説明

苗箱敷設装置

【課題】箱並べ機により床土の上に並べた苗箱を踏み付けて、床土に対し確実に密着させること。
【解決手段】箱並べ機の横長の機体に沿って、苗箱を積んだ箱ホッパーをハウスの横方向に間欠的に移動し、苗箱を1枚づつ床土の上に下ろして横に並べる。横一列を並べ終えたら機体をハウス中央の縦方向のレールに沿って苗箱1枚の距離だけ前進し、次の横一列を並べる。 この箱並べ機の後方に、回転軸がハウスの横方向に平行な鎮圧ロールを前記苗箱の横一列の長さに亘り設けた箱踏み機を連結して、箱並べ機が並べた苗箱を横一列全部同時に鎮圧ロールで踏み付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
田植え機用の苗を育成するのに、多数の苗箱に播種してこれらをハウス内の整地した床土の上に整然と並べ、温度や潅水を集中的に管理することが行われている。
このとき苗箱を並べるのに使用するのが、箱並べ機である。箱並べ機にもいろいろあるが、代表的なものはハウスの横幅(間口)とほぼ同じ長さを有し、その中央に備える車輪をハウスの中央に縦方向(奥行き方向)に長く敷いた2本のレールに沿って移動する構造になっている。この箱並べ機の上に苗箱を積んだ箱ホッパーを横方向に移動可能に搭載し、箱ホッパーを箱並べ機の長さ方向すなわちハウスの横幅に沿って移動しながら、苗箱を床土の上に順次降ろして並べる。ハウスの横幅いっぱいに苗箱を横一列並べ終えたら、箱並べ機を前進し、次の一列に苗箱を並べていく。この作業を繰り返して多数の苗箱を縦と横に揃えてハウスの敷地全面に整然と並べる。
本発明は、このような箱並べ機の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
箱並べ機を使って苗箱を並べる際、重要なのは苗箱と床土の密着である。
苗箱は床土の上に単に置いただけでは、床土との接触が不充分で、根が床土に伸びきれない。このため苗箱を床土に置いた後、苗箱を踏むなど荷重をかけて苗箱の底面と床土の間に隙間が出来ないように密着させる。
このように並べ終えた苗箱を床土に押し付ける作業を箱踏みと称するが、ポット式の苗箱ではこの箱踏みが特に重要である。ポット式の苗箱は、内部が多数のポットに区画され、各ポットは互いに独立しているため、ひとつでもポットが床土から浮いていると、そのポットの苗は育たない、という性質がある。実際の床土は、表面が完全に平坦ではなく多少の凹凸があるため、苗箱を単に置いただけでは、床土の凹みに位置したポットは底面が浮きやすい。これを避けるためポット式の苗箱では箱踏みを必ず行う。換言すると箱踏みをしないと、苗箱の敷設は完了したことにならない。
箱踏みの最も簡単な方法は、苗箱の上に幅の広い平板(踏み板)を渡し、その上を作業者が踏むというやり方である。この方法は経済的であるが、踏み終えるたびに踏み板を次の苗箱の上に移動しなければならないという不便がある。苗箱を設置するハウスが広いと、踏み板の移動も重労働で能率も上がらない。しかも毎回同じ荷重で踏み付けるのは難しいから、荷重の過不足が避けられない。踏みすぎて苗箱を破損したり、踏み足りなくて密着不足になったりする。
【0003】
箱踏みと共に重要なのは、箱並べ機の左右のバランス確保である。箱並べ機は横に長いため、ハウス内の中央に敷設した幅の狭いレールだけでは、バランスの確保が極めて難しい。箱ホッパーが横に移動すると、重心が機体中央から外れて、簡単にバランスを崩してしまう。箱並べ機が大型化し横方向の長さが長大化すると、箱ホッパーの移動距離が延びるため、バランスを失い易い傾向はさらに強まる。
バランス確保の簡単な解決法は、箱並べ機の左右の端に車輪を設け、これをハウスの左右の壁際に沿って敷いた補助レールに沿って移動させる方法である。この方法によれば、箱ホッパーがどこに位置してもバランスが保てる。
しかしこれにも問題がある。補助レールの敷設工事だけ経費が余分に嵩むことと、この余分なレールのために苗箱を置くスペースが犠牲となることである。
