説明

英語リスニング学習装置及びその制御方法

【課題】 効率的な英語リスニング装置を提供すること。
【解決手段】 記憶手段(702)に記憶されている音声を音声出力部(705)から音声出力する手段と、音声出力に応答して、出力された音声に相当するテキストを、全部又は一部が隠された状態で、隠されている全部又は一部の最初の部分を問う問題としてディスプレイ(704)上に表示し、更に、前記問題の正解を含む複数の選択肢を前記ディスプレイ上に表示する手段と、正解である選択肢が選択された場合には、選択された正解を表示し、テキストの隠されている次の部分を問う次の問題と選択肢とをディスプレイ上に表示する手段と、正解以外の選択肢が選択された場合には、選択された選択肢が正解でない旨を告知し、前記正解を依然として含む複数の選択肢を前記ディスプレイ上に継続して表示し続ける手段と備えた学習装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くは、学習装置に関し、更に詳しくは、効果的な英語の聴き取り能力の取得を可能にする学習装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、日本語を母語とする者が英語の聴き取り(リスニング)を学習する形態としては、カセットテープやCDなどの音源と紙のテキストが結びついた教材や、パソコンベースでの教材に代表される、音声出力された文章を聴いて問題に答える演習を繰り返すものが主流であった。しかし、このような学習形態は、発音体系も文法体系も異なる日本語を用いて生活している者が、どのようにしたら英語の聴き取りを効率よく身につけることができるのか、という理論的な考察を欠いている。そして、そのような学習形態は、「とにかく慣れることが重要なのだ」という素朴な信念に依拠しているため、長時間の学習を強いる傾向を生じがちである。従って、学習者の側からすると、格別の達成感もないままに、退屈な長い時間を過ごさなければならない。
【0003】
これに対して、この出願では、発明者の1人である山内豊(東京国際大学助教授)が提案する理論(以下では、「山内理論」と称する)に依拠した、英語の聴き取り学習システム及び方法を提案したい。山内理論では、英語を聞き取る能力は、次の4つの要素から構成されていると考える。
【0004】
第1に、個々の音素を聴き取る能力、特に、紛らわしい音素を弁別しながら聞き取る能力である。例えば、日本人にとって聴き取りが困難な音素に、代表的なものとして、/l/と/r/、/s/と/th/などがあるが、これらを異なる音素として聴き取る能力である。これは、音声として与えられる英文の構造や意味を離れて、純粋に音としての差異又は同一性を識別する能力である。
【0005】
第2に、複数の音素が連続して発音されることによってそれぞれが個別に発音されるときとは異なる音素が生じる場合の聴き取り能力である。特定の音素が連続することによって生じる音素の変化は、たとえば、アメリカの中等教育における「スピーチ」のクラスなどでは、避けるべきものと教育される。しかし、スピーチのマナーとしての是非はともかく、現実の発話においては、確実に生じる。従って、そのような現象を知らずにいるよりも知っている方が英語を聞き取りやすい。また、この現象は、音声学的に見て、実際に異なる音素が生じている場合と、特定の母語を有している人間にはそのように聞こえる場合とがある。例を挙げると、「take it away」が日本人には、「テキラウェイ」に聞こえることがあるのは後者の例である。また、「Would you ---」という疑問文が「ウッジュー」と発音されるのは前者の例である。山内理論では、そのような現実の又は意識の中での音の変化を、自覚的に知識として習得しておき、聞いてわかる能力が必要になる。
【0006】
第3に、日本語と英語の文構造の違いを理解する能力である。これは、例えば、「I saw a boy who was running in the park.」のような関係代名詞を含む文において典型的であるが、修飾語(句、節)が被修飾語(句、節)の前に来るのが原則である日本語のユーザにとっては順序が逆であるように感じる文を、音声として耳に入る順に、文頭からそのまま理解する能力である。ただし、これは、英語を音として理解する場合に特有の問題ではなく、英文を文頭から順に読んでそのままの順序で理解するのに必要な能力でもある。
【0007】
第4に、長い英文を一度に聞き取って一度に処理する能力である。山内理論では、この能力は上述した第1から第3の個別の能力と独立である、と考える。というのは、第1から第3までの能力が一応備わっているにもかかわらず、英文を聞き取ることができない者が存在するからである。例えば、第1から第3までのような要素還元的な訓練は相当に行っているが、英語を話す生きた人間に接する機会の少ない生活環境にいる学習者などに、典型的に見られる現象である。この能力は、脳の中のワーキング・メモリと呼ばれる言語情報の処理に関わる機能領域の容量に関係する、と説明されることもある。
