荷受台昇降装置
【課題】スライドレールに対する潤滑剤の塗布作業を簡易にすることのできる荷受台昇降装置を提供する。
【解決手段】車両後方で地面と荷台との間で昇降され、前記車両に対してスライドして格納される荷受台と、一方向に伸びて前記車両に固定されたスライドレールを摺動するガイド部材とを有する昇降装置において、前記スライドレールには潤滑剤流通路が設けられており、当該潤滑剤流通路は、前記スライドレールの外表面に潤滑剤注入口を有し、前記ガイド部材が摺動する摺動面に潤滑剤吐出口を有する。
【解決手段】車両後方で地面と荷台との間で昇降され、前記車両に対してスライドして格納される荷受台と、一方向に伸びて前記車両に固定されたスライドレールを摺動するガイド部材とを有する昇降装置において、前記スライドレールには潤滑剤流通路が設けられており、当該潤滑剤流通路は、前記スライドレールの外表面に潤滑剤注入口を有し、前記ガイド部材が摺動する摺動面に潤滑剤吐出口を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に対してスライド格納される荷受台昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に対してスライド格納される荷受台昇降装置として、リンク機構を介して荷受台が昇降手段により昇降自在な構成を有し、所定位置まで荷受台が上昇すると荷受台をスライドさせるものがある(特許文献1)。この荷受台のスライドは、荷受台が連結されたスライド部材が、車両に固定されたスライドレールを摺動することで行われる。そのため、スライド性能の低下を防止するため、定期的にスライドレールにグリス等の潤滑剤が塗布される。
【0003】
ところで、この潤滑剤を給脂して塗布する作業は煩雑になり易い。スライドレールが車両の荷台下方に設けられていることや、近傍にリンク機構や荷受台の支持部材などが配されてスライドレールの露出部が限られていること等が大きな要因となっている。
【0004】
そこで、下方に開口部を有して中空形状のスライドレールと、開口部からスライドレールの中空部に挿入されるスライド部材とを有し、その中空部をスライド部材が摺動する構成の荷受台昇降装置も提案されている(特許文献2)。この荷受台昇降装置には、スライド部材のうち開口部から中空部に挿入されている部分に潤滑剤の給脂装置、具体的にはパイプ状の導管が配されており、スライドレールの外方からスライド部材の摺動部分に潤滑剤を送ることで給脂作業を比較的簡易にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−025900号公報
【特許文献2】特開2006−123680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2のようにスライド部材に給脂装置を設けた構成では、荷受台昇降装置を車両後方にスライドさせていない状態で潤滑剤の給脂作業を行うには、作業者が荷台下方に潜り込まなければならず作業が煩雑となる。そこで、給脂作業を行う際には荷受台昇降装置を後方にスライドした状態で行うことが一般的である。つまり、実際の給脂作業において、荷受台昇降装置の位置が制限されてしまうので改善の余地がある。
【0007】
潤滑剤の給脂は荷受台昇降装置が駆動されていない状態のときに行われる。車両が走行状態や、走行してから停止した状態のときに荷受台昇降装置は駆動されておらず、こうした状態から上述した荷受台昇降装置を後方にスライドさせるには、給脂作業のために荷受台昇降装置を駆動させてスライドさせる工程が別途必要になる。また、荷受台昇降装置が車両後方にスライドすることで作業スペースも減少してしまう。
本発明は、上記の問題を鑑みてなされており、潤滑剤の給脂作業をさらに簡易にすることのできる荷受台昇降装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
車両後方で地面と荷台との間で昇降され、前記車両に対してスライドして格納される荷受台と、一方向に伸びて前記車両に固定されたスライドレールを摺動するスライド部材とを有する荷受台昇降装置において、前記スライドレールには潤滑剤流通路が設けられており、当該潤滑剤流通路は、前記スライドレールの表面に潤滑剤注入口を有し、前記スライド部材が摺動する摺動部分に潤滑剤吐出口を有することを特徴とする。
【0009】
なお、上記「摺動部分」とは、スライド部材の中で、スライドレールに対して当接されて所定のスライド性能を維持できるように配されている部分が、スライドレールを覆っている領域を指している。
【0010】
前記スライドレールは車両前後方向に伸びており、前記潤滑剤注入口は、前記スライドレールの後方部に設けられた構成としても良い。なお、当該「後方部」は、後方端面に限られず、スライドレール後方の傾斜部や側面部も含むものとする。
また、前記スライドレールは車両前後方向に伸びており、前記潤滑剤吐出口は、車両前方部に設けられた構成としても良い。
【0011】
さらに、前記スライドレールのうち上面又は下面の少なくとも一方が、前記摺動部分であり、当該摺動部分は幅方向に沿って略中央部から側方部に向かって傾斜した形状にすることも可能である。
【0012】
その他、前記摺動部分には車両前後方向に沿った溝部が設けられて、前記潤滑剤吐出口は、当該溝部、又は当該溝部よりも上側に配されている構成とすることもできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、スライドレールに潤滑剤を流通させる流通路を設け、スライドレールの表面に注入口を設けているので、簡易に潤滑剤を注入し易い。また、この注入口を車両の種類に合わせて適宜注入しやすい位置に設けることで、荷受台昇降装置の位置の制限を受けることもない。注入された潤滑剤は、スライド部材が摺動する摺動面に吐出されるので、荷受台をスライド動作させればスライドレールに潤滑剤を均すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係る荷受台昇降装置の作動状態を示す側面図である。
