説明

荷電粒子線装置、荷電粒子線装置の調整方法、および試料の検査若しくは試料の観察方法。

【課題】大気圧空間と減圧空間とを分離するための薄膜周辺部の構成最適化することによって、試料6を大気雰囲気あるいはガス雰囲気で観察することが可能な荷電粒子線装置を提供する。
【解決手段】第一の筐体7を排気する真空排気ポンプ4と、第一の筐体7内で、照射により得られる荷電粒子線を検出する検出器3と、少なくとも第一の筐体7若しくは第二の筐体8のいずれかの一部か、若しくは別体として構成され、第一の筐体7内と第二の筐体8内との間の少なくとも一部を隔てる薄膜13と、薄膜13に設けられ、荷電粒子照射部側の開口面積が試料6側の開口面積よりも大きい開口部10aと、開口部10aの試料6側を覆い、一次荷電粒子線及び荷電粒子線を透過あるいは通過させる薄膜13と、を備える荷電粒子線装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子線装置の技術に関する。
【0002】
被観察試料を大気圧あるいは所定のガス雰囲気中で観察可能な荷電粒子線装置の技術に関する。
【背景技術】
【0003】
物体の微小な領域を観察するために、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などが広く用いられている。一般的に、これらの装置では試料を配置するための第二の筐体を真空排気し、試料雰囲気を真空状態にして試料を撮像する。一方、生物化学試料や液体試料など真空によってダメージを受ける、あるいは状態が変わる試料を電子顕微鏡で観察したいというニーズは大きく、近年、観察対象試料を大気圧下で観察可能なSEM装置や試料保持装置などが開発されている。
【0004】
これらの装置は、原理的には電子光学系と試料の間に電子線が透過可能な薄膜を設けて真空状態と大気状態を仕切るもので、いずれも試料と電子光学系との間に薄膜を設ける点で共通する。
【0005】
特許文献1,特許文献2,特許文献3には、大気圧下におかれた試料や液体を観察することを目的として、電子線が通過することが可能な薄膜を試料周辺に配置し、薄膜にて真空状態と大気圧状態を仕切っている大気圧SEM装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平05−234552号公報
【特許文献2】特開平10−064467号公報
【特許文献3】特開2006−147430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1,特許文献2,特許文献3に記載の発明では、薄膜の保持構成等に関して技術的な問題がいくつかあることを本発明者は知得した。
【0008】
すなわち、試料からの放出電子を効率よく検出するためには、薄膜の放出電子透過領域を大きくする必要があるが、単に薄膜の放出電子透過領域を大きくすると、薄膜の強度が保てないという問題があった。本発明は、かかる問題に鑑みてなされたもので、大気圧空間と減圧空間とを分離するための薄膜周辺部の構成最適化することによって、被観察試料を大気雰囲気あるいはガス雰囲気で観察することが可能な荷電粒子線装置ないし、荷電粒子線装置の調整方法、および試料の検査若しくは試料の観察方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、荷電粒子源から放出される一次荷電粒子線を試料上に照射する荷電粒子照射部と、前記荷電粒子照射部を支持し、内部を真空状態に維持可能に構成される第一の筐体と、該第一の筐体に具備され前記試料を格納する第二の筐体と、前記第一の筐体内を排気する排気装置と、前記第一の筐体内で、前記照射により得られる荷電粒子線を検出する検出器と、少なくとも前記第一の筐体若しくは前記第二の筐体のいずれかの一部か、若しくは別体として構成され、前記第一の筐体内と前記第二の筐体内との間の少なくとも一部を隔てる隔壁部と、該隔壁部に設けられ、前記荷電粒子照射部側の開口面積が前記試料側の開口面積よりも大きい開口部と、該開口部の前記試料側を覆い、前記一次荷電粒子線及び前記荷電粒子線を透過あるいは通過させる薄膜とを備える荷電粒子線装置またはそれの調整方法が提供される。
