説明

荷役装置

【課題】シリンダーによるものでも必要最小径のシリンダーですみ、確実に保持が可能であり、左右バランスも気にする必要がない荷役装置を提供する。
【解決手段】コンテナまたはトラック荷台等の荷搬送箱体10内に設ける荷排出もしくは荷積みの荷役装置として、底部にシリンダーにより前後動可能とした床板を配置し、この床板上に、係止時には床板のみが移動し、移動時には床板とともに移動する可動隔壁を設けた荷役装置において、可動隔壁の係止・移動機構として、大きさの異なる大小の枠体20、21、22、23を多段に引き出せるように小さい枠体を大きい枠体の内部に収め、小さい枠体と大きい枠体間にジャッキ24、25、26を掛け渡して設け、この移動機構の一端を荷搬送箱体10内の前側に固定し、移動機構の他端を可動隔壁の下部に結合させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンテナやトラック荷台等の荷搬送箱体に大きな改造なしに、また、外部や内部に大がかりな装置を設けることなく、箱体内にパレットなしで隙間なく積込まれた荷の荷降し作業または荷積み作業を機械化することができ、人手での荷降しという重作業をなくすことができ、これにより、荷降しや荷積み作業者の高齢化、および作業効率の向上にも対応できる荷役装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、輸送費や包装費の低減、輸送期間の短縮、荷痛みの防止等の点からコンテナ輸送が増加している。しかし、コンテナは箱型で、ほとんどのコンテナは、出入口が後端1ケ所であるため、クレーン等が使用できない。しかも積載効率を高くしたり荷崩れ防止のため、荷はパレットに乗っていないバラ積み状態で、隙間がなく積んである。このため、荷の移送運搬には、コンベヤやフォークリフト等が使用できるが、荷の取り崩しは手作業に頼っている。
【0003】
コンテナの荷降し作業はコンテナ内の荷をコンテナ外へ移送運搬する作業が必要であるが、チップ等のバラ物では人手に頼る作業となることが多く、重作業であり、作業安全上好ましくない。特に近年の作業者の高齢化にともない、腰痛対策から腰を痛める作業をなくした荷役装置が必要である。従来この条件に合うものとしてクレーンがあるが、コンテナには取付困難また作業スピードが遅いといった欠点がありコンテナには使用されていない。
【0004】
荷の積み降しまたは積み込みを行う荷役装置付きコンテナとして、発明者は先に下記の出願を行った。
【特許文献1】特開2002−114290号公報
【0005】
これは図11に示すように、コンテナ外殻である箱体10内に、荷排出装置として前後方向に移動する可動隔壁12、もしくはこれに加えて、可動隔壁12の下方に敷設する前後動可能とした床板13を設けたものである。
【0006】
このようにコンテナは荷役装置を備えるものであり、チップ等のバラ物を始めとして、コンテナ内にパレットなしで隙間がなく積込まれた荷の荷降し作業を機械化することができる。そして、コンテナは外殻である箱体内に荷排出装置もしくは荷積み装置として前後方向に移動する可動隔壁を設けていて、荷排出の場合はこの可動隔壁でチップその他の荷を荷排出口方向に移動させ、コンテナ外へ排出でき、荷積みの場合はこの可動隔壁で荷を奥側に送り込み、コンテナの大きな改造なしに、また、外部に大がかりな装置を設けることなくコンテナ内にパレットなしで隙間がなく積まれた荷の荷降し作業または荷積み作業を機械化することが可能となる。
【0007】
チップ等の積み荷はコンテナの箱体内の床板13上に載置されており、この床板13とともに後方へ移動して、後部の積み荷は箱体の外方へでる。この段階では積み荷は床板上にあるが、可動隔壁を箱体側に係止して積み荷の前端部を抑えながら床板を前側に引けば、後部の積み荷の下の床板がなくなり、落下する。
【0008】
可動隔壁と箱体側との係止を解除して、前記積み荷の床板とともに後方へ移動、およびその後の動作を繰り返して順次、積み荷を後部から落下させる。
【0009】
なお、床板の前後動にシリンダーを使用するとしても、そのストロークは小さな小型のものでよく、可動隔壁もチップ等の積み荷を押し出すものではないので、それ自体の強度や荷台側板への係止もそれほど頑強なものでなくてもよい。
【0010】
