説明

苗移植機

【課題】本発明では、二人の作業者が同時に苗の植え付け作業を行えて作業能率が向上する苗移植機を提供することが課題である。
【解決手段】機体後部で昇降して苗の植付動作を行う苗植付け具4を左右一対設け、機体上の左右に機体の前方から後方に搬送作用する前後搬送体65R、65Lを並設し、その前後搬送体65R、65Lの後端に機体中央から側方へ搬送作用する横搬送体66R、66Lを隣接し、該横搬送体66R、66Lの後部に前記苗植付け具4に向けて傾斜した苗供給シュート67R、67Lを設けて苗移植機を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
苗移植機は、例えば、特開2008−104363号公報に記載されている。
この苗移植機は、走行機体に苗植付装置を設け、一人の作業者が走行機体の後側を歩きながら苗植付装置の苗植付け具にポット状の苗(鉢苗)を投入し、苗植付け具が自動で昇降して苗の植え付け作業を行うようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−104363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記の従来の苗移植機は、一人の作業者で苗の植え付け作業を行うので、作業能率があまり良くない。
そこで、本発明では、二人の作業者が同時に苗の植え付け作業を行えて作業能率が向上する苗移植機を提供することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
請求項1に記載の発明は、昇降して苗の植付動作を行う苗植付け具4を走行機体後部の左右に一対設け、走行機体の前方から後方に搬送作用する前後搬送体65R、65Lを走行機体上の左右に並設し、その前後搬送体65R、65Lの後端に走行機体中央から側方へ搬送作用する横搬送体66R、66Lを隣接し、該横搬送体66R、66Lの後部に前記苗植付け具4に向けて下り傾斜した苗供給シュート67R、67Lを設けて苗移植機を構成した。
【0006】
この構成で、前後搬送体65R、65Lに載せた苗が後方へ順次送られ、横搬送体66R、66Lに引き継がれて左右側方へ横送りされる。この横送りされた苗を走行機体の後部左右を歩く二人の作業者がそれぞれ持ち上げて苗供給シュート67R、67Lに供給する。すると、苗供給シュート67R、67Lから苗植付け具4に苗が滑り落ちて供給されて、苗植付け具4の昇降する植付動作で苗が圃場へ自動的に植え付けられる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前後搬送体65R、65Lを幅広の大搬送ベルト53とし、横搬送体66R、66Lを幅狭の小搬送ベルト54で構成したことを特徴とする請求項1に記載の苗移植機とした。
【0008】
この構成で、前後搬送体65R、65Lが幅広の大搬送ベルト53なので苗の載置位置をあまり気にすることなく載せられる。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明で、走行機体の後側を歩く二人の作業者が苗を苗供給シュート67R、67Lに供給して苗植付け具4,4で植え付けを行うので、従来の一人の作業者が移植作業を行う苗移植機よりも作業効率が向上する。
【0010】
請求項2に記載の発明で、前後搬送体65R、65Lへの苗の載せ置きが容易になり、大搬送ベルト53と小搬送ベルト54でエンジン等の走行機体下部を覆うので、走行機体下部に泥土が降りかかるのを少なく出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】苗移植機の側面図である。
【図2】苗移植機の平面図である。
【図3】苗移植機の平断面図である。
【図4】一部の側面図である。
【図5】一部の平面図である。
【図6】苗植付け具が開いた状態を示す側面図である。
【図7】一部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態としての実施例を図面を参照しながら説明する。
尚、以下の図示例についての説明で前又は後というときは、操縦ハンドル2を配置した側を後とし、その反対側、即ちエンジン5を配置した側を前という。そして、右又は左というときは、走行機体後部において走行機体前部側を前側として立つ作業者から見て右手側を右とし、左手側を左としている。
【0013】