【0010】
本発明の他の一態様によれば、荷電粒子照射部の荷電粒子源から放出される一次荷電粒子線を、内部を真空状態に維持した第一の筐体から該第一の筐体に具備された第二の筐体に格納された試料に対し照射する試料の観察方法であって、少なくとも前記第一の筐体若しくは前記第二の筐体のいずれかの一部か、若しくは別体として構成され、前記第一の筐体内と前記第二の筐体内との間の少なくとも一部を隔てる隔壁部に設けられ、前記荷電粒子照射部側の開口面積が前記試料側の開口面積よりも大きい開口部を前記一次荷電粒子線が通過し、前記開口部の前記試料側を覆った薄膜を前記一次荷電粒子線が透過あるいは通過し、前記試料に対し一次荷電粒子線を照射し、前記薄膜を前記試料からの荷電粒子線が透過あるいは通過し、前記荷電粒子線が前記開口部を通過し、前記第一の筐体内で、前記荷電粒子線を検出器が検出する試料の検査若しくは試料の観察方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、荷電粒子が照射及び透過される薄膜を最適に具備することができ従来よりも実用性が高い大気圧雰囲気下で観察可能な荷電粒子線装置、荷電粒子線装置の調整方法、および試料の検査若しくは試料の観察方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第一の実施形態として、荷電粒子線装置の全体構成図である。
【図2】本発明の第二の実施形態として、荷電粒子線装置の全体構成図である。
【図3】本発明の第二の実施形態としての薄膜の周辺部の詳細図の一例である。
【図4】本発明の第二の実施形態としての薄膜を備えた薄膜保持部の第一例を示す図である。
【図5】本発明の第二の実施形態としての薄膜を備えた薄膜保持部の第二例を示す図である。
【図6】本発明の第二の実施形態としての薄膜を備えた薄膜保持部の第三例を示す図である。
【図7】本発明の第二の実施形態としての固定材が薄膜保持部と薄膜保持部支持体との間に具備される図である。
【図8】本発明の第二の実施形態としての薄膜保持部と薄膜保持部支持体との間に固定材を具備する変形例を示す図である。
【図9】本発明の第三の実施形態として、試料が傾いた状態で顕微鏡観察をする形態を示す図である。
【図10】本発明の第四の実施形態として、薄膜保持部を保持する実施形態を示す図である。
【図11】本発明の第四の実施形態として、台を用いた実施形態を示す図である。
【図12】本発明の第五の実施形態を示す図である。
【図13】本発明の第六の実施形態を示すフローチャート図である。
【図14】本発明の第七の実施形態を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の説明では、電子線を用いたSEM装置を例にあげて説明を行うが、イオンビームを照射して二次電子や反射電子を検出するSIM(Scanning Ion Microscope)あるいは軽元素のイオンビームを使用したイオン顕微鏡など、他の荷電粒子線装置に適用可能であることは言うまでもない。また、以下に説明する各実施例は、本発明の範囲を逸脱しない範囲で適宜組み合わせることも可能である。
【0014】
<第一の実施形態>
図1は、本発明の第一の実施形態として、荷電粒子線装置の全体構成図を示している。図1に示される装置は、荷電粒子源から放出される一次荷電粒子線を試料上に照射し、得られる荷電粒子線を検出する荷電粒子線装置の一例として、荷電粒子線を試料6上に走査して、得られる二次電子あるいは反射電子を検出して画像化する走査型顕微鏡である。
【0015】