一方、荷積みの荷役装置として用いる場合は前記動作とは逆に、可動隔壁は一番後ろ位置にあり、その前側でチップ等の積み荷をコンテナの箱体内の床板上に載置した後にこのスライド板とともに前方(箱体奥側)へ移動して、この段階では積み荷は床板上にある。可動隔壁を箱体側に係止して積み荷の後端部を抑えながら床板を後方に押し、次いで、可動隔壁と箱体側との係止を解除して、前記積み荷の床板とともに前方へ移動、およびその後の動作を繰り返して順次、積み荷を後部から前側に移動させる。
【0011】
前記のように、荷排出装置として前後方向に移動する可動隔壁12と可動隔壁12の下方に敷設する前後動可能とした床板13を設ける場合に、可動隔壁12には床板13とともに移動する移動手段と、床板13のみを移動させ可動隔壁12は係止しておく移動阻止手段の両方を設け、それらを交互に確実に作用させる必要がある。
【0012】
前記特許文献1では、前記可動隔壁12は床板13とはベース板12aが接するだけで載置されており、多段伸縮のいわゆるテレスコピックシリンダー14を箱体10との間に設けて、このテレスコピックシリンダー(多段シリンダー)14により前後方向に移動可能とした。一方、床板13と箱体10との間には往復運動するシリンダー15を設け、このシリンダー15で床板13を前後方向に動かせるようにする。
【0013】
シリンダー15により床板13を前後方向に動かし、第1段階として、床板13が荷排出口11の方向(往路方向)に移動する場合には床板13上の荷もこれにより運ばれるようにともに移動する。また、テレスコピックシリンダー14を伸長させて可動隔壁12を床板13と同期させて荷排出口11の方向(往路方向)に移動させる。
【0014】
次に、第2段階として、テレスコピックシリンダー14を固定することで可動隔壁12を固定して荷をその場に止め、シリンダー15により床板13のみを反荷排出口方向(復路方向)に移動させる。以下、前記第1段階、第2段階を順次、繰り返して、可動隔壁12および荷を荷排出口11へと移動させ、荷排出口11から荷をコンテナ外へ排出する。
【0015】
また、下記特許文献2はテレスコピックシリンダーの替わりにチェーンを用いるもので、図12、図13に示すように、箱体10内に荷排出装置もしくは荷積み装置として前後方向に移動する可動隔壁12を設け、さらに、可動隔壁12の下方に敷設する前後動可能とした床板(スライドプレート)13を敷設した。
【特許文献2】特開2004−338790号公報
【0016】
可動隔壁12は鋼製であり、箱体10が直方体であるとして、後端口11に平行する向きで配置される。また、可動隔壁12は下方がより前方に張出す傾斜面12bを後端口11に向く側に有するものとした。
【0017】
前記可動隔壁12は床板13とは下面が接するだけで載置されており、一方、床板13と箱体10との間には往復運動するシリンダー15を設ける。
【0018】
チェーン2a、2bの環体穴に係合する突起を周設したスプロケット3を正逆回転可能なモータ7により回転駆動するようにして可動隔壁12の台座部に設け、箱体10の後端側に一端を固定し、前端側に他端を固定する第1のチェーン2aと、箱体10の前端側に一端を固定し、後端側に他端を固定する第2のチェーン2bとをたすき掛けの状態に張設し、これらチェーン2a、2bの途中を前記スプロケット3に係合させる。
【0019】
使用法は、今、箱体10内に積み荷があるとして、後端口11は開放する。また、可動隔壁12は箱体10の前側に位置している。
【0020】
シリンダー15を伸長すれば床板13が箱体10内の前側から後端へ向けて移動し、それとともにモータ7を駆動してスプロケット3を回転させ、床板13の動きに同期させて可動隔壁12も箱体10内の前側から後端へ向けて移動させ、その結果として床板13の積み荷および可動隔壁12もその分だけ移動する。
【0021】
なお、この状態では、第1のチェーン2aは前記第1の回転体1a、および第4の回転体1dに途中を巻回されるので、この第1の回転体1a、および第4の回転体1d間では可動隔壁12の幅方向に沿って張り巡らされ、同様に、第2のチェーン2bは第2の回転体1bおよび第3の回転体1dに途中を巻回されるので、これら第1のチェーン2aと第2のチェーン2bにより可動隔壁12はたすき掛けにされ、第1の回転体1a、第2の回転体1b、第3の回転体1c、第4の回転体1dを支点に可動隔壁12の左右はともに箱体10の前後に引張される形となるので、左右に旋回するような動きが阻止されて安定した状態を維持することができる。
【0022】
