説明

英文発想練習法、英文発想練習プログラム、外国語文発想練習法および外国語文発想練習プログラム

【課題】 英文特有の構造を身体に憶えこませることが容易にでき、英文の受け答えを円滑にすることが可能になる、英文発想練習法等を提供することを目的とする。
【解決手段】 端末装置を用いた練習法であって、英文が、主語、時制、文型の3つの要素により構成され、要素ごとに3種類の具体形があるものとして、主語を第1の行として3つの具体形を3つの列番号に割り当て、時制を第2の行として3つの具体形を3つの列番号に割り当て、文型を第3の行として3つの具体形を3つの列番号に割り当て、表示画面に、具体形が配列された3行3列マトリックスを表示し、基本英文を提示し、かつ3行3列マトリックスの行ごとに特定の具体形を示して、練習者に基本英文を変形させる際、行ごとに設定された合計3つの列番号に対応させた楽音を発声器から発声させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、英語(外国語)特有の語順等に慣れることで、英語(外国語)をビジネスの場でも、日常の会話等でも、自然に使いこなすことができるようになる、英文発想練習法、英文発想練習プログラム、外国語文発想練習法および外国語文発想練習プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
日本人にとって英語の習得は難しく、多くの英語学習方法や英語学習装置が提案されている。たとえば視覚と聴覚に印象づけて英単語のスペルと発音とを学習する装置および方法が提案されている(特許文献1)。また、学習者の読み上げ発声を基準にして、ネイティブ英語の再生速度を調整して、能力に応じた習得を可能にする学習システムの提案もなされている(特許文献2)。近年の表示装置、音声関連装置のめざましい普及により、上記の方法によってネイティブ英語に慣れ、単語の習得等も容易になると考えられる。
一方、自分の思うことを文章にして相手に伝える、英文のやりとり能力を向上させるための提案も多くなされている。たとえば、短い日本文に対応した短い英文を憶え、その短英文を核にして、自分が思うことに近い短英文を想起して選んで、当該短英文に付け加えるなど変形してゆく方法の提案がなされている(非特許文献1)。また、一つ英文を基にして、主語や動詞などを変形させる練習を通じて英語に習熟させる参考書もある(非特許文献2)。これらの方法によれば、汗と涙の非常に長い練習の後、英語に対する抵抗を小さくすることは可能かもしれない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−140881
【特許文献2】特開2005−31604
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】森沢洋介著「ポンポン話すための瞬間英作文」ベレ出版
【非特許文献2】ロバート.M.フリン著「Progress in English」イエズス会出版
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の英語学習方法は、徹底して、長期間打ち込めば、それなりの効果を得ることはできるかもしれない。しかし、英語と日本語の文章の相違を認識していないため、多くの労力を要し、労力の割りに身に付くことは少ない。そのため、多くの学習者は途中で投げ出して、実用レベルに到達するに至らない場合が多い。
その理由は、いくつか考えられるが、大きな理由の一つは、日本語と英語の根本的な構造の相違にある。日本語は、相手の文章(話)を最後まで聞かないと、言いたいことが分からない。すなわち、日本語は、文頭では、「花子か太郎か(主語)」は分かるが、「疑問か否定か肯定か(文型)、現在か過去か未来か(時制)」は最後まで聞かないと分からない。
これに対して、英文は文章の頭の部分で、言いたいことは、大部分、分かる。すなわち、英語の場合、「疑問か否定か肯定か(文型)、現在か過去か未来か(時制)、花子か太郎か(主語)」は、文頭でほとんど分かる。
上記の日本語と英語の根本的な相違があるため、英文特有の構造を身体で憶えない限り、日本人にとって英語を自在にあやつることは難しい。
【0006】
