説明

荷電粒子移動誘起装置

電界を使用して液体またはゲル内で荷電粒子の移動を誘起する装置。この装置は、移動が誘起されるべき領域と、第1および第2の電極であって、領域内に電界を生成することによって電流が電極間を通過し、荷電粒子の移動を誘起して第2の電極でイオンが受け取られるようにする第1および第2の電極と、誘起された荷電粒子の移動動作の間に第1および第2の電極間で転送される電荷の量を測定するように配列された測定手段であって、誘起された荷電粒子移動動作の間に電流または電圧変動の量を考慮し得る測定手段と、測定された量と略等しい電荷量を、第2の電極を介して転送し、イオンが第2の電極から除去されて電極を再生するようにすることによって、第2の電極を再生する再生動作を制御する制御手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界を使用して荷電粒子の移動を誘起する装置および方法に関する。本発明は、特に、しかし限定されることはないが、電界を使用して液体フローを誘起する装置、および電界を使用して液体フローを誘起する方法に関する。本発明は、例えば、マイクロフルイディクスで使用されるポンプまたはミキサに関する。
【背景技術】
【0002】
動電学的ポンプは動電学的現象を使用し、電圧、したがって電界を流体へ印加することによって、電気的に駆動された流体フローを提供する。動電学的現象の具体的な例は電気浸透である。これは周知の現象であり、多くの異なる分野で使用される。それは、印加された電界の影響のもとで、多孔性構造体を通る極性液体の移動に関連する。大部分の表面は、表面イオン化に起因して負電荷を所有する。イオン化流体が表面と接触するように置かれたとき、陽イオン層が表面の近くで構築され、この負電荷を選別して電荷平衡を維持する。これは電気的二重層(EDL)を作り出す。電界が表面を横切って印加されたとき、EDL内のイオンは反対荷電電極の方へ引き付けられ、粘性力に起因して、それらイオンで周囲の媒質を引っ張る。これは、流体が負荷電電極の方へ移動することを引き起こす。
【0003】
それ故に、電気浸透は、流体移動を制御するために使用され得る。これは、マイクロフルイディクスの分野で特別の利点を有する。マイクロフルイディクス構造体、またはマイクロシステムは、一連のマイクロチャネルおよびリザーバから成り、その少なくとも1つの次元は、一般的に、マイクロまたはナノメートル範囲であり、1〜2mmよりも大きくない。流体は、これらのマイクロチャネルを通って導かれ、多様な行動、例えば、混合、選別、検出、分離、反応などへ供され得る。そのようなマイクロ構造体は、化学およびバイオ技術分野で重要性を増している。なぜなら、それらは非常に小さい尺度でテストおよび分析が実行されるのを可能にし、したがって各動作で消費される標本および試薬の量を低減するからである。これは、作業が迅速に遂行され、従来よりも費用が少なくなり、産出廃棄物が少なくなることを意味する。そのようなマイクロシステムは、しばしば「チップ上の実験室」またはマイクロトータル分析システム(μTAS)と呼ばれる。
【0004】
電気浸透を利用するマイクロフルイディクスポンプの使用は、多くのマイクロシステム応用のための有望な技術と考えられる。なぜなら、これらのポンプは、組み立てが比較的簡単であり、広範囲のイオン濃度で良好な性能が取得され得るからである。
【0005】
電気浸透ポンプの例は、WO 2004/007348の中に示される。
【0006】
動電学的装置の動作で生じる問題は、ガス気泡が電気化学的に生成され、フローパスを妨害し得ることである。負電極での水素の生成によって、特別の問題が引き起こされる。水素を吸収する或る一定の電極金属、例えば、パラジウムを使用することによって、この問題に対処することが提案された。しかしながら、或る動作期間の後、電極は水素で飽和するようになり、次いで水素ガスが形成され始める。更に、電極は、高すぎる水素濃度を保持することによって損傷するようになり、金属格子が不可逆的に拡張される。典型的な電気浸透ポンプの場合、飽和および気泡形成は数時間の後に起こる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様から見ると、本発明は、電界を使用して液体またはゲルの中で荷電粒子の移動を誘起する装置を提供する。この装置は、移動が誘起されるべき領域と、第1および第2の電極であって、領域内に電界を生成し、これによって電流が電極間を通過して荷電粒子の移動を誘起し、イオンが第2の電極で受け取られるようにする第1および第2の電極と、誘起された荷電粒子移動動作の間に第1および第2の電極間で転送される電荷の量を測定するように配列された測定手段であって、誘起された荷電粒子移動動作の間に電流または電圧変動を考慮し得る測定手段と、測定された量に略等しい電荷量を、第2の電極を介して転送し、イオンが第2の電極から除去されて電極を再生するようにすることによって、第2の電極を再生する再生動作を制御するように配列された制御手段とを備える。
【0008】
本発明の第1の態様は、電界を使用して液体またはゲルの中で荷電粒子の移動を誘起する方法を更に提供する。この方法は、電界を生成するため第1および第2の電極へ電圧を印加し、これによって電流が電極間を通過して荷電粒子の移動を誘起し、イオンが第2の電極で受け取られるようにすること、誘起された荷電粒子移動動作の間に第1および第2の電極間で転送される電荷の量を測定すること、およびその間に、誘起された荷電粒子移動動作の間の電流または電圧変動量を考慮すること、およびイオンが第2の電極から除去され、これによって電極を再生するように、測定された量に略等しい電荷量を、第2の電極を介して転送することによって、第2の電極を再生する再生動作を制御することを備える。
【0009】
そのようなシステムは、第2の電極におけるガス気泡の形成を回避または最小化し得る。第2の電極を再生することによって、イオンとしてそこへ搬送された物質、例えば、水素でそれが飽和され、次いでその物質をガス気泡として解放することを回避し得る。第2の電極が物質の過剰を保持することによって、更に第2の電極への損傷を最小化または回避し得る。1つの例において、第1の電極は正電極であり、第2の電極は負電極である。
【0010】
多くの液体またはゲルの場合、主な電気化学的電極反応は、負電極における水素生成である。本発明は、こうして負電極での水素気泡の形成、更に水溶液の場合には正電極での他のガス、例えば、酸素の形成、およびアルコール溶液の場合には炭酸ガスの形成を回避し得る。
【0011】
第2の電極は、好ましくは、イオンとして電極に到着する物質を吸収し得る物体から作られる。例えば、パラジウム電極は、水素イオンの形態で到着する水素を吸収する。
【0012】
マイクロフルイディクス・ポンピング・スキームは、2005年8月31日にデンマーク工科大学のAnders BraskによってPhD論文の中で提案された。これは、パラジウムから作られた負電極を有する電気浸透ポンプの使用を伴い、印加される電圧は、電極を再生するため定期的に反転された。同じ方向の液体フローは、逆止め弁の配列によって維持され、フローを効果的に整流した。電圧は一定に維持され、順方向段階および逆方向段階で等しく、各段階は等しい持続時間であった。
【0013】
電極間を転送される電荷の量は、このシステムで測定されなかった。この量は電流に依存する。本発明の発明者は、一定の電圧および一定の液体組成の場合でも、電流が経時的に変動することを認識した。その理由は、時間に依存する電極変化、例えば、電極劣化が存在するからである。更に、流体組成は、ポンプが置かれている使用に依存して経時的に変動する。再び、ポンプの要求される使用に従って、経時的に供給電圧を変動させ、ポンピング圧力およびフローを変化させることも望ましい。
【0014】
本発明は、第1の態様において、誘起された荷電粒子移動動作、例えば、液体ポンピングまたは混合動作の間の定常条件に頼らない。誘起された荷電粒子移動動作の間に電極間で転送される電荷の量を測定することによって、電極の再生は、正確および信頼されるやり方で制御され得る。