大まかには、電子光学鏡筒2,当該電子光学鏡筒2を支持する第一の筐体7,試料6が格納される第二の筐体8,第一の筐体7の下面としての隔壁部に設けられた薄膜保持部を支持する薄膜保持部支持体47,薄膜を保持する薄膜保持部10、一次電子線および試料から得られ二次電子あるいは反射電子が透過する薄膜13により構成される。電子光学鏡筒2は、第一の筐体7内部に突き出すように設置されており、電子光学鏡筒2の端部には上記二次電子あるいは反射電子を検出する検出器3が配置されている。検出器3は、第一の筐体7内で電子光学鏡筒2からの試料6への照射により得られる二次電子あるいは反射電子を検出するように構成されている。図示しないが、二次電子あるいは反射電子を検出する検出器に代えて、X線や光子を検出するための検出器が第一の空間11にあってもよいし、反射電子を検出する検出器およびX線や光子を検出するための検出器を夫々設けるようにしてもよい。
【0016】
なお、図1中の一点鎖線は、一次電子線光軸を示しており、電子光学鏡筒2と第一の筐体7および薄膜13は、一次電子線光軸と同軸に組み立てられている。
【0017】
装置の制御系として、装置使用者が使用するパソコン35,パソコン35と接続され通信を行う上位制御部36,上位制御部36から送信される命令に従って真空排気系や電子光学系などの制御を行う下位制御部37を備える。パソコン35は、装置の操作画面(GUI)が表示されるモニタと、キーボードやマウスなどの操作画面への入力手段を備える。上位制御部36,下位制御部37およびパソコン35は、各々通信線43,44により接続される。下位制御部37は真空排気ポンプ4,ガス制御バルブ101,荷電粒子源0や光学レンズ1などを制御するための制御信号を送受信する部位であり、さらには検出器3の出力信号をディジタル画像信号に変換して上位制御部36へ送信する。上位制御部36と下位制御部37ではアナログ回路やディジタル回路などが混在していてもよく、また上位制御部36と下位制御部37が一つに統一されていてもよい。なお、図1に示す制御系の構成は一例に過ぎず、制御ユニットやバルブ,真空排気ポンプあるいは通信用の配線などの変形例は、本実施例で意図する機能を満たす限り本実施例のSEMないし荷電粒子線装置の範疇に属する。
【0018】
電子照射部としての電子光学鏡筒2は内部に電子光学系を格納しており、電子光学系は、一次電子線を放出する荷電粒子源0,電子線の軌道を制御する各種光学レンズ1や電子線の軌道を偏向する各種偏向器などを含んで構成される。
【0019】
装置がSIMあるいはイオン顕微鏡である場合、電子光学鏡筒2と電子光学系も荷電粒子光学鏡筒,荷電粒子光学系となり、電子源はイオン源となる。各種光学レンズおよび各種偏向器は、静電レンズあるいは静電偏向器で構成される。イオンビームの場合、磁場型のレンズ・偏向器を使用すると質量分離が起きるためである。
【0020】
電子光学鏡筒2および第一の筐体7内部(厳密には、第一の筐体7と電子光学鏡筒2の表面により構成される閉空間)は、少なくとも装置の動作中は真空排気ポンプ4により真空排気され、圧力が真空状態に維持されるように構成されている。このため、第一の筐体7の電子光学鏡筒2に対する接合部には真空封止部材123が備えられ、第一の筐体7の下面の薄膜保持部支持体47に対する接合部には真空封止部材124が備えられている。一方、第二の筐体8は、内部を大気開放する試料出入口部81(あるいは開口面)を備えており、試料の観察中は、内部が常時大気開放状態に置かれる。
【0021】
なお以降の説明では、第二の筐体8および第一の筐体7の内部の空間を、それぞれ第二の空間12,第一の空間11と称する場合もある。第一の空間11は薄膜13を通過する前の一次電子線の通過経路を含み、第二の空間12は薄膜13を通過した後の一次電子線の通過経路を含む。
【0022】
また、第一の筐体7の下面は、必ずしも第一の筐体7と一体として設けられなくても良く、第二の筐体8の上面で構成されても良いし、第一の筐体7の下面と第二の筐体8の上面両方で構成されても良く、第一の筐体7および第二の筐体8とは別体として構成されても良い。要するに、少なくとも第一の筐体7若しくは第二の筐体8のいずれかの一部か、若しくは別体として構成され、第一の筐体7内と第二の筐体8内とを隔てる隔壁部であれば良い。