【0004】
これらの問題の解消を意図とした発明は、既に提案されている。
そのうちのある例は、苗並べ機の後部に踏み板を吊持ちにした構造で、苗箱を横一列並べ終えたら、その上に踏み板を降ろして作業者が踏み板に乗って苗箱を踏み付けるのである(特許文献1)
この場合、踏み板は苗並べ機に吊持ちに取付けられ、苗並び機と共に一緒に移動するから、踏み板を持ち運ぶ労力が省略でき便利はいい。しかし作業者が踏み付けるという点では変わりないから、苗箱を押す力に過不足を生じやすいという問題は依然と解消しない。
またバランス確保を意図した例としては、苗並べ機の端に昇降自在のスタンド板を設け、苗箱を並べている最中は地面に降ろして機体を支持し、移動するときは上にはね上げる構造である(特許文献2)。
これの欠点は、スタンド板を上げるときに土を周囲に飛散し、苗箱の上に落としてしまうことである。スタンド板を地面に下ろすと、機体の重さでスタンド板が膨軟な床土の中に容易に沈んで、スタンド板の上に土が乗ることがあるが、この土がスタンド板を上げるときに周囲に飛散する。飛散した土が床土に置いた苗箱の上に落ちると、苗の生育に良くない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許2733834号公報
【特許文献2】特許2732234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように従来は、多数の苗箱を人力によらずに一度に確実に踏み付けるものはなかったし、箱並べ機のバランスを適正に維持するものも存在しなかった。
そこで本発明が解決しようとする課題は、どのようにしたら多数の苗箱を簡単確実に踏み付けられるかということと、箱並べ機の姿勢をどのようしたら土を撥ねずに安定して支持できるか、ということにある。
これらの課題の解決は、ハウスが大型化し、並べる苗箱の数が増大するに従い、益々強く求められている。本発明はそうした要請に応え、懸案の課題を解決するものである。
【0007】
本発明の第1の目的は、箱並べ機で並べた苗箱を人力によらす機械的に確実に踏み付けて床土との間に隙間のないように押し付けることである。
第2の目的は、補助レールのような余分なレールを敷設しないで箱並べ機の左右のバランスを維持することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、苗箱を積んだ箱ホッパーを横長の機体に沿ってハウスの横方向に間欠的に移動し、苗箱を1枚づつ床土の上に下ろして横に並べ、横一列を並べ終えたら機体をハウス中央の縦方向のレールに沿って苗箱1枚の距離だけ前進し、次の横一列を並べるようにして成る箱並べ機と、回転軸がハウスの横方向に平行な鎮圧ロールを前記苗箱の横一列の長さに亘り設けると共に前記鎮圧ロールの動力源を搭載して成る箱踏み機と、より構成し、前記箱並べ機の後方に前記箱踏み機を連結して、床土の上の苗箱を鎮圧ロールで踏み付けることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1の発明において、鎮圧ロールに動力源を接続し、その動力で鎮圧ロールを回転して前進することを特徴とする。
【0010】
請求項23に係る発明は、請求項12の発明において、箱並べ機と箱踏み機を上下方向のZ軸を介して連結し、このZ軸を中心に、箱踏み機を箱並べ機に対し旋回可能にすることを特徴とする。
【0011】
請求項34に係る発明は、請求項12の発明において、箱並べ機と箱踏み機を左右方向のX軸、前後方向のY軸及び上下方向のZ軸を介して連結し、これら3軸を中心に箱踏み機を箱並べ機に対し揺動可能にすることを特徴とする。
【0012】
請求項45に係る発明は、請求項1の発明において、箱踏み機に重量物を載せ、鎮圧ロールに荷重をかけることを特徴とする。
【0013】
請求項56に係る発明は、請求項1の発明において、2本以上の鎮圧ロールを前後に平行に並べることを特徴とする。