【図2】本実施形態に係るスライドレール及びガイド部材の要部斜視部である。
【図3】本実施形態に係るスライドレールの潤滑剤流通路を示す要部斜視図である。
【図4】本実施形態に係るスライドシリンダの駆動状態を示す平面図である。
【図5】本実施形態に係るスライド部材の後面図である。
【図6】別の実施形態に係るスライドレールの潤滑剤流通路を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る荷受台昇降装置の一例となる実施形態に関して、図面を用いて説明する。
【0016】
図1は本実施形態に係る荷受台昇降装置100で、車両1の後方で昇降するとともに荷台1の下方でスライドする作動状態を示す側面図である。荷受台昇降装置100は、シャシフレーム2に設けられたスライド部材3と、リンク機構4を介して設けられた荷受台5とを有する。
スライド部材3は、シャシフレーム2の後端部で前後方向に延びた状態で配設されたスライドレール6に沿って、前後方向にスライド自在に設けられている。
【0017】
荷受台5は先端部51、中間部52、基端部53とを有して折り畳み可能な構成である。荷受台5を地面から荷台11下方に格納する作動手順は、先ず図1(a)のように先端部51が折り畳まれた中間部52をガイドローラ7に立て掛ける。その後、リンク機構4に設けられた昇降用のリフトシリンダ45を用いて図1(b)の2点鎖線部で示す状態(スライド可能状態)5Aとし、スライド用のスライドシリンダ等からなるスライド手段8を用いて車両前方にスライドさせることで格納状態5Bとなる。
【0018】
リンク機構4は、第1支持ブラケット41に連結軸4aを介して軸支されたチルトアーム42を備えている。このチルトアーム42上側には、リフトアーム43の基端がチルトアーム42と第1支持ブラケット41を介して支持部材44に連結されている。なお、リフトアーム43の先端には荷受台5の基端部53が回動自在に連結されている。
リフトアーム43の下方にはリフトシリンダ45が配置され、その一端がチルトアーム42に、他端がリフトアーム43に枢支されている。
【0019】
上記のスライド部材3、スライドレール6、リンク機構4はシャシフレーム2の両側に左右一対設けられており、左右のスライド部材3は同調してスライドレール6をスライドするように連結メンバ(不図示)によって連結されている。荷受台5は、スライド部材3のスライドに伴ってスライド作動を受ける。
荷受台昇降装置100をスライド作動させるスライド手段8は図2のように、2本1組のスライドシリンダ81、82によって構成されている。
【0020】
スライドシリンダ81、82はそれぞれの伸縮ロッドが互いに反対となるように本体部が配されている。一方のスライドシリンダ81のロッド端81aが車両前方側となるスライドレール6の連結部6a(図1(b)参照)に連結され、他方のスライドシリンダ82のロッド端82aがステー6b(図1(a)参照)を介してスライド部材3に連結されている。
【0021】
これらのスライドシリンダ81、82を伸縮させてスライド部材3をスライドレール6に沿って移動させることで荷受台5が車両前後方向にスライド作動される。伸長させる場合には、先ず他方のスライドシリンダ82を伸長させた後に、一方のスライドシリンダ81をさせる。反対に収縮させる場合には、一方のスライドシリンダ81を収縮させた後に、他方のスライドシリンダ82を収縮させるようにしている。ただし、これらの伸縮の順序は逆でも良く、又は同時でも良い。
【0022】
次に、スライドシリンダ81、82の伸縮を受けて荷受台昇降装置100をスライドさせるスライド部材3と、そのスライド部材3が摺動するスライドレール6とについて説明する。
【0023】
図3に本実施形態に係るスライドレール6の断面斜視図を示している。スライドレール6は、押出加工で成型されたアルミニウム製部材であり、車両前後方向(X方向)に伸びて中空部を有する形状である。上部61及び下部62はそれぞれ幅方向(Y方向)中央部から側方部にかけて傾斜するように山型加工された形状を有し、側部63、64は略鉛直方向(Z方向)を面方向として平面加工された形状を有する。
【0024】
上部61及び下部62の傾斜部610、620には、鉛直方向略中間部となる位置に溝部601、602がそれぞれ設けられている。この溝部610、620はスライドレール6の長手方向に沿って車両前後方向に伸びている。上部61及び下部62には、傾斜部に当接する形状の樹脂製の上側パッド31、下側32が配されることで、スライド部材3のスライド性能を維持できるようにしている。
【0025】
上部61及び下部62には、小径で車両前後方向に伸び、グリス等の潤滑剤を所定箇所に流通させるための潤滑剤流通路61a、62aが設けられている。なお、潤滑剤流通路61a、62aの他、ボルト孔61b、62bも上側61及び下側62に2個ずつ設けられている。スライドレール6はシャシフレーム2に対してブラケット9を介して連結されており、このブラケット9に対してスライドレール6が固定される際に、ボルト孔61b、62bを通じてボルト・ナットの固定用部材91が用いられている(図1参照)。
【0026】
潤滑剤流通路61a、62aについてさらに説明するが、上部61及び下部62は同じ構成を有するため、代表して上部61を用いて説明する。潤滑剤流通路61aは、図4に示すようにスライドレール6の車両後方端部6Aの後方端面61Aにグリスを注入する潤滑剤注入口611aと、スライドレール6の車両前方端部6Bでかつ傾斜部610の溝部601内に開口する潤滑剤吐出口612aとを有する。拡大図のとおり、潤滑剤流通路61aは潤滑剤吐出口612aの近傍で略車両幅方向に屈曲した部分を有する。潤滑剤流通路61aの形成に関しては、スライドレール6の押出加工時に長手方向に沿った第1流通路613aを形成した後、車両幅方向に沿って潤滑剤吐出口612aに至る第2流通路614aを形成することで、上記の屈曲した形状とする。説明の便宜上、図示は省略しているが、第1流通路613aは、第2流通路614aが交差する箇所よりもさらに車両前方に向かって延伸して車両前方端部6Bの前方端面で開口しており、注入される潤滑剤の漏出を防止するために当該開口部分は塞がれている。この潤滑剤流通路61aを用いることで、スライドレール6の外方からグリスを注入して、スライドレール6内にグリスを送ってスライドレール6の表面に吐出する給脂作業を簡易に行うことができる。なお、第2流通路614aに関しては、上部61の2つの傾斜部610を貫通するように設けられている。
