説明

茶エキス及びその製造方法

【課題】本発明の目的は、化学的に合成された香気物質を調合することなく、安価な酵素を用いて、香気が強化された茶エキスを得る方法を提供することである。
【解決手段】本発明は、原料茶類から茶エキスを抽出する時及び/又は抽出した後、多糖類分解酵素処理を行う茶エキスの製造方法であって、多糖類分解酵素処理時の茶エキスのpHが3〜7であり、処理時間が3〜48時間である、前記製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は茶エキスの抽出時又は抽出後に酵素を作用させて得られる香気が強化された茶エキスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
茶飲料、茶エキスへの酵素を利用した品質改善方法としては、例えば沈殿を防止する目的として緑茶抽出液をβ−マンナナーゼで処理する飲料の製造方法(特許文献1)、緑茶抽出液をヘミセルラーゼで処理する飲料の製造方法(特許文献2)が開示されている。
また、旨味やコクを増加させる方法として茶葉原料をプロテアーゼ及びタンナーゼの存在下に抽出する方法(特許文献3)、また、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ及びプロトペクチナーゼを少なくとも有する酵素群を用い、茶葉を酵素分解抽出処理する方法(特許文献4)、茶類原料の抽出時および/または抽出後に糖類分解酵素を用いて酵素分解処理する茶エキスの製造方法(特許文献5)が開示されている。
しかし、これらの製法は長期保管における沈殿の発生の防止、旨味の増強、渋味の低減などを目的とした製法であり、香りの観点では満足の出来るものではなかった。
また、茶類の香気を酵素によって高める方法として、緑茶の抽出液に配糖体分解酵素を作用させる製法(特許文献6)、茶葉にタンナーゼ処理時又は処理後に配糖体分解酵素を作用させる製法(特許文献7)、微生物由来のジグリコシダーゼを作用させる方法(特許文献8)が知られている。
しかし、これらの製法で使用される配糖体分解酵素は非常に高価であり、工業的に利用することに問題があった。
【0003】
茶類は、その製造工程中の発酵度合いにより主に緑茶に代表される不発酵茶、ウーロン茶に代表される半発酵茶、紅茶に代表される完全発酵茶の3種類に大別され、世界中で幅広く飲用されている。最近は、茶を抽出したエキスを容器に入れた茶類飲料の開発が行われている。これらの茶類飲料は主に、茶葉を熱水又は温水抽出して抽出液を得、これを飲料濃度まで希釈した後、缶やペットボトルに充填する前もしくは充填した後に殺菌するという工程を経て製造される。その後、消費者に届くまでの間、常温下または低温下で保存されることになり香気成分の損失は避けられず、家庭で茶葉から入れたものと比べると香りの強度として満足のできるものではなかった。
製造中、保存中の香りの損失を補うべく、化学的に合成された香気物質を調合して得る香料を添加する場合もあるが、近年の食品の安全性への消費者意識の高まり、天然志向の高まりから、特に茶系飲料への香料の使用は敬遠される傾向があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−119209号公報
【特許文献2】特開平8−118684号公報
【特許文献3】特開2003−144049号公報
【特許文献4】特開2003−210110号公報
【特許文献5】特開2008−86280号公報
【特許文献6】特開2004−147606号公報
【特許文献7】特開2006−75112号公報
【特許文献8】国際公開第2003/056930号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、化学的に合成された香気物質を調合することなく、安価な酵素を用いて、香気が強化された茶エキスを得る方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、茶エキスの風味を改善すべく鋭意研究を重ねた結果、茶エキスの抽出時又は抽出後に特定の酵素を特定の条件下で作用させることによってBrix 1%当たりのサリチル酸メチルの濃度を40ppb以上とすることにより、これまでになく強い香りをもつ茶エキスを得ることができることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、原料茶類から茶エキスを抽出する時及び/又は抽出した後、多糖類分解酵素処理を行う茶エキスの製造方法であって、多糖類分解酵素処理時の茶エキスのpHが3〜7であり、処理時間が3〜48時間である、前記製造方法を提供する。