苗移植機は、走行装置1と操縦ハンドル2を備えた走行機体に、リンク機構3により駆動されて昇降動作する苗植付け具4を左右一対設けている。走行装置1は、図示例では、エンジン5と、該エンジン5の動力が伝達されて駆動回転する左右一対の後輪6,6と、該後輪6,6の前方に転動自在に支持した左右一対の前輪7,7とを備えたものとしている。苗植付け具4はその下部を前後に二分割して開閉する構成としている。
【0014】
エンジン5の後部には、ミッションケース8を配置し、そのミッションケース8は、その左側部からエンジン5の左側方に延びるケース部分8aを有し、これがエンジン5の左側部と連結している。このケース部分8aにエンジン5の出力軸が入り込んでミッションケース8内の伝動機構に動力が伝達する構成となっている。
【0015】
ミッションケース8の左右両側部に伝動ケース9,9を回動自在に取り付け、この伝動ケース9,9の回動中心にミッションケース8から左右両外側方に延出させた車輪駆動軸の先端が入り込んで伝動ケース9,9内の伝動機構に走行用の動力を伝達している。そして、走行用の動力は伝動ケース9,9内の伝動機構を介して、走行機体後方側に延びてその後端部側方に突出する車軸10,10に伝動し、後輪6,6が駆動回転するようになっている。
【0016】
また、伝動ケース9,9のミッションケース8への取付部には、上方に延びるアーム11,11を一体的に取り付けていて、これがミッションケース8に固定された昇降用油圧シリンダ12のピストンロッド先端に上下軸心周りに回動自在に取り付けた天秤杆13の左右両側部と連結している。その連結部の右側はロッド14で連結し、左側は伸縮作動可能な左右水平制御用油圧シリンダ15で連結している。
【0017】
昇降用油圧シリンダ12が作動してそのピストンロッドが走行機体後方に突出すると、左右の前記アーム11,11は後方に回動し、これに伴い伝動ケース9,9が下方に回動して、走行機体が上昇する。反対に、昇降用油圧シリンダ12のピストンロッドが走行機体前方に引っ込むと、左右の前記アーム11,11は前方に回動し、これに伴い伝動ケース9,9が上方に回動して、走行機体が下降する。この昇降用油圧シリンダ12は、走行機体に対する圃場面高さを検出するセンサSの検出結果に基づいて油圧バルブVが切替えられて走行機体を圃場面高さに対して設定高さになるよう作動する構成となっている。
【0018】
また、操縦ハンドル2近傍に配置した変更操作具としての後輪上下動操作具Aの人為操作によって油圧バルブVを手動で切換えて、左右後輪6,6を下動或いは上動させて、走行機体を上昇或は下降させる構成としている。
【0019】
前記左右水平制御用油圧シリンダ15が伸縮作動すると、前記天秤杆13が、その左右中央部の昇降用油圧シリンダ12のピストンロッド先端と連結する上下軸心周りに回動して左右の伝動ケース9,9を互いに逆方向に上下動させ走行機体を左右に傾斜させる。この左右水平制御用油圧シリンダ15は、左右水平に対する走行機体の左右傾斜を検出するセンサ(図示省略)の検出結果に基づいて走行機体を左右水平になるように作動する構成としている。
【0020】
前記左右前輪7,7は、エンジン5下方の左右中央位置で前後方向の軸心周りに回動自在に取り付けた前輪支持フレーム16の左右両側部の下方に延びるアーム部分の下端部側方に固定した車軸17,17に回転自在に取り付けている。従って、左右前輪7,7は、走行機体の左右中央の前後方向の軸心周りにローリング動自在となっている。
【0021】
前記操縦ハンドル2は、ミッションケース8の後端部にボルトにて固定された横フレーム8bに前端部を固定した走行機体フレーム2bの後端部に取り付けている。走行機体フレーム2bは、走行機体の左右中央から右側に偏った位置に配置されて後方に延び、また、前後中間部から斜め後上方に延びている。操縦ハンドル2は、走行機体フレーム2bの後端部から左右に後方に延びてその各後端部を操縦ハンドル2のグリップ部2a,2aとしている。操縦ハンドル2の左右のグリップ部2a,2aは、作業者がそのグリップ部2a,2aを楽に手で握れるように適宜高さに設定する。なお、図例ではグリップ部2a,2aを左右に分かれた構成としているが、操縦ハンドル2の左右の後端部を互いに連結してその連結部分をグリップ部としても良い。
【0022】
次に、操縦ハンドル2の前下方左右に一対設ける苗植付け具4とリンク機構3について説明する。
