説明

苗箱段積装置

【課題】 苗箱の段積時に苗箱内の種や土が飛び出すことを防止することができるようにする。
【解決手段】 本発明の苗箱段積装置1は、苗箱受入部12に連続して搬送されてくる苗箱11を苗箱積上部14により架台13に段積するものである。そして、苗箱受入部12には、該苗箱受入部12に入ってきた苗箱11を前記搬送の速度よりも早送りする苗箱早送部17と、所定位置Pまで苗箱11が早送りされたことを検知して苗箱積上部14を作動させるためのセンサ19とを備えている。苗箱早送部17は、前記早送りのための駆動力を、苗箱表面に接することによる表面摩擦力によって苗箱11に伝動するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続して搬送されてくる苗箱を架台に段積する苗箱段積装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の苗箱段積装置としては、特許文献1及び2記載のポット苗箱を段積するものを例示する。この種の苗箱段積装置は、まず、播種装置から連続して繰り出されてくるポット苗箱のうち、最先端のポット苗箱を早送りし、該最先端のポット苗箱を他のポット苗箱から離れさせることにより、該最先端のポット苗箱が他のポット苗箱から干渉されないようにしておく。次いで、該最先端のポット苗箱の段積動作を開始するように構成されている。
【0003】
この種のポット苗箱51は、図5(a)、(b)に示すように、ポット状苗室53が碁盤目状に配設され、その左右にこの苗箱51を1ピッチずつ送るための送り穴54を有する縁部55が形成されており、回転駆動されるスプロケット56の歯56aを該送り穴54に下から噛み合わせることにより、前記最先端のポット苗箱51を早送りするように構成されている。
【0004】
【特許文献1】特開平11−103681号公報
【特許文献2】特開平11−103682号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、スプロケット56の歯56aが各ポット苗箱51における最初の送り穴54に噛み合うときに噛み合い不良が発生してスプロケット56が空回りすることがあり、スプロケット56がポット苗箱51を突き上げてポット苗箱51に振動を与えるので、ポット苗箱51内の種や土が飛び出すという不具合がある。また、スプロケット56によりポット苗箱51を早送りする構成を採用していると、ポット苗箱51をストッパに当接させて停止位置を位置決めする構成を採用することが困難となる。これは、ポット苗箱51がストッパへ当接することにより停止されると、送り穴54に対しスプロケット56が空回りし、前記噛み合い不良と同様の不具合が発生するためである。このため、ポット苗箱51の位置が正確に決まらないため、段積時にポット苗箱51の前後が揃わないことがあるという課題もある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の苗箱段積装置は、
苗箱受入部に連続して搬送されてくる苗箱を苗箱積上部により架台に段積する苗箱段積装置であって、
前記苗箱受入部には、該苗箱受入部に入ってきた苗箱を前記搬送の速度よりも早送りする苗箱早送部と、所定位置又はその近傍に苗箱が早送りされたことを検知して前記苗箱積上部を作動させるためのセンサとを備え、
前記苗箱早送部は、前記早送りのための駆動力を、苗箱表面に接することによる表面摩擦力によって苗箱に伝動するように構成されている。
【0007】
前記苗箱表面としては、苗箱上面、苗箱下面、苗箱側面等を例示する。また、前記「苗箱表面に接することによる表面摩擦力」を生じさせる駆動手段としては、特に限定されないが、ベルト(Vベルト、平ベルト等)、ローラ、チェーン等を例示する。
【0008】
この構成によれば、苗箱の早送り時に、苗箱に上下振動を与えることがほとんどなく、苗箱内の種や土が飛び出すことを防止することができる。
【0009】
また、前記苗箱早送部により早送りされた苗箱を前記所定位置で停止させるストッパを備えた態様を例示する。
【0010】
この構成によれば、苗箱を前記所定位置で正確に停止させることができるので、苗箱の積み上げ時における前後の位置ずれを防止することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る苗箱段積装置によれば、苗箱の段積時に苗箱内の種や土が飛び出すことを防止することができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1〜図4は本発明を具体化した一実施形態の苗箱段積装置1を示している。この装置は、図1〜図3に示すように、主車輪3及び補助車輪4により走行自在に支持された機体2を備え、該機体2には、播種装置の移送台10から連続して搬送されてくる苗箱11を受け入れる苗箱受入部12と、該受け入れた苗箱11を架台13に段積する苗箱積上部14と、架台13の上に所定数の苗箱11が段積されると、該段積された状態の苗箱11を送り出す段積苗箱送出部15とが装備されている。なお、各図において、矢印Fは機体前側を指し示している。
【0013】
機体2には、主車輪3及び補助車輪4が、苗箱段積装置1の重心位置よりもそれぞれ機体2の前後方向に相対的にずらして設置されている。そして、主車輪3は補助車輪4よりも相対的に大径に形成されている。従来は、小径車輪が機体2の前後に各2つずつ付いていたが、機体重量が重いので足場の悪いハウス等の播種現場へ移動設置するのが困難であった。本機の車輪構成によれば、補助車輪を地面から浮かせて大径の主車輪3のみで走行させることにより、このような足場の悪い播種現場にも移動設置が容易にできる。
【0014】
