荷電粒子放射線治療
特に、加速器が、この加速器を患者支持体上の患者の周囲の或る範囲の位置にわたって移動可能にするようにガントリー上に取り付けられている。加速器は、この範囲内の位置から患者の任意のターゲットに到達するのに充分なエネルギーレベルを有する陽子またはイオンビームを発生させるように構成されている。陽子またはイオンビームは、加速器から患者に向けて実質直接的に通過する。一部の例では、シンクロサイクロトロンは、少なくとも6テスラの磁場強度を生じさせ、少なくとも150MeVのエネルギーレベルを有する粒子のビームを発生させ、4.5立方メートル以下の容積を有し、30トン未満の重量を有する超伝導電磁構造体を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子(例えば陽子やイオン)放射線治療に関する。
【背景技術】
【0002】
治療用の陽子ビーム(陽子線)またはイオンビームのエネルギーは、従来の放射線治療において用いられる電子線のエネルギーと比較して、高いものである必要がある。例えば、水中に略32cmの残留範囲を有する陽子線は、人間のあらゆる腫瘍ターゲットを治療するのに適していると考えられている。ビームを拡散させるのに用いられる散乱箔に起因して残留範囲の減少が許容される場合、初期陽子ビームエネルギーが250MeVであることが、32cmの残留範囲を達成するために必要とされる。
【0003】
或る種の粒子加速器を用いて、放射線治療用に充分なビーム電流(例えば略10nA)で250MeVの陽子ビームを発生させることができ、線形加速器、シンクロトロン、サイクロトロンが挙げられる。
【0004】
臨床環境用の陽子線またはイオン放射線治療システムの設計では、全体のサイズ、コスト、複雑さを考慮する必要がある。利用可能な空間は、込み入った臨床環境では大抵限られている。より低いコストによって、より多くのシステムをより多くの患者に届けられるように配置することができる。より低い複雑さによって、作動コストが減少し、日常的な臨床利用におけるシステムの信頼性が高まる。
【0005】
また、他の要件も、このような治療システムの設計に影響を与える。安定した再現可能な位置に保持されている(例えば平坦なテーブル上に仰向けで横たわっている)患者に治療を行えるようにシステムを構成することによって、治療ごとに医師が、患者の生体構造に対して相対的に、目的のターゲットをより正確に移動させることができる。また、治療ごとに患者の位置を信頼できるように再現することは、患者に取り付けられた特注のモールド(型)及びブレース(支え)を用いて補助可能である。安定して固定された位置にある患者に対しては、放射線治療のビームを、一連の角度から患者に向けることが可能であり、治療過程において、外来放射線量がターゲットではない組織上に広がる一方で、ターゲットにおける放射線量が増強される。
【0006】
従来、アイソセントリックガントリーは、患者内の単一点(アイソセンター(治療中心)と称される)に向けて共通の鉛直面内の或る範囲の角度に存在する一連の経路に沿って放射線ビームを向けるために、仰向けの患者周りに回転させられる。患者が横たわるテーブルを鉛直軸周りに回転させることによって、ビームを異なる経路に沿って患者に向けることができる。患者の周囲で放射線源の位置を変更するために用いられる他の方法も存在し、ロボット操作が挙げられる。また、患者を移動または再配置するための他の方法も用いられている。
【0007】
高エネルギーX線ビーム治療では、X線ビームを、ロボットアームまたはガントリー上に取り付けられた電子線形加速器からアイソセンターに向けてもよい。
【0008】
典型的な陽子ビーム治療において、ビームを発生させる円形粒子加速器は、ガントリー上に取り付けるには大き過ぎる。代わりに、加速器は固定位置に取り付けられ、粒子ビームは、磁気的なビームステアリング素子を用いて、回転ガントリーを介して方向が変更される。Blosserは、加速器を、水平な回転軸付近のガントリーの側面上に取り付けることを提案した。
【0009】
【特許文献1】米国特許出願第11/187633号明細書
【特許文献2】米国仮特許出願第60/590089号明細書
【特許文献3】米国特許出願第10/949734号明細書
【特許文献4】米国仮特許出願第60/590088号明細書
【特許文献5】米国仮特許出願第60/760788号明細書
【特許文献6】米国特許出願第11/463402号明細書
【特許文献7】米国仮特許出願第60/850565号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
一般に、一側面では、加速器は、この加速器を患者支持体の上の患者の周囲の或る範囲の位置にわたって移動可能にするようにガントリー上に取り付けられる。加速器は、この範囲内の位置から患者の任意のターゲットに到達するのに充分なエネルギーレベルを有する陽子またはイオンビームを発生させるように構成されている。陽子またはイオンビームは、加速器のハウジングから患者に向けて実質直接的に通過する。
【0011】
実施形態は以下の特徴を一つ以上含み得る。ガントリーは患者支持体の両側上のベアリング上の回転のために保持されている。ガントリーは、回転軸から延伸する二つのレッグと、加速器が取り付けられる二つのレッグの間のトラスとを有する。ガントリーは、360度未満、少なくとも180度、そして一部の実施形態では略180度から略330度の範囲の位置内でしか回転しないように制限されている(180度の回転範囲は、仰向けの患者内への全てのアプローチ角を提供するのに充分なものである)。放射線防護壁は、この範囲内のあらゆる位置において加速器からの陽子またはイオンビームのライン上にない壁を少なくとも一つ含み、この壁は、より小さな質量で同じ放射線防護を提供できるように構成されている。患者支持体は、ガントリーが回転しないように制限されている或る範囲の位置によって画定された空間を介してアクセス可能な領域中に取り付けられている。患者支持体はガントリーに対して相対的に移動可能であり、これには鉛直な患者の回転軸周りの回転が含まれる。患者の回転軸は、患者支持体上の患者近傍のアイソセンターを含む。ガントリーの回転軸は水平であり、アイソセンターを含む。加速器の重量は40トン未満であり、典型的な実施形態では5から30トンの範囲内である。加速器が占める容積は4.5立方メートル以下であり、典型的には0.7から4.5立方メートルの範囲内である。加速器は、少なくとも150MeV、また、150から300MeVの範囲内(例えば250MeV)のエネルギーレベルを有する陽子またはイオンビームを発生させる。
【0012】
加速器は、少なくとも6テスラであり、6から20テスラまでであり得る磁場強度を有する磁石構造体を備えたシンクロサイクロトロンであり得る。磁石構造体は、クライオクーラーによって冷却される超伝導巻線を含む。陽子またはイオンビームは、加速器から患者の位置の一般領域に向けて直接的に通過する。患者支持体、ガントリー及び加速器を含む遮蔽チャンバの壁の少なくとも一つは、チャンバの他の壁よりも薄い。チャンバの一部を地中に埋めることができる。
【0013】
一般に、一側面では、加速器は、患者の任意のターゲットに到達するのに充分なエネルギーレベルを有する陽子またはイオンビームを発生させるように構成されている。加速器は、陽子またはイオンビームを加速器のハウジングから患者に向けて実質直接的に通過させる向きで回転可能なガントリー上に取り付けるのに充分小型かつ軽量である。
【0014】
一般に、一側面では、医療用シンクロサイクロトロンは、少なくとも6テスラの磁場強度を生じさせ、少なくとも150MeVのエネルギーレベルを有する粒子(陽子等)のビームを発生させ、4.5立方メートル以下の容積を有し、30トン未満の重量を有する超伝導電磁構造体を有する。
【0015】
一般に、一側面では、患者は処置空間内で支持されて、陽子またはイオンのビームは、加速器の出力部から患者内の任意のターゲットに向けて直線方向で通過し、この直線方向は、患者の周囲の或る範囲の方向にわたって変化させられる。
【0016】
一般に、一側面では、構造体は、患者支持体と、加速器が取り付けられ、この加速器を患者支持体上の患者の周囲の或る範囲の位置にわたって移動可能にするガントリーとを含む。加速器は、この範囲内の位置から患者の任意のターゲットに到達するのに充分なエネルギーレベルを有する陽子またはイオンビームを発生させるように構成されている。壁で囲まれたエンクロージャーは、患者支持体、ガントリー及び加速器を収容する。一部の例では、壁で囲まれたエンクロージャーの表面の半分以上が地中に埋められている。
【0017】
他の側面では、上述の側面と特徴と、装置、システム、方法、ソフトウェア製品、ビジネス方法として表現された他の特徴との他の組み合わせが含まれ、また他の方法もある。
【発明の効果】
【0018】
略10テスラの磁場を生じさせることによって、加速器のサイズが1.5メートルに近づき、その質量が略15から20トンに減少する。重量は、加速器付近に許容される浮遊磁場に依存する。更なる軽量化及び小型化も可能である。これによって、出力ビームがアイソセンターに直接的に向けられ、また、患者周りに回転されるように、サイクロトロンをガントリー上に配置することが可能になり、従って、陽子またはイオンビーム放射線治療の伝達が簡略化される。抽出ビーム焦点調節及びステアリング素子の全ては、加速器内に組み込まれるか、加速器の間近に配置される。加速器をガントリー上に直接取り付けることによって、加速器から患者内のターゲット体積に向けてビームを輸送するのに必要とされる輸送素子がいらなくなる。陽子またはイオンビーム治療システムのサイズ、複雑さ及びコストが減少し、また、その性能が改善される。鉛直面内のガントリーの回転範囲を360度未満にすることによって、ビームが決して向けられない位置に提供される遮蔽バリヤの厚さが減少する。また、これによって、患者処置空間にアクセスし易くなる。シンクロサイクロトロンは、加速中のビーム焦点調節を妥協せずに、任意の高磁場に対してスケーリングされる。クライオジェン液体で冷却されたコイルがいらなくなることによって、蒸発した液体クライオジェンが磁石のクエンチ等の故障状態中に放出される場合におけるオペレータ及び患者に対する危険性が減少する。
【0019】
他の利点及び特徴は下記の記載及び特許請求の範囲の記載から明らかになるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1に示されるように、荷電粒子放射線治療システム500は、ビーム発生粒子加速器502を含む。ビーム発生粒子加速器502は、回転ガントリー504上に取り付け可能であるのに充分小さなサイズ及び重量を有し、その出力部は、加速器のハウジングから患者506に向けて直線的に(つまり実質直接的に)向けられている。治療システムのサイズ及びコストは顕著に減少し、システムの信頼性及び精度を向上可能である。
【0021】
一部の実施形態では、鋼のガントリーは、患者の両端に存在する二つの個々のベアリング512、514上で回転するように取り付けられた二つのレッグ508、510を有する。加速器は鋼のトラス516によって支持されている。トラス516は、患者が横たわる処置領域518に跨るのに充分長く(例えば、長身の人間の二倍の長さであり、患者の所望のターゲット領域をビームのライン上に残したままで人間をこの空間内で完全に回転させることが許容される長さ)、ガントリーの回転レッグの両端に安定して取り付けられている。