リンク機構3は、ミッションケース8内から苗植付け具駆動用の動力を受けて伝動する伝動機構を内装する植付け伝動ケース18に装着している。図5に左側のリンク機構3を示しているが、植付け伝動ケース18は、その前部がミッションケース8の後部に連結しそこから後斜め上方に延びる第一ケース部18aと、この第一ケース部18aの上部左側部に固定され左側方に延びる第二ケース部18bと、その第二ケース部18bの左端部に固定され後斜め下方に延びる第三ケース部18cと、その第三ケース部18cの下端部外側部に固定され左側方に延びる第四ケース部18dと、その第四ケース部18dの左端部に固定され後方水平状に延びる第五ケース部18eを有するものとしている。これら第一ケース部18a〜第五ケース部18e内にリンク機構3を昇降駆動するための動力を伝達する伝動機構を内装している。
【0023】
なお、第一ケース部18a内に内装した伝動機構には、リンク機構3及び苗植付け具4をその昇降動最上位の位置で或はその近傍位置で設定時間停止させる間欠駆動機構と、リンク機構3及び苗植付け具4の昇降動を停止させるクラッチ機構とを備える。間欠駆動機構によって停止する時間は、該間欠駆動機構が備える変速機構によって調節され、この調節によって苗植付け具4による苗植付株間が変更調節されるようになっている。
【0024】
リンク機構3は、苗植付け具4の前側の開閉支点となる軸19の左右中間部に回動自在に連結する第一昇降アーム20と、苗植付け具4の後側の開閉支点となる軸21の左側部に回動自在に連結する第二昇降アーム22とを備える。そして、第一昇降アーム20の後端部は、第三ケース部18cの上部側後部に突出する取付部に揺動自在に取り付けた第一揺動アーム23の下端部と回動自在に連結し、第二昇降アーム22の後端部は、第五ケース部18eの上部に突出する取付部に揺動自在に取り付けた第二揺動アーム24の下端部と回動自在に連結する。
【0025】
また、第一昇降アーム20の中間部は、第三ケース部18cの下部右側部から突出し駆動回転する第一駆動軸25に固定されて駆動回転する第一駆動アーム26の先端部と回動自在に連結し、第二昇降アーム22の中間部は、第五ケース部18cの後部右側部から突出し駆動回転する第二駆動軸27に固定されて駆動回転する第二駆動アーム28の先端部と回動自在に連結する。
【0026】
従って、第一駆動アーム26と第二駆動アーム28とが植付け伝動ケース18内の伝動機構によって動力が伝達されて駆動回転すると、第一昇降アーム20と第二昇降アーム22とが揺動しながら昇降動し、その結果、苗植付け具4の下端部が側面視で上下に長い略楕円形状の軌跡Tで昇降動する。また、第一駆動アーム26と第二駆動アーム28とは、共に、左側方から見て反時計回りに回転して苗植付け具4の下端部が左側方から見て反時計回りに略楕円形状の軌跡Tで昇降回動する。
【0027】
このようにして、作業走行しながら苗植付け具4が上記回転方向で前記軌跡Tを描くように昇降回動すると、軌跡Tの下端部で苗植付け具4の下端部が圃場の土壌中に突き刺さったとき、苗植付け具4が前後に大きくずれないようになり、前後に大きく植え跡を残さずに適確な姿勢で苗を植付けることができる。なお、苗植付け具4は、その昇降動最下位まで下降すると前後に開いて苗植付け具4内の苗を土中に放出する。
【0028】
苗植付け具4は、下方に向かって細くなるように延びるくちばし状に形成したもので前後に開閉可能に構成している。このくちばし状部の前側部分である前側部4Fは、その上部側が後方にアーム状にのびてその先端部が苗植付け具4の後側の開閉支点となる軸21に回動自在に連結し、くちばし状部の後側部分である後側部4Bは、その上部側が前方にアーム状にのびてその先端部が苗植付け具4の前側の開閉支点となる軸19に回動自在に連結する。
【0029】
尚、前記前側部4Fと後側部4Bとで内部に苗収容部分が構成され、該前側部4Fと後側部4Bとの上端部分により苗植付け具4の上端開口部4aが構成されている。
そして、前側部4F上部の後方にのびるアーム状部と後側部4B上部の前方にのびるアーム状部とは、それぞれ前側の軸19と後側の軸21との前後中央位置に設けた長孔に横軸方向の軸部を有するナット29を嵌めて連結し、前側部4Fと後側部4Bの一方側は他方側の動作に連動して回動し両者が前後に開閉動作するようになっている。また、前側部4Fと後側部4Bとはスプリング30にて苗植付け具4を閉じる方向に互いに連結している。
【0030】
