説明

荷電粒子分散原液の精製方法及び微小流路装置

【課題】荷電粒子と金属イオンとを含む粒子分散原液から金属イオンを除去する荷電粒子分散原液の精製方法を提供すること。
【解決手段】荷電粒子と金属イオンとを含む粒子分散原液が層流を形成するように微小流路1に送液し、第1の洗浄液1が層流を形成するように微小流路2に送液し、第2の洗浄液2が層流を形成するように微小流路3に送液し、これら3層流が合流した微小流路合流部において流れと交差する方向に電界を付与することにより荷電粒子を微小流路1側から微小流路3側に移動させるとともに金属イオンを微小流路1側又は微小流路2側に滞留させ、該微小流路合流部の下流側において、荷電粒子を分岐微小流路3から回収し、金属イオンを分岐微小流路1若しくは2又は分岐微小流路12に排出する工程を含む精製方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子分散原液の精製方法及び微小流路装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、微粒子分散液の濃縮方法及びこのために使用する濃縮装置を開示している。この濃縮方法においては、微小幅の送液部に微粒子分散液を送液し、送液部の下流に位置し、流れ方向と交差する方向に電界を付与することにより層流で流れる微粒子を電界の一方向側に移動させ、移動した微粒子を濃縮して回収している。
【0003】
【特許文献1】特開2006−205092号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、荷電粒子と金属イオンとを含む粒子分散原液から共存する金属イオンを除去することができる荷電粒子分散原液の精製方法及びそのために使用する微小流路装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の荷電粒子分散原液の精製方法は、3種類の液体1〜3を層流として送液するための3つの微小流路1〜3、これらの微小流路1〜3が1箇所で合流する微小流路合流部、及び、該微小流路合流部の下流側に微小流路1〜3にそれぞれ対応して設けられた3つの分岐微小流路1〜3、並びに、該微小流路合流部において3種類の液体の流れと交差する方向に電界を付与する1対の電極を該微小流路合流部の内壁に有する微小流路装置を準備する工程、荷電粒子と金属イオンとを含む粒子分散原液が層流を形成するように微小流路1に送液し、第1の洗浄液1が層流を形成するように微小流路2に送液し、第2の洗浄液2が層流を形成するように微小流路3に送液し、これら3層流が合流した微小流路合流部において流れと交差する方向に電界を付与することにより荷電粒子を微小流路1側から微小流路3側に移動させると共に金属イオンを微小流路1側又は微小流路2側に滞留させ、該微小流路合流部の下流側において、荷電粒子を分岐微小流路3から回収し、金属イオンを分岐微小流路1又は2に排出する工程、を有することを特徴とする。
【0006】
また、本発明の微小流路装置は、荷電粒子と金属イオンとを含む粒子分散原液から金属イオンを除去するための微小流路装置であって、3種類の液体1〜3を層流として送液するための3つの微小流路1〜3、これらの合流微小流路が1箇所で合流する微小流路合流部、及び、該微小流路合流部の下流側に微小流路1〜3にそれぞれ対応して設けられた3つの分岐微小流路1〜3を有し、該合流部において3種の液体の流れと交差する方向に電界を付与する1対の電極を該微小流路合流部の内壁に有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、荷電粒子及び共存する金属イオンを含む粒子分散原液から金属イオンを効率的に除去して、荷電粒子を精製することができる。
本発明は、1μm前後の粒子直径、好ましくは0.1〜10μmの粒子直径を有する荷電粒子に有効に適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本実施形態の荷電粒子分散原液の精製方法は、3種類の液体1〜3を層流として送液するための3つの微小流路1〜3、これらの微小流路1〜3が1箇所で合流する微小流路合流部、及び、該微小流路合流部の下流側に微小流路1〜3にそれぞれ対応して設けられた2つの分岐微小流路12及び3又は3つの分岐微小流路1〜3、並びに、該微小流路合流部において3種類の液体の流れと交差する方向に電界を付与する1対の電極を該微小流路合流部の内壁に有する微小流路装置を準備する工程、荷電粒子と金属イオンとを含む粒子分散原液が層流を形成するように微小流路1に送液し、第1の洗浄液1が層流を形成するように微小流路2に送液し、第2の洗浄液2が層流を形成するように微小流路3に送液し、これら3層流が合流した微小流路合流部において流れと交差する方向に電界を付与することにより荷電粒子を微小流路1側から微小流路3側に移動させると共に金属イオンを微小流路1側又は微小流路2側に滞留させ、該微小流路合流部の下流側において、荷電粒子を分岐微小流路3から回収し、金属イオンを分岐微小流路12又は分岐微小流路1若しくは2に排出する工程、を有する。
