苗移植機
【課題】裸苗や大苗や鉢苗を圃場に機械にて移植する苗移植作業の更なる効率化が望まれるようになっている。そこで、本発明は、裸苗又は大苗又は鉢苗等の苗を圃場に機械にて移植する苗移植作業の効率化が達成できる苗移植機を得ることを課題とする。
【解決手段】駆動輪６を装備した走行装置１に昇降作動して圃場に苗Ｎを植付ける苗植付け具４を設けた苗移植機において、該苗植付け具４の上方に苗置き台３４を設け、該苗置き台３４と苗植付け具４の間に苗Ｎを案内供給するシューター３２を設けた苗移植機とした。
【解決手段】駆動輪６を装備した走行装置１に昇降作動して圃場に苗Ｎを植付ける苗植付け具４を設けた苗移植機において、該苗植付け具４の上方に苗置き台３４を設け、該苗置き台３４と苗植付け具４の間に苗Ｎを案内供給するシューター３２を設けた苗移植機とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、苗移植機の技術分野に属する。
【背景技術】
【０００２】
従来、圃場に裸苗や大苗や鉢苗を移植する１条植え苗移植機があった（特許文献１参照。）。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００３】
【特許文献１】特開２００８−１０４３６３号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
上記従来の苗移植機は、手植え作業しかできなかった裸苗や大苗や鉢苗を圃場に機械にて移植することができて、苗移植作業が効率化されて、非常に有意義な苗移植機である。
ところが、今般、裸苗や大苗や鉢苗を圃場に機械にて移植する苗移植作業の更なる効率化が望まれるようになっている。そこで、本発明は、裸苗又は大苗又は鉢苗等の苗を圃場に機械にて移植する苗移植作業の効率化が達成できる苗移植機を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【０００５】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項１記載の発明は、駆動輪６を装備した走行装置１に昇降作動して圃場に苗Ｎを植付ける苗植付け具４を設けた苗移植機において、該苗植付け具４の上方に苗置き台３４を設け、該苗置き台３４と苗植付け具４の間に苗Ｎを案内供給するシューター３２を設けた苗移植機とした。
【０００６】
従って、請求項１記載の発明によると、苗置き台３４上に載置された苗Ｎを取って、シューター３２に供給すると、苗Ｎはシューター３２に案内され苗植付け具４内に適切に案内されて保持される。そして、苗植付け具４が下降して苗Ｎを良好に適切な深さで圃場に植付けることができる。よって、裸苗又は大苗又は鉢苗等の苗Ｎを圃場に作業効率良く植付けることができ、苗移植作業が効率良く且つ容易に行なえる。
【０００７】
請求項２記載の発明は、シューター３２の周辺で苗植付け具４の上方を覆う位置に苗置き台３４を設けると共に、シューター３２の上部を苗置き台３４の苗置き底面３４ａよりも上方に突出して設けた請求項１記載の苗移植機とした。
【０００８】
従って、請求項２記載の発明によると、請求項1記載の発明の作用に加えて、作業者は苗置き台３４上に載置された苗Ｎを容易に且つ効率良くシューター３２に入れることができ、また、苗植付け具４の上方は苗置き台３４で覆われた状態となっているので、作業者は苗植付け具４の作動が目障りになることなく、容易に且つ能率よくシューター３２に順次苗Ｎを入れることができ、作業性が良い。
【０００９】
請求項３記載の発明は、苗植付け具４に苗Ｎを案内する苗ガイド３１を設け、苗植付け具４が昇降作動しても常に苗ガイド３１がシューター３２と連通する状態となる構成とした請求項１又は請求項２記載の苗移植機とした。
【００１０】
従って、請求項３記載の発明によると、請求項１又は請求項２記載の発明の作用に加えて、苗植付け具４が昇降作動する時に、シューター３２が苗植付け具４の苗ガイド３１と連通した状態が常に維持された状態であるから、作業者がシューター３２に供給した苗Ｎはシューター３２に案内され苗ガイド３１を介して適切に苗植付け具４内に案内されるから、作業性が良くて効率の良い苗移植作業が行なえる。
【００１１】
請求項４記載の発明は、シューター３２の下端に苗Ｎを受止めるシャッター８０を設け、該シャッター８０を苗植付け具４が最上昇位置若しくは最上昇位置付近にある時に開動作する構成とした請求項１から請求項３の何れか１項に記載の苗移植機とした。
【００１２】
従って、請求項４記載の発明によると、請求項１から請求項３の何れか１項に記載の発明の作用に加えて、作業者は、苗植付け具４の位置を特に気にすることなく、シューター３２内に苗がなくなれば、苗置き台３４上に載置された苗Ｎを取って、シューター３２に供給すると、苗Ｎはシャッター８０に受止められてシューター３２内に貯留され、苗植付け具４が最上昇位置若しくは最上昇位置付近にある時にシャッター８０が開いてシューター３２内に供給された苗Ｎを苗植付け具４内に自動供給する。そして、苗Ｎは、苗植付け具４内に案内されて保持される。そして、苗植付け具４が下降して苗植付け具４の下端が圃場に突入して、苗Ｎは良好に適切な深さで圃場に植付けられる。このようにして、作業者は、苗植付け具４の位置を特に気にすることなく、順次、苗置き台３４上に載置された苗Ｎを一つずつシューター３２に入れることにより、苗植付け具４は圃場に苗Ｎを植付けることができて、作業性が良くなる。
【００１３】
請求項５記載の発明は、シューター３２に対向して作業者が着座できる座席７０を走行装置１に設けた請求項１から請求項４の何れか１項に記載の苗移植機とした。
従って、請求項５記載の発明によると、請求項１から請求項４の何れか１項に記載の発明の作用に加えて、作業者は座席７０に着座し、容易な姿勢で効率よく苗Ｎをシューター３２に入れることができ、作業性及び効率の良い苗移植作業が行なえる。
【発明の効果】
【００１４】
本発明によると、裸苗又は大苗又は鉢苗等の苗Ｎを圃場に機械にて効率良く移植する苗移植機を得ることができ、課題を適切に解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【００１５】
【図１】苗移植機の側面図である。
【図２】苗移植機の平面図である。
【図３】苗移植機の要部の側面図である。
【図４】苗移植機の要部の背面図である。
【図５】苗移植機の要部の平面図である。
【図６】第２実施例を示す苗移植機の要部の側面図である。
【図７】第３実施例を示す苗移植機の要部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【００１６】
この発明の一実施形態としての乗用型２条植えの苗移植機を以下に説明する。この乗用型２条植えの苗移植機は、ビニールポットで育苗した大きな床土部を有したトマト等の苗Ｎ（所謂、鉢苗Ｎ）を植えることができるものである。尚、以下の図示例についての説明で前又は後というときは、操縦ハンドル２を配置した側を後とし、その反対側、即ちエンジン５を配置した側を前という。そして、右又は左というときは、機体後部において機体前部側を前側として立つ作業者から見て右手側を右とし、左手側が左としている。
【００１７】
苗移植機は、走行装置１と操縦ハンドル２を備えた機体に、左右リンク機構３により各々駆動されて昇降動作する左右苗植付け具４を設け、該左右苗植付け具４の下部を各々左右に二分割して左右方向に開閉する構成としている。走行装置１は、図示例では、エンジン５と、該エンジン５の動力が伝達されて駆動回転する左右一対の後輪６，６と、該後輪６，６の前方に転動自在に支持した左右一対の前輪７，７とを備えたものとしている。
【００１８】
エンジン５の後部には、ミッションケース８を配置し、そのミッションケース８は、その左側部からエンジン５の左側方に延びるケース部分８ａを有し、これがエンジン５の左側部と連結している。このケース部分８ａにエンジン５の出力軸が入り込んでミッションケース８内の伝動機構に動力が伝達する構成となっている。
【００１９】
ミッションケース８の左右両側部に伝動ケース９，９を回動自在に取り付け、この伝動ケース９，９の回動中心にミッションケース８から左右両外側方に延出させた車輪駆動軸の先端が入り込んで伝動ケース９，９内の伝動機構に走行用の動力を伝達している。そして、走行用の動力は伝動ケース９，９内の伝動機構を介して、機体後方側に延びてその後端部側方に突出する車軸１０，１０に伝動し、後輪６，６が駆動回転するようになっている。