【0023】
なお、第一の筐体7と第二の筐体8とが隣接するように構成されても良いし、第一の筐体7に第二の筐体8が具備されるように構成されても良い。
【0024】
図1中、真空排気ポンプ4は1つで電子光学鏡筒2と第一の筐体7内部を真空排気しているが、2つ以上の真空ポンプを設けて電子光学鏡筒2と第一の筐体7を独立に排気してもよい。また、配管16は電子光学鏡筒2と第一の筐体の両者に接続されているが、別々の配管で接続してもよいし、これ以上またはこれ以下の配管数にすることができる。
【0025】
第一の筐体には、リークバルブ15が備えられ、装置停止時に第一の筐体7内部を大気開放するが、第一の筐体7での設置箇所は特に問わない。また、リークバルブ15は、二つ以上あってもよく、更には必ずしも設けなくともよい。
【0026】
薄膜13の厚みは好適には、20μm以下とすると良い。実用上SEMで利用される、加速電圧が数十kV程度の電子銃を使用する場合、電子線が透過する厚さは20μm程度であるためである。
【0027】
試料6は、試料台501上に設置され、第二の筐体8内に格納される。試料台501は各種の厚さのものが揃っており、観察対象としての試料6の厚みに応じて適切な試料台を選択して第二の筐体8内に格納する。この作業は人手により行うことが必要であるが、これにより、薄膜13と観察対象としての試料6の表面間の距離を適切な大きさに調整できる。
【0028】
また、第二の筐体8の側方には、試料出入口部81が備えられている。試料出入口部81が備えられていることにより、図1に図示されるように筐体からはみ出るような大型の試料であっても筐体内に載置することができる。また、第二の筐体8内は常時大気開放されているため、SEM観察中であっても試料出入口部81から筐体内部に手を挿入することが可能であり、試料台501を動かすことにより、SEM観察中に試料6の観察位置を変更することが可能である。
【0029】
次に、図1における薄膜13周辺部についてさらに詳述する。
【0030】
第一の筐体7の下面としての隔壁部に設けられた薄膜保持部を支持する薄膜保持部支持体47,薄膜を保持する薄膜保持部10、一次電子線および試料から得られ二次電子あるいは反射電子が透過する薄膜13により構成される。
【0031】
薄膜13は薄膜保持部10に密着しており、第一の空間11の気密性を保つように構成されている。
【0032】
薄膜13は、例えば、カーボン材,有機材,無機材,シリコンカーバイド,シリコン酸化膜,シリコン窒化膜,ベリリウムなどの軽元素膜,金属膜のいずれかで構成される。
【0033】
図1では、薄膜13は薄膜保持部10の下面全面を覆っているが、薄膜保持部10の開口部10aの第二の空間12より少し大きい程度であれば良く、要するに第一の空間11の気密性が保てるように構成されていれば良い。
【0034】
薄膜13は電子線が透過する必要があるため、電子線の透過能から透過限界となる厚みよりも薄いことが望ましい。一方で、薄膜13は大気圧と真空を仕切るための耐圧性を持つ必要があるため、面積は出来る限り小さい方がよい。
【0035】
一方で、上述したように試料6からの放出電子を検出するための検出器3は第一の空間11内で検出するように配置されているが、第一の空間11内での検出位置や検出器3の形状に関わらず、試料6からの放出電子を効率よく検出器3に収集するためには、薄膜の放出電子透過領域、すなわち、薄膜保持部10にある開口部11aの開口面積を大きくする必要がある。単に開口部11aの開口面積を大きくすると、上述したように薄膜保持部10の第二の空間12側に設けられた薄膜13の大気圧と真空を仕切るための耐圧性の強度が保てないという問題がある。そこで、薄膜保持部10にある開口部11aの第一の空間11側(荷電粒子照射部側)の開口面積が前記第二の空間12側(試料側)の開口面積よりも大きい開口部の開口面積を大きく構成している。これにより、試料6からの放出電子を効率よく検出することができ、かつ、薄膜13の強度が保てることになる。