【0009】
また、本実施形態の微小流路装置は、荷電粒子と金属イオンとを含む粒子分散原液から金属イオンを除去するための微小流路装置であって、3種類の液体1〜3を層流として送液するための3つの微小流路1〜3、これらの合流微小流路が1箇所で合流する微小流路合流部、及び、該微小流路合流部の下流側に微小流路1〜3にそれぞれ対応して設けられた2つの分岐微小流路12及び3又は3つの分岐微小流路1〜3を有し、該合流部において3種の液体の流れと交差する方向に電界を付与する1対の電極を該微小流路合流部の内壁に有する。
以下、本実施形態の精製方法及びこのために使用する微小流路装置について適宜図面を参照しながら説明する。
【0010】
図1は、本実施形態の微小流路装置の一実施態様を示す概念図である。
図1に示す微小流路装置は、その上部に3種類の液体1、液体2及び液体3を層流として送液するための3つの微小流路1〜3(I−1、I−2及びI−3)を備えている。この微小流路装置では、これらの3つの微小流路1〜3(I−1、I−2及びI−3)に送液する液体を導入するための導入口(不図示)を有している。3つの微小流路1〜3(I−1、I−2及びI−3)は、下流において1箇所で合流する微小流路合流部123を形成している。微小流路合流部123では、上記の3つの液体が合流して、層流G−1、層流G−2及び層流G−3として送液されている。
【0011】
3つの微小流路1〜3(I−1、I−2及びI−3)にそれぞれ送液される液体1〜3は、相互に完全に接触した3つの層流G−1〜G−3を形成することが好ましく、このため合流前の3つの微小流路1〜3(I−1、I−2及びI−3)の断面は矩形であることが好ましい。矩形の長辺の長さは適宜選択できるが、約数〜約数千μm(「数μm以上数千μm以下」を意味する。)であることが好ましく、50〜500μmであることがより好ましい。また中間に位置する微小流路I−2は、その両側で微小流路I−1及びI−3と互いに接して微小流路合流部123を形成している。合流部の流路長は、適宜選択できるが、約十〜数百mmであることが好ましく、50〜200mmであることがより好ましい。
3つの微小流路1〜3(I−1、I−2及びI−3)に対応して、微小流路合流部123の合流部末端の下流側には、3つの分岐微小流路1〜3(O−1、O−2及びO−3)が設けられている。これらの分岐微小流路1〜3の断面は、微小流路1〜3の断面と形状及び面積がほぼ等しいことが好ましい。
なお、図3に示すように、分岐微小流路O−1及びO−2を合体した1つの分岐微小流路O−12とすることもできる。
また、微小流路の流れ方向とは直交する流路高さ及び微小流路合流部の高さは、適宜選択できるが、約十〜約千μmであることが好ましく、50〜100μmであることがより好ましい。
【0012】
図1において、微小流路合流部123において3層流G−1〜G−3と交差する方向の両側の流路壁内面には、1対の電極が設けられている。微小流路合流部の断面が全体として矩形の場合には、この電極は対向する1対の平行平板電極とすることが好ましい。この一対の電極により形成される電界の方向は、この微小流路合流部123において隣接して流れる3種類の液体1〜3の合流した層流の流れ方向と交差する方向となり、図1においてはほぼ直交している。電極は、白金などの腐食されにくい材質を使用して製作することが好ましい。電極長は、合流流路長の50%以上とすることが好ましく、80〜95%とすることがより好ましい。
【0013】
本実施形態の微小流路装置は、ガラス、シリコーン、セラミックス、PMMA等の微小流路作成に一般的に使用される材質を使用することができ、また、公知の微小流路装置の製造方法を採用して製造することができる。
【0014】
図2は、本実施形態に係る粒子分散原液の精製方法の一実施態様を示す概念図である。
