説明

苗床均平機

【課題】苗床の土塊を粉砕して苗床を容易に均平にすることができるエンジン等の原動機による動力を利用した苗床均平機を提供する。
【解決手段】苗床均平機10は、苗床表面を押圧して均平化する押圧基板13と、該押圧基板上に配置した動力伝達部材12と、動力伝達部材12に連結して設けた原動機1と、前記押圧基板あるいは動力伝達部材より突設した運搬用引手22とを備え、前記原動機の動力で前記動力伝達部材を上下方向に往復運動させて前記押圧基板を上下振動させて苗床表面に均平化する構成としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗床均平機に関し、詳しくは、田植機に用いる苗箱を苗床に密着しやすくするために、エンジン等の原動機による動力を利用して苗床を容易に均平化するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、田植機による田植えでは、複数の苗を備えた苗箱を田植機に装填し、該苗箱から取り出した苗を圃場に植え付けている。
この苗箱における苗の育成は、籾種の入った苗箱を均平に整地された苗床上に載置し、苗床表面と苗箱下面を完全に密着させて行っている。苗床表面と苗箱下面が完全に密着していないと苗箱内の籾種への水分供給が阻害されて出芽を揃えることができないため、苗箱を苗床上に載置する前に、苗床を十分に均平化する必要がある。
【0003】
前記苗床を均平にするため、例えば、実開昭62−57602号公報(特許文献1)で、図5に示す均平具1が提供されている。該均平具1は、棒状の柄2の先端側に櫛状のレーキ3と整地板4を備え、レーキ3で苗床表面の土をほぐし、整地板4で苗床表面を均平にできるようにされている。
【0004】
しかしながら、特許文献1で提供されている均平具1のレーキ3で苗床の全ての土塊を細かく砕く作業は非常に時間と労力がかかる問題がある。
また、均平具1による整地作業は人力によるため、苗床表面と苗箱下面を完全に密着させるのに十分に苗床表面を均平にすることができず、苗床表面に苗箱を載置した後、苗箱上にさらに踏み板を載置し、該踏み板を踏みつけて苗箱を苗床に密着させており、さらに時間と労力がかかる問題がある。
【0005】
【特許文献1】実開昭62−57602号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記問題に鑑みてなされたものであり、苗床を容易に均平にする労力を低減できる苗床均平機を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、
苗床表面を押圧して均平化する押圧基板と、
前記押圧基板上に設けた動力伝達部材と、
前記動力伝達部材に連結して設けた原動機と、
前記押圧基板あるいは動力伝達部材より突設した運搬用部材と、
を備え、
前記原動機の動力で前記動力伝達部材を上下方向に往復運動させて前記押圧基板を上下振動させて苗床表面に均平化する構成としていることを特徴とする苗床均平機を提供している。
【0008】
具体的には、前記押圧基板は前記苗床幅側を長尺とする長方形状とし、該押圧基板の長さ方向の中央部に支柱を立設し、該支柱の上面に前記動力伝達部材を配置し、該動力伝達部材と前記支柱との間に引っ張りパネ或いは弾性を有する環状ベルトを張架し、該引っ張りバネあるいは環状ベルトを介して前記押圧基板を上下振動させ、かつ、
前記押圧基板の長さ方向の両側に前記運搬用部材を設け、或いは前記動力伝達部材より両側に運搬用部材を突設している。
【0009】
前記のように、押圧基板から立設した支柱と動力伝達部材との間に、互いに近接方向に付勢する引っ張りパネを張架すると、動力伝達部材を支柱上に当接させることができ、動力伝達部材が下向き移動した時に支柱を下向きに押圧して、押圧基板に下向きの打撃振動を高速で繰り返し負荷でき、苗床の土塊を粉砕できるようにしている。
弾性を有する環状ベルトを張架した場合において、同様に動力伝達手段が下向き移動した時に支柱の上端面を打撃して、打撃振動を与えることができる。
【0010】
前記のように、本発明の苗床均平機では、エンジン等の原動機で発生する動力により苗床を均平にするための押圧基板を振動させ、この振動により苗床の土塊を粉砕し、苗床上層を柔らかくして表面を均平にしている。この原動機による押圧基板の振動は、人力では不可能な速度での振動であるため、苗床の土塊を容易に十分な細さに粉砕することができる。よって、苗床の均平作業が容易かつ迅速に行うことができ、作業時間の短縮と省力化を図ることができる。さらに、苗床を苗箱と密着できる程度に十分に均平化することができ、出芽を揃えることができる。
さらに、本発明の苗床均平機によれば、苗床を十分に均平化して、苗箱と苗床を密着させることができるため、従来例で示したような苗床に苗箱を載置した後、苗箱上に踏み板を載置して踏みつける作業が不要となり、さらに作業時間の短縮と省力化を図ることができる。
【0011】
また、前記構成によれば、原動機からの動力を押圧基板に伝達する動力伝達部材を押圧基板の中央に配置しているため、押圧基板に均等な振動が発生し、苗床の土塊の粉砕や表面の均平化にムラがなく、効率良く作業を行うことができる。