【0014】
請求項67に係る発明は、請求項56の発明において、最前列の鎮圧ロールの回転軸を他の鎮圧ロールのそれより高い位置に設けることを特徴とする。
【0015】
請求項78に係る発明は、請求項23又は34の発明において、箱踏み機の左右両端より前方に向け箱並べ機支持体受けレールを張り出し、これら左右の箱並べ機支持体受けレールによりの上に、箱並べ機の左右両端に備える支持輪を摺動転動自在に支持し載せて成ることを特徴とする。
【0016】
請求項89に係る発明は、請求項23又は4の発明において、鎮圧ロールを箱踏み機の左右に独立して設け、それぞれを動力源に接続し、箱並べ機に対する箱踏み機のZ軸廻りの旋回角度を検出する角度センサーにより、旋回角度が限界値を超えたときに、前記動力源を操作して進み過ぎた限界値を超えた側の鎮圧ロールの回転を止めることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明によれば、箱並べ機の後方に箱踏み機を連結し、また、鎮圧ロールが苗箱の横一列の長さに亘り設けてあるので、箱並べ機によりを前進するとこれに箱踏み機が追随し、並べ終えたばかりの苗箱を、箱踏み機が横一列全部同時に踏み付けることができ、能率がすこぶる良い。
【0018】
また請求項2の発明によれば、鎮圧ロール自身が回転するから、箱踏み機の機体重量が重くても、鎮圧ロールはスリップしないで確実に移動し箱並べ機を推進できる。
【0019】
請求項23の発明によれば、箱踏み機はZ軸を中心に自由に旋回(ヨーイング)可能だから、鎮圧ロールが箱踏み機の右と左で回転がずれて進む距離に差が生じても、支障なく箱並べ機を押したり引いたりできる。
【0020】
請求項34の発明によれば、箱踏み機はX、Y及びZの3軸を中心に揺動可能で、ピッチング、ローリング及びヨーイングが自由なため、箱並べ機との位置関係に、制約を受けない。従って箱並べ機を円滑に推進できる。
【0021】
請求項45の発明によれば、重量物により鎮圧ロールの箱踏み力が増強され、苗箱を確実に押し付けることができる。鎮圧ロールが一度に踏む苗箱の枚数が多い場合、特に効果が大きい。
【0022】
請求項56の発明によれば、1枚の苗箱を2ヶ所以上で踏みつけるため、荷重が分散し苗箱の損傷がない。
【0023】
請求項67の発明によれば、前後に並んだ苗箱の高さが違って、苗箱の間に段差があっても、最前列の鎮圧ロールの位置が高いため、支障なく段差を乗り越えることができる。
【0024】
請求項78の発明によれば、箱並べ機の左右両端が箱並べ機支持体を介して箱踏み機の受けレールにより移動可能に支持されるので、箱踏み機と箱並べ機の相対位置が変化しても、箱並べ機のバランスが確実に維持できる。
【0025】
請求項89の発明によれば、箱踏み機の右と左で鎮圧ロールの進む距離に差を生じ、箱並べ機に対して箱踏み機が過剰に旋回した場合、角度センサーがこれを検出して進みすぎた側の鎮圧ロールの回転を止めるので、過剰な旋回を自動的に修正できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】苗箱を敷き詰めた状態を示すハウスの斜視図
【図2】図1の正面図
【図3】本発明を実施した苗箱敷設装置の概念図
【図4】図3の箱踏み機の正面図
【図5】図3の箱踏み機の平面図
【図6】図3の箱踏み機の動力伝動系側面図
【図7】図3の箱踏み機の動作フロー図
【図8】本発明を実施した苗箱敷設装置の詳細な平面図で左半分を省略して示す。
【図9】図8の右側面図
【図10】図8の正面図で箱ホッパーが右に移動した状態を示す。
【図11】図8の箱ホッパーが停止し苗箱を降ろす前の状態を示す。
【図12】図8の箱ホッパーが苗箱を降ろす状態を示す。
【図13】図8の箱ホッパーの動作フロー図
【図14】本発明の別の実施例における箱踏み機の側面図
【図15】本発明の箱並べ機の支持構造に関する別の例の側面図