更に、第二昇降アーム22と第二揺動アーム24とが互いに連結する軸部分に、苗植付け具4を開閉動作させるための開閉アーム31を回動自在に連結し、その開閉アーム31の先端部と後側部4Bの上部後部側とを連結ロッド32で連結している。開閉アーム31の中間部には、回転自在なローラ33を取付けていて、このローラ33が、苗植付け具4がその昇降動最下位まで下降したときに、第二昇降アーム22を回動自在に連結している第二駆動アーム28の先端部に固定の軸28aに固定したカム34の作用よって上方に押上げられて開閉アーム31が上方に回動し、後側部4Bを前側の回動支点である軸19周りに上方回動し、これとともに前側部4Fを後側の回動支点である軸21周りに上方回動して、苗植付け具4が開く。そして、苗植付け具4が上昇途中でカム34の開き作用から開放され苗植付け具4が閉じる。なお、上記のカム34、開閉アーム31、連結ロッド32等は、苗植付け具4の開閉機構を構成するが、公知の別の開閉機構を採用してもよい。
【0031】
左右の苗植付け具4,4の上部には、苗植付け具4,4内に苗を案内する漏斗状の苗供給シュート67R、67Lを取り付けている。片側の苗供給シュート67Lの取付構成について説明すると、前記前側の回動支点である軸19及び後側の回動支点である軸21の中途部に該軸19,21に対して回動自在に取付プレート41を各々取り付ける一方、苗供給シュート67Lの外周面から一体で前側に延びる前側プレート42と後側に延びる後側プレート43とを設け、前記取付プレート41と前側プレート42並びに後側プレート43とをボルト44及びナット45で固着し、苗植付け具4に苗供給シュート67Lを取り付けた構成となっている。
【0032】
この苗供給シュート67Lは、リンク機構3により苗植付け具4とともに昇降し、苗植付け具4の開閉支点となる軸19,21より上方に突出させて設けるとともに、苗供給シュート67R、67Lの上端開口部67Laが苗植付け具4が最上位に位置するときに操縦ハンドル2のグリップ部2a,2aの上下位置と同じ上下位置或はその近傍に位置するように設けて、操縦ハンドル2の左右両側に位置する二人の作業者が該苗供給シュート67R、67Lの上端開口部67Ra、67La内に苗を直接投入して苗植付け具4に苗を供給する構成としている。
【0033】
前記苗供給シュート67R、67Lの上端開口部67Ra、67Laは、弾性体であるゴム材で構成されており、その上端の上面が上側へいくほど中央から斜め後外側方へ広がるラッパ状に構成されるとともに下側へ向けて湾曲している。従って、仮に苗を投入する作業者の手が案内体35の上端開口部67Ra、67Laに上側から触れることがあっても、作業者が手を負傷するようなことが防止できる。尚、上端開口部67Ra、67Laより下側の部分は、鉄製である。
【0034】
また、筒状の苗供給シュート67R、67Lの上端開口部67Ra、67Laを下端開口部67Rb、67Lbより広くするとともに、苗供給シュート67R、67Lの下端開口部67Rb、67Lbを、苗植付け具4の上端開口部4aに入り込ませている。更に、苗供給シュート67R、67Lの上端開口部67Ra、67Laが走行機体平面視で苗供給シュート67R、67Lの下部中央に配置した苗植付け具4と前記リンク機構3との連結部(図例では、苗植付け具4の前側の開閉支点となる軸19と第一昇降アーム20との連結部、及び苗植付け具4の後側の開閉支点となる軸21と第二昇降アーム22との連結部)の上方に重なるように設けている。また、苗植付け具4の開閉機構を構成する動作部材(図例では、カム34、開閉アーム31、連結ロッド32等)の上方にも重なるように設けている。
【0035】
苗供給シュート67R、67Lの下部は、苗植付け具4の開閉支点となる軸19,21の前後間を上下に位置するように設けていて、ここで、該軸19,21に取り付けた支持部材にて該苗供給シュート67R、67Lの下部を支持している。
【0036】
なお、植付苗の条間隔を変更する場合は、左右の苗植付け具4,4の間隔を変更するが、苗供給シュート67R、67Lがそれぞれ左右の苗植付け具4,4に取り付けているために、一体的に左右調整される。
【0037】
更に、苗植付け具4が最上位に位置するとき苗植付け具4とリンク機構3との連結部の少なくとも側方を覆うガード体36を設け、該ガード体36の上端部より前記苗供給シュート67R、67Lが上方に突出するように設けている。尚、ガード体36は、図例では、苗植付け具4が最上位に位置するとき苗植付け具4とリンク機構3との連結部の側方だけでなく後方も覆うように構成している。
【0038】
