説明

荷役装置

【課題】簡単なペアリング作業で、荷役装置本体と無線操作ペンダントを一対一に対応付ける。
【解決手段】ペアリング作業の際、無線操作ペンダントは、特別な押下ボタンデータを含む操作データ15を送信した後、受信モードに移行させ、他方、その操作データ15を受信した荷役装置本体のうち、有効なペアリング作業が行なわれた荷役装置本体には、操作データ15に含まれるペンダントID番号を有効に記憶させ、返信データ16を送信させる。この返信データ16を受信した無線操作ペンダントは、操作データ15中に含まれるペンダントID番号と、当該無線操作ペンダント固有のペンダントID番号を比較し、一致していた場合には、操作データ15中に含まれる荷役装置ID番号を記憶し、受信モードを解除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は荷役装置に係り、特に、無線によって荷役装置の荷役装置本体を制御する荷役装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤロープを使ったホイスト、電気チェーンブロックなどの電動式巻上機では、巻上機本体に接続された有線ペンダント、無線機能を備えた無線操作ペンダントなどのボタン操作による上昇指令、下降指令によってモータを正転又は逆転させ、ロープ又はチェーンの巻き上げ/巻き下げ動作を行い、フックに吊り下げた重量物を上昇又は下降するように構成されている。
【0003】
巻上機には屋外で使用するものと屋内で使用するものがあるが、屋外で使用する巻上機の場合、作業中の衝撃・振動、降雨、直射日光による温度上昇、作業者による乱暴な取扱いなど、装置にとっては劣悪な環境下で使用するため、巻上機本体部には操作ボタン類、ランプなど表示器類等は極力装備しないようにする。屋外仕様の巻上機の場合、ボタンなどの操作部及びランプなどの表示部を本体部に設けないようにした装置が理想である。
このような屋外条件を考慮し装置を設計しようとした場合、かなり大きな設計上の制約を受ける。
【0004】
例えば、上記に示したような屋外条件の基で、操作ペンダント部に無線送信機能、巻上機本体部に無線受信機能を設けて、無線操作によって巻上機を操作するような装置を従来の技術で設計しようとした場合、装置は次のように設計する必要がある。無線操作ペンダント及び巻上機本体にそれぞれID番号設定回路を設け、装置固有のID番号を設定できるようにする。
【0005】
ID番号の登録・設定方法には、図8に示すようなロータリSW(スイッチ)による方法、又はICメモリにID番号を格納する方法が考えられるが、巻上機を無線で操作する場合、無線操作ペンダント及び巻上機本体のID番号は使用前に合わせておき(ID番号のペアリング)、巻上機本体はID番号が一致している無線操作データだけに反応するようにする必要がある。このID番号のペアリング作業は、無線操作ペンダント及び巻上機本体内制御回路の、図8に示すようなロータリスイッチ、その他のスイッチを操作して行うのだが、ID番号設定作業は、操作ペンダント又は制御ボックス等の制御ボックスカバーなどを開けて行うため、ID番号設定後は同カバーなどを確実に元通りに戻しておく必要がある。この装置の制御ボックスカバーを外したり装着したりする作業は、確実に行わないとその後の制御回路への水混入、誤動作等の問題が発生するため、作業に不慣れな現場の作業者(巻上機のユーザー)にこのペアリング作業をお願いすることは難しい。従って、一般的にはID番号設定作業は、工場出荷時にメーカ側で行うようにしている。
【0006】
以上のような巻上機を無線仕様で運用した場合の問題点を以下にまとめる。
1)巻上機出荷後、例えば無線操作ペンダントに不具合が生じ交換が必要になった場合、交換を行う新無線操作ペンダントのID番号と、現在使用中の巻上機本体側のID番号をペアリングする作業が必要になるため、巻上機本体を一旦作業現場からメーカに引き上げメーカ側でID番号のペアリング作業を行った後作業現場に戻すか、又は直接サービスマンを現場に派遣してそこで無線操作ペンダントの交換、及びペアリング作業を行う必要がある。何れの方法をとっても交換作業を行うためには、多大な人件費、修理時間を必要としている。