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施の形態を図面に示す。
図1、2において、1は光透過性のシートで覆ったハウスで、内部の中央にハウスの奥行き方向(縦方向)に沿う縦レール2が2本平行に設けてある。3は苗箱で、図1、2は全部の敷設が終った状態を示す。
実施の形態の苗箱3はポット式で、薄い1枚のプラスチック板を成形して多数のポット(窪み)を縦横に連続して並べた構造になっている。ポットの底には孔が明いている。各ポットには培土を入れ種籾を撒いておく。使用する苗箱はポット式に限らない。平底に多数の孔を明けたマット苗用の苗箱でもよい。
【0028】
図3は本発明装置の平面図を簡略化した概念図である。
Aは箱並べ機で、Bは箱踏み機を示す。両者は左右方向のX軸、前後方向のY軸及び上下方向のZ軸を中心に揺動可能に連結している。
4は箱並べ機Aの台車で、車輪5を有し、縦レール2に沿い、すなわちハウス1の奥行き方向(縦方向)に沿い、移動する。6は箱踏み機Bの連結器で、箱踏み機Bの左半分と右半分にそれぞれ備える連結アーム7,7の中央とX軸を介して連結する。連結アーム7,7は箱踏み機Bに対しY軸を介して連結する。連結器6は、台車4に対しZ軸を介して連結する。
【0029】
箱並べ機Aには後述の箱ホッパーが装備されていて、箱並べ機Aの上を縦レール2に直交する方向すなわちハウス1の間口方向(横方向)に移動しながら、苗箱3を1枚ずつ床土の上に降ろして隙間無く並べる。横一列並べ終わったら苗箱1枚分だけハウス1の縦方向に前進し、次の横一列を並べ、これを繰り返す。
【0030】
箱踏み機Bの底面には図4、5に示す鎮圧ロール8が設けられている。鎮圧ロール8の長さは苗箱3の横一列の長さに等しい。図4、5の鎮圧ロール8は機体の左右に3本ずつだが、本数は3本に限らない。これら鎮圧ロール8が、床土の上に並んだ苗箱3の上を転がりながら、横一列同時に踏み付ける。このため箱踏み機Bが苗箱の上を通過するだけで箱踏み作業ができる。
【0031】
箱並べ機A及び箱踏み機Bは一緒になって前進するが、その推進力は箱並べ機Aまたは箱踏み機Bのいずれかに搭載する動力源による。動力源を箱並べ機A側に搭載する場合は車輪5を駆動するが、そして好ましくは箱踏み機B側に搭載し、左右の鎮圧ロール8を独立して駆動する。
図面の例では、バッテリー駆動のモータMR,MLを左右に1台ずつ搭載して、それぞれを左右の鎮圧ロール8に接続する。鎮圧ロール8は重量があり接地面積も広いから、それ自身を直接駆動すれば、スリップしにくく確実に装置を推進できる。図6の符号9はモータMR(ML)と鎮圧ロール8を連結する伝動チェーンである。
【0032】
鎮圧ロール8は長いため、左右の鎮圧ロール8を独立して駆動すると、箱踏み機Bの右半分と左半分とで移動距離に差を生じることがあるが、その場合、箱踏み機BはZ軸を中心に旋回(ヨーイング)するので、前進(後退を含む)動作に支障は無い。もしヨーイングできないと、箱並べ機Aと箱踏み機Bの連結部に捩れるような無理な応力が加わって故障の原因になったり、あるいは左右いずれかの鎮圧ロール8が空転ないし引きずられて苗箱損傷のおそれを生じたりするが、ヨーイングすればそのような不都合を回避できる。
【0033】
図3のS1R、S2R及びS1L、S2Lは、箱踏み機Bの左右両端部に、前後に並べて固定した2組のリミットスイッチで、各組の前後に並ぶリミットスイッチの間に、箱並べ機A側に固定した作動片10R及び10Lをそれぞれ位置させる。
箱踏み機Bが過剰にヨーイングすると、作動片10R又は10Lがこれらのリミットスイッチに接触し、モータMRまたはMLがオフになって、左又は右の進みすぎた側の鎮圧ロール8が停止する。これにより箱踏み機Bの姿勢が修正される。その結果、箱並べ機Aに対し平行な位置に戻ると、それまで停止していた鎮圧ロールが再び回転する。
なおリミットスイッチは、左右いずれか一方の組(例えばS1L、S2L)を省略できる。
【0034】