【００２０】
また、伝動ケース９，９のミッションケース８への取付部には、上方に延びるアーム１１，１１を一体的に取り付けていて、これがミッションケース８に固定された昇降用油圧シリンダ１２のピストンロッド先端に上下軸心周りに回動自在に取り付けた天秤杆１３の左右両側部と連結している。その連結部の右側はロッド１４で連結し、左側は伸縮作動可能な左右水平制御用油圧シリンダ１５で連結している。
【００２１】
昇降用油圧シリンダ１２が作動してそのピストンロッドが機体後方に突出すると、左右の前記アーム１１，１１は後方に回動し、これに伴い伝動ケース９，９が下方に回動して、機体が上昇する。反対に、昇降用油圧シリンダ１２のピストンロッドが機体前方に引っ込むと、左右の前記アーム１１，１１は前方に回動し、これに伴い伝動ケース９，９が上方に回動して、機体が下降する。この昇降用油圧シリンダ１２は、機体に対する圃場面高さを検出するセンサーＳの検出結果に基づいて油圧バルブＶが切替えられて機体を圃場面高さに対して設定高さになるよう作動する構成となっている。また、操縦ハンドル２近傍に配置した変更操作具としての後輪上下動操作具Ａの人為操作によって油圧バルブＶを手動で切替えて、左右後輪６，６を下動或いは上動させて、機体を上昇或は下降させる構成としている。即ち、後輪上下動操作具Ａの人為操作によって左右後輪６，６を下動させて機体を上昇させた時には、左右苗植付け具４は圃場面から上方に離れた位置となり、後輪上下動操作具Ａによって左右後輪６，６を上動させて機体を下降させてセンサーＳを接地させ、センサーＳの検出結果に基づいて油圧バルブＶが切替えられて機体が圃場面高さに対して設定高さになるよう作動する苗植付け状態にした時には、左右苗植付け具４は圃場に苗Ｎを植付ける状態になる。
【００２２】
また、前記左右水平制御用油圧シリンダ１５が伸縮作動すると、左伝動ケース９が回動して左後輪６が上下動して機体を左右に傾斜させる。この左右水平制御用油圧シリンダ１５は、左右水平に対する機体の左右傾斜を検出する振り子式の錘センサ（図示せず）の検出結果に基づいて機体を左右水平になるように作動する構成としている。
【００２３】
前記左右前輪７，７は、エンジン５下方の左右中央位置で前後方向の軸心周りに回動自在に取り付けた前輪支持フレーム１６の左右両側部の下方に延びるアーム部分の下端部側方に固定した車軸１７，１７に回転自在に取り付けている。従って、左右前輪７，７は、機体の左右中央の前後方向の軸心周りにローリング動自在となっている。
【００２４】
前記操縦ハンドル２は、ミッションケース８の後端部にボルトにて固定された横フレーム８ｂに前端部を固定した機体フレーム２ｂの後端部に取り付けている。機体フレーム２ｂは、機体の左右中央から右側に偏った位置に配置されて後方に延び、また、前後中間部から斜め後上方に延びている。操縦ハンドル２は、機体フレーム２ｂの後端部から左右に後方に延びてその各後端部を操縦ハンドル２のグリップ部２ａ，２ａとしている。操縦ハンドル２の左右のグリップ部２ａ，２ａは、作業者がそのグリップ部２ａ，２ａを楽に手で握れるように適宜高さに設定する。なお、図例ではグリップ部２ａ，２ａを左右に分かれた構成としているが、操縦ハンドル２の左右の後端部を互いに連結してその連結部分をグリップ部としても良い。
【００２５】
次に、左右リンク機構３について説明する。
左右リンク機構３は、ミッションケース８内から苗植付け具駆動用の動力を受けて伝動する伝動機構を内装する植付け伝動ケース１８に装着している。図例のように植付け伝動ケース１８は、その前部がミッションケース８の後部に連結しそこから後斜め上方に延びる第一ケース部１８ａと、この第一ケース部１８ａの上部左右側部に各々固定され各々左右側方に延びる左右第二ケース部１８ｂと、その左右第二ケース部１８ｂの先端部に各々固定され各々後斜め下方に延びる左右第三ケース部１８ｃと、その左右第三ケース部１８ｃの下端部外側部に各々固定され各々左右側方に延びる左右第四ケース部１８ｄと、その左右第四ケース部１８ｄの先端部に各々固定され各々後方水平状に延びる左右第五ケース部１８ｅを有するものとしている。これら第一ケース部１８ａ・左右第二ケース部１８ｂ・左右第三ケース部１８ｃ・左右第四ケース部１８ｄ・左右第五ケース部１８ｅ内にリンク機構３を昇降駆動するための動力を伝達する伝動機構を内装している。
【００２６】
そして、第一ケース部１８ａ内に内装した伝動機構には、左右リンク機構３及び左右苗植付け具４をその昇降動最上位の位置で或はその近傍位置で設定時間停止させる間欠駆動機構と、左右リンク機構３及び左右苗植付け具４の昇降動を左右共に停止させるクラッチ機構とを備える。間欠駆動機構によって停止する時間は、該間欠駆動機構が備える変速機構によって調節され、この調節によって左右苗植付け具４による苗植付株間が変更調節されるようになっている。
【００２７】
また、左右リンク機構３の各々の駆動伝動機構は、その駆動位相が１８０度ずれており、即ち、左リンク機構３に装着された左苗植付け具４が最上昇位置にある時には、右リンク機構３に装着された右苗植付け具４が最下降位置の苗植付位置にあり、右リンク機構３に装着された右苗植付け具４が最上昇位置にある時には、左リンク機構３に装着された左苗植付け具４が最下降位置の苗植付位置になるようになっており、左右苗植付け具４にて圃場に千鳥状に苗Ｎが植付けられる構成となっている。
【００２８】
次に、左右苗植付け具４について説明するが、左右苗植付け具４は左右対称に設けられた構成となっており、その作動位相が１８０度ずれている点を除けば、同じ構成であるので、以下に、左苗植付け具４の構成を詳細に説明する（右苗植付け具４の構成は、左苗植付け具４の構成と左右対称である）。
【００２９】
左リンク機構３は、左第五ケース部１８ｅに基部が回動自在に設けられた上揺動リンク１９・下揺動リンク２０と、左第五ケース部１８ｅから突出した駆動軸２１に基部が固着されて駆動回転する回転クランク２２と、該回転クランク２２の先端と上揺動リンク１９の中途部を連結する連結アーム２３にて構成され、上揺動リンク１９・下揺動リンク２０の先端部は左苗植付け具４の前側に設けられたフレーム板２４に枢支連結されている。従って、回転クランク２２が植付け伝動ケース１８内の伝動機構によって動力が伝達されて駆動回転すると、上揺動リンク１９・下揺動リンク２０が揺動して昇降動し、その結果、左苗植付け具４の下端部が側面視で上下に長い略楕円形状の軌跡Ｔで昇降動する。
【００３０】
左苗植付け具４は、正面視で下方に向かって細くなるように延びるくちばし状に形成したもので左右方向に開閉可能に構成している。即ち、このくちばし状部の左側部分である左側部４Ｌ及び右側部分である右側部４Ｒは、その上部側が前方に延びてその上端部が左苗植付け具４の開閉支点となる前方に傾斜して設けた左右支点軸２５Ｌ・２５Ｒに各々一体回動するように連結している。尚、前記左側部４Ｌと右側部４Ｒとで内部に苗収容部分が構成され、該左側部４Ｌと右側部４Ｒとの上端部分により左苗植付け具４の左上端開口部４ａが構成されている。
【００３１】
また、左側部４Ｌ上部が連結された左支点軸２５Ｌと右側部４Ｒ上部が連結された左支点軸２５Ｒの各々の前端部には、回動作動アーム２６Ｌ・２６Ｒの下部が固着連結されている。そして、該回動作動アーム２６Ｌ・２６Ｒの上部間には開閉作動ワイヤ２７が設けられており、左苗植付け具４がその軌跡Ｔの昇降動最下位まで下降移動した時に、伝動ケース１８内の伝動機構によって開閉作動ワイヤ２７が引かれて、左側部４Ｌと右側部４Ｒが連動して回動し両者が左右方向に開動作し、内部の苗Ｎを土壌に放出して植付けるようになっている。尚、左側部４Ｌと右側部４Ｒは、スプリングにて両者が閉じる方向に付勢されており、開閉作動ワイヤ２７が作動しない時には左側部４Ｌと右側部４Ｒは閉じている。
【００３２】
そして、特に、左側部４Ｌと右側部４Ｒの開閉支点である左右支点軸２５Ｌ・２５Ｒを苗植付け具４の前部に設けて、左側部４Ｌと右側部４Ｒを各々片持ち支持構成としたので、従来の苗植付け具４の前後を両持ちする構成に比べて、その支持構成及び開閉構成が簡潔で軽量化及び小型化が行なえ、故障の少ない優れた小型の移植機を構成できて、良好な苗の移植作業が行える。
【００３３】