苗箱受入部12には、該苗箱受入部12に入ってきた苗箱11を前記搬送の速度よりも早送りする苗箱早送部17と、苗箱早送部17により早送りされた苗箱11を所定位置Pで停止させるストッパ18と、所定位置Pの近傍まで苗箱11が早送りされたことを検知して苗箱積上部14を作動させるためのセンサ19とを備えている。
【0015】
苗箱早送部17は、左右両側にそれぞれ配設された前後一対のプーリ21,21と、該各一対のプーリ21,21にそれぞれ巻きかけられたVベルト22と、前後いずれかのプーリ21を駆動する駆動源としてのモータ(図示略)とを備えている。左右のVベルト22は、その周面22aが、苗箱表面としての苗箱下面11aの左右両側にそれぞれ当接するように張設されている。このVベルト22が苗箱下面11aに接することによる表面摩擦力によって、早送りのための駆動力を苗箱11に伝動するように構成されている。
【0016】
ストッパ18は、苗箱11の早送り方向の先端側を所定位置Pで衝止するようになっており、該先端側が当たる部位には、緩衝用材としてのゴム18aが配設されている。
【0017】
センサ19は、苗箱11の搬送路上において、センサ本体25に対して上下に回動可能に支持されたレバー26を備えており、該レバー26に苗箱11が乗り上げてレバー26が押し下げられることにより苗箱11が所定位置Pの近傍に苗箱11が早送りされたことを検知するようになっている。レバー26の基端側には、土や水等がセンサ本体25へ降りかかることを防止するためのカバー27が配設されている。
【0018】
苗箱積上部14は、センサ19が苗箱11を検知すると始動されるようになっており、苗箱11を移送台10の上方に上昇させてから架台13の上方に搬送し、該架台13に対して降下させるように構成されている。
【0019】
段積苗箱送出部15は、架台13に段積された状態の苗箱11を機体2の後方に送出するための、機体後方に延びる延長フレーム15aを備えている。延長フレーム15aは、その基端側が左右に延びる軸15bにより支持されており、先端が機体後方に延びた使用状態S1と、上方に回動されて機体内側に格納された格納状態S2との間で屈曲自在に支持されている。従来は、延長フレームが機体と一体構造であり機体が長く取り扱いが困難であった。本機の構成によれば、延長フレーム15aを格納状態S2にすることができるので、機体2がコンパクトになり、移動や格納が容易になる。
【0020】
次に、図4を参照しながら、この苗箱段積装置1の動作を説明する。図4(a)に示すように、苗箱11が播種装置の移送台10から連続して繰り出され、該苗箱11のうち、最先端の苗箱11が苗箱早送部17のVベルト22に乗り上げる。すると、回転駆動されているVベルト22により、最先端の苗箱11が早送りされ、図4(b)に示すように移送台10上の他の苗箱11から離れされる。そして、センサ19により、所定位置Pの近傍まで苗箱11が早送りされたことが検知されるとともに、苗箱11の先端側がストッパ18に当接し衝止される。センサ19により苗箱11が検知されると、苗箱積上部14が始動され、図4(c)に示すように、苗箱11の段積動作が開始されるようになっている。
【0021】
以上のように構成された本例の苗箱段積装置1によれば、苗箱早送部17は、前記早送りのための駆動力を、苗箱表面に接することによる表面摩擦力によって苗箱11に伝動するように構成されているので、苗箱11の早送り時に、苗箱11に上下振動を与えることがほとんどなく、苗箱11内の種や土が飛び出すことを防止することができる。
【0022】
また、苗箱早送部17により早送りされた苗箱11を所定位置Pで停止させるストッパ18を備えているので、苗箱11を所定位置Pで正確に停止させることができ、苗箱11の積み上げ時における前後の位置ずれを防止することができる。
【0023】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のように、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
(1)苗箱早送部17に、Vベルトに代えて、平ベルト、ローラ、チェーン等を採用すること。
(2)主車輪3と補助車輪4の前後の位置関係を反対にすること。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明を具体化した一実施形態に係る苗箱段積装置の側断面図である。
【図2】同苗箱段積装置の平断面図である。
【図3】同苗箱段積装置の正断面図である。
【図4】同苗箱段積装置の苗箱早送部の動作を示す側断面図である。
【図5】従来の苗箱段積装置における苗箱早送り手段を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 苗箱段積装置
2 機体
3 主車輪
4 補助車輪
10 移送台
11 苗箱
11a 苗箱下面
12 苗箱受入部
13 架台
14 苗箱積上部
15 段積苗箱送出部
15a 延長フレーム
17 苗箱早送部
18 ストッパ
19 センサ
21 プーリ
22 Vベルト
22a 周面
P 所定位置
S1 使用状態
S2 格納状態

【特許請求の範囲】
【請求項1】
苗箱受入部に連続して搬送されてくる苗箱を苗箱積上部により架台に段積する苗箱段積装置であって、
前記苗箱受入部には、該苗箱受入部に入ってきた苗箱を前記搬送の速度よりも早送りする苗箱早送部と、所定位置又はその近傍に苗箱が早送りされたことを検知して前記苗箱積上部を作動させるためのセンサとを備え、
前記苗箱早送部は、前記早送りのための駆動力を、苗箱表面に接することによる表面摩擦力によって苗箱に伝動するように構成された苗箱段積装置。
【請求項2】
前記苗箱早送部により早送りされた苗箱を前記所定位置で停止させるストッパを備えた請求項1記載の苗箱段積装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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