説明

苗移植機

【課題】従来構成のスクレーパは、苗植付具の後方側に退避させるものであるため、スクレーパが植付後の苗に干渉して植付姿勢を乱す問題があった。
【解決手段】 本発明は、所定のループ軌跡で昇降作動し、内部に苗を収容して土中に突入し、下部を開いて苗を土中に供給して植え付ける苗植付具(11)と、苗植付具の上昇行程で該苗植付具の外面又は内面に接触して付着する泥土を落とすスクレーパ(12)を備え、このスクレーパ(12)の非作用時には該スクレーパを苗植付具(11)の前側へ退避させることによって従来の問題点を解消する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、苗トレイのポットから苗を取り出して圃場に植え付ける苗移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所定の軌跡で昇降作動し、内部に苗を収容した状態で下降して圃場に突入し、下部を開いて苗を土中に植え付ける苗植付具を備えた苗移植機において、昇降時における苗植付具の外面に接触して付着した泥土を掻き落すスクレーパを設けた構成のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】実公平6−2492号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来構成のものは、昇降する苗植付具の前後にスクレーパを配設し、そして、植付具の後方側のスクレーパは、該スクレーパの非作用時においてのみ後方に退避させるようにしている。そのため、スクレーパが植付後の苗に干渉して植付姿勢を乱したりする問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1記載の本発明は、所定のループ軌跡で昇降作動し、内部に苗を収容して土中に突入し、下部を開いて苗を土中に供給して植え付ける苗植付具(11)と、苗植付具の上昇行程で該苗植付具の外面又は内面に接触して付着する泥土を落とすスクレーパ(12)を備え、このスクレーパ(12)の非作用時には該スクレーパを苗植付具(11)の前側へ退避させる退避手段(13)を設けてあることを特徴とする。
【0005】
苗植付具(11)は、周期的に昇降作動し、昇降の下死点近くで土中に突入すると共に、土中に突入した時に下部が開いて内部に収容された苗を土中に供給して植え付ける。
苗植付具の上昇行程で、開いた植付具の内部にスクレーパ(12)が進入して内面に接触し、植付具の上昇に伴って内面に付着している泥土が掻き落される。苗植付具(11)の下降行程では、該苗植付具の下降動作に関連してスクレーパの退避機構(13)が強制的に作動され、スクレーパ(12)は苗植付具の前方に退避される。
【発明の効果】
【0006】
請求項1に記載の本発明によれば、スクレーパが泥土の除去作用を行わないときは、このスクレーパを苗植付具の前側へ退避させるので、植付後の苗との干渉がなく、所定の植付姿勢を良好に保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
この発明の実施例を図面に基づき説明する。
図1は、野菜などの苗を移植する苗移植機を示すものであり、この車体1の前部に駆動源であるエンジンEを搭載し、車体1の前後には走行車輪2,3を架設し、前記エンジンEの回転動力はミッションケ−ス4内のミッション装置を介して後輪3に伝えるようにしている。左右の前輪2,2及び左右の後輪3,3によって畝Uを跨いだ状態で機体を進行させながら苗トレイ搬送装置5、苗取出装置6、苗植付装置7等によって苗トレイに収容されている苗を畝Uの上面に植え付けていくようになっている。作業者は、機体後方を歩きながら操縦ハンドル8で機体の操向操作が行えるようになっている。
【0008】
走行部には、機体に対し後輪3,3を上下動させて、機体位置を制御する機体制御機構が設けられている。
後輪3,3の走行伝動ケース9と走行車体との間には、車輪の上げ下げによって機体を昇降する昇降シリンダ10が設けられていて、この昇降シリンダ10を伸縮作動させると、左右の後 輪3,3が同方向に同量だけ機体に対し上下動し、機体が昇降する。
【0009】