【0027】
潤滑剤注入口611aが設けられたスライドレール6の後方端面61Aは車両後端近傍なので、潤滑剤の注入を簡易に行うことができ、荷台の下方に潜り込むなどの煩雑さを要しない。また、荷受台昇降装置100は車両前方に位置しているので給脂作業の作業スペースが制限されることもない。また、車両前方端部6Bの潤滑剤吐出口612aから潤滑剤が傾斜部610の外表面に吐出される。この外表面(傾斜部610)は、スライドレール6の上側パッド31の摺動面となるので、スライド部材3のスライド作動によって潤滑剤を傾斜部610に均すことができる。
【0028】
また、潤滑剤吐出口612aは溝部601に設けられているので、吐出されたグリスを溝部に留置させることができる。そのため、必要とされる所定量の潤滑剤を給脂することで、荷受台昇降装置100のスライド作動を利用して潤滑剤を傾斜部610の車両後方まで引き延ばして均すことができる。特に、給脂作業を行う際に、上側パッド31が潤滑剤吐出口612aを覆う状態で配置されていれば、車両前後方向に伸びる溝部601内を満たすように潤滑剤を吐出することができ、さらに効率的に傾斜部610全体に潤滑剤を塗布することも可能となる。また、潤滑剤吐出口612aを覆うように上側パッド31が配されていても、溝部601が設けられていることで上側パッド31と潤滑剤吐出口612aとの間に空間領域が確保されて、グリスなどの潤滑剤を車両前後方向に沿って吐出することができる。
【0029】
なお、本実施形態では潤滑剤吐出口612aを車両前方端部6Bに設けた構成としているが、これに限定することなく、例えば、車両前後方向に沿って中央部分や後方端部に設けても構わない。または、潤滑剤吐出口612aを上記の複数の位置に設ける構成としても構わない。その他、潤滑剤吐出口612aを溝部601よりも上方側に設けて傾斜部610の外表面を流れたグリスが溝部601に滞留する構成とすることも可能である。溝部601に関しては、1つの傾斜部610に複数列の溝部601を設けても良い。スライドレール6の長手方向に沿って同じ長さだけ延伸する構成だけでなく、スライドレール6の押出加工の成型後に長手方向に沿って一部分の領域にだけ形成した構成でも構わない。また、溝部601を設けずに上方から下方にグリスが流れる構成も可能である。
上記のスライドレール6を摺動するスライド部材3は図5で示す構成を有する。
【0030】
スライド部材3は、スライドレール6の上部61及び下部61の外表面にそれぞれ当接して摺動する上側パッド31及び下側パッド32と、取り付け部材303a、304aを介してこれらのパッド31、32の上面及び下面を支持する上側部材303、下側部材304と、これらの部材303、304が架けられた状態でスライドレール6の側方に起立配置される側方部材305、306とを有する。左右一対のスライド部材3は、ともに同調してスライドするように連結メンバ3Aによって連結されている。
【0031】
上側パッド31、下側パッド32はいずれも厚み方向に凹んだ形状を有しており、その凹部は両側部から車両幅方向略中央部に向かって傾斜した谷型形状である。上側パッド31及び下側パッド32の傾斜部310、320は、スライドレール6の上部61及び下部62の傾斜部610、620に当接する形状であり、荷受台昇降装置100のスライド時に、上側パッド31及び下側パッド32がスライドレール6と密接した状態を保つことができる。スライドレール6、上側パッド31及び下側パッド32は、これらの幅方向において略中央部を通る仮想直線mを中心に線対称な形状を有するので、調芯機能を備えた状態でスライドすることができる。つまり、荷受台昇降装置100は、車両幅方向への揺動が抑制された状態でスライドされる。その結果、スライドレール6の側部63、64を支持するガイド部材を配しなくても安定したスライド性能を発揮することができる。
【0032】
上側パッド31及び下側パッド32は、スライドレール6の側端部を跨ぐように幅wの大きさだけ突出した突出端部311、321が設けられている。突出端部311、312は、上記の揺動抑制に貢献するとともに、上側パッド31と下側パッド31のそれぞれの突出端部311、321の間には空間領域が形成されるので、この領域を埋めるように側方ガイド部材が配された構成としても良い。側方ガイド部材を設ける場合には、側部63、64に対する側方ガイド部の摺動(スライド)性能の低下を抑制するために、同様に潤滑剤流通路を設けた構成としても良い。
【0033】
例えばスライドレール6における上部61の潤滑剤流通路61aに関しては、潤滑剤吐出口612aが溝部601に設けているが、上側パッド31で覆われる領域(パッド被覆領域)R内であれば上側パッド31の摺動部分に潤滑剤を均すことができる。特に、溝部601は上側パッド31が直接摺動する部分ではないが、パッド被覆領域Rに含まれており、上側パッド31が直接摺動する部分に潤滑剤を均すことができる。つまり、潤滑剤吐出口612aは上側パッド31が直接摺動する部分に設けられていなくても、成就のパッド被覆領域Rに設けられていれば同等の効果を得ることができる。
【0034】
本実施形態に係る潤滑剤流通路61a、62aに関しては、スライドレール6の長手方向に沿って伸びる第1流通路613aに対して略水平方向に設けられた第2流通路614aとを組み合わせた構成としているが、第2流通路614aに関しては、他の方向に伸びる形状(6141a部分)でも構わない。例えば、図6(a)に示すように、上部61の山型部分の頂上部分に潤滑剤吐出口6121aを有して鉛直方向に伸びる第2流通路6141aとしても、図中の矢印で示すように潤滑剤をその頂上部から傾斜部610にかけて潤滑剤(グリス)を流すことができ、同様の効果を得ることができる。