【0007】
2)上記問題を解決するために、無線操作ペンダントと巻上機本体のID番号のペアリング作業をユーザーにお願いした場合、不慣れな作業のため制御ボックス内への水混入、異物混入、誤操作による破壊等の問題が発生する可能性が出てくる。例えば水、油等が混入した場合、装置内の電子部品の腐食を招き、装置寿命の短命化、誤動作等の問題が発生することが考えられる。
従来のID番号設定方法は、例えば下記文献に記載されている。
【特許文献1】特開平10−316362号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記問題点を解消するために無線操作機能を装備した巻上機において、簡単かつわかりやすい操作で無線操作ペンダント側及び巻上機本体側のID番号のペアリング作業を行うことができるようにした巻上機を提供することを目的とする。
【0009】
無線操作ペンダント及び巻上機本体の側に、ID番号設定のためのスイッチ、ボタン類を設けずにID番号のペアリング作業を行うことができるようにする。特に巻上機本体の表面には、従来の巻上機同様操作ボタン、ランプ類は装備しないこととする。
【0010】
ID番号によってペアリング作業を行う場合に、無線操作ペンダントや荷役装置本体の制御ボックス等を解体したり、また、制御ボックスカバーなど外さなくてもできるようにする。
ID番号によるペアリング作業は、訓練を受けた巻上機のサービスマンでなくても簡単な操作でできるようにする。さらに誤ったペアリングは誤動作の原因となるため、他の巻上機の影響を極力受けないようにしてペアリングを行うことができるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は、荷役物を持ち上げる荷役装置本体と、前記荷役物の移動方向を指示する本体操作ボタン群が設けられた無線操作ペンダントとを有し、前記荷役装置本体と前記無線操作ペンダントには、それぞれ無線送受信装置が設けられ、前記無線操作ペンダントには、押下された操作ボタンを特定できる操作データを無線送信可能に構成された荷役装置であって、前記荷役装置本体と前記無線操作ペンダントには、固有の荷役装置ID番号と固有のペンダントID番号とがそれぞれ付与され、前記無線操作ペンダントは、前記荷役装置ID番号を記憶して電源遮断後も記憶内容を維持する記憶装置を有し、前記荷役装置本体は、前記ペンダントID番号を記憶して電源遮断後も記憶内容を維持する本記憶領域を有し、前記操作データには、当該無線操作ペンダントに記憶された前記荷役装置ID番号と当該無線データを無線送信する前記無線操作ペンダントのペンダントID番号とが含まれ、前記荷役装置本体は、受信した前記操作データに、当該荷役装置本体の荷役装置ID番号と前記本記憶領域に記憶されたペンダントID番号の両方が含まれる場合に、受信した前記操作データに従って動作するように構成された荷役装置である。
また、本発明は、前記本記憶領域に記憶された前記ペンダントID番号と、前記無線操作ペンダントに記憶された前記荷役装置ID番号とは、それぞれ変更可能に構成された荷役装置である。
また、本発明は、前記荷役装置本体は前記ペンダントID番号を記憶して電源遮断後も記憶内容を維持する仮記憶領域を有し、電源が投入された後の前記仮記憶領域に、有効な前記ペンダントID番号が記憶されている場合に、前記仮記憶領域に記憶された前記ペンダントID番号を前記本記憶領域に記憶させる荷役装置である。
また、本発明は、前記荷役装置本体は、電源が投入された後の前記仮記憶領域の記憶内容を読み出し、前記仮記憶領域に有効な前記ペンダントID番号が記憶されている場合には、当該荷役装置本体の荷役装置ID番号と有効な前記ペンダントID番号を含む返信データを無線送信し、前記無線操作ペンダントは、受信した前記返信データに当該無線操作ペンダントのペンダントID番号が含まれている場合に、受信した前記返信データに含まれる前記荷役装置ID番号を記憶し、無線送信する前記操作データに記憶した前記荷役装置ID番号を含ませる荷役装置である。
