説明

荷役パレット用積荷拘束装置

【課題】荷役パレット用積荷拘束装置として、操作的に非常に簡単で能率よく短時間で拘束作業を行え、積荷及びパレットを損傷することなく確実な拘束状態が得られるものを提供する。
【解決手段】中空蓋板1と、中空蓋板1内に設けたコードリール7と、先端側にパレット掛止具3を取り付けた複数本の索体2と、索体緊締手段とを備える。パレット掛止具3は、ステー部3aの両端に反対方向へ曲折する張出片3b,3cが形成され、一方の張出片3bの先端側に索体2が止着される。荷役パレットPの積荷F…上に中空蓋板1を載置し、両側端部の索体引出し口10…から引き出した索体2先端のパレット掛止具3をパレットPのフォーク差込み口Eに挿入し、両張出片3b,3cがパレット上下板部p1,p2に当接した状態で、索体緊締手段を締付け操作し、引き締められた複数本の索体2…を介して積荷F…が荷役パレットPと中空蓋板1との間で拘束されるように構成されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、荷役パレットにおける荷崩れ防止に用いる積荷拘束装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、荷役パレットの荷崩れ防止手段として、積荷の上からネット状等のカバーシートを被せ、その周縁に設けた掛止フックや掛止ベルトを介してパレット側のフォーク挿入口等に掛止する方法(例えば、特許文献1)、荷締め用ベルトを該フォーク挿入口を通して積荷に縦に周回させて緊締する方法(特許文献2)、積荷に荷締め用パッドを当てがった上から荷締め用バンドで締め付ける方法(特許文献3)等が採用されている。また、積荷の上にキャップを載せ、該キャップから引き出した束縛ストランドの先端フックをパレット側の中央スペーサの両側に掛止したのち、レバー操作によって束縛ストランドを引き締める方法(特許文献4)等も提案されている。
【特許文献1】実用新案登録第3129684号公報
【特許文献2】特開昭2002−46706号公報
【特許文献3】特開昭2002−284165公報
【特許文献4】特表2004−503442号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来のカバーシートや荷締め用ベルトを用いる方法、荷締め用パッド及び荷締め用バンドを用いる方法では、積荷の拘束に手間がかかって作業能率に劣るという問題があった。また、前記提案の積荷上に載せたキャップから束縛ストランドを引き出してパレットに掛止させる方法では、束縛ストランドの先端フックによる掛止が不安定で、パレットから外れる懸念があると共に、該先端フックの鉤先によってパレットに傷を生じ易いという難点もあった。
【0004】
この発明は、上述の事情に鑑みて、荷役パレット用積荷拘束装置として、操作的に非常に簡単で能率よく短時間で拘束作業を行える上、積荷及びパレットを損傷することなく確実な拘束状態が得られるものを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0006】
〔1〕前後両端部に索体引出し口を有して荷役パレットの積荷上に載置される中空蓋板と、この中空蓋板内に設けられた索体巻込み手段と、この索体巻込み手段に基端側を保持されて先端側にパレット掛止具を取り付けた複数本の索体と、前記中空蓋板に設けられた索体緊締手段とを備え、前記パレット掛止具は、ステー部の両端に相互に反対方向へ曲折する張出片が一体形成され、その一方の張出片の先端側に前記索体が止着され、前記索体は、中空蓋板の索体引出し口に前記パレット掛止具が配置する引込み姿勢から外側へ引出し可能であると共に、索体巻込み手段によって常時引込み方向に付勢され、前記索体緊締手段は、締付け操作によって前記索体を強制的に中空蓋板内へ引き込む一方、その弛緩操作によって該索体の引込みを解除するように構成され、荷役パレットの積荷上に前記中空蓋板を載置し、索体緊締手段の弛緩状態において、該中空蓋板の両側端部の索体引出し口から引き出した各索体の先端のパレット掛止具をパレットのフォーク差込み口に挿入し、その索体止着側の張出片がパレット上板部下面に、他方の張出片がパレット下板部上面にそれぞれ当接した状態で、索体緊締手段を締付け操作することにより、引き締められた複数本の索体を介して積荷が荷役パレットと中空蓋板との間で拘束されるように構成されてなる荷役パレット用積荷拘束装置。
