説明

苗移植機

【課題】植え付けの際の苗株を所定姿勢に維持することができる苗植付装置を備えることにより、姿勢の安定が困難な裸苗を含め、安定して確実に植付けすることができる苗移植機を提供する。
【解決手段】苗移植機は、圃場走行が可能な走行機体と、この走行機体に搭載され、受けた苗株を圃場に植付けする植付装置とから構成され、上記植付装置は、底板(21)を備えて起立姿勢の苗株を受けるカップ状容器をなす収容部(5)と、この収容部(5)に受けた苗株を挟持する開閉動作可能な挟持機構(6)と、この挟持機構(6)を支持しつつ収容部(5)の株元位置からその下方の所定範囲を上下動作する昇降機構(7)とによって構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場走行が可能な走行機体に苗株の植付装置を搭載してなる苗移植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示される苗移植機が知られている。この苗移植機の苗植付装置は、投入苗株を受けるカップ状の植付具を開閉可能な嘴状に構成することにより苗株を収容して土壌に突入可能とし、この植付具を昇降支持機構によって上下動作可能に支持して構成される。上記植付具は、苗株を収容して土壌に差込まれたタイミングで開くことによって苗株を土壌に植付けすることができる。
【特許文献1】特開2002−305921号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記苗植付装置は、苗株を起立姿勢で嘴状の植付具内に投下してもその投下過程で姿勢が乱れることがあり、乱れたままの姿勢で植付けされるという問題を内包していた。特に、裸苗の場合は姿勢が不安定なので、問題の解決が待たれていた。
【0004】
解決しようとする問題点は、植え付けの際の苗株の姿勢を維持することができる苗植付装置を備えることにより、姿勢の安定が困難な裸苗を含め、所定の姿勢で安定して確実に植付けすることができる苗移植機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、圃場走行が可能な走行機体と、この走行機体に搭載され、受けた苗株を圃場に植付けする植付装置とからなる苗移植機において、上記植付装置は、底板を備えて起立姿勢の苗株を受けるカップ状容器をなす収容部と、この収容部に受けた苗株を挟持する開閉動作可能な挟持機構と、この挟持機構を支持しつつ上記収容部の株元位置からその下方の所定範囲を上下動作する昇降機構とからなることを特徴とする。
【0006】
上記構成の植付装置は、カップ状の収容部に受けた起立姿勢の苗株が底板上に保持され、その苗株の株元を挟持機構が挟持し、この挟持機構を昇降機構が収容部からその下方の所定範囲を上下動作する。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1の構成において、前記収容部は、複数箇のカップをリング状に等ピッチで配列し、その中心軸線について回動可能に軸支してなることを特徴とする。上記収容部は、複数箇のカップを順送りすることにより、個々の収容部の苗株について植え付けが行われる。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の構成により、上記収容部に起立姿勢で受けた苗株の株元を挟持機構が挟持することから、苗株の起立姿勢が植付け時まで確保されるので、姿勢が不安定な裸苗を含め、植付け姿勢を維持して確実に植付けすることができる。
【0009】
請求項2の構成により、収容部の複数箇のカップの順送り動作によって植え付けされることから、オペレータによる苗株の投入タイミングを複数箇の収容部全体について調整することができるので、苗の補給上の余裕によって植付の確実化と作業能率の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
上記技術思想に基づいて具体的に構成された実施の形態について以下に図面を参照しつつ説明する。
図1、図2は、本発明に係る植付装置を適用した苗移植機の側面図および平面図である。なお、以下の図示例についての説明で前又は後というときは、操縦ハンドルを配置した側を「後」とし、その反対側を「前」とする。そして、右又は左というときは、機体後部において機体前部側を前側として立つ作業者から見て右手側を「右」とし、左手側を「左」とする。
【0011】
苗移植機は、左右の駆動輪2、2と機体の先端を案内支持する左右の前輪3、3とを備えた機体フレーム4とによって圃場走行が可能な走行機体を構成し、その機体フレーム4に装荷されて苗株を受けるカップ状の収容部5と、この収容部5に受けた苗株を挟持する挟持機構6と、この挟持機構を支持しつつ上下動作する昇降機構7と、この昇降機構7の下方で埋め戻しする左右の鎮圧輪8,8とからなる植付装置を搭載して構成される。
【0012】
詳細には、走行機体について、その機体フレーム4は、機体中心からその片側方に寄せた位置で前部にエンジン一体の変速伝動部11を一体に構成し、この変速伝動部11からその上方に上記収容部5に臨む作業座席12を搭載する。同機体フレーム4の後部には操縦ハンドル13を延設する。この操縦ハンドル13は、機体前部を浮かして方向転換操作を可能に構成するとともに、エンジンスロットル、走行クラッチ、植付クラッチ等の操作系を集中配置する。
【0013】
変速伝動部11は、その両側に左右の伝動軸11a,11aを延出し、この左右の伝動軸11a,11aからチェーン等によって左右の駆動輪2、2に伝動しつつ上下に回動可能なアーム状の左右の走行伝動支持部14,14によって機体の支持高さを調整可能に構成するとともに、走行同期駆動用動力を後方に出力する作業機伝動支持部15を備え、この作業機伝動支持部15を介して上記収容部5、昇降機構7に動力を供給する。