また、左右支点軸２５Ｌ・２５Ｒは苗植付け具４の前部に前方に傾斜した状態で設けたので、左側部４Ｌと右側部４Ｒが開いた時に、左側部４Ｌと右側部４Ｒの後部は大きく開く為に、苗Ｎを引っ掛けて倒してしまうような事態を回避できて、適切な苗の移植作業が行える。更には、左側部４Ｌと右側部４Ｒの後部に切欠き部２８を形成し、該切欠き部２８を形成する左側部４Ｌと右側部４Ｒの端面２９は左側部４Ｌと右側部４Ｒの左右外側面３０と略平行に形成しているので、左側部４Ｌと右側部４Ｒが開いた時に、左側部４Ｌと右側部４Ｒの後部は更に大きく開いた状態になり、苗Ｎを引っ掛けて倒してしまうような事態を更に適切に回避でき、更に良好な苗の移植作業が行える。
【００３４】
また、左側部４Ｌと右側部４Ｒの開閉機構である回動作動アーム２６Ｌ・２６Ｒや開閉作動ワイヤ２７や左側部４Ｌ・右側部４Ｒを閉じる方向に付勢するスプリングは、左側部４Ｌと右側部４Ｒの前方側にあるので、左側部４Ｌと右側部４Ｒが開いて苗Ｎを開放して圃場に植付ける時に、邪魔になる部材が左側部４Ｌと右側部４Ｒの後方側にはない構成となり、苗を押し倒したり引っ掛けたりすることがなく、適切な苗の移植作業が行える。
【００３５】
また、左側部４Ｌと右側部４Ｒの下部は各々左右幅の薄い板状４Ｌ’・４Ｒ’に形成されており、左苗植付け具４の下端が圃場に突入する際に、土の抵抗が少ない形状になっていて、左苗植付け具４の下端は適切に圃場に突入して苗Ｎを良好に適切な深さで植付けることができる。
【００３６】
また、左側部４Ｌと右側部４Ｒの内部に形成される苗Ｎの根鉢部Ｎ’を受止める苗収容部Ｚは、丁度苗Ｎの根鉢部Ｎ’を受止められる程度の浅い収容部となっており、該苗収容部Ｚに苗Ｎの根鉢部Ｎ’が収容された状態で苗Ｎの茎から葉は外側に位置して、後傾斜した状態となるように構成されている。従って、苗Ｎの茎や葉が左右支点軸２５Ｌ・２５Ｒから離れた後方位置になるので、大きな苗Ｎであっても、左右支点軸２５Ｌ・２５Ｒが苗Ｎを引っ掛けて倒してしまうような事態を回避でき、良好な苗の移植作業が行える。尚、苗植付け具４がその軌跡Ｔの昇降動最下位まで下降移動した苗植付け時には、苗Ｎは直立した状態で圃場に植付けられるようにリンク機構３の作動にて苗植付け具４は姿勢変更される。
【００３７】
一方、苗植付け具４の上部には、苗植付け具４内に苗Ｎを案内する後方が開放した樋状の苗ガイド３１を取り付けている。該苗ガイド３１は、後方が開放した樋状に形成されているので、大きな苗Ｎであっても、適切に苗Ｎの根鉢部Ｎ’を左側部４Ｌと右側部４Ｒの内部に形成される苗収容部Ｚに適切に案内し、良好な苗移植作業が行なえる。
【００３８】
次に、左右苗植付け具４に各々苗Ｎを案内供給する左右シューター３２について説明する。
左右シューター３２は上記苗ガイド３１と同様の形状をした後方が開放した樋状になっており、機体フレーム２ｂの後部に設けた支持フレーム３３にて支持された苗置き台３４の前側中央部に左右並んで各々回動軸３５にて回動自在に支持されており、その左右シューター３２の底部は各々左右苗植付け具４の左右苗ガイド３１の上に重なった状態で配置されている。そして、左右苗植付け具４が軌跡Ｔを昇降動しても、左右シューター３２の底部が各々左右苗植付け具４の左右苗ガイド３１の上に重なった状態が常に維持されるように、左右シューター３２及び左右苗ガイド３１の長さが設定されている。また、左右シューター３２の上部は、苗置き台３４の苗置き底面３４ａよりも上方に突出した状態で設けられている。
【００３９】
また、苗置き台３４は、その上面が周壁３４ｂを備えた苗（鉢苗）Ｎを多数載置できる平面状の苗置き底面３４ａとなっており、左右苗植付け具４の上方は該苗置き台３４で覆われた状態となっている。また、苗置き台３４は、機体側面視で、機体中央部に設けられた作業者が機体後方に向いて着座する座席７０の後方近くから操縦ハンドル２前端部まで設けられた平面積の広い構成となっており、多数の鉢苗Ｎを載置できる。なお、座席７０は、植付け伝動ケース１８に基部が固着された座席フレーム７１の上部に固定されている。
【００４０】
従って、作業者は、座席７０に機体後方を向いて着座し、苗置き台３４に多数載置した苗Ｎ（トマト苗などの鉢苗）を取って、苗植付け具４が圃場に苗を植付けて上昇して軌跡Ｔの最上昇位置にくるタイミングで左右シューター３２に苗Ｎの根鉢部Ｎ’が下になる状態で１つ供給する。
【００４１】
すると、苗Ｎの根鉢部Ｎ’は、左右シューター３２に案内され左右苗ガイド３１を経由して左側部４Ｌと右側部４Ｒの内部に形成される苗収容部Ｚに適切に案内されて保持される。そして、左右苗植付け具４が軌跡Ｔを下降して左右苗植付け具４の下端が圃場に突入して、各々の左側部４Ｌと右側部４Ｒが左右方向に開動作すると、苗Ｎは良好に適切な深さで圃場に植付けられる。
【００４２】
この左右苗植付け具４が軌跡Ｔで昇降作動する時に、左右シューター３２の底部が各々左右苗植付け具４の左右苗ガイド３１の上に重なった状態が常に維持された状態であるから、作業者は左右苗植付け具４の各々の左側部４Ｌと右側部４Ｒが閉じた状態であれば（苗植付け具４が軌跡Ｔの最上昇位置付近にある状態であれば）、何時でも左右シューター３２に苗Ｎを供給しても、苗Ｎの根鉢部Ｎ’は左右シューター３２に案内され左右苗ガイド３１を経由して左側部４Ｌと右側部４Ｒの内部に形成される苗収容部Ｚに適切に案内されて保持されるから、作業性が良くて効率の良い苗移植作業が行なえる。
【００４３】
一方、リンク機構３の回転クランク２２は上揺動リンク１９よりも下方に設けているので、苗植付け具４の作動軌跡Ｔの下死点でのリンク機構３の作動速度が遅くなり、従って、苗植付け具４の作動軌跡Ｔの下死点でのリンク機構３の駆動力が大きくなる為に、苗植付け具４を圃場に深く突入させることができて、苗の深植えが容易に行なえて、苗の移植精度が向上する。
【００４４】
そして、５０は左右覆土装置であって、左右苗植付け具４によって圃場に植付けられた各々の苗Ｎに対し各々左右から覆土し鎮圧する転動自在な左右覆土輪５１を各々左右覆土輪支持フレーム５２で回転自在に枢支して支持している（左右覆土装置５０は、各々左右苗植付け具４の後方位置に設けられている）。そして、左右覆土装置５０の各々の左右覆土輪５１の内側には該覆土輪５１を支持する覆土輪支持フレーム５２に固着した左右各々の苗巻き込み防止板５３を設けている。該左右苗巻き込み防止板５３は、ゴム製であり、左右苗植付け具４によって植え付けた各々の苗Ｎが覆土輪５１に干渉して巻き込まれるようなことを防止している。
【００４５】
７６は左右予備苗載台であって、基部をミッションケース８の左右側面に固着した左右予備苗載台支持フレームパイプ７７に各々３段ずつ予備苗載部７８を設けて構成し、該各予備苗載部７８には鉢苗Ｎを多数収納したトレーを各々載置できる構成になっている。そして、該左右予備苗載台７６は、座席７０前方の左右両側位置に設けられている。
【００４６】
７４はステップであって、機体の上部を覆い座席７０の左右及び前後に亘って広く設けられている。７５は主クラッチペダルであって、踏み込み操作すると、主クラッチが切れて機体は停止する。
【００４７】
次に、上記の乗用型２条植えの苗移植機を用いてトマトの鉢苗Ｎを移植する作業について説明する。
先ず、エンジン５を始動して、後輪上下動操作具Ａを操作し、左右後輪６，６が最も下降した位置にして苗移植機の機体を上昇させ、左右後輪６，６を駆動回転させて機体を移動させ圃場内の植付け開始位置まで機体を移動させる。次に、後輪上下動操作具Ａによって左右後輪６，６を上動させて機体を下降させてセンサーＳを接地させ、センサーＳの検出結果に基づいて油圧バルブＶが切替えられて機体が圃場面高さに対して設定高さになるよう作動する苗植付け状態にする。
【００４８】
そして、左右予備苗載台７６の各予備苗載部７８にトマトの鉢苗Ｎを多数収納したトレーを各々載置し、苗置き台３４上にも一面に多数のトマトの鉢苗Ｎを載置する。
次に、作業者は座席７０に後方を向いて着座し、主クラッチペダル７５を操作して主クラッチを入れて機体を進行させて各部を駆動し、苗置き台３４上に載置されたトマトの鉢苗Ｎを取って、苗植付け具４が圃場に苗を植付けて上昇して軌跡Ｔの最上昇位置にくるタイミングで左右シューター３２に苗Ｎの根鉢部Ｎ’が下になる状態で１つ供給する。すると、苗Ｎの根鉢部Ｎ’は、左右シューター３２に案内され左右苗ガイド３１を経由して左側部４Ｌと右側部４Ｒの内部に形成される苗収容部Ｚに適切に案内されて保持される。そして、左右苗植付け具４が軌跡Ｔを下降して左右苗植付け具４の下端が圃場に突入して、各々の左側部４Ｌと右側部４Ｒが左右方向に開動作すると、苗Ｎは良好に適切な深さで圃場に植付けられる。このようにして、作業者が順次苗置き台３４上に載置されたトマトの鉢苗Ｎを一つずつ左右シューター３２に入れることにより、左右苗植付け具４は交互に圃場にトマトの鉢苗Ｎを植付けて、結果、圃場にトマトの鉢苗Ｎを千鳥状に２条植付けることができる。