【0007】
〔2〕前記中空蓋板の前後両端部の各左右両側位置に索体引出し口を有すると共に、これら索体引出し口に対応する4本の前記索体を備え、前記索体緊締手段が左右一対の索体に対して同時に締付け及び弛緩操作するように構成されてなる前項1に記載の荷役パレット用積荷拘束装置。
【0008】
〔3〕前記パレット掛止具は、ステー部と各張出片との曲折角度を90度以上とした引き延ばしZ字状をなす前項1又は2に記載の荷役パレット用積荷拘束装置。
【0009】
〔4〕前記索体緊締手段は、中空蓋板内に回転自在に配置したスクリュー軸にスライダーが螺合すると共に、該スクリュー軸の一端に固着した操作ハンドルが中空蓋板の外側に配置し、該操作ハンドルの回転に伴う前記スライダーの一方向移動により、中空蓋板内の把持部材が前記索体を把持して引締め方向に変位すると共に、該スライダーの逆方向移動により、該把持部材が索体の把持を解除して弛緩方向に変位するように構成されてなる前項1〜3のいずれか1項に記載の荷役パレット用積荷拘束装置。
【0010】
〔5〕前記操作ハンドルに使用時の突出姿勢と不使用時の倒伏姿勢とに転換可能な把手部が設けられると共に、前記中空蓋板側に倒伏姿勢の該把手部との係合によって操作ハンドルを回転不能に保持するロック部が形成されてなる前項4に記載の荷役パレット用積荷拘束装置。
【0011】
〔6〕前記把持部材は、半割りテーパーコーンであり、前記スライダーに設けたテーパー筒部に嵌合しており、その両半割体間に前記索体が配置し、該スライダーが一方向に移動する際、テーパー誘導によって相互に接近する両半割体間で索体を挟持して引締め方向に変位すると共に、該スライダーが逆方向に移動する際、ばね材の付勢によって両半割体が離間して索体の挟持を解除して且つ弛緩方向に変位するように構成されてなる前項4又は5に記載の荷役パレット用積荷拘束装置。
【0012】
〔7〕前記索体巻込み手段がゼンマイばねによる巻き込み機能を持つ前項1〜6のいずれか1項に記載の荷役パレット用積荷拘束装置。
【発明の効果】
【0013】
〔1〕の発明に係る荷役パレット用積荷拘束装置では、荷役パレットの積荷上に中空蓋板を載置し、索体緊締手段の弛緩状態において、該中空蓋板の索体引出し口から引き出した各索体の先端のパレット掛止具をパレットのフォーク差込み口に挿入し、その索体止着側の張出片がパレット上板下面に、他方の張出片がパレット下板上面にそれぞれ当接する状態で、索体緊締手段を締付け操作することにより、引き締められた複数本の索体を介して積荷が荷役パレットと中空蓋板との間で拘束されるから、非常に簡単な操作によって能率よく短時間で拘束作業を行える。しかも、パレット掛止具は、パレットのフォーク差込み口に挿入後、上記のように両張出片がパレット下板上面に当接するようにステー部を起立させれば、上側の張出片を索体巻込み手段によって引込み方向に付勢された索体に吊持される形で、その起立姿勢を自己保持できる。従って、次の索体緊締手段による索体の引き締めに際し、作業者の手で当該パレット掛止具を定姿勢に保持しておく必要がないから、拘束作業全体を一人の作業者で無理なく行える。
【0014】
また、索体緊締手段で索体を引き締めた際、パレット掛止具には索体止着側の張出片の先端側を持ち上げるように力が加わり、これによって該張出片がパレット上板部に押し付けられると同時に、上記持ち上げの力が該張出片の基端の曲折部分を支点として当該パレット掛止具を垂直面内で回転させるように作用するから、他方(下側)の張出片がパレット下板部上面に押し付けられ、もってパレット掛止具はパレット上下板部の両方に圧接した強固な掛止状態になる。更に、該パレット掛止具は、索体止着側の張出片の先端と他方の張出片の基部とが接地する倒伏姿勢での高さを低く設定できるから、パレットのフォーク差込み口への挿入を倒伏姿勢で容易に行えると共に、両張出片の平行間隔をフォーク差込み口の上下間隔に合わせることにより、前記起立姿勢で両張出片がパレット上下板部に対して面接触する形になり、引締め力がパレット上下板部に分担されて且つ面接触で局部に集中しないため、索体の引締めによるパレットの損傷が回避される。