また、本発明は、原料茶類から茶エキスを抽出する時及び/又は抽出した後に多糖類分解酵素処理した茶エキスであって、Brix 1%当たりのサリチル酸メチルの含有量が40ppb以上である、前記茶エキスを提供する。
さらに、本発明は、上記製造方法により得られる茶エキス又は上記茶エキスを配合して得られる容器詰茶飲料を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、化学的に合成された香気物質を調合することなく、香気が強化された茶エキスを安価に得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の茶エキスの製造方法は、原料茶類から茶エキスを抽出する時及び/又は抽出した後、多糖類分解酵素処理を行うことを特徴とする。
本発明においては、ツバキ科の植物チャ(学術名Camellia sinensis)の芽及び葉を原料とする茶であれば原料茶類として限定なく用いることができる。茶には、中国種(Camellia sinensis var sinensis)、アッサム種(Camellia sinensis var assamica)、カンボジア種(Camellia sinensis var ssp. lasiocalyx)などがあり、本発明ではそのいずれも用いることができる。具体的には、不醗酵茶(煎茶、かぶせ茶、玉露、碾茶、抹茶、玉緑茶、番茶、ほうじ茶、釜炒茶など)、半醗酵茶(包種茶、鉄観音茶、ウーロン茶など)、醗酵茶(紅茶、阿波番茶、碁石茶、富山黒茶、磚茶、プーアール茶など)が挙げられる。上記の茶を複数種適度な割合でブレンドしたものを用いてもよい。
【0009】
原料茶類から茶エキスを抽出する方法としては、上記原料茶葉を一般的な方法でエキスにすればよい。例えば、抽出釜に茶葉を仕込んだ後に所定量の水で一定時間浸漬させ、茶殻を除去して抽出液を得る方法や、抽出槽に茶葉を充填した後に一定流量の水を送液して所定量の抽出液を得る方法などが挙げられる。抽出の際に使用する水としては、水道水、イオン交換水、蒸留水、ナチュラルウォーター、ナチュラルミネラルウォーター、脱気水、アスコルビン酸溶解水、pH調整水(緩衝液を含む)などが挙げられる。抽出の際に使用する水の量は、原料茶葉が十分に浸る量であれば特に限定されないが、通常使用する原料茶葉の質量に対して5倍量以上が好ましく、より好ましくは10〜50倍量であり、さらに好ましくは10〜25倍量である。抽出の際に使用する水の温度は、抽出できる温度であれば特に限定されないが、通常4〜95℃程度であり、特に好ましくは30〜90℃である。抽出時間についても特に限定されないが、通常1分〜12時間程度であり、特に好ましくは5分〜6時間である。
【0010】
多糖類分解酵素としては、香気を発生させる能力を持ち安価な酵素であればなんでも良いが、サリチル酸メチルを目的とする濃度まで発生させるには多くの酵素量を必要とする。活性が低い酵素を使用した場合、酵素の使用量がさらに多くなり、コストが高くなる。また、酵素の使用量を減らせば反応時間を大幅に長くする必要がある。これらのことから、多糖類分解酵素としては、活性が強くかつ安価なもののほうが好ましい。具体的には、多糖類分解酵素として広く工業的に利用されている、ペクチナーゼ、ヘミセルラーゼ、マンナナーゼ、セルラーゼ、キシラナーゼなどを挙げることができる。多糖類分解酵素の使用量は力価、反応条件によって異なるが、例えば、反応させる溶液の質量を基準として、0.001〜10質量%の範囲で添加することを例示できる。なお、本発明においては、多糖類分解酵素をそれぞれ単独で用いてもよいし、また2種以上を組合せて用いてもよい。
多糖類分解酵素処理時の茶エキスのpHは、3〜7であり、好ましくは4〜5.5である。多糖類分解酵素処理の処理時間は、3〜48時間であり、好ましくは10〜24時間である。多糖類分解酵素処理の処理温度は、好ましくは10〜60℃であり、より好ましくは20℃〜50℃である。処理条件が上記範囲内であれば、サリチル酸メチルを効率よく充分量発生させることができる。
【0011】