【0015】
本明細書で使用される「領域」の用語は、電極によって電界が生成される領域、即ち、一般的に第1および第2の電極間にある領域を意味する。
【0016】
或る一定の好ましい実施形態において、装置は、電界を生成するために印加される電圧を変動することによって、誘起された荷電粒子移動動作の間に調整可能に配列される。こうして、可変圧力および移動レートで装置を作動することが可能である。これは、例えば、マイクロフルイディクスポンプの場合に有用である。それが、チップ上の実験室またはマイクロ燃料電池の一部分として自動的に作動されるか、手作業で作動される実験室ポンプとして使用されるかを問わない。可変電流を導く可変電界強度が存在する場合でも、測定手段は、これを考慮して、転送される電荷の量を測定し、同じ電荷転送量を用いて電極再生を可能にする。
【0017】
電荷転送の測定は、例えば、或る期間にわたって電流を積分する標準手法によって行われ得る。装置は、それ故に、或る期間にわたって電流を測定し、転送された電荷の量を決定するように配列される。測定手段は、誘起された荷電粒子移動動作の間に第1および第2の電極間を転送される電荷の量を自動的に測定するように配列され得る。装置、例えば、制御手段は、その量をメモリの中に記憶する。記憶された量は後の再生動作で使用されるか、または、装置は、電荷が第2の電極に到着する同じレートで第2の電極から電荷を転送し、変動を考慮する。
【0018】
本発明の或る一定の形態において、制御手段は、第1および第2の電極間で電流反転を引き起こすことによって再生動作を制御するように配列される。システムは、例えば、誘起された液体移動レートを調整するために必要な経時的な電圧変動を補償することができ、例えば、流体または流体特性の変化、または装置特性の変化、例えば、電極または他の物質の劣化に起因する電流/電圧関係の経時的な変化を補償することができる。
【0019】
誘起された荷電粒子移動は、液体移動を誘起するために使用される。指向性誘起液体フローシステムの場合、好ましくは、弁配列が提供され、再生動作の間の液体フローは、誘起された液体フロー動作における液体フローと同じ方向であるようにされる。しかしながら、これは必須ではない。というのは、誘起された液体フロー動作は、長期間、例えば、数時間にわたって起こり、次いで再生動作は便宜的な時間、例えば、夜間に起こるようにすることが可能だからである。再生動作の間の逆フローを防止するため、簡単な逆止め弁が使用される。代替として、フローの生成を引き起こす最小値よりも下の逆電圧が選択される。例えば、電気浸透ポンプの場合、通常、フローを生成する最小電圧が存在する。
【0020】
電流反転が引き起こされるべき場合、制御手段は再生動作を制御するように配列され、誘起された液体移動動作よりも長い期間にわたって再生動作が起こるようにされる。こうして、より低い平均電圧、および電流が、再生動作の間に、より長い期間にわたって使用される。
【0021】
制御手段は、誘起された荷電粒子移動動作から再生動作へ装置を自動的に切り換えるように配列される。これは、ガス気泡が生成される段階へシステムが到着することを回避し得る。可聴および/または可視のインディケータを組み込むことが望ましい。このインディケータは、再生動作の生起が要求される前に、システムの状況、例えば、利用可能な誘起液体移動能力量を表示する。こうして、例えば、再生が要求される或る一定の時間の前に、警報が生成される。
【0022】
或る一定の好ましい実施形態において、装置は第3の電極を備え、制御手段は、第2の電極および第3の電極間で電流を通過させることによって再生動作を制御するように配列される。そのようなステムにおいて、第2の電極を再生するために第1および第2の電極間で電流を反転する必要はない。こうして、指向性液体フローを有するシステムの場合、電流反転の間に液体フローを整流する逆止め弁システムなしに、装置が作動され得る。
【0023】
方法は、
第1および第2の電極間で電流反転を引き起こすことによって、または
第2の電極および第3の電極間で電流を通過させることによって、
再生動作を制御するため、測定電荷データを使用することを備える。測定電荷データは、誘起された荷電粒子移動動作の間に第1および第2の電極間で転送される電荷の測定量に関連する。
【0024】
第3の電極の使用は、独立して特許可能な重要性を有する。
【0025】
第2の態様から見ると、本発明は、電界を使用して液体またはゲルの中で荷電粒子の移動を誘起する装置を提供する。この装置は、移動が誘起されるべき領域と、領域内に電界を生成するように配列された第1および第2の電極であって、電流が電極間で通過し、荷電粒子の移動を誘起してイオンが第2の電極で受け取られるようにする第1および第2の電極と、第3の電極であって、イオンが第2の電極から除去されるように第2の電極と第3の電極間で電流を通過させることによって第2の電極を再生するように配列された第3の電極とを備える。
【0026】
本発明の第2の態様は、電界を使用して液体またはゲルの中で荷電粒子の移動を誘起する方法を更に提供する。この方法は、第1および第2の電極へ電圧を印加して電界を生成し、これによって電流が電極間を通過して荷電粒子の移動を誘起し、イオンが第2の電極で受け取られるようにすること、およびイオンが第2の電極から除去されるように第2の電極と第3の電極間で電流を通過させることによって第2の電極を再生することを備える。
【0027】
前述したように、第3の電極の使用は、電極再生を引き起こすための電流反転の必要性を回避する利点を有する。追加の利点が存在する。2つだけの電極および再生するための電流反転を伴う新規システム、例えば、吸収された水素を有しないパラジウム電極を有するポンプにおいて、流体の電解は電流が通過するときに起こる。故に、電圧、したがって電流の第1の反転において、電流は、大部分は1つの電極から他の電極への水素イオンの運送に起因して、通常、(流体に依存する)。しかしながら、電解は生起を継続し、ますます多くの水素を作り出す。したがって、二電極セットアップにおいて、電圧反転プロセスを使用することによって、より優れた装置および電極寿命を達成することが可能であり、この寿命増加は、電極の増加された吸収能力、即ち、体積を用いて増加され得る。しかしながら、電極は究極的に所与の数のサイクルの後に水素で飽和され、その後では、電極はもはや無気泡ではなくなるか、または吸収された水素の過剰に起因して電極は崩壊する。こうして、電極再生への電流反転アプローチを使用することによってのみ時間を稼ぐことが可能であり、装置および/または電極は究極的に限定寿命を有する。
【0028】
本発明の第1の態様の或る一定の実施形態において、または本発明の第2の態様の装置において、第3の電極が使用される。荷電粒子移動を誘起するために通過した電流の結果として第2の電極によって吸収された物質は、効果的に除去され、第3の電極へ通過する。第2の電極から第3の電極へ通過した物質は、第3の電極で解放され、装置からの脱出を許される。物質は、例えば、水素である。水素の場合、ガスは第3の電極で解放され、システムからの脱出を許される。こうして、或る期間にわたる第1および第2の電極での水素累積は回避され得る。
【0029】
第3の電極を有するシステムにおいて、誘起された荷電粒子移動動作を実行し、続いて、第2の電極を再生するため再生動作を実行することが可能であろう。しかしながら、好ましい実施形態において、誘起された荷電粒子移動動作と同じ時間に再生動作が起こるように、装置が配列される。そのような配列において、再生段階を中断することなく装置が作動され得る。これは、中断によって引き起こされる不便を回避し、連続動作能力を提供する。もし誘起された荷電粒子移動動作と同じ時間に再生が実行されるならば、第2の電極の中へ吸収された物質の累積は回避され得る。これは、第2の電極の損傷の危険性を低減する。それ故に、システムは、はるかに長い無気泡寿命を有し、電極は、より長い耐久性を有する。