【0015】
〔2〕の発明によれば、上記の荷役パレット用積荷拘束装置として、中空蓋板における前後両端部の各左右両側位置の索体引出し口から導出される4本の索体により、積荷をより安定した状態で拘束できると共に、左右一対の索体を索体緊締手段によって同時に締付け及び弛緩操作できるから、拘束作業をより能率よく行えるものが提供される。
【0016】
〔3〕の発明によれば、前記パレット掛止具は、ステー部と各張出片との曲折角度を90度以上とした引き延ばしZ字状をなすから、索体止着側の張出片の先端と他方の張出片の基部とが接地する倒伏姿勢での高さが低く、パレットのフォーク差込み口への挿入がより容易であると共に、該フォーク差込み口への挿入後、起立姿勢で索体を引き締めた際に該フォーク差込み口から抜出不能となり、より確実な掛止状態が得られる。
【0017】
〔4〕の発明によれば、前記索体緊締手段は、操作ハンドルの正逆回転に伴うスライダーの移動により、中空蓋板内の把持部材による索体の把持及び引締めと、該把持部材による索体の把持解除とを行うものであるから、操作が非常に簡単である上、積荷の種類と性状等に応じて引締め度合を適宜調整でき、引締めによって積荷が変形したり逆に拘束不足になるのを防止できる。
引締め力の調整も容易になる。
【0018】
〔5〕の発明によれば、前記索体緊締手段の操作ハンドルを把手部によって容易に回転操作できると共に、該把手部を倒伏させることで操作ハンドルが回転不能にロックされるから、引締め後の索体が操作ハンドルの不用意な回転で弛む懸念がない。
【0019】
〔6〕の発明によれば、前記索体緊締手段の把持部材が半割りテーパーコーンであり、その両半割体間がスライダーの一方向移動に伴うテーパー誘導で接近して索体を挟持し、引締め方向に変位すると共に、該スライダーの逆方向移動に伴って両半割体が離間して索体の挟持を解除して且つ弛緩方向に変位する構成であるから、該索体緊締手段による索体の引締めと引締め解除が確実になされる。
【0020】
〔7〕の発明によれば、前記索体巻込み手段は、ゼンマイばねを利用するものであるから、無動力で確実な巻込み機能を発揮できる上、機構的に簡素で故障を生じにくく、低コストで調達できるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、この発明に係る荷役パレット用積荷拘束装置の実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。図1は並置した荷役パレット2枚分の積荷に適用する積荷拘束装置の不使用時の折畳み状態と使用状態、図2は同積荷拘束装置の折畳み式中空蓋板の蓋半体同士を分離した状態、図3は同積荷拘束装置に用いるパレット掛止具、図4は同パレット掛止具の荷役パレットに対する掛止状態、図5は同積荷拘束装置における索体緊締手段の操作ハンドル、図6は同蓋半体の上下板を分離した状態、図7は同索体緊締手段の主要部、図8は図7のX−X線の矢視断面、図9は同索体緊締手段による索体の引込み動作、をそれぞれ示す。
【0022】
図1に示すように、この荷役パレット用積荷拘束装置Mは、一対の略正方形厚板状の蓋半体1a,1aが蝶番型に枢着連結して折畳み式の中空蓋板1を構成しており、不使用時には同図(A)の如く両蓋半体1a,1aが重なるように折り畳むことにより、平面視で半分の大きさになる。そして、該中空蓋板1は、各蓋半体1aが1枚の荷役パレットPと略等しい平面サイズを有しており、使用に際して両蓋半体1a,1aを開いた形態とすることにより、同図(B)の如く並置した2枚の荷役パレットP,Pにわたって積荷F…全体を覆うように載置できる。
【0023】