【0008】
本発明によるリスニング学習装置は、以上のような、リスニング能力に関する一貫した知見に基礎をおいて構築されている。山内理論における、リスニング能力を構成する第1から第4の要素は、個別に見ると、ごく当たり前の分析であり、現場の英語教師などには、このような総括がなされるかどうかは別にして、格別に新規なものではない。しかし、本発明は、録音された音声を反復的に再生して聞かせて慣れさせようとするだけの訓練が多く、その割には効果が乏しかった従来のリスニング学習方法に対するアンチテーゼであって、一貫した理論的考察に依拠した総合的なリスニング学習を提供する。また、本発明は、小中学生にとっては日常生活の一部とも言える携帯型ゲーム機と類似したインターフェースを有する携帯型学習装置における音声出力とディスプレイへの表示とを用いて実現されている。その点で、本発明は、従来とは明らかに異なるリスニング学習を可能にしている。
【発明の開示】
【0009】
本発明によると、1又は複数の英文で構成される文字群である英文テキストと前記英文テキストを読み上げた音声とが複数記憶されている記憶手段と、前記英文テキストを表示するディスプレイと、前記音声を出力する音声出力部と、を少なくとも備えた学習装置であって、(a)前記記憶手段に記憶されている音声を読み出し、前記音声出力部から音声出力する手段と、(b)前記音声出力部からの音声出力に応答して、前記出力された音声に相当する英文テキストを、前記記憶手段から読み出し、前記英文テキストの全部又は一部が隠された状態で、隠されている全部又は一部の最初の部分を問う問題として前記ディスプレイ上に表示し、更に、前記問題の正解を含む複数の選択肢を前記ディスプレイ上に表示する手段と、(c)手段(b)による問題表示に対して前記正解である選択肢が選択された場合には、選択された正解を表示し、前記英文テキストの隠されている次の部分を問う次の問題と、前記次の問題に対する正解を含む複数の選択肢とを、前記ディスプレイ上に表示する手段と、(d)手段(b)による問題表示に対して前記正解以外の選択肢が選択された場合には、選択された選択肢が正解でない旨を告知し、前記正解を依然として含む複数の選択肢を前記ディスプレイ上に継続して表示し続ける手段と、(e)前記英文テキストの隠されている全部又は一部のすべてが前記ディスプレイ上に表示されるまで、手段(c)及び手段(d)にそれぞれの手段による動作を反復させる手段と、を備えており、前記正解でない選択肢は、経験的に生じやすい誤答例として予め得られているパターンを少なくとも1つ含むことを特徴とする学習装置が提供される。
【0010】
本発明による学習装置において、手段(b)によって表示される英文テキストで隠されているのが1つの単語だけである場合には、山内理論におけるステップ1の能力である、1つの音素を聞き分ける訓練ができる。そして、手段(b)によって表示される英文テキストで隠されているのが複数の単語であり、それら複数の単語は連続的に発音される場合には単独で発音される場合とは異なる音素を含みうるようなものとすることによって、山内理論におけるステップ2の能力である、連続的に発音された場合には音素の変化が生じるような例を知識として訓練することができる。
【0011】
更に、本発明によると、1又は複数の文で構成される文字群である英文テキストと前記英文テキストを読み上げた音声とが複数記憶されている記憶手段と、前記英文テキストを表示するディスプレイと、前記音声を出力する音声出力部と、を少なくとも備えた学習装置であって、(a)前記記憶手段に記憶されている音声を読み出し、前記音声出力部から音声出力する手段と、(b)前記音声出力部からの音声出力に応答して、前記出力された音声の内容に関する問題と前記問題の正解を含む複数の選択肢を前記ディスプレイ上に表示する手段と、(c)手段(b)による問題表示に対して前記正解である選択肢が選択された場合には、選択された選択肢が正解である旨を告知する手段と、(d)手段(b)による問題表示に対して前記正解以外の選択肢が選択された場合には、選択された選択肢が正解でない旨を告知し、前記正解を依然として含む複数の選択肢を前記ディスプレイ上に継続して表示し続ける手段と、(e)前記出力された音声の内容に関するすべての問題が表示されるまで、手段(c)及び手段(d)にそれぞれの手段による動作を反復させる手段と、(f)手段(b)による問題表示に対して前記正解以外の選択肢が選択された場合には、手段(a)によって出力された音声の中の、前記表示された