【0030】
第3の電極は、十分な水素吸収能力を有するとは言えない不活性物質、例えば、白金から作られる。こうして、水素は、この電極で気泡を形成し、水素は装置から通気される。第1の電極は、十分な水素吸収能力を有するとは言えない不活性物質、例えば、白金から作られる。第3の電極を有するシステムにおいて、安定した不活性物質を第1の電極として使用することが望ましい。というのは、水素のような物質を貯蔵することは要求されないからである。
【0031】
本発明の第2の態様の装置は、誘起された荷電粒子移動動作の間に第1および第2の電極間で転送される電荷の量を測定するように配列された測定手段を備える。この測定手段は、誘起された荷電粒子移動動作の間の電流または電圧変動を考慮し得る。それは、第2の電極を再生する再生動作を制御する制御手段を備える。この制御手段は、第2の電極を再生するように、測定された量に略等しい電荷量を、第2の電極を介して転送することによって再生動作を制御するように配列される。
【0032】
好ましくは、測定手段および制御手段が提供されるこれらの実施形態において、測定手段は、第1および第2の電極間を通過する電流を測定するように配列され、制御手段は、等しい電流が所与の時間に第2および第3の電極間を通過するように配列される。この配列は、第2の電極を平衡に維持するために要求されるレートでリアルタイムの再生が起こることを保証し得る。
【0033】
一般的に、第2の電極の電位は、第1の電極および第3の電極の中間電位である。例えば、第2の電極は、第1の電極に対して負であり、第3の電極に対して正である。
【0034】
第1および第2の電極間の電位差は、装置の所望の性能を取得するように選択され、第2および第3の電極間の電位差は、好ましくは、誘起された荷電粒子移動の結果として第2の電極によって吸収された物質の量と、再生の結果として第2の電極から除去された物質の量とを等しく維持するように、即ち、第2の電極を平衡に維持するように調整される。これは、一般的に、第1および第2の電極間の電流および第2および第3の電極間の電流が等しくなることを意味する。
【0035】
荷電粒子移動が誘起されるべき領域は、通路の中に画定又格納される。或る一定の実施形態において、誘起された荷電粒子移動は、通路に沿った指向性フローであり、したがって装置はポンプとして作動する。他の実施形態において、誘起された荷電粒子移動は、通路の中で起こって混合を達成し、したがって通路に沿った指向性フローではない。通路内の移動に関するこれらの注釈は、本発明の第1の態様および第2の態様へ適用可能である。
【0036】
第3の電極は、好ましくは、通路とは別個の室の中に格納される。室は、例えば、緩衝水溶液を格納する。室は、ガスの脱出を許すように通気される。例えば、それは疎水性多孔薄膜、例えば、Gore-Tex(商標)を有する。通気は、例えば、室から水素を通気するために使用され得る。通気は大気へ行われる。
【0037】
第2の電極は、通路内の液体へ露出された部分(「通路部分」)および室の内部へ露出された部分(「室部分」)を有する。誘起された荷電粒子移動動作の間に第2の電極上へ吸収された物質は、次いで拡散によって電極の室部分へ運送され得る。例えば、パラジウムから作られた第2の電極に堆積された水素は、拡散によって電極内に運送され得る。
【0038】
室は、好ましくは、通路に隣接して提供される。それは単純に通路の1つの側に配置される。幾つかの実施形態において、室は通路の回りで全面的または部分的に伸長する環状形態を有し得る。故に、第2の電極は、通路の周りで周縁的または部分周縁的に伸長する。例えば、円形断面を有する通路において、第2の電極は、室の中へ径方向に伸長するような、通路直径よりも大きい直径を有する円板である。そのような配列は、第2の電極内の拡散プロセスに対して十分な機会を提供し、吸収された物質を通路から室の中へ搬送する。もちろん、通路および/または電極は、他の幾何学的形状、例えば、長方形または正方形の断面を有し得る。
【0039】
第2の電極および/または第1の電極は、通路の中へ伸長する。これは、第1および第2の電極間の電流反転によって再生が引き起こされる実施形態、および第2の電極を再生するため第3の電極が提供される実施形態の双方に当てはまる。そのような配列は、通路断面を横切る良好な電流分布を提供し得る。これは、或る一定のタイプの装置に望ましい。例えば、第1の電極および/または第2の電極は、液体フローがそれらを通ることを許す孔を設けられ、通路の横で、好ましくは通路全体を横切って伸長し、一様な電流分布を提供する。
【0040】
第2の電極が液体通路を横切るか部分的に横切って伸長する実施形態において、誘起された荷電粒子移動動作の間に電極の中へ吸収された物質は、第3の電極の方へ、例えば、室の方へと、横方向へ運送されなければならない。これは拡散プロセスによって起こる。しかしながら、もし第2の電極が液体通路を画定する壁の一部分を形成するならば、(通常は拡散による)運送距離は低減され得る。例えば、電極は、通路と室を別々にする小さい厚さを有する。それは、板、シート、またはフォイルの形態である。それは、好ましくは、通常の使用では液体に対して不浸透性である。
【0041】
第2の電極が、液体通路を画定する壁の一部分を形成する実施形態において、第2の電極の全体は通路の壁部分を形成するか、代替として、第2の電極の一部分が通路の中へ伸長し、その一部分が通路の壁を形成し得る。もし通路が概して真っすぐであり、長手方向に伸長するならば、通路壁の一部分を形成する第2の電極(またはその一部分)も長手方向に伸長する。代替の配列において、通路は方向変化、例えば、屈曲を提供され、第2の電極(またはその一部分)が、屈曲の外側に配置され、したがって所望の電界幾何学的形状を提供する関係を第1の電極に対して有することが許される。例えば、通路は第1の電極の下流側で直角の屈曲を有し、長手方向から横方向へ変化する。故に、第2の電極は、第1の電極が伸長する平面と略平行な平面内で伸長し、双方の平面は長手方向に対して垂直である。例えば、液体フローおよびこのフローを誘起する圧力は、第1および第2の電極間の電圧差によって生成され得るが、一度、フローが屈曲へ到着すると、それは長手方向から横方向へ逸らされる。この配列は、第2の電極内で短い拡散路を提供し、同時に良好な電界幾何学的形状を提供し得る。
【0042】
(例えば、通路壁の一部分を形成することによって、)第2の電極が短い拡散パスを提供することを依然として許しながら、電界幾何学的形状を向上する他の方途は、通路内で第1の電極および第2の電極間に中間電極を提供することである。中間電極は、例えば、それを通る(例えば、液体の)フローを許すために孔を設けられ、一様な電流分布を提供するため、好ましくは通路全体を横切って通路の横に伸長する。物質、例えば、第1の電極から中間電極への誘起された荷電粒子移動動作の間に中間電極の中へ吸収された水素は、中間電極から剥離され、イオンとして第2の電極の方へ移動し、そこで吸収され、今度は第3の電極へのイオン転送によって剥離される。
【0043】
第3の電極は、必ずしも別個の室の中に提供される必要はなく、通路の中に提供される。ガス、例えば、第2の電極で生成された水素の量は、電流およびそれが溶解するために利用可能な液体の量、即ち、液体フローに依存する。それ故に、電流対フロー比 − 「臨界比」 − が存在する。臨界比よりも下では、ガスは溶解し、したがって気泡の作り出しは存在しない。こうして、臨界比よりも下では、ガスは液体の中に溶解され、液体フローの中で搬送される。こうして、或る一定のタイプの装置の場合、臨界比よりも下の低電流条件では、気泡は作り出されない。