本発明は、英文(外国語文)特有の構造を身体に憶えこませることが容易にでき、英文(外国語文)の受け答えを円滑にすることが可能になる、英文発想練習法、英文発想練習プログラム、外国語文発想練習法および外国語文発想練習プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の英文発想練習法は、表示画面および発声器を有する、携帯情報端末、PC、または携帯ゲーム端末などの端末装置を用いて、瞬時に英文を発想できるようにするための練習法である。この練習法では、英文が、主語、時制、文型の3つの要素によって構成され、該要素ごとに3種類の具体形があるものとして、前記3つの要素の具体形を、3行3列マトリックスに割り振る。主語の3つの具体形を第1の行に属する3つの列番号に割り当て、時制の3つの具体形を第2の行に属する3つの列番号に割り当て、文型の3つの具体形を第3の行に属する3つの列番号に割り当てる。そして、表示画面に、具体形がすべての位置に配列された3行3列マトリックスを表示し、基本英文を提示し、かつ3行3列マトリックスの行ごとに特定の1つの具体形を示して、練習者に、基本英文をその特定の具体形に合った変形英文に変形させる際、3行3列マトリックスの行ごとに特定の具体形を示すとき、行ごとに設定された合計3つの列番号に対応させた楽音を発声器から発声させることを特徴とする。
【0008】
この練習法では、3行3列マトリックスにおける具体形の特定の箇所への指示は当該位置に強調マークなどを付すことでなされる。と同時に、その具体形の指示に対応した楽音が聞こえるので、より直感的に変形の具体形を知ることができる。楽音による変形の指示は瞬間であり直感的である。これに基づいて変形を身体感覚で行うことができる。このため、反復練習することで、より直感的にかつ瞬間的に、基本英文を当該指示にしたがって変形することができる。このため英語に特有の構造を、身体に覚え込ませることができる。とくに英文では文頭が重要であるが、その文頭を日本語で考えながら日本語を英文に直した後に発するのではなく、基本英文を基に、記号による変形の指示を受けてそのまま変形することができる。この結果、練習を繰り返すことで、英文の受け答えを円滑にすることが容易になる。とくに、新たな言語習得に適した年齢を超えた世代の者には、日本語を介在させずに、英文のまま受け答えできることは、非常に大きな利点である。
【0009】
なお、基本英文は、主語を省いた英文でもよいし、主語がある普通の英文でもよく、長文または短文を問わない。また、この基本英文は、肯定文と否定文と疑問文とを問わない。さらに、行は、通常、横罫の場合が多いが、縦罫であってもよい。行が縦か横かに応じて、列が横または縦になることは言うまでもない。
また第1の行などの数字は、順番を表すものではなく、単に3行のなかのいずれか1つの行を第1の行と表示している。したがって第1の行が、真ん中の行であっても、一番下に位置する行であってもよい。第2の行は、その他に任意の行であり、第3の行は残りの行に対応する。
上記の定義または説明は、このあとにおいても適用される。
【0010】
基本英文を変形した回答は、表示画面に、正解を含む複数の英文を表示して、練習者に正解を選択させるようにできる。
これによって、回答に多くの時間と手間をかけずにすみ、練習しやすくできる。とくに満員電車内などでも練習することができる。
【0011】
上記の形態の練習法と異なる形態の練習法に切り換える切り換え操作によって、表示画面に、具体形がすべての位置に配列された3行3列マトリックスを表示し、かつ特定の具体形を示さず、基本英文を提示して、練習者に該基本英文が主語、時制、文型のどのような特定の具体形をとっているか回答させることができる。
この方法によれば、特定の基本英文の要素(主語、時制、文型)がどのような具体形をとっているか練習させることができる。上記の形態の練習と、この異なる形態の練習法とを合わせて行うことで、英文の構造を身体で習得することができる。
【0012】
前記基本英文を表示画面に表示しながら発声器からスピーチによって該基本英文を提示することができる。
この方法によって、上記の楽音による変形の指示と合わせて、英文に対する聴覚を向上させることができる。
【0013】
端末装置はインターネットを通じて他者の端末装置と交信可能であり、他者の端末装置に、本人の端末装置の表示画面と同じ画面が表示され、他者または本人は、切り換え操作によって、相手が基本英文を選択しかつ3行3列マトリックスにおける特定の具体形を選択することができる。
この方法によって、英語を母国語とするネイティブスピーカ達と交信して、音声による会話も交えて、より一層ハイレベルの英文練習を行うことができる。
【0014】
本発明の外国語文発想練習法は、上記のいずれかの英文発想練習法において、英文を英文以外の外国語文に置き換え、当該外国語文を容易に発想できるようにするために行うことを特徴とする。
上記の方法によれば、英文以外の外国語文についても、基本外国語文の提示と、その外国語文の要素における特定の具体形を示されることで、その外国語文に特有の構造に身体で慣れることができる。
【0015】