【0022】
一部の例では、ガントリーの回転は、360度未満(例えば略180度)の範囲520に制限されていて、フロア522が、治療システムを患者処置領域内に収容するボールト524の壁から延伸可能になる。また、ガントリーの回転範囲が制限されていることによって、処置領域の外側の人間の放射線遮蔽を提供する一部の壁(ビームを直接受けることの決してない、例えば壁530)に必要とされる厚さが減少する。ガントリーの180度という回転範囲は、処置のアプローチ角の全てをカバーするのに充分なものではあるが、より広い行程範囲を提供することが有益である。例えば、回転範囲が180から330度の間であることが有益であり、この範囲でも、治療フロア空間用の間隔が提供される。行程範囲が大きい場合、ガントリーが、治療空間の或る部分にいる人間または装備にとって危険な位置へと揺れる可能性がある。
【0023】
ガントリーの水平方向の回転軸532は、患者及び療法士が治療システムとやり取りを行うフロアの公称1メートル上方に位置している。このフロアは、治療システムを遮蔽するボールトの底面フロアの略3メートル上方に位置している。回転軸の下からの処置ビームを伝えるために、加速器は持ち上げられたフロアの下に揺れることができる。患者のカウチは、ガントリーの回転軸に平行な実質水平面内を移動及び回転する。カウチは、この構成では、水平面内で略270度の範囲534で回転可能である。このガントリー及び患者の回転範囲と自由度の組み合わせによって、療法士が、ビームに対するアプローチ角を事実上いかようにも選択することができるようになる。必要であれば、患者を逆向きでカウチ上に配置することができ、考えられる全角度を使用することができる。
【0024】
一部の実施形態では、加速器において、超高磁場超伝導電磁構造体を有するシンクロサイクロトロン構成が用いられる。所定の運動エネルギーの荷電粒子の曲げ半径が、印加される磁場の増大に直に比例して減少するので、超高磁場超伝導磁気構造体によって、加速器をより小型且つ軽量にすることができる。
【0025】
略5テスラよりも大きな平均磁場強度に対しては、アイソクロナスサイクロトロン(磁石が中心よりも周辺付近においてより強い磁場を生じさせるように構成されていて、質量増加を補償し一定の回転周波数を維持する)を用いて250MeVの陽子を得ることは非現実的である。この理由は、アイソクロナスサイクロトロン内にビーム焦点を維持するために用いられる磁場の角度変化を、鉄の磁極面整形を用いて充分大きなものにすることはできないからである。
【0026】
本願で開示される加速器はシンクロサイクロトロンである。シンクロサイクロトロンでは、回転角が一様であり、半径が大きくなると強度の低下する磁場が用いられる。このような磁場の形状は、磁場強度に関わらず達成可能であるので、理論的には、シンクロサイクロトロンにおいて使用可能な磁場強度(従って結果的に、固定された半径における粒子エネルギー)に上限は無い。
【0027】
特定の超伝導体は、超高磁場の存在下においてその超伝導特性を失い始める。超高磁場の達成を許容するために、高性能超伝導ワイヤ巻線が用いられる。
【0028】
超伝導体は典型的に、その超伝導特性を実現するために低温に冷却される必要がある。本願の一部の例では、クライオクーラーを用いて、超伝導コイル巻線を絶対零度近くの温度にする。液体ヘリウム中で巻線を冷却するバスではなくて、クライオクーラーを用いることによって、複雑さ及びコストが減少する。
【0029】
シンクロサイクロトロンは、ビームを患者に対してライン状に直接的に発生させるようにガントリー上に支持されている。ガントリーは、患者内部または付近の或る点(アイソセンター540)を含む水平方向の回転軸周りでサイクロトロンが回転できるようにする。回転軸に平行な分割トラスが、両側でサイクロトロンを支持する。
【0030】
ガントリーの回転範囲が制限されているので、患者支持体領域を、アイソセンターの周囲の広い領域に対応させることができる。フロアはアイソセンターの周囲に幅広く延伸可能であるので、患者の支持テーブルを、アイソセンターを介する鉛直軸542の周りで回転及び相対的に移動するように位置決めすることが可能であり、ガントリーの回転とテーブルの移動及び回転との組み合わせによって、患者のあらゆる部分へのビーム方向のあらゆる角度を達成可能である。二つのガントリーのアームは、長身の患者の身長の二倍以上で離隔されていて、患者を備えたカウチが、持ち上げられたフロアの上方の水平面内で回転及び並進移動できるようになる。
【0031】
ガントリーの回転角度を制限することによって、処置室を取り囲む壁の少なくとも一つの厚さを減少させることができる。典型的にはコンクリートから構成された厚い壁によって、処置室の外側の人間に対する放射線防護が提供される。均一レベルの防護を提供するためには、陽子線を停止させる下流の壁は、部屋の反対側の壁の略2倍の厚さを必要とする。ガントリーの回転範囲を制限することによって、処置室を、三面は地中に配置可能にする一方で、占有領域を最も薄い壁に隣接させることによって、処置室の建設費用を減少させることができる。
【0032】
図1に示される実施例では、超伝導シンクロサイクロトロン502は、8.8テスラのシンクロサイクロトロンの磁極ギャップのピーク磁場で作動する。シンクロサイクロトロンは、250MeVのエネルギーを有する陽子のビームを発生させる。他の実施形態では、磁場強度を6から20テスラの範囲内にすることができ、陽子エネルギーを150から300MeVの範囲内にすることができる。
【0033】
本例の放射線治療システムは、陽子放射線治療に用いられるが、同一の原理及び詳細を、重イオン治療システムやイオン治療システム用の類似したシステムに適用することができる。
【0034】
図2、3、4、5及び6に示されるように、一例のシンクロサイクロトロン10(図1の502)は、イオン源90を収容する磁石システム12、無線周波数駆動システム91、ビーム抽出システム38を含む。磁石システムによって確立された磁場は、分割された一対の環状超伝導コイル40、42と、整形された強磁性(例えば低炭素鋼)磁極面44、46との組み合わせを用いて、閉じ込められた陽子ビームの焦点を維持するのに適切な形状を有する。
【0035】
二つの超伝導磁石コイルは、共通の軸47上に中心があり、この軸に沿って間隔が空けられている。図7及び8に示されるように、コイルは、直径0.6mmのNb3Snベースの超伝導ストランド48(銅被膜で取り囲まれたニオビウム錫のコアを当初備える)であり、ラザフォードケーブルインチャネル導線構造で配置されている。6つの個別のストランドを銅チャネル50内に配置した後で加熱して、巻線の最終的な(脆性)物質を形成する反応を起こす。物質が反応した後で、ワイヤを銅チャネル(外寸3.02mm×1.96mmで内寸2.05mm×1.27mm)内にはんだづけし、絶縁体52(この場合、織繊維ガラス物質)で覆う。ワイヤ53を収容する銅チャネルはその後、6.0cm×15.25cmの矩形の断面を有し、30層で、層ごとに47巻きのコイルへと巻かれる。巻かれたコイルはその後、エポキシ化合物54で真空含浸される。完成したコイルは、環状のステンレス鋼の逆ボビン56上に取り付けられる。ヒーターブランケット55は、巻線とボビンの内面に対して固定されて、磁石のクエンチの場合にアセンブリを保護する。代替例では、超伝導コイルは、直径0.8mmのNb3Snベースのストランドから形成され得る。このストランドは、4ストランドケーブルに配置可能であり、超伝導マトリクスを形成するために熱処理されて、外寸が3.19mm×2.57mmの銅チャネル内にはんだづけされる。チャネル導線中に集積されたケーブルは、重ねられた織繊維ガラスのテープで絶縁可能であり、その後、矩形の断面積が79.79mm×180.5mmで内径が374.65mmであり49巻きで26層の深さのコイルへと巻かれる。巻かれたコイルはその後、エポキシ化合物で真空含浸される。その後、コイル全体を銅シートで覆うことが可能であり、熱伝導性及び機械的安定性が提供される。その後、追加的なエポキシ層内に包含される。ステンレス鋼の逆ボビンの加熱及び逆ボビン内部へのコイルの取り付けによって、コイルの予圧を提供可能である。逆ボビンの内径は、全体が4Kに冷却された際に逆ボビンがコイルに接触したままでありいくらかの圧縮が提供されるように選択される。これは、ステンレス鋼の逆ボビンを略50℃に加熱しコイルを室温(20℃)で取り付けることによって、達成可能である。
【0036】
“逆”矩形ボビン56内にコイルを取り付けて、予圧ステンレス鋼ブラダー58を各コイルとボビンの内面57との間に組み込んで、コイルが励磁された際に発生する歪力に対して働く復元力60を働かせることによって、コイルの幾何学的形状が維持される。ブラダーは、ブラダー内にエポキシを注入してこれを硬化させることによって、コイル及びヒーターブランケットがボビン上に取り付けられた後に予圧される。ブラダーの予圧の力は、冷却及び励磁の全フェーズを通して、脆性のNb3Sn超伝導マトリクス内の負荷を最小化するように設定される。
【0037】
図5に示されるように、コイルの位置は、一組の暖冷(warm‐to‐cold)支持ストラップ402、404、406を用いて、磁石ヨーク及びクライオスタットに対して相対的に維持される。薄型のストラップで低温体を支持することによって、リジッドな支持システムによって低温体にもたらされる熱放散が最小化される。ストラップは、磁石がガントリー上を回転する際にコイル上の変化する重力に耐えられるように配置される。ストラップは、磁石ヨークに対して相対的に完全に対称な位置からずれた際にコイルによって実現される大きな偏心力及び重力の効果の組み合わせに耐えられる。更に、リンクは、位置が変更された際にガントリーを加速及び減速するとコイルにもたらされる動的な力を最小化するように作用する。各暖冷支持体は3つのS2繊維ガラスのリンクを含む。リンクの二つ410、412は暖かいヨークと中間温度(50〜70K)のピンにわたって支持されていて、リンクの一つ408は、中間温度のピンと低温体に取り付けられたピンにわたって支持されている。各リンクは長さ10.2cm(ピンの中心からピンの中心まで)であり、幅20mmである。リンクの厚さは1.59mmである。各ピンはステンレス鋼から作製され、直径47.7mmである。
【0038】
図13に示されるように、半径の関数としての磁場強度のプロファイルは、コイルの幾何学的形状に大きく左右される。透磁性のヨーク物質の磁極面44、46は、磁場の形状を微細に調整するように輪郭が決められ、加速中に粒子ビームが焦点の合った状態のままであることが確実になる。
【0039】
超伝導コイルは、コイルアセンブリ(コイル及びボビン)を、排気された環状のアルミニウムまたはステンレス鋼のクライオスタットチャンバ70の内側に収納することによって、絶対零度付近の温度(例えば4ケルビン)に維持される。このクライオスタットチャンバ70は、支持ポイント71、73の限られた組を除いては、コイル構造体の周囲に空き空間を提供する。代替例では、クライオスタットの外壁が低炭素鋼から作製されて、磁場に対して追加的な戻りの磁束経路が提供される。絶対零度付近の温度は、コイルアセンブル上の異なる位置に配置された二つのギフォード・マクマホン(Gifford‐McMahon)クライオクーラー72、74を用いて達成及び維持される。各クライオクーラーは、コイルアセンブリと接触する低温端部76を有する。クライオクーラーヘッド78には、コンプレッサ80から圧縮ヘリウムが供給される。他の二つのギフォード・マクマホンクライオクーラー77、79が、超伝導巻線に電流を供給する高温(例えば60〜80ケルビン)のリード81を冷却するために配置される。