【００４９】
この時、機体は、圃場表面に接地しているセンサーＳの検出結果に基づいて油圧バルブＶが切替えられて圃場面高さに対して設定高さに維持された状態で前進し、左右苗植付け具４は適切に圃場にトマトの鉢苗Ｎを植付けることができる。
【００５０】
また、機体平面視で苗置き台３４が左右苗植付け具４の上方を覆った状態となっているので、作業者は左右苗植付け具４の作動が目障りになることなく、容易に且つ能率よく左右シューター３２に順次トマトの鉢苗Ｎを入れることができ、作業性が良い。
【００５１】
そして、苗移植作業の往行程が終了して機体を旋回する場合に、作業者は後輪上下動操作具Ａの人為操作によって左右後輪６，６を下動させて機体を上昇させて機体後部を押し下げて機体前部（左右前輪７）浮き上がるようにして機体を旋回させ、旋回後は、同様にして復行程の苗移植作業を行なう。
【００５２】
そして、苗置き台３４上のトマトの鉢苗Ｎが残り少なくなった時には、作業者は左右予備苗載台７６の予備苗載部７８に載置したトレーを取出して、該トレー内のトマトの鉢苗Ｎを苗置き台３４上に載置して、苗移植作業を続行する。
【００５３】
図６は第２実施例を示す苗移植機の要部の側面図であり、第１実施例の左右シューター３２を苗置き台３４に固定し、左右シューター３２の下部に左右シューター３２内に供給された苗Ｎを各々受止める左右シャッター８０を設けている。該シャッター８０はシューター３２の側面に設けた回動支軸８１にて回動自在に枢支された揺動アーム８２の下端に固着されていると共に、該揺動アーム８２に基部を固着した作動アーム８３の先端部に従動ローラ８４を設け、該従動ローラ８４を作動カム８５に接当させて、左右シューター３２は各々左右苗植付け具４が軌跡Ｔの最上昇位置に来る時に開いて左右シューター３２内に供給された苗Ｎを各々左右苗植付け具４内に自動供給する構成になっている。尚、８６は左右引張バネであって、各々左右シャッター８０を開く方向（従動ローラ８４を作動カム８５に接当させる方向）に付勢している。
【００５４】
従って、図６の実施例に示す構成であると、作業者は、左右苗植付け具４の位置を特に気にすることなく、左右シューター３２内に苗がなくなれば、苗置き台３４上に載置されたトマトの鉢苗Ｎを取って、左右シューター３２に苗Ｎの根鉢部Ｎ’が下になる状態で１つ供給すると、苗Ｎの根鉢部Ｎ’は左右シャッター８０に受止められて左右シューター３２内に貯留され、各々左右苗植付け具４が軌跡Ｔの最上昇位置に来る時に左右シャッター８０が開いて左右シューター３２内に供給された苗Ｎを各々左右苗植付け具４内に自動供給する。そして、苗Ｎの根鉢部Ｎ’は、苗植付け具４の左側部４Ｌと右側部４Ｒの内部に形成される苗収容部Ｚに適切に案内されて保持される。そして、左右苗植付け具４が軌跡Ｔを下降して左右苗植付け具４の下端が圃場に突入して、各々の左側部４Ｌと右側部４Ｒが左右方向に開動作すると、苗Ｎは良好に適切な深さで圃場に植付けられる。このようにして、作業者は、左右苗植付け具４の位置を特に気にすることなく、順次、苗置き台３４上に載置されたトマトの鉢苗Ｎを一つずつ左右シューター３２に入れることにより、左右苗植付け具４は交互に圃場にトマトの鉢苗Ｎを植付けて、結果、圃場にトマトの鉢苗Ｎを千鳥状に２条植付けることができて、作業性が良くなる。
【００５５】
また、左右シューター３２の上部を支点にして下部が左右方向に位置調節できる構成にすると、左右苗植付け具４を左右移動調節して条間変更をした場合に、容易に対応できて作業性が良い。
【００５６】
図７は第３実施例を示す苗移植機の要部の側面図であり、第１実施例の左右シューター３２に変えて左右ベルト式苗案内送り装置９０を設けたものである。
左右ベルト式苗案内送り装置９０に関連する構成は、左ベルト式苗案内送り装置９０と右ベルト式苗案内送り装置９０で同様であるので、代表で左ベルト式苗案内送り装置９０の構成を説明する。
【００５７】
ベルト式苗案内送り装置９０は、苗置き台３４の底面に回転自在に設けたベルト巻取りローラ９１と、該ベルト巻取りローラ９１に巻き付けられてその先端部９２ａが苗植付け具４の苗ガイド３１上部の内部の苗案内面に固着された弾性を有する合成ゴム製の平ベルト９２と、該平ベルト９２を苗置き台３４の苗置き底面３４ａと同一平面で平面状に姿勢を維持する平面案内板９３と、該平面案内板９３にて平面状に案内されている平ベルト９２上に載置された苗Ｎが平ベルト９２のベルト巻取りローラ９１よる巻き戻し作用にて矢印イ方向に移動するのを規制するストッパー板９４と、平ベルト９２の矢印ロ方向への移動にて平ベルト９２上に載置された苗Ｎが苗ガイド３１内部に供給される時に苗Ｎを案内してその姿勢を適正に保つ案内板９５にて構成されている。尚、ベルト巻取りローラ９１は、平ベルト９２を矢印イ方向に巻き取る方向に回動すべく、巻きバネにて付勢されている。
【００５８】
また、苗ガイド３１は、実施例１とは異なり、筒状に構成されている。また、苗ガイド３１の後部下端部には、苗ガイド３１から左側部４Ｌ・右側部４Ｒ間の苗収容部Ｚに苗Ｎが案内移動する時に、苗Ｎが外側に飛び出さないように苗案内用の合成ゴム製のゴム平板９６の上部が固着されている。
【００５９】
従って、作業者が苗置き台３４上に載置されたトマトの鉢苗Ｎを取って、平面案内板９３にて平面状に案内されている平ベルト９２上に載置すると、苗植付け具４が圃場に苗を植付けて上昇して軌跡Ｔの最上昇位置にくるまでは、平ベルト９２がベルト巻取りローラ９１よる巻き戻し作用にて矢印イ方向に移動するので、ストッパー板９４に止められた状態で苗Ｎは平ベルト９２上にあり、苗植付け具４が最上昇位置から軌跡Ｔを下降すると、平ベルト９２がベルト巻取りローラ９１から繰出されて矢印ロ方向へ移動して、平ベルト９２上に載置された苗Ｎが案内板９５に姿勢が乱れないように案内されて苗ガイド３１内部に供給される。そして、苗Ｎは、苗ガイド３１内部を通過して、外側に飛び出さないようにゴム平板９６に案内されて、左側部４Ｌと右側部４Ｒの内部に形成される苗収容部Ｚに適切に案内され保持される。そして、苗植付け具４が軌跡Ｔを下降して苗植付け具４の下端が圃場に突入して、左側部４Ｌと右側部４Ｒが左右方向に開動作すると、苗Ｎは良好に適切な深さで圃場に植付けられる。
【００６０】
尚、本形態では苗植付け具４が左右に開いて苗Ｎを植え付ける構成について説明したが、前後に開いて苗Ｎを植え付ける苗植付け具を採用してもよい。
【符号の説明】
【００６１】
１ 走行装置
４ 苗植付け具
６ 駆動輪（後輪）
３１ 苗ガイド
３２ シューター
３４ 苗置き台
３４ａ 苗置き底面
７０ 座席
８０ シャッター
Ｎ 苗（鉢苗）
【技術分野】
【０００１】
本発明は、苗移植機の技術分野に属する。
【背景技術】
【０００２】
従来、圃場に裸苗や大苗や鉢苗を移植する１条植え苗移植機があった（特許文献１参照。）。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００３】
【特許文献１】特開２００８−１０４３６３号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
上記従来の苗移植機は、手植え作業しかできなかった裸苗や大苗や鉢苗を圃場に機械にて移植することができて、苗移植作業が効率化されて、非常に有意義な苗移植機である。
ところが、今般、裸苗や大苗や鉢苗を圃場に機械にて移植する苗移植作業の更なる効率化が望まれるようになっている。そこで、本発明は、裸苗又は大苗又は鉢苗等の苗を圃場に機械にて移植する苗移植作業の効率化が達成できる苗移植機を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【０００５】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項１記載の発明は、駆動輪６を装備した走行装置１に昇降作動して圃場に苗Ｎを植付ける苗植付け具４を設けた苗移植機において、該苗植付け具４の上方に苗置き台３４を設け、該苗置き台３４と苗植付け具４の間に苗Ｎを案内供給するシューター３２を設けた苗移植機とした。