また、本発明は、前記荷役装置本体は、電源投入後最初に受信する操作データが、予め設定された二個以上のボタンが一緒に押下されたことを示す場合に、前記操作データ中に含まれるペンダントID番号を前記仮記憶領域に記憶し、前記予め設定された二個以上のボタンが一緒に押下されたことを示す操作データの受信中断を検出すると、前記仮記憶領域に無効なペンダントID番号を記憶させる荷役装置である。
【0012】
同じ作業現場で複数の荷役装置本体が使用されている場合、荷役装置本体と同数の無線操作ペンダントが使用されているが、荷役装置本体と無線操作ペンダントの対応付けを行ない、荷役装置本体と無線操作ペンダントを一対一で対応させる必要がある。
【0013】
この対応付けはペアリング作業と呼ばれており、無線を使った制御方式では荷役装置本体に登録可能なID番号を複数持たせることにより、複数台の無線操作ペンダントで1台の巻上機本体を制御することも可能であるが、仮に誤って他の複数の操作ペンダントとペアリングされてしまった場合、作業者が気づかないところで巻上機が動いてしまうことになり大変危険である。
【0014】
本発明は上記のように構成されており、ペアリング作業の際、無線操作ペンダントは、通常動作時とは異なる特別な押下ボタンデータを含む操作データを送信した後、受信モードに移行し、他方、その操作データを受信した荷役装置本体のうち、有効なペアリング作業が行なわれた荷役装置本体は、操作データに含まれるペンダントID番号を有効に記憶すると共に、返信データを無線送信する。この返信データには、当該荷役装置本体固有の荷役装置ID番号と共に、有効に記憶されたペンダントID番号が含まれており、この返信データを受信した無線操作ペンダントは、操作データ中に含まれるペンダントID番号と、当該無線操作ペンダント固有のペンダントID番号を比較し、一致していた場合には、操作データ中に含まれる荷役装置ID番号を記憶し、受信モードを解除する。
【0015】
その結果、本発明では、ペアリングされた荷役装置本体と無線操作ペンダントは、両方とも同じ荷役装置ID番号とペンダントID番号を記憶しており、即ち、荷役装置本体に記憶されたペンダントID番号を有する無線操作ペンダントには、当該無線操作ペンダントのペンダントID番号を記憶した荷役装置本体の荷役装置ID番号が記憶される。
【0016】
従って、本発明では、荷役装置本体と無線操作ペンダントは一対一で対応付けられており、一台の無線操作ペンダントに複数の荷役装置本体が対応付けられたり、逆に、複数の無線操作ペンダントが一台の荷役装置本体に対応付けられることはない。
【0017】
ペアリング対象ではない荷役装置本体の電源が、ペアリング対象の荷役装置本体と同じタイミングで投入され、しかも、それらの荷役装置本体の電源が、投入後、1〜2秒後に直ぐに遮断されても、無線操作ペンダントには一台の荷役装置本体の荷役装置ID番号しか登録されないから、複数の荷役装置本体が一台の無線操作ペンダントに登録されることはない。
このように、本発明によれば、予期しないペアリングの発生を防止することができる。
【0018】
なお、ペアリング動作のための専用のボタンを設けて、専用ボタンが押下されると通常動作時とは異なるペアリング動作を開始するようにしてもよいが、通常動作でも使用される複数のボタンのうち、予め定めておいた特定の二個又は三個以上のボタンを同時に押下することで、ペアリング動作を開始するようにしてもよく、この場合、専用ボタンを設ける必要が無くなるので、コスト的に有利であり、また、プログラムを変更することで、顧客要求に合わせて特定のボタンを変更することも可能になるという大きな利点がある。
【発明の効果】
【0019】
番号のペアリング作業を行う場合は、操作ペンダント又は制御ボックス等の制御器カバーを外したり、一部解体作業が必要になったが、本発明ではそのような作業が必要なく、装置の信頼性、品質を確保することができる。
【0020】
特に、特殊な技能、知識がなくても簡単な操作でID番号によるペアリング作業ができるため、装置が故障した場合でも交換品を送るだけで現場の作業者(巻上機のユーザー)がペアリングを行うことができるようになり、メンテナンス性の大幅向上、故障品の交換作業時間の短縮が図れるようになる。
【0021】