【0040】
コイルアセンブリ及びクライオスタットチャンバは、ピルボックス形状の磁石ヨーク82の二つの半分の部分81、83の内部に取り付けられ、完全に収納されている。この例では、コイルアセンブリの内径は略140cmである。鉄ヨーク82は、戻りの磁束84用の経路を提供し、また、磁極面44、46間の空間86を磁気的に遮蔽し、外部磁場の影響が、この空間内部の磁場の形状を乱すことを防止する。また、ヨークは、加速器近傍の浮遊磁場を減少させる機能も有する。
【0041】
図3及び9に示されるように、シンクロサイクロトロンは、磁石構造体82の幾何学的中心92付近に位置するペニングイオンゲージ構造のイオン源90を含む。イオン源には、気体水素を供給するガスライン101及びチューブ194を介して、水素サプライ99から供給が行われる。電気ケーブル94は、電流源95から電流を伝え、磁場200に対して揃えられたカソード190、192からの電子放電を刺激する。
【0042】
放電された電子は、チューブ194から小さなホールを介して出て行くガスをイオン化し、一つの半円形(D字型)無線周波数プレート100によって加速用の陽イオン(陽子)が供給される。無線周波数プレート100は、磁石構造体及び一つのダミーD字プレート102によって取り囲まれた空間の半分に及ぶ。図10に示されるように、D字プレート100は、磁石構造体によって取り囲まれた空間の周りでの陽子の回転の半分の間に陽子が加速される空間107を取り囲む二つの半円形表面103、105を有する中空の金属構造体である。空間107内に開かれたダクト109は、ヨークを介して真空ポンプ111を取り付け可能な外部の場所に延伸し、空間107及び加速が行われる真空チャンバ119内部の残りの空間を排気する。ダミーD字体102は、D字プレートの露出されたリムの近くに間隔の空けられた矩形の金属リングを含む。ダミーD字体は真空チャンバ及び磁石ヨークに接地されている。D字プレート100は、空間107内に電場を与えるために無線周波数伝送ラインの端部に印加される無線周波数信号によって駆動される。加速された粒子ビームが幾何学的中心から離れた距離で増加すると、無線周波数電場が時間内に変更させられる。この目的のために役立つ無線周波数波形発生器の例については、本願においてその全文が参照される“A Programmable Radio Frequency Waveform Generator for a Synchrocyclotron”というタイトルで2005年7月21日に出願された特許文献1及び同じタイトルで2004年7月21日に出願された特許文献2に開示されている。
【0043】
中心に位置するイオン源から出て来るビームが、外側に向けて螺旋運動し始める際にイオン源構造体を通過するためには、無線周波数プレート間に大きな電圧差が必要とされる。20000ボルトが無線周波数プレート間に印加される。一部の例では、8000〜20000ボルトが無線周波数プレート間に印加される。この大きな電圧を駆動するのに必要とされる電力を減少させるために、磁石構造体は、無線周波数プレート間のキャパシタンスを減少させ、また、接地されるように配置される。これは、無線周波数構造体から外側のヨーク及びクライオスタットのハウジングを介する充分な隙間を備えたホールを形成し、磁石の磁極面間に充分な空間を形成することによって達成される。
【0044】
D字プレートを駆動させる高電圧の交流電位は、陽子の相対論的質量の増加及び磁場の減少を担う加速サイクル中に下方に掃引される周波数を有する。ダミーD字体は、真空チャンバの壁に沿って接地電位であるので、中空の半円筒形構造を必要としない。異なる電気的位相または複数の基本的周波数で駆動する1対以上の加速電極を用いる等の他のプレート構成を用いてもよい。RF構造体を、例えば互いにかみ合って回転し定常的なブレードを有する回転キャパシタを用いることによって、必要とされる周波数掃引中に高いQ値を保つように調節可能である。ブレードがかみ合う毎に、キャパシタンスが増大し、従って、RF構造体の共鳴周波数が低下する。ブレードは、必要とされる正確な周波数掃引を発生させる形状であり得る。回転コンデンサ用の駆動モーターは、正確な制御のためにRF発生器に対して位相が固定されている。回転コンデンサのブレードのかみ合い毎に、粒子の一団が加速される。
【0045】
加速が生じる真空チャンバ119は一般的に円筒形のコンテナであり、中央で薄く、リムで厚い。真空チャンバはRFプレート及びイオン源を取り囲み、真空ポンプ111によって排気される。高真空を維持することによって、加速イオンがガス分子との衝突で失われず、アーク地絡せず、RF電圧を高レベルに維持することができる。
【0046】
陽子は、イオン源から始まる略螺旋状の経路を辿る。螺旋経路の各ループの半分において、陽子は、空間107内のRF電場を通過して、エネルギーを得る。イオンがエネルギーを得ると、螺旋経路の連続的な各ループの中心軌道の半径は、磁極面の最大半径にループの半径が達するまで、前のループよりも大きくなる。その位置において、電磁場の乱れは、磁場が急速に減少する領域内へとイオンを向ける。そして、イオンは高磁場の領域を離れ、排気されたチューブを介してサイクロトロンのヨークから出て行くように向けられる。サイクロトロンを出て行くイオンは、サイクロトロンの周囲の室内に存在する顕著に減少した磁場の領域に入ると、分散する傾向がある。抽出チャネル38内のビーム整形素子107、109は、限定された空間的広がりを有する真っ直ぐなビームのままであるようにイオンの向きを変更する。
【0047】
磁極ギャップ内部の磁場は、排気されたチャンバ内部のビームが加速する際にそのビームを維持する特定の性質を有する必要がある。磁場指数
n=−(r/B)dB/dr
は、この“弱い”焦点調節を維持するために正に保たれなければならない。ここで、rはビームの半径であり、Bは磁場である。更に、磁場指数は0.2以下に維持される必要がある。何故ならば、この値において、ビームの半径方向の振動及び鉛直方向の振動の周期性が、vr=2vz共鳴に一致するからである。ベータトロン周波数は、vr=(1−n)1/2、vz=n1/2で定義される。強磁性の磁極面は、所定の磁場において250MeVのビームに対応する最小の直径において磁場指数nが正かつ0.2未満に維持されるようにコイルによって発生させた磁場を整形するように構成されている。
【0048】
ビームが抽出チャネルから出ると、ビームはビーム形成システム125を通過させられる。ビーム形成システム125は、ビームに対する散乱角度及び範囲の変更の所望の組み合わせを生じさせるようにプログラムで制御可能である。この目的のために役立つビーム形成システムの例は、本願でその全文が参照される“A Programmable Particle Scatterer for Radiation Therapy Beam Formation”とうタイトルで2004年9月24日に出願された特許文献3及び2005年7月21日に出願された特許文献4に開示されている。
【0049】
作動中に、プレートは、プレート表面に沿った伝導抵抗の結果として、印加された無線周波数場からエネルギーを吸収する。このエネルギーは熱として表れ、熱交換器113内に熱を放出する水冷ライン108を用いて、プレートから取り除かれる。
【0050】
サイクロトロンから出てくる浮遊磁場は、ピルボックス型磁石ヨーク(シールドとしても機能する)及び別個の磁気シールド114の両方によって制限される。個別の磁気シールドは、空間116によって隔てられたピルボックス型ヨークを取り囲む強磁性物質(例えば鋼または鉄)の層117を含む。ヨークと空間とシールドとのサンドイッチ構造を含むこの構成によって、軽量ながらも所定の漏洩磁場に対する適切な遮蔽が達成される。
【0051】
上述のように、ガントリーは、シンクロサイクロトロンを水平方向の回転軸532周りで回転させるようになっている。トラス構造体516は、二つの略平行なスパン580、582を有する。シンクロサイクロトロンは、スパンの間で、レッグの間の略中間でクレードル状に支えられる。トラスの反対側のレッグの端に取り付けられたカウンターウェイト122、124を用いて、ガントリーのベアリング周りの回転に対してバランスがとられる。
【0052】
ガントリーのレッグの一方に取り付けられ、駆動ギア及びベルトまたはチェーンによってベアリングのハウジングに接続された電気モーターによって、ガントリーが回転するように駆動される。ガントリーの回転位置は、ガントリーの駆動モーター及び駆動ギア内に組み込まれた軸角エンコーダーによって提供される信号から、導かれる。
【0053】
イオンビームがシンクロサイクロトロンから出てくる位置において、ビーム形成システム125が、患者の処置に適した性質をイオンビームに与えるようにイオンビームに作用する。例えば、ビームが拡散されて、その侵入深さが変更され、所定のターゲット体積にわたる一様な放射線が提供される。ビーム形成システムは、受動的な散乱素子並びに能動的な散乱素子を含むことができる。
【0054】
シンクロサイクロトロンの全ての能動的なシステム(例えば、電流駆動超伝導コイル、RF駆動プレート、真空加速チャンバ用の真空ポンプ、超伝導コイル冷却チャンバ用の真空ポンプ、電流駆動イオン源、水素ガス源、RFプレートクーラー)は、適切なシンクロサイクロトロン制御電子機器(図示せず)によって制御される。
【0055】
治療を行うためのシンクロサイクロトロン、ガントリー、患者支持体及び能動的なビーム整形素子の制御は、適切な治療制御電子機器(図示せず)によって達成される。
【0056】
図1、11及び12に示されるように、ガントリーのベアリングは、サイクロトロンのボールト524の壁によって支持されている。ガントリーによって、患者の上方、側方及び下方の位置を含む180度(またはそれ以上)の範囲520にわたってサイクロトロンを揺らすことができる。ボールトは、その動きの最上端及び最下端においてガントリーを通過させるのに充分な高さを有する。壁148、150によって側面のつけられたメイズ146は、療法士及び患者用の進入及び退出経路を提供する。少なくとも一つの壁152は、サイクロトロンからの直接的な陽子ビームのライン上に入ることは決してないので、この壁をその遮蔽機能を保ちながら、相対的に薄くすることができる。部屋の他の三つの壁154、156、150/148は、より重点的に遮蔽される必要があり、土の丘(図示せず)内に埋めることが可能である。地面自体が必要とされる遮蔽の一部を提供することができるので、壁154、156及び158に必要とされる厚さを減少させることができる。
【0057】