【０００６】
従って、請求項１記載の発明によると、苗置き台３４上に載置された苗Ｎを取って、シューター３２に供給すると、苗Ｎはシューター３２に案内され苗植付け具４内に適切に案内されて保持される。そして、苗植付け具４が下降して苗Ｎを良好に適切な深さで圃場に植付けることができる。よって、裸苗又は大苗又は鉢苗等の苗Ｎを圃場に作業効率良く植付けることができ、苗移植作業が効率良く且つ容易に行なえる。
【０００７】
請求項２記載の発明は、シューター３２の周辺で苗植付け具４の上方を覆う位置に苗置き台３４を設けると共に、シューター３２の上部を苗置き台３４の苗置き底面３４ａよりも上方に突出して設けた請求項１記載の苗移植機とした。
【０００８】
従って、請求項２記載の発明によると、請求項1記載の発明の作用に加えて、作業者は苗置き台３４上に載置された苗Ｎを容易に且つ効率良くシューター３２に入れることができ、また、苗植付け具４の上方は苗置き台３４で覆われた状態となっているので、作業者は苗植付け具４の作動が目障りになることなく、容易に且つ能率よくシューター３２に順次苗Ｎを入れることができ、作業性が良い。
【０００９】
請求項３記載の発明は、苗植付け具４に苗Ｎを案内する苗ガイド３１を設け、苗植付け具４が昇降作動しても常に苗ガイド３１がシューター３２と連通する状態となる構成とした請求項１又は請求項２記載の苗移植機とした。
【００１０】
従って、請求項３記載の発明によると、請求項１又は請求項２記載の発明の作用に加えて、苗植付け具４が昇降作動する時に、シューター３２が苗植付け具４の苗ガイド３１と連通した状態が常に維持された状態であるから、作業者がシューター３２に供給した苗Ｎはシューター３２に案内され苗ガイド３１を介して適切に苗植付け具４内に案内されるから、作業性が良くて効率の良い苗移植作業が行なえる。
【００１１】
請求項４記載の発明は、シューター３２の下端に苗Ｎを受止めるシャッター８０を設け、該シャッター８０を苗植付け具４が最上昇位置若しくは最上昇位置付近にある時に開動作する構成とした請求項１から請求項３の何れか１項に記載の苗移植機とした。
【００１２】
従って、請求項４記載の発明によると、請求項１から請求項３の何れか１項に記載の発明の作用に加えて、作業者は、苗植付け具４の位置を特に気にすることなく、シューター３２内に苗がなくなれば、苗置き台３４上に載置された苗Ｎを取って、シューター３２に供給すると、苗Ｎはシャッター８０に受止められてシューター３２内に貯留され、苗植付け具４が最上昇位置若しくは最上昇位置付近にある時にシャッター８０が開いてシューター３２内に供給された苗Ｎを苗植付け具４内に自動供給する。そして、苗Ｎは、苗植付け具４内に案内されて保持される。そして、苗植付け具４が下降して苗植付け具４の下端が圃場に突入して、苗Ｎは良好に適切な深さで圃場に植付けられる。このようにして、作業者は、苗植付け具４の位置を特に気にすることなく、順次、苗置き台３４上に載置された苗Ｎを一つずつシューター３２に入れることにより、苗植付け具４は圃場に苗Ｎを植付けることができて、作業性が良くなる。
【００１３】
請求項５記載の発明は、シューター３２に対向して作業者が着座できる座席７０を走行装置１に設けた請求項１から請求項４の何れか１項に記載の苗移植機とした。
従って、請求項５記載の発明によると、請求項１から請求項４の何れか１項に記載の発明の作用に加えて、作業者は座席７０に着座し、容易な姿勢で効率よく苗Ｎをシューター３２に入れることができ、作業性及び効率の良い苗移植作業が行なえる。
【発明の効果】
【００１４】
本発明によると、裸苗又は大苗又は鉢苗等の苗Ｎを圃場に機械にて効率良く移植する苗移植機を得ることができ、課題を適切に解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【００１５】
【図１】苗移植機の側面図である。
【図２】苗移植機の平面図である。
【図３】苗移植機の要部の側面図である。
【図４】苗移植機の要部の背面図である。
【図５】苗移植機の要部の平面図である。
【図６】第２実施例を示す苗移植機の要部の側面図である。
【図７】第３実施例を示す苗移植機の要部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【００１６】
この発明の一実施形態としての乗用型２条植えの苗移植機を以下に説明する。この乗用型２条植えの苗移植機は、ビニールポットで育苗した大きな床土部を有したトマト等の苗Ｎ（所謂、鉢苗Ｎ）を植えることができるものである。尚、以下の図示例についての説明で前又は後というときは、操縦ハンドル２を配置した側を後とし、その反対側、即ちエンジン５を配置した側を前という。そして、右又は左というときは、機体後部において機体前部側を前側として立つ作業者から見て右手側を右とし、左手側が左としている。
【００１７】
苗移植機は、走行装置１と操縦ハンドル２を備えた機体に、左右リンク機構３により各々駆動されて昇降動作する左右苗植付け具４を設け、該左右苗植付け具４の下部を各々左右に二分割して左右方向に開閉する構成としている。走行装置１は、図示例では、エンジン５と、該エンジン５の動力が伝達されて駆動回転する左右一対の後輪６，６と、該後輪６，６の前方に転動自在に支持した左右一対の前輪７，７とを備えたものとしている。
【００１８】
エンジン５の後部には、ミッションケース８を配置し、そのミッションケース８は、その左側部からエンジン５の左側方に延びるケース部分８ａを有し、これがエンジン５の左側部と連結している。このケース部分８ａにエンジン５の出力軸が入り込んでミッションケース８内の伝動機構に動力が伝達する構成となっている。
【００１９】
ミッションケース８の左右両側部に伝動ケース９，９を回動自在に取り付け、この伝動ケース９，９の回動中心にミッションケース８から左右両外側方に延出させた車輪駆動軸の先端が入り込んで伝動ケース９，９内の伝動機構に走行用の動力を伝達している。そして、走行用の動力は伝動ケース９，９内の伝動機構を介して、機体後方側に延びてその後端部側方に突出する車軸１０，１０に伝動し、後輪６，６が駆動回転するようになっている。
【００２０】
また、伝動ケース９，９のミッションケース８への取付部には、上方に延びるアーム１１，１１を一体的に取り付けていて、これがミッションケース８に固定された昇降用油圧シリンダ１２のピストンロッド先端に上下軸心周りに回動自在に取り付けた天秤杆１３の左右両側部と連結している。その連結部の右側はロッド１４で連結し、左側は伸縮作動可能な左右水平制御用油圧シリンダ１５で連結している。
【００２１】
昇降用油圧シリンダ１２が作動してそのピストンロッドが機体後方に突出すると、左右の前記アーム１１，１１は後方に回動し、これに伴い伝動ケース９，９が下方に回動して、機体が上昇する。反対に、昇降用油圧シリンダ１２のピストンロッドが機体前方に引っ込むと、左右の前記アーム１１，１１は前方に回動し、これに伴い伝動ケース９，９が上方に回動して、機体が下降する。この昇降用油圧シリンダ１２は、機体に対する圃場面高さを検出するセンサーＳの検出結果に基づいて油圧バルブＶが切替えられて機体を圃場面高さに対して設定高さになるよう作動する構成となっている。また、操縦ハンドル２近傍に配置した変更操作具としての後輪上下動操作具Ａの人為操作によって油圧バルブＶを手動で切替えて、左右後輪６，６を下動或いは上動させて、機体を上昇或は下降させる構成としている。即ち、後輪上下動操作具Ａの人為操作によって左右後輪６，６を下動させて機体を上昇させた時には、左右苗植付け具４は圃場面から上方に離れた位置となり、後輪上下動操作具Ａによって左右後輪６，６を上動させて機体を下降させてセンサーＳを接地させ、センサーＳの検出結果に基づいて油圧バルブＶが切替えられて機体が圃場面高さに対して設定高さになるよう作動する苗植付け状態にした時には、左右苗植付け具４は圃場に苗Ｎを植付ける状態になる。
【００２２】
また、前記左右水平制御用油圧シリンダ１５が伸縮作動すると、左伝動ケース９が回動して左後輪６が上下動して機体を左右に傾斜させる。この左右水平制御用油圧シリンダ１５は、左右水平に対する機体の左右傾斜を検出する振り子式の錘センサ（図示せず）の検出結果に基づいて機体を左右水平になるように作動する構成としている。
【００２３】