【0036】
次に作用について説明する。
【0037】
電子源0から放出される一次電子線が、内部を真空状態に維持した第一の筐体7を通過し、開口部11aを一次荷電粒子線が通過し、開口部11aの試料6側を覆った薄膜13を一次荷電粒子線が透過あるいは通過し、一次荷電粒子線を第二の筐体8に格納された試料6に対して照射し、薄膜13を試料6からの二次電子若しくは反射電子が透過あるいは通過し、二次電子若しくは反射電子が薄膜13を通過し、第一の筐体7内で、二次電子若しくは反射電子を検出器3が検出することで試料を観察することができる。
【0038】
<第二の実施形態>
図2は、本発明の第二の実施形態として、荷電粒子線装置の一例としての走査型顕微鏡900(SEM装置ともいう)の全体構成図を示している。第一の実施形態と異なる点は、概ね第一の筐体7,第二の筐体8の形態と、SEM装置の外部空間とを分離するための閉塞部122,第二の空間12内のガスを放出するためのガスノズル100、ガスノズル100に接続されたガス配管に設けられ、ガスの放出を制御するためのガス制御バルブ101と、第二の空間12内のガスを放出するための排気口120と、試料6を保持及び位置駆動をするための試料ステージ5とを具備した装置を備える点であり、その他の構成は、第一の実施形態と同様であり、特に重複するパソコン35等の構成の図示は割愛してある。
【0039】
なお以降の説明では、第一の筐体7,第二の筐体8を、それぞれ第一の仕切り部,第二の仕切り部と称する場合もある。
【0040】
なお、第一の筐体7と第二の筐体8とが隣接するように構成されても良いし、第一の筐体7に第二の筐体8が具備されるように構成されても良い。さらに、第一の筐体7に第二の筐体8が内包、格納されるように構成されても良いし、第二の筐体8に第一の筐体7が内包,格納されるように構成されても良い。
【0041】
第一の筐体7は、第一の空間11とSEM装置900の外部空間901とを分離するように構成されている。
【0042】
第一の空間11と第二の空間12とを分離するための第二の筐体8(厳密には、仕切り部121と薄膜保持部支持体47と薄膜保持部10)と、第二の空間12とSEM装置の外部空間901とを分離するための閉塞部122(試料出入口を閉塞する閉塞部ともいう)と、第一の空間11とSEM装置900の外部空間901との間の気圧状態を分離するための封じ部123及び封じ部126と、第一の空間11と第二の空間12と間の気圧状態を分離するための封じ部124と、第二の空間12とSEM装置900の外部空間901と間の気圧状態を分離するための封じ部125と、が構成されている。なお以降の説明では、閉塞部122を第三の仕切り部と称する場合もある。
【0043】
図2では閉塞部122に試料ステージ5が接続されている。この試料ステージ5には、少なくとも試料6と薄膜保持部10との距離を変えることができる駆動機構が具備されている。
【0044】
本実施形態においては、第二の空間12筐体内に置換ガスを供給する機能を備えている。
【0045】
すなわち、ガスノズル100、ガスノズル100に接続されたガス配管に設けられ、ガスの放出を制御するためのガス制御バルブ101、ガス制御バルブ101の上流側に、例えば、ガスボンベ103へとつなげるためのジャンクション102などが具備されている。なお、図2中には、ガスボンベ103が搭載されているよう構成されているが、装置備え付きでもよいし装置使用者が後から取り付けるように構成されてもよい。
【0046】