安全面及び景観上の理由で、治療室160はボールト内部に構築される。治療室は、揺れるガントリーを通過させまた治療室のフロア空間164の広がりを最大にする方法で、収容室のベース162と壁154、156、150から、ガントリーのレッグ間の空間内にカンチレバー状に作られる。加速器の定期整備は、持ち上げられたフロアの下の空間において行うことができる。加速器をガントリーの下方の位置に回転させると、処置領域から離れた空間で加速器に完全にアクセスすることができる。この離れた空間の持ち上げられたフロアの下に、電力供給、冷却設備、真空ポンプ及び他のサポート設備を配置することができる。
【0058】
処置室内部に、患者支持体170を、この支持体を上下させ、また、患者を様々な位置及び向きに回転及び移動させることができるように、取り付けることが可能である。
【0059】
加速器の設計に関する更なる情報については、本願においてその全文が参照される“HIGH−FIELD SUPERCONDUCTING SYNCHROCYCLOTRON”(T.Antaya)というタイトルで2006年1月20日に出願された特許文献5、“MAGNET STRUCTURE FOR PARTICLE ACCELERATION”(T.Antaya外)というタイトルで2006年8月9日に出願された特許文献6、“CRYOGENIC VACUUM BREAK PNEUMATIC THERMAL COUPLER”(Radovinsky外)というタイトルで2006年10月10日に出願された特許文献7に開示されている。
【0060】
他の実施例も本願の特許請求の範囲内に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】治療システムの斜視図である。
【図2】シンクロサイクロトロンの構成要素の分解斜視図である。
【図3】シンクロサイクロトロンの断面図である。
【図4】シンクロサイクロトロンの断面図である。
【図5】シンクロサイクロトロンの断面図である。
【図6】シンクロサイクロトロンの斜視図である。
【図7】巻線及び逆ボビンの一部の断面図である。
【図8】ケーブルインチャネル複合導線の断面図である。
【図9】イオン源の断面図である。
【図10】D字プレート及びダミーD字体の斜視図である。
【図11】ボールトの斜視図である。
【図12】ボールトを備えた処置室の斜視図である。
【図13】磁極面及び磁極片の対称的なプロファイルの半分のプロファイルを示す。
【符号の説明】
【0062】
122、124 カウンターウェイト
170 患者支持体
500 荷電粒子放射線治療システム
502 ビーム発生粒子加速器
504 回転ガントリー
506 患者
508、510 レッグ
512、514 ベアリング
516 トラス
518 処置領域
520 ガントリーの回転範囲
522 フロア
524 ボールト
530 壁
532 ガントリーの回転軸
534 患者の回転範囲
540 アイソセンター
580、582 スパン
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子(例えば陽子やイオン)放射線治療に関する。
【背景技術】
【0002】
治療用の陽子ビーム(陽子線)またはイオンビームのエネルギーは、従来の放射線治療において用いられる電子線のエネルギーと比較して、高いものである必要がある。例えば、水中に略32cmの残留範囲を有する陽子線は、人間のあらゆる腫瘍ターゲットを治療するのに適していると考えられている。ビームを拡散させるのに用いられる散乱箔に起因して残留範囲の減少が許容される場合、初期陽子ビームエネルギーが250MeVであることが、32cmの残留範囲を達成するために必要とされる。
【0003】
或る種の粒子加速器を用いて、放射線治療用に充分なビーム電流(例えば略10nA)で250MeVの陽子ビームを発生させることができ、線形加速器、シンクロトロン、サイクロトロンが挙げられる。
【0004】
臨床環境用の陽子線またはイオン放射線治療システムの設計では、全体のサイズ、コスト、複雑さを考慮する必要がある。利用可能な空間は、込み入った臨床環境では大抵限られている。より低いコストによって、より多くのシステムをより多くの患者に届けられるように配置することができる。より低い複雑さによって、作動コストが減少し、日常的な臨床利用におけるシステムの信頼性が高まる。
【0005】
また、他の要件も、このような治療システムの設計に影響を与える。安定した再現可能な位置に保持されている(例えば平坦なテーブル上に仰向けで横たわっている)患者に治療を行えるようにシステムを構成することによって、治療ごとに医師が、患者の生体構造に対して相対的に、目的のターゲットをより正確に移動させることができる。また、治療ごとに患者の位置を信頼できるように再現することは、患者に取り付けられた特注のモールド(型)及びブレース(支え)を用いて補助可能である。安定して固定された位置にある患者に対しては、放射線治療のビームを、一連の角度から患者に向けることが可能であり、治療過程において、外来放射線量がターゲットではない組織上に広がる一方で、ターゲットにおける放射線量が増強される。
【0006】
従来、アイソセントリックガントリーは、患者内の単一点(アイソセンター(治療中心)と称される)に向けて共通の鉛直面内の或る範囲の角度に存在する一連の経路に沿って放射線ビームを向けるために、仰向けの患者周りに回転させられる。患者が横たわるテーブルを鉛直軸周りに回転させることによって、ビームを異なる経路に沿って患者に向けることができる。患者の周囲で放射線源の位置を変更するために用いられる他の方法も存在し、ロボット操作が挙げられる。また、患者を移動または再配置するための他の方法も用いられている。
【0007】
高エネルギーX線ビーム治療では、X線ビームを、ロボットアームまたはガントリー上に取り付けられた電子線形加速器からアイソセンターに向けてもよい。
【0008】
典型的な陽子ビーム治療において、ビームを発生させる円形粒子加速器は、ガントリー上に取り付けるには大き過ぎる。代わりに、加速器は固定位置に取り付けられ、粒子ビームは、磁気的なビームステアリング素子を用いて、回転ガントリーを介して方向が変更される。Blosserは、加速器を、水平な回転軸付近のガントリーの側面上に取り付けることを提案した。
【0009】
【特許文献1】米国特許出願第11/187633号明細書
【特許文献2】米国仮特許出願第60/590089号明細書
【特許文献3】米国特許出願第10/949734号明細書
【特許文献4】米国仮特許出願第60/590088号明細書
【特許文献5】米国仮特許出願第60/760788号明細書
【特許文献6】米国特許出願第11/463402号明細書
【特許文献7】米国仮特許出願第60/850565号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
一般に、一側面では、加速器は、この加速器を患者支持体の上の患者の周囲の或る範囲の位置にわたって移動可能にするようにガントリー上に取り付けられる。加速器は、この範囲内の位置から患者の任意のターゲットに到達するのに充分なエネルギーレベルを有する陽子またはイオンビームを発生させるように構成されている。陽子またはイオンビームは、加速器のハウジングから患者に向けて実質直接的に通過する。
【0011】
実施形態は以下の特徴を一つ以上含み得る。ガントリーは患者支持体の両側上のベアリング上の回転のために保持されている。ガントリーは、回転軸から延伸する二つのレッグと、加速器が取り付けられる二つのレッグの間のトラスとを有する。ガントリーは、360度未満、少なくとも180度、そして一部の実施形態では略180度から略330度の範囲の位置内でしか回転しないように制限されている(180度の回転範囲は、仰向けの患者内への全てのアプローチ角を提供するのに充分なものである)。放射線防護壁は、この範囲内のあらゆる位置において加速器からの陽子またはイオンビームのライン上にない壁を少なくとも一つ含み、この壁は、より小さな質量で同じ放射線防護を提供できるように構成されている。患者支持体は、ガントリーが回転しないように制限されている或る範囲の位置によって画定された空間を介してアクセス可能な領域中に取り付けられている。患者支持体はガントリーに対して相対的に移動可能であり、これには鉛直な患者の回転軸周りの回転が含まれる。患者の回転軸は、患者支持体上の患者近傍のアイソセンターを含む。ガントリーの回転軸は水平であり、アイソセンターを含む。加速器の重量は40トン未満であり、典型的な実施形態では5から30トンの範囲内である。加速器が占める容積は4.5立方メートル以下であり、典型的には0.7から4.5立方メートルの範囲内である。加速器は、少なくとも150MeV、また、150から300MeVの範囲内(例えば250MeV)のエネルギーレベルを有する陽子またはイオンビームを発生させる。
【0012】
加速器は、少なくとも6テスラであり、6から20テスラまでであり得る磁場強度を有する磁石構造体を備えたシンクロサイクロトロンであり得る。磁石構造体は、クライオクーラーによって冷却される超伝導巻線を含む。陽子またはイオンビームは、加速器から患者の位置の一般領域に向けて直接的に通過する。患者支持体、ガントリー及び加速器を含む遮蔽チャンバの壁の少なくとも一つは、チャンバの他の壁よりも薄い。チャンバの一部を地中に埋めることができる。
【0013】
一般に、一側面では、加速器は、患者の任意のターゲットに到達するのに充分なエネルギーレベルを有する陽子またはイオンビームを発生させるように構成されている。加速器は、陽子またはイオンビームを加速器のハウジングから患者に向けて実質直接的に通過させる向きで回転可能なガントリー上に取り付けるのに充分小型かつ軽量である。
【0014】
一般に、一側面では、医療用シンクロサイクロトロンは、少なくとも6テスラの磁場強度を生じさせ、少なくとも150MeVのエネルギーレベルを有する粒子(陽子等)のビームを発生させ、4.5立方メートル以下の容積を有し、30トン未満の重量を有する超伝導電磁構造体を有する。
【0015】
一般に、一側面では、患者は処置空間内で支持されて、陽子またはイオンのビームは、加速器の出力部から患者内の任意のターゲットに向けて直線方向で通過し、この直線方向は、患者の周囲の或る範囲の方向にわたって変化させられる。
【0016】
一般に、一側面では、構造体は、患者支持体と、加速器が取り付けられ、この加速器を患者支持体上の患者の周囲の或る範囲の位置にわたって移動可能にするガントリーとを含む。加速器は、この範囲内の位置から患者の任意のターゲットに到達するのに充分なエネルギーレベルを有する陽子またはイオンビームを発生させるように構成されている。壁で囲まれたエンクロージャーは、患者支持体、ガントリー及び加速器を収容する。一部の例では、壁で囲まれたエンクロージャーの表面の半分以上が地中に埋められている。
【0017】
他の側面では、上述の側面と特徴と、装置、システム、方法、ソフトウェア製品、ビジネス方法として表現された他の特徴との他の組み合わせが含まれ、また他の方法もある。
【発明の効果】
【0018】
