説明

苗植機

【課題】 クローラを有した苗植機では、機体を短くして操作性を良くするために、左右のクローラ間に苗植付位置を設定する苗植装置を設けるが、土壌がクローラ内周面に巻込まれ易く、この巻込まれた土壌が土塊となって、この左右クローラ間に位置する苗植付部に落されて、苗植付姿勢を乱すことが多い。
【解決手段】 左右両側のクローラ1間に、このクローラ1間の土壌面に苗植する苗植装置2と、この植付苗元部を培土する培土板3を設け、この培土板3の一部をクローラ1の回転周縁上にのぞませて設け、このクローラ1の内周面に乗上がる土壌を掻出しながら苗元部へ培土する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、クローラ走行装置を有した苗植機に関する。
【背景技術】
【0002】
左右のクローラ間に苗植作用を行う苗植装置を設ける技術(例えば、特許文献1参照)が知られている。
【特許文献1】特開平5ー30817号公報(第2頁、図2)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
クローラを有した苗植機では、機体を短くして操作性を良くするために、左右のクローラ間に苗植付位置を設定する苗植装置を設けるが、土壌がクローラ内周面に巻込まれ易く、この巻込まれた土壌が土塊となって、この左右クローラ間に位置する苗植付部に落されて、苗植付姿勢を乱すことが多い。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に記載の発明は、左右両側のクローラ1間に、このクローラ1間の土壌面に苗植する苗植装置2と、この植付苗元部を培土する培土板3を設け、この培土板3の一部をクローラ1の回転周縁上にのぞませて設け、このクローラ1の内周面に乗上がる土壌を掻出しながら苗元部へ培土する構成としたことを特徴とする苗植機の構成とする。左右一対のクローラ1の駆動によって走行しながら、苗植装置2によりこの左右クローラ1間隔部間の土壌面に挿苗作用を行う。この土壌面に植付けられた苗元部には、左右両側の培土板3による培土作用が行われる。この培土板3は、外側端部がクローラ1の内周縁部上に掬上げられている土壌を掻落しながら、植付部周りの土壌と共に、植付苗元部周りに培土して、苗の植付姿勢を支持する。
【発明の効果】
【0005】
請求項1に記載の発明は、クローラ1の内周縁部に掬い上げられる土壌を培土板3で掻出しながら、植付苗元部外周部の土壌面部と共に、植付苗元部へ培土するため、クローラ1内周面における掬上土壌の堆積、土塊等を少くすることができ、培土板3をクローラ1掃除用の排土板を兼ねて、構成を簡単にすることができ、クローラ1の駆動抵抗を少くして、苗植付を正確に、安定させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図例に基づいて、苗植装置2を装着する車体は、左右一対のコムクローラ1を有する走行装置を構成し、前部にエンジン4を搭載し、後方にハンドル5を配置する。この苗植装置2は、左右一対のクローラ1間隔部間Aの土壌面に苗植溝を形成する溝切器6と、この溝切器6によって形成される苗植溝に苗を落下案内する苗ホッパ7等からなり、この苗ホッパ7から落された苗植溝部に左右両側から土壌を培土する培土板3を配置する。これら溝切器6はクローラ1間隔部間Aの前端部位置に配置し、この後側に苗ホッパ7を配置し、この後側の間隔部間Aに培土板3を配置する。車体の前端部にはミッションケース8を構成して、上部にエンジン4を搭載して、動力連動の構成としている。このミッションケース8の左右外側部のアクスルハウジング9から伝動ケース10を介してクローラ軸11を軸支し、このクローラ軸11を伝動回転することによって、前後方向にわたるトラックフレーム12の転輪13、14間に張設したクローラ1を駆動して走行することができる。前記苗ホッパ7は、車体のクローラ1上側部を覆うように構成するステップフロア板15上に突出させて設け、この苗ホッパ7の後方に作業者が着座して苗の供給作業を行う苗供給シート16を設ける。
【0007】