苗トレイ20は、複数の育苗ポット21…を縦横に連設したもので、プラスチックで形成されていて、可撓性を保持する構成になっている。各ポットは表面側で連結し、裏面は独立した形態となっている。
【0010】
苗トレイ搬送装置5は、ガイドレール22に沿って左右横方向に移動可能な苗載台23を備えている。苗載台23は苗トレイ20の底部を横一列のポットにわたって支持する前下がりに傾斜した底板24を有している。底板24と押え枠25との間に挟み込むようにして苗トレイ20を苗載台23の上方から差し込むと、苗トレイの溝部に搬送チエン26の係合ピンが係合した状態となり、この状態で搬送チエン26を回転駆動すると、苗トレイ20が底板24に沿って斜め下方に縦送りされるようになっている。
【0011】
苗取出装置6は、左右一対の苗取出爪28、苗取出爪の先端に設けた爪支持体29、苗取出爪28を進退案内する爪ガイド30、爪支持体29及び爪ガイド30を往復動自在に保持する保持体31等からなる苗取出具6aを備え、この苗取出具6aが姿勢変更しながら所定の軌跡を描いて作動すると共に、適宜タイミングで苗取出爪28が進退作動及び開閉作動することで、苗取出位置にある苗トレイのポットから苗を取り出し、苗植付装置の苗植付具内に供給するようになっている。
【0012】
また、苗取出爪28は所定の軌跡K(図5及び図6参照)を描いて作動する。すなわち、苗取出位置にある苗トレイのポット内の苗に対し、苗取出爪を苗の葉部側から苗の床土部分に突入する行程(A−B)と、突き刺した苗を苗取出爪の引っ込み作動でポット深さの中途まで取り出す行程(B−C)と、苗取出爪をポット内から姿勢変更し且つ移動して苗トレイに対向する姿勢から略下向き姿勢に移行する行程(C−D)と、その行程に続いて苗取出爪の移動及び姿勢変更を行い、その最終位置で苗取出爪28とそれを案内している爪ガイド30との相対移動により、苗取出爪から苗を離脱して苗植付装置の苗植付具へ落下供給し、更に苗取出爪を後退させる行程(D−E)と、苗離脱後の苗取出し爪を復動させる行程(E−F)と、この行程に続いて最初の行程まで苗取出爪を略ホ下向き姿勢から苗トレイに向く姿勢へ変更しながら復動させる行程(F−A)とからなっている。
【0013】
苗植付装置7は、上下動自在に支持されると共に、内部に苗を収容した状態で下降して圃場に突入し且つ左右に開くことにより、圃場に植付穴を形成すると共に該植付穴に苗を落下放出することにより苗を植え付けるタイプの苗植付具11によって構成されている。苗植付具11は先端が軌跡T1を描いて昇降動する。
【0014】
苗植付装置7には、苗植付具11の前方から該植付具の内部に進入すると共にその内面に接触して付着する泥土を掻き落すスクレーパ12を備えている。このスクレーパ12と苗植付具11との間には、該スクレーパ12をこれの非作用時においてのみ苗植付具11の前方側へ退避させる退避手段(機構)13を設けてあり、苗植付具の昇降動作に関連して作動すべく連動構成している。
【0015】
スクレーパの退避機構13は、苗植付具11に設けられたカムローラ14と、苗植付具と共に下降するカムローラ14に接触して押し下げられる第1・第2作動カム15,16と、先端にスクレーパ12を有し基端が横軸17回りに回動自在に軸支されて前後方向に揺動変位可能なスクレーパ支持アーム18等からなる構成であり、苗植付具11の下降時には、カムローラ14が第1・第2作動カム15,16を戻しスプリング19に抗して下方に押し下げ、スクレーパ支持アーム18を前方に揺動変位させて、スクレーパ12を苗植付具の前方側へ強制退避させる。そして、苗植付具の上昇時は、戻しスプリング19の復元力によってスクレーパ支持アーム18が元位置に揺動復帰し、スクレーパ12は左右方向に開いた苗植付具の内部に進入して植付具の内面に接触する状態となる。なお、前記カムローラ14は、図8に示すように、苗植付具11と共に軌跡T2を描いて昇降動し、作動カム15,16を作動させるが、このカムローラ14を前後方向に位置変更可能とすることによって、作動カム15,16に対する作用位置を任意に調節することができる。
【0016】