【0035】
傾斜部610を有する上部61及び下部62に関しては、山型形状ではなく谷型形状として、上側パッド31及び下側パッド32を山型形状としても同様の調芯機能を有するので適用可能である。または、スライドレール6の上部61又は下部62の一方を山型形状とし、他方を谷型形状として、上側パッド31及び下側パッド32をそれぞれ対応する形状としても良い。上部61や下部62の形状に対応して設ける潤滑剤流通路61a、62aも位置、大きさ又は数を変更することも可能である。例えば、図6(b)で示すように、谷型形状の下部6211とし、山型形状の下側パッド321の場合、2つの潤滑剤流通路62a1を設けて、鉛直下方に潤滑剤を送出する第2流通路6241aを設けても良い。第2流通路6241aの先端で谷型形状を構成する傾斜部620a1に潤滑剤吐出口6221aを設けることで、下側パッド321と下部6211との当接部に潤滑剤を給脂することができる。
【0036】
潤滑剤の給脂を行う部分に関しては、スライド部材3とスライドレール6との磨耗を防ぐ上側パッド31や下側パッド32のようなパッド部材が、スライドレール6の外表面だけでなく、他の部分、例えば内表面に配される構成であれば、潤滑剤吐出口をその内表面に設けた構成としても良い。上記のスライドレール6には中空部630(図3参照)が軽量化のため形成されているが、当該中空部630を形成する内表面にパッド部材が設けられる構成であれば、この内表面に通じる第2流通路を設けることで内表面への給脂が可能となり、同様の効果を得ることができる。
【0037】
潤滑剤を注入する潤滑剤注入口611a、621aに関しては、スライドレール6の後方面61Aではなく、スライドレール6の後方端部6Aであれば側面63、64や傾斜部610、620等に設けた構成でも、荷受台昇降装置100が前方に配されたまま給脂でき、同様の効果を得ることができるので構わない。上述のとおり、一般的に潤滑剤の注入は荷受台昇降装置100がスライドレール6に沿って車両前方側に移動した格納状態のときに行われるので、後方端部で露出しているスライドレール6部分であれば良い。さらには、本実施形態に係るスライドレール6であれば荷受台昇降装置100の位置で制限を受けることなく、給脂作業を行うことができるので、潤滑剤注入口611aはスライドレール6における車両後方端部6Aに限定されることはなく、例えば、車両前方や中間部でも構わない。これらの潤滑剤注入口611a、621aはニップルが接続されて潤滑剤の注入に用いられるが、チューブ等を介したニップルからの潤滑剤の注入にも用いることができる。
【0038】
また、潤滑剤流通路61a、62aは、潤滑剤が直接流通する通路として説明したが、当該通路にパイプやチューブ等の導管が挿通されて、当該導管に潤滑剤が流通される構成としても良い。また、潤滑剤流通路61a、62aを構成する第1流通路や第2流通路は注入口や吐出口以外には開口されていない閉路としていが、上部などが開口した開路としても構わない。その開路に導管を配した構成でも構わない。さらには、スライドレール6の長手方向に沿った貫通路を設けずに、その長手方向に沿って導管が配されて、この導管を潤滑剤流通路として用いる構成でも構わない。
【0039】
なお、荷受台昇降装置100に関しては、リンク機構4を有する構成としたが、スライド機能を有するものであれば、車両後方の左右に一対のポストを設け、荷受台を支持してポスト内で昇降可能に配されたスライダを油圧シリンダの伸縮力を利用した構成の荷受台昇降装置や他の構成にも適用可能である。荷受台5の昇降作動が行われる場所は車両後方に限定せず、車両側方で行われて車両幅方向にスライドする構成のものも同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、スライドレールに沿ってスライドするスライド部材を有する全種類の荷受台昇降装置に対して有用である。
【符号の説明】
【0041】
1 車両
2 シャシフレーム
3 スライド部材
4 リンク機構
5 荷受台
6 スライドレール
7 ガイドローラ
8 スライド手段
9 ブラケット
31 上側パッド
32 下側パッド
6A スライドレール後方端部
6B スライドレール前方端部
61a、62a 潤滑剤流通路
601、602 溝部
611a、621a 潤滑剤注入口
612a,622a 潤滑剤吐出口
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に対してスライド格納される荷受台昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に対してスライド格納される荷受台昇降装置として、リンク機構を介して荷受台が昇降手段により昇降自在な構成を有し、所定位置まで荷受台が上昇すると荷受台をスライドさせるものがある(特許文献1)。この荷受台のスライドは、荷受台が連結されたスライド部材が、車両に固定されたスライドレールを摺動することで行われる。そのため、スライド性能の低下を防止するため、定期的にスライドレールにグリス等の潤滑剤が塗布される。
【0003】
ところで、この潤滑剤を給脂して塗布する作業は煩雑になり易い。スライドレールが車両の荷台下方に設けられていることや、近傍にリンク機構や荷受台の支持部材などが配されてスライドレールの露出部が限られていること等が大きな要因となっている。
【0004】
そこで、下方に開口部を有して中空形状のスライドレールと、開口部からスライドレールの中空部に挿入されるスライド部材とを有し、その中空部をスライド部材が摺動する構成の荷受台昇降装置も提案されている(特許文献2)。この荷受台昇降装置には、スライド部材のうち開口部から中空部に挿入されている部分に潤滑剤の給脂装置、具体的にはパイプ状の導管が配されており、スライドレールの外方からスライド部材の摺動部分に潤滑剤を送ることで給脂作業を比較的簡易にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−025900号公報