本発明の英文発想練習プログラムは、表示画面および発声器を有する、携帯情報端末、PC、または携帯ゲーム端末などの端末装置を作動させる、英文発想練習のためのプログラムである。このプログラムは、(a)英文テキストデータと、(b)マトリックス表示データと、(c)楽音データと、(d)進行コースデータと、(e)制御部とを備える。(a)前記英文テキストデータは、(a1)基本英文、(a2)その基本英文を、主語、時制、文型の3つの要素において変形した複数の変形英文、(a3)変形英文に対応する番号列を有し、その番号列は、主語の具体形である一人称、二人称、三人称に割り当てた3つの一桁数字、時制の具体形である過去、現在、未来に割り当てた3つの一桁数字、文型の具体形である肯定、否定、疑問に割り当てた3つの一桁数字、で構成される3つの数字の番号列である。(b)マトリックス表示データは、(b1)3行3列マトリックスの枠、(b2)3行3列マトリックスにおいて、第1の行の各列に配置するための主語の具体形である一人称、二人称、三人称に対応する英単語、第2の行の各列に配置するための時制の具体形である過去、現在、未来に対応する英単語または記号、および第3の行の各列に配置するための文型の具体形である肯定、否定、疑問に対応する記号または戯画、および(b3)各行における特定の具体形を示すための強調マークを有している。(c)楽音データは、番号列に対応した楽音を有し、(d)進行コースデータは、複数の分類に分かれたコースにおける進行の指示データを有している。そして、(e)制御部は、コースおよび該コースの進行の指示データに従って、(e1)英文テキストデータからの基本英文を表示画面に提示するとともに、(e2)表示画面に前記マトリックス表示データからの3行3列マトリックスを表示し、該3行3列マトリックスの各欄に、マトリックス表示データからの記号、英単語または戯画を表示し、(e3)マトリックス表示データから強調マークを英文テキストデータからの番号列にしたがって3行3列マトリックスに表示するとともに、(e4)番号列に対応する楽音を楽音データから発声器に発声させ、(e5)練習者に特定の具体形に合うように基本英文を変形させることを特徴とする。
【0016】
上記の構成によって、基本英文を、3行3列マトリックスの各要素(行)における特定の具体形を楽音で示され、日本語を介在させず、直ちに基本英文を変形することができる。楽音による変形の指示は瞬間であり直感的である。これを反復練習することで、自然に英文が出てくるようになる。とくに英文の出だしを円滑に発することができるようになる。
【0017】
練習の形態と異なる形態に切り換える切り換え部を備え、該異なる練習の形態において、(e)制御部は、(e1)英文テキストデータから変形英文の1つを表示画面に提示するとともに、(e2)表示画面にマトリックス表示データからの3行3列マトリックスを表示し、該3行3列マトリックスの各欄に、マトリックス表示データからの記号、英単語または戯画を表示し、(e3)前記発声器に発声させず、(e4)練習者に、変形英文がとっている具体形に合う番号列を回答させることができる。
これによれば、特定の基本英文の要素(主語、時制、文型)がどのような具体形をとっているか練習することができる。上記の形態の練習と、この異なる形態の練習法とを合わせて行うことで、英文の構造を身体で習得することができる。
【0018】
スピーチデータを備え、該スピーチデータは基本英文および変形された英文のスピーチデータを有し、少なくとも基本英文の提示を、スピーチですることができる。
これによってより一層ヒヤリング能力向上に役立てることができる。
【0019】
本発明の外国語文発想練習プログラムは、上記のいずれかの英文発想練習法において英文を英文以外の外国語文に置き換え、該外国語文を容易に発想できるようにするために用いることを特徴とする。
上記のプログラムによれば、英文以外の外国語文についても、基本外国語文の提示と、その外国語文の要素における特定の具体形を示されることで、その外国語文に特有の構造に身体で慣れることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の英語学習装置等によれば、英文(外国語文)特有の構造を身体に憶えこませることが容易にでき、英文(外国語文)の受け答えを円滑にすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態における携帯情報端末を示し、(a)はスマートフォン、(b)は携帯電話機である。
【図2】英文発想練習法の1形態におけるスマートフォンのディスプレイを示す図である。
【図3】スマートフォンの各部の関係を示す図である。
【図4】プログラム(アプリケーションソフト)がインストールされて実行処理される構成を示す図である。
【図5】(a)は英文テキストデータ、(b)はマトリックス表示データ、を示す図である。
【図6】(a)は楽音データ、(b)はスピーチデータ、(c)は進行コースデータ、を示す図である。
【図7】プログラム内の制御部によって実行処理部で進行される処理の例を示す図である。