ID番号によるペアリング作業が簡単なため、複数台の巻上機(荷役装置)を使用している場合は簡単に無線操作ペンダントと巻上機本体の組み合わせを変えることができるため、特定の装置に不具合等の発生した場合でもペアリングを簡単に変更することで迅速な対応が可能である。
【0022】
無線操作ペンダント及び巻上機本体の側にID番号設定のためのスイッチ、ボタン類が必要なく、低コストであるし、誤操作も防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1の符号1は本発明の荷役装置本体(巻き上げ機の本体)の一例の外観写真を示しており、図2、図3は、第一、第二例の無線操作ペンダント2、3を示している。
【0024】
この無線操作ペンダント2、3は荷役装置本体1と組み合わせて使用されるものであり、小型可搬で、その表面には電源操作ボタン群10と本体操作ボタン群20とが設けられている。
【0025】
図2、図3の無線操作ペンダント2、3では、電源操作ボタン群10中には、少なくとも電源投入ボタン12と電源遮断ボタン13とが一個ずつ設けられており、本体操作ボタン群20中には、図2の無線操作ペンダント2では上昇ボタン22と下降ボタン23が設けられ、図3の無線操作ペンダント3では、上昇ボタン22と下降ボタン23と左方移動ボタン26と右方移動ボタン27と、移動速度を変更する高速ボタン28と低速ボタン29とが設けられている。
【0026】
図4は、無線操作ペンダント2、3の内部回路である。
無線操作ペンダント2、3は、ペンダント側制御回路31と、記憶回路32と、バッテリ35と、ペンダント側無線回路36と、アンテナ37とを有しており、電源操作ボタン群10と、本体操作ボタン群20はペンダント側制御回路31に接続され、電源投入ボタン12が押下されると、上記各回路31、32、36はバッテリ35から電力が供給され、動作を開始する。
【0027】
この無線操作ペンダント2、3では、無線操作ペンダント2、3毎に固有のペンダントID番号が賦されており、各無線操作ペンダント2、3のペンダントID番号は、各無線操作ペンダント2、3の記憶回路32にそれぞれ記憶されている。
【0028】
次に、図6を参照し、荷役装置本体1の構成を説明する。
荷役装置本体1は、巻取ドラム5と、巻取ドラム5に巻き回されたワイヤー7と、巻取ドラム5を回転させるモータ6を有しており、操作回路40によってモータ6が制御され、巻取ドラム5が回転させられると、ワイヤー7の先端に取り付けられたフック8が昇降移動するように構成されている。
【0029】
操作回路40は、本体側制御回路41と、本体側無線回路46と、ID番号設定回路42と、駆動回路45と、電源回路44と、アンテナ47とを有している。
本体側制御回路41は本体側無線回路46を介してアンテナ47に接続されており、無線操作ペンダント2、3が送信した操作データは、アンテナ47と本体側無線回路46を介して、本体側制御回路41で受信される。
【0030】
荷役装置本体1にも、装置固有の荷役装置ID番号が荷役装置本体1毎にそれぞれ付与されており、各荷役装置本体1内の記憶回路にそれぞれ記憶されている。
【0031】
ID番号設定回路42は、本記憶領域と仮記憶領域を有しており、無線操作ペンダント2、3との対応付けが完了している場合、ID番号設定回路42の本記憶領域には、当該荷役装置本体1と対応付けられた無線操作ペンダント2又は3のペンダントID番号が記憶されている。他方、対応付けが完了している場合、無線操作ペンダント2、3には、対応付けられた荷役装置本体1の荷役装置ID番号が記憶されている。
【0032】
荷役装置本体1と無線操作ペンダント2、3に記憶された荷役装置ID番号とペンダントID番号は、電源が遮断されたり、バッテリ35が消耗したりしても維持される。荷役装置本体1に付与された固有の荷役装置ID番号と、無線操作ペンダント2、3に付与された固有のペンダントID番号は書き換えできないが、荷役装置本体1と無線操作ペンダント2、3の対応関係を設定し、又は変更するために、荷役装置本体1に記憶されたペンダントID番号と、無線操作ペンダント2、3に記憶された荷役装置ID番号は書き換えることができるように構成されている。