それ故に、低電流条件において、通路内に提供された第1の電極および第3の電極のみを使用して、例えば、液体移動を誘起することが可能であろう。ガス気泡は生成されないであろう。臨界比よりも上の、より高い電流条件では、誘起された液体移動動作の間に第1の電極および第2の電極を使用することが可能であろう。それ故に、低電流条件で液体移動を誘起するとき第2および第3電極間に電位差を印加し、高電流条件で液体移動を誘起するとき、第2の電極の中へ吸収された物質、例えば、水素を剥離し、その物質を第3の電極へ通過させ、そこからその物質が溶解され、フローによって搬送され得ることによって、再生動作が実行される。
【0044】
装置は、好ましくは、要求される電位差を電極へ供給するパワーサプライを備える。電力は、通常、直流電流を提供するように供給される。パワーサプライは、好ましくは、制御手段の一部分である。
【0045】
荷電粒子は、イオン、偏極分子、他の偏極粒子、例えば、イオンを付加されたセルまたは粒子である。
【0046】
或る一定の実施形態において、本発明の第1および第2の態様の装置は、液体移動を生成するように意図される。荷電粒子の移動が誘起されるとき、これは一般的に粘性効果の結果として液体移動を生じる。そのような液体移動は、電極間の領域内での混合、またはポンプ様式での指向性フローに使用される。こうして、或る一定の好ましい装置は、液体移動が生成されるポンプまたはミキサとして作動するように配列される。この例は、EOポンプまたはEOマイクロミキサである。他の例は、液体フローが誘起される電気クロマトグラフィである。しかしながら、無気泡電極の提供に伴う原理は他のシステムへ適用可能である。このようなシステムは、必ずしも液体移動を伴わず、電界を使用して荷電粒子の移動を誘起することが望まれる。
【0047】
本発明は、多様な態様において、動電学的プロセス、電気化学的プロセス、マイクロフルイディクスおよびナノフルイディクスデバイス、または分析または合成用の実験室デバイスへ適用可能である。
【0048】
本発明は、多様な態様において、例えば、移動中の分子または荷電粒子をゲルの中で固定するために第1および第2の電極が使用され、各々の種の異なる速度によって分離が達成される電気泳動または誘電電気泳動へ適用可能である。
【0049】
本発明は、その多様な態様において、電界および/または電流がイオン伝導システムへ印加される必要があるシステムへ適用可能である。
【0050】
本明細書で説明される実施形態は、無気泡電極システムを提供することを意図される。これらは、チップ上の実験室、マイクロトータル分析システム、マイクロ燃料電池などを含むマイクロフルイディクスデバイスのために大きな利点を有する。なぜなら、小さい気泡でも、フローパスを妨害し、そのようなデバイスの動作を崩壊させ得るからである。
【0051】
装置は、電気浸透マイクロポンプを含む全ての種類の動電学的マイクロポンプへ適用可能である。
【0052】
更に、装置は、電気泳動、二極泳動、クロマトグラフィ手法および誘電電気泳動を含む全ての種類のマイクロフルイディクスデバイスおよび電極要求プロセスのために使用可能である。電極は、気泡形成が問題であり得る全ての種類のデバイスの中で使用され得る。それはマイクロフルイディクスデバイスに限定されず、より小さい(ナノフルイディクス)、および、より大きいデバイスで使用され得る。
【0053】
本発明の或る一定の好ましい実施形態は、例を用いて、および添付の図面を参照して、今から説明される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】液体フロー誘起装置である荷電粒子移動誘起装置の実施形態の略図である。
【図2】液体フロー誘起装置である荷電粒子移動誘起装置の異なる実施形態の略図である。
【図3】液体フロー誘起装置である荷電粒子移動誘起装置の異なる実施形態の略図である。
【図4】液体フロー誘起装置である荷電粒子移動誘起装置の異なる実施形態の略図である。
【図5】液体フロー誘起装置である荷電粒子移動誘起装置の異なる実施形態の略図である。
【図6】液体フロー誘起装置である荷電粒子移動誘起装置の異なる実施形態の略図である。
【図7】液体フロー誘起装置である荷電粒子移動誘起装置の異なる実施形態の略図である。
【図8】液体フロー誘起装置である荷電粒子移動誘起装置の異なる実施形態の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
図1は、フロー誘起装置10を示す。フロー誘起装置10は、液体フロー通路4、通路を横切って伸長する入口電極1、および同じように通路を横切って伸長し、電極1の下流側の位置に置かれた出口電極2を備える。矢印6はフロー方向を指示する。電極1および2の各々は、フローが電極を通るように孔を設けられる。通路断面を横切って伸長する多孔性電極を提供することによって、均一電圧分布、したがって均一電流分布が、通路断面を横切って提供される。これは、幾つかのポンプ設計のために重要であるが、他のポンプ設計では要求されない。
【0056】
電気浸透ポンプ5は、フロー通路の中に提供される。これは、例えば、WO 2004/007348で示されるポンプタイプの任意のものである。この実施形態、およびこの後で説明される実施形態では、電気浸透(EO)ポンプを使用して、無気泡電極を提供するコンセプトが説明される。これらは、負の表面電荷を有する多孔性構造体の使用を伴い、表面の近くで正イオン層の構築を生じ、負電荷を選別して電荷平衡を維持する。これは電気的二重層を作り出す。電界が印加されたとき、正イオンは負の荷電電極の方へ引き付けられ、それらが移動するとき、粘性力に起因して周囲の液体媒質を引きずる。それ故に、液体は負の荷電電極の方へ移動するようになる。EOポンプの代替の設計では、表面電荷が正であり、電界によって運送され得る外側の負イオンを有する電気的二重層を作り出すことが理解されるであろう。そのようなポンプの場合、示された方向のフローを達成するため、全ての電位は、説明されたものと反対になる。
【0057】
電極1を正にし、電極2を負にするため、電圧源Vが電極1および2の間に提供される。流れる電流を測定するため、電流計7が回路内で電極1および2の間に提供される。電流計7から電流データを受け取り、電極1および2の間に電位差Vを提供するため、制御システム20が提供される。
【0058】
これから、フロー誘起装置10の動作が説明される。電極1が正にされ電極2が負にされるように電圧が印加され、前に説明されたEOポンピング効果が生じる。通路4の中の液体のフローは、矢印6の方向で起こる。所望の圧力および流動度を取得するため、電圧Vは手作業または制御システム20の中のプログラムに従って調整される。同時に、電流計7によって電流が電子的に記録される。このポンピングプロセスの間に、液体の電解が起こり、正電極1でH+イオンが生成され、このH+イオンは電流搬送体として負電極2へ移動し、通路内でEOポンプを駆動する。
【0059】
電極2は、水素を吸収し得る物質、例えば、パラジウムから作られる。それ故に、電極2に到着するH+イオンは電子と結合して水素原子を形成し、この水素原子は次いで電極2の中に貯蔵される。しかしながら、電極は水素の或る一定の量のみを貯蔵可能であり、その後で水素ガスが形成され始める。加えて、もし電極が、あまりに多くの水素を担うならば、その金属格子は非可逆的に拡張し、したがって損傷され得る。
【0060】
電極2を再生するため、制御システム20によって印加された電圧Vは反転され、したがって電極2は正になり、電極1は負になる。水素イオンは電極2で形成され、電界によって電極1の方へ運送される。液体の逆流を回避するため、装置は逆止め弁(図示されず)を装備されるか、または使用されるEOポンプ5のためにフローが生成される最小値よりも下に逆電圧が設定される。ポンピング動作と同じように、電流は再生動作の間に電流計7によってモニタされる。先行するポンピング段階の間に反対方向へ運送された電荷と同じ量の電荷(したがって、水素)が電極1の方へ運送されるまで、再生段階が継続する。これは、再生段階の電流と時間との積が、ポンピング段階の対応する量と等しくなるまで、電位を反転することによって達成される。言い換えれば、2つの期間にわたる積分電流は、絶対値で等しく、反対の符号である。再生段階において、電流の大部分は、電極2に貯蔵された水素原子から生成されたH+イオンによって搬送される。