問題に関係する部分のみを再出力し、前記再出力された音声の内容に関する問題と前記問題の正解を含む複数の選択肢を前記ディスプレイ上に表示する手段と、(g)手段(f)による問題表示に対して前記正解である選択肢が選択された場合には、選択された選択肢が正解である旨を告知する手段と、(h)手段(f)による問題表示に対して前記正解以外の選択肢が選択された場合には、選択された選択肢が正解でない旨を告知し、前記正解を依然として含む複数の選択肢を前記ディスプレイ上に継続して表示し続ける手段と、(i)前記再出力された音声の内容に関して予め用意されたすべての問題が表示されるまで、手段(g)及び手段(h)にそれぞれの手段による動作を反復させる手段と、を備えており、前記正解でない選択肢は、経験的に生じやすい誤答例として予め得られているパターンを少なくとも1つ含むことを特徴とする学習装置が提供される。このような学習装置によると、英語の聴き取りができなかった場合に、その原因について、従来よりも分析的な結論が得られ、その弱点を克服する上でのヒントが得られる。
【0012】
なお、ここで、正解でない選択肢として提供される、経験的に生じやすい誤答例とは、既に述べたように、例えば、英語を学習する上で、区別が困難な音素に関係するものを意味する。単独の音素として区別が困難なもの、連続的に発音されると単独で発音される場合とは異なる音素を含む傾向があるもの、などがある。
【0013】
また、本発明は、ハードウェアである学習装置として定義することとは別に、そのような学習装置の制御方法として実現することができる。また、その制御方法に含まれるステップをコンピュータに実行させるソフトウェアが記憶された記憶媒体として捕らえることが可能である。また、そのようなソフトウェア自体として捕らえることも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
従来、英語の聴き取りを学習する際には、教師が英文を口頭で読み上げる、又は、予め録音されている英文を再生し、音声として提供された英文の内容に関する質問に対する解答の正誤を見ることにより、内容を聴き取れているかどうかを判断するのが一般的である。しかし、その際、質問に正しく答えられない場合に、学習者が、どのような理由で聞き取れなかったのかについては、必ずしも考慮されることなく、反復的な聞き取り練習が推奨されることが多い。これに対し、本発明によるリスニング学習装置では、明確な根拠に欠ける反復的な聞き取り練習を強いることはない。そうではなく、質問に正しく答えられない場合には、学習者が、どのような理由で聴き取れなかったのかについて、分析的に考察し、弱点を特定することにより、その弱点を克服するために効果のある訓練を提供する。
【0015】
さて、学習者に対して、英文が、部分A、部分B、部分C、…の順に連続する音声として、与えられる場合を考える。音声を聴いている学習者は、最初の部分Aは理解できたが、何らかの理由で、次の部分Bが理解できなかったとする。すると、その次の部分Cを、単独で聴いていたならば理解できていたはずなのに、理解できなかった部分Bの直後に与えられたという理由により聴き取れない、という現象が生じることがある。
【0016】
このような現象は、認知科学的には、音声として受け取り意味を理解しようとしている情報量が、脳の機能の中で言語情報の処理及び保存を担うワーキング・メモリ(差動記憶)の容量を超えてしまっている、と説明されることがある。特に、聴き取りにおいては、音声入力情報を適切に処理しながら、処理した情報の中で重要な部分を保持し、結束性(つながり、cohesion)や、一貫性(coherence)を認識する機能を有するとされる。あるいは、より単純に説明するならば、部分Bが理解できなかったことにより混乱してしまい、その次の、本来ならば理解できるはずの部分Cを理解できないという現象である。ここで、「単独で聴いていたならば理解できていたはずなのに」とか、「本来ならば理解できるはず」というのは、部分Cを構成している単語の発音、文の構造、文法などについては、理解できており、理解できなかった部分Bの直後に提供されなかったのであれば、当然に聞き取れていたであろう、という意味である。
【0017】
本発明による英語リスニング学習は、データ及びソフトウェアが格納された記憶媒体を、携帯型ゲーム機のような携帯型学習装置に挿入して行われる。あるいは、携帯電話端末にメモリスティック(登録商標)やSDカード(登録商標)などの記憶媒体を挿入して行うこともできる。つまり、本発明による英語リスニング学習は、特定のハードウェアに限定されることはない。ハードウェアの一例として、携帯型ゲーム機のような携帯型学習装置の概要が、図1に示されている。学習装置100は、ディスプレイ101と、スピーカなどの音声出力部102と、カーソル移動手段103とを少なくとも備えている。