【0033】
無線操作ペンダント2、3を操作する際、本体操作ボタン群20内のボタン22、23、26〜29が押下されると、押下されたボタン22、23、26〜29はペンダント側制御回路31によって特定され、押下されたボタン22、23、26〜29を示す押下ボタンデータが作成される。
【0034】
異なるボタン22、23、26〜29が同時に二個以上押下された場合、その二個以上のボタン22、23、26〜29が一緒に押下されたことを示す押下ボタンデータが作成される。
【0035】
記憶回路32はペンダント側制御回路31に接続されており、記憶回路32内の記憶データは、ペンダント側制御回路31によって読み取られ、押下ボタンデータに加え、当該無線操作ペンダント2、3に固有のペンダントID番号と、当該無線操作ペンダントに対応付けられた荷役装置本体1の荷役装置ID番号と、誤り訂正符号とが付与された操作データが作成される。
【0036】
対応付けがされていない場合、無線操作ペンダント2、3の内部では荷役装置ID番号を記憶する領域には、予め決められた初期値(ここではゼロ)が記憶されており、この初期値を荷役装置ID番号として含む操作データが、ペンダント側無線回路36を介してアンテナ37から無線送信される。
【0037】
図5の符号15は無線送信される操作データの内容である。一台の無線操作ペンダント2、3の周囲には、通常、複数の荷役装置本体1が配置されており、同じ操作データ15が複数の荷役装置本体1で受信される。
この場合、一台の無線操作ペンダント2、3で、複数の荷役装置本体1が動作してしまうと不都合である。
【0038】
本発明では、荷役装置本体1が操作データ15を受信すると、各荷役装置本体1は受信した操作データ15内の荷役装置ID番号と付与された固有の荷役装置ID番号とを比較し、不一致の場合には受信した操作データ15を無視し、一致した場合だけ、押下ボタンデータが示す動作を実行する。
【0039】
但し、押下ボタンデータが、二個のボタン22、23、26〜29が同時に押下されたことを示している場合、荷役装置本体1は押下ボタンデータを無効とし、押下ボタンデータに従った動作は行なわない。
【0040】
なお、荷役装置ID番号の比較に加え、操作データ中に含まれるペンダントID番号と、荷役装置本体1に記憶されているペンダントID番号とを比較し、荷役装置ID番号とペンダントID番号の両方が一致した場合に操作データ15を有効なものとして押下ボタンデータが示す動作を実行し、いずれか一方でも一致しない場合は操作データ15を無視するようにすることができる。
【0041】
荷役物の移動操作が終了し、無線操作ペンダント2、3の電源遮断ボタンが押下されると、無線操作ペンダント2、3内部の各回路はバッテリから切り離され、バッテリの消耗が防止される。
【0042】
次に、荷役装置本体1と無線操作ペンダント2、3を一対一に対応付けるペアリング作業について説明する。
本発明では、当該荷役装置本体1を動作させる無線操作ペンダント2、3の本体操作ボタン群20に含まれるボタン22、23、26〜29のうち、二個以上のボタンが予め特定ボタンとして設定され、特定ボタンを示すデータが、予め荷役装置本体1に記憶されている。
【0043】
先ず、荷役装置本体1の電源は遮断しておき、無線操作ペンダント2、3の電源を投入し、図7に示すように、無線操作ペンダント2、3側で、二個以上の特定ボタンを押下し(S1)、押下を維持しながら荷役装置本体1の電源を投入すると(S2)、後述するように、本体側制御回路41は仮記憶領域の内容を読み取り、仮記憶領域の記憶内容が、無効なペンダントID番号であるか、有効なペンダントID番号であるかを判断する(S3)。
有効であれば、ペアリング完了作業(S4)に移行するが、無効の場合は、ペアリング完了作業に移行せず、処理を次の判断ステップ(S5)に移行する。
【0044】