ここにおいて、この発明に係る苗植器は、左右両側のクローラ1間に、このクローラ1間の土壌面に苗植する苗植装置2と、この苗植装置2による植付苗元部を培土する培土板3を設け、この培土板3の一部をクローラ1の回転周縁上にのぞませて設け、このクローラ1の内周面の乗上がる土壌を掻出しながら苗元部へ培土することを特徴とする苗植機の構成とする。左右一対のクローラ1の駆動によって走行しながら、苗植装置2によりこのクローラ1間隔部間Aの土壌面に挿苗作用を行う。この土壌面に植付けられた苗元部には、左右両側の培土板3による培土作用が行われる。この培土板3は、外側端部がクローラ1の内周縁部上に掬い上げられている土壌を掻落しながら、植付部周りの土壌と共に、植付苗元部周りに培土して、苗の植付姿勢を支持する。
【0008】
前記溝切器6は、クランクアーム20の回動によって昇降可能にしてリンク21で支架されている。この溝切器6の左右両側部に排土板22を有して、幅広く排土する形態では、クローラ1間隔部が狭い場合は、溝切時の土壌がクローラ1の内側縁上に載せられ易くなり、この排土板22によって載せたクローラ1内周面の土壌を後側の培土板3によって押戻して、植付苗の根元部へ培土する形態となる。
【0009】
前記ステップフロア板15の後部中央部は切欠部17を形成して、苗ホッパ7の下方部の苗植付部を見易くしている。又、前記培土板3は、左右対称状に、前開八字状形態に構成され、下端縁をクローラ1の内側端縁と交差接近するようにして、車体側の構成部材に取付けられる。また、この培土板3は、下端縁をクローラ1の内側端縁と交差させて接近させているが、土壌面上の間隔部ではこのクローラ1の内側端縁よりも下側に深く突出する形態にして、培土作用を深く行わせるように構成することもできる。クローラ1の内側縁には適宜間隔の目印18を形成している。前記ステップフロア15の前端部は、ミッションケース8部上を開放して前方走行土壌部を見易く形成している。車体前部のアクスルハウジング9部には前方に突出の分草板19を設けて、隣接植付苗をクローラ1で踏み付けないように分草案内する構成としている。
【0010】
作業者は、歩行しながらハンドル5を把持操作して機体の操向等を行う。苗植付作用時は、シート16上に搭乗した作業者が、車体の前部上方に設ける補助苗受台23から予め搭載される苗を取出しながら、一株苗毎苗ホッパー7へ供給する毎に、苗根元部がクローラ1間隔の土壌面に溝切器6により形成の苗植溝内に落下されて、この落下供給された苗根元部が培土板3によって、土寄せ、乃至培土されて苗植付姿勢を維持される。このとき、クローラ1自体の回転によって、又は、溝切器6による溝切作用等よって、土壌の一部をクローラ1の回転内周面上に掬い上げることがあるが、培土板3の下端縁の一部がこのクローラ1の回転内周面上に接近しているため、このクローラ1の後部では、この培土板3によって土壌をクローラ1間隔部間Aに掻出して、この間隔部間Aの土壌部と共に、植付直後の苗植溝部内の植付苗の根元部に培土する。又、シート16上の作業者は、クローラ1に形成される目印を見ながら一定間隔毎に苗ホッパ7へ苗の供給を行う。
【0011】
このような苗植装置2は、作業者によって供給される苗を落下案内する苗ホッパ7の形態としたが、周知のような、苗を収容保持して下降しながら土壌面に植付穴を形成して、この植付穴に保持苗を挿込で植付る形態の、所謂、苗植嘴の構成とすることも可能である。
【0012】
次に、主として図3に基づいて、前記培土板3と共に、又は培土板3に代えて、クローラ1の後端内周部に、土壌流下案内板24を設け、前記溝切器6等によって載せられた土壌を、この後端部で巻上げて、案内板24上に受けて傾斜面に沿って流下案内させて、転輪14より前側の苗植溝に落下される苗根元部を埋戻す。25はクローラ1の中央部に沿って突出する案内突子で、転輪13、14の中央部に形成の案内溝に嵌合させて駆動することができる。
【0013】
次に、主として図4に基づいて、前記左右のクローラ1の張設を、前端間を広くD1開き後端間を狭くD2する平面視略八字形態に設定したもので、このクローラ1の接地辺部によって、走行時に土壌面を中央部の苗植根元部へ押し寄せて苗根元部を培土するものである。