前記左右前輪７，７は、エンジン５下方の左右中央位置で前後方向の軸心周りに回動自在に取り付けた前輪支持フレーム１６の左右両側部の下方に延びるアーム部分の下端部側方に固定した車軸１７，１７に回転自在に取り付けている。従って、左右前輪７，７は、機体の左右中央の前後方向の軸心周りにローリング動自在となっている。
【００２４】
前記操縦ハンドル２は、ミッションケース８の後端部にボルトにて固定された横フレーム８ｂに前端部を固定した機体フレーム２ｂの後端部に取り付けている。機体フレーム２ｂは、機体の左右中央から右側に偏った位置に配置されて後方に延び、また、前後中間部から斜め後上方に延びている。操縦ハンドル２は、機体フレーム２ｂの後端部から左右に後方に延びてその各後端部を操縦ハンドル２のグリップ部２ａ，２ａとしている。操縦ハンドル２の左右のグリップ部２ａ，２ａは、作業者がそのグリップ部２ａ，２ａを楽に手で握れるように適宜高さに設定する。なお、図例ではグリップ部２ａ，２ａを左右に分かれた構成としているが、操縦ハンドル２の左右の後端部を互いに連結してその連結部分をグリップ部としても良い。
【００２５】
次に、左右リンク機構３について説明する。
左右リンク機構３は、ミッションケース８内から苗植付け具駆動用の動力を受けて伝動する伝動機構を内装する植付け伝動ケース１８に装着している。図例のように植付け伝動ケース１８は、その前部がミッションケース８の後部に連結しそこから後斜め上方に延びる第一ケース部１８ａと、この第一ケース部１８ａの上部左右側部に各々固定され各々左右側方に延びる左右第二ケース部１８ｂと、その左右第二ケース部１８ｂの先端部に各々固定され各々後斜め下方に延びる左右第三ケース部１８ｃと、その左右第三ケース部１８ｃの下端部外側部に各々固定され各々左右側方に延びる左右第四ケース部１８ｄと、その左右第四ケース部１８ｄの先端部に各々固定され各々後方水平状に延びる左右第五ケース部１８ｅを有するものとしている。これら第一ケース部１８ａ・左右第二ケース部１８ｂ・左右第三ケース部１８ｃ・左右第四ケース部１８ｄ・左右第五ケース部１８ｅ内にリンク機構３を昇降駆動するための動力を伝達する伝動機構を内装している。
【００２６】
そして、第一ケース部１８ａ内に内装した伝動機構には、左右リンク機構３及び左右苗植付け具４をその昇降動最上位の位置で或はその近傍位置で設定時間停止させる間欠駆動機構と、左右リンク機構３及び左右苗植付け具４の昇降動を左右共に停止させるクラッチ機構とを備える。間欠駆動機構によって停止する時間は、該間欠駆動機構が備える変速機構によって調節され、この調節によって左右苗植付け具４による苗植付株間が変更調節されるようになっている。
【００２７】
また、左右リンク機構３の各々の駆動伝動機構は、その駆動位相が１８０度ずれており、即ち、左リンク機構３に装着された左苗植付け具４が最上昇位置にある時には、右リンク機構３に装着された右苗植付け具４が最下降位置の苗植付位置にあり、右リンク機構３に装着された右苗植付け具４が最上昇位置にある時には、左リンク機構３に装着された左苗植付け具４が最下降位置の苗植付位置になるようになっており、左右苗植付け具４にて圃場に千鳥状に苗Ｎが植付けられる構成となっている。
【００２８】
次に、左右苗植付け具４について説明するが、左右苗植付け具４は左右対称に設けられた構成となっており、その作動位相が１８０度ずれている点を除けば、同じ構成であるので、以下に、左苗植付け具４の構成を詳細に説明する（右苗植付け具４の構成は、左苗植付け具４の構成と左右対称である）。
【００２９】
左リンク機構３は、左第五ケース部１８ｅに基部が回動自在に設けられた上揺動リンク１９・下揺動リンク２０と、左第五ケース部１８ｅから突出した駆動軸２１に基部が固着されて駆動回転する回転クランク２２と、該回転クランク２２の先端と上揺動リンク１９の中途部を連結する連結アーム２３にて構成され、上揺動リンク１９・下揺動リンク２０の先端部は左苗植付け具４の前側に設けられたフレーム板２４に枢支連結されている。従って、回転クランク２２が植付け伝動ケース１８内の伝動機構によって動力が伝達されて駆動回転すると、上揺動リンク１９・下揺動リンク２０が揺動して昇降動し、その結果、左苗植付け具４の下端部が側面視で上下に長い略楕円形状の軌跡Ｔで昇降動する。
【００３０】
左苗植付け具４は、正面視で下方に向かって細くなるように延びるくちばし状に形成したもので左右方向に開閉可能に構成している。即ち、このくちばし状部の左側部分である左側部４Ｌ及び右側部分である右側部４Ｒは、その上部側が前方に延びてその上端部が左苗植付け具４の開閉支点となる前方に傾斜して設けた左右支点軸２５Ｌ・２５Ｒに各々一体回動するように連結している。尚、前記左側部４Ｌと右側部４Ｒとで内部に苗収容部分が構成され、該左側部４Ｌと右側部４Ｒとの上端部分により左苗植付け具４の左上端開口部４ａが構成されている。
【００３１】
また、左側部４Ｌ上部が連結された左支点軸２５Ｌと右側部４Ｒ上部が連結された左支点軸２５Ｒの各々の前端部には、回動作動アーム２６Ｌ・２６Ｒの下部が固着連結されている。そして、該回動作動アーム２６Ｌ・２６Ｒの上部間には開閉作動ワイヤ２７が設けられており、左苗植付け具４がその軌跡Ｔの昇降動最下位まで下降移動した時に、伝動ケース１８内の伝動機構によって開閉作動ワイヤ２７が引かれて、左側部４Ｌと右側部４Ｒが連動して回動し両者が左右方向に開動作し、内部の苗Ｎを土壌に放出して植付けるようになっている。尚、左側部４Ｌと右側部４Ｒは、スプリングにて両者が閉じる方向に付勢されており、開閉作動ワイヤ２７が作動しない時には左側部４Ｌと右側部４Ｒは閉じている。
【００３２】
そして、特に、左側部４Ｌと右側部４Ｒの開閉支点である左右支点軸２５Ｌ・２５Ｒを苗植付け具４の前部に設けて、左側部４Ｌと右側部４Ｒを各々片持ち支持構成としたので、従来の苗植付け具４の前後を両持ちする構成に比べて、その支持構成及び開閉構成が簡潔で軽量化及び小型化が行なえ、故障の少ない優れた小型の移植機を構成できて、良好な苗の移植作業が行える。
【００３３】
また、左右支点軸２５Ｌ・２５Ｒは苗植付け具４の前部に前方に傾斜した状態で設けたので、左側部４Ｌと右側部４Ｒが開いた時に、左側部４Ｌと右側部４Ｒの後部は大きく開く為に、苗Ｎを引っ掛けて倒してしまうような事態を回避できて、適切な苗の移植作業が行える。更には、左側部４Ｌと右側部４Ｒの後部に切欠き部２８を形成し、該切欠き部２８を形成する左側部４Ｌと右側部４Ｒの端面２９は左側部４Ｌと右側部４Ｒの左右外側面３０と略平行に形成しているので、左側部４Ｌと右側部４Ｒが開いた時に、左側部４Ｌと右側部４Ｒの後部は更に大きく開いた状態になり、苗Ｎを引っ掛けて倒してしまうような事態を更に適切に回避でき、更に良好な苗の移植作業が行える。
【００３４】
また、左側部４Ｌと右側部４Ｒの開閉機構である回動作動アーム２６Ｌ・２６Ｒや開閉作動ワイヤ２７や左側部４Ｌ・右側部４Ｒを閉じる方向に付勢するスプリングは、左側部４Ｌと右側部４Ｒの前方側にあるので、左側部４Ｌと右側部４Ｒが開いて苗Ｎを開放して圃場に植付ける時に、邪魔になる部材が左側部４Ｌと右側部４Ｒの後方側にはない構成となり、苗を押し倒したり引っ掛けたりすることがなく、適切な苗の移植作業が行える。
【００３５】
また、左側部４Ｌと右側部４Ｒの下部は各々左右幅の薄い板状４Ｌ’・４Ｒ’に形成されており、左苗植付け具４の下端が圃場に突入する際に、土の抵抗が少ない形状になっていて、左苗植付け具４の下端は適切に圃場に突入して苗Ｎを良好に適切な深さで植付けることができる。
【００３６】
また、左側部４Ｌと右側部４Ｒの内部に形成される苗Ｎの根鉢部Ｎ’を受止める苗収容部Ｚは、丁度苗Ｎの根鉢部Ｎ’を受止められる程度の浅い収容部となっており、該苗収容部Ｚに苗Ｎの根鉢部Ｎ’が収容された状態で苗Ｎの茎から葉は外側に位置して、後傾斜した状態となるように構成されている。従って、苗Ｎの茎や葉が左右支点軸２５Ｌ・２５Ｒから離れた後方位置になるので、大きな苗Ｎであっても、左右支点軸２５Ｌ・２５Ｒが苗Ｎを引っ掛けて倒してしまうような事態を回避でき、良好な苗の移植作業が行える。尚、苗植付け具４がその軌跡Ｔの昇降動最下位まで下降移動した苗植付け時には、苗Ｎは直立した状態で圃場に植付けられるようにリンク機構３の作動にて苗植付け具４は姿勢変更される。
【００３７】
一方、苗植付け具４の上部には、苗植付け具４内に苗Ｎを案内する後方が開放した樋状の苗ガイド３１を取り付けている。該苗ガイド３１は、後方が開放した樋状に形成されているので、大きな苗Ｎであっても、適切に苗Ｎの根鉢部Ｎ’を左側部４Ｌと右側部４Ｒの内部に形成される苗収容部Ｚに適切に案内し、良好な苗移植作業が行なえる。