また、前記のごとく床板13とともに可動隔壁12が動く場合は、第1の回転体1a、第2の回転体1b、第3の回転体1c、第4の回転体1dが第1のチェーン2aと第2のチェーン2bを滑り、そのまま第1のチェーン2aと第2のチェーン2bにより可動隔壁12はたすき掛けにされた状態で移動する。
【0023】
次に、シリンダー15を縮小して床板13が逆方向に移動する場合には、モータ7は停止させ、これをブレーキとなる機構として、スプロケット3の回転を固定する。これがスプロケット3を介して第1のチェーン2aと第2のチェーン2bの動きを止めることになり、その反作用として可動隔壁12は固定され、積み荷は前端部が可動隔壁12に固定されているのでそのまま移動せず、床板13のみが移動してもとに戻る。
【0024】
このように、
(1)床板13の後方への移動とそれに同期させた可動隔壁12と積み荷の移動、
(2)可動隔壁12の係止、
(3)床板13のみの前方への移動の手順を繰り返して、可動隔壁12とすべての積み荷を順次床板13の後方側に移動させ、積み荷は後端のものから箱体10外へ落下させる。
【0025】
積み荷をすべて荷降しした状態から、再度の荷降しに備えるため、または、荷積みを行うは、可動隔壁12を床板13の前部側に移動することが必要となる。
【0026】
この場合は、モータ7を逆転させて可動隔壁12のみを前側に移動させ、次の荷降しに備える。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
前記特許文献1の可動隔壁12の移動手段として、テレスコピックシリンダー14は、装置が大掛かりなものになるとともに、シリンダー内径の変化があり一定の速度での駆動・一定のストロークでの駆動にならない為床板との同期ができずコントロールが難しい。
【0028】
反力をシリンダーで保持するためにテレスコピックシリンダー14のシリンダー径が大きくなってしまい、重量が増えてしまうと作動させる油の量が増え、重量がましてしまう。製造上長さに限界がある。
【0029】
12m近く伸ばすので自重によるザクツが発生し、油漏れなどを起こしたり、シリンダーガイドが付いていてもこれはシリンダーに直接ついているので残留物がガイドに干渉すると直接シリンダーを押し上げ、ザクツし、油漏れを起こす。
【0030】
特許文献2のようにテレスコピックシリンダーの替わりにチェーンを用いるものでは、箱体10の荷室にチェーンがあり積載物と干渉し、可動隔壁12の後ろ側に多く入り込み残留物が多くなるとともにチェーンスプロケットに積み荷が堆積してしまい装置が壊れ易いものとなる。
【0031】
チェーンの端末を固定するためにブラケットを付けることになり、これが積み荷排出の抵抗になる。
【0032】
チェーンの外傷が確認しづらくメンテナンスしづらい。また、荷重をかけたときチェーンに伸びが発生するため、ロスが多く排出に時間がかかる。さらに、左右のチェーンのバランスを合わせるのが大変である。
【0033】
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、シリンダーによるものでも必要最小径のシリンダーですみ、重量があまり増えず、使用する油の量もあまり増えずテレスコピックシリンダー(多段シリンダー)に比べて軽量化でき、ザクツするおそれもなく、チェーンのように積載物との干渉を起こすおそれや、排出抵抗になるものを付けることもなく、遊びが発生する部分もなく、確実に保持が可能であり、左右バランスも気にする必要がない荷役装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0034】
請求項1記載の本発明は前記目的を達成するため、コンテナまたはトラック荷台等の荷搬送箱体内に設ける荷排出もしくは荷積みの荷役装置として、底部にシリンダーにより前後動可能とした床板を配置し、この床板上に、係止時には床板のみが移動し、移動時には床板とともに移動する可動隔壁を設けた荷役装置において、可動隔壁の係止・移動機構として、大きさの異なる大小の枠体を多段に引き出せるように小さい枠体を大きい枠体の内部に収め、小さい枠体と大きい枠体間にジャッキを掛け渡して設け、この移動機構の一端を荷搬送箱体内の前側に固定し、移動機構の他端を可動隔壁の下部に結合させたことを要旨とするものである。
【0035】