【0061】
もし電極2が水素による飽和へ接近するまで装置がポンピングモードで作動されるならば、これは電極へ非可逆的な損傷を引き起こし得る。それ故に、制御システム20は、所定量の水素が吸収される前の或る時点でポンピングを停止するように配列される。それは、この時点で再生モードへ自動的に進行するように配列されるか、または可聴および/または可視信号をユーザへ与える。制御システムは、再生が要求されることの警報を事前に与えるようにセットアップされる。
【0062】
ポンピング段階に続いて再生段階を使用することは、こうして装置内での水素気泡の生成を回避し得る。そうでなければ、水素気泡が累積してフローパスを妨害し得る。再生スキームは、多くの液体の場合に、主な電気化学的電極反応が、液体の分解の代わりに水素の剥離および吸収であるという追加の利点を有する。故に、システムは、負電極での水素気泡の形成を回避するだけでなく、正電極での他のガス、例えば、水溶液の場合の酸素、およびアルコール溶液の場合の炭酸ガスの形成を回避する。しかしながら、水素を生成する液体分解は低レートで依然として起こるので、電極は究極的に水素で飽和され、その時点で、装置または電極は、通常、置換されなければならない。
【0063】
今から、図1の装置の動作の例が説明される。電極1および2は多孔性パラジウムフォイルから作られ、各々は25マイクロメートルの厚さを有する。5mW電力消費および直流電流を提供する制御システム20からの10ボルト出力における典型的性能は、1psiの圧力で1分当たり10マイクロリットルの流動度であった。電極の水素飽和を証明する水素気泡が電極2で形成される前の時間は、5から10時間の間であった。或る一定の数の時間に順方向でポンピングし、必要な量の時間に5ボルトで再生段階の電位を反転する電流反転スキームを使用することによって、装置の全動作は4週間へ延長され、その間の順方向ポンピングの総時間は略100時間であった。
【0064】
装置は全ての時間に電流を測定した。それ故に、電流の変動が測定され、したがって考慮され、ポンピング段階の間で転送された電荷と同量の電荷が、再生段階の間に電極間を反対方向へ転送されることを確実にした。定電圧が印加されても、液体特性の変化に起因して、または長期の電極劣化に起因して、電流が変動することが発見された。図1の装置は、そのような変動を許容するように配列されている。加えて、時には可変圧力および流動度で装置を作動することが望ましく、図1の装置はそのような変動を考慮し得る。
【0065】
装置は、チップ上の実験室またはマイクロ燃料電池の一部分として自動的に作動されるマイクロフルイディクスポンプである。それは手作業で作動される実験室ポンプとして使用される。
【0066】
この後で説明される実施形態では、電極、したがってフローパスでの気泡形成を回避する代替方法が提供される。これらの実施形態において、電流反転は要求されず、したがって一層連続的なポンピングモードを提供し得る。これらの実施形態は、更に、再生段階の間にフローを整流する逆止め弁システムの必要性を回避し得る。しかしながら、電極再生は起こり、通常、ポンピングと同じ時間に起こり得る。もっとも、もし所望されるならば、ポンピングの後の再生が任意に選択される。
【0067】
図2を参照すると、フロー通路4を有するフロー誘起装置10、通路を横切って伸長する多孔性入口電極1、通路を横切って伸長し電極1の下流側に置かれた多孔性出口電極2、および2つの電極間のEOポンプ5が示される限り、図2は図1と同じである。入口電極1は不活性金属、例えば、白金から作られ、出口電極2は、水素を吸収し得る金属、例えば、パラジウムから作られる。入力電圧(V1)は、制御システム20によって電極1および2へ供給される。電圧V1が印加されたとき、矢印6の方向に液体フローが生成される。電流計7は、電極1および2の間を通過する電流を測定するために提供される。
【0068】
この実施形態において、出口電極2は密閉様式でフロー通路4から別個の液体充填室10の中へ伸長する。室10は水性緩衝溶液を格納する。この室10の中には、「気泡」電極を形成するため第3の電極3が提供される。室3は半浸透性薄膜15によって閉鎖されている。半浸透性薄膜15は、ガスが矢印9の方向へ脱出することを許す。薄膜15は、疎水性多孔薄膜、例えば、Gore-Texである。電極間を通過する電流を測定するため、回路内で電極2および3の間に電流計8が提供される。電子データは制御システム20へ送り込まれる。電圧V2は、制御システム20によって電極2および3の回路へ供給される。
【0069】
動作において、電圧V1は所与のEOポンプ5のために所望の流動度を取得するように調整され、電流は電流計7によって電子的にモニタされる。同時に、電圧V2は制御システム20によって電子的に調整され、電流計8によって測定された電流が、電流計7によって測定された電流と常に等しくなるようにされる。このようにして、ポンピングの間に電極2によって吸収された同数の水素原子が、第3の電極3によって別個の液体充填室10の中へ伸長する同じ電極の部分から除去される。電極3は、十分な水素吸収能力を有するとは言えない不活性金属、例えば、白金から作られているので、水素はこの電極で気泡を形成し、この電極から通気され得る。水素は拡散によって電極2に沿って運送される。電極2は或る電位にある。この電位は、電極1の電位に対して負であり、電極3の電位に対して正である。
【0070】
図2は、通路4の1つの側だけに別個の室10を示す。しかしながら、これは単に1つの例である。実際には、室10は通路4を取り巻くか、その一部分を取り巻き、出口電極2は、室10が通路4に隣接する環境の一部または全部に沿って、全地点で通路4から伸長する。例えば、円形断面を有するマイクロチャネルにおいて、電極2は、より大きい直径を有する円板であり、別個の室3の中へ伸長する。フロー通路および電極は、更に、他の幾何学的形状、例えば、長方形を有し得る。
【0071】
室10は、脱ガス室として機能することが注意される。
【0072】
図2の装置において、図1の二電極再生スキームとは反対に、パラジウム電極2は長期間の後でも水素で飽和されない(水素剥離および吸収への競合反応としての連続液体電解に起因して、二電極セットアップで起こり得るように)。新しい水素が生成されるとき、これは別個の室10の中で除去される。しかしながら、入口電極1で他のガスの生成が依然として起こる。多くの場合、これは小さな問題である。例えば、メタノールがポンピングされている場合、メタノールは入口電極1で生成される炭酸ガスを溶解する大きな能力を有し、この電極での気泡形成は回避され得る。
【0073】
図2の実施形態において、電極2の中へ吸収された水素は、フロー通路の横へ拡散することが理解される。これは、通路の中央で電極の中へ吸収された水素原子が、室10へ移動するため通路直径の半分に略等しい距離だけ拡散しなければならないことを意味する。これは比較的長い拡散路を作り出す。もっとも、装置が極端に小さいサイズであれば、これは問題にならない。
【0074】
図3の実施形態において、幾何学的配列は、拡散路の長さを低減するために修正されている。大部分の個所で、この実施形態は図2の配列と同じであり、したがって説明は反復されない。差異は、第2の電極2が通路を横切って伸長せず、孔を設けられないことである。図3の実施形態において、第2の電極2は通路4の壁の一部分を形成し、孔を設けられていない。そのような配列は、水素が電極2の中で通路4および脱ガス室3の間で拡散しなければならない距離を大きく低減する。電極は板またはフォイルから作られ、他の実施形態と同じように、水素吸収金属、例えば、パラジウムから作られる。この実施形態が図2の実施形態よりも勝る利点は、電極2を形成するために使用される電極金属が少ないことである。パラジウムのような電極金属は高価である。図2の実施形態において、電極2の厚さは、高速水素拡散のための十分な電極体積を考慮して、あまりに小さくすることはできない。加えて、図3の実施形態では、より大きな電流が使用される。なぜなら、水素は電極2から一層迅速に剥離され、電極の任意の部分が水素で飽和することを回避するからである。
