説明

荷崩れ防止ベルトの固定金具

【課題】簡単な構成でありながら、レールに平行する引張荷重に対して高い耐力を有する荷崩れ防止ベルトの固定金具を提供する。
【解決手段】荷締めベルトの端部に取り付けられ、運搬車両の荷室側壁に設けたレールの係合スロットに着脱自在に装着する固定金具であって、金属板の中央部を上下全幅にわたり前記係合スロットの幅に見合った断面U字状の凹条部とすると共に、左右に水平板部を延成し、前記凹条部の両側板の上下端部それぞれに切欠を形成して前記係合スロットの装着部とした金具本体と、前記左右の水平板部の前記装着部とは反対面に接合した金属補強板とを備え、前記水平板部の左右一方に前記金属補強板を貫通して前記荷締めベルトを前記レールと平行して取り付けた。また、装着部の切欠と左右の水平板部との間は荷締めベルトがレールと非接触の状態で離間するのに必要な最小限のクリアランスとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、荷崩れ防止ベルトをトラック等の荷台側壁に設けたレールに固定する金具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図9に示すように、トラック等の運搬車両Tにおける荷崩れ防止手段として、荷室Cの両壁にレールRを取り付け、このレールRに荷締めベルトBを掛け渡すことが行われている。レールRは前後方向に長いアルミニウムなどの金属板Pに縦長の係合スロットSを複数等間隔に形成してなり、荷締めベルトBの端部には前記係合スロットSに着脱自在な固定金具Mが取り付けられている。そして、固定金具Mを適当な係合スロットSに固定したうえで、ベルトBの中途に設けた荷締め機GによってベルトBにテンションを付与することで、走行中における積み荷Lの移動を規制するものである。
【0003】
従来の一般的な固定金具10は、図10に示すように、金属板をU字状に曲げ加工してレールRの係合スロットSに対する装着部11を形成すると共に、その反対側にベルトBの取付部12を形成している(特許文献1等)。このように、従来一般的な固定金具10は、ベルトBがレールRに対して垂直方向に取り付けられるため、図11に示すように、積み荷Lに対してベルトBをコ字状に掛け渡したような場合は、ベルトBにはレールRと平行方向に引張荷重がかかるが、これによって固定金具10を倒すように作用することになることから、テコの原理によって固定金具やレールが変形しやすいといった問題があった。
【0004】
これを防止するものとして、係合スロットへの装着部を2個並列に設けた固定金具が提案されている(特許文献2)。この固定金具は、レールの長さ方向に沿って係合スロットと同間隔に2個の装着部を並列に設けたものであるため、固定金具に作用する引張荷重が各装着部に分散され、レールへの応力集中を回避することで変形を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭59−105536号公報
【特許文献2】特許第3626885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2の固定金具は、装着部を複数設けるものであるため、成型にコストがかかる。また、装着部の間隔をレールの係合スロットに合わせておく必要があることから精密な成型が求められ、少しでも係合スロットの間隔が異なるレールに対しては使用できない。
【0007】
しかも、各装着部は一枚の金属板を連続してU字状に曲げ加工したものではなく、2枚の金属板を、それぞれ先端を自由端としたコ字状に曲げ加工し、これら部品の他端同士を連結したものであるため(特許文献2の図2)、各装着部に作用する荷重は実質的には金属板一枚分で支持することとなり、必ずしも従来の装着部2個分の耐荷重が得られるものではなかった。つまり、各装着部の強度は従来一般的な固定金具よりも小さくなることから、ベルトに近いほうの装着部から順に変形するおそれがある。そして、片方でも装着部が変形を起こせば、他方の装着部との間隔も変わってしまうため、以降、この固定金具を同じレールに使用することはできなくなる。
【0008】
本発明は上述した課題に鑑みなされたもので、その目的とするところは、簡単な構成でありながら、レールに平行する引張荷重に対して高い耐力を有する荷崩れ防止ベルトの固定金具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するために本発明では、荷締めベルトの端部に取り付けられ、運搬車両の荷室側壁に設けたレールの係合スロットに着脱自在に装着する固定金具であって、金属板の中央部を上下全幅にわたり前記係合スロットの幅に見合った断面U字状の凹条部とすると共に、左右に水平板部を延成し、前記凹条部の両側板の上下端部それぞれに切欠を形成して前記係合スロットの装着部とした金具本体と、前記左右の水平板部の前記装着部とは反対面に接合した金属補強板とを備え、前記水平板部の左右一方に前記金属補強板を貫通して前記荷締めベルトを前記レールと平行して取り付けるという手段を用いた。なお、本発明において凹条部の位置を示す「金属板の中央部」とは、完全な中央と、その付近の双方を含む概念である。つまり、凹条部が金属板の完全な中央からずれて位置する構成を含み、この場合、左右の水平板部は長さが異なることになるが、これによって長めの水平板部に荷締めベルトの取り付け代を確保することが容易となる。