スクレーパは形状の異なる2種類の作動カム15,16によって作動するように構成するが、作動音低減のため、二つの作動カム15,16の間を狭くし、カムローラ14が常に作動カム15,16に接触するように構成している。作動カム15,16若しくはカムローラ14を弾性体で構成しておくと接触音の低減を図ることができる。また、図10、図11に示すように、第2作動カム16を16aと16bとに分割し、両者16a,16bを取付具16cにより長穴16eを介して調整可能に取り付けることで、スクレーパが苗植付具の内部へ進入するタイミングを適宜調整できるように構成している。つまり、作動カム長を長くするとスクレーパの進入タイミングが遅くなり、短くすると進入タイミングが早くなるようにしている。
【0017】
スクレーパ12は、弾性体で構成し、植付具11の内面形状に合せた形状とし植付具の内面に接触させて泥土を掻き落す構成としている。また、図8に示すように、スクレーパ12は円弧軌跡R上を往復動し、この円弧軌跡の最下点は、移植機のメインフレーム34の下面と一致若しくはこれより上方位置となるようスクレーパの支持アーム長及び横軸支点位置を設定することで、地面に対するスクレーパの干渉を防ぐことができる。前記横軸17は、植付部フレーム35の支持ブラケット36に軸支している。なお、スクレーパ12は二つのストッパ37a,37bによって位置決めするようになっており、37aがスクレーパの泥土除去作用時のストッパであり、37bがスクレーパの退避時の位置決めストッパを示す。
【0018】
また、図12に示すように、スクレーパ12は、苗植付具11の下降行程時は苗植付具の外面に接触してその外面に付着している泥土を除去し、苗植付具11の上昇行程時は植付具の内面に接触してその内面に付着している泥土を除去するように構成することもできる。
【0019】
図13に示す実施例では、苗植付具11の外面と該苗植付具の内面とを同時にスクレイプする構成としている。内側スクレーパ12iと外側スクレーパ12oとに分割して別構成とし、苗植付具11に対し、内外のスクレーパ12i,12oが同時に進入して作用する構成である。つまり、内側スクレーパ12iは、苗植付具の内面形状に合せた形状として前方側から苗植付具11の内部に進入する。外側スクレーパ12oは、平面視コの字型で苗植付具の外面形状に合せた形状として前方側から苗植付具の左右外面を外側から抱き込むくように進入する構成としている。また、外側スクレーパ11oは、図14に示すように、左右のスクレイプ部が枢支ピン38回りに可動自在とし、引張スプリング39によって苗植付具の左右外面に常時張圧保持させた構成としている。これによれば、スクレーパが植付具の外面に密に接触しスクレイプ性能が向上することになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】苗移植機の側面図
【図2】同上要部の平面図
【図3】苗トレイ搬送装置の斜視図
【図4】苗トレイ搬送装置の側断面図
【図5】苗取出装置の苗取出直前の状態を示す側面図
【図6】苗取出装置の苗取出直後の状態を示す側断面図
【図7】スクレーパ退避機構を備えた苗植付装置の要部の側面図
【図8】同上要部の側面図
【図9】同上要部の平面図
【図10】スクレーパ退避機構の斜視図
【図11】同上一部の斜視図
【図12】苗植付具の内面と外面をスクレイプする状態を示す植付装置の側面図
【図13】苗植付具の内面と外面を同時にスクレイプする形態の要部の平面図
【図14】内側スクレーパと外側スクレーパの他の構成例を示す平面図
【符号の説明】
【0021】
11 苗植付具
12 スクレーパ
13 スクレーパ退避手段(機構)
14 カムローラ
15 第1作動カム
16 第2作動カム
17 横軸
18 スクレーパ支持アーム
19 戻しスプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のループ軌跡で昇降作動し、内部に苗を収容して土中に突入し、下部を開いて苗を土中に供給して植え付ける苗植付具(11)と、苗植付具の上昇行程で該苗植付具の外面又は内面に接触して付着する泥土を落とすスクレーパ(12)を備え、このスクレーパ(12)の非作用時には該スクレーパを苗植付具(11)の前側へ退避させる退避手段(13)を設けてあることを特徴とする苗移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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