【0018】
次に、聴き取ることができない理由を判定する方法における具体的な手順について、図2を参照しながら説明する。ステップ201では、本発明による学習装置から、英文全体が音声出力される。この音声出力される英文は、要素ごとに分割された音声を、連続的に出力させたものである。例えば、上述したように、部分A、部分B、部分Cなどから構成される英文が、部分Aから部分Cまで連続的に出力される。ステップ202では、音声出力された英文全体の内容に関する複数の問題が、ディスプレイ101上に表示され、学習者が、表示されたこれらの問題に解答する。すべての問題に正解した場合(ステップ203)には、この学習者は、音声出力された英文に関して聴き取りができている、と判断することができる。
【0019】
ステップ202で出力された問題に関して不正解があった場合には、ステップ204に進む。ステップ204では、不正解であった問題に関係する部分のみが、音声出力部102から再出力される。次いで、ステップ204において、再出力された部分に関する別の質問が、ディスプレイ101上に表示される。この、特定の部分だけが音声出力された後で表示される問題は、すべて、英文のその部分で扱われている構文・音素・熟語・音変化などに対応するものである。
【0020】
ステップ205で表示された問題に対して学習者が全問正解できた場合には、ステップ201で最初に全体が音声出力された英文に関して出題された問題について間違えたのは、再出力された部分の構文・語彙などが未習得であったために内容が聞き取れなかったのが原因ではない、と判定される(ステップ206)。再音声出力された部分については、単独であれば聴き取れたからである。従って、ステップ202で表示され出題された問題については全問正解ではなかったのは、ステップ201で音声出力された英文の量を、この学習者は、一度に処理しきれなかったからである。
【0021】
他方、ステップ205で表示された問題についても不正解がある場合には、上述したような量的な原因だけではなく、ステップ204で再音声出力された部分の内容に関する構文・語彙などの未習得もあることがわかる(ステップ207)。部分だけを取り出しても聴き取れていないからである。本発明による学習装置では、以上の手順を用いて、音声出力された英文を聴き取れない理由を、従来よりも分析的に考察し、その上で、判明した弱点を克服する訓練を実行していく。以上は、この明細書の冒頭で説明した山内理論のステップ4である。
【0022】
図2のステップ207において判定されるように、学習者が英文を聴き取れなかった原因が、再音声出力された部分に含まれる語彙、文法、音素変化などを聴き取れなかったことにある場合には、本発明による学習装置を用いれば、山内理論のステップ1からステップ3に関する要素的な訓練を行うことができる。
【0023】
ステップ1に関する訓練を行う際のディスプレイ上の表示は、図3に示されている。示されているのは、本発明による学習装置100の音声出力部102から「コウト」又は「コート」という音声が出力され、ディスプレイ101には「c t」という表示がなされた様子である。この場合、学習者は、音声出力されたのが衣服である外套の意味の単語なのか、捕らえるという意味の動詞の過去形・過去分詞形なのか、を聞き分けることが求められている。つまり、2つの子音の間に挟まれている2重母音を聞き分けられるかが求められている。なお、ディスプレイ101上の表示では、cとtとの間に何文字あるかはわからないように表示される。2文字入るとか、4文字入るとかが黙示的であっても示されていると、正解を暗に示してしまい、問題として不適切であるからである。図には示されていないが、上の例では、(1)「oa」、(2)「augh」、(3)「oo」のように、正解を含む複数の選択肢を表示して学習者に選択させることもできる。この際に、(1)と(2)がどちらかが正解である混乱を誘う選択肢であり、(3)は正解にやや近いが、対象となる学習者に対する調査から予め得られた生じやすい誤答パターンとは必ずしも言えない、誤答例である。選択肢が3つである場合には、紛らわしい選択肢を2つ表示し、残りの1つの選択肢は、乱数発生器などを用いてランダムに生成することも可能である。
【0024】
