媒に低級炭化水素を接触反応させて芳香族化合物と水素ガスを製造する際に、接触反応に供される反応ガスに一酸化炭素を添加し、反応温度を800℃より高くして接触反応を行うことで、触媒活性の低下を抑制するだけでなく、最大ベンゼン収率を向上させることができる。
【0088】
一酸化炭素を反応ガスに添加することにより、反応温度の上昇に伴い最大ベンゼン収率が向上するので、流動層反応器での反応のように瞬時に活性の高い反応が求められる反応形態において特に有効である。
【0089】
なお、最大ベンゼン収率が向上する効果は、高SV(空間速度が速い条件)で顕著であり、SVが3000ml/hr/g−MFI以上、特にSVが5000ml/hr/g−MFI以上で接触反応を行うとよい。
【0090】
触媒反応に供されるガスに一酸化炭素を添加した場合と二酸化炭素を添加した場合の芳香族化合物の生成反応の違いについて説明する。
【0091】
メタン(CH4)からベンゼン(C66)と水素(H2)を生成する反応は(1)式であらわされる。
【0092】
6CH4 → C66 + 9H2 …(1)
また、コーク(C)が生成する反応は(2)式による反応であると考えられる。
【0093】
CH4 → C + 2H2 …(2)
また、(1)式と逆の反応によりメタンを生成する反応も生じる((3)式に示す)。
【0094】
66 + 9H2 → 6CH4 …(3)
反応ガスに二酸化炭素(CO2)を添加した場合、(4)式に示すようにコーク除去反応が起こると考えられる。
【0095】
CO2 + C → 2CO …(4)
また、(5)式に示すように、二酸化炭素は、メタンと反応して水素を生成すると考えられる。
【0096】
CO2 + CH4 → 2CO + 2H2 …(5)
したがって、反応ガスに二酸化炭素を添加した場合、(5)式に示した反応により、水素が発生する。(1)式で示したベンゼン生成反応は平衡反応であり、発生した水素により平衡が移動しベンゼンの生成が抑制されてしまうものと考えられる。
【0097】
また、二酸化炭素は、(6)式で示すように、モリブデンカーバイド(MoC)と反応して、活性種であるモリブデンカーバイドを減少させる場合がある。この反応は、流量が多い場合(例えば、空間速度10000ml/hr/g−MFIの場合)に起こりやすいものであると考えられている。
【0098】
4CO2 + MoC → MoO3 + 5CO …(6)
一方、一酸化炭素(CO)を添加することにより、上記(5)式の逆反応が起こり、二酸化炭素が生成する。この二酸化炭素により(4)式で示したコーク除去反応が起こることで、触媒活性の低下を抑制することができるものと考えられる。そして、(5)式の逆反応により水素が消費されることにより、(1)式において平衡が移動し、ベンゼンの生成が促進されるものと考えられる。
【0099】
また、一酸化炭素は、(7)式で示される反応をするものと考えられている。この反応も平衡反応である。
【0100】
CO → C + O …(7)
(7)式で生成した酸素原子(O)により、反応器中の水素が消費されることにより、(1)式において平衡が移動しベンゼンの生成が促進されるものと考えられる。
【0101】
以上のように、本発明に係る低級炭化水素芳香族化触媒を用いた芳香族炭化水素及び水素製造方法によれば、高収率でベンゼン等の芳香族炭化水素を生成することができる。すなわち、反応温度を800℃より高くし、一酸化炭素を添加することにより、触媒活性を長期にわたって維持できるだけでなく、実用上十分な収率を得ることができる。
【0102】
すなわち、一酸化炭素を添加することで、難除去性コークの蓄積を抑えることができるだけでなく、触媒反応温度を上昇させることで、メタンのみを添加させた際の最大ベンゼン収率以上の最大ベンゼン収率を得ることができる。一方、CO2は、芳香族化反応の抑制効果があるので、メタンのみを添加させた際の最大ベンゼン収率以上のベンゼン収率(触媒活性)を得ることができない。
【0103】
特に、触媒反応工程と触媒再生工程を繰り返すプロセスでは、初期の反応収率が重要となる。本発明の芳香族炭化水素製造方法によれば、高いベンゼン収率を得るとともに、再生除去が難しい析出炭素の生成を抑えることができるので、触媒反応と再生反応を繰り返しても長期にわたり高い触媒活性を維持することができる。
【0104】
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変形及び修正が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変形及び修正が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
【0105】
本願発明は、低級炭化水素からなる反応ガスに一酸化炭素を添加することでコークの除去を促進し、さらにベンゼン生成率を向上させることを特徴とするものである。したがって、低級炭化水素芳香族化触媒は、メタロシリケートに担持されたモリブデンに限定されるものではなく、既に低級炭化水素の芳香族化合物化触媒としての効果が確認され、文献(例えば、『表面』vol.37No.12(1999)71頁〜81頁「メタンの触媒化学的変換−鋳型ゼオライト触媒を用いるベンゼン直接合成」)等で紹介されている各種触媒金属のうち、レニウム、タングステン、鉄、コバルト、ならびにそれら(モリブデンを含む)の化合物を単独又は組み合わせて用いた場合においても、同様の作用効果が得られることは明らかである。
【0106】
また、反応工程と再生工程を繰り返す場合において、反応時間及び再生時間は実施例に限定されるものではなく、適宜触媒活性の変化に基づいて触媒活性が低下する前に反応工程から再生工程に切り替える等、難除去性コークが析出しない時間を設定すればよい。例えば、触媒反応工程において触媒の温度を測定し、温度変化に基づいて触媒反応工程と再生工程を切り替えてもよい。触媒反応工程では、低級炭化水素の芳香族化反応が吸熱反応であるため、反応時に触媒の温度が低下する。そして、触媒の劣化とともに低級炭化水素の芳香族化反応活性も低下するため、触媒の温度変化を測定することにより触媒の劣化度合いを検出することができる。そこで、触媒の温度が上昇し始めた後に反応工程から再生工程に切り替えることで、より効率的に芳香族炭化水素を製造できるとともに触媒の劣化を防止することもできる。触媒の温度が上昇してから再生工程に切り替えることで、再生工程で触媒温度を反応に必要な設定温度まで上昇させるためのエネルギーを節約することもできる。
【0107】
さらに、反応工程と再生工程を繰り返す場合において、再生工程で使用される再生ガスは、水素に限定されるものではなく、一酸化炭素等の還元性ガスを含んでいれば適宜用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低級炭化水素を触媒に接触反応させ、芳香族炭化水素を主成分とする芳香族化合物及び水素を製造する方法であって、
前記低級炭化水素に一酸化炭素を添加し、反応温度を800℃より高くして前記触媒に接触反応させる
ことを特徴とする芳香族化合物製造方法。
【請求項2】
前記一酸化炭素濃度は、反応ガスに対して0.75%〜20%である
ことを特徴とする請求項1に記載の芳香族化合物製造方法。
【請求項3】
前記反応温度は、820℃以上である
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の芳香族化合物製造方法。
【請求項4】
前記低級炭化水素を前記触媒と接触反応させる反応工程と、前記反応工程で使用された触媒を再生する再生工程を繰り返すことにより前記芳香族化合物を製造する
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の芳香族化合物製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−195535(P2011−195535A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66077(P2010−66077)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】