【００３８】
次に、左右苗植付け具４に各々苗Ｎを案内供給する左右シューター３２について説明する。
左右シューター３２は上記苗ガイド３１と同様の形状をした後方が開放した樋状になっており、機体フレーム２ｂの後部に設けた支持フレーム３３にて支持された苗置き台３４の前側中央部に左右並んで各々回動軸３５にて回動自在に支持されており、その左右シューター３２の底部は各々左右苗植付け具４の左右苗ガイド３１の上に重なった状態で配置されている。そして、左右苗植付け具４が軌跡Ｔを昇降動しても、左右シューター３２の底部が各々左右苗植付け具４の左右苗ガイド３１の上に重なった状態が常に維持されるように、左右シューター３２及び左右苗ガイド３１の長さが設定されている。また、左右シューター３２の上部は、苗置き台３４の苗置き底面３４ａよりも上方に突出した状態で設けられている。
【００３９】
また、苗置き台３４は、その上面が周壁３４ｂを備えた苗（鉢苗）Ｎを多数載置できる平面状の苗置き底面３４ａとなっており、左右苗植付け具４の上方は該苗置き台３４で覆われた状態となっている。また、苗置き台３４は、機体側面視で、機体中央部に設けられた作業者が機体後方に向いて着座する座席７０の後方近くから操縦ハンドル２前端部まで設けられた平面積の広い構成となっており、多数の鉢苗Ｎを載置できる。なお、座席７０は、植付け伝動ケース１８に基部が固着された座席フレーム７１の上部に固定されている。
【００４０】
従って、作業者は、座席７０に機体後方を向いて着座し、苗置き台３４に多数載置した苗Ｎ（トマト苗などの鉢苗）を取って、苗植付け具４が圃場に苗を植付けて上昇して軌跡Ｔの最上昇位置にくるタイミングで左右シューター３２に苗Ｎの根鉢部Ｎ’が下になる状態で１つ供給する。
【００４１】
すると、苗Ｎの根鉢部Ｎ’は、左右シューター３２に案内され左右苗ガイド３１を経由して左側部４Ｌと右側部４Ｒの内部に形成される苗収容部Ｚに適切に案内されて保持される。そして、左右苗植付け具４が軌跡Ｔを下降して左右苗植付け具４の下端が圃場に突入して、各々の左側部４Ｌと右側部４Ｒが左右方向に開動作すると、苗Ｎは良好に適切な深さで圃場に植付けられる。
【００４２】
この左右苗植付け具４が軌跡Ｔで昇降作動する時に、左右シューター３２の底部が各々左右苗植付け具４の左右苗ガイド３１の上に重なった状態が常に維持された状態であるから、作業者は左右苗植付け具４の各々の左側部４Ｌと右側部４Ｒが閉じた状態であれば（苗植付け具４が軌跡Ｔの最上昇位置付近にある状態であれば）、何時でも左右シューター３２に苗Ｎを供給しても、苗Ｎの根鉢部Ｎ’は左右シューター３２に案内され左右苗ガイド３１を経由して左側部４Ｌと右側部４Ｒの内部に形成される苗収容部Ｚに適切に案内されて保持されるから、作業性が良くて効率の良い苗移植作業が行なえる。
【００４３】
一方、リンク機構３の回転クランク２２は上揺動リンク１９よりも下方に設けているので、苗植付け具４の作動軌跡Ｔの下死点でのリンク機構３の作動速度が遅くなり、従って、苗植付け具４の作動軌跡Ｔの下死点でのリンク機構３の駆動力が大きくなる為に、苗植付け具４を圃場に深く突入させることができて、苗の深植えが容易に行なえて、苗の移植精度が向上する。
【００４４】
そして、５０は左右覆土装置であって、左右苗植付け具４によって圃場に植付けられた各々の苗Ｎに対し各々左右から覆土し鎮圧する転動自在な左右覆土輪５１を各々左右覆土輪支持フレーム５２で回転自在に枢支して支持している（左右覆土装置５０は、各々左右苗植付け具４の後方位置に設けられている）。そして、左右覆土装置５０の各々の左右覆土輪５１の内側には該覆土輪５１を支持する覆土輪支持フレーム５２に固着した左右各々の苗巻き込み防止板５３を設けている。該左右苗巻き込み防止板５３は、ゴム製であり、左右苗植付け具４によって植え付けた各々の苗Ｎが覆土輪５１に干渉して巻き込まれるようなことを防止している。
【００４５】
７６は左右予備苗載台であって、基部をミッションケース８の左右側面に固着した左右予備苗載台支持フレームパイプ７７に各々３段ずつ予備苗載部７８を設けて構成し、該各予備苗載部７８には鉢苗Ｎを多数収納したトレーを各々載置できる構成になっている。そして、該左右予備苗載台７６は、座席７０前方の左右両側位置に設けられている。
【００４６】
７４はステップであって、機体の上部を覆い座席７０の左右及び前後に亘って広く設けられている。７５は主クラッチペダルであって、踏み込み操作すると、主クラッチが切れて機体は停止する。
【００４７】
次に、上記の乗用型２条植えの苗移植機を用いてトマトの鉢苗Ｎを移植する作業について説明する。
先ず、エンジン５を始動して、後輪上下動操作具Ａを操作し、左右後輪６，６が最も下降した位置にして苗移植機の機体を上昇させ、左右後輪６，６を駆動回転させて機体を移動させ圃場内の植付け開始位置まで機体を移動させる。次に、後輪上下動操作具Ａによって左右後輪６，６を上動させて機体を下降させてセンサーＳを接地させ、センサーＳの検出結果に基づいて油圧バルブＶが切替えられて機体が圃場面高さに対して設定高さになるよう作動する苗植付け状態にする。
【００４８】
そして、左右予備苗載台７６の各予備苗載部７８にトマトの鉢苗Ｎを多数収納したトレーを各々載置し、苗置き台３４上にも一面に多数のトマトの鉢苗Ｎを載置する。
次に、作業者は座席７０に後方を向いて着座し、主クラッチペダル７５を操作して主クラッチを入れて機体を進行させて各部を駆動し、苗置き台３４上に載置されたトマトの鉢苗Ｎを取って、苗植付け具４が圃場に苗を植付けて上昇して軌跡Ｔの最上昇位置にくるタイミングで左右シューター３２に苗Ｎの根鉢部Ｎ’が下になる状態で１つ供給する。すると、苗Ｎの根鉢部Ｎ’は、左右シューター３２に案内され左右苗ガイド３１を経由して左側部４Ｌと右側部４Ｒの内部に形成される苗収容部Ｚに適切に案内されて保持される。そして、左右苗植付け具４が軌跡Ｔを下降して左右苗植付け具４の下端が圃場に突入して、各々の左側部４Ｌと右側部４Ｒが左右方向に開動作すると、苗Ｎは良好に適切な深さで圃場に植付けられる。このようにして、作業者が順次苗置き台３４上に載置されたトマトの鉢苗Ｎを一つずつ左右シューター３２に入れることにより、左右苗植付け具４は交互に圃場にトマトの鉢苗Ｎを植付けて、結果、圃場にトマトの鉢苗Ｎを千鳥状に２条植付けることができる。
【００４９】
この時、機体は、圃場表面に接地しているセンサーＳの検出結果に基づいて油圧バルブＶが切替えられて圃場面高さに対して設定高さに維持された状態で前進し、左右苗植付け具４は適切に圃場にトマトの鉢苗Ｎを植付けることができる。
【００５０】
また、機体平面視で苗置き台３４が左右苗植付け具４の上方を覆った状態となっているので、作業者は左右苗植付け具４の作動が目障りになることなく、容易に且つ能率よく左右シューター３２に順次トマトの鉢苗Ｎを入れることができ、作業性が良い。
【００５１】
そして、苗移植作業の往行程が終了して機体を旋回する場合に、作業者は後輪上下動操作具Ａの人為操作によって左右後輪６，６を下動させて機体を上昇させて機体後部を押し下げて機体前部（左右前輪７）浮き上がるようにして機体を旋回させ、旋回後は、同様にして復行程の苗移植作業を行なう。
【００５２】
そして、苗置き台３４上のトマトの鉢苗Ｎが残り少なくなった時には、作業者は左右予備苗載台７６の予備苗載部７８に載置したトレーを取出して、該トレー内のトマトの鉢苗Ｎを苗置き台３４上に載置して、苗移植作業を続行する。
【００５３】
図６は第２実施例を示す苗移植機の要部の側面図であり、第１実施例の左右シューター３２を苗置き台３４に固定し、左右シューター３２の下部に左右シューター３２内に供給された苗Ｎを各々受止める左右シャッター８０を設けている。該シャッター８０はシューター３２の側面に設けた回動支軸８１にて回動自在に枢支された揺動アーム８２の下端に固着されていると共に、該揺動アーム８２に基部を固着した作動アーム８３の先端部に従動ローラ８４を設け、該従動ローラ８４を作動カム８５に接当させて、左右シューター３２は各々左右苗植付け具４が軌跡Ｔの最上昇位置に来る時に開いて左右シューター３２内に供給された苗Ｎを各々左右苗植付け具４内に自動供給する構成になっている。尚、８６は左右引張バネであって、各々左右シャッター８０を開く方向（従動ローラ８４を作動カム８５に接当させる方向）に付勢している。