ペクチナーゼはポリガラクツロナーゼ、ペクチックエンザイム、ポリメチルガラクツロナーゼ、ペクチンデポリメラーゼとも呼ばれ、ペクチニン酸、ペクチン、ペクチン酸などのα(1−4)結合を加水分解する酵素である。また、本発明においては、ガラクツロン酸のカルボキシル基のメチルエステルを加水分解するペクチンメチルエステラーゼもペクチナーゼに含まれる。本発明では、これらをはじめとする、生物から取得したペクチナーゼを広く使用することができる。また、市販のペクチナーゼ製剤を使用してもよい。市販のペクチナーゼ製剤としては、例えば、スクラーゼ(三共社製)、ペクチネックスウルトラSP−L(ノボザイムズ社製)、メイセラーゼ(明治製菓社製)、ウルトラザイム(ノボザイムズ社製)、ペクチナーゼG「アマノ」、ペクチナーゼPL「アマノ」、ニューラーゼF(以上天野エンザイム社製)、スミチームMC(新日本化学工業社製)などを例示することができる。
【0012】
セルラーゼはセルロースを加水分解する活性を有する酵素である。セルロースは植物の細胞壁の主要な構成成分で、親水性は強いが水に不溶である。セルラーゼとしては、セルロースを分解する活性を有するものであれば特に制限はなく任意のものを使用することができ、市販品のセルラーゼ製剤としては例えば、セルラーゼT「アマノ」、セルラーゼA「アマノ」(以上天野エンザイム社製)、ドリセラーゼKSM、マルチフェクトA40、セルラーゼGC220(以上ジェネンコア協和社製)、セルラーゼGODO−TCL、セルラーゼGODO TCD−H、ベッセレックス、セルラーゼGODO−ACD(以上合同酒精社製)、Cellulase(東洋紡績社製)、セルライザー、セルラーゼXL−522(以上ナガセケムテックス社製)、セルソフト、デニマックス(以上ノボザイムズ社製)、セルロシンAC40、セルロシンAL、セルロシンT2(以上エイチビィアイ社製)、セルラーゼ“オノズカ”3S、セルラーゼY−NC(以上ヤクルト薬品工業社製)、スミチームAC、スミチームC(以上新日本化学工業社製)、エンチロンCM、エンチロンMCH、バイオヒット(洛東化成工業社製)などが挙げられる。
【0013】
ヘミセルラーゼは、ヘミセルロースのグリコシド結合を加水分解する反応を行う酵素である。ヘミセルロースとは植物組織中の水に不溶な多糖類のうち、セルロースを除いたものの総称で、キシラン、マンナン、アラバンなどが含まれる。それぞれ、キシランを分解する酵素をキシラナーゼ、マンナンを分解する酵素をマンナナーゼ、アラバンを分解する酵素をアラバナーゼと称し、これらの一群を総称してヘミセルラーゼと呼ぶ。本発明に使用する酵素は、特にその由来等は限定されるものではなく、また精製品であっても未精製な状態のものであっても用いることができる。本発明においては、一般に食品業界においてヘミセルラーゼ、マンナナーゼ、キシラナーゼ、アラバナーゼと称される製剤を用いても良い。具体的には、セルロシンTP25、セルロシンHC 、セルロシンGM5(以上エイチビィアイ社製)、セルラーゼY−NC(以上ヤクルト薬品工業社製)、ヘミセルラーゼ「アマノ」90 (以上天野エンザイム社製)、スミチームACH、スミチームARS(以上新日本化学工業社製)等を用いる事が可能である。
【0014】
本発明の方法により得られた茶エキスは、飲料類、酒類、冷菓・デザート類、焼き菓子類、錠菓類、ガム等の各種飲食品(特に、容器詰)に使用することができる。具体的には、茶飲料(緑茶、烏龍茶、紅茶、混合茶等)、乳飲料、スポーツドリンク、ニアウォーター、栄養ドリンク、炭酸飲料等の飲料類、発泡酒、カクテル等の酒類、プリン、ババロア、ゼリー、ヨーグルト、シャーベット、アイスクリーム等の冷菓・デザート類、クッキー、ビスケット等の焼き菓子類、キャンディ、タブレット等の錠菓類、ガム等が挙げられる。
【実施例】
【0015】
<緑茶エキスA>
緑茶葉3.3kgをカラムに充填し、32℃のイオン交換水40kgをカラム下部より通液し、カラム上部より抽出液を回収、Brix 5.0%の抽出液を19.8kg得た。
この抽出液をろ紙ろ過により固液分離した後、95℃で30秒間殺菌し、Brix 5.0%、pH 6.0のエキスを15.8kg得た。
【0016】
<実施例1>
100gの緑茶エキスAにビタミンCを0.1g添加し、Brix 5.1%、pH 5.1とした。次いでペクチナーゼG「アマノ」(天野エンザイム社製)を0.5g添加し、40℃で18時間反応させ、次いで重曹にてpHを6.0に調製した。このエキスをろ紙ろ過した後、80℃で10分間殺菌し、Brix 5.2%、pH 6.0のエキスを得た。