本実施形態における微小流路とは、幅が約数〜約数千μmである流路をいう。微小流路の幅は、好ましくは50〜1,000μmであり、更に好ましくは50〜500μmである。本実施形態の精製方法において、3つの微小流路を流れる液体のレイノルズ数は2,300以下となり、その流動は乱流ではなく層流となる。分岐微小流路における幅やレイノズル数も微小流路と同様である。
ここで、レイノルズ数(Re)は、下記式で表されるものであり、2,300以下のとき層流支配となる。
・Re=uL/ν(u:流速、L:代表長さ、ν:動粘性係数)
上述のような層流支配の世界では、慣性項に対して、粘性項の寄与が大きくなるため、基本的には、流れ方向に対して交差する方向への媒体の移動が生じない流れとなる。したがって、乱流による荷電粒子の拡散が防止される。
本実施形態の精製方法では、荷電粒子は電界の作用により流れ方向に対して交差する方向に電気泳動する。
【0015】
本実施形態の粒子分散原液の精製方法においては、荷電粒子と金属イオンとを含む粒子分散原液、洗浄液1及び洗浄液2を、微小流路装置に設けられた、それぞれ対応する導入口から導入してそれぞれを微小流路1〜3(I−1、I−2及びI−3)に送液する。送液には定量送液ポンプ等の公知の手段を用いることができる。これらの3つの微小流路が合流する微小流路合流部123において、3液体の形成する3つの層流G−1、G−2及びG−3が接触して送液されている。これらの3液体合流の流れ方向と交差する方向に電界を付与する。電界の向きは、荷電粒子を含む粒子分散原液中の荷電粒子が微小流路合流部において、微小流路I−1から送液された層流G−1側から微小流路I−3から送液された層流G−3側に移動するように付与する。負に荷電する粒子に対しては、層流G−1側をマイナス(−)電極として、層流G−3側をプラス(+)電極とすることにより、その電界内を流れる粒子分散原液中の荷電粒子を層流G−1側から層流G−3側に電気泳動により移動させることができる。
電界をかけた微小流路合流部において、荷電粒子は、層流G−1から洗浄液1の層流に移動し、さらに洗浄液2の層流に移動する。従って、微小流路合流部の下流では、荷電粒子は分岐微小流路O−3から回収することができる。
【0016】
一方、粒子分散原液中において荷電粒子の外部に存在する金属イオンは、微小流路合流部において、層流G−1側に設けられたマイナス電極の作用により、層流G−1内に留まる。また、荷電粒子の内部(表面を含む。)に存在する金属イオンは、荷電粒子と共に層流G−2に移動すると、この洗浄液1中の洗浄剤の作用により洗浄されて、層流G−2内に滞留させることができる。
このようにして、該合流部の下流側において、荷電粒子は洗浄液2と共に分岐微小流路O−3から回収することができ、不純物としての金属イオンは分岐微小流路O−1若しくはO−2又はO−12から排出させることができる。この結果、荷電粒子分散原液中の荷電粒子の精製が可能となる。
【0017】
荷電粒子が負電荷を帯びた荷電粒子である場合、好ましい一実施態様として、洗浄液1が粒子分散原液中の金属イオンと塩を形成可能な酸の水溶液を含む水溶液であり、また、洗浄液2が純水である場合を挙げることができる。
洗浄液1として使用する、金属イオンと塩を形成可能な酸は、鉱酸でも有機酸でもよく、金属イオンと可溶性又は難溶性の中性塩を形成する酸であることが好ましい。
この場合、負荷電粒子の内部(表面を含む。)に金属イオンを含む粒子分散原液を微小流路I−1に送液した場合、微小流路合流部において、層流G−1側から電気泳動により洗浄液1の層流G−2中に負荷電粒子に同伴して移動してきた金属イオンは、洗浄液1に含まれる酸と塩を形成する。この塩が中性である場合には、金属塩はもはや電界の影響を受けず、層流G−2内に滞留するので、分岐微小流路O−2から排出させることができる。
負荷電粒子は層流G−2から更に層流G−3の純水で洗浄されて分岐微小流路O−3から回収される。
【0018】
微小流路I−1における、粒子分散原液に含まれる金属イオン及びその酸との反応について説明する。
粒子分散原液に含まれる金属イオンとしては、荷電粒子の製造工程において処理剤として使用された金属イオンの他にいわゆる汚染物質として意図せずに混入する金属イオンが含まれる。乳化重合凝集法により製造されるトナーの場合には、凝集剤として添加される多価金属塩が金属イオンに含まれる。
第1の洗浄液としては、上記分散原液中の金属イオンと難溶性の塩を形成することのできる酸の水溶液を使用することができる。このような酸としては、希硫酸のような鉱酸が例示できる。分散原液中に水溶性カルシウムイオン(Ca2+)がある場合には、Ca2+は希硫酸と66℃以下で硫酸カルシウムの二水塩(CaSO4・2H2O)を形成する。