【図8】図2に示す英文発想練習法と異なる形態の練習法におけるスマートフォンのディスプレイ(変形例)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、本発明の実施の形態のプログラム(アプリケーションソフト)は収納された携帯情報端末10を示し、(a)はスマートフォン、(b)は一世代前の携帯電話機である。この携帯情報端末10は、両方とも、入力部20と、ディスプレイ(表示部)15と、スピーカ13と、マイクロフォン14とを備えている。携帯電話機では、キー20によって入力がなされる。スマートフォンではキーはないが、ディスプレイ15にアイコン20が表示され、そのアイコン20をタッチすることによって入力がなされる。ディスプレイ15に感圧センサが埋め込まれている。スマートフォンも携帯電話機も、マイク14およびスピーカ13(または図示しないイヤフォン端子挿入部)を備える。以後の説明では、スマートフォンを用いた実施の形態を説明するが、入力にキーを用いる点が異なるだけで携帯電話機でもそのまま適合する。
【0023】
図2は、ディスプレイ15に表示された英文発想練習方法のスタート画面である。この英文発想練習方法では、携帯情報端末10のディスプレイ15に、3行3列マトリックスを表示し、基本英文を提示することから始まる。この英文発想練習法は、次の認識が背景にある。
(1)日本語と英語は、構造が根本的に相違する。日本語は、相手の文章(話)を最後まで聞かないと、言いたいことが分からない。すなわち、日本語は、文頭では、主語は分かるが、「疑問か否定か肯定か(文型)、現在か過去か未来か(時制)」は最後まで聞かないと分からない。
(2)英文は文章の頭の部分で、言いたいことは、大部分、分かる。すなわち、「疑問か否定か肯定か(文型)、現在か過去か未来か(時制)、花子か太郎か(主語)」は、文頭でほとんど分かる。
(3)上記の日本語と英語の根本的な相違があるため、英文特有の構造を身体で憶えない限り、日本人にとって英語を自在にあやつることは難しい。
【0024】
上記の認識に立って、その英文特有の構造は、トコトン突き詰めるとどのようなものか?その英文特有の構造を日本人が習得しやすい、簡単で最も優れた練習方法はどのようなものか?本発明者は、次のように英文特有の構造を捉え、次の方法で練習すればよいことに想到した。
<英文特有の構造>:
英文は、主語、時制、文型の3つの要素に基づいて構成される。この要素には、簡単化すれば、3種類の具体形がある。この主語、時制、文型の3つの要素の、それぞれの3つの具体形を当て嵌めた英文が意識しないで自然に出てくれば、どのような場合でも、英文は瞬間的に口をついて出てくる。
【0025】
<英文発想練習法>:
(T1)主語、時制、文型の3要素に、該要素ごとの3つの具体形を配列する。そのような配列は、3行3列マトリックスにすることで直感的に把握しやすくなる。たとえば、主語を1行目(横罫)として、その主語の3つの具体形を1行目に属する3つの列番号に個別に割り当てる。それが、図2に示す3行3列マトリックス15aの1行目に配列された、「I」、「You」、「He」である。また、時制を2行目として、その時制の3つの具体形(過去、現在、未来)を2行目に属する列に配列する。それが、図2における、矢印等の記号および英単語past、present、futureである。また、文型を3行目として、その文型の3つの具体形(肯定、否定、疑問)を連想させる記号を3行目に属する列に配列する。それが、図2に示す記号「○」、「×」、「?」である。
(T2)基本英文を提示する。これが、図2のディスプレイ15の基本英文提示部15bに提示されている“My son goes to the station.”である。練習者(スマートフォン持参者)は、この基本英文を指示にしたがって変形する。
(T3)その変形の指示は、3行3列マトリックスの各要素(各行)の、1つの特定の具体形を選択することで指示される。特定の具体形の選択は、強調マークKをその具体形の欄に付けることで行われる。図2では、主語の行(1行目)ではYou、時制の行(2行目)ではfuture(右向き矢印)、文型の行(3行目)では?の欄に強調マークKが付されている。このような指示は、1行目の列番号2、2行目の列番号3、3行目の列番号3、をつなげて、番号列233と対応する。この変形の指示に適合する変形された英文は、図2に示すように、“Will you go to the station?”である。
(T4)練習者は、3行3列マトリックスに示された変形の指示と、基本英文とを見て、適合する英文を思い浮かべるように集中する。ここで重要な点は、変形の指示に日本語が入っていないことである。英文の変形練習は、これまでの英語学習書にも多くあった。しかし、従来の英文の変形練習は、日本語による変形の指示によっていた。このような従来の変形練習では、練習者は、日本語による変形の指示を理解するために、日本語の脳回路を働かさざるを得ない。この結果、英文を即座に発することが難しくなる。日本語の脳回路を働かせることで、英文特有の構造、とくに出だしの部分の直接(そのまま)の習得ができなくなる。