この中空蓋板1の長手方向両端面つまり各蓋半体1aの非枢着側の端面には、左右両側に索体引出し口10,10が設けられると共に、該端面の中央部に帯板状の操作ハンドル4が取り付けられており、各索体引出し口10から蓋半体1a内に収容されているワイヤーロープの如き索体2を引き出して、該索体2の先端に止着したパレット掛止具3を荷役パレットPのフォーク差込み口Eに掛止したのち、操作ハンドル4の回転操作によって索体2を引き締めるようになっている。
【0024】
中空蓋板1の両蓋半体1a,1aは、外形及び内部構造共に同一構成であり、図2で示すように、各々の連結側の端縁に沿って一定間隔置きに設けた複数(図では4個)の軸挿通部11…が互いに相手側の空所に入り込む形で、両者の該端縁同士を突き合わせ、もって一直線に配置した両者の軸挿通部11…に枢軸12を挿通することにより、蝶番型に枢着連結されている。なお、軸挿通部11…は、両蓋半体1a,1aが重なる状態に折り畳めるように、斜め上方へ突出する形になっている。また、各蓋半体1aの複数箇所(図では10箇所)にねじ挿通孔13…が設けてある。
【0025】
パレット掛止具3は、図3(A)(B)で示すように、丸軸状のステー部3aと、その両端から相互に反対方向へ曲折した略小判形の偏平な張出片3b,3cとで、全体として引き延ばしたZ字状をなしており、一方の張出片3bの先端側に索体2を止着するための透孔30が穿設されている。張出片3b,3cは互いに平行であり、その平行間隔d1が荷役パレットPのフォーク差込み口Eの上下幅に略等しく設定されると共に、張出片3b,3cの各々とステー部3aとの折曲角度θは90度以上の広角、好ましくは100〜150度の範囲に設定される。そして、このパレット掛止具3では、図3(B)で示すように、張出片3bの先端と張出片3cの基端の曲折部32とが接地した状態(倒伏姿勢)での高さd2が、前記平行間隔d1の1/2以下になっている。
【0026】
従って、中空蓋板1の索体引出し口10から索体2を引き出し、その先端のパレット掛止具3を荷役パレットPのフォーク差込み口Eに掛止する際、該パレット掛止具3を図4の仮想線の如く倒伏姿勢にすることにより、該差込み口Eに容易に挿入できる。そして、この挿入後のパレット掛止具3は、索体2が上方へ引き戻された時、張出片3bの先端側を吊り上げられてステー部3aが起立し、同図実線で示すように、張出片3bがパレット上板p1の下面に、他方の張出片3cがパレット下板部p2の上面にそれぞれ面接触で当接した起立姿勢となる。更に、操作ハンドル4の回転操作によって索体2が引き締められると、当該パレット掛止具3は、持ち上げられた張出片3bがパレット上板部p1に押し付けられると同時に、その持ち上げの力が該張出片3bの基端の曲折部分31を支点として垂直面内で回転させるように作用するから、下側の張出片3cがパレット下板部p2上面に押し付けられ、もってパレット上下板部p1,p2の両方に圧接した強固な掛止状態で、フォーク差込み口Eから抜出不能となる。
【0027】
なお、張出片3b,3cの各々とステー部3aとの折曲角度θが90度未満の狭角である場合、張出片3b,3cの平行間隔d1を荷役パレットPのフォーク差込み口Eの上下幅に略等しく設定すると、倒伏姿勢からステー部3aを起立させても曲折部31,32がパレット上下板部p1,p2に当接するだけで、両張出片3b,3cを面接触させることができない。
【0028】
図5に示すように、操作ハンドル4は、帯板状をなし、その基端部内面側に突設した軸部4aを中空蓋板1内に配置する逆ねじ型のスクリュー軸5の一端に連結した状態で、該中空蓋板1の外側に垂直面内回転可能に配置すると共に、先端側に設けた長手方向に沿う長孔4bの内側に嵌め込む形で、丸棒状の把手41が枢支ピン42を介して起倒自在に枢着されている。また、中空蓋板1の端面側には、該操作ハンドル4の軸部4aの貫通位置を挟む両側位置に、横長矩形のロック孔14,14が形成されている。しかして、操作ハンドル4を回転する際は、図示仮想線のように前方突出させた把手41を把持して楽に回転操作できる。一方、操作ハンドル4を回転不能にロックする場合は、該中空蓋板1の操作ハンドル4を中空蓋板1の端縁に沿う右又は左向きとして、把手41を図示実線のように倒伏させれば、該把手41がその太さによって操作ハンドル4の内側へ突出し、この突出部分が中空蓋板1側のロック孔14に入り込み、もって当該操作ハンドル4が回転不能になる。なお、ロック孔14が操作ハンドル4の軸部4aを挟む両側にあるから、該操作ハンドル4のロックは半回転刻みで行える。