【0017】
<実施例2>
実施例1において、ペクチナーゼG「アマノ」の代わりにセルロシンAC40(セルラーゼ)(エイチビィアイ社製)を0.5g添加した以外は実施例1と同様に処理し、Brix 5.3%、pH 6.0のエキスを得た。
【0018】
<実施例3>
実施例1において、ペクチナーゼG「アマノ」の代わりにヘミセルラーゼ「アマノ」90(天野エンザイム社製)を0.5g添加した以外は実施例1と同様に処理し、Brix 5.6%、pH 6.0のエキスを得た。
【0019】
<実施例4>
実施例1において、ペクチナーゼG「アマノ」の代わりにセルロシンGM5(マンナナーゼ)(エイチビィアイ社製)を0.5g添加した以外は実施例1と同様に処理し、Brix 5.3%、pH 6.0のエキスを得た。
【0020】
<実施例5>
実施例1において、ペクチナーゼG「アマノ」の代わりにセルロシンHC(キシラナーゼ)(エイチビィアイ社製)を0.5g添加した以外は実施例1と同様に処理し、Brix 5.4%、pH 6.0のエキスを得た。
【0021】
<比較例1>
緑茶エキスAに、ペクチナーゼG「アマノ」(天野エンザイム社製)を0.1g添加し、40℃で1時間反応させ、これをろ過した後、80℃で10分間殺菌し、Brix 5.0%、pH 6.0のエキスを得た。
【0022】
<比較例2>
緑茶エキスAに、セルロシンAC40(セルラーゼ)(エイチビィアイ社製)を0.1g添加し、40℃で1時間反応させ、これをろ過した後、80℃で10分間殺菌し、Brix 5.0%、pH 6.0のエキスを得た。
【0023】
<比較例3>
緑茶エキスAに、ヘミセルラーゼ「アマノ」90(天野エンザイム社製)を0.1g添加し、40℃で1時間反応させ、これをろ過した後、80℃で10分間殺菌し、Brix 5.0%、pH 6.0のエキスを得た。
【0024】
<比較例4>
緑茶エキスAに、セルロシンGM5(マンナナーゼ)(エイチビィアイ社製)を0.1g添加し、40℃で1時間反応させ、これをろ過した後、80℃で10分間殺菌し、Brix 5.0%、pH 6.0のエキスを得た。
【0025】
<比較例5>
緑茶エキスAに、セルロシンHC(キシラナーゼ)(エイチビィアイ社製)を0.1g添加し、40℃で1時間反応させ、これをろ過した後、80℃で10分間殺菌し、Brix 5.0%、pH 6.0のエキスを得た。
【0026】
(香気分析)
緑茶エキスA、実施例1〜5及び比較例1〜5で得られた緑茶エキスについて、各々の試料10gそれぞれに塩化ナトリウム3gを溶解し、1mlのヘキサンにて抽出した。水層と有機層に分離した後、有機層を回収し、下記の条件でガスクロマトグラフィー分析を行った。
ガスクロマトグラフィー条件:
機種:ジーエルサイエンス GC390
カラム:ジーエルサイエンス TC-WAX 30m×0.25mm
カラム温度:60℃〜230℃
昇温速度:4℃/分
注入温度:250℃
検出温度:250℃
キャリアガス:N2
上記条件にて求められたサリチル酸メチル濃度を各エキスのBrixの値で除し、Brix 1%当たりのサリチル酸メチル濃度を調べた。
【0027】
(官能評価)
緑茶エキスA、実施例1〜5、比較例1〜5で得られた緑茶エキスの香りの強さを比較した。各エキスをBrix 0.2%に希釈し、良く訓練されたパネラー5名により評価した。評価基準は以下の通り。
香り:
5 非常に強い、
4 強い、
3 どちらでもない、
2 弱い、
1 非常に弱い
【0028】
【表1】

【0029】
表1に示すとおり、本発明品は緑茶エキスA及び比較例に比べてサリチル酸メチルの濃度が劇的に増加しており、また、それに伴って官能的にも香り高く、優れた風味を有していた。比較例の反応条件ではサリチル酸メチルの濃度に変化はなく、官能も満足のできるものではなかった。
【0030】
<烏龍茶エキスA>
烏龍茶4.0kgをカラムに充填し、70℃のイオン交換水36kgをカラム下部より通液し、カラム上部より抽出液を回収、Brix 5.0%の抽出液を24kg得た。
この抽出液をろ紙ろ過により固液分離した後、95℃で30秒間殺菌し、Brix 5.0%、pH 5.2のエキス20kgを得た。
【0031】
<実施例6>