【0014】
次に、主として図5に基づいて、前記クローラ1の内側部の沿ってクローラカバー26を設けて、クローラ1の回転内周部への土壌の掬込を防止するものである。クローラ1内周面の転輪13、14よりも内側位置に沿ってカバー溝27を形成し、このカバー溝27にクローラカバー26プレートの外周縁を嵌合させて、クローラ1をこのクローラカバー26の外周に沿って回転させる。又、前記左右クローラ1間の間隔部の土壌面を、前記ミッションケース8から耕耘伝動ケース28の伝動機構を介して駆動される耕耘爪29、乃至砕土爪によって耕耘砕土して、苗植装置2による苗植作用を円滑に行わせるように構成している。このような形態では、このクローラカバー26によって耕耘時の土壌がクローラ1の内周面に飛散するのを阻止することができ、上方への飛散はステップフロア板15によって阻止できる。又、このように耕耘爪29の回転によって砕土をクローラ1の回転内周面に載せたのち、この後端転輪14部で内側へ落下させて植付苗の根元部へ培土するため、効率良く培土することができる。又、クローラカバー26による案内によってクローラ1の駆動走行を安定させることができる。
【0015】
次に、主として図6に基づいて、前記クローラ1による走行形態において、前転輪13、及び伝動ケース10の外側部におけるクローラ軸11部に、このクローラ1の回転径よりも大きい車輪30を取付け、車体の後部にはヒッチ31を介して尾輪32を取付ける。これら車輪30及び尾輪32の接地によて、クローラ1等を浮上させて路上走行を行い易くするものである。
【0016】
次に、主として図7に基づいて、前記ステップフロア板15の左右両側部に折畳可能の補助ステップ33を設けて、作業者の乗り降りを容易化したり、この補助ステップ33上に補助苗トレイや、苗を積載することができる。これら補助ステップ33の下方には補助輪34を取付けて、一体的に折畳収納可能に構成している。この補助ステップ33の重量を接地支持することができる。苗植装置2の左右両側部には、側部溝切器35、及び側部苗ホッパ36等からなる側部苗植装置37を取付けて、三条植形態の構成としている。これら側部苗植装置37は、クローラ1の外側部に位置して設けられ、前記補助輪34をこの側部苗植装置37の外側部に配置させている。この側部苗植装置37によって植付けられた苗条の内側は、クローラ1によって、外側は補助輪34によって各々培土されて、苗の植付姿勢を安定維持される。又、伝動ケース10の外側にも折畳形態のステップバー38を設け、補助苗受台23への苗トレイの積降作業等を行い易くしている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】苗植機の平面図と、そのクローラ部の側面図。
【図2】その側面図。
【図3】一部別例を示す苗植機の平面図と、そのクローラ部の側面図。
【図4】一部別例を示す苗植機の平面図。
【図5】一部別例を示す苗植機の側面図と、そのクローラ部の正断面図。
【図6】一部別例を示す苗植機の側面図。
【図7】一部別例を示す苗植機の平面図。
【符号の説明】
【0018】
1 クローラ
2 苗植装置
3 培土板
6 溝切器
7 苗ホッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右両側のクローラ(1)間に、このクローラ(1)間の土壌面に苗植する苗植装置(2)と、この苗植装置(2)による植付苗元部を培土する培土板(3)を設け、この培土板(3)の一部をクローラ(1)の回転周縁上にのぞませて設け、このクローラ(1)の内周面に乗り上げる土壌を掻出しながら苗元部へ培土する構成としたことを特徴とする苗植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−77637(P2009−77637A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−247477(P2007−247477)
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】