略10テスラの磁場を生じさせることによって、加速器のサイズが1.5メートルに近づき、その質量が略15から20トンに減少する。重量は、加速器付近に許容される浮遊磁場に依存する。更なる軽量化及び小型化も可能である。これによって、出力ビームがアイソセンターに直接的に向けられ、また、患者周りに回転されるように、サイクロトロンをガントリー上に配置することが可能になり、従って、陽子またはイオンビーム放射線治療の伝達が簡略化される。抽出ビーム焦点調節及びステアリング素子の全ては、加速器内に組み込まれるか、加速器の間近に配置される。加速器をガントリー上に直接取り付けることによって、加速器から患者内のターゲット体積に向けてビームを輸送するのに必要とされる輸送素子がいらなくなる。陽子またはイオンビーム治療システムのサイズ、複雑さ及びコストが減少し、また、その性能が改善される。鉛直面内のガントリーの回転範囲を360度未満にすることによって、ビームが決して向けられない位置に提供される遮蔽バリヤの厚さが減少する。また、これによって、患者処置空間にアクセスし易くなる。シンクロサイクロトロンは、加速中のビーム焦点調節を妥協せずに、任意の高磁場に対してスケーリングされる。クライオジェン液体で冷却されたコイルがいらなくなることによって、蒸発した液体クライオジェンが磁石のクエンチ等の故障状態中に放出される場合におけるオペレータ及び患者に対する危険性が減少する。
【0019】
他の利点及び特徴は下記の記載及び特許請求の範囲の記載から明らかになるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1に示されるように、荷電粒子放射線治療システム500は、ビーム発生粒子加速器502を含む。ビーム発生粒子加速器502は、回転ガントリー504上に取り付け可能であるのに充分小さなサイズ及び重量を有し、その出力部は、加速器のハウジングから患者506に向けて直線的に(つまり実質直接的に)向けられている。治療システムのサイズ及びコストは顕著に減少し、システムの信頼性及び精度を向上可能である。
【0021】
一部の実施形態では、鋼のガントリーは、患者の両端に存在する二つの個々のベアリング512、514上で回転するように取り付けられた二つのレッグ508、510を有する。加速器は鋼のトラス516によって支持されている。トラス516は、患者が横たわる処置領域518に跨るのに充分長く(例えば、長身の人間の二倍の長さであり、患者の所望のターゲット領域をビームのライン上に残したままで人間をこの空間内で完全に回転させることが許容される長さ)、ガントリーの回転レッグの両端に安定して取り付けられている。
【0022】
一部の例では、ガントリーの回転は、360度未満(例えば略180度)の範囲520に制限されていて、フロア522が、治療システムを患者処置領域内に収容するボールト524の壁から延伸可能になる。また、ガントリーの回転範囲が制限されていることによって、処置領域の外側の人間の放射線遮蔽を提供する一部の壁(ビームを直接受けることの決してない、例えば壁530)に必要とされる厚さが減少する。ガントリーの180度という回転範囲は、処置のアプローチ角の全てをカバーするのに充分なものではあるが、より広い行程範囲を提供することが有益である。例えば、回転範囲が180から330度の間であることが有益であり、この範囲でも、治療フロア空間用の間隔が提供される。行程範囲が大きい場合、ガントリーが、治療空間の或る部分にいる人間または装備にとって危険な位置へと揺れる可能性がある。
【0023】
ガントリーの水平方向の回転軸532は、患者及び療法士が治療システムとやり取りを行うフロアの公称1メートル上方に位置している。このフロアは、治療システムを遮蔽するボールトの底面フロアの略3メートル上方に位置している。回転軸の下からの処置ビームを伝えるために、加速器は持ち上げられたフロアの下に揺れることができる。患者のカウチは、ガントリーの回転軸に平行な実質水平面内を移動及び回転する。カウチは、この構成では、水平面内で略270度の範囲534で回転可能である。このガントリー及び患者の回転範囲と自由度の組み合わせによって、療法士が、ビームに対するアプローチ角を事実上いかようにも選択することができるようになる。必要であれば、患者を逆向きでカウチ上に配置することができ、考えられる全角度を使用することができる。
【0024】
一部の実施形態では、加速器において、超高磁場超伝導電磁構造体を有するシンクロサイクロトロン構成が用いられる。所定の運動エネルギーの荷電粒子の曲げ半径が、印加される磁場の増大に直に比例して減少するので、超高磁場超伝導磁気構造体によって、加速器をより小型且つ軽量にすることができる。
【0025】
略5テスラよりも大きな平均磁場強度に対しては、アイソクロナスサイクロトロン(磁石が中心よりも周辺付近においてより強い磁場を生じさせるように構成されていて、質量増加を補償し一定の回転周波数を維持する)を用いて250MeVの陽子を得ることは非現実的である。この理由は、アイソクロナスサイクロトロン内にビーム焦点を維持するために用いられる磁場の角度変化を、鉄の磁極面整形を用いて充分大きなものにすることはできないからである。
【0026】
本願で開示される加速器はシンクロサイクロトロンである。シンクロサイクロトロンでは、回転角が一様であり、半径が大きくなると強度の低下する磁場が用いられる。このような磁場の形状は、磁場強度に関わらず達成可能であるので、理論的には、シンクロサイクロトロンにおいて使用可能な磁場強度(従って結果的に、固定された半径における粒子エネルギー)に上限は無い。
【0027】
特定の超伝導体は、超高磁場の存在下においてその超伝導特性を失い始める。超高磁場の達成を許容するために、高性能超伝導ワイヤ巻線が用いられる。
【0028】
超伝導体は典型的に、その超伝導特性を実現するために低温に冷却される必要がある。本願の一部の例では、クライオクーラーを用いて、超伝導コイル巻線を絶対零度近くの温度にする。液体ヘリウム中で巻線を冷却するバスではなくて、クライオクーラーを用いることによって、複雑さ及びコストが減少する。
【0029】
シンクロサイクロトロンは、ビームを患者に対してライン状に直接的に発生させるようにガントリー上に支持されている。ガントリーは、患者内部または付近の或る点(アイソセンター540)を含む水平方向の回転軸周りでサイクロトロンが回転できるようにする。回転軸に平行な分割トラスが、両側でサイクロトロンを支持する。
【0030】
ガントリーの回転範囲が制限されているので、患者支持体領域を、アイソセンターの周囲の広い領域に対応させることができる。フロアはアイソセンターの周囲に幅広く延伸可能であるので、患者の支持テーブルを、アイソセンターを介する鉛直軸542の周りで回転及び相対的に移動するように位置決めすることが可能であり、ガントリーの回転とテーブルの移動及び回転との組み合わせによって、患者のあらゆる部分へのビーム方向のあらゆる角度を達成可能である。二つのガントリーのアームは、長身の患者の身長の二倍以上で離隔されていて、患者を備えたカウチが、持ち上げられたフロアの上方の水平面内で回転及び並進移動できるようになる。
【0031】
ガントリーの回転角度を制限することによって、処置室を取り囲む壁の少なくとも一つの厚さを減少させることができる。典型的にはコンクリートから構成された厚い壁によって、処置室の外側の人間に対する放射線防護が提供される。均一レベルの防護を提供するためには、陽子線を停止させる下流の壁は、部屋の反対側の壁の略2倍の厚さを必要とする。ガントリーの回転範囲を制限することによって、処置室を、三面は地中に配置可能にする一方で、占有領域を最も薄い壁に隣接させることによって、処置室の建設費用を減少させることができる。
【0032】
図1に示される実施例では、超伝導シンクロサイクロトロン502は、8.8テスラのシンクロサイクロトロンの磁極ギャップのピーク磁場で作動する。シンクロサイクロトロンは、250MeVのエネルギーを有する陽子のビームを発生させる。他の実施形態では、磁場強度を6から20テスラの範囲内にすることができ、陽子エネルギーを150から300MeVの範囲内にすることができる。
【0033】
本例の放射線治療システムは、陽子放射線治療に用いられるが、同一の原理及び詳細を、重イオン治療システムやイオン治療システム用の類似したシステムに適用することができる。
【0034】
図2、3、4、5及び6に示されるように、一例のシンクロサイクロトロン10(図1の502)は、イオン源90を収容する磁石システム12、無線周波数駆動システム91、ビーム抽出システム38を含む。磁石システムによって確立された磁場は、分割された一対の環状超伝導コイル40、42と、整形された強磁性(例えば低炭素鋼)磁極面44、46との組み合わせを用いて、閉じ込められた陽子ビームの焦点を維持するのに適切な形状を有する。
【0035】
二つの超伝導磁石コイルは、共通の軸47上に中心があり、この軸に沿って間隔が空けられている。図7及び8に示されるように、コイルは、直径0.6mmのNb3Snベースの超伝導ストランド48(銅被膜で取り囲まれたニオビウム錫のコアを当初備える)であり、ラザフォードケーブルインチャネル導線構造で配置されている。6つの個別のストランドを銅チャネル50内に配置した後で加熱して、巻線の最終的な(脆性)物質を形成する反応を起こす。物質が反応した後で、ワイヤを銅チャネル(外寸3.02mm×1.96mmで内寸2.05mm×1.27mm)内にはんだづけし、絶縁体52(この場合、織繊維ガラス物質)で覆う。ワイヤ53を収容する銅チャネルはその後、6.0cm×15.25cmの矩形の断面を有し、30層で、層ごとに47巻きのコイルへと巻かれる。巻かれたコイルはその後、エポキシ化合物54で真空含浸される。完成したコイルは、環状のステンレス鋼の逆ボビン56上に取り付けられる。ヒーターブランケット55は、巻線とボビンの内面に対して固定されて、磁石のクエンチの場合にアセンブリを保護する。代替例では、超伝導コイルは、直径0.8mmのNb3Snベースのストランドから形成され得る。このストランドは、4ストランドケーブルに配置可能であり、超伝導マトリクスを形成するために熱処理されて、外寸が3.19mm×2.57mmの銅チャネル内にはんだづけされる。チャネル導線中に集積されたケーブルは、重ねられた織繊維ガラスのテープで絶縁可能であり、その後、矩形の断面積が79.79mm×180.5mmで内径が374.65mmであり49巻きで26層の深さのコイルへと巻かれる。巻かれたコイルはその後、エポキシ化合物で真空含浸される。その後、コイル全体を銅シートで覆うことが可能であり、熱伝導性及び機械的安定性が提供される。その後、追加的なエポキシ層内に包含される。ステンレス鋼の逆ボビンの加熱及び逆ボビン内部へのコイルの取り付けによって、コイルの予圧を提供可能である。逆ボビンの内径は、全体が4Kに冷却された際に逆ボビンがコイルに接触したままでありいくらかの圧縮が提供されるように選択される。これは、ステンレス鋼の逆ボビンを略50℃に加熱しコイルを室温(20℃)で取り付けることによって、達成可能である。
【0036】
“逆”矩形ボビン56内にコイルを取り付けて、予圧ステンレス鋼ブラダー58を各コイルとボビンの内面57との間に組み込んで、コイルが励磁された際に発生する歪力に対して働く復元力60を働かせることによって、コイルの幾何学的形状が維持される。ブラダーは、ブラダー内にエポキシを注入してこれを硬化させることによって、コイル及びヒーターブランケットがボビン上に取り付けられた後に予圧される。ブラダーの予圧の力は、冷却及び励磁の全フェーズを通して、脆性のNb3Sn超伝導マトリクス内の負荷を最小化するように設定される。
【0037】