図7に、これらリミットスイッチとモータの動作フローを示す。
主スイッチを押し続けると(ステップS1)、左右のモータMR及びMLが回転して鎮圧ロール8が駆動し、箱踏み機Bが箱並べ機Aを押して前進する(ステップS2)。
その後、箱踏み機Bの右側が左側より進みすぎて、全体がZ軸を中心に図3で反時計方向にヨーイングすると、作動片10R又は10LがリミットスイッチS1RまたはS2Lに接触してオンになる(ステップS3)。これにより、右側のモータMLが停止し、左側のモータMRだけが回転する(ステップS4)。
その結果、箱踏み機Bが平行に戻ると、作動片10R又は10LがリミットスイッチS1RまたはS2Lから離れてスイッチがオフになり(ステップS5)、停まっていたモータMLが再開し、左右の鎮圧ロールの回転で箱踏み機Bが前進する(ステップ6)。
逆に、箱踏み機Bの左側が右側より進みすぎて、全体がZ軸を中心に図3で時計方向にヨーイングすると、作動片10R又は10LがリミットスイッチS2RまたはS1Lに接触してオンになる(ステップS7)。これにより、左側のモータMLが停止し、右側のモータMRだけが回転する(ステップS8)。
その結果、箱踏み機Bが平行に戻ると、作動片10R又は10LがリミットスイッチS2RまたはS1Lから離れてスイッチがオフになり(ステップS9)、停まっていたモータMRが再開し、左右の鎮圧ロールの回転で箱踏み機Bが前進する(ステップ10)。
このようにして苗箱1枚分の長さを前進したことを目視で確認したら(ステップ11)、主スイッチから手を離す(ステップ12)。
主スイッチから手を離すと左右のモータMR及びMLがオフになり、箱踏み機B及び箱並べ機Aが停止する(ステップ13)。
【0035】
このステップ1〜13の動作を繰り返して、苗箱をハウスの全面に敷設し終えたら、モータMR及びMLを逆転し、箱並べ機A及び箱踏み機Bを反対方向に後進させ出発地点に戻す。
このように前進又は後進の過程で、箱踏み機Bは、ヨーイングのほか、X軸を中心に前傾又は後傾(ピッチング)したり、Y軸を中心に左又は右に傾斜(ローリング)したり、箱並べ機Aに対し自由に動くことができるため、箱並べ機Aと箱踏み機Bの連結箇所に無理な応力がかからない。
【実施例1】
【0036】
図8〜12は本発明の詳細な実施例で、図3〜6と共通の部位には同じ符号を付す。
図8は装置の左半分を省略した平面図で、11は箱踏み機Bのフレームに載せた錘用の金属板である。金属板11の重量は1枚25kgで、これを片側に4枚並べ、左右合計で200kgの荷重を鎮圧ロール8に加え、踏み付け力を増強する。
横一列に並べる苗箱3の枚数は16枚で、図8では右側の8枚だけを示す。12はモータMR用のバッテリで、左側にも同様にモータML用のバッテリがある。
13は主スイッチなどを配備した操作盤で、作業者は踏み板14の上に立って操作盤13を操作する。
【0037】
連結器6は台座部分6aと枠体部分6bから成り立っている。
台座部分6aは、箱並べ機Aの台車4に起立する上下方向のZ軸を中心に、旋回自在に取り付けられていて、台座部分6aの前後に形成した嵌合溝に、方形に組んだ枠体部分6bが嵌め込んだ状態で台座部分6aと連結している。
そして門形の連結アーム7の中央を、連結器6の枠体部分6bに対し左右方向のX軸を介して連結すると共に、連結アーム7の両端を、箱踏み機Bのフレームに対し前後方向のY軸を介して連結する。15は縦レール2、2をつなぐ枕木である。
【0038】
箱踏み機Bの左右の端には、図8、9に示すように、受けレール16が前方に向け水平に取り付けてあり、この上に箱並べ機Aの左右の底部に備える支持輪17,17が移動可能に乗っかって、箱並べ機Aの左右両端を支持している。このため箱並べ機Aは、重心が中心から外れても、傾かずに水平姿勢を維持する。
箱踏み機Bは重量が充分あるから、受けレール16に箱並べ機Aの荷重が乗っても支持できる。
また支持輪17は自由に受けレール16の上を動くから、箱踏み機Bがヨーイングしても箱並べ機Aを安定して支持できる。