100gの烏龍茶エキスAにペクチナーゼG「アマノ」(天野エンザイム社製)を0.5g添加し、50℃で18時間反応させた。次いでこのエキスをろ紙ろ過した後、80℃で10分間の殺菌を行い、Brix 4.7%、pH 5.0のエキスを得た。
【0032】
<実施例7>
実施例6において、ペクチナーゼG「アマノ」の代わりにセルロシンAC40(セルラーゼ)(エイチビィアイ社製)を0.5g添加した以外は実施例6と同様に処理し、Brix 5.2%、pH 4.9のエキスを得た。
【0033】
<実施例8>
実施例6において、ペクチナーゼG「アマノ」の代わりにヘミセルラーゼ「アマノ」90(天野エンザイム社製)を0.5g添加した以外は実施例6と同様に処理し、Brix 5.4%、pH 4.8のエキスを得た。
【0034】
<実施例9>
実施例6において、ペクチナーゼG「アマノ」の代わりにセルロシンGM5(マンナナーゼ)(エイチビィアイ社製)を0.5g添加した以外は実施例6と同様に処理し、Brix 5.2%、pH 4.8のエキスを得た。
【0035】
<実施例10>
実施例6において、ペクチナーゼG「アマノ」の代わりにセルロシンHC(キシラナーゼ)(エイチビィアイ社製)を0.5g添加した以外は実施例6と同様に処理し、Brix 5.4%、pH 5.0のエキスを得た。
【0036】
<比較例6>
烏龍茶エキスAに、ペクチナーゼG「アマノ」(天野エンザイム社製)を0.1g添加し、40℃で1時間反応させ、これをろ過した後、80℃で10分間殺菌し、Brix 5.0%、pH 5.0のエキスを得た。
【0037】
<比較例7>
烏龍茶エキスAに、セルロシンAC40(セルラーゼ)(エイチビィアイ社製)を0.1g添加し、40℃で1時間反応させ、これをろ過した後、80℃で10分間殺菌し、Brix 5.0%、pH 5.0のエキスを得た。
【0038】
<比較例8>
烏龍茶エキスAに、ヘミセルラーゼ「アマノ」90(天野エンザイム社製)を0.1g添加し、40℃で1時間反応させ、これをろ過した後、80℃で10分間殺菌し、Brix 5.0%、pH 5.0のエキスを得た。
【0039】
<比較例9>
烏龍茶エキスAに、セルロシンGM5(マンナナーゼ)(エイチビィアイ社製)を0.1g添加し、40℃で1時間反応させ、これをろ過した後、80℃で10分間殺菌し、Brix 5.0%、pH 5.0のエキスを得た。
【0040】
<比較例10>
烏龍茶エキスAに、セルロシンHC(キシラナーゼ)(エイチビィアイ社製)を0.1g添加し、40℃で1時間反応させ、これをろ過した後、80℃で10分間殺菌し、Brix 5.0%、pH 5.0のエキスを得た。
【0041】
(香気分析及び官能評価)
烏龍茶エキスA、実施例6〜10及び比較例6〜10で得られた烏龍茶エキスについて、香気分析及び官能評価を行った。分析方法及び官能評価基準は実施例1〜5に従った。
【0042】
【表2】

【0043】
表2に示すとおり、実施例6〜10では反応前の烏龍茶エキスAからサリチル酸メチル濃度が格段に増加しており、それに伴って官能評価でも香りが強いことを示す結果が得られた。一方、比較例6〜10ではBrix 1%当たりのサリチル酸メチル濃度が40ppbに満たず、むしろ酵素処理によって香りが弱くなっているとの結果であった。
【0044】
<紅茶エキスA>
紅茶4.0kgをカラムに充填し、70℃のイオン交換水36kgをカラム下部より通液し、カラム上部より抽出液を回収、Brix 5.0%、pH 4.7の抽出液を24kg得た。
この抽出液をろ紙ろ過により固液分離した後、95℃で30秒間殺菌し、Brix 5.0%のエキス20kgを得た。
【0045】
<実施例11>
100gの紅茶エキスAにペクチナーゼG「アマノ」(天野エンザイム社製)を0.5g添加し、50℃で18時間反応させた。次いでこのエキスをろ紙ろ過した後、80℃で10分間殺菌し、Brix 4.7%、pH 4.7のエキスを得た。
【0046】
<実施例12>
実施例11において、ペクチナーゼG「アマノ」の代わりにセルロシンAC40(セルラーゼ)(エイチビィアイ社製)を0.5g添加した以外は実施例11と同様に処理し、Brix 5.1%、pH 4.6のエキスを得た。
【0047】
<実施例13>
実施例11において、ペクチナーゼG「アマノ」の代わりにヘミセルラーゼ「アマノ」90(天野エンザイム社製)を0.5g添加した以外は実施例11と同様に処理し、Brix 5.1%、pH 4.6のエキスを得た。