【0019】
また、金属イオンと塩を形成可能な酸として、酢酸、シュウ酸、コハク酸又はこれらのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩(Li+、Na+、K+、NH4+)のような有機酸又はその塩も好ましく使用できる。シュウ酸アンモニウム水溶液中で、水溶性カルシウムイオン(Ca2+)はシュウ酸カルシウムの1水塩の難溶性塩を形成する。
また、洗浄液1として、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)のような遷移金属イオンや通常金属イオンと水可溶性の金属錯体を形成するような配位子の水溶液を使用することもできる。
【0020】
液体1〜3の送液量は、0.001〜100ml/hrであることが好ましく、0.01〜50ml/hrであることがより好ましい。従って、排出量もこの範囲内となる。
精製量を増大するためには、微小流路装置の数を増やすナンバリングアップを行うことができる。
【0021】
本実施形態の精製対象である荷電粒子の体積平均粒径は、0.1μm〜500μmであることが好ましく、0.1〜10μmであることがより好ましい。前記の平均粒径範囲内であると、高い精製効率が得られる。
【0022】
本実施形態において、前記粒子の体積平均粒径は、下記粒径(5μm以下)の場合を除き、コールターカウンターTA−II型(コールター社製)を用いて測定した値である。この場合、粒子の粒径レベルにより、最適なアパーチャーを用いて測定する。また、粒子の粒径が5μm以下の場合は、レーザ回折散乱式粒度分布測定装置(LA−920、堀場製作所製)を用いて測定する。
前記粒子の比重は、気相置換法(ピクノメータ法)により、湯浅アイオニクス社製ウルトラピクノメータ1000を用いて測定する。
前記媒体液体の比重は、エーアンドディー社の比重測定キットAD−1653を用い測定する。
【0023】
本実施形態の精製方法は、種々の荷電粒子に適用でき、静電荷像現像用トナーが含まれる。静電荷像現像用トナーとしては、混練粉砕法や懸濁重合法よりも、乳化重合凝集法により製造されるトナーに対し本実施形態の精製方法をより好ましく適用できる。
乳化重合凝集法は、乳化重合で得られた粒径が1μm以下の結着樹脂粒子を分散した樹脂粒子分散液、着色剤を分散した着色剤分散液、及び必要に応じて、離型剤を分散した離型剤分散液をトナー粒径に凝集させる。この凝集工程の後に、結着樹脂のガラス転移温度以上の温度に凝集粒子を加熱して凝集体を融合してトナー粒子を形成する。前記凝集工程において、トナー粒径の凝集粒子を形成するヘテロ凝集を行わせるために、イオン性界面活性剤や多価金属塩(硫酸アルミニウムなど)が使用される。
乳化重合凝集法により製造される電潜像現像用トナーの粒子分散原液は、トナー粒子の外部又は内部にAl3+、Mg2+、Ca2+、Cu2+、Fe3+、Na+等の金属イオンを含有する。
【0024】
本実施形態に用いられる粒子の形状は、特に限定されないが、真球状又は略球状の粒子が好ましい。これらの粒子の長軸長と短軸長との比(長軸長/短軸長)は、1〜20の範囲が好ましく、1〜2の範囲がより好ましい。
【0025】
本実施形態において使用される粒子分散原液中の荷電粒子は、媒体液体中で正あるいは負の荷電を有する。例えば、水媒体中では、粒子表面に−COOHや−SO3Hなどの酸性基が存在する場合は負の荷電を示し、−NH2や−NH3+などの塩基性基が存在する場合は正の荷電を有する。
【0026】
前記媒体液体中で負の荷電を示す粒子の例としては、上記の酸性基を側鎖に有する付加重合性の結着剤を含有する粒子が例示できる。これらの結着剤は、酸性基を有するエチレン性不飽和化合物と酸性基を有しないエチレン性不飽和化合物とを共重合して製造することができる。
酸性基を有するエチレン性不飽和化合物としては、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、カルボン酸無水物基を有するエチレン性不飽和化合物が好ましく、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、メタクリル酸、アクリル酸、無水マレイン酸が例示できる。