【0039】
Hは公知の箱ホッパーで、その左右に2基の昇降枠18、18を有する。苗箱3はこの昇降枠18の枠内に積み重ねて収容する。19は昇降枠18を上昇または下降する昇降モータである。S3は昇降モータの上昇、下降又は停止を切り替えるリミットスイッチで、検知ロッド20により作動する。
各昇降枠18の底部には、2本の繰り出しロール21を左右平行に架設し、繰り出しロール21の間で苗箱3を支持する。22mは繰り出しモータで、繰り出しロール21を、図12の矢印のように、内側に回転して、積み重なった苗箱3を下から順に1枚ずつ繰り出す。
左右の昇降枠18は苗箱1枚分離れて設けら、繰り出された2枚の苗箱は離れた位置に並ぶ。
なお箱ホッパーHは昇降枠が2基でなく1基のものでもよい。
【0040】
22は箱並べ機Aに横方向に設けた前後に平行な横レールで、この上を箱ホッパーHの四隅の車輪23が転動するようにし、箱ホッパーHに搭載した横移動モータ24により車輪23を正転したり逆転したりして、箱ホッパーHを横方向に移動する。
S4は箱ホッパーHに取り付けたリミットスイッチで、横レール22の側面に固定した突起25に接触すると横移動モータ24を停止し、箱ホッパーHを定位置で止める。
【0041】
図13に、箱並べ機Aに関連するリミットスイッチとモータ類の動作フローを示す。
主スイッチをオンにすると(ステップ21)、横移動モータ24により箱ホッパーHは右移動する(ステップ22)。その結果、リミットスイッチS4が突起25に接触してオンになると(ステップ23)、横移動モータ24が停止する(ステップ24)。
次に昇降モータ19が正転して昇降枠18を下降し(ステップ25)、その結果、検知ロッド20の下端が後列の苗箱3に接して旋回し、反対側の上端がリミットスイッチS3を押すと、昇降枠18が停止し、繰り出しモータ22mにより繰り出しロール21が回って苗箱3を2枚繰り出す。繰り出しが終ると、それを検出する繰り出しリミットスイッチ(図示しない)がオンになり(ステップ28)、22が停止する(ステップ29)。
そして昇降モータ19が回転して昇降枠18が上限に到達すると(ステップ30,31)、上限検出用のリミットスイッチ(図示しない)が働いて昇降モータ19が停止する(ステップ32)。
次に横移動モータ24が回転し箱ホッパーHを再び右移動し(ステップ33)、前記と同様にリミットスイッチS4により移動と停止を4回繰り返すと(ステップ34)、横移動モータ24を逆転して左移動する(ステップ35)。
そして箱並べ機Aの中央を越えて左側において、今までの右側と同じ動作をし(ステップ36)、移動と停止を4回繰り返して苗箱を横1列並び終えたら(ステップ37)、横移動モータ24を右移動し(ステップ38)、リミットスイッチS4により箱並べ機Aの中央で箱ホッパーHを停止する(ステップ39,40)。
【実施例2】
【0042】
図14の実施例2では、4本の鎮圧ロールのうち、最前の1本8aが他よりも軸位置が高いので、浮いた苗箱の上にも乗り上げることができる。矢印は箱踏み機Bの前進方向および鎮圧ロールの回転方向を示す。
ポット式の苗箱は通常高さが25ミリあり、踏み付けると約20ミリ床土の中に押し込まれるため、踏み付ける前の苗箱と踏み付けた後の苗箱には20ミリほどの段差を生じる。この段差の分だけ最前の鎮圧ロールの軸位置が高ければ、踏み付ける前の浮いた苗箱を前に押して引きずることもなく都合がよい。
なお最前の鎮圧ロールを他よりも細くすれば、軸位置の高さは同じでも、同し効果が得られる。
【0043】
図15の実施例3は、箱並べ機Aの左右両端の支持構造に関する別の例を示す。