【特許文献2】特開2006−123680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2のようにスライド部材に給脂装置を設けた構成では、荷受台昇降装置を車両後方にスライドさせていない状態で潤滑剤の給脂作業を行うには、作業者が荷台下方に潜り込まなければならず作業が煩雑となる。そこで、給脂作業を行う際には荷受台昇降装置を後方にスライドした状態で行うことが一般的である。つまり、実際の給脂作業において、荷受台昇降装置の位置が制限されてしまうので改善の余地がある。
【0007】
潤滑剤の給脂は荷受台昇降装置が駆動されていない状態のときに行われる。車両が走行状態や、走行してから停止した状態のときに荷受台昇降装置は駆動されておらず、こうした状態から上述した荷受台昇降装置を後方にスライドさせるには、給脂作業のために荷受台昇降装置を駆動させてスライドさせる工程が別途必要になる。また、荷受台昇降装置が車両後方にスライドすることで作業スペースも減少してしまう。
本発明は、上記の問題を鑑みてなされており、潤滑剤の給脂作業をさらに簡易にすることのできる荷受台昇降装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
車両後方で地面と荷台との間で昇降され、前記車両に対してスライドして格納される荷受台と、一方向に伸びて前記車両に固定されたスライドレールを摺動するスライド部材とを有する荷受台昇降装置において、前記スライドレールには潤滑剤流通路が設けられており、当該潤滑剤流通路は、前記スライドレールの表面に潤滑剤注入口を有し、前記スライド部材が摺動する摺動部分に潤滑剤吐出口を有することを特徴とする。
【0009】
なお、上記「摺動部分」とは、スライド部材の中で、スライドレールに対して当接されて所定のスライド性能を維持できるように配されている部分が、スライドレールを覆っている領域を指している。
【0010】
前記スライドレールは車両前後方向に伸びており、前記潤滑剤注入口は、前記スライドレールの後方部に設けられた構成としても良い。なお、当該「後方部」は、後方端面に限られず、スライドレール後方の傾斜部や側面部も含むものとする。
また、前記スライドレールは車両前後方向に伸びており、前記潤滑剤吐出口は、車両前方部に設けられた構成としても良い。
【0011】
さらに、前記スライドレールのうち上面又は下面の少なくとも一方が、前記摺動部分であり、当該摺動部分は幅方向に沿って略中央部から側方部に向かって傾斜した形状にすることも可能である。
【0012】
その他、前記摺動部分には車両前後方向に沿った溝部が設けられて、前記潤滑剤吐出口は、当該溝部、又は当該溝部よりも上側に配されている構成とすることもできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、スライドレールに潤滑剤を流通させる流通路を設け、スライドレールの表面に注入口を設けているので、簡易に潤滑剤を注入し易い。また、この注入口を車両の種類に合わせて適宜注入しやすい位置に設けることで、荷受台昇降装置の位置の制限を受けることもない。注入された潤滑剤は、スライド部材が摺動する摺動面に吐出されるので、荷受台をスライド動作させればスライドレールに潤滑剤を均すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係る荷受台昇降装置の作動状態を示す側面図である。
【図2】本実施形態に係るスライドレール及びガイド部材の要部斜視部である。
【図3】本実施形態に係るスライドレールの潤滑剤流通路を示す要部斜視図である。
【図4】本実施形態に係るスライドシリンダの駆動状態を示す平面図である。
【図5】本実施形態に係るスライド部材の後面図である。
【図6】別の実施形態に係るスライドレールの潤滑剤流通路を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る荷受台昇降装置の一例となる実施形態に関して、図面を用いて説明する。
【0016】
図1は本実施形態に係る荷受台昇降装置100で、車両1の後方で昇降するとともに荷台1の下方でスライドする作動状態を示す側面図である。荷受台昇降装置100は、シャシフレーム2に設けられたスライド部材3と、リンク機構4を介して設けられた荷受台5とを有する。
スライド部材3は、シャシフレーム2の後端部で前後方向に延びた状態で配設されたスライドレール6に沿って、前後方向にスライド自在に設けられている。
【0017】
荷受台5は先端部51、中間部52、基端部53とを有して折り畳み可能な構成である。荷受台5を地面から荷台11下方に格納する作動手順は、先ず図1(a)のように先端部51が折り畳まれた中間部52をガイドローラ7に立て掛ける。その後、リンク機構4に設けられた昇降用のリフトシリンダ45を用いて図1(b)の2点鎖線部で示す状態(スライド可能状態)5Aとし、スライド用のスライドシリンダ等からなるスライド手段8を用いて車両前方にスライドさせることで格納状態5Bとなる。
【0018】
リンク機構4は、第1支持ブラケット41に連結軸4aを介して軸支されたチルトアーム42を備えている。このチルトアーム42上側には、リフトアーム43の基端がチルトアーム42と第1支持ブラケット41を介して支持部材44に連結されている。なお、リフトアーム43の先端には荷受台5の基端部53が回動自在に連結されている。
リフトアーム43の下方にはリフトシリンダ45が配置され、その一端がチルトアーム42に、他端がリフトアーム43に枢支されている。
【0019】
上記のスライド部材3、スライドレール6、リンク機構4はシャシフレーム2の両側に左右一対設けられており、左右のスライド部材3は同調してスライドレール6をスライドするように連結メンバ(不図示)によって連結されている。荷受台5は、スライド部材3のスライドに伴ってスライド作動を受ける。