【0029】
図6に示すように、中空蓋板1の各蓋半体1aは、共に硬質合成樹脂成形物からなる上板体12と下板体13とで構成されており、上板体12側に蓋半体1aの周壁をなす縁枠部12aが一体形成され、下板体13上に索体巻込み手段及び索体緊締手段の構成部材が設置されている。そして、上下板体12,13は、上板体12側の各ねじ挿通孔14に通した連結ねじ15を、下板体13の上面側に凸状に設けた雌ねじ筒部16に螺合緊締することにより、中空蓋板1の蓋半体1aとする。なお、蓋半体1aの各軸挿通部11(図2参照)は、上板体12側の軸挿通部11aと下板体13側の軸挿通部11bとが合接して構成される。
【0030】
下板体13上の左右方向中央位置には、前後方向に沿うスクリュー軸5が前後の軸受51,52を介して回転自在に配置すると共に、左右方向に沿う帯板状のスライダー6が該スクリュー軸5に螺合するナット部材60(図7参照)に固着され、操作ハンドル4を含めて索体緊締手段を構成している。
【0031】
また、下板体13上の左右両側位置には、それぞれ内奥側に索体巻込み手段としてのゼンマイばねを内蔵したコードリール7が取り付けられ、該コードリール7から引き出された前記ワイヤーロープの如き索体2が前後方向に沿って索体引出し口10へ伸びている。しかして、コードリール7はゼンマイばねの蓄力によって索体2を常時引込み方向に付勢しているが、引き出された索体2は、索体引出し口10の内奥側に設けられた索体通過幅の狭いストッパーゲート17(図6参照)でパレット掛止具3が係止されることにより、当該パレット掛止具3の張出片3cが索体引出し口10から僅かに外側へ突出した位置を引込み限界位置としている。
【0032】
更に、左右両側位置におけるコードリール7と索体引出し口10との間には、スライダー6に連動する把持機構20が配置している。この把持機構20は、図7及び図8で詳細に示すように、筒軸21aの前端に矩形のコーン保持枠21bを連結一体化した摺動枠体21と、そのコーン保持枠21bの前面側に保持された半割りテーパーコーン22と、蓋半体1aの下板体13に固設され、摺動枠体21の筒軸21aをブシュ23aを介して軸方向摺動自在に挿通させた摺動ガイド23と、摺動枠体21のコーン保持枠21bと摺動ガイド23との間に介在するコイルスプリング24と、スライダー6の側端部下面側に固設されて半割りテーパーコーン22に外嵌するテーパー筒部61とで構成されている。そして、コードリール7から索体引出し口10に至る索体2は、摺動枠体21の筒軸21a内及びコーン保持枠21bの中心孔に挿通し、半割りテーパーコーン22の半割体22a,22a間を経て、テーパー筒部61を貫通して索体引出し口10に至っている。
【0033】
半割りテーパーコーン22は、両半割体22a,22aの合体状態で、前方側(索体引出し口10側)へ縮径する円錐台形のテーパーコーン部221の後端に、矩形フランジ部222を設けた形態を有している。そして、両半割体22a,22aは、相互に離接可能に、各々の矩形フランジ部222,222を摺動枠体21のコーン保持枠21bに嵌合すると共に、両者間に介在させた一対の小コイルスプリング25,25の弾発力により、相互に離間するように付勢されている。また、両半割体22a,22aの対向面には各々テーパーコーン部221の軸方向に沿う溝26が形成され、両溝26,26間に索体2が配置すると共に、各溝26の内周面には該索体2の引出し方向の摺接抵抗を引込み方向の摺接抵抗よりも大きくする歯形26a(図9参照)が刻設されている。また、スライダー6側のテーパー筒部61は、半割りテーパーコーン22のテーパーコーン部221に対応して前方側(索体引出し口10側)へ縮径する円錐孔61aを備え、この円錐孔61aに両半割体22a,22aの前部側が嵌合している。
【0034】