【0010】
本発明の固定金具は、ベルトが金具本体の水平板部にレールと平行して取り付けられるため、同方向に引張荷重が作用しても、装着部にかかる負担が従来の一般的な固定金具よりも軽減される。また、水平板部は金属補強板によって2枚重ねの構造であるため、高い強度を実現している。さらに、装着部の凹条部は一枚の金属板をU字状に折曲してなるため、特許文献2の固定金具における一の装着部よりも強度が大きい。
【0011】
水平板部は、本金具を係合スロットに装着したとき、その左右一方に取り付けた荷締めベルトがレールに接触しない位置に形成されればよいが、装着部の切欠と左右の水平板部との間のクリアランスはできるだけ小さいほうがよく、ベルトの厚みや取付端部の寸法に応じた必要最小限とすることが最も好ましい。この手段であれば、装着部の切欠から水平板部までの高さ、即ち装着部の水平板部からの突出量が小さくなって、引張荷重に対する装着部の曲げ強度を高めることができる。
【0012】
他方、装着部の凹条部内に、切欠に係止した係合スロットの上下縁一方を該凹条部の底部とで弾性的に挟持するストッパを回動自在に設けることで、固定金具の不用意な脱落を防止することができる。
【0013】
さらに、ストッパにより弾性的に挟持する側の切欠は、底側を延成して顎部を構成することで、係合スロットの係止深さが大きくなり、また、ストッパとの挟持範囲も大きくなるため、固定金具の係合スロットに対する固定状態をより強固に保持することができる。
【0014】
なお、ストッパにより弾性的に挟持する側の切欠が、凹条部の上端部に形成した切欠であれば、固定金具の自重が下端部側の切欠に作用することになるため、自重がストッパに作用せず、ストッパの不用意な解除を回避することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、断面U字状の装着部の上縁左右に水平板部が一体的に設けられ、これを金属補強板によって補強したうえで、荷締めベルトが前記水平板部に沿ってレールと平行して取り付けられるため、荷締めベルトにレールと平行する引張荷重が作用する場合でも、装着部の倒れ込みがなく、変形が防止される。また、金具本体は1枚の金属板を曲げ加工して成型されるため低コストで成型することができ、これに金属補強板を組み合わせた簡単な構成でありながら、レールと平行方向の引張荷重に対して高い耐力を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る固定金具の斜視図
【図2】同、分解斜視図
【図3】同、分解平面図
【図4】同、側面図
【図5】同、側面視断面図
【図6】同、ストッパのコイルスプリングの斜視図
【図7】同、装着工程図
【図8】同、装着状態を表した図7のA−A線断面図
【図9】荷締めベルトの使用態様を示す後方視説明図
【図10】従来の一般的な固定金具を示す斜視図
【図11】荷締めベルトをコ字状に掛け渡した使用態様を示す平面視説明図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施の形態を添付した図面に従って説明する。図1・2は、本発明の一実施形態に係る固定金具の完成状態と分解状態をそれぞれ示した斜視図であり、レールRの縦長な係合スロットSに対して垂直に装着される縦長な断面U字状の装着部1を有し、その上縁から左右に前記レールRと平行する水平板部2・3を形成して、平面視ほぼT字状を呈する金具本体4と、水平板部2・3の装着部1とは反対面に接合した金属補強板5とを備える。金具本体4の一方の水平板部2(図面上、左側)は他方の水平板部3よりも長く、その先端側に荷締めベルトBの端部を取り付けたものである。
【0018】
この固定金具は、図3に示すように、装着部1と左右の水平板部2・3が一枚の金属板を曲げ加工等して一体的に設けられており、水平板部2・3に金属補強板5を接合することによって荷締めベルトBの取付部を金属板2枚構造の強固なものとしている。
【0019】
装着部1は、金属板の中途を上下全幅にわたり断面U字状に成型された有底の凹条部1aの上下端部それぞれに係合スロットSの上下縁それぞれに係止する切欠6・7を形成すると共に、該凹条部1a内にストッパ8を回動自在に設けて構成されている。この実施形態において上下の切欠6・7は、図4によく示されるように、形状を異にしている。即ち、上側の切欠6は、下側のそれ切欠7よりも口が大きく、また深く形成している。そして、この上側の切欠6の底側は上方に延成され顎6aを形成している。
【0020】
ストッパ8は、装着部1の底部1bから垂直に立ち上がる両側板1c・1d間にピン9によって回動自在に軸支され、その一端は装着部1の上方から突出してレバー部8aとしている。このストッパ8は、図5によく示されるように、ピン9回りに設けたコイルバネ10によって、原姿勢ではレバー部8aが装着部1の底部1bに密着するように付勢されている。なお、コイルバネ10は図6に示すように、1本のバネ線を加工して、通常のコイルバネを水平部10aを介して一対連続して形成してなり、この水平部10aをストッパ8の後端に掛止した状態で軸支することで、開放端10bが装着部1の底部1bと当接して、上記付勢力を発揮するものである。