【0048】
<実施例14>
実施例11において、ペクチナーゼG「アマノ」の代わりにセルロシンGM5(マンナナーゼ)(エイチビィアイ社製)を0.5g添加した以外は実施例11と同様に処理し、Brix 5.0%、pH 4.6のエキスを得た。
【0049】
<実施例15>
実施例11において、ペクチナーゼG「アマノ」の代わりにセルロシンHC(キシラナーゼ)(エイチビィアイ社製)を0.5g添加した以外は実施例11と同様に処理し、Brix 5.4%、pH 4.6のエキスを得た。
【0050】
<比較例11>
紅茶エキスAに、ペクチナーゼG「アマノ」(天野エンザイム社製)を0.1g添加し、40℃で1時間反応させ、これをろ過した後、80℃で10分間殺菌し、Brix 5.0%、pH 4.6のエキスを得た。
【0051】
<比較例12>
紅茶エキスAに、セルロシンAC40(セルラーゼ)(エイチビィアイ社製)を0.1g添加し、40℃で1時間反応させ、これをろ過した後、80℃で10分間殺菌し、Brix 5.0%、pH 4.7のエキスを得た。
【0052】
<比較例13>
紅茶エキスAに、ヘミセルラーゼ「アマノ」90(天野エンザイム社製)を0.1g添加し、40℃で1時間反応させ、これをろ過した後、80℃で10分間殺菌し、Brix 5.0%、pH 4.7のエキスを得た。
【0053】
<比較例14>
紅茶エキスAに、セルロシンGM5(マンナナーゼ)(エイチビィアイ社製)を0.1g添加し、40℃で1時間反応させ、これをろ過した後、80℃で10分間の殺菌を行い、Brix 5.0%、pH 4.6のエキスを得た。
【0054】
<比較例15>
紅茶エキスAに、セルロシンHC(キシラナーゼ)(エイチビィアイ社製)を0.1g添加し、40℃で1時間反応させ、これをろ過した後、80℃で10分間殺菌し、Brix 5.0%、pH 4.6のエキスを得た。
【0055】
(香気分析及び官能評価)
紅茶エキスA、実施例11〜15及び比較例11〜15で得られた紅茶エキスについて、香気分析及び官能評価を行った。分析方法及び官能評価基準は実施例1〜5に従った。
【0056】
【表3】

【0057】
表3に示すとおり、実施例11〜15では反応前の紅茶エキスAに比べサリチル酸メチル濃度が格段に増加しており、それに伴って官能評価でも香りが強いことを示す結果が得られた。一方、比較例11〜15ではBrix 1%当たりのサリチル酸メチル濃度が紅茶エキスAの24ppbよりも低く、官能評価の結果も紅茶エキスAと比べ、香りの強さに大きな差を見出すことは出来なかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料茶類から茶エキスを抽出する時及び/又は抽出した後、多糖類分解酵素処理を行う茶エキスの製造方法であって、多糖類分解酵素処理時の茶エキスのpHが3〜7であり、処理時間が3〜48時間である、前記製造方法。
【請求項2】
多糖類分解酵素がペクチナーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、マンナナーゼ、キシラナーゼ及びこれらの混合物からなる群より選ばれる、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
多糖類分解酵素処理の処理温度が30〜60℃であり、処理時間が10〜24時間である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
原料茶類から茶エキスを抽出する時及び/又は抽出した後に多糖類分解酵素処理した茶エキスであって、Brix 1%当たりのサリチル酸メチルの含有量が40ppb以上である、前記茶エキス。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項記載の製造方法により得られる茶エキス又は請求項4記載の茶エキスを配合して得られる容器詰茶飲料。

【公開番号】特開2010−172258(P2010−172258A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−18286(P2009−18286)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(000169466)高砂香料工業株式会社 (194)
【Fターム(参考)】