電子光学鏡筒2の下端から放出された電子線は、高真空に維持された第一の空間11を通過して、薄膜13を通過し、更に、大気圧あるいは(第一の空間11よりも)低真空度に維持された第二の空間12に侵入する。ところが、真空度の低い空間では電子線は気体分子によって散乱されるため、平均自由行程は短くなる。つまり、薄膜13と試料6との距離が大きいと電子線あるいは電子線照射により発生する二次電子または反射電子が試料6まで届かなくなる。一方、電子線の散乱確率は、気体分子の質量数に比例する。従って、大気よりも質量数の軽いガス分子で第二の空間を置換すれば、電子線の散乱確率が低下し、電子線が試料6に到達できるようになる。そのため、好適には、第二の空間12に置換ガスを供給可能なように構成する。置換ガスの種類としては、窒素や水蒸気など、大気よりも軽いガスであれば画像S/Nの改善効果が見られるが、質量のより軽いヘリウムガスや水素ガスの方が、画像S/Nの改善効果が大きくなるという効果をもつ。
【0047】
水分が含まれた試料などを観察する場合は、試料から水分が蒸発することを防ぐために、軽元素ガスを放出する前の試料雰囲気を真空状態にすることは望ましくない。そのため、排気口120が装置900外部空間901である大気状態に繋がった状態で軽元素ガスを第二の空間12に供給することが望ましい。軽元素ガスをいれたあとに、排気口120を閉じると、効果的に軽元素ガスを第二の空間12に閉じ込めることができる。
【0048】
また、排気口120は1気圧以上になったら自動的にバルブが開く安全弁のように構成されてもよい。こうすることで、軽元素ガスを装置内部に導入したときに、装置内部が1気圧以上になると自動的に開き、窒素や酸素などの大気成分を装置外部に押しだして、軽元素ガスを装置内部に充満させることが可能となる。但し、第二の空間12に置換ガスを供給する機能は必須ではなく、ガスノズル100,ガス制御バルブ101,ジャンクション102,ガスボンベ103,排気口120を構成しなくてもよい。
【0049】
第二の空間12は、図示しない真空ポンプにて真空排気できるように構成されても良い。
【0050】
図2において、閉塞部122は図中左側方向に設けられているが、図中下側にあっても、図中右側に設けられてもよい。図2で示す構成は例示に過ぎず、ほんの一例である。
【0051】
次に薄膜13の周辺部の詳細図の一例を図3に示す。図3では閉塞部122や試料ステージ5などは省略して示されている。第一の空間11と第二の空間12との仕切り部として、仕切り部121と、薄膜保持部支持体47と、薄膜13とを備えた薄膜保持部10とで構成されている。好適には、薄膜保持部支持体47と薄膜保持部10とは、隔壁部として構成される。試料6と薄膜13が誤って接触し隔膜を破損させた場合に、隔膜を交換する必要があるが、本構成の場合、薄膜保持部10が取り付けられた薄膜保持部支持体47ごと交換することが可能となる。加工性や交換容易性等を考慮しなければ、薄膜保持部支持体47と薄膜保持部10は、一体として形成されても良い。
【0052】
図4に薄膜13を備えた薄膜保持部10の第一例を示す。図4に示すように、薄膜保持部10の開口部10aの内側側壁がテーパ状に形成されており、第一の空間11側の開口19の開口面積が第二の空間12側の開口20の開口面積よりも大きくなるように構成されている。薄膜13は、薄膜保持部10の第二の空間12側に設けられている。
【0053】
図5に薄膜13を備えた薄膜保持部10の第二例を示す。図5に示すように、薄膜保持部10の開口部10aの内側側壁に段差が形成されており、第一の空間11側の開口19の開口面積が第二の空間12側の開口20の開口面積よりも大きくなるように構成されている。薄膜13は、薄膜保持部10の第二の空間12側に設けられている。
【0054】
図6に薄膜13を備えた薄膜保持部10の第三例を示す。
【0055】