本発明における3行3列マトリックスによる変形の指示では、日本語はない。少なくとも主要部にはない。このため、直感的に理解しやすい。
(T5)3行3列マトリックスによる変形の指示を、練習者が、より直感的に把握できるように、本実施の形態では、変形の指示に対応する楽音をスピーカ13から発する。電車内で練習する場合は、もちろんイヤフォンで聴くことができる。楽音は、ピアノの特定の和音、ギターの和音、3行3列マトリックスに対応させて3つの連続音であってもよい。また流行歌やクラシックのメロディであってもよい。
ここで、変形の指示が何通りあるか検討すると、各行に3個の列があるので、変形の指示は全部で27通りである。無限に多くの変形の指示があるわけではない。したがって、メロディについても、反復練習して慣れれば、特定の和音、特定の3つの連続音、特定のメロディなどを特定の変形の指示に結びつけることができる。
視覚だけでなく聴覚による変形の指示を受けて、練習者は、より感覚的に変形の指示を受信して、直感的に英文を発想できるようになる。練習者は、集中して変形を行うだけでも進歩することができるが、正解か否か判定するために、たとえば正解を含む4つの英文を提示して、その中から選ぶことをしてもよい。
上記の視覚および聴覚を動員して、集中度を高めて反復練習することで、練習者は、英文特有の語順などを身体で憶えることができる。とくに英文において重要な文頭を発する要領を身体で憶えることができる。この結果、英文が反射的に湧き出る程度にまで達することができる。
【0026】
図3は、本実施の形態における英文発想練習法を行っているスマートフォン10の全体構成を示す図である。実行処理部(CPU30a,メモリ32)30による進行の処理にしたがって、ディスプレイ15への基本英文および3行3列マトリックスの表示などが行われる。記憶部33は、本発明のプログラム(アプリケーションソフト)が収納されるハードディスクである。
【0027】
図4は、図3の全体構成を、具体的な装置をもちいて実現したハードウエア構成を示す図である。実行処理部30にはCPU(Central Processing Unit)30aまたはマイコン、およびメモリ32をあてる。CPU30aおよびメモリ32に、ディスプレイ15、タッチパネル20、記憶部であるハードディスク33が接続される。ハードディスク33に、プログラム(アプリケーションソフト)50が格納される。プログラム50はCD−ROMドライブ34からインストールしてもよい。またプログラム50は、アンテナ17を通ってインターネット上のサーバ装置41からダウンロードし、インストールしてもよい。プログラム50は、携帯情報端末10に備えられたフラッシュ、JAVA(登録商標)、その他の多種多様なソフトを用いて利用できるようにしてもよい。
【0028】
プログラム50は、英文テキストデータ、マトリックス表示データ、楽音データ、スピーチデータなどのデータと、制御部とからなる。まずデータについて説明する。
図5(a)は、英文テキストデータ43の構成を示す図である。英文テキストデータは、基本英文と、その基本英文を変形した27通りの変形英文と、その変形に対応した番号列とで構成される。変形英文および番号列を、個別化して識別するようにアドレス番号が付されている。なお、上記したように、基本英文と変形英文とは質的な相違はなく、所定の英文を見て番号列を回答する練習法の場合、変形英文を基本英文と銘打って、その所定の英文に変形英文(基本英文)を提示する場合がある。このとき、上記のように、変形英文を個別に識別できるアドレス番号があると便利である。
【0029】
図5(b)は、マトリックス表示データの内容を示す図である。マトリックス表示データは、3行3列マトリックスの枠の配列、すなわち矩形を3行3列に配置するサブルーチンを有する。また、その矩形内に表示する、I、Youなどの具体形のサブルーチンを有する。具体形は、一通りだけでなく各行に複数の種類の具体形(英単語、記号、戯画など)が準備されている。そして、基本英文の特定の1つの具体形に対応して、3つ並べる主語の具体形を、その基本英文の特定の具体形が含まれる範疇の3つの具体形とするのがよい。たとえば、複数形の主語の場合には、I、You、Heではなく、We、You、Theyと並べるようにする。
そして強調マークKについても、花弁、花束、○など多様なマークが準備されている。練習者の好みで、好きなマークを選択することができる。
【0030】