荷受台昇降装置100をスライド作動させるスライド手段8は図2のように、2本1組のスライドシリンダ81、82によって構成されている。
【0020】
スライドシリンダ81、82はそれぞれの伸縮ロッドが互いに反対となるように本体部が配されている。一方のスライドシリンダ81のロッド端81aが車両前方側となるスライドレール6の連結部6a(図1(b)参照)に連結され、他方のスライドシリンダ82のロッド端82aがステー6b(図1(a)参照)を介してスライド部材3に連結されている。
【0021】
これらのスライドシリンダ81、82を伸縮させてスライド部材3をスライドレール6に沿って移動させることで荷受台5が車両前後方向にスライド作動される。伸長させる場合には、先ず他方のスライドシリンダ82を伸長させた後に、一方のスライドシリンダ81をさせる。反対に収縮させる場合には、一方のスライドシリンダ81を収縮させた後に、他方のスライドシリンダ82を収縮させるようにしている。ただし、これらの伸縮の順序は逆でも良く、又は同時でも良い。
【0022】
次に、スライドシリンダ81、82の伸縮を受けて荷受台昇降装置100をスライドさせるスライド部材3と、そのスライド部材3が摺動するスライドレール6とについて説明する。
【0023】
図3に本実施形態に係るスライドレール6の断面斜視図を示している。スライドレール6は、押出加工で成型されたアルミニウム製部材であり、車両前後方向(X方向)に伸びて中空部を有する形状である。上部61及び下部62はそれぞれ幅方向(Y方向)中央部から側方部にかけて傾斜するように山型加工された形状を有し、側部63、64は略鉛直方向(Z方向)を面方向として平面加工された形状を有する。
【0024】
上部61及び下部62の傾斜部610、620には、鉛直方向略中間部となる位置に溝部601、602がそれぞれ設けられている。この溝部610、620はスライドレール6の長手方向に沿って車両前後方向に伸びている。上部61及び下部62には、傾斜部に当接する形状の樹脂製の上側パッド31、下側32が配されることで、スライド部材3のスライド性能を維持できるようにしている。
【0025】
上部61及び下部62には、小径で車両前後方向に伸び、グリス等の潤滑剤を所定箇所に流通させるための潤滑剤流通路61a、62aが設けられている。なお、潤滑剤流通路61a、62aの他、ボルト孔61b、62bも上側61及び下側62に2個ずつ設けられている。スライドレール6はシャシフレーム2に対してブラケット9を介して連結されており、このブラケット9に対してスライドレール6が固定される際に、ボルト孔61b、62bを通じてボルト・ナットの固定用部材91が用いられている(図1参照)。
【0026】
潤滑剤流通路61a、62aについてさらに説明するが、上部61及び下部62は同じ構成を有するため、代表して上部61を用いて説明する。潤滑剤流通路61aは、図4に示すようにスライドレール6の車両後方端部6Aの後方端面61Aにグリスを注入する潤滑剤注入口611aと、スライドレール6の車両前方端部6Bでかつ傾斜部610の溝部601内に開口する潤滑剤吐出口612aとを有する。拡大図のとおり、潤滑剤流通路61aは潤滑剤吐出口612aの近傍で略車両幅方向に屈曲した部分を有する。潤滑剤流通路61aの形成に関しては、スライドレール6の押出加工時に長手方向に沿った第1流通路613aを形成した後、車両幅方向に沿って潤滑剤吐出口612aに至る第2流通路614aを形成することで、上記の屈曲した形状とする。説明の便宜上、図示は省略しているが、第1流通路613aは、第2流通路614aが交差する箇所よりもさらに車両前方に向かって延伸して車両前方端部6Bの前方端面で開口しており、注入される潤滑剤の漏出を防止するために当該開口部分は塞がれている。この潤滑剤流通路61aを用いることで、スライドレール6の外方からグリスを注入して、スライドレール6内にグリスを送ってスライドレール6の表面に吐出する給脂作業を簡易に行うことができる。なお、第2流通路614aに関しては、上部61の2つの傾斜部610を貫通するように設けられている。
【0027】
潤滑剤注入口611aが設けられたスライドレール6の後方端面61Aは車両後端近傍なので、潤滑剤の注入を簡易に行うことができ、荷台の下方に潜り込むなどの煩雑さを要しない。また、荷受台昇降装置100は車両前方に位置しているので給脂作業の作業スペースが制限されることもない。また、車両前方端部6Bの潤滑剤吐出口612aから潤滑剤が傾斜部610の外表面に吐出される。この外表面(傾斜部610)は、スライドレール6の上側パッド31の摺動面となるので、スライド部材3のスライド作動によって潤滑剤を傾斜部610に均すことができる。
【0028】
また、潤滑剤吐出口612aは溝部601に設けられているので、吐出されたグリスを溝部に留置させることができる。そのため、必要とされる所定量の潤滑剤を給脂することで、荷受台昇降装置100のスライド作動を利用して潤滑剤を傾斜部610の車両後方まで引き延ばして均すことができる。特に、給脂作業を行う際に、上側パッド31が潤滑剤吐出口612aを覆う状態で配置されていれば、車両前後方向に伸びる溝部601内を満たすように潤滑剤を吐出することができ、さらに効率的に傾斜部610全体に潤滑剤を塗布することも可能となる。また、潤滑剤吐出口612aを覆うように上側パッド31が配されていても、溝部601が設けられていることで上側パッド31と潤滑剤吐出口612aとの間に空間領域が確保されて、グリスなどの潤滑剤を車両前後方向に沿って吐出することができる。
【0029】