図15では、図8、9の例と違って、支持輪17,17が箱踏み機B側に設けてある。この支持輪17、17が箱並べ機Aの底面に当って箱並べ機Aを支持する。26は支持輪を取り付ける受けアームである。この受けアーム26と図8、9の受けレール16が、請求項7の発明の箱並べ機支持体に相当する。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の苗箱敷設装置は、ハウスに限らず広い圃場に、動力を利用して多数の苗箱を効率的に並べ、その後を人力によらずに均一の力で機械的に踏み付けるので、田植え機用の苗作りに最適である。
苗の種類は稲が代表的であるが、麦など他の作物にも利用できる。
【符号の説明】
【0045】
Aは箱並べ機、Bは箱踏み機、Hは箱ホッパー、Xは左右方向の軸、Yは前後方向の軸、Zは上下方向の軸、
1はハウス、2は縦レール、3は苗箱、4は台車、5は車輪、6は連結器、7は連結アーム、8は鎮圧ロール、MR及びMLはモータ、9は伝動チェーン、S1R、S2R及びS1L、S2Lはリミットスイッチ、10R及び10Lは作動片、11は錘用の金属板、12はバッテリ、13は操作盤、14は踏み板、16は受けレール、17は支持輪、18は昇降枠、S3及びS4はリミットスイッチ、20は検知ロッド、21は繰り出しロール、22mは繰り出しモータ、22は横レール、23は車輪、24は横移動モータ、25は突起、26は受けアーム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
苗箱を積んだ箱ホッパーを横長の機体に沿ってハウスの横方向に間欠的に移動し、苗箱を1枚づつ床土の上に下ろして横に並べ、横一列を並べ終えたら機体をハウス中央の縦方向のレールに沿って苗箱1枚の距離だけ前進し、次の横一列を並べるようにして成る箱並べ機と、
回転軸がハウスの横方向に平行な鎮圧ロールを前記苗箱の横一列の長さに亘り設けると共に前記鎮圧ロールの動力源を搭載して成る箱踏み機と、
より構成し、
前記箱並べ機の後方に前記箱踏み機を連結して、並べた苗箱を鎮圧ロールで踏み付けることを特徴とする苗箱設置装置。
【請求項2】
前記鎮圧ロールに動力源を接続し、その動力で鎮圧ロールを回転して前進することを特徴とする請求項1記載の苗箱設置装置。
【請求項3】
前記箱並べ機と前記箱踏み機を上下方向のZ軸を介して連結し、このZ軸を中心に、箱踏み機を箱並べ機に対し旋回可能にしてなる請求項12記載の苗箱設置装置。
【請求項4】
前記箱並べ機と前記箱踏み機を左右方向のX軸、前後方向のY軸及び上下方向のZ軸を介して連結し、これら3軸を中心に箱踏み機を箱並べ機に対し揺動可能にしてなる請求項12記載の苗箱設置装置。
【請求項5】
前記箱踏み機に重量物を載せ、鎮圧ロールに荷重をかけることを特徴とする請求項1記載の苗箱設置装置。
【請求項6】
鎮圧ロールを前後に2本以上平行に並べて成る請求項1記載の苗箱設置装置。
【請求項7】
最前列の鎮圧ロールの回転軸を他の鎮圧ロールのそれより高い位置に設けて成る請求項56記載の苗箱設置装置。
【請求項8】
前記箱踏み機の左右両端より前方に向け箱並べ機支持体受けレールを張り出し、これら左右の箱並べ機支持体受けレールの上に、箱並べ機の左右両端をに備える支持輪を摺動転動自在に支持し載せて成る請求項2又は3記載の苗箱設置装置。
【請求項9】
前記鎮圧ロールを前記箱踏み機の左右に独立して設け、それぞれを動力源に接続し、前記箱並べ機に対する前記箱踏み機のZ軸廻りの旋回角度を検出する角度センサーにより、旋回角度が限界値を超えたとき、前記動力源を操作して進み過ぎた限界値を超えた側の鎮圧ロールの回転を止めることを特徴とする請求項23又は4記載の苗箱設置装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−279336(P2010−279336A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−137627(P2009−137627)
【出願日】平成21年6月8日(2009.6.8)
【出願人】(597007101)有限会社ピポリー技研製作所 (10)
【出願人】(591070990)本田農機工業株式会社 (7)
【Fターム(参考)】