【0075】
図3の実施形態の欠点は、通路断面を横切る一様電流分布を必要とするポンプが、通路の中へ伸長しない電極を用いる場合に良好な性能を示さないことである。
【0076】
この問題は、図4の実施形態によって対処される。この実施形態は、多くの個所で図3と同じセットアップを有し、これらの特徴の説明は反復されない。図4は、追加の電極が提供されている点で図3と異なる。追加の電極は、EOポンプ5の下流側に提供される中間電極2’である。中間電極2’は孔を設けられ、通路4を横切って伸長する。それは水素吸収物質、例えば、パラジウムから作られる。
【0077】
中間電極2’は入口電極1と直列に配列され、制御システム20は電圧V1を印加する。電圧V1は、中間電極2’の電位を、入口電極1の電位に関して負に設定する。中間電極2’は、第2の電極と直列に配列され、制御システム20はこれらの2つの電極間に電圧V3を印加して、電極2が中間電極2’に対して負電位を有するようにする。電流計12は、第2の電極2および中間電極2’間を流れる電流を測定するために提供される。
【0078】
ポンピングの間、水素イオンは中間電極2’へ搬送される。電極2’および電極2間の電位降下を理由として、水素は電極2’から剥離され、水素イオンとして電極2の方へ搬送され、そこで電極の中へ吸収される。水素は、次いで電極2から水素イオンとして剥離され、電極3へ搬送され、そこで水素ガスとして除去される水素を形成する。
【0079】
この実施形態は、通路を横切るように伸長して良好な電流分布を提供する出口電極(この場合、電極2’)の図2の利点と、通路壁内で電極2を横切る短い拡散路の図3の実施形態の利点とを組み合わせる。電極2’および2の双方は、水素吸収物質、例えば、パラジウムから作られなければならない。水素の剥離はエネルギー転送に関連し、(4つの電極を有する)このスキームは、図2または図3の三電極システムよりも多いエネルギーを消費する。
【0080】
使用に当たって、電圧V1はポンプ5の所望の性能を取得するように調整され、電圧V2およびV3は全ての電流が等しくなるように調整される。
【0081】
図4の実施形態は、中間電極2’が「浮動する」ように修正される。それは、電極1または電極2を有する外部電気回路の中に置かれないで隔離される。フローを駆動するための電位差が、電極1および2の間に依然として存在する。中間電極2’は、通路を横切る良好な電流分布を提供する効果を依然として有する。この修正された実施形態は、こうして図4よりも単純であるが、同じ利点を提供する。
【0082】
図5は、図3と類似の実施形態を示し、対応する特徴の説明は反復されない。差異は、フロー通路4が直角屈曲を含むことである。電極2は、屈曲の外側で通路壁の一部分を形成する。これは、電極2がEOポンプ5と対面することを許し、したがってポンプのために良好な電界分布を提供する。同時に、電極2は、物質、例えば、電極によって吸収される水素のために短い拡散路を提供する。図3の実施形態と同じように、使用に当たって、ポンプ5の所望の性能を取得するために電圧V1が調整され、電流計7および8によって測定される電流が等しくなるように電圧V2が調整される。
【0083】
図5の実施形態の動作において、流体は、電界およびポンプによって駆動され、長手方向を矢印6の方へ流れる。それが非浸透性電極2へ到着したとき、方向を変更するように強制され、したがって矢印6aで示される横方向へ逸らされる。
【0084】
図6の実施形態は、多くの個所で図5と類似しており、対応する部分の説明は反復されない。図6の実施形態において、EOポンプ5は第2の電極2と隣接して置かれる。第2の電極2は、非多孔性部分2aおよび多孔性部分2bを有する。2つの部分は、対面して配列された2つの層として形成される。この配列は、電極1および2によって作り出された電界と平行してフローが矢印6の方向へEOポンプを通ることを許し、次いでフローは妨害されて、電界とは垂直に矢印6aの方向へ逸らされる。
【0085】
電極の多孔性部分2bの存在は、横方向フローが多孔性部分を通ることを可能にする。これは、フローを妨害することなくEOポンプ5が電極2にすぐ隣接して置かれることを可能にする。幾つかのタイプのポンプの場合、出口電極にすぐ隣接してポンプを配置できることが有利である。
【0086】
図7の実施形態は、多くの個所で図5に類似し、対応する部分の説明は反復されない。図7の実施形態では、単一の電圧源V4が使用される。その2つの極は第1の電極1および第3の電極3へ接続される。電圧計11は、電極1および2の間の電圧を測定するために提供される。
【0087】
使用に当たって、電流は、電極2および3の間と同じように、電極1および2の間で同じでなければならない。したがって、通路および別室の双方で水素が主な正電流搬送体であるとき、水素除去機能性が維持される。電圧計11で測定された電圧を調整し、これによって所望のフローおよび圧力を取得するように、電圧V4が調整される。回路内の電流は電流計7によって測定され得る。これは、電流があまりに高くならないように保証するためである。
【0088】
同様に、例えば、通路に沿って提供された4つの(または、これよりも多い)電極の場合、入口電極1および脱ガス電極3だけを電圧源へ接続する必要がある。ポンプを横切る電圧を規定する2つの電極間の電圧は、常にモニタされなければならず、ポンプを横切る所望の電圧を取得するため電圧源が調整される。
【0089】
図8の実施形態は、別個の脱ガス室3が提供されない点で、図2〜図7の実施形態とは異なる。この実施形態はフロー通路4を有し、その中にEOポンプ5が提供され、これを通って液体がポンピングの間に矢印6の方向へ流れる。入口電極1はポンプ5の上流側に提供され、第1の出口電極を形成する第2の電極2は、ポンプ5の下流側にある第1の場所に提供され、第2の出口電極を形成する第3の電極3は、第2の電極2の下流側に提供される。3つの電極の全ては、一様な電流分布を提供するようにフロー通路を横切って伸長し、フローが通るのを可能にするため孔を設けられる。第1および第3の電極は、非水素吸収物質、例えば、白金から形成され、第2の電極は水素を吸収し得る物質、例えば、パラジウムから形成される。制御システム20は、電極1および2の間に電圧V1を印加し、電極2および3の間に電圧V2を印加する。電流計7は電極1および2の間を流れる電流を測定し、電流計8は電極2および3の間を流れる電流を測定する。
【0090】
生成される水素の量は電流に依存し、水素の溶解可能性は利用可能な液体量、即ち、フローに依存する。それ故に、電流対フロー比(臨界比)が存在する。臨界比よりも下では、電極で生成された水素は溶解し、したがって気泡を作り出さない。
【0091】
図8の実施形態において、もし臨界比よりも下の電流が流れていれば、電極1および3は、電界を生成するように使用され、ポンプ5を作動する。第3の電極3に到着する水素イオンは水素へ変換され、この水素は液体の中に溶解して搬送される。
【0092】
電流が臨界比よりも上になるようにフローの増加が望まれるとき、電極1および2が使用される。電極2に到着する水素イオンは、電極物質の中へ吸収される。故に、臨界比よりも下の電流を使用してポンピングするとき、電位差が電極2および3の間に印加され、電極2の中へ吸収された水素が水素イオンとして剥離される。この水素イオンは電極3へ搬送され、そこで水素を生成し、この水素は液体の中へ溶解される。こうして、電極1からポンプを通って流れる電流の結果として、および電極2から剥離されている水素の結果として、水素イオンが電極3に到着する。それ故に、電極1および2の間を流れる電流は臨界比よりも下でなければならず、電極3へ搬送される余分の水素を念頭に置いて、十分な余裕をもった下でなければならない。