さらに、前記運搬用部材の引き手を持って苗床均平機を苗床上で引っ張っていくだけで苗床を連続して均平化することができ、大面積の苗床でも均平作業を容易にすることができる。
【0012】
前記押圧基板はメッシュ材で形成してもよい。前記構成によれば、押圧基板に設けた網目部分により土塊を容易に粉砕することができる。
【0013】
前記押圧基板の一側にゴム板を設けることが好ましい。
前記構成によれば、苗床均平機の押圧基板で苗床を均平にした後、さらにゴム板で苗床表面を均してさらに均平にすることができる。
また、該ゴム板は押圧基板に基端側から先端側にかけて垂れ下げて突設すると、この垂れ下がりにより苗床表面に適度な負荷を与え、効率よく苗床表面を均平にすることができる。
【発明の効果】
【0014】
前述したように、本発明の苗床均平機によれば、エンジン等の原動機で発生する動力により押圧基板を振動させ、この振動により苗床の土塊を粉砕し、苗床上層を柔らかくして表面を均平にしているため、苗床の均平作業を容易にして作業時間の短縮と省力化を図ることができると共に、苗床を苗箱と密着できる程度に十分に均平化することができ、出芽を揃えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図3は、本発明の第1実施形態を示す。
本実施形態の苗床均平機10は、籾種を備えた苗箱を載置する苗床を均平にする装置であり、苗床に苗箱を載置する前に苗床均平機10を用いて苗床を均平にし、苗床表面と苗箱下面が完全に密着するようにしている。
【0016】
苗床均平機10は、エンジン11(原動機)と、該エンジン11により発生した動力によって上下方向Yに往復運動する動力伝達部材12と、該動力伝達部材12の下方位置に配置され、該動力伝達部材12の上下往復運動により上下方向Yに振動し、苗床表面を押圧して均平にする押圧基板13を備えている。
【0017】
前記エンジン11の出力軸に連結する動力伝達部材12を設け、エンジン11で発生した動力により動力伝達部材12を上下方向Yに往復運動する構成としている。動力伝達部材12のハウンジグ14の両側外面に引掛棒15を左右方向Xに突設している。
【0018】
一方、苗床に押圧される押圧基板13は長方形の金属製板材から形成し、その長さ方向の中央に支柱16を立設している。該支柱16の上端面16aに動力伝達部材12の下端面12aを載置している。
前記支柱16の上部側に左右方向Xに対向する一対のバネ受け17を上方へ向けて突設している。これらバネ受け17は、上下方向Yに延在する下部側垂直部17aと、該下部側垂直部17aの上端に連続し互いに離反する方向へ傾斜する中間傾斜部17bと、該中間傾斜部17bの上端に連続し、上方に延在する上部側垂直部17cとからなる。バネ受け17の下部側垂直部17aを支柱16の両側面にネジ締めし、上部側垂直部17cに上下方向Yを長軸方向とする長円形状の貫通孔17dを設け、該貫通孔17dに動力伝達部材12から突設した引掛棒15を貫通させて、動力伝達部材12を上下方向Yに往復移動可能に保持している。
一方、支柱16の下部側の両側外面に、押圧基板13と隙間をあけて引掛棒18を左右方向Xに突設している。
前記上下の引掛棒15、18の間に、互いに近接する方向に付勢する引っ張りバネ19を張架し、動力伝達部材12の下端面12aを支柱16の上端面16aに対して当接させる方向に付勢している。
【0019】
前記長方形の平板からなる押圧基板13の左右方向Xの幅は、苗床の幅と対応させた長さとしている。押圧基板13は平板の周縁に枠部20を設け、左右方向Xの枠部20aに逆U字状の運搬用フレーム21を上向きに突設している。該運搬用フレーム21の進行方向側部21aに作業用の引手22を設けていると共に、他方の側部21bにエンジン操作用のスイッチ23を設けている。
前記作業用の引手22は取手部材22aと、該取手部材の先端に連結したつなぎ部材22bからなり、つなぎ部材22bに振動を伝えないポリプロピレン等からなる樹脂紐としている。
さらに、前記運搬用フレーム21の側部21aに仮置き棒29を設け、作業用の引手22を使わない時、引手22を仮置き棒29に引っかけるようにしている。
さらに、押圧基板13の進行方向と反対側の縁部には、押圧基板13と略平行にゴム板24を下向きに傾斜させて突設している。
【0020】
次に、前記苗床均平機10の動作について説明する。
苗床均平機10のエンジン11を停止した状態では、図2に示すように、動力伝達部材12は引っ張りバネ19により付勢され、押圧基板13側の支柱16の上端面16aに動力伝達部材12の下端面12aが当接配置されている。
【0021】
スイッチ23を操作してエンジン11を作動させると、エンジン11により発生した動力によって動力伝達部材12が上下方向Yに往復運動する。
エンジン停止状態で引っ張りバネ19に支柱16の上端面16aに位置されている動力伝達手段12は、図3に示すように、エンジン11による動力伝達部材12の下方移動で、連動して支柱16を下向きに作動させ、苗床の表面に負荷される打撃振動を発生させる。このように、エンジン11により動力伝達部材12を上下往復運動させることにより、押圧基板13に打撃振動を高速で繰り返し負荷することができる。