把持機構20の摺動枠体21は、索体緊締手段のスライダー6がスクリュー軸5の前端側(索体引出し口10側)に位置するとき、コイルスプリング24の弾発限界により、該スライダー6のテーパー筒部61に対してテーパーコーン部221が非押接状態となり、図8及び図9(A)に示すように半割りテーパーコーン22の両半割体22a,22aが小コイルスプリング25,25の弾発力で離間し、索体2に対する把持を解除している。従って、この把持解除下の索体2は、コードリール7の巻込み力に抗して外側へ引き出し可能であると共に、引出し状態から該コードリール7のばね蓄力によって自動的に引込み可能である。
【0035】
一方、スライダー6がスクリュー軸5の前端側に位置する状態から、操作ハンドル4を引締め方向に回転(右回り回転)させると、逆ねじ型のスクリュー軸5の右回り回転によってスライダー6が後方側(内奥側)へ移動するから、まず図9(B)に示すように、スライダー6と一体に後方移動するテーパー筒部61の円錐孔61aに、摺動枠体21の半割りテーパーコーン22が圧入し、テーパー誘導作用によって相互に接近する両半割体22a,22a間に索体2が挟まれて把持される。そして、更に操作ハンドル4の回転によってスライダー6が後方側へ移動すると、図9(C)に示すように、摺動枠体21もコイルスプリング25の付勢に抗して一体に後方側へ移動し、これに伴って半割りテーパーコーン22に把持された索体2が強制的に引き込まれることになる。また、この緊締状態から操作ハンドル4を弛緩方向に回転(左回り回転)させると、スライダー6が前方側へ移動し、その分だけ索体2の緊締が弛み、更に操作ハンドル4を弛緩方向に回転させると、テーパー筒部61へのテーパーコーン部221の押接がなくなり、両半割体22a,22aが離間して索体2の把持を解除する。
【0036】
しかして、スライダー6にはテーパー筒部61が左右両側に設けてあるから、操作ハンドル4の回転操作に伴う索体2の把持及び把持解除は、左右両側で同時になされる。なお、図9(A)〜図9(C)では、動作を判り易く拡大して示す必要から、摺動枠体21の筒軸21a及びコイルスプリング24の長さを短く図示すると共に、スライダー6のテーパー筒部61の構造も簡略化して図示している。
【0037】
上記構成の荷役パレット用積荷拘束装置Mでは、既述のように、並置した2枚の荷役パレットP,Pにわたる積荷F…上に、中空蓋板1を両蓋半体1a,1aが開いた形態として載置し、各索体引出し口10から引き出した索体2の先端のパレット掛止具3を図4の如く荷役パレットPのフォーク差込み口Eに掛止するが、各索体2の余分に引き出した長さ分がコードリール7によって自動的に中空蓋板1内に引き戻され、これによって各パレット掛止具3は両張出片3b,3cがパレット上下板部p1,p2に当接する起立姿勢で自己保持できる。従って、次に操作ハンドル4を締付け方向に回転操作する際、作業者の手でパレット掛止具3を定姿勢に保持しておく必要がなく、拘束作業全体を一人の作業者で無理なく行える。また、作業手順も、中空蓋板1から索体2を引き出し、パレット掛止具3をパレットPに掛止し、操作ハンドル4を回転操作するだけで済み、且つ該操作ハンドル4によって左右一対の索体2,2を同時に引き締めることができるから、非常に操作的に簡単であり、能率よく短時間で作業を完了できる。
【0038】
また、操作ハンドル4によって索体2を引き締めた際、パレット掛止具3には索体止着側の張出片3bの先端側を持ち上げるように力が加わり、これによって該張出片3bがパレット上板部p1に押し付けられると同時に、上記持ち上げの力が該張出片3bの基端の曲折部分31を支点として垂直面内で回転させるように作用するから、下側の張出片3cもパレット下板部p2上面に押し付けられ、もってパレット上下板部p1,p2の両方に圧接した強固な掛止状態となり、フォーク差込み口Eから抜出不能となる。更に、このパレット掛止具3は、ステー部3aと各張出片3b,3cとの曲折角度θを90度以上とした引き延ばしZ字状をなすから、索体止着側の張出片3bの先端と他方の張出片3cの基部32とが接地する倒伏姿勢での高さd2が低くなり、パレットPのフォーク差込み口Eへの挿入を倒伏姿勢で容易に行えると共に、両張出片3b,3cの平行間隔d1がフォーク差込み口Eの上下間隔に合致し、ステー部3aの起立姿勢で両張出片3b,3cがパレット上下板部p1,p2に対して面接触する形になるから、引締め力がパレット上下板部3b,3cに分担されて且つ面接触で局部に集中せず、索体2の引締めによるパレットPの損傷が回避されるという利点がある。