ここでは無効であるものとすると、本記憶領域の内容は書き換えず、判断ステップ(S5)に移行する。判断ステップ(S5)では、最初に受信した操作データ中に含まれる押下ボタンデータが、特定の複数個(ここでは二個)のボタンが一緒に押下されたことを示しているか否か判断し、特定の二個以上のボタンが一緒に押下されていない場合は、初期設定作業を終了し(S9)、通常の作業に移行する。通常の作業では、操作データを受信すると、操作データが有効か無効かを判断し、有効の場合は、押下ボタンが示すとおりの方向に、その押下ボタンが押下されている時間に応じた時間だけ、荷役物を移動させる。
【0045】
判断ステップ(S5)において、特定の二個以上のボタンが一緒に押下されていることが検出されると、ペアリング作業に移行する。
この場合、先ず、その操作データに含まれるペンダントID番号を仮記憶領域に記憶させる(S6)。
【0046】
実際の作業では、例えば特定の二個のボタンとして、上昇ボタン22と下降ボタン23が設定されている場合、無線操作ペンダント2、3の電源投入ボタン12を押下し、無線操作ペンダント2、3を起動した後、上昇ボタン22と下降ボタン23の両方を同時に押下し、その状態を維持しながら、荷役装置本体1の電源を投入する。電源投入は、荷役装置本体1の電源ボタンを操作しても良いし、荷役装置本体1の電源コード49を商用電源に接続することで行なっても良い。
【0047】
本体操作ボタン群20に含まれるボタン中の複数個のボタンが同時に押下された場合、一緒に押下されているボタンを示す押下ボタンデータと、その無線操作ペンダントID番号とから成る操作データが作成され、無線送信される。
【0048】
電源が投入された荷役装置本体1では、最初に受信した操作データ中に含まれる押下ボタンデータが示すボタンと、荷役装置本体1に記憶されたボタンとを照合し、押下ボタンデータに含まれる複数個のボタンが、記憶された複数個のボタンと一致した場合、その操作データ中のペンダントID番号を仮記憶装置に記憶する(S8)。
【0049】
本体操作ボタン群20に含まれる複数個のボタンが押下された状態が維持されると、無線操作ペンダント2、3は、所定間隔(例えば10m秒)で、押下された複数個のボタンを示す押下ボタンデータと、ペンダントID番号を含む操作データを送信し続け、荷役装置本体1では、特定の二個以上のボタンが押下されていることを示す操作データ15を受信している限り、仮記憶領域や本記憶領域の記憶内容を維持しながら、操作データ15の受信を継続する(S10)。
【0050】
そのような操作データ15の受信を継続しながら荷役装置本体1の電源が遮断されると、仮記憶領域には、特定の二個以上のボタンが押下されていることを示す操作データ15に含まれるペンダントID番号が記憶された状態が維持され、この場合は、後述するように有効なペアリング作業となる。
【0051】
他方、荷役装置本体1の電源が投入されている状態で、荷役装置本体1が受信した操作データに含まれる押下データが、特定の二個以上のボタンが押下されていることを示さなくなった場合(無線操作ペンダント2、3のボタン押下がやめられてしまった場合等)には、無限ループ(S10)を脱出し、仮記憶領域の内容を、予め決められた無効番号に書き換える(S8)。例えば、無効番号がゼロに決められており、ペンダントID番号はそれ以外の数(例えば自然数)に設定されている場合、仮記憶領域の記憶内容はゼロに書き換えられ、無効なペアリング作業となる。
【0052】
このようなペアリング作業が行なわれている間、ペアリング対象外の荷役装置本体1は通常は電源が投入されたままで使用されているから、ペアリング対象である荷役装置本体1のペアリング作業が終了すると、ペアリング対象外の荷役装置本体1の仮記憶領域には無効番号が記憶され、ペアリング作業は有効なものと成らない。
【0053】
有効なペアリング作業の場合は、無線操作ペンダント2、3側では特定の複数のボタンを押下した状態を維持しながら、荷役装置本体1の電源を一旦遮断しており、次いで、無線操作ペンダント2、3側では、特定の複数のボタンを押下した状態を解除すると、本発明の無線操作ペンダント2、3では、自動的に受信モードに移行し、荷役装置本体1が発信する返信データの受信待ちの状態になる。
【0054】
無線操作ペンダント2、3が受信モードに移行した後、荷役装置本体1の電源を再投入すると(S2)、先ず、本体側制御回路41によって仮記憶領域の内容が読み出され、仮記憶領域に記憶されている内容の有効性が判断される。