図6(a)は、楽音データの内容を示す図である。まず、楽音(和音、3つの連続音、メロディ等)は、変形の指示に1対1に対応する番号列と対応付けられる。このために対応表が準備される。この楽音と番号列の対応づけは変更することができる。楽音データの大部分は、図2に示すように、変形の指示を示す強調マークの付加とともにスピーカ13またはイヤフォンから発せられる楽音のデータである。制御部は、上記の対応付けにしたがって、楽音を読み出してスピーカ13等から発するように進行管理する。
【0031】
図6(b)は、スピーチデータを示す図である。このあと説明するように、基本英文をディスプレイ15に表示しながら、スピーカ13またはイヤフォンからその基本英文をスピーチする。ネイティブスピーカがスピーチすることで、練習者はヒヤリング能力を向上させることができる。また聴覚による受信によって、英文発想練習をより全身で直接的に行うことが可能になる。日本語を介在させずに、より生き生きした英文発想をすることができる。
【0032】
図6(c)は、進行コースデータの内容を示す図である。進行コースデータは、制御部が、英文テキストデータの中のどの基本英文をディスプレイ15に提示すべきか、また、どの変形指示またはどの番号列を選ぶべきか、を指示するためのデータである。レベル別に複数のコースを選択することができる。この場合、初級者に対しては、比較的、簡単な基本英文および変形の指示を表示する進行になる。練習者は、どの進行コースをとるか選択することができる。練習を通勤時の30分間の電車内で行う場合、30分間コースで基本英文の提示や変形の指示はおまかせとすることもできる。分野別は、ビジネス、旅行などに常用される英文を用いる。
【0033】
図7は、プログラム50内の制御部が、実行処理部30でどのような処理管理を行うか例示する図である。
1.まず、マトリックス表示データから3行3列マトリックスの枠を形成するサブルーチンを読み出し、実行させる。これによってディスプレイ15に3行3列マトリックスが表示される。
2.次いで、同様にして、矩形(枠)内に、I、Youなどの具体形を表示する。
このあとから、練習内容のための処理を進行させる。
3.進行コースデータから例えばAコースを選択して読み出す。このAコースの選択は、練習者が選択できるようにしてもよいし、おまかせコースのように自動的に選択されてもよい。Aコースには、制御部が実行(選択)すべき選択肢が指示されている。
4.次いで、Aコースの指示にしたがって、英文テキストデータから指示された基本英文を読み出し、ディスプレイ15に提示する。
5.また、Aコースの指示にしたがって指示された番号列を読み出し、その番号列の数値にしたがって3行3列マトリックスに強調マークを表示する。並行して楽音データからこの番号列に対応付けられた楽音のファイルを読み出し、スピーカまたはイヤフォンに発声させる。
上記の制御部の処理によって、ディスプレイ15には、図2に示すように、基本英文の提示、および3行3列マトリックスに変形の指示を示す強調マークが表示される。
【0034】
上記のように、本発明の実施の形態では、3行3列マトリックスを変形の指示に用い、楽音による聴覚による指示も得て、日本語を介在させず、直感的に変形の指示を得る。このため、日本語脳になる時間を持たずに、基本英文に集中して変形させることができる。この結果、英文を即座に発することが可能になり、とくに日本人が苦労する出だしを円滑に発することができるようになる。
【0035】
上記のように、基本英文の変換練習に集中するだけ英文発想力は大きく向上するが、正解かどうかの判定をするために、正解を含む4つの英文を提示して、その中から正解を選択するようにできる。この場合、制御部は、基本英文と、変形の指示に対応する番号列とを既に読み出している。たとえば、制御部は、図5(a)に示す、その番号列に対応する変形英文の番号(N1)、その次の変形英文の番号(N1+1)、その次の変形英文の番号(N1+2)、その次の変形英文の番号(N1+3)を選択して、シャッフルして並べることができる。番号(N1+m)が27を超えるときは、最初に戻って(N1+m−27)の変形英文を選ぶようにする。または、番号が(27)になった時点で、(N1−1)と、若い番号の側にしてもよい。その他、多くの任意の選び方で、4択の英文を選んで表示することができる。練習者が選択する指標などは、適宜、設定することができる。
【0036】
図8は、図2に示す英文発想練習法の変形例を示す図である。図2では、基本英文を、書き文字で表示したが、図8に示す変形例では、スピーチデータから読み出してスピーチで発声する。ヒヤリング能力を高めるには、このほうがよい。スピーチは、ネイティブスピーカによるものが好ましい。とくに日本人のヒヤリング能力は他のアジア諸国の人々に比べて低いのでネイティブスピーカによるものが好ましい。
ネイティブイングリッシュを聴いて、3行3列マトリックスに示される指示の強調マークおよび対応する楽音を聴いて、英文を自然に発声できるように練習を繰り返すのがよい。このような練習法によって、英文の頭の部分について、「疑問か否定か肯定か(文型)、現在か過去か未来か(時制)、花子か太郎か(主語)」が刷り込まれる。この結果、英文特有の構造を身体で憶えることができ、大人の日本人であっても、英語を自在に操ることができるようになる。