【0039】
更に、この実施形態の積荷拘束装置Mによれば、操作ハンドル4の正逆回転により、中空蓋板1内での索体2の把持及び引締めと、該索体2の把持解除とを行うから、操作が非常に簡単である上、その回転によって引締め量を自在に設定できるから、積荷Fの種類と性状等に応じて引締め度合を調整することにより、引締め過多で積荷F…が変形したり逆に拘束不足になるのを防止できる。また、操作ハンドル4を把手41によって容易に回転操作できると共に、該把手41を倒伏させることで操作ハンドル4が回転不能にロックされるから、引締め後の索体2が操作ハンドル4の不用意な回転で弛む懸念もない。
【0040】
なお、実施形態では中空蓋板1として並置した荷役パレット2枚分の積荷に適用する折畳み方式のものを例示したが、この発明の荷役パレット用積荷拘束装置は中空蓋板1が単なる厚板状で荷役パレット1枚分の積荷に適用するサイズであるものを包含することは言うまでもない。また、この発明では、索体緊締手段における中空蓋板1内での索体2の把持機構として種々の方式を採用できるが、実施形態のように把持部材に半割りテーパーコーン22を用い、その両半割体22a,22aをスライダー6の移動に伴うテーパー誘導で離接させる構成とすれば、該索体緊締手段による索体2の引締めと引締め解除が確実になされる。更に、索体巻込み手段についても種々の機構を採用できるが、実施形態のようにゼンマイばねを利用するコードリール7とすれば、無動力で確実な巻込み機能を発揮できる上、機構的に簡素で故障を生じにくく、低コストで調達できるという利点が得られる。その他、この発明に係る荷役パレット用積荷拘束装置の各部の細部構成については、実施形態以外に種々設計変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】この発明の一実施形態に係る荷役パレット用積荷拘束装置を示し、(A)図は不使用時の折畳み形態の斜視図、(B)図は使用状態の斜視図である。
【図2】同積荷拘束装置の折畳み式中空蓋板の蓋半体同士を分離した状態での斜視図である。
【図3】同積荷拘束装置に用いるパレット掛止具を示し、(A)図は斜視図、(B)図は側面図である。
【図4】同パレット掛止具の荷役パレットに対する掛止状態を示す要部の縦断側面図である。
【図5】同積荷拘束装置における索体緊締手段の操作ハンドル部分を示す横断平面図である。
【図6】同中空蓋板における蓋半体の上下板を分離した状態での斜視図である。
【図7】同積荷拘束装置における索体緊締手段の主要部を示す横断平面図である。
【図8】図7のX−X線の矢視断面図である。
【図9】同索体緊締手段による索体の引締め動作を段階的に示し、(A)図は引締め前の非把持段階の横断平面図、(B)図は引締め開始時の索体把持段階の横断平面図、(C)図は引締め動作中の横断平面図である。
【符号の説明】
【0042】
1・・・・・・・中空蓋板
1a・・・・・・蓋半体
2・・・・・・・索体
3・・・・・・・パレット掛止具
3a・・・・・・ステー部
3b,3c・・・張出片
4・・・・・・・操作ハンドル(索体緊締手段)
41・・・・・・把手
5・・・・・・・スクリュー軸(索体緊締手段)
6・・・・・・・スライダー(索体緊締手段)
61・・・・・・テーパー筒部
61a・・・・・円錐孔
7・・・・・・・コードリール(索体巻込み手段)
10・・・・・・索体引出し口
11・・・・・・ロック孔(ロック部)
20・・・・・・把持機構
22・・・・・・半割りテーパーコーン
22a・・・・・半割体
221・・・・・テーパーコーン部
24・・・・・・コイルスプリング(ばね材)
25・・・・・・小コイルスプリング(ばね材)
E・・・・・・・フォーク挿入口
F・・・・・・・積荷
M・・・・・・・荷役パレット用積荷拘束装置
P・・・・・・・荷役パレット
p1・・・・・・パレット上板部