【0021】
金具本体4の水平板部2・3は、一方(図面上、左側)が他方よりも長く、この長い方の水平板部2の先端側に荷締めベルトの端部を取り付ける縦長の取付孔2aを貫設している。また、両水平板部2・3の対称位置には、金属補強板5を接合するリベット11の挿通孔11aを設けている。
【0022】
金属補強板5には、荷締めベルトの取付孔2aおよびリベット11の挿通孔11aと連通する荷締めベルトの取付孔5aおよびリベット11の挿通孔5bを設けている。また、上縁には、ストッパ8のレバー部8aの解除方向の揺動を許容するスリット5cを設けている。
【0023】
次に、上記構成の固定金具の使用方法及び作用効果を説明する。この固定金具をレールRの係合スロットSに装着するには、図7に示すように、指でレバー部8aを操作してストッパ8をコイルバネ10の付勢力に抗して解除方向に回しておき(同図(a))、まず装着部1の上端部に形成した顎部6aを係合スロットSに挿入する。このとき、固定金具を係合スロットSに対して斜めに持ち、顎6aを係合スロットSに差し込んで、上側切欠6に係合スロットSの上縁を挿入し(同図(b))、当該挿入部を支点として固定金具を垂直姿勢となるように回動することによって、下側の切欠7を係合スロットSに挿入する。この状態で固定金具から手を離すと、固定金具が自重によって落下し、下側の切欠7に係合スロットSが差し込まれると共に、ストッパ8が原姿勢に復帰する付勢力によって、レバー部8aと顎6aで係合スロットSの上縁を挟持し、装着が完了する(同図(c))。
【0024】
なお、この実施形態では、ストッパ8の挟持部がL字状にくぼんでいるため、このくぼみと顎6aによって係合スロットSの上縁係合部が形成され、装着完了後、固定金具を持ち上げるような外力が作用したとしても固定金具は上方に移動せず、不用意な脱落が防止される。
【0025】
上述のように装着が完了した固定金具は、図8に示すように、荷締めベルトBがレールRと平行する方向に取り付けられ、当該取付部(水平板部)とレールRの間のクリアランスも小さいため、該ベルトBに同方向の引張荷重が作用しても強い耐荷重を示し、固定金具やレールRの変形が有効に防止される。
【0026】
こうした耐荷重は、水平板部とレールRのクリアランスが小さい程高まるが、ベルトBがレールと擦れて摩耗することは回避しなければならない。そこで、装着部の切欠6・7と左右の水平板部2・3のクリアランスCは、荷締めベルトBの厚みや取付端部の寸法に応じて、当該荷締めベルトBがレールRと非接触の状態で離間するのに必要な最小限の値としておくことが好ましいものである。
【0027】
なお、上記実施形態では、固定金具の左側に荷締めベルトを取り付けたが、反対側であってもよい。装着部1の切欠6・7やストッパ8の形状は上記実施形態に限るものではなく、他の形状であってもよい。また、ストッパ8を原姿勢に付勢するバネ構造も同様であって、装着部1が係合スロットSに着脱可能に装着され、不用意に脱落せずに装着状態を保持できるものであれば、従来公知の手段を採用してもよいものである。
【符号の説明】
【0028】
1 装着部
2・3 水平板部
4 金具本体
5 金属補強板
6 上側の切欠
7 下側の切欠
8 ストッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷締めベルトの端部に取り付けられ、運搬車両の荷室側壁に設けたレールの係合スロットに着脱自在に装着する固定金具であって、
金属板の中央部を上下全幅にわたり前記係合スロットの幅に見合った断面U字状の凹条部とすると共に、左右に水平板部を延成し、前記凹条部の両側板の上下端部それぞれに切欠を形成して前記係合スロットの装着部とした金具本体と、
前記左右の水平板部の前記装着部とは反対面に接合した金属補強板とを備え、
前記水平板部の左右一方に前記金属補強板を貫通して前記荷締めベルトを前記レールと平行して取り付けたことを特徴とする荷締めベルトの固定金具。
【請求項2】
装着部の切欠と左右の水平板部との間に荷締めベルトがレールと非接触の状態で離間するのに必要な最小限のクリアランスを有する請求項1記載の荷締めベルトの固定金具。
【請求項3】
装着部の凹条部内に、切欠に係止した係合スロットの上下縁一方を該凹条部の底部とで弾性的に挟持するストッパを回動自在に設けた請求項1または2記載の荷締めベルトの固定金具。
【請求項4】
ストッパにより弾性的に挟持する側の切欠は、底側を延成した顎部を有する請求項3記載の荷締めベルトの固定金具。
【請求項5】
ストッパにより弾性的に挟持する側の切欠は、凹条部の上端部に形成した切欠である請求項3または4記載の荷締めベルトの固定金具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−49351(P2013−49351A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188247(P2011−188247)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(593176966)株式会社パーマンコーポレーション (3)
【Fターム(参考)】