請求項1記載の本発明によれば、多段シリンダー1本の使用に代わるものとして、大きさの異なる大小の枠体を多段に引き出せるようにしたものであり、シリンダーは枠体相互を出没させるものでよいので、長さも大きくなく、かつ、必要最小径のシリンダーですみ、重量があまり増えず、使用する油の量もあまり増えないですむ。しかも、枠体の種類を増やすことで、充分12m近く伸ばすことに十分対応でき、枠体同士は安定した嵌合となるので、自重によるザクツの発生もない。全体として、テレスコピックシリンダー(多段シリンダー)に比べて軽量化できる。
【0036】
可動隔壁の後側にのみ配設すればよいので、チェーンのように、積載物と干渉することもなく、積載物が可動隔壁の後ろ側に多く入り込み残留物が多くなるおそれもない。排出抵抗になるものを付けることもなく、チェーンのように遊びが発生する部分もなく、確実に保持が可能であり、左右バランスも気にする必要がない。
【0037】
請求項2記載の本発明は、一番大きい枠体は上下2段にして中央に位置させ、ジャッキを伸長した際に上下2段のこの一番大きい枠体から小さい枠体が左右に順次進出し、ジャッキを伸縮した際には小さい枠体はすべて上下2段の一番大きい枠体に収まることを要旨とするものである。
【0038】
請求項2記載の本発明によれば、ジャッキを伸縮した際には小さい枠体はすべて上下2段の一番大きい枠体に収まるので、大きさの異なる大小の枠体を多段に引き出せるようにした場合でも縮小時に場所を取らないものとなり、可動隔壁の後ろ側に装置を設置する場合にも、可動隔壁を極力運転室側によせて、荷室を大きく確保できる。
【0039】
請求項3記載の本発明は、一番大きい枠体は下部に車輪を設けて台車として形成することを要旨とするものである。
【0040】
請求項3記載の本発明によれば、大きさの異なる大小の枠体を多段に引き出せるように小さい枠体を大きい枠体の内部に収める場合に一番大きい枠体は常に外側になるものであり、これを支承する必要があるが、下部に車輪を設けて台車として形成することにより、固定したものとならず、前後動可能となるので、枠体相互の伸縮の際にも安定した支承が得られる。
【発明の効果】
【0041】
以上述べたように本発明の荷役装置は、シリンダーによるものでも必要最小径のシリンダーですみ、重量があまり増えず、使用する油の量もあまり増えずテレスコピックシリンダー(多段シリンダー)に比べて軽量化でき、ザクツするおそれもなく、チェーンのように積載物との干渉を起こすおそれや、排出抵抗になるものを付けることもなく、遊びが発生する部分もなく、確実に保持が可能であり、左右バランスも気にする必要がないものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、図面について本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明の荷役装置の1実施形態を示す、伸ばした状態の平面図、図2は同上側面図、図3は縮めた状態の平面図、図4は同上側面図で、コンテナ外殻である箱体10を示す。
【0043】
この発明も前記従来例と同じく、箱体10内に荷排出装置もしくは荷積み装置として前後方向に移動する可動隔壁12を設け、さらに、可動隔壁12の下方に敷設する前後動可能とした床板(スライドプレート)13を敷設した。
【0044】
可動隔壁12は鋼製であり、箱体10が直方体であるとして、後端口11に向けて、箱体10の側壁間を移動する向きで配置される。図示の例では箱体10は
上面が開放で、自動開閉する幌で屋根が形成されるようになっており、可動隔壁12の高さはこの幌屋根の開閉に邪魔にならない高さとする。
【0045】
また、可動隔壁12は台形状に組まれたフレームとそこに張られる面板からなり、面板として下方がより前方に張出す傾斜面12bを後端口11に向く側に有するものとした。また、床板13も鋼製もしくはステンレス製で、比較的薄いものでよい。
【0046】
前記可動隔壁12は台形状の底辺部分が床板13とは下面が接するだけで載置されており、床板13に載っているので、床板13が移動するのにつれて、床板13とともに移動できる。一方、床板13と箱体10との間には往復運動するシリンダー15を設け、このシリンダー15で床板13を前後方向に動かせるようにする。
【0047】
可動隔壁12の移動機構として、本発明は大きさの異なる大小の枠体20、21、22、23を多段に引き出せるように小さい枠体を大きい枠体の内部に収めた。20は枠体(大)、21は枠体(中)、22は枠体(小)、23は枠体(最小)で、これらは金属製の扁平長方形枠体で、長さは皆ほぼ同じで、幅が相違する。