図5に示されるように、コイルの位置は、一組の暖冷(warm‐to‐cold)支持ストラップ402、404、406を用いて、磁石ヨーク及びクライオスタットに対して相対的に維持される。薄型のストラップで低温体を支持することによって、リジッドな支持システムによって低温体にもたらされる熱放散が最小化される。ストラップは、磁石がガントリー上を回転する際にコイル上の変化する重力に耐えられるように配置される。ストラップは、磁石ヨークに対して相対的に完全に対称な位置からずれた際にコイルによって実現される大きな偏心力及び重力の効果の組み合わせに耐えられる。更に、リンクは、位置が変更された際にガントリーを加速及び減速するとコイルにもたらされる動的な力を最小化するように作用する。各暖冷支持体は3つのS2繊維ガラスのリンクを含む。リンクの二つ410、412は暖かいヨークと中間温度(50〜70K)のピンにわたって支持されていて、リンクの一つ408は、中間温度のピンと低温体に取り付けられたピンにわたって支持されている。各リンクは長さ10.2cm(ピンの中心からピンの中心まで)であり、幅20mmである。リンクの厚さは1.59mmである。各ピンはステンレス鋼から作製され、直径47.7mmである。
【0038】
図13に示されるように、半径の関数としての磁場強度のプロファイルは、コイルの幾何学的形状に大きく左右される。透磁性のヨーク物質の磁極面44、46は、磁場の形状を微細に調整するように輪郭が決められ、加速中に粒子ビームが焦点の合った状態のままであることが確実になる。
【0039】
超伝導コイルは、コイルアセンブリ(コイル及びボビン)を、排気された環状のアルミニウムまたはステンレス鋼のクライオスタットチャンバ70の内側に収納することによって、絶対零度付近の温度(例えば4ケルビン)に維持される。このクライオスタットチャンバ70は、支持ポイント71、73の限られた組を除いては、コイル構造体の周囲に空き空間を提供する。代替例では、クライオスタットの外壁が低炭素鋼から作製されて、磁場に対して追加的な戻りの磁束経路が提供される。絶対零度付近の温度は、コイルアセンブル上の異なる位置に配置された二つのギフォード・マクマホン(Gifford‐McMahon)クライオクーラー72、74を用いて達成及び維持される。各クライオクーラーは、コイルアセンブリと接触する低温端部76を有する。クライオクーラーヘッド78には、コンプレッサ80から圧縮ヘリウムが供給される。他の二つのギフォード・マクマホンクライオクーラー77、79が、超伝導巻線に電流を供給する高温(例えば60〜80ケルビン)のリード81を冷却するために配置される。
【0040】
コイルアセンブリ及びクライオスタットチャンバは、ピルボックス形状の磁石ヨーク82の二つの半分の部分81、83の内部に取り付けられ、完全に収納されている。この例では、コイルアセンブリの内径は略140cmである。鉄ヨーク82は、戻りの磁束84用の経路を提供し、また、磁極面44、46間の空間86を磁気的に遮蔽し、外部磁場の影響が、この空間内部の磁場の形状を乱すことを防止する。また、ヨークは、加速器近傍の浮遊磁場を減少させる機能も有する。
【0041】
図3及び9に示されるように、シンクロサイクロトロンは、磁石構造体82の幾何学的中心92付近に位置するペニングイオンゲージ構造のイオン源90を含む。イオン源には、気体水素を供給するガスライン101及びチューブ194を介して、水素サプライ99から供給が行われる。電気ケーブル94は、電流源95から電流を伝え、磁場200に対して揃えられたカソード190、192からの電子放電を刺激する。
【0042】
放電された電子は、チューブ194から小さなホールを介して出て行くガスをイオン化し、一つの半円形(D字型)無線周波数プレート100によって加速用の陽イオン(陽子)が供給される。無線周波数プレート100は、磁石構造体及び一つのダミーD字プレート102によって取り囲まれた空間の半分に及ぶ。図10に示されるように、D字プレート100は、磁石構造体によって取り囲まれた空間の周りでの陽子の回転の半分の間に陽子が加速される空間107を取り囲む二つの半円形表面103、105を有する中空の金属構造体である。空間107内に開かれたダクト109は、ヨークを介して真空ポンプ111を取り付け可能な外部の場所に延伸し、空間107及び加速が行われる真空チャンバ119内部の残りの空間を排気する。ダミーD字体102は、D字プレートの露出されたリムの近くに間隔の空けられた矩形の金属リングを含む。ダミーD字体は真空チャンバ及び磁石ヨークに接地されている。D字プレート100は、空間107内に電場を与えるために無線周波数伝送ラインの端部に印加される無線周波数信号によって駆動される。加速された粒子ビームが幾何学的中心から離れた距離で増加すると、無線周波数電場が時間内に変更させられる。この目的のために役立つ無線周波数波形発生器の例については、本願においてその全文が参照される“A Programmable Radio Frequency Waveform Generator for a Synchrocyclotron”というタイトルで2005年7月21日に出願された特許文献1及び同じタイトルで2004年7月21日に出願された特許文献2に開示されている。
【0043】
中心に位置するイオン源から出て来るビームが、外側に向けて螺旋運動し始める際にイオン源構造体を通過するためには、無線周波数プレート間に大きな電圧差が必要とされる。20000ボルトが無線周波数プレート間に印加される。一部の例では、8000〜20000ボルトが無線周波数プレート間に印加される。この大きな電圧を駆動するのに必要とされる電力を減少させるために、磁石構造体は、無線周波数プレート間のキャパシタンスを減少させ、また、接地されるように配置される。これは、無線周波数構造体から外側のヨーク及びクライオスタットのハウジングを介する充分な隙間を備えたホールを形成し、磁石の磁極面間に充分な空間を形成することによって達成される。
【0044】
D字プレートを駆動させる高電圧の交流電位は、陽子の相対論的質量の増加及び磁場の減少を担う加速サイクル中に下方に掃引される周波数を有する。ダミーD字体は、真空チャンバの壁に沿って接地電位であるので、中空の半円筒形構造を必要としない。異なる電気的位相または複数の基本的周波数で駆動する1対以上の加速電極を用いる等の他のプレート構成を用いてもよい。RF構造体を、例えば互いにかみ合って回転し定常的なブレードを有する回転キャパシタを用いることによって、必要とされる周波数掃引中に高いQ値を保つように調節可能である。ブレードがかみ合う毎に、キャパシタンスが増大し、従って、RF構造体の共鳴周波数が低下する。ブレードは、必要とされる正確な周波数掃引を発生させる形状であり得る。回転コンデンサ用の駆動モーターは、正確な制御のためにRF発生器に対して位相が固定されている。回転コンデンサのブレードのかみ合い毎に、粒子の一団が加速される。
【0045】
加速が生じる真空チャンバ119は一般的に円筒形のコンテナであり、中央で薄く、リムで厚い。真空チャンバはRFプレート及びイオン源を取り囲み、真空ポンプ111によって排気される。高真空を維持することによって、加速イオンがガス分子との衝突で失われず、アーク地絡せず、RF電圧を高レベルに維持することができる。
【0046】
陽子は、イオン源から始まる略螺旋状の経路を辿る。螺旋経路の各ループの半分において、陽子は、空間107内のRF電場を通過して、エネルギーを得る。イオンがエネルギーを得ると、螺旋経路の連続的な各ループの中心軌道の半径は、磁極面の最大半径にループの半径が達するまで、前のループよりも大きくなる。その位置において、電磁場の乱れは、磁場が急速に減少する領域内へとイオンを向ける。そして、イオンは高磁場の領域を離れ、排気されたチューブを介してサイクロトロンのヨークから出て行くように向けられる。サイクロトロンを出て行くイオンは、サイクロトロンの周囲の室内に存在する顕著に減少した磁場の領域に入ると、分散する傾向がある。抽出チャネル38内のビーム整形素子107、109は、限定された空間的広がりを有する真っ直ぐなビームのままであるようにイオンの向きを変更する。
【0047】
磁極ギャップ内部の磁場は、排気されたチャンバ内部のビームが加速する際にそのビームを維持する特定の性質を有する必要がある。磁場指数
n=−(r/B)dB/dr
は、この“弱い”焦点調節を維持するために正に保たれなければならない。ここで、rはビームの半径であり、Bは磁場である。更に、磁場指数は0.2以下に維持される必要がある。何故ならば、この値において、ビームの半径方向の振動及び鉛直方向の振動の周期性が、vr=2vz共鳴に一致するからである。ベータトロン周波数は、vr=(1−n)1/2、vz=n1/2で定義される。強磁性の磁極面は、所定の磁場において250MeVのビームに対応する最小の直径において磁場指数nが正かつ0.2未満に維持されるようにコイルによって発生させた磁場を整形するように構成されている。
【0048】
ビームが抽出チャネルから出ると、ビームはビーム形成システム125を通過させられる。ビーム形成システム125は、ビームに対する散乱角度及び範囲の変更の所望の組み合わせを生じさせるようにプログラムで制御可能である。この目的のために役立つビーム形成システムの例は、本願でその全文が参照される“A Programmable Particle Scatterer for Radiation Therapy Beam Formation”とうタイトルで2004年9月24日に出願された特許文献3及び2005年7月21日に出願された特許文献4に開示されている。
【0049】
作動中に、プレートは、プレート表面に沿った伝導抵抗の結果として、印加された無線周波数場からエネルギーを吸収する。このエネルギーは熱として表れ、熱交換器113内に熱を放出する水冷ライン108を用いて、プレートから取り除かれる。
【0050】
サイクロトロンから出てくる浮遊磁場は、ピルボックス型磁石ヨーク(シールドとしても機能する)及び別個の磁気シールド114の両方によって制限される。個別の磁気シールドは、空間116によって隔てられたピルボックス型ヨークを取り囲む強磁性物質(例えば鋼または鉄)の層117を含む。ヨークと空間とシールドとのサンドイッチ構造を含むこの構成によって、軽量ながらも所定の漏洩磁場に対する適切な遮蔽が達成される。
【0051】
上述のように、ガントリーは、シンクロサイクロトロンを水平方向の回転軸532周りで回転させるようになっている。トラス構造体516は、二つの略平行なスパン580、582を有する。シンクロサイクロトロンは、スパンの間で、レッグの間の略中間でクレードル状に支えられる。トラスの反対側のレッグの端に取り付けられたカウンターウェイト122、124を用いて、ガントリーのベアリング周りの回転に対してバランスがとられる。
【0052】
ガントリーのレッグの一方に取り付けられ、駆動ギア及びベルトまたはチェーンによってベアリングのハウジングに接続された電気モーターによって、ガントリーが回転するように駆動される。ガントリーの回転位置は、ガントリーの駆動モーター及び駆動ギア内に組み込まれた軸角エンコーダーによって提供される信号から、導かれる。
【0053】
イオンビームがシンクロサイクロトロンから出てくる位置において、ビーム形成システム125が、患者の処置に適した性質をイオンビームに与えるようにイオンビームに作用する。例えば、ビームが拡散されて、その侵入深さが変更され、所定のターゲット体積にわたる一様な放射線が提供される。ビーム形成システムは、受動的な散乱素子並びに能動的な散乱素子を含むことができる。