薄膜13の厚みは電子線を透過させるために非常に薄いために、耐久性の観点から薄膜保持部10の第二の空間12側にある開口20の開口面積は小さい必要がある。そのため、低倍でのSEM観察が難しい恐れがある。そこで、さらに好適には、図6のように薄膜保持部10の開口部10aの内側側壁に段差が形成されており、かつ、第二の空間12側の開口20を複数に区画する区画部を設けることで、さらに薄膜の耐久性を増し、また、観察できる面積を増やすことができる。図示しないが図6ではその開口部10aの内側側壁がテーパ状に構成されてもよい。いずれにせよ、第一の空間11側(図中上側)の開口19は、第二の空間12側(図中下側)の開口20の一つの開口20より大きくすることによって、試料6からの放出電子を効率よく検出器3に集めることが可能となる。
【0056】
なお、上述した図4〜図6に示す第一例〜第三例では、開口部10aの形状を四角形であるように図示しているが四角形でなく、例えば、丸形などどのような形でもかまわない。
【0057】
図3に示すように、薄膜保持部10と薄膜保持部支持体47とは固定材17にて固定されている。この固定材17により第一の空間11の気密性を保つか、薄膜保持部支持体47の図中下面と薄膜保持部10の図中上面とを十分平坦することによって、第一の空間11の気密性を保つようにしてもよい。この場合、固定材17は必ずしも設ける必要はない。
【0058】
薄膜保持部支持体47と仕切り部121との間はOリングやパッキンなどの真空封止部材124にて第一の空間11の気密性が保たれている。固定材17は、導電性や半導電性である接着剤などを用いてもよい。また、図示しないが、金属板などで図中横方向から押さえつけてもよい。仕切り部121と、薄膜保持部支持体47とは、図示しないがネジやボルトなどの固定材にて固定されてもよい。第一の空間11は真空排気されているので、その圧力で薄膜保持部支持体47を仕切り部121に吸い付けることも可能であるので、前述のネジやボルトなどの固定材がなくてもよい。
【0059】
薄膜13は薄膜保持部10の図中下面に取り付けられている必要がある。こうすることで、試料6と薄膜13との距離は出来る限り小さくすることが可能となる。
【0060】
例えば、電子線が透過する薄膜13が絶縁体の場合、試料6からの二次電子や反射電子が薄膜13に当たるので薄膜13が帯電する。この帯電により電子線の走査が乱されるため、その結果、試料6の画像観察は実際のところ、ほとんどできなくなるという特許文献1〜特許文献3には全く考慮されていない問題がある。この問題を解消するために、仕切り部121と薄膜保持部支持体47は導電性または半導電性部材で構成される。あるいは、導電性または半導電性部材が表面上に塗布されているだけでもよい。また、薄膜13の種類に関わらず、薄膜保持部10は金属または半導体にする必要がある。あるいは、導電性または半導電性部材が表面上に塗布されているだけでもよい。すなわち薄膜保持部10は少なくとも表面の一部または全部が導電性または半導電性部材で形成されている。帯電除去のために、導電性または半導電性部材で形成された薄膜保持部10の部位は薄膜13および第二の仕切り部121と接触させる。これにより、帯電除去用パス18を通って、薄膜13にたまった電荷を逃がすことが可能となる。つまり、図3のような構成にすることにより、薄膜保持部10を接地することが可能となり、薄膜保持部10と薄膜13と、薄膜保持部支持体47等その他の第一の筐体7若しくは/及び第二の筐体8のいずれかの一部とが直接的または間接的に電気的に接触させることができ、薄膜13の帯電を防止することができる。
【0061】
図3に示すように薄膜保持部支持体47は固定材17にて固定されている。例えば、電子線が薄膜13を経由して大気圧空間に飛び出すと、電子線が大気により散乱を受ける。その結果、試料6に電子線が到達する時には、電子線ビーム径は非常に大きくなってしまう。そのため、電子線ビーム径を所定の大きさに維持したまま試料6に電子線を到達させるためには、試料6と薄膜13との距離を極力小さくしなければいけないといった特許文献1〜特許文献3には全く記載も示唆もされていない問題があるが、もし、固定材17が薄膜13より第二の空間12側に突出していると、試料6を薄膜13へ近づけたときに、試