【００５４】
従って、図６の実施例に示す構成であると、作業者は、左右苗植付け具４の位置を特に気にすることなく、左右シューター３２内に苗がなくなれば、苗置き台３４上に載置されたトマトの鉢苗Ｎを取って、左右シューター３２に苗Ｎの根鉢部Ｎ’が下になる状態で１つ供給すると、苗Ｎの根鉢部Ｎ’は左右シャッター８０に受止められて左右シューター３２内に貯留され、各々左右苗植付け具４が軌跡Ｔの最上昇位置に来る時に左右シャッター８０が開いて左右シューター３２内に供給された苗Ｎを各々左右苗植付け具４内に自動供給する。そして、苗Ｎの根鉢部Ｎ’は、苗植付け具４の左側部４Ｌと右側部４Ｒの内部に形成される苗収容部Ｚに適切に案内されて保持される。そして、左右苗植付け具４が軌跡Ｔを下降して左右苗植付け具４の下端が圃場に突入して、各々の左側部４Ｌと右側部４Ｒが左右方向に開動作すると、苗Ｎは良好に適切な深さで圃場に植付けられる。このようにして、作業者は、左右苗植付け具４の位置を特に気にすることなく、順次、苗置き台３４上に載置されたトマトの鉢苗Ｎを一つずつ左右シューター３２に入れることにより、左右苗植付け具４は交互に圃場にトマトの鉢苗Ｎを植付けて、結果、圃場にトマトの鉢苗Ｎを千鳥状に２条植付けることができて、作業性が良くなる。
【００５５】
また、左右シューター３２の上部を支点にして下部が左右方向に位置調節できる構成にすると、左右苗植付け具４を左右移動調節して条間変更をした場合に、容易に対応できて作業性が良い。
【００５６】
図７は第３実施例を示す苗移植機の要部の側面図であり、第１実施例の左右シューター３２に変えて左右ベルト式苗案内送り装置９０を設けたものである。
左右ベルト式苗案内送り装置９０に関連する構成は、左ベルト式苗案内送り装置９０と右ベルト式苗案内送り装置９０で同様であるので、代表で左ベルト式苗案内送り装置９０の構成を説明する。
【００５７】
ベルト式苗案内送り装置９０は、苗置き台３４の底面に回転自在に設けたベルト巻取りローラ９１と、該ベルト巻取りローラ９１に巻き付けられてその先端部９２ａが苗植付け具４の苗ガイド３１上部の内部の苗案内面に固着された弾性を有する合成ゴム製の平ベルト９２と、該平ベルト９２を苗置き台３４の苗置き底面３４ａと同一平面で平面状に姿勢を維持する平面案内板９３と、該平面案内板９３にて平面状に案内されている平ベルト９２上に載置された苗Ｎが平ベルト９２のベルト巻取りローラ９１よる巻き戻し作用にて矢印イ方向に移動するのを規制するストッパー板９４と、平ベルト９２の矢印ロ方向への移動にて平ベルト９２上に載置された苗Ｎが苗ガイド３１内部に供給される時に苗Ｎを案内してその姿勢を適正に保つ案内板９５にて構成されている。尚、ベルト巻取りローラ９１は、平ベルト９２を矢印イ方向に巻き取る方向に回動すべく、巻きバネにて付勢されている。
【００５８】
また、苗ガイド３１は、実施例１とは異なり、筒状に構成されている。また、苗ガイド３１の後部下端部には、苗ガイド３１から左側部４Ｌ・右側部４Ｒ間の苗収容部Ｚに苗Ｎが案内移動する時に、苗Ｎが外側に飛び出さないように苗案内用の合成ゴム製のゴム平板９６の上部が固着されている。
【００５９】
従って、作業者が苗置き台３４上に載置されたトマトの鉢苗Ｎを取って、平面案内板９３にて平面状に案内されている平ベルト９２上に載置すると、苗植付け具４が圃場に苗を植付けて上昇して軌跡Ｔの最上昇位置にくるまでは、平ベルト９２がベルト巻取りローラ９１よる巻き戻し作用にて矢印イ方向に移動するので、ストッパー板９４に止められた状態で苗Ｎは平ベルト９２上にあり、苗植付け具４が最上昇位置から軌跡Ｔを下降すると、平ベルト９２がベルト巻取りローラ９１から繰出されて矢印ロ方向へ移動して、平ベルト９２上に載置された苗Ｎが案内板９５に姿勢が乱れないように案内されて苗ガイド３１内部に供給される。そして、苗Ｎは、苗ガイド３１内部を通過して、外側に飛び出さないようにゴム平板９６に案内されて、左側部４Ｌと右側部４Ｒの内部に形成される苗収容部Ｚに適切に案内され保持される。そして、苗植付け具４が軌跡Ｔを下降して苗植付け具４の下端が圃場に突入して、左側部４Ｌと右側部４Ｒが左右方向に開動作すると、苗Ｎは良好に適切な深さで圃場に植付けられる。
【００６０】
尚、本形態では苗植付け具４が左右に開いて苗Ｎを植え付ける構成について説明したが、前後に開いて苗Ｎを植え付ける苗植付け具を採用してもよい。
【符号の説明】
【００６１】
１ 走行装置
４ 苗植付け具
６ 駆動輪（後輪）
３１ 苗ガイド
３２ シューター
３４ 苗置き台
３４ａ 苗置き底面
７０ 座席
８０ シャッター
Ｎ 苗（鉢苗）
【特許請求の範囲】
【請求項１】
駆動輪（６）を装備した走行装置（１）に昇降作動して圃場に苗（Ｎ）を植付ける苗植付け具（４）を設けた苗移植機において、該苗植付け具（４）の上方に苗置き台（３４）を設け、該苗置き台（３４）と苗植付け具（４）の間に苗（Ｎ）を案内供給するシューター（３２）を設けたことを特徴とする苗移植機。
【請求項２】
シューター（３２）の周辺で苗植付け具（４）の上方を覆う位置に苗置き台（３４）を設けると共に、シューター（３２）の上部を苗置き台（３４）の苗置き底面（３４ａ）よりも上方に突出して設けたことを特徴とする請求項１記載の苗移植機。
【請求項３】
苗植付け具（４）に苗（Ｎ）を案内する苗ガイド（３１）を設け、苗植付け具（４）が昇降作動しても常に苗ガイド（３１）がシューター（３２）と連通する状態となる構成としたことを特徴とする請求項１又は請求項２記載の苗移植機。
【請求項４】
シューター（３２）の下端に苗（Ｎ）を受止めるシャッター（８０）を設け、該シャッター（８０）を苗植付け具（４）が最上昇位置若しくは最上昇位置付近にある時に開動作する構成としたことを特徴とする請求項１から請求項３の何れか１項に記載の苗移植機。
【請求項５】
シューター（３２）に対向して作業者が着座できる座席（７０）を走行装置（１）に設けたことを特徴とする請求項１から請求項４の何れか１項に記載の苗移植機。
【請求項１】
駆動輪（６）を装備した走行装置（１）に昇降作動して圃場に苗（Ｎ）を植付ける苗植付け具（４）を設けた苗移植機において、該苗植付け具（４）の上方に苗置き台（３４）を設け、該苗置き台（３４）と苗植付け具（４）の間に苗（Ｎ）を案内供給するシューター（３２）を設けたことを特徴とする苗移植機。
【請求項２】
シューター（３２）の周辺で苗植付け具（４）の上方を覆う位置に苗置き台（３４）を設けると共に、シューター（３２）の上部を苗置き台（３４）の苗置き底面（３４ａ）よりも上方に突出して設けたことを特徴とする請求項１記載の苗移植機。
【請求項３】
苗植付け具（４）に苗（Ｎ）を案内する苗ガイド（３１）を設け、苗植付け具（４）が昇降作動しても常に苗ガイド（３１）がシューター（３２）と連通する状態となる構成としたことを特徴とする請求項１又は請求項２記載の苗移植機。
【請求項４】
シューター（３２）の下端に苗（Ｎ）を受止めるシャッター（８０）を設け、該シャッター（８０）を苗植付け具（４）が最上昇位置若しくは最上昇位置付近にある時に開動作する構成としたことを特徴とする請求項１から請求項３の何れか１項に記載の苗移植機。
【請求項５】
シューター（３２）に対向して作業者が着座できる座席（７０）を走行装置（１）に設けたことを特徴とする請求項１から請求項４の何れか１項に記載の苗移植機。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【公開番号】特開２０１１−１４７４１７（Ｐ２０１１−１４７４１７Ａ）
【公開日】平成２３年８月４日（２０１１．８．４）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２０１０−１３３２４（Ｐ２０１０−１３３２４）
【出願日】平成２２年１月２５日（２０１０．１．２５）
【出願人】（００００００１２５）井関農機株式会社 (3,813)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２３年８月４日（２０１１．８．４）
【国際特許分類】
【出願日】平成２２年１月２５日（２０１０．１．２５）
【出願人】（００００００１２５）井関農機株式会社 (3,813)
【Ｆターム（参考）】
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