【0054】
シンクロサイクロトロンの全ての能動的なシステム(例えば、電流駆動超伝導コイル、RF駆動プレート、真空加速チャンバ用の真空ポンプ、超伝導コイル冷却チャンバ用の真空ポンプ、電流駆動イオン源、水素ガス源、RFプレートクーラー)は、適切なシンクロサイクロトロン制御電子機器(図示せず)によって制御される。
【0055】
治療を行うためのシンクロサイクロトロン、ガントリー、患者支持体及び能動的なビーム整形素子の制御は、適切な治療制御電子機器(図示せず)によって達成される。
【0056】
図1、11及び12に示されるように、ガントリーのベアリングは、サイクロトロンのボールト524の壁によって支持されている。ガントリーによって、患者の上方、側方及び下方の位置を含む180度(またはそれ以上)の範囲520にわたってサイクロトロンを揺らすことができる。ボールトは、その動きの最上端及び最下端においてガントリーを通過させるのに充分な高さを有する。壁148、150によって側面のつけられたメイズ146は、療法士及び患者用の進入及び退出経路を提供する。少なくとも一つの壁152は、サイクロトロンからの直接的な陽子ビームのライン上に入ることは決してないので、この壁をその遮蔽機能を保ちながら、相対的に薄くすることができる。部屋の他の三つの壁154、156、150/148は、より重点的に遮蔽される必要があり、土の丘(図示せず)内に埋めることが可能である。地面自体が必要とされる遮蔽の一部を提供することができるので、壁154、156及び158に必要とされる厚さを減少させることができる。
【0057】
安全面及び景観上の理由で、治療室160はボールト内部に構築される。治療室は、揺れるガントリーを通過させまた治療室のフロア空間164の広がりを最大にする方法で、収容室のベース162と壁154、156、150から、ガントリーのレッグ間の空間内にカンチレバー状に作られる。加速器の定期整備は、持ち上げられたフロアの下の空間において行うことができる。加速器をガントリーの下方の位置に回転させると、処置領域から離れた空間で加速器に完全にアクセスすることができる。この離れた空間の持ち上げられたフロアの下に、電力供給、冷却設備、真空ポンプ及び他のサポート設備を配置することができる。
【0058】
処置室内部に、患者支持体170を、この支持体を上下させ、また、患者を様々な位置及び向きに回転及び移動させることができるように、取り付けることが可能である。
【0059】
加速器の設計に関する更なる情報については、本願においてその全文が参照される“HIGH−FIELD SUPERCONDUCTING SYNCHROCYCLOTRON”(T.Antaya)というタイトルで2006年1月20日に出願された特許文献5、“MAGNET STRUCTURE FOR PARTICLE ACCELERATION”(T.Antaya外)というタイトルで2006年8月9日に出願された特許文献6、“CRYOGENIC VACUUM BREAK PNEUMATIC THERMAL COUPLER”(Radovinsky外)というタイトルで2006年10月10日に出願された特許文献7に開示されている。
【0060】
他の実施例も本願の特許請求の範囲内に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】治療システムの斜視図である。
【図2】シンクロサイクロトロンの構成要素の分解斜視図である。
【図3】シンクロサイクロトロンの断面図である。
【図4】シンクロサイクロトロンの断面図である。
【図5】シンクロサイクロトロンの断面図である。
【図6】シンクロサイクロトロンの斜視図である。
【図7】巻線及び逆ボビンの一部の断面図である。
【図8】ケーブルインチャネル複合導線の断面図である。
【図9】イオン源の断面図である。
【図10】D字プレート及びダミーD字体の斜視図である。
【図11】ボールトの斜視図である。
【図12】ボールトを備えた処置室の斜視図である。
【図13】磁極面及び磁極片の対称的なプロファイルの半分のプロファイルを示す。
【符号の説明】
【0062】
122、124 カウンターウェイト
170 患者支持体
500 荷電粒子放射線治療システム
502 ビーム発生粒子加速器
504 回転ガントリー
506 患者
508、510 レッグ
512、514 ベアリング
516 トラス
518 処置領域
520 ガントリーの回転範囲
522 フロア
524 ボールト
530 壁
532 ガントリーの回転軸
534 患者の回転範囲
540 アイソセンター
580、582 スパン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者支持体と、
加速器が取り付けられ、該加速器を前記患者支持体の周囲の或る範囲の位置にわたって移動可能にするガントリーとを備えた装置であって、
前記加速器が、前記範囲内の位置から患者の任意のターゲットに到達するのに充分なエネルギーレベルを有する陽子またはイオンビームを発生させるように構成されていて、
前記陽子またはイオンビームが前記加速器のハウジングから前記患者へと実質直接的に通過する、装置。
【請求項2】
前記ガントリーが前記患者支持体の両側上で回転するように支持されている請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ガントリーが前記患者支持体の両側上のベアリング上で回転するように支持されている請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記ガントリーが、該ガントリーの回転軸から延伸する二つのアームと、前記加速器が取り付けられ前記二つのアームの間にあるトラスとを備える請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記ガントリーが360度未満の範囲の位置内でしか回転しないように制限されている請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記範囲が少なくとも180度である請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記範囲が略180度から略330度までである請求項5に記載の装置。
【請求項8】
複数の放射線防護壁を更に含み、該放射線防護壁の少なくとも一つが、前記範囲内のあらゆる位置において前記加速器からの前記陽子またはイオンビームのライン上にはなく、他の放射線防護壁よりも少ない質量で同じ放射線防護を提供するように構成されている請求項5に記載の装置。
【請求項9】
前記患者支持体が、前記ガントリーの回転が制限される範囲の位置によって画定される空間を介してアクセス可能である患者支持体領域上に取り付けられている請求項5に記載の装置。
【請求項10】
前記患者支持体が前記ガントリーに対して相対的に移動可能である請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記患者支持体が患者の回転軸周りに回転するように構成されている請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記患者の回転軸が鉛直である請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記患者の回転軸が前記患者支持体上の患者のアイソセンターを含む請求項11に記載の装置。
【請求項14】
前記ガントリーが、ガントリーの回転軸周りに前記加速器を回転させるように構成されている請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記ガントリーの回転軸が水平である請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記ガントリーの回転軸が前記患者支持体上の患者のアイソセンターを含む請求項14に記載の装置。
【請求項17】
前記加速器の重量が40トン未満である請求項1に記載の装置。
【請求項18】
前記加速器の重量が5から30トンの範囲内である請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記加速器の占める容積が4.5立方メートル以下である請求項1に記載の装置。
【請求項20】
前記容積が0.7から4.5立方メートルの範囲内である請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記加速器が、少なくとも150MeVのエネルギーレベルを有する陽子またはイオンビームを発生させる請求項1に記載の装置。
【請求項22】
前記エネルギーレベルが150から300MeVの範囲内である請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記加速器がシンクロサイクロトロンを含む請求項1に記載の装置。
【請求項24】
前記加速器が少なくとも6テスラの磁場強度を有する磁石構造体を含む請求項1に記載の装置。
【請求項25】
前記磁場強度が6から20テスラの範囲内である請求項24に記載の装置。
【請求項26】
前記磁石構造体が超電導巻線を有する請求項24に記載の装置。
【請求項27】
前記陽子またはイオンビームが、前記加速器から患者の位置の一般領域へと直接的に通過する請求項1に記載の装置。
【請求項28】
前記患者支持体、前記ガントリー及び前記加速器を収容する遮蔽チャンバを更に含み、前記遮蔽チャンバの壁の少なくとも一つが、該遮蔽チャンバの他の壁よりも薄い請求項1に記載の装置。
【請求項29】
前記遮蔽チャンバの少なくとも一部は地中に埋められている請求項28に記載の装置。
【請求項30】
患者支持体と、
加速器が取り付けられたガントリーであって、(a)患者のアイソセンターを含む水平なガントリーの軸周りに(b)360度未満の範囲の位置にわたって回転するように前記患者支持体の両側上で支持されているガントリーとを備えた装置であって、
前記患者支持体が、前記アイソセンターを含む鉛直な患者支持体の軸周りに回転可能であり、
前記加速器が、前記範囲内の位置から直接的に患者の任意のターゲットに到達する少なくとも150MeVのエネルギーレベルを有する陽子またはイオンビームを発生させるように構成されたシンクロサイクロトロンを含み、該シンクロサイクロトロンが超伝導巻線を有する、装置。
【請求項31】
処置空間内に患者を支持する段階と、
加速器の出力部から前記患者内の任意のターゲットに向けて直線方向に通過する陽子またはイオンのビームを発生させる段階と、
前記直線方向を、前記患者の周囲の或る範囲の方向にわたって変化させる段階とを備えた方法。
【請求項32】
患者支持体上の患者の周囲のあらゆる範囲の位置にわたって加速器を移動可能にするガントリー上に固定され、粒子ビームを発生させるように構成された加速器を備えた装置であって、
前記加速器が、前記範囲内の位置から前記患者の任意のターゲットに到達するのに充分なエネルギーレベルを有する粒子ビームを生じさせるように構成されている、装置。
【請求項33】
加速器を保持し、また、該加速器を患者支持体上の患者の周囲の或る範囲の位置にわたって移動可能にするように構成されたガントリーを備えた装置であって、