【0093】
任意的な追加は、電極2が伸長する別個の室を提供し、水素除去能力を増加することである。
【0094】
図8の実施形態の利点は、生成された水素を液体の中に溶解することによって、エネルギーを節約し、電極2の水素吸収物質の耐久性を一層長くさせ得ることである。臨界比は、液体の水素吸収能力が公知であるとき計算され得る。代替として、市販の気泡検出器が制御エレクトロニクスへ接続され得る。制御エレクトロニクスは、必要なときに水素吸収電極の使用へ切り換える。
【0095】
システムは、典型的には、標準の低電圧エレクトロニクスによって制御される。様々なパワーサプライ(記号V)、電流計(A)、および電圧計は、電気回路の機能性のみを表す。同じ回路が、典型的には電圧を調整して所望の液体フローおよび圧力を取得し、同時に電極再生を自動的に処理する。
【0096】
様々な好ましい実施形態の主な特徴および利点は、次のとおりである。
【0097】
電流積分法は、二電極システムでは、ポンプが、(気泡形成を生じる)水素飽和なしに、長期間にわたって稼働し得ることを保証し、三電極以上のシステムでは、ポンプが気泡なしに無限に稼働し得ることを保証する。
【0098】
2つの電極を有する再生スキームが先行技術で提案されたが、方法は、ポンピングレートを調整するために必要な電圧の時間変動を補償せず、更に電流−電圧関係の経時的な変化(流体の変化またはポンプ特性の変化、例えば、電極および他の物質の長期の劣化に起因する)を補償しない。これは、等しい時間に等しい電圧を双方の方向に印加することに基づく公知の方法を強く限定する。
【0099】
三電極(または、これよりも多い電極)システムは、更に、電極内で水素が経時的に緩やかに累積しないという新しい特徴を有し、これによってシステムは、はるかに長い無気泡寿命を有し、電極の耐久性も、はるかに長い。加えて、電極を再生するためのフロー反転は必要とされない。
【0100】
二電極システムは、電流が主に水素イオンによって搬送され得るという利点を有する。水素イオンは、1つの電極から除去され、他の電極によって吸収される。短い初期水素生成期間の後、負電極における水素以外の他のガス(典型的には、水の場合のO2、アルコールの場合のCO2)の形成も抑圧される。幾つかの液体の場合、これは重要である。もっとも、他の場合、他のガスは液体の中に溶解され得るため、これは利点をもたらさない。(例えば、メタノールおよびエタノールはCO2を吸収する大きな能力を有するが、H2の吸収は、はるかに小さい)。
【0101】
小さい気泡でもフローパスを妨害し、そのようなデバイスの動作を崩壊するため、無気泡電極は、チップ上の実験室、マイクロトータル分析システム、マイクロ燃料電池などを含むマイクロフルイディクスデバイスのために大きな利点を有する。
【0102】
ポンプは、全ての種類の電気浸透/動電学的マイクロポンプについて、理想的でなければならない。
【0103】
更に、それは、電気泳動、二極泳動、クロマトグラフィ手法、誘電電気泳動を含む全ての種類の電極要求マイクロフルイディクスデバイスおよびプロセスについて、理想的でなければならない。
【0104】
電極は、気泡形成が問題となり得る全ての種類のデバイスで使用され得る。それはマイクロフルイディクスデバイスに限定されず、より小さいか(ナノフルイディクス)大きいデバイスで使用され得る。
【0105】
少なくとも好ましい実施形態において、誘起された荷電粒子移動動作の間に測定された量と等しい電荷量を、第2の電極を介して転送し、イオンが第2の電極から除去されて第2の電極を再生するようにすることによって、第2の電極を再生する再生動作が制御される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電界を使用して液体またはゲルの中で荷電粒子の移動を誘起する装置であって、前記移動が誘起されるべき領域と、第1および第2の電極であって、前記領域の中で前記電界を生成し、これによって電流が前記電極間を通過して前記荷電粒子の移動を誘起し、イオンが第2の電極で受け取られるようにする第1および第2の電極と、誘起された荷電粒子移動動作の間に前記第1および第2の電極間を転送される電荷の量を測定するように配列された測定手段であって、前記誘起された荷電粒子移動動作の間に電流または電圧変動を考慮し得る測定手段と、前記測定された量に略等しい電荷量を、前記第2の電極を介して転送し、イオンが前記第2の電極から除去されて前記電極を再生するようにすることによって、前記第2の電極を再生する再生動作を制御するように配列された制御手段とを備える装置。
【請求項2】
前記第1および第2の電極へ印加される前記電圧を変動することによって、前記誘起された荷電粒子移動動作の間に調整されるように配列された、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記第1および第2の電極間で電流反転を引き起こすことによって前記再生動作を制御するように配列された、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記再生動作が、前記誘起された荷電粒子移動動作よりも長い期間にわたって起こるように、前記再生動作を制御するように配列された、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記誘起された荷電粒子移動動作から前記再生動作へ装置を自動的に切り換えるように配列された、請求項3または4に記載の装置。
【請求項6】
第3の電極を備え、前記制御手段は、前記第2の電極および第3の電極間で電流を通過させることによって前記再生動作を制御するように配列された、請求項1または2に記載の装置。
【請求項7】
電界を使用して液体またはゲルの中で荷電粒子の移動を誘起する方法であって、前記電界を生成するため第1および第2の電極へ電圧を印加し、これによって電流が前記電極間を通過し、前記荷電粒子移動を誘起してイオンが前記第2の電極で受け取られるようにすることと、誘起された荷電粒子移動動作の間に前記第1および第2の電極間で転送される電荷の量を測定し、同時に前記誘起された荷電粒子移動動作の間の電流または電圧変動を考慮することと、前記測定された量に略等しい電荷量を、前記第2の電極を介して転送し、イオンが前記第2の電極から除去されて前記電極を再生するようにすることによって、前記第2の電極を再生する再生動作を制御することとを備える方法。
【請求項8】
前記誘起された荷電粒子移動動作の間に前記第1および第2の電極へ印加される前記電圧を変動することを備える、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1および第2の電極間で電流反転を引き起こすことによって前記再生動作を制御することを備える、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記再生動作が、前記誘起された荷電粒子移動動作よりも長い期間にわたって起こるように前記再生動作を制御することを備える、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記誘起された荷電粒子移動動作から前記再生動作へ装置を自動的に切り換えることを備える、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の電極および第3の電極間で電流を通過させることによって前記再生動作を制御することを備える、請求項7または8に記載の方法。
【請求項13】
前記第1および第2の電極間で電流反転を引き起こすことによって、又は、
前記第2の電極および第3の電極間で電流を通過させることによって、前記再生動作を制御するため、前記誘起された荷電粒子移動動作の間に前記第1および第2の電極間で転送された電荷の測定量に関連する測定電荷データを使用することを備える、請求項7または8に記載の方法。