p2・・・・・・パレット下板部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後両端部に索体引出し口を有して荷役パレットの積荷上に載置される中空蓋板と、この中空蓋板内に設けられた索体巻込み手段と、この索体巻込み手段に基端側を保持されて先端側にパレット掛止具を取り付けた複数本の索体と、前記中空蓋板に設けられた索体緊締手段とを備え、
前記パレット掛止具は、ステー部の両端に相互に反対方向へ曲折する張出片が一体形成され、その一方の張出片の先端側に前記索体が止着され、
前記索体は、中空蓋板の索体引出し口に前記パレット掛止具が配置する引込み姿勢から外側へ引出し可能であると共に、索体巻込み手段によって常時引込み方向に付勢され、
前記索体緊締手段は、締付け操作によって前記索体を強制的に中空蓋板内へ引き込む一方、その弛緩操作によって該索体の引込みを解除するように構成され、
荷役パレットの積荷上に前記中空蓋板を載置し、索体緊締手段の弛緩状態において、該中空蓋板の両側端部の索体引出し口から引き出した各索体の先端のパレット掛止具をパレットのフォーク差込み口に挿入し、その索体止着側の張出片がパレット上板部下面に、他方の張出片がパレット下板部上面にそれぞれ当接した状態で、索体緊締手段を締付け操作することにより、引き締められた複数本の索体を介して積荷が荷役パレットと中空蓋板との間で拘束されるように構成されてなる荷役パレット用積荷拘束装置。
【請求項2】
前記中空蓋板の前後両端部の各左右両側位置に索体引出し口を有すると共に、これら索体引出し口に対応する4本の前記索体を備え、前記索体緊締手段が左右一対の索体に対して同時に締付け及び弛緩操作するように構成されてなる請求項1に記載の荷役パレット用積荷拘束装置。
【請求項3】
前記パレット掛止具は、ステー部と各張出片との曲折角度を90度以上とした引き延ばしZ字状をなす請求項1又は2に記載の荷役パレット用積荷拘束装置。
【請求項4】
前記索体緊締手段は、中空蓋板内に回転自在に配置したスクリュー軸にスライダーが螺合すると共に、該スクリュー軸の一端に固着した操作ハンドルが中空蓋板の外側に配置し、該操作ハンドルの回転に伴う前記スライダーの一方向移動により、中空蓋板内の把持部材が前記索体を把持して引締め方向に変位すると共に、該スライダーの逆方向移動により、該把持部材が索体の把持を解除して弛緩方向に変位するように構成されてなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の荷役パレット用積荷拘束装置。
【請求項5】
前記操作ハンドルに使用時の突出姿勢と不使用時の倒伏姿勢とに転換可能な把手部が設けられると共に、前記中空蓋板側に倒伏姿勢の該把手部との係合によって操作ハンドルを回転不能に保持するロック部が形成されてなる請求項4記載の荷役パレット用積荷拘束装置。
【請求項6】
前記把持部材は、半割りテーパーコーンであり、前記スライダーに設けたテーパー筒部に嵌合しており、その両半割体間に前記索体が配置し、該スライダーが一方向に移動する際、テーパー誘導によって相互に接近する両半割体間で索体を挟持して引締め方向に変位すると共に、該スライダーが逆方向に移動する際、ばね材の付勢によって両半割体が離間して索体の挟持を解除して且つ弛緩方向に変位するように構成されてなる請求項4又は5に記載の荷役パレット用積荷拘束装置。
【請求項7】
前記索体巻込み手段がゼンマイばねによる巻き込み機能を持つ請求項1〜6のいずれか1項に記載の荷役パレット用積荷拘束装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−23911(P2010−23911A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−190503(P2008−190503)
【出願日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(508235184)株式会社バックス (3)
【出願人】(303028022)富士物流株式会社 (5)
【Fターム(参考)】