更に共重合体を構成するための酸性基を有しないエチレン性不飽和化合物としては、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−クロルスチレン、p−フェニルスチレン等のスチレン類;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類;塩化ビニル;酢酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロロエチル、アクリル酸フェニル、α−クロロアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸グリシジル、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、などの(メタ)アクリル酸エステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのエチレン性不飽和ニトリル;アクリルアミドなどアクリルアミド類;;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトンな どのビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンなどのN−ビニル化合物などが例示できる。また、これらを一種あるいは二種以上用いてもよい。
【0027】
一方、前記媒体液体中で正の荷電を示す粒子の例としては、塩基性基を側鎖に有する付加重合性の結着剤を含有する粒子が例示できる。これらの結着剤は、塩基性基を有するエチレン性不飽和化合物と塩基性基を有しないエチレン性不飽和化合物とを共重合して製造することが好ましい。
塩基性基を有するエチレン性不飽和化合物としては、2級、3級又は4級アミノ基を有するエチレン性不飽和化合物が好ましく、3級又は4級アミノ基を有するエチレン性不飽和化合物がより好ましい。重合体とした後に3級アミノ基を4級化することもできる。
3級又は4級アミノ基を有するエチレン性不飽和化合物としては、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、N−n−ブトキシアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、アクリルアミド、N−ビニルカルバゾール、ビニルピリジン、2−ビニルイミダゾール、2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、2−ヒドロキシ−3−アクリルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、あるいはこれらの窒素を4級化したものが例示できる。
塩基性基を有しないエチレン性不飽和化合物を共重合する場合、共重合単量体として、上記の酸性基を有しないエチレン性不飽和化合物の1種又は2種以上を使用できる。
【0028】
また、本実施形態において用いられる荷電粒子としては、無機粒子であってもよい。このような無機粒子としては、SiO2やTiO2などの金属酸化物が負極性を示す。正極性を示すものとしては、酸化アルミなどがある。さらに、これらをシラン処理剤で処理されたものは、その処理剤の有する末端基の種類、割合により、正負それぞれの極性を示すことが知られている。例えば、アミノ基などを含むシラン処理剤でSiO2を処理することにより、正極性を示すようになる。
【0029】
一方、本実施形態において、液体としてどのような媒体液体も使用できるが、該媒体液体の電導度は0〜50μs/cmであることが好ましく、より好ましくは0〜20μs/cmであり、さらに好ましくは0〜10μs/cmである。
本実施形態において好ましく用いられる媒体液体としては、例えば、水、アルコール等が使用可能であり、特に水を主成分とする水性媒体が好ましく、水が特に好ましい。
【0030】
本実施形態において、好ましい粒子と媒体液体との組み合わせとしては、カルボキシル基を表面に有するポリスチレンアクリレート共重合体又はポリエステル系樹脂粒子と水系媒体、アミノ基あるいは4級アンモニウム基を有するポリスチレンアクリレート共重合体又はポリエステル系樹脂粒子の水分散物が挙げられ、この中でもカルボキシル基を表面に有するポリスチレンアクリル系樹脂を結着樹脂として含有する荷電粒子の水分散原液がより好ましい。
【0031】
本実施形態に用いられる粒子分散原液における粒子の濃度は、0.1〜40体積%であることが好ましく、1〜25体積%であることがより好ましい。
【実施例】
【0032】
以下に実施例によりさらに具体的に本実施形態の精製方法を説明するが、本実施形態はこれらの実施例に限定される訳ではない。
【0033】