【0022】
また、引っ張りバネ19により動力伝達部材12を支柱16上に位置するように常時付勢しているため、動力伝達部材12とエンジン11との重力が支柱16を介して押圧基板13に負荷されるため、押圧基板13を苗床上に載せるだけで苗床を均平化できる負荷を発生させることができる。
【0023】
前記苗床均平機10を用いて苗床(図示せず)を均平にする際には、苗床表面に苗床均平機10を置く。
この状態で、エンジン11を作動させて押圧基板13を振動させ、前記打撃振動を苗床に負荷して土塊を粉砕すると共に、エンジン11および動力伝達部材12の重力を支柱16を介して押圧基板13に常時負荷していることで、苗床表面を押圧して均平にする。
このように、押圧基板13を載置した部分の苗床を均平しながら、作業員は引手22を持って苗床均平機10を移動させて順次均平作業を行う。このとき、押圧基板13により均平化された苗床表面上をゴム板24が通過するため、該ゴム板24によりさらに苗床表面が均平化される。
【0024】
前記構成によれば、エンジン11で発生する動力により押圧基板13に打撃振動を発生させ、この打撃振動により苗床の土塊を粉砕でき苗床上層を柔らかくできる。かつ、常時押圧基板13を苗床表面に圧接していることで、苗床表面を均平できる。
前記のように、苗床の均平作業を容易にして作業時間の短縮と省力化を図ることができると共に、苗床を苗箱と密着できる程度に十分に均平化することができ、出芽を揃えることができる。
【0025】
図4は、本発明の第2実施形態を示す。
本実施形態の苗床均平機10’では、押圧基板13’の平板部を複数の孔13aを設けて金属線材からなるメッシュ材で形成している。
また、第1実施形態の引っ張りバネに代えて、弾性を有する環状ベルト25を用い、該環状ベルト25をエンジン11側の引掛棒15と押圧基板13側の引掛棒18に引っ掛けている。
さらに、動力伝達部材12のハウジング14に、エンジン11を垂直方向に囲む垂直枠部26を取り付けると共に、該垂直枠部26にエンジン11を水平方向に囲む水平枠部27を固定して取り付けており、該水平枠部27に左右方向Xに突出するT字状の引手28を設けている。
【0026】
前記構成によれば、第1実施形態と同様、エンジン11の動力を利用して苗床の均平作業を容易に行うことができる。
また、押圧基板13’の網目により効率良く苗床の土塊を粉砕することができる。
さらに、作業員が把持する引手28を押圧基板側ではなく、エンジン11側に取り付けているため、押圧基板13’の打撃振動が直接作業員に伝わるのを防止することができる。 なお、他の構成及び作用効果は第1実施形態と同様のため、同一の符号を付して説明を省略する。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の苗床均平機は、田や畑等の苗床を均平にするために用いられるものであり、特に、苗箱に蒔かれた籾種を発芽させるための苗床を苗箱と密着させるために行う均平作業に好適に用いられるものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施形態の苗床均平機の斜視図である。
【図2】動力伝達部材が上方位置にある状態を示す苗床均平機の要部拡大図である。
【図3】動力伝達部材が下方位置にある状態を示す苗床均平機の要部拡大図である。
【図4】第2実施形態の苗床均平機の斜視図である。
【図5】従来例を示す図面である。
【符号の説明】
【0029】
10 苗床均平機
11 エンジン(原動機)
12 動力伝達部材
13 押圧基板
19 引っ張りバネ
21 運搬用フレーム
22、28 引手
24 ゴム板
25 環状ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
苗床表面を押圧して均平化する押圧基板と、
前記押圧基板上に配置した動力伝達部材と、
前記動力伝達部材に連結して設けた原動機と、
前記押圧基板あるいは動力伝達部材より突設した運搬用部材と、
を備え、
前記原動機の動力で前記動力伝達部材を上下方向に往復運動させて前記押圧基板を上下振動させて苗床表面に均平化する構成としていることを特徴とする苗床均平機。
【請求項2】
前記押圧基板は前記苗床幅側を長尺とする長方形状とし、該押圧基板の長さ方向の中央部に前記動力伝達部材を配置し、該動力伝達部材と前記押圧基板との間に引っ張りバネあるいは弾性を有する環状ベルトを張架し、該引っ張りパネあるいは環状ベルトを介して前記押圧基板を上下振動させ、かつ、
前記押圧基板の長さ方向の両側に前記運搬用部材を立設し或いは前記動力伝達部材より両側に運搬用部材を突設している請求項1に記載の苗床均平機。
【請求項3】
前記押圧基板の平板部に、進行方向と反対側に突出するゴム板を設けている請求項1または請求項2に記載の苗床均平機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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