エンジン5と苗植付け具4の上方左右に、前後搬送体65R,65Lとこの前後搬送体65R,65Lの後側に位置して横搬送体66R,66Lを設けている。これら前後搬送体65R,65Lと横搬送体66R,66Lは、ミッションケース8と走行機体フレーム2bから一部が左右の前後搬送体65R,65Lから立設した支持枠50で支持され、前後搬送体65R,65Lは戦後のロール51,52に巻き掛けた幅広の大搬送ベルト53で、上面が前から後へ間欠的に駆動され、横搬送体66R,66Lは横方向へ張った幅狭の小搬送ベルト54で、上面が中央から左右側方へ間欠的に駆動される。前後搬送体65R,65Lは、前後に回転させて苗鉢を載せ易くしている。
【0039】
前後搬送体65R,65Lには、横に複数の苗鉢が並べて載せられ、横搬送体66R,66Lには前後搬送体65R,65Lの横一列分の苗鉢が載せられ、横搬送体66R,66Lの左右外端で苗鉢が一個取り出され苗植付け具4,4が昇降して植付動作をすると横搬送体66R,66Lが苗鉢一個分搬送作動する。
【0040】
横搬送体66R,66L上の苗鉢が無くなると、前後搬送体65R,65Lがその上に載っている良く一れる分の苗鉢を横搬送体66R,66Lに移送駆動する。
前後搬送体65R,65Lの上側には、補助苗台63が補助支枠55で設けられ、前後搬送体65R,65L上の苗鉢が無くなると、補助苗台63上から補給する。補助支枠55は苗鉢の苗の成長程度によって高さを変更できるように調整部56が設けられている。
【0041】
また、横搬送体66R,66Lの両外側に鉢抜き装置70を設けている。この鉢抜き装置70は苗抜き棒71とその下側の鉢受け棒72で構成され、作業者が苗鉢Hの底部穴に苗抜き棒71を差し込んで苗を抜き取った後に苗植付け具4,4の植付動作と共に苗抜き棒71が下方へ回動して鉢Hを鉢受け棒72に受け渡し、さらに苗抜き棒71が上方へ回動して元の位置に戻る。鉢受け棒72は、覆土輪フレーム58に取り付ける。
【0042】
なお、苗抜き棒71にエアー吸引装置を設け、上方位置で鉢苗のポット鉢を外側から吸引し、下方回動でポット鉢を外すようにすれば、苗鉢からのポット鉢の抜き取りが確実に行えるようになる。
【0043】
次に、上記の苗移植機を用いた菜種苗やトマト苗等苗の移植作業を説明する。
先ず、エンジン5を始動して、後輪上下動操作具Aを操作し、左右後輪6,6が最も下降した位置にして苗移植機の走行機体を上昇させ、左右後輪6,6を駆動回転させて走行機体を移動させ圃場の植付け開始位置まで走行機体を移動させる。
【0044】
次に、後輪上下動操作具Aによって左右後輪6,6を上動させて走行機体を下降させてセンサSを接地させ、センサSの検出結果に基づいて油圧バルブVが切替えられて走行機体が圃場面高さに対して設定高さになるよう作動する苗植付け状態にする。
【0045】
そこで、左右後輪6,6を駆動回転させて走行機体を前進させると共に、苗植付け具4を作動させる。すると、走行機体は、圃場表面に接地しているセンサSの検出結果に基づいて油圧バルブVが切替えられて圃場面高さに対して設定高さに維持された状態で前進する。
【0046】
操縦ハンドル2の左右側部を歩行する作業者は、横搬送体66R,66Lの外端部にある鉢苗を取って、鉢抜き装置70で鉢Hを取り外し、苗供給シュート67R,67Lに苗を置く。すると、苗は苗供給シュート67R,67Lを滑って苗植付け具4内に投入され、この苗植付け具4の昇降作動で苗が圃場へ植え付けられる。
【0047】
次に、苗植付け具4の苗を植付ける作用を説明する。
各部を駆動させて走行機体を前進させると、下部を二分割して開閉する苗植付け具4が昇降駆動するリンク機構3によって昇降動作して苗植付け具4内に供給された苗を圃場に植付けていく。苗植付け具4内への苗の供給は、苗植付け具4の上部に設けた筒状の苗供給シュート67R、67Lの上端開口部67Ra、67La内に作業者が苗を直接投入し、その投入された苗が苗供給シュート67R、67Lにより案内されて苗植付け具4内に落下していって、苗植付け具4内に苗が供給される。
【0048】
そして、苗供給シュート67R、67Lが、苗植付け具4の開閉支点19,21より上方に突出し、しかも、苗植付け具4が最上位に位置するとき、苗供給シュート67R、67Lの上端開口部67Ra、67Laが操縦ハンドル2のグリップ部2a,2aの上下位置近傍に位置する。また、筒状の案内体35の上端開口部35aが、下端開口部35bより広く、且つ、走行機体平面視で苗供給シュート67R、67Lの下部外周近傍に配置した苗植付け具4とリンク機構3との連結部の上方に重なる。
【0049】