次に、ステップ2に関する訓練を行う際のディスプレイ上の表示は、図4に示されている。示されているのは、「テキラウェイ」に聞こえることがある例である。この場合、図4に示されてはいないが、「take it away」を聴き取らせる場合には、選択肢として、(1)「takin' up way」、(2)「take it away」、(3)「tech run away」を表示することなどが考えられる。しかし、これらの選択肢では、たしかに発音からは紛らわしいが、文法的考えると正解が明らかすぎる。また、( )( )( )のように、音声出力された部分が3つの単語からなることを明らかにする選択肢を与え、最初のカッコには、(1)「take」、(2)「taking」、(3)「tech」という選択肢を与えても、後の選択肢が2つであることからtake it awayという熟語が想像できてしまうので、学習ソフトとしては失格である。そこで、図5に示されているようなルーチンで選択肢を表示すれば、音声出力された英文を構成する単語の数を教えてしまうことなく解答させることが可能となる。このことにより、より正確にリスニングのポイントを聞き取れたかどうかを判別できる。
【0025】
図5の例では、本発明による学習装置100の音声出力部102から「ウヂューライクアカップオブコーヒー」というような音声が出力されたとする。この際に、画面1では、最後の「coffee」と疑問文であることを示す「?」だけが表示されており、それ以外の部分について、最初からどのような単語が入るのかを問題をして出題し、3つの選択肢(1)「Would」、(2)「With」、(3)「Wood」が与えられている。学習者が正解を選択すると、選択された正解が表示され、次の単語に進むことができる。ここで注意すべきは、上述したように、このような選択肢の表示方式であれば、音声出力された英文がいくつの単語から構成されているのかについてヒントを与えてしまうことなく出題が可能である点である。画面1の後は、画面2、画面3、と正解すれば次の単語が問われるという方式で順に選択肢が与えられていく。
【0026】
次は、山内理論のステップ3であり、日本語と英語の文構造の違いを理解する能力の訓練である。この訓練におけるディスプレイ101上の表示は、図6に示されている。文法事項の簡単な確認を行う表示が最初の左側の画面に示され、この例では、関係代名詞の復習をすることができる。紙ベースの問題集と実質的には相違しないようにも見えるが、これまで述べていた一貫した理論に基づいて、そして、携帯型学習装置を用いて容易に文法知識の確認ができることは、非常に便利であり、ゲーム感覚で学習が可能である。文法知識の確認が終わると、右側の画面に示されているように、聴き取って理解するには、確認したばかりの文法知識が必要である英文が音声出力され、それに関する問題が出題される。図6の例では、「聞いた英文にあうのは?」とあり、公園でサッカーをしている少年がディスプレイに示されている。
【0027】
本発明による学習装置は、上述したように、データ及びソフトウェアが格納された記憶媒体が挿入された携帯型ゲーム機のような携帯型学習装置である。あるいは、メモリスティック(登録商標)やSDカード(登録商標)などの記憶媒体を挿入された携帯電話端末としても実現できる。つまり、本発明による英語リスニング学習は、特定のハードウェアに限定されることはない。学習装置のハードウェア的な内部構成も、一般的な電子ゲーム装置等と同様であり、図7には、データ及びソフトウェアが格納された状態での本発明による学習装置の内部構成の概略が示されている。学習装置100(図1)は、テキストが表示されるディスプレイ704と、音声出力のための音声出力部705とがあり、表示される又は音声出力されるテキスト・データと音声データとは、記憶媒体702に記憶されている。電源をオンして学習を開始する際には、中央処理装置(CPU)701からの命令により、記憶媒体702から音声データが読み出され、音声出力部705から音声出力される。この音声出力に応答して、読み上げられた英文の内容に関する問題であるテキスト情報が、記憶媒体702から読み出され、ディスプレイ704上に表示される。学習者は、カーソル移動手段などの入力手段703を介して表示されている複数の選択肢の中の1つを選択する。
【0028】
以上で述べたように、本発明の学習装置を用いれば、携帯型ゲーム機のような装置を用いて英文リスニングの学習ができ、やみくもな反復練習を強いるのではなく、個々の学習者の弱点を判定した上で、その弱点を克服する学習が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明による学習装置の外見である。
【図2】音声出力された英文を聴き取れない理由を明らかにするための本発明による判定のための流れ図である。
【図3】紛らわしい音素を聞き分ける訓練をする際の表示例である。
【図4】連続的に発音されると音素が変化する例を知識として学習する際の表示例である。
【図5】選択肢が生成される様子を示す表示例である。
【図6】文法事項を確認しながら聴き取り練習をする際の表示例である。