【0048】
枠体(大)20は中央に位置するものであり、前後端に開口を有し、図5に示すように、上下2段に重なっている。
【0049】
また、図6に示すように、枠体(大)20は下部に車輪27を設けて台車として形成する。
【0050】
枠体(中)21は枠体(大)20の前側または後側に引き出せるように枠体(大)20の内部に収めることができるもので、枠体(大)20の上の段と下の段にそれぞれ収まる枠体(中)21は相互に反対方向に引き出し可能である。
【0051】
枠体(小)22は枠体(中)21の前側または後側に引き出せるように枠体(中)21の内部に収めることができるものである。
【0052】
枠体(最小)23は枠体(小)22の前側または後側に引き出せるように枠体(小)22の内部に収めることができるものである。
【0053】
図中24、25、26は前記大きさの異なる大小の枠体20、21、22、23を多段に引き出すために左右に1本づつ設けた同一径のジャッキであり、ジャッキ24は枠体(大)20と枠体(中)21とに掛け渡すもの、ジャッキ25は枠体(中)21と枠体(小)22とに掛け渡すもの、ジャッキ26は枠体(小)22と枠体(最小)23掛け渡すものであり、いずれのジャッキ24、25、26も大きな枠体側にシリンダーロッドを取り付け、小さな枠体側にシリンダーチューブを取付けている。なお、シリンダーチューブ側とシリンダーロッド側の何れをどちらの枠体側に配置するかは収まりを考慮して変更することができる。
【0054】
ジャッキ24、25、26は大きさの異なる大小の枠体20、21、22、23に対して左右に一対ずつ配置したが、片側だけでもよく、また、ジャッキ24、25、26はそれぞれ独立した油圧供給回路を有するものとせずに、順次、給油できるようにして、一つが伸びきった段階で、その次が伸び始めるようにすると、油圧制御回路がシンプルなものとなる。
【0055】
この大小の枠体20、21、22、23とジャッキ24、25、26の係止・移動機構を荷搬送箱体10内に設置し、その一端αを荷搬送箱体10内の前側(トラック荷台の場合は運転室側)に軸着結合で固定し、図6、図7に示すように係止・移動機構の他端βを可動隔壁12の下部に軸着結合で結合させた。
【0056】
次に使用法について説明する。箱体10内に積み荷があるとして、後端口11は開放する。また、可動隔壁12は箱体10の前側に位置している。
【0057】
この場合、図3、図8に示すように、枠体(中)21は枠体(大)20内に収まり、枠体(小)22は枠体(中)21内に収まり、枠体(最小)23は枠体(小)22に収まって、可動隔壁12の移動機構は全体として縮んだ状態で枠体(大)20の前後長さしかない。
【0058】
シリンダー15を伸長すれば床板13が箱体10内の前側から後端へ向けて移動し、それとともにジャッキ24、25、26のいずれかを伸長させて、大きい枠体から小さい枠体を引き出し、床板13の動きに同期させて可動隔壁12を箱体10内の前側から後端へ向けて移動させ、その結果として床板13の積み荷および可動隔壁12もその分だけ移動する。
【0059】
なお、このように床板13の動きに同期させて可動隔壁12を箱体10内の前側から後端へ向けて移動させるのに、ジャッキ24、25、26のいずれかを油圧駆動して積極的に伸長させてもよいが、単にフリーとしておいて、床板13が
その上に載置された可動隔壁12を運ぶようにしてもよい。床板13上の積み荷は床板13とともに移動するので、可動隔壁12で積み荷を押す必要がないからである。
【0060】
次に、床板13上の積み荷はそのままにしてシリンダー15を縮小して床板13のみ逆方向に移動して、再度、積み荷を移動できるようにする必要がある。
【0061】
このようにするには、可動隔壁12を固定して、積み荷が床板13とともに戻ってしまうのを防止する必要がある。可動隔壁12を固定するにはジャッキ24、25、26を作用させる。ジャッキ24、25、26を固定したものとすれば、可動隔壁12は固定され、積み荷は前端部が可動隔壁12に固定されているのでそのまま移動せず、床板13のみが移動してもとに戻る。
【0062】
このように、あまり大きくない幅で床板13を前後動させる動作に対して
(1)床板13の後方への移動とそれに同期させた可動隔壁12と積み荷の移動、
(2)可動隔壁12の係止、