更に、ガード体36が、苗植付け具4が最上位に位置するとき苗植付け具4とリンク機構3との連結部の少なくとも側方を覆う。しかし、苗供給シュート67R、67Lは、ガード体36の上端部より上方に突出する。従って、作業者は苗植付け具4の上部に設けた筒状の苗供給シュート67R、67Lの上端開口部67Ra、67La内に苗を直接投入して苗植付け具4に苗を供給するものとなり、よって、茎葉部が長い苗や重量が軽い裸苗の場合でも、従来のように苗が引っかかって苗植付け具4に適確に落下しないというようなことは生じにくくなり、苗の種類や形状、大きさ等が相違しても適確に移植できるものとなる。しかも、苗供給シュート67R、67Lの上端開口部67Ra、67Laが苗植付け具4が最上位に位置するときに操縦ハンドル2のグリップ部2a,2aの上下位置近傍に位置するので、作業者が案内体に苗を投入するとき案内体の上端開口部が適当な高さに位置することになって、苗の投入が容易且つ適確に行なえ作業が能率よく行える。
【0050】
更に、筒状の苗供給シュート67R、67Lの上端開口部67Ra、67Laが、下端開口部67Rb、67Lbより広く、且つ、走行機体平面視で苗供給シュート67R、67Lの下部外周近傍に配置した苗植付け具4とリンク機構3との連結部の上方に重なるので、案内体35の上端開口部35a内への苗の投入が容易に行え、また、苗を案内体35内に投入するときに、昇降動する苗植付け具4及びリンク機構3に手などが上方から接触してしまうことが生じにくくなり作業が安全に行える。
【0051】
また、歩行しながら苗供給作業を行う作業者は走行機体側方位置することになるが、苗植付け具4が最上位に位置するとき苗植付け具4とリンク機構3との連結部の少なくとも側方を覆うガード体36を設けているので、苗を案内体35内に投入するときに、昇降動する苗植付け具4及びリンク機構3に手などが側方から接触してしまうことが生じにくくなり作業が安全に行え、しかも、案内体35はガード体36の上端部より上方に突出するので、ガード体36を設けながらも苗を苗供給シュート67R、67L内に投入する作業は容易に行えるものとなる。
【0052】
苗植付け具4が苗を植付けた後で、苗の左右の土を後述の覆土装置としての左右覆土輪57が植付けた苗の左右両側から溝を埋め戻すように覆土するので、苗は圃場に良好に植付けられる。
【0053】
そして、57は苗植付け具4によって圃場に植付けられた苗に対し左右から覆土し鎮圧する転動自在な覆土装置としての左右覆土輪である(左右覆土輪57は、苗植付け具4の後方位置の走行機体に設けられている)。
【0054】
この左右の覆土輪57の内側には該覆土輪57を支持する覆土輪フレーム58に固着した左右各々の苗巻き込み防止板59を設けている。該苗巻き込み防止板59は、ゴム製であり、苗植付け具4によって植え付けた苗が覆土輪57に干渉して巻き込まれるようなことを防止している。
【0055】
尚、本形態では苗植付け具4が前後に開いて苗を植え付ける構成について説明したが、左右に開いて苗を植え付ける苗植付け具を採用してもよい。
【符号の説明】
【0056】
4 苗植付け具
53 大搬送ベルト
54 小搬送ベルト
65R、65L 前後搬送体
66R、66L 横搬送体
67R、67L 苗供給シュート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降して苗の植付動作を行う苗植付け具(4)を走行機体後部の左右に一対設け、走行機体の前方から後方に搬送作用する前後搬送体(65R、65L)を走行機体上の左右に並設し、その前後搬送体(65R,65L)の後端に走行機体中央から側方へ搬送作用する横搬送体(66R,66L)を隣接し、該横搬送体(66R,66L)の後部に前記苗植付け具(4)に向けて下り傾斜した苗供給シュート(67R,67L)を設けてなる苗移植機。
【請求項2】
前後搬送体(65R、65L)を幅広の大搬送ベルト(53)とし、横搬送体(66R、66L)を幅狭の小搬送ベルト(54)で構成したことを特徴とする請求項1に記載の苗移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−130699(P2011−130699A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−292307(P2009−292307)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】