【図7】本発明による学習装置の内部構成の例である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は複数の英文で構成される文字群である英文テキストと前記英文テキストを読み上げた音声とが複数記憶されている記憶手段と、前記英文テキストを表示するディスプレイと、前記音声を出力する音声出力部と、を少なくとも備えた学習装置であって、
(a)前記記憶手段に記憶されている音声を読み出し、前記音声出力部から音声出力する手段と、
(b)前記音声出力部からの音声出力に応答して、前記出力された音声に相当する英文テキストを、前記記憶手段から読み出し、前記英文テキストの全部又は一部が隠された状態で、隠されている全部又は一部の最初の部分を問う問題として前記ディスプレイ上に表示し、更に、前記問題の正解を含む複数の選択肢を前記ディスプレイ上に表示する手段と、
(c)手段(b)による問題表示に対して前記正解である選択肢が選択された場合には、選択された正解を表示し、前記英文テキストの隠されている次の部分を問う次の問題と、前記次の問題に対する正解を含む複数の選択肢とを、前記ディスプレイ上に表示する手段と、
(d)手段(b)による問題表示に対して前記正解以外の選択肢が選択された場合には、選択された選択肢が正解でない旨を告知し、前記正解を依然として含む複数の選択肢を前記ディスプレイ上に継続して表示し続ける手段と、
(e)前記英文テキストの隠されている全部又は一部のすべてが前記ディスプレイ上に表示されるまで、手段(c)及び手段(d)にそれぞれの手段による動作を反復させる手段と、
を備えており、前記正解でない選択肢は、経験的に生じやすい誤答例として予め得られているパターンを少なくとも1つ含むことを特徴とする学習装置。
【請求項2】
請求項1記載の学習装置において、手段(b)によって表示される英文テキストで隠されているのは1つの単語だけであることを特徴とする学習装置。
【請求項3】
請求項1記載の学習装置において、手段(b)によって表示される英文テキストで隠されているのは複数の単語であり、前記複数の単語は連続的に発音される場合には単独で発音される場合とは異なる音素を含みうることを特徴とする学習装置。
【請求項4】
1又は複数の文で構成される文字群である英文テキストと前記英文テキストを読み上げた音声とが複数記憶されている記憶手段と、前記英文テキストを表示するディスプレイと、前記音声を出力する音声出力部と、を少なくとも備えた学習装置であって、
(a)前記記憶手段に記憶されている音声を読み出し、前記音声出力部から音声出力する手段と、
(b)前記音声出力部からの音声出力に応答して、前記出力された音声の内容に関する問題と前記問題の正解を含む複数の選択肢を前記ディスプレイ上に表示する手段と、
(c)手段(b)による問題表示に対して前記正解である選択肢が選択された場合には、選択された選択肢が正解である旨を告知する手段と、
(d)手段(b)による問題表示に対して前記正解以外の選択肢が選択された場合には、選択された選択肢が正解でない旨を告知し、前記正解を依然として含む複数の選択肢を前記ディスプレイ上に継続して表示し続ける手段と、
(e)前記出力された音声の内容に関するすべての問題が表示されるまで、手段(c)及び手段(d)にそれぞれの手段による動作を反復させる手段と、
(f)手段(b)による問題表示に対して前記正解以外の選択肢が選択された場合には、手段(a)によって出力された音声の中の、前記表示された問題に関係する部分のみを再出力し、前記再出力された音声の内容に関する問題と前記問題の正解を含む複数の選択肢を前記ディスプレイ上に表示する手段と、
(g)手段(f)による問題表示に対して前記正解である選択肢が選択された場合には、選択された選択肢が正解である旨を告知する手段と、
(h)手段(f)による問題表示に対して前記正解以外の選択肢が選択された場合には、選択された選択肢が正解でない旨を告知し、前記正解を依然として含む複数の選択肢を前記ディスプレイ上に継続して表示し続ける手段と、
(i)前記再出力された音声の内容に関して予め用意されたすべての問題が表示されるまで、手段(g)及び手段(h)にそれぞれの手段による動作を反復させる手段と 、
を備えており、前記正解でない選択肢は、経験的に生じやすい誤答例として予め得られているパターンを少なくとも1つ含むことを特徴とする学習装置。
【請求項5】
1又は複数の英文で構成される文字群である英文テキストと前記英文テキストを読み上げた音声とが複数記憶されている記憶ステップと、前記英文テキストを表示するディスプレイと、前記音声を出力する音声出力部と、を少なくとも備えた学習装置の制御方法であって、
(a)前記記憶手段に記憶されている音声を読み出し、前記音声出力部から音声出力するステップと、