(3)床板13のみの前方への移動の手順を繰り返して、可動隔壁12とすべての積み荷を順次床板13の後方側に移動させ、積み荷は後端のものから箱体10外へ落下させる。この状態では、図1に示すように大小の枠体20、21、22、23を多段に引き出すものとなる。
【0063】
積み荷をすべて荷降しした状態から、再度の荷降しに備えるため、または、荷積みを行うには、可動隔壁12を床板13の前部側に移動することが必要となる。
【0064】
この場合は、図3の状態に戻るように、ジャッキ24、25、26を縮小し、枠体相互を納めて、可動隔壁12のみを前側に移動させ、次の荷降しに備える。
【0065】
なお、ジャッキ24、25、26の伸長・縮小は、大小の枠体20、21、22、23を多段に引き出し、または引き込んで、可動隔壁12を任意の位置に移動するのにも使用することができる。
【0066】
積み荷の状態によっては、可動隔壁12の位置調整が必要になるからである。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の荷役装置の1実施形態を示す伸ばした状態の平面図である。
【図2】本発明の荷役装置の1実施形態を示す伸ばした状態の側面図である。
【図3】本発明の荷役装置の1実施形態を示す縮めた状態の平面図である。
【図4】本発明の荷役装置の1実施形態を示す縮めた状態の側面図である。
【図5】本発明の荷役装置の1実施形態を示す縮めた状態の縦断正面図である。
【図6】本発明の荷役装置の1実施形態を示す縮めた状態の部分拡大側面図である。
【図7】本発明の荷役装置の1実施形態を示す伸ばした状態の部分拡大側面図である。
【図8】本発明の荷役装置の1実施形態を示す移動装置部分の縮めた状態の平面図である。
【図9】本発明の荷役装置の1実施形態を示す伸ばした状態の前側(箱体後方側)の部分拡大平面図である。
【図10】本発明の荷役装置の1実施形態を示す伸ばした状態の後側(箱体前方側)の部分拡大平面図である。
【図11】従来例を示す斜視図である。
【図12】他の従来例を示す荷役装置付き荷搬送箱体の横断平面図である。
【図13】他の従来例を示す荷役装置付き荷搬送箱体の縦断正面図である。
【符号の説明】
【0068】
1a…第1の回転体(ガイドローラ)
1b…第2の回転体 1c…第3の回転体
1d…第4の回転体 2a…第1のチェーン
2b…第2のチェーン 3…スプロケット
4…凹部 5…回転軸
6…凹溝部 7…モータ
10…箱体 11…後端口
12…可動隔壁 12a…ベース板
12b…傾斜面 13…床板
14…テレスコピックシリンダー 15…シリンダー
20…枠体(大) 21…枠体(中)
22…枠体(小) 23…枠体(最小)
24、25、26…ジャッキ
27…車輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンテナまたはトラック荷台等の荷搬送箱体内に設ける荷排出もしくは荷積みの荷役装置として、底部にシリンダーにより前後動可能とした床板を配置し、この床板上に、係止時には床板のみが移動し、移動時には床板とともに移動する可動隔壁を設けた荷役装置において、
可動隔壁の係止・移動機構として、大きさの異なる大小の枠体を多段に引き出せるように小さい枠体を大きい枠体の内部に収め、小さい枠体と大きい枠体間にジャッキを掛け渡して設け、この移動機構の一端を荷搬送箱体内の前側に固定し、移動機構の他端を可動隔壁の下部に結合させたことを特徴とする荷役装置。
【請求項2】
一番大きい枠体は上下2段にして中央に位置させ、ジャッキを伸長した際に上下2段のこの一番大きい枠体から小さい枠体が左右に順次進出し、ジャッキを伸縮した際には小さい枠体はすべて上下2段の一番大きい枠体に収まる請求項1記載の荷役装置。
【請求項3】
一番大きい枠体は下部に車輪を設けて台車として形成する請求項1または請求項2記載の荷役装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−16551(P2011−16551A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−162699(P2009−162699)
【出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(502193059)光司商会株式会社 (1)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】