【0055】
仮記憶領域に無効番号が記憶されている場合は無効であり、本記憶領域の記憶内容は変更されず、本記憶領域に記憶されていたペンダントID番号が維持される。
【0056】
仮記憶領域に無効番号が記憶されていない場合、即ち、仮記憶領域に有効なペンダントID番号が記憶されている場合は有効であり、ペアリング完了作業(S4)に移行し、先ず、仮記憶領域の記憶内容を本記憶領域に記憶させる(T1)。これにより、特定の複数のボタンが押下されていることを示す操作データ15に含まれるペンダントID番号の記憶が定着する。
【0057】
次いで、本記憶領域の記憶内容を変更した荷役装置本体1は、図5の符号16に示すような、当該荷役装置本体1固有の荷役装置ID番号と、記憶したペンダントID番号と、誤り訂正符号とから成る返信データを無線送信する(T2)。
【0058】
無線操作ペンダント2、3は、特定ボタンの押下が解除された後、自動的に受信モードに移行しており、返信データ16を受信すると、その返信データ16に含まれているペンダントID番号と、当該無線操作ペンダント2、3のペンダントID番号とを照合し、一致していた場合は、受信した返信データ16に含まれている荷役装置ID番号を記憶し(T3)、受信モードを終了し(S9)、通常動作に移行する。
【0059】
複数の荷役装置本体1から、それぞれ返信データ16が送信された場合は、各返信データ16に含まれている荷役装置ID番号は異なっているが各返信データ16に含まれているペンダントID番号は同一の場合もあり得る。
【0060】
本発明の無線操作ペンダント2、3では、最初に受信した返信データ16中に含まれる荷役装置ID番号を記憶すると受信モードを終了しており、無線操作ペンダント2、3は、受信モード終了後に受信した返信データ16は無視する。
【0061】
その結果、当該無線操作ペンダント2、3のペンダントID番号を含む返信データ16が複数受信した場合であっても、その返信データ16のうち、最初に受信した返信データに含まれる荷役装置ID番号だけが記憶されるので、一台の無線操作ペンダント2又は3には、一台の荷役装置本体1だけが対応付けられる。
【0062】
通常動作に移行した後、無線操作ペンダント2、3のボタンが押下されると、無線操作ペンダント2、3は、そのボタンの押下を示す押下ボタンデータと、当該無線操作ペンダント2、3固有のペンダントID番号と、記憶されている荷役装置本体1の荷役装置ID番号とを含む操作データ15を送信する。
【0063】
このような操作データ15を複数の荷役装置本体1が受信した場合でも、各荷役装置本体1は、受信した操作データ15中に、当該荷役装置本体1固有の荷役装置ID番号が含まれ、且つ、本記憶領域に記憶されたペンダントID番号が含まれる操作データ15だけを有効なものとし、その操作データ15に含まれる押下ボタンデータに従った動作し、その操作データ中の押下ボタンデータ通りの方向と、押圧時間から、フック8先端に懸下された荷役物を移動させる。
【0064】
複数の無線操作ペンダントが荷役装置本体1の無線信号の到達範囲内に配置されている場合に、例えば、第一の無線操作ペンダントAによって第一の荷役装置本体aをペアリングした後、第二の無線操作ペンダントBによって、その第一の荷役装置本体aをペアリングしてしまう事態が生じ得る。
【0065】
この場合、第一、第二の無線操作ペンダントA,Bが送信する操作データには、両方とも第一の荷役装置本体aの荷役装置ID番号が含まれるから、荷役装置ID番号だけを記憶内容と照合し、ペンダントID番号を照合しないと、第一の荷役装置本体aは、第一、第二の無線操作ペンダントA,Bの両方で動作してしまう。
【0066】
また、一方、第一の無線操作ペンダントAによって、第一の荷役装置本体aをペアリングした後、その第一の無線操作ペンダントAによって第二の荷役装置本体bをペアリングした場合、第一、第二の荷役装置本体a,bが受信した操作データ中のペンダントID番号だけを記憶内容と照合した場合、第一、第二の荷役装置本体a,bは、両方とも第一の無線操作ペンダントAによって動作してしまう。
従って、荷役装置ID番号とペンダントID番号の両方を照合する必要がある。
