説明

草刈作業車両のカバー構造

【課題】 草刈機を車体前方に装着した草刈作業車両のカバー構造、詳しくは車体に載置されるエンジン等を覆う車体カバーの構造を対象とし、草刈機のカッタに刈られて飛散した細かい草茎が、エンジン等の動力装置に付着することを防止するカバー構造の提供を目的としている。
【解決手段】 草刈機を装着した作業車両の車体に載置される作動油タンク、燃料タンク、ラジエータおよびエンジンを覆うカバーを備えた草刈作業車両のカバー構造において、車体に載置される作動油タンク、燃料タンク、ラジエータ、エンジンおよびエンジンの吸気装置を覆う開閉自在な一体の車体カバーを設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、草刈機を車体前方に装着した草刈作業車両に係り、特に、車体に載置されるエンジン等を覆う車体カバーを改良した草刈作業車両のカバー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
草刈り用のカッタ刃を用いた草刈機(以下、ハンマナイフ式草刈機と称する)を、車体前方に備えて成る草刈作業車両としては、従来より様々な構造の草刈作業車両が提供されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図8に示す従来の草刈作業車両は、クローラ式の走行装置61を有する車体62の前方に、ハンマナイフ式の草刈機63が昇降自在に取着され、草刈機63のカッタケース64の下部には、ソリ65がボルト66によって締着されており、ソリ65の下面はハンマナイフ式カッタ11の外径DよりSだけ下方に位置している。
【0004】
また、カッタケース64の前部の左右両側面には、回動アーム70の一端部が回動自在に取着され、上記回動アーム70の他端部は、フロントカバー71の側面板72に回動自在に取着されており、これによってフロントカバー71は、カッタケース64に対して昇降可能に取着されている。
【0005】
上記回動アーム70の上方には、フロントカバー71の上端部とカッタケース64とを連結するコイルバネ73が設けられ、このコイルバネ73はフロントカバー71を下方向に押し下げる方向に付勢している。
【0006】
フロントカバー71の上端縁と、カッタケース64の前部上端縁とには、互いに当接する係合部(図示せず)が設けられ、これら係合部が互いに当接することにより、フロントカバー71は最下位置において、その左右の側面板72の下縁部とソリ65との間に隙間Xを画成する。
【0007】
また、従来の草刈作業車両における車体62のほぼ中央部には、エンジン80および駆動装置81が搭載されており、車体62の後方部には、オペレータシート82および操縦装置83が搭載されている。
【0008】
図8に示した草刈作業車両では、草刈機63の高さを調整して草の刈り取り高さを調整し、カッタ11を回転させつつ車両を前進させることによって草刈り作業が行われ、刈り取られた細かい草茎は草刈機63の後方から排出される。
【0009】
ここで、草刈機63のフロントカバー71は、刈り取る草の背丈が低い場合、最下位置にあって前面開口部の開口量を最小に保ち、石等が草刈機63の前方に飛び出すのを防止する一方、刈り取る草の背丈が高い場合には、上記フロントカバー71が草により押し上げられ、前面開口部の開口量が大きくなることにより、多量の草をカッタケース64の前面開口部から取り込めるようになっている。
【特許文献1】特開平8−37875号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述した従来構造の草刈作業車両においては、以下の如き様々な問題点がある。
【0011】
(1) フロントカバーにおける左右の側面板は、カッタケースの側面に各々別個に回動アームを介して回動自在に取着されているため、フロントカバーの左右いずれか一方が押し上げられた場合、フロントカバーに振じれが発生して昇降作動がスムースに行われない場合がある。
【0012】
(2) フロントカバーにおける側面板の下縁部とソリとの間の隙聞から、刈り取った草茎、塵竣、および小石等が飛散する場合がある。
【0013】
(3) カッタの外径とソリとの距離は、地形等に合わせて簡単に調整できることが望まれる。
【0014】
(4) フロントカバーの最下位置を規定するために、フロントカバーの上端縁とカッタケースの前部上端縁とに係合部を設けているので、構造が複雑化してコストの増大を招く。
【0015】
(5) カッタにより刈った細かい草茎が後方に飛散して、エンジン等の動力装置に付着するために簡単に排除できるものが望まれる。
【0016】
本発明の目的は、上述した実状に着目し、草刈機のカッタに刈られて飛散した細かい草茎が、エンジン等の動力装置に付着することを防止し得る、草刈作業車両のカバー構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、請求項1の発明に関わる草刈作業車両のカバー構造は、草刈機を装着した作業車両の車体に載置される作動油タンク、燃料タンク、ラジエータおよびエンジンを覆うカバーを備えた草刈作業車両のカバー構造において、車体に載置される作動油タンク、燃料タンク、ラジエータ、エンジンおよびエンジンの吸気装置を覆う開閉自在な一体の車体カバーを設けたことを特徴としている。
【0018】
また、請求項2の発明に関わる草刈作業車両のカバー構造は、請求項1の発明に関わる草刈作業車両のカバー構造において、前記車体カバーに、作動油タンクおよび燃料タンクを載置する収容室と、ラジエータおよびエンジンを載置する収容室とから、エンジンの空気吸入通路を仕切る隔壁を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の発明に関わる草刈作業車両のカバー構造によれば、作動油タンク、燃料タンク、ラジエータ、エンジンおよびエンジンの吸気装置を覆う一体の車体カバーを設けたので、車体カバーのみを開くことによって点検整備が容易となるとともに、車体カバーに覆われるエンジンやタンク類は外部に露出しないので、刈り取った草茎等がエンジン室やタンク室等に入ることがなく、外部の障害物との接触によって破損することもないので、極めて安全に草刈り作業を行うことができる。
【0020】
また、請求項2の発明に関わる草刈作業車両のカバー構造によれば、請求項1の発明による作用効果に併せて、車体カバーに、作動油タンクおよび燃料タンクを載置する収容室と、ラジエータおよびエンジンを載置する収容室とから、エンジンの空気吸入通路を仕切る隔壁を設けて、エンジンの空気吸入通路を車体カバーの内部に形成したことにより、塵竣等がエンジンの吸気装置に侵入することがなく、もってエンジンの耐久性を大幅に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係る草刈作業車両のカバー構造について、実施例を示す図1〜図7を参照しつつ詳細に説明する。
図1に示す如く、実施例の草刈作業車両1において、クローラ式の走行装置2を有する車体3の前部には、ハンマナイフ式カッタを備えた草刈り作業機10(以下、草刈機10と称する)がピン4を介して取着され、上記草刈機10は図示しないリフトシリンダによって上下方向に揺動する。
【0022】
上記草刈機10において、ハンマナイフ式のカッタ11を覆うカッタケース12の両側面には、リンク13の基端部がボルト14により回動自在に取着され、上記リンク13の先端部には、フロントカバー20の側面板21が回動自在に取着されている。
【0023】
フロントカバー20の上端部に設けられたピン22には、コイルバネ23の一端部が回動自在に取着されている一方、カッタケース12の側面には、コイルバネ23の他端部が回動自在に取着されており、上記コイルバネ23は、フロントカバー20をカッタケース12方向に付勢している。
【0024】
フロントカバー20に上向きの外力が加わると、フロントカバー20は自重の力に抗して上昇し、この時、フロントカバー20の上端部のピン22は、カッタケース12の前方上縁部15に沿って移動する。
【0025】
すなわち、草の背丈が低い場合には、フロントカバー20の前方の関口量は最小H1となって、小石等が前方へ飛散することを防止し、一方、草の背丈が高い場合には、フロントカバー20は草に押されて最大H2まで上昇し、多量の草をカッタケース12内へ取り込む。
【0026】
カッタケース12の両側面の下方には、左右一対のソリ30が配設されており、ソリ30の前方側に固設された第lブラケット31は、ボルト32によってカッタケース12の側面に回動自在に取着され、ソリ30の後方側に固設された第2ブラケット33に設けられた長孔34は、ボルト35によってカッタケース12の側面に締着され、上記ソリ30の下面は、カッタ11の外径DよりLだけ下方に位置している。
【0027】
ここで上記ソリ30は、第1ブラケット31のボルト32を中心として、長孔34の範囲内において揺動可能であり、カッタ11の外径Dとソリ30の下面との距離Lを調整することができ、したがって各種の地形に対応して所定の距離Lを選択することができる。
【0028】
図3に示すように、フロントカバー20が最下位置にある時、フロントカバー20を支持するリンク13の下面が、第1ブラケット31の上面に当接して位置決めされることで、フロントカバー20の前方の関口量は最小H1となり、この状態において、フロントカバー20の側面板21はソリ30の内側まで覆っており、刈り取った草茎や小石等が側方へ飛散することが防止される。上述のように、第1ブラケット31がフロントカバー20の最下位置を規制する位置決めストッパを兼ねるので、構造が簡素化されてコストも安価なものとなる。
【0029】
図5に示すように、カッタケース12の側面には、リンク13の基端部がカラー16を介してボルト14により回動自在に取着されており、上記リンク13の先端部に固設された筒状部材17には、軸24の一端部が嵌入されて固定ピン25により固着され、上記軸24はフロントカバー20の側面板21の前端部に固設されたパイプ材26に回動自在に挿入されている。
【0030】
ここで、上記左右のリンク13は、軸24およびピン25を介して互いに連結されているため、フロントカバー20の左右いずれか一方にのみ外力が加わった場合でも容易に振じれることはなく、したがってフロントカバー20の開閉作動を良好に行うことができる。
【0031】
一方、実施例の草刈作業車両1における車体3の構造は、図1および図2に示すように、車体3の前部に作動油タンク40および燃料タンク41が配設され、その後方にはエンジン42およびラジエータ43を収納したエンジン室44が設けられており、上記エンジン室44の上面には、吸入空気を浄化するエアフィルタ45が載置され、車体3の外周側面部は外装46によって覆われている。
【0032】
上記外装46の上部には、車体3の上部を覆うことにより作動油タンク40、燃料タンク41、エンジン室44およびエアフィルタ45を覆う、一体の車体カバー50が設けられており、上記車体カバー50の前端部は、外装46に蝶番51を介して開閉自在に取着されている。
【0033】
図7に示すように、矩形枠状に構成されたエアフィルタ45の内側の、エンジン室44における天井板には、ラジエータ43への通気口(図示せず)とエンジン吸入空気口52とが設けられ、図1に示すように、上記車体カバー50には、該車体カバー50を閉じたときに、作動油タンク40および燃料タンク41を覆い、エンジン室44の天井板に接続する隔壁53が設けられ、車体カバー50内の上部には空気吸入通路54が形成されている。
【0034】
また、上記車体カバー50の上部壁面には、前面に向いた空気吸入口55が設けられており、図示しないものの、車体カバー50の前面のみならず、後面および右側面にも、同様の空気吸入口が設けられている。
【0035】
上記車体カバー50を開放すると、作動油タンク40、燃料タンク41、およびエアフィルタ45が露出するので、上記エアフィルタ45の清掃および交換や、作動油タンク40および燃料タンク41回りの清掃等を、極めて容易に行うことができ整備性が良い。
【0036】
一方、車体カバー50を閉じた状態でエンジン42を作動すると、車体前方側から吸入される空気は、空気吸入口55から空気吸入通路54に入り、エアフィルタ45を通って浄化され、次いでエアクリーナ(図示せず)を通ってエンジン42に供給される。
【0037】
また、ラジエータ43を冷却する空気は、天井板の通気口(図示せず)を通ってエンジン室44内に入り、外装46の側面に設けた排気口(図示せず)から外部に排出される。すなわち、上記エンジン室44には、浄化された空気のみが供給され、これによってエンジン42の耐久性が向上することとなる。
【0038】
以上のとおり、実施例の草刈作業車両1によれば、カッタケース12の左右側面に回動自在に取着する左右一対のリンク13と、この左右一対のリンク13の先端部と1つの軸24により開閉自在に取着するフロントカバー20とを備え、フロントカバー20を支持する左右のリンク13の先端部はlつの軸24により取着されているため、フロントカバー20の左右いずれか一方が押し上げられて偏荷重が加わっても、フロントカバー20は捩れることなく開閉作動することができる。
【0039】
このようにして、フロントカバー20の開閉作動が良好となるので、草刈り作業に支障がなく作業性が向上するとともに、フロントカバー20に変形等の発生がないので耐久性が向上することとなる。
【0040】
また、上記フロントカバー20に、カッタケース12と該カッタケース12の左右側面の下方部に配設されるソリ30との隙聞を覆う左右の側面板21を設けたので、草刈り作業中にフロントカバー20の側面から刈り取った草茎や小石等が、草刈機10から外側に向けて飛散することがなく、これによって草刈り作業を安全かつ効率良く行うことができる。
【0041】
さらに、カッタケース12の左右側面の下方部にソリ30を配設するとともに、カッタケース12に対してソリ30を一方側で第1ブラケット31に回動自在に取着し、かつ他方側で第2ブラケット32の長孔34により、上下方向に調整可能に取着したので、ソリ30を第1ブラケット31の回動中心を中心として回動させることにより、カッタケース12とソリ30との相対位置を非常に簡単に調整することができる。
【0042】
これにより、カッタ11の外径とソリ30の下面との距離Lを調整することで、河川敷、山間部の傾斜地、あるいはスキー場等の草刈り作業を行うのに有効であり、さらに上記第1ブラケット31が、フロントカバー20の最下位置を規定するストッパの役目を兼ねることで、構造が簡素化されてコストが安価なものとなる。
【0043】
また、実施例の草刈作業車両1によれば、作動油タンク40、燃料タンク41、ラジエー夕43、エンジン42および吸気装置を覆う一体の車体カバー50を設けたので、上記車体カバー50を開くことにより、エンジンやタンク類の点検整備が容易となるとともに、上記車体カバー50を閉じることにより、エンジンやタンク類が外部に露出しないので、刈り取った草茎等がエンジン室やタンク室等に侵入することがなく、また外部の障害物との接触によって破損することもないので、極めて安全に草刈り作業を行うことができる。
【0044】
さらに、上記車体カバー50は、作動油タンク40および燃料タンク41を載置する収納室と、ラジエー夕43およびエンジン42を載置する収納室とから、エンジン42の空気吸入通路54を仕切る隔壁53を設け、車体前方側からのエンジン42の空気吸入通路54は、車体カバー50の内部に形成されるので、塵竣等がエンジン42の吸気装置に侵入することがなく、もってエンジン42の耐久性を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に関わる草刈作業車両の実施例を示す側面図。
【図2】同、草刈作業車両の平面図。
【図3】同、草刈作業車両における草刈機の側面図。
【図4】同、草刈作業車両における草刈機の正面図。
【図5】同、図3のA−A線断面図。
【図6】同、草刈作業車両における車体カバーを開いた状態を示す側面図。
【図7】同、草刈作業車両における車体カバーを開いた状態を示す平面図。
【図8】従来の草刈作業車両の側面図。
【符号の説明】
【0046】
1…草刈作業車両、
3…車体、
10…草刈機、
12…カッタケース、
13…リンク、
17…筒状部材、
20…フロントカバー、
21…側面板、
23…コイルバネ、
24…軸、
25…固定ピン、
26…パイプ材、
30…ソリ、
31…第1ブラケット、
33…第2ブラケット、
34…長孔、
40…作動油タンク、
41…燃料タンク、
42…エンジン、
43…ラジエータ、
44…エンジン室、
45…エアフィルタ、
46…外装、
50…車体カバー、
52…エンジン吸入空気口、
53…隔壁、
54…空気吸入通路、
55…空気吸入口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
草刈機を装着した作業車両の車体に載置される作動油タンク、燃料タンク、ラジエータおよびエンジンを覆うカバーを備えた草刈作業車両のカバー構造において、
車体に載置される作動油タンク、燃料タンク、ラジエータ、エンジンおよびエンジンの吸気装置を覆う開閉自在な一体の車体カバーを設けたことを特徴とする草刈作業車両のカバー構造。
【請求項2】
前記車体カバーは、作動油タンクおよび燃料タンクを載置する収容室と、ラジエータおよびエンジンを載置する収容室とから、エンジンの空気吸入通路を仕切る隔壁を設けたことを特徴とする請求項1記載の草刈作業車両のカバー構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−304809(P2006−304809A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−224061(P2006−224061)
【出願日】平成18年8月21日(2006.8.21)
【分割の表示】特願平10−54144の分割
【原出願日】平成10年2月20日(1998.2.20)
【出願人】(000184632)小松ゼノア株式会社 (60)
【Fターム(参考)】