前記加速器が、前記範囲内の位置から前記患者の任意のターゲットに到達するのに充分なエネルギーレベルを有する陽子またはイオンビームを生じさせるように構成されている、装置。
【請求項34】
患者支持体と、
加速器が取り付けられ、該加速器を前記患者支持体上の患者の周囲の或る範囲の位置にわたって移動可能にするガントリーと、
前記患者支持体、前記ガントリー及び前記加速器を収容する壁で囲まれたエンクロージャーとを備えた構造体であって、
前記加速器が、前記範囲内の位置から前記患者の任意のターゲットに到達するのに充分なエネルギーレベルを有する陽子またはイオンビームを発生させるように構成されている、構造体。
【請求項35】
患者の任意のターゲットに到達するのに充分なエネルギーレベルを有する陽子またはイオンビームを発生させるように構成された加速器を備えた装置であって、該加速器が、前記陽子またはイオンビームを前記加速器から前記患者に向けて実質直接的に通過させる向きで回転可能なガントリー上に取り付けられるのに充分小型かつ軽量である、装置。
【請求項36】
少なくとも6テスラの磁場強度を生じさせ、少なくとも150MeVのエネルギーレベルを有する粒子のビームを発生させ、4.5立方メートル以下の容積を有し、30トン未満の重量を有する超伝導電磁構造体を有する医療用シンクロサイクロトロンを備えた装置。
【請求項37】
前記加速器が超伝導シンクロサイクロトロンを含む請求項35に記載の装置。
【請求項38】
前記超伝導シンクロサイクロトロンの磁場が6から20テスラの範囲内である請求項37に記載の装置。
【請求項39】
前記壁で囲まれたエンクロージャーの表面の半分以上が地中に埋められている請求項34に記載の構造体。
【請求項1】
患者支持体と、
加速器が取り付けられ、該加速器を前記患者支持体の周囲の或る範囲の位置にわたって移動可能にするガントリーとを備えた装置であって、
前記加速器が、前記範囲内の位置から患者の任意のターゲットに到達するのに充分なエネルギーレベルを有する陽子またはイオンビームを発生させるように構成されていて、
前記陽子またはイオンビームが前記加速器のハウジングから前記患者へと実質直接的に通過する、装置。
【請求項2】
前記ガントリーが前記患者支持体の両側上で回転するように支持されている請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ガントリーが前記患者支持体の両側上のベアリング上で回転するように支持されている請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記ガントリーが、該ガントリーの回転軸から延伸する二つのアームと、前記加速器が取り付けられ前記二つのアームの間にあるトラスとを備える請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記ガントリーが360度未満の範囲の位置内でしか回転しないように制限されている請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記範囲が少なくとも180度である請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記範囲が略180度から略330度までである請求項5に記載の装置。
【請求項8】
複数の放射線防護壁を更に含み、該放射線防護壁の少なくとも一つが、前記範囲内のあらゆる位置において前記加速器からの前記陽子またはイオンビームのライン上にはなく、他の放射線防護壁よりも少ない質量で同じ放射線防護を提供するように構成されている請求項5に記載の装置。
【請求項9】
前記患者支持体が、前記ガントリーの回転が制限される範囲の位置によって画定される空間を介してアクセス可能である患者支持体領域上に取り付けられている請求項5に記載の装置。
【請求項10】
前記患者支持体が前記ガントリーに対して相対的に移動可能である請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記患者支持体が患者の回転軸周りに回転するように構成されている請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記患者の回転軸が鉛直である請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記患者の回転軸が前記患者支持体上の患者のアイソセンターを含む請求項11に記載の装置。
【請求項14】
前記ガントリーが、ガントリーの回転軸周りに前記加速器を回転させるように構成されている請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記ガントリーの回転軸が水平である請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記ガントリーの回転軸が前記患者支持体上の患者のアイソセンターを含む請求項14に記載の装置。
【請求項17】
前記加速器の重量が40トン未満である請求項1に記載の装置。
【請求項18】
前記加速器の重量が5から30トンの範囲内である請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記加速器の占める容積が4.5立方メートル以下である請求項1に記載の装置。
【請求項20】
前記容積が0.7から4.5立方メートルの範囲内である請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記加速器が、少なくとも150MeVのエネルギーレベルを有する陽子またはイオンビームを発生させる請求項1に記載の装置。
【請求項22】
前記エネルギーレベルが150から300MeVの範囲内である請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記加速器がシンクロサイクロトロンを含む請求項1に記載の装置。
【請求項24】
前記加速器が少なくとも6テスラの磁場強度を有する磁石構造体を含む請求項1に記載の装置。
【請求項25】
前記磁場強度が6から20テスラの範囲内である請求項24に記載の装置。
【請求項26】
前記磁石構造体が超電導巻線を有する請求項24に記載の装置。
【請求項27】
前記陽子またはイオンビームが、前記加速器から患者の位置の一般領域へと直接的に通過する請求項1に記載の装置。
【請求項28】
前記患者支持体、前記ガントリー及び前記加速器を収容する遮蔽チャンバを更に含み、前記遮蔽チャンバの壁の少なくとも一つが、該遮蔽チャンバの他の壁よりも薄い請求項1に記載の装置。
【請求項29】
前記遮蔽チャンバの少なくとも一部は地中に埋められている請求項28に記載の装置。
【請求項30】
患者支持体と、
加速器が取り付けられたガントリーであって、(a)患者のアイソセンターを含む水平なガントリーの軸周りに(b)360度未満の範囲の位置にわたって回転するように前記患者支持体の両側上で支持されているガントリーとを備えた装置であって、
前記患者支持体が、前記アイソセンターを含む鉛直な患者支持体の軸周りに回転可能であり、
前記加速器が、前記範囲内の位置から直接的に患者の任意のターゲットに到達する少なくとも150MeVのエネルギーレベルを有する陽子またはイオンビームを発生させるように構成されたシンクロサイクロトロンを含み、該シンクロサイクロトロンが超伝導巻線を有する、装置。
【請求項31】
処置空間内に患者を支持する段階と、
加速器の出力部から前記患者内の任意のターゲットに向けて直線方向に通過する陽子またはイオンのビームを発生させる段階と、
前記直線方向を、前記患者の周囲の或る範囲の方向にわたって変化させる段階とを備えた方法。
【請求項32】
患者支持体上の患者の周囲のあらゆる範囲の位置にわたって加速器を移動可能にするガントリー上に固定され、粒子ビームを発生させるように構成された加速器を備えた装置であって、
前記加速器が、前記範囲内の位置から前記患者の任意のターゲットに到達するのに充分なエネルギーレベルを有する粒子ビームを生じさせるように構成されている、装置。
【請求項33】
加速器を保持し、また、該加速器を患者支持体上の患者の周囲の或る範囲の位置にわたって移動可能にするように構成されたガントリーを備えた装置であって、
前記加速器が、前記範囲内の位置から前記患者の任意のターゲットに到達するのに充分なエネルギーレベルを有する陽子またはイオンビームを生じさせるように構成されている、装置。
【請求項34】
患者支持体と、
加速器が取り付けられ、該加速器を前記患者支持体上の患者の周囲の或る範囲の位置にわたって移動可能にするガントリーと、
前記患者支持体、前記ガントリー及び前記加速器を収容する壁で囲まれたエンクロージャーとを備えた構造体であって、
前記加速器が、前記範囲内の位置から前記患者の任意のターゲットに到達するのに充分なエネルギーレベルを有する陽子またはイオンビームを発生させるように構成されている、構造体。
【請求項35】
患者の任意のターゲットに到達するのに充分なエネルギーレベルを有する陽子またはイオンビームを発生させるように構成された加速器を備えた装置であって、該加速器が、前記陽子またはイオンビームを前記加速器から前記患者に向けて実質直接的に通過させる向きで回転可能なガントリー上に取り付けられるのに充分小型かつ軽量である、装置。
【請求項36】
少なくとも6テスラの磁場強度を生じさせ、少なくとも150MeVのエネルギーレベルを有する粒子のビームを発生させ、4.5立方メートル以下の容積を有し、30トン未満の重量を有する超伝導電磁構造体を有する医療用シンクロサイクロトロンを備えた装置。
【請求項37】
前記加速器が超伝導シンクロサイクロトロンを含む請求項35に記載の装置。
【請求項38】
前記超伝導シンクロサイクロトロンの磁場が6から20テスラの範囲内である請求項37に記載の装置。
【請求項39】
前記壁で囲まれたエンクロージャーの表面の半分以上が地中に埋められている請求項34に記載の構造体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2009−515671(P2009−515671A)
【公表日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−541398(P2008−541398)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【国際出願番号】PCT/US2006/044853
【国際公開番号】WO2007/061937
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(508147706)スティル・リバー・システムズ・インコーポレーテッド (7)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【国際出願番号】PCT/US2006/044853
【国際公開番号】WO2007/061937
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(508147706)スティル・リバー・システムズ・インコーポレーテッド (7)
【Fターム(参考)】
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