(b)前記音声出力部からの音声出力に応答して、前記出力された音声に相当する英文テキストを、前記記憶手段から読み出し、前記英文テキストの全部又は一部が隠された状態で、隠されている全部又は一部の最初の部分を問う問題として前記ディスプレイ上に表示し、更に、前記問題の正解を含む複数の選択肢を前記ディスプレイ上に表示するステップと、
(c)ステップ(b)による問題表示に対して前記正解である選択肢が選択された場合には、選択された正解を表示し、前記英文テキストの隠されている次の部分を問う次の問題と、前記次の問題に対する正解を含む複数の選択肢とを、前記ディスプレイ上に表示するステップと、
(d)ステップ(b)による問題表示に対して前記正解以外の選択肢が選択された場合には、選択された選択肢が正解でない旨を告知し、前記正解を依然として含む複数の選択肢を前記ディスプレイ上に継続して表示し続けるステップと、
(e)前記英文テキストの隠されている全部又は一部のすべてが前記ディスプレイ上に表示されるまで、ステップ(c)及びステップ(d)にそれぞれのステップによる動作を反復させるステップと、
を備えており、前記正解でない選択肢は、経験的に生じやすい誤答例として予め得られているパターンを少なくとも1つ含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1記載の方法において、ステップ(b)によって表示される英文テキストで隠されているのは1つの単語だけであることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1記載の方法において、ステップ(b)によって表示される英文テキストで隠されているのは複数の単語であり、前記複数の単語は連続的に発音される場合には単独で発音される場合とは異なる音素を含みうることを特徴とする方法。
【請求項8】
1又は複数の文で構成される文字群である英文テキストと前記英文テキストを読み上げた音声とが複数記憶されている記憶手段と、前記英文テキストを表示するディスプレイと、前記音声を出力する音声出力部と、を少なくとも備えた方法であって、
(a)前記記憶手段に記憶されている音声を読み出し、前記音声出力部から音声出力するステップと、
(b)前記音声出力部からの音声出力に応答して、前記出力された音声の内容に関する問題と前記問題の正解を含む複数の選択肢を前記ディスプレイ上に表示するステップと、
(c)ステップ(b)による問題表示に対して前記正解である選択肢が選択された場合には、選択された選択肢が正解である旨を告知するステップと、
(d)ステップ(b)による問題表示に対して前記正解以外の選択肢が選択された場合には、選択された選択肢が正解でない旨を告知し、前記正解を依然として含む複数の選択肢を前記ディスプレイ上に継続して表示し続けるステップと、
(e)前記出力された音声の内容に関するすべての問題が表示されるまで、ステップ(c)及びステップ(d)にそれぞれのステップによる動作を反復させるステップと、
(f)ステップ(b)による問題表示に対して前記正解以外の選択肢が選択された場合には、ステップ(a)によって出力された音声の中の、前記表示された問題に関係する部分のみを再出力し、前記再出力された音声の内容に関する問題と前記問題の正解を含む複数の選択肢を前記ディスプレイ上に表示するステップと、
(g)ステップ(f)による問題表示に対して前記正解である選択肢が選択された場合には、選択された選択肢が正解である旨を告知するステップと、
(h)ステップ(f)による問題表示に対して前記正解以外の選択肢が選択された場合には、選択された選択肢が正解でない旨を告知し、前記正解を依然として含む複数の選択肢を前記ディスプレイ上に継続して表示し続けるステップと、
(i)前記再出力された音声の内容に関して予め用意されたすべての問題が表示されるまで、ステップ(g)及びステップ(h)にそれぞれのステップによる動作を反復させるステップと、
を備えており、前記正解でない選択肢は、経験的に生じやすい誤答例として予め得られているパターンを少なくとも1つ含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
コンピュータに、請求項5ないし請求項8のいずれかの請求項記載の方法に含まれているステップを実行させるコンピュータ・ソフトウェアが記憶されていることを特徴とするコンピュータが読取可能な記憶媒体。
【請求項10】
コンピュータに、請求項5ないし請求項8のいずれかの請求項記載の方法に含まれているステップを実行させるコンピュータ・ソフトウェア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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