【0067】
なお、上記実施例では、二個のボタン(上昇ボタンと下降ボタン)が一緒に押下された場合にペアリング操作に移行するように、荷役装置本体に記憶されていたが、三個以上のボタン(例えば、上昇ボタンと左方移動ボタンと右方移動ボタン)が一緒に押下された場合にペアリング操作に移行するようにした場合も、本発明に含まれることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】荷役装置本体の外観写真
【図2】無線操作ペンダントの一例を示す平面図
【図3】無線操作ペンダントの他の例を示す平面図
【図4】無線操作ペンダントの内部回路を説明する模式図
【図5】操作データの内容を説明する模式図
【図6】荷役装置本体を説明する模式図
【図7】ペアリング作業の工程を説明するフローチャート
【図8】従来技術に用いられるロータリスイッチを説明する平面図
【符号の説明】
【0069】
1……荷役装置本体 2,3……無線操作ペンダント 20……本体操作ボタン群

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷役物を持ち上げる荷役装置本体と、
前記荷役物の移動方向を指示する本体操作ボタン群が設けられた無線操作ペンダントとを有し、
前記荷役装置本体と前記無線操作ペンダントには、それぞれ無線送受信装置が設けられ、
前記無線操作ペンダントには、押下された操作ボタンを特定できる操作データを無線送信可能に構成された荷役装置であって、
前記荷役装置本体と前記無線操作ペンダントには、固有の荷役装置ID番号と固有のペンダントID番号とがそれぞれ付与され、
前記無線操作ペンダントは、前記荷役装置ID番号を記憶して電源遮断後も記憶内容を維持する記憶装置を有し、
前記荷役装置本体は、前記ペンダントID番号を記憶して電源遮断後も記憶内容を維持する本記憶領域を有し、
前記操作データには、当該無線操作ペンダントに記憶された前記荷役装置ID番号と当該無線データを無線送信する前記無線操作ペンダントのペンダントID番号とが含まれ、
前記荷役装置本体は、受信した前記操作データに、当該荷役装置本体の荷役装置ID番号と前記本記憶領域に記憶されたペンダントID番号の両方が含まれる場合に、受信した前記操作データに従って動作するように構成された荷役装置。
【請求項2】
前記本記憶領域に記憶された前記ペンダントID番号と、前記無線操作ペンダントに記憶された前記荷役装置ID番号とは、それぞれ変更可能に構成された請求項1記載の荷役装置。
【請求項3】
前記荷役装置本体は前記ペンダントID番号を記憶して電源遮断後も記憶内容を維持する仮記憶領域を有し、
電源が投入された後の前記仮記憶領域に、有効な前記ペンダントID番号が記憶されている場合に、前記仮記憶領域に記憶された前記ペンダントID番号を前記本記憶領域に記憶させる請求項2記載の荷役装置。
【請求項4】
前記荷役装置本体は、電源が投入された後の前記仮記憶領域の記憶内容を読み出し、前記仮記憶領域に有効な前記ペンダントID番号が記憶されている場合には、当該荷役装置本体の荷役装置ID番号と有効な前記ペンダントID番号を含む返信データを無線送信し、
前記無線操作ペンダントは、受信した前記返信データに当該無線操作ペンダントのペンダントID番号が含まれている場合に、受信した前記返信データに含まれる前記荷役装置ID番号を記憶し、無線送信する前記操作データに記憶した前記荷役装置ID番号を含ませる請求項3記載の荷役装置。
【請求項5】
前記荷役装置本体は、電源投入後最初に受信する操作データが、予め設定された二個以上のボタンが一緒に押下されたことを示す場合に、前記操作データ中に含まれるペンダントID番号を前記仮記憶領域に記憶し、前記予め設定された二個以上のボタンが一緒に押下されたことを示す操作データの受信中断を検出すると、前記仮記憶領域に無効なペンダントID番号を記憶させる請求項4記載の荷役装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図1】
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