実施例1においては、図1に模式的に示したような微小流路装置を使用した。この微小流路装置は、ガラスで製作した装置であり、3つの微小流路が合流して微小流路合流部を形成し、さらに3つの分岐微小流路に分かれる微小流路装置を使用した。W1=W2=W3=100μm、D(奥行き)=100μmであり、合流部長L2=100mm、電極長L1=90mmであった。
【0034】
この微小流路装置を使用して、微小流路I−1に乳化重合凝集法により製造され、共重合されたアクリル酸単位により負帯電を帯びた平均粒子径が約2μmの静電荷像現像用トナー粒子が水中に分散され、不純物電解質(金属イオンとしてCa2+、Mg2+、Al3+、Cu2+、Na+を含む。)を含む粒子分散原液を導入した。微小流路I−2には希シュウ酸水溶液を導入し、流路I−3には純水を導入した。流量は、微小流路I−1、I−2及びI−3共に6ml/hrとした。
電極間電圧は3Vとして、電界は100V/cmとした。
分岐微小流路O−3から金属イオンの低減された精製された静電写真トナー粒子を回収することができた。
こうして回収された静電写真トナーは、電子写真プロセスにおける帯電特性が向上し、電子写真装置の設置された様々な環境下での安定した画質が得られる。また、トナー像(潜像)が形成される感光体の寿命が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本実施形態の微小流路装置の一実施態様を示す概念図である。
【図2】本実施形態の精製方法の一実施態様を模式的に示す概念図である。
【図3】本実施形態の微小流路装置の別の実施態様を示す概念図である。
【符号の説明】
【0036】
I−1:微小流路1
I−2:微小流路2
I−3:微小流路3
123:微小流路合流部
G−1:層流1
G−2:層流2
G−3:層流3
O−1:分岐微小流路1
O−2:分岐微小流路2
O−12:分岐微小流路12
O−3:分岐微小流路3
+:プラス電極
−:マイナス電極
L1:電極の長さ
L2:微小流路合流部の長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3種類の液体1〜3を層流として送液するための3つの微小流路1〜3、これらの微小流路1〜3が1箇所で合流する微小流路合流部、及び、該微小流路合流部の下流側に微小流路1〜3にそれぞれ対応して設けられた2つの分岐微小流路12及び3又は3つの分岐微小流路1〜3、並びに、該微小流路合流部において3種類の液体の流れと交差する方向に電界を付与する1対の電極を該微小流路合流部の内壁に有する微小流路装置を準備する工程、
荷電粒子と金属イオンとを含む粒子分散原液が層流を形成するように微小流路1に送液し、第1の洗浄液1が層流を形成するように微小流路2に送液し、第2の洗浄液2が層流を形成するように微小流路3に送液し、
これら3層流が合流した微小流路合流部において流れと交差する方向に電界を付与することにより荷電粒子を微小流路1側から微小流路3側に移動させるとともに金属イオンを微小流路1側又は微小流路2側に滞留させ、
該微小流路合流部の下流側において、荷電粒子を分岐微小流路3から回収し、金属イオンを分岐微小流路12又は分岐微小流路1若しくは2に排出する工程、を有することを特徴とする
荷電粒子分散原液の精製方法。
【請求項2】
該荷電粒子が負電荷を帯び、該粒子分散原液が該荷電粒子の内部及び/又は外部に金属イオンを含み、洗浄液1が該金属イオンと塩を形成可能な酸を含む水溶液であり、洗浄液2が純水である、請求項1に記載の荷電粒子分散原液の精製方法。
【請求項3】
荷電粒子と金属イオンとを含む粒子分散原液から金属イオンを除去するための微小流路装置であって、
3種類の液体1〜3を層流として送液するための3つの微小流路1〜3、これらの合流微小流路が1箇所で合流する微小流路合流部、及び、該微小流路合流部の下流側に微小流路1〜3にそれぞれ対応して設けられた2つの分岐微小流路12及び3、又は、3つの分岐微小流路1〜3を有し、該合流部において3種の液体の流れと交差する方向に電界を付与する1対の電極を該微小流路合流部の内壁に有することを特徴とする
微小流路装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−97938(P2009−97938A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−268574(P2007−268574)
【出願日】平成19年10月16日(2007.10.16)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】