【0014】
植付装置については、その要部拡大斜視図および要部拡大平面図を図3、図4にそれぞれ示すように、収容部5は、上側開口を苗投入口として下に細い筒状部と、その下端に臨んで起立姿勢の苗株を受ける固定の底板21とによって構成される複数のカップ5b…を縦方向の中心軸線5aについてリング状に等ピッチで配列し、外周に鍔状に設けた周回ラック22とこの周回ラック22と対応するピニオン駆動部23とにより順送り駆動する。
【0015】
底板21には、挟持機構6が苗を挟持する位置に切欠を形成し、周回ラック22は、収容部5を1コマ送る歯数とピニオン歯数を合わせることにより、各収容部5の植付けタイミングを合わせることができる。収容部5の複数のカップ5b…は、円錐形の筒を複数等分割した図示例の構成のほかに、上側開口が複数の円形に独立構成した例(図2)や、図5に示すように、中心軸線5aから半径方向に長い楕円状に独立構成することができる。
【0016】
また、昇降機構7側からピニオン駆動部23へ伝動する伝動部(伝動ケース)を介してリング状のガイドレール24を機体に支持し、このガイドレール24に収容部5の外周の周回ラック22を回動可能に載せて支持することにより、収容部5を簡単に上方に抜き取ることができる。そのほか、収容部5は、ストッパを設けることにより、挟持機構6が苗株をつまむ位置に位置決めすることができる。
【0017】
このストッパは、挟持機構6との干渉により苗株の通路分を開放可能に構成する。また、収容部5の外周壁部分は、収容した苗の前側から左右両側にわたって構成し、すなわち、ストッパの前方に位置決めのガイドを設け、前方のガイドは両サイドにも伸ばすことにより、作業者の足が挟持爪に触れないようにするガードとして作用することから、足が入らないように安全カバーとして機能する。
【0018】
挟持機構6は、苗株の茎を傷めないように、また、圃場面に突入して植付穴を形成するように、開閉動作可能な左右の挟持爪を嘴状に下方を細く形成する。昇降機構7は、機体に対して回転する第一回転ケース7aと、該第一回転ケース7aの回動先端側に回動可能に取付けた第二回転ケース7bとにより構成され、これら両ケース7a,7bが互いに逆方向に回転して挟持爪の先端を図1に示すループ状軌跡Tに沿って昇降させることにより、支持した挟持機構6が収容部5の株元位置からその下方の圃場面の植付位置までの範囲を上下動作する。
【0019】
挟持機構6の挟持爪は、両ケース7a,7bの内部の伝達ギヤによって昇降作動に連動して所望の位置で開閉することにより、ループ状軌跡Tの上端位置で挟持機構6の左右の挟持爪を挟持動作させ、植付穴を形成するべく挟持機構6を下降動作させるとともに下端位置で開放動作させる。
【0020】
上述の構成による苗移植機は、走行機体の圃場走行において、左右の駆動輪2、2の回動と同期して収容部5が回動され、この収容部5に受けた苗株が挟持機構6によって挟持されると昇降機構7によって下降し、圃場植え付け位置において挟持機構6が開放動作することによって苗株が起立姿勢で植え溝に植付けされ、左右の鎮圧輪8,8の通過によって株元が埋め戻しされる。
【0021】
この一連の苗株の移植工程において、特に姿勢が不安定な裸苗を含め、挟持機構6によって苗株の起立姿勢を維持することができる。また、リング状配列の複数箇の収容部を回動して順送りすることにより、個々の収容部の苗株について植え付けが行われることから、オペレータによる苗株の投入タイミングを複数箇の収容部全体について調整することができるので、苗の補給上の余裕によって植付の確実化と投入作業能率の向上を図ることができる。
【0022】
また、別構成の植付装置を適用した苗移植機の例として、図6の側面図に示すように、収容部5は単一の苗投入口として構成し、位置決めとなる底板21が非嘴状の挟持爪の下動で押されると下側に回動して開くようにして植付装置を構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】歩行型構成の苗移植機の側面図である。
【図2】図1の苗移植機の平面図である。
【図3】植付装置の要部拡大斜視図である。
【図4】植付装置の要部拡大平面図である。
【図5】収容部の構成例の平面図である。
【図6】別構成の植付装置を適用した苗移植機の側面図である。
【符号の説明】
【0024】
2 駆動輪
3 前輪
4 機体フレーム
5 収容部
5a 中心軸線
5b カップ
6 挟持機構(挟持爪)
7 昇降機構
12 作業座席
15 作業機伝動支持部
21 底板
22 周回ラック
23 ピニオン駆動部
24 ガイドレール
T 昇降軌跡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場走行が可能な走行機体と、この走行機体に搭載され、受けた苗株を圃場に植付けする植付装置とからなる苗移植機において、
上記植付装置は、底板(21)を備えて起立姿勢の苗株を受けるカップ状容器をなす収容部(5)と、この収容部(5)に受けた苗株を挟持する開閉動作可能な挟持機構(6)と、この挟持機構(6)を支持しつつ収容部(5)の株元位置からその下方の所定範囲を上下動作する昇降機構(7)とからなることを特徴とする苗移植機。
【請求項2】
前記収容部(5)は、複数箇のカップ(5b)をリング状に等ピッチで配列し、その中心軸線(5a)について回動可能に軸支してなることを特徴とする請求項1記載の苗移植機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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