なお、本実施形態では潤滑剤吐出口612aを車両前方端部6Bに設けた構成としているが、これに限定することなく、例えば、車両前後方向に沿って中央部分や後方端部に設けても構わない。または、潤滑剤吐出口612aを上記の複数の位置に設ける構成としても構わない。その他、潤滑剤吐出口612aを溝部601よりも上方側に設けて傾斜部610の外表面を流れたグリスが溝部601に滞留する構成とすることも可能である。溝部601に関しては、1つの傾斜部610に複数列の溝部601を設けても良い。スライドレール6の長手方向に沿って同じ長さだけ延伸する構成だけでなく、スライドレール6の押出加工の成型後に長手方向に沿って一部分の領域にだけ形成した構成でも構わない。また、溝部601を設けずに上方から下方にグリスが流れる構成も可能である。
上記のスライドレール6を摺動するスライド部材3は図5で示す構成を有する。
【0030】
スライド部材3は、スライドレール6の上部61及び下部61の外表面にそれぞれ当接して摺動する上側パッド31及び下側パッド32と、取り付け部材303a、304aを介してこれらのパッド31、32の上面及び下面を支持する上側部材303、下側部材304と、これらの部材303、304が架けられた状態でスライドレール6の側方に起立配置される側方部材305、306とを有する。左右一対のスライド部材3は、ともに同調してスライドするように連結メンバ3Aによって連結されている。
【0031】
上側パッド31、下側パッド32はいずれも厚み方向に凹んだ形状を有しており、その凹部は両側部から車両幅方向略中央部に向かって傾斜した谷型形状である。上側パッド31及び下側パッド32の傾斜部310、320は、スライドレール6の上部61及び下部62の傾斜部610、620に当接する形状であり、荷受台昇降装置100のスライド時に、上側パッド31及び下側パッド32がスライドレール6と密接した状態を保つことができる。スライドレール6、上側パッド31及び下側パッド32は、これらの幅方向において略中央部を通る仮想直線mを中心に線対称な形状を有するので、調芯機能を備えた状態でスライドすることができる。つまり、荷受台昇降装置100は、車両幅方向への揺動が抑制された状態でスライドされる。その結果、スライドレール6の側部63、64を支持するガイド部材を配しなくても安定したスライド性能を発揮することができる。
【0032】
上側パッド31及び下側パッド32は、スライドレール6の側端部を跨ぐように幅wの大きさだけ突出した突出端部311、321が設けられている。突出端部311、312は、上記の揺動抑制に貢献するとともに、上側パッド31と下側パッド31のそれぞれの突出端部311、321の間には空間領域が形成されるので、この領域を埋めるように側方ガイド部材が配された構成としても良い。側方ガイド部材を設ける場合には、側部63、64に対する側方ガイド部の摺動(スライド)性能の低下を抑制するために、同様に潤滑剤流通路を設けた構成としても良い。
【0033】
例えばスライドレール6における上部61の潤滑剤流通路61aに関しては、潤滑剤吐出口612aが溝部601に設けているが、上側パッド31で覆われる領域(パッド被覆領域)R内であれば上側パッド31の摺動部分に潤滑剤を均すことができる。特に、溝部601は上側パッド31が直接摺動する部分ではないが、パッド被覆領域Rに含まれており、上側パッド31が直接摺動する部分に潤滑剤を均すことができる。つまり、潤滑剤吐出口612aは上側パッド31が直接摺動する部分に設けられていなくても、成就のパッド被覆領域Rに設けられていれば同等の効果を得ることができる。
【0034】
本実施形態に係る潤滑剤流通路61a、62aに関しては、スライドレール6の長手方向に沿って伸びる第1流通路613aに対して略水平方向に設けられた第2流通路614aとを組み合わせた構成としているが、第2流通路614aに関しては、他の方向に伸びる形状(6141a部分)でも構わない。例えば、図6(a)に示すように、上部61の山型部分の頂上部分に潤滑剤吐出口6121aを有して鉛直方向に伸びる第2流通路6141aとしても、図中の矢印で示すように潤滑剤をその頂上部から傾斜部610にかけて潤滑剤(グリス)を流すことができ、同様の効果を得ることができる。
【0035】
傾斜部610を有する上部61及び下部62に関しては、山型形状ではなく谷型形状として、上側パッド31及び下側パッド32を山型形状としても同様の調芯機能を有するので適用可能である。または、スライドレール6の上部61又は下部62の一方を山型形状とし、他方を谷型形状として、上側パッド31及び下側パッド32をそれぞれ対応する形状としても良い。上部61や下部62の形状に対応して設ける潤滑剤流通路61a、62aも位置、大きさ又は数を変更することも可能である。例えば、図6(b)で示すように、谷型形状の下部6211とし、山型形状の下側パッド321の場合、2つの潤滑剤流通路62a1を設けて、鉛直下方に潤滑剤を送出する第2流通路6241aを設けても良い。第2流通路6241aの先端で谷型形状を構成する傾斜部620a1に潤滑剤吐出口6221aを設けることで、下側パッド321と下部6211との当接部に潤滑剤を給脂することができる。
【0036】
潤滑剤の給脂を行う部分に関しては、スライド部材3とスライドレール6との磨耗を防ぐ上側パッド31や下側パッド32のようなパッド部材が、スライドレール6の外表面だけでなく、他の部分、例えば内表面に配される構成であれば、潤滑剤吐出口をその内表面に設けた構成としても良い。上記のスライドレール6には中空部630(図3参照)が軽量化のため形成されているが、当該中空部630を形成する内表面にパッド部材が設けられる構成であれば、この内表面に通じる第2流通路を設けることで内表面への給脂が可能となり、同様の効果を得ることができる。
【0037】
潤滑剤を注入する潤滑剤注入口611a、621aに関しては、スライドレール6の後方面61Aではなく、スライドレール6の後方端部6Aであれば側面63、64や傾斜部610、620等に設けた構成でも、荷受台昇降装置100が前方に配されたまま給脂でき、同様の効果を得ることができるので構わない。上述のとおり、一般的に潤滑剤の注入は荷受台昇降装置100がスライドレール6に沿って車両前方側に移動した格納状態のときに行われるので、後方端部で露出しているスライドレール6部分であれば良い。さらには、本実施形態に係るスライドレール6であれば荷受台昇降装置100の位置で制限を受けることなく、給脂作業を行うことができるので、潤滑剤注入口611aはスライドレール6における車両後方端部6Aに限定されることはなく、例えば、車両前方や中間部でも構わない。これらの潤滑剤注入口611a、621aはニップルが接続されて潤滑剤の注入に用いられるが、チューブ等を介したニップルからの潤滑剤の注入にも用いることができる。