【請求項14】
電界を使用して液体またはゲルの中で荷電粒子の移動を誘起する装置であって、前記移動が誘起されるべき領域と、第1および第2の電極であって、前記領域の中で前記電界を生成するように配列され、これによって電流が前記電極間を通過して前記荷電粒子の移動を誘起し、イオンが第2の電極で受け取られるようにする第1および第2の電極と、前記第2の電極および第3の電極間で電流を通過させ、イオンが前記第2の電極から除去されるようにすることによって、前記第2の電極を再生するように配列された第3の電極とを備える装置。
【請求項15】
前記再生動作が、前記誘起された荷電粒子移動動作と同じ時間に起こるように配列された、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
誘起された荷電粒子移動動作の間に前記第1および第2の電極間で転送される電荷の量を測定するように配列された測定手段を備え、該測定手段は、前記誘起された荷電粒子移動動作の間の電流または電圧変動量を考慮し得る、請求項14または15に記載の装置。
【請求項17】
前記第2の電極を再生する再生動作を制御する制御手段を備える、請求項14、15、または16に記載の装置。
【請求項18】
前記制御手段は、前記第2の電極を再生するように、前記測定された量に略等しい電荷量を、前記第2の電極を介して転送することによって、前記再生動作を制御する、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
請求項16に依存するとき、前記測定手段は、前記第1および第2の電極間を通過する前記電流を測定するように配列され、前記制御手段は、等しい電流が前記第2および第3の電極間を所与の時間に通過するように配列された、請求項17または18に記載の装置。
【請求項20】
前記荷電粒子移動が誘起されるべき前記領域が通路の中に格納される、請求項6または請求項14から19のいずれか一項に記載の装置。
【請求項21】
前記第3の電極は、前記通路とは別個の室の中に提供される、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記室は、ガスの脱出を許すように通気される、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記第2の電極は、前記通路内の前記液体またはゲルへ露出された部分、および前記室の内部へ露出された部分を有する、請求項21または22に記載の装置。
【請求項24】
前記第3の電極は前記通路の中に提供される、請求項20に記載の装置。
【請求項25】
前記第2の電極は、前記通路を横切ってまたは部分的に横切って伸長する、請求項20から24のいずれか一項に記載の装置。
【請求項26】
前記第2の電極は、前記通路を画定する壁の一部分を形成する、請求項20から25のいずれか一項に記載の装置。
【請求項27】
前記通路は屈曲を有するように形成され、前記第2の電極またはその一部分は前記屈曲の外側に配置された、請求項26に記載の装置。
【請求項28】
前記通路の中で前記第1および第2の電極間に中間電極を備えた、請求項20から27のいずれか一項に記載の装置。
【請求項29】
前記第2の電極から前記第3の電極へ通過した物質が、前記第3の電極で解放され装置から脱出することを許されるように配列された、請求項14から28のいずれか一項に記載の装置。
【請求項30】
前記物質は水素である、請求項29に記載の装置。
【請求項31】
使用に当たって、前記第2の電極の電位が、前記第1の電極の電位と前記第3の電極の電位との中間電位であるように配列された、請求項14から30のいずれか一項に記載の装置。
【請求項32】
前記第3の電極は、十分な水素吸収能力を有するとは言えない不活性物質から作られている、請求項14から31のいずれか一項に記載の装置。
【請求項33】
電界を使用して液体またはゲルの中で荷電粒子の移動を誘起する方法であって、第1および第2の電極へ電圧を印加して前記電界を生成し、これによって電流が前記電極間を通過し、前記荷電粒子移動を誘起してイオンが前記第2の電極で受け取られるようにすることと、前記第2の電極および第3の電極間で電流を通過させ、イオンが前記第2の電極から除去されるようにすることによって、前記第2の電極を再生することとを備える方法。
【請求項34】
前記再生動作は、前記誘起された荷電粒子移動動作と同じ時間に起こる、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
誘起された荷電粒子移動動作の間に前記第1および第2の電極間で転送された電荷の量を測定することを備え、そのような測定は、前記誘起された荷電粒子移動動作の間の電流または電圧変動を考慮する、請求項33または34に記載の方法。
【請求項36】
前記第2の電極を再生する再生動作を制御することを備える、請求項33、34、または35に記載の方法。
【請求項37】
前記再生動作は、前記第2の電極を再生するように、前記測定された量と略等しい電荷量を、前記第2の電極を介して転送することによって制御される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記第1および第2の電極間を通過する前記電流を測定すること、および等しい電流が所与の時間に前記第2および第3の電極間を通過するようにすることによって、前記再生動作を制御することとを備える、請求項35に依存するときの請求項36または37に記載の方法。
【請求項39】
前記第2の電極から前記第3の電極へ通過した物質を前記第3の電極で解放することを備える、請求項33から38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記物質は水素である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記第2の電極の電位を、前記第1の電極の電位と前記第3の電極の電位との中間電位に設定することを備える、請求項33から40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記第3の電極は、十分な水素吸収能力を有するとは言えない不活性物質から作られる、請求項33から41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
液体移動が生成されるポンプまたはミキサとして作動するように配列された、請求項1から6または14から32のいずれか一項に記載の装置。
【請求項44】
動電学的プロセスを実行するように配列された、請求項1から6または14から32のいずれか一項に記載の装置。
【請求項45】
電気化学的プロセスを実行するように配列された、請求項1から6または14から32のいずれか一項に記載の装置。
【請求項46】
マイクロフルイディクスデバイスまたはナノフルイディクスデバイスである、請求項1から6または14から32のいずれか一項に記載の装置。
【請求項47】
分析または合成用の実験室デバイスである、請求項1から6または14から32のいずれか一項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−518799(P2012−518799A)
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−551518(P2011−551518)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【国際出願番号】PCT/GB2010/000331
【国際公開番号】WO2010/097581
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(510048716)オスモテックス アクチエンゲゼルシャフト (2)
【Fターム(参考)】