【0037】
(その他の実施の形態)
1.上記の実施の形態では、変形の指示に従って基本英文を変形して、その変形した英文を回答としている。しかし、基本英文の代わりに基本英文(変形英文を基本英文と呼んでもよいことは上記した。)を提示して、その基本英文の要素の具体形がどのようなものか、その内容を番号列で回答してもよい。その場合、制御部は、英文テキストデータの変形英文を読み出して基本英文として、スマートフォンのディスプレイに提示する、3行3列マトリックスには、具体形のみを配列して強調マークは付さない。練習者は、その基本英文の具体形がどのようなものか、3行3列マトリックスの該当する欄にタッチすることにより、回答をすることができる。正解の場合は、正解に対応した楽音を発してもよい。
2.スマートフォンを用いて交信相手の画面を見ることは、容易であり、現に多くのパソコンでは可能になっている。そのようなアプリケーションソフトを用いることで、交信相手を生徒(練習者)として、指導者(先生)の立場で、基本英文に対する変形英文の回答を聴くことができる。または、交信相手にネイティブスピーカ、できれば日本語も可能な先生を選び、自分が練習者(生徒)になって、変形した英文をスピーチして、相手に発音をみてもらってもよい。
3.英語以外の外国文については、実施の形態を説明しなかったが、外国文が、大きく、主語、時制、文型、の3要素からなっているとみなせるものであれば、本発明の発想練習法を用いることができる。英文を外国文に置き換えれば、微修正はあるかもしれないが、上記の説明を適用することができる。
4.上記の実施の形態では、時制の具体形を、過去、現在、未来を連想させる3つの記号および英単語としたが、これらの代わりに、doまたはdoes、did、will doの3つとしてもよい。または、am、was、will beまたはshall
beの3つであってもよい。さらに、are、were、will be、の3つとしてもよいし、is、was、will be、の3つとしてもよい。主語についても、複数形の、we、you、they、の3つとしてもよい。
【0038】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の英文学習装置等によれば、英文特有の構造を身体に憶えこませることが容易にでき、英文の受け答えを円滑にすることが可能になる。また英文に限らず他の外国語についても同様に、その外国語文に特有の構造を身体に憶え込ませることができ、その外国語文の話者との議論、対話を自然に、円滑に行うことが容易となる。
【符号の説明】
【0040】
10 携帯情報端末、13 スピーカ、14 マイクロフォン、15 ディスプレイ、15a 3行3列マトリックス、15b 基本英文提示部、17 アンテナ、20 入力部(タッチパネル、キー)、30 実行処理部、30a CPU、32 メモリ、33 記憶部(ハードディスク)、34 CD−ROMドライブ、35 CD、 41 サーバ、K 強調マーク。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示画面および発声器を有する、携帯情報端末、PC、または携帯ゲーム端末などの端末装置を用いて、英文を容易に発想できるようにするための練習法であって、
前記英文が、主語、時制、文型の3つの要素によって構成され、該要素ごとに3種類の具体形があるものとして、前記3つの要素の具体形を、3行3列マトリックスに割り振り、
前記主語の3つの具体形を第1の行に属する3つの列番号に割り当て、
前記時制の3つの具体形を第2の行に属する3つの列番号に割り当て、
前記文型の3つの具体形を第3の行に属する3つの列番号に割り当て、
前記表示画面に、前記具体形がすべての位置に配列された3行3列マトリックスを表示し、基本英文を提示し、かつ前記3行3列マトリックスの行ごとに特定の1つの具体形を示して、練習者に、前記基本英文をその特定の具体形に合った変形英文に変形させる際、
前記3行3列マトリックスの行ごとに特定の具体形を示すとき、前記行ごとに設定された合計3つの列番号に対応させた楽音を前記発声器から発声させることを特徴とする、英文発想練習法。
【請求項2】
前記基本英文を変形した回答は、前記表示画面に、正解を含む複数の英文を表示して、練習者に正解を選択させることを特徴とする、請求項1に記載の英文発想練習法。
【請求項3】
前記形態の練習法と異なる形態の練習法に切り換える切り換え操作によって、前記表示画面に、前記具体形がすべての位置に配列された3行3列マトリックスを表示し、かつ特定の具体形を示さず、基本英文を提示して、練習者に該基本英文が前記主語、時制、文型のどのような特定の具体形をとっているか回答させることを特徴とする、請求項1または2に記載の英文発想練習法。
【請求項4】
前記基本英文を表示画面に表示しながら前記発声器からスピーチによって該基本英文を提示することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の英文発想練習法。
【請求項5】
端末装置はインターネットを通じて他者の端末装置と交信可能であり、前記他者の端末装置に、本人の端末装置の表示画面と同じ画面が表示され、前記他者または本人は、切り換え操作によって、相手が基本英文を選択しかつ3行3列マトリックスにおける特定の具体形を選択できることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の英文発想練習法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の英文発想練習法において、前記英文を英文以外の外国語文に置き換え、当該外国語文を容易に発想できるようにするために行うことを特徴とする、外国語文発想練習法。
【請求項7】
表示画面および発声器を有する、携帯情報端末、PC、または携帯ゲーム端末などの端末装置を作動させる、英文発想練習のためのプログラムであって、
(a)英文テキストデータと、(b)マトリックス表示データと、(c)楽音データと、(d)進行コースデータと、(e)制御部とを備え、
(a)前記英文テキストデータは、(a1)基本英文、(a2)その基本英文を、主語、時制、文型の3つの要素において変形した複数の変形英文、(a3)前記変形英文に対応する番号列を有し、その番号列は、前記主語の具体形である一人称、二人称、三人称に割り当てた3つの一桁数字、前記時制の具体形である過去、現在、未来に割り当てた3つの一桁数字、前記文型の具体形である肯定、否定、疑問に割り当てた3つの一桁数字、で構成される3つの数字の番号列であり、
(b)前記マトリックス表示データは、(b1)3行3列マトリックスの枠、(b2)前記3行3列マトリックスにおいて、第1の行の各列に配置するための主語の具体形である一人称、二人称、三人称に対応する英単語、第2の行の各列に配置するための時制の具体形である過去、現在、未来に対応する英単語または記号、および第3の行の各列に配置するための文型の具体形である肯定、否定、疑問に対応する記号または戯画、および(b3)前記各行における特定の具体形を示すための強調マークを有し、
(c)前記楽音データは、前記番号列に対応した楽音を有し、
(d)進行コースデータは、複数の分類に分かれたコースにおける進行の指示データを有し、
(e)前記制御部は、前記コースおよび該コースの進行の指示データに従って、(e1)前記英文テキストデータからの前記基本英文を前記表示画面に提示するとともに、(e2)前記表示画面に前記マトリックス表示データからの3行3列マトリックスを表示し、該3行3列マトリックスの各欄に、前記マトリックス表示データからの記号、英単語または戯画を表示し、(e3)前記マトリックス表示データから前記強調マークを前記英文テキストデータからの番号列にしたがって前記3行3列マトリックスに表示するとともに、(e4)前記番号列に対応する楽音を前記楽音データから前記発声器に発声させ、(e5)練習者に、前記特定の具体形に合うように前記基本英文を変形させることを特徴とする、英文発想練習プログラム。
【請求項8】
前記練習の形態と異なる形態に切り換える切り換え部を備え、該異なる練習の形態において、(e)前記制御部は、(e1)前記英文テキストデータから前記変形英文の1つを前記表示画面に提示するとともに、(e2)前記表示画面に前記マトリックス表示データからの3行3列マトリックスを表示し、該3行3列マトリックスの各欄に、前記マトリックス表示データからの記号、英単語または戯画を表示し、(e3)前記前記発声器に発声させず、(e4)練習者に、前記変形英文がとっている前記具体形に合う番号列を回答させることを特徴とする、請求項7に記載の英文発想練習プログラム。
【請求項9】
スピーチデータを備え、該スピーチデータは前記基本英文および変形英文のスピーチデータを有し、少なくとも前記基本英文の提示を、スピーチですることを特徴とする、請求項7または8に記載の英文発想練習プログラム。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれか1項に記載の英文発想練習プログラムにおいて、前記英文を英文以外の外国語文に置き換え、該外国語文を容易に発想できるようにするために用いることを特徴とする、外国語文発想練習プログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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