【0038】
また、潤滑剤流通路61a、62aは、潤滑剤が直接流通する通路として説明したが、当該通路にパイプやチューブ等の導管が挿通されて、当該導管に潤滑剤が流通される構成としても良い。また、潤滑剤流通路61a、62aを構成する第1流通路や第2流通路は注入口や吐出口以外には開口されていない閉路としていが、上部などが開口した開路としても構わない。その開路に導管を配した構成でも構わない。さらには、スライドレール6の長手方向に沿った貫通路を設けずに、その長手方向に沿って導管が配されて、この導管を潤滑剤流通路として用いる構成でも構わない。
【0039】
なお、荷受台昇降装置100に関しては、リンク機構4を有する構成としたが、スライド機能を有するものであれば、車両後方の左右に一対のポストを設け、荷受台を支持してポスト内で昇降可能に配されたスライダを油圧シリンダの伸縮力を利用した構成の荷受台昇降装置や他の構成にも適用可能である。荷受台5の昇降作動が行われる場所は車両後方に限定せず、車両側方で行われて車両幅方向にスライドする構成のものも同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、スライドレールに沿ってスライドするスライド部材を有する全種類の荷受台昇降装置に対して有用である。
【符号の説明】
【0041】
1 車両
2 シャシフレーム
3 スライド部材
4 リンク機構
5 荷受台
6 スライドレール
7 ガイドローラ
8 スライド手段
9 ブラケット
31 上側パッド
32 下側パッド
6A スライドレール後方端部
6B スライドレール前方端部
61a、62a 潤滑剤流通路
601、602 溝部
611a、621a 潤滑剤注入口
612a,622a 潤滑剤吐出口
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両後方で地面と荷台との間で昇降され、前記車両に対してスライドして格納される荷受台と、一方向に伸びて前記車両に固定されたスライドレールを摺動するスライド部材とを有する荷受台昇降装置において、
前記スライドレールには潤滑剤流通路が設けられており、
当該潤滑剤流通路は、前記スライドレールの表面に潤滑剤注入口を有し、前記スライド部材が摺動する摺動部分に潤滑剤吐出口を有する
ことを特徴とする荷受台昇降装置。
【請求項2】
前記スライドレールは車両前後方向に伸びており、
前記潤滑剤注入口は、前記スライドレールの後方端部に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の荷受台昇降装置。
【請求項3】
前記スライドレールは車両前後方向に伸びており、
前記潤滑剤吐出口は、車両前方部に設けられている
ことを特徴する請求項1に記載の荷受台昇降装置。
【請求項4】
前記スライドレールのうち上面又は下面の少なくとも一方が、前記摺動部分であり、
当該摺動部分は幅方向に沿って略中央部から側方部に向かって傾斜した形状である
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の荷受台昇降装置。
【請求項5】
前記摺動部分には車両前後方向に沿った溝部が設けられており、
前記潤滑剤吐出口は、当該溝部、又は当該溝部よりも上側に配されている
ことを特徴とする請求項4に記載の荷受台昇降装置。
【請求項1】
車両後方で地面と荷台との間で昇降され、前記車両に対してスライドして格納される荷受台と、一方向に伸びて前記車両に固定されたスライドレールを摺動するスライド部材とを有する荷受台昇降装置において、
前記スライドレールには潤滑剤流通路が設けられており、
当該潤滑剤流通路は、前記スライドレールの表面に潤滑剤注入口を有し、前記スライド部材が摺動する摺動部分に潤滑剤吐出口を有する
ことを特徴とする荷受台昇降装置。
【請求項2】
前記スライドレールは車両前後方向に伸びており、
前記潤滑剤注入口は、前記スライドレールの後方端部に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の荷受台昇降装置。
【請求項3】
前記スライドレールは車両前後方向に伸びており、
前記潤滑剤吐出口は、車両前方部に設けられている
ことを特徴する請求項1に記載の荷受台昇降装置。
【請求項4】
前記スライドレールのうち上面又は下面の少なくとも一方が、前記摺動部分であり、
当該摺動部分は幅方向に沿って略中央部から側方部に向かって傾斜した形状である
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の荷受台昇降装置。
【請求項5】
前記摺動部分には車両前後方向に沿った溝部が設けられており、
前記潤滑剤吐出口は、当該溝部、又は当該溝部よりも上側に配されている
ことを特徴とする請求項4に記載の荷受台昇降装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2012−96698(P2012−96698A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−246963(P2010−246963)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(000002358)新明和工業株式会社 (919)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(000002358)新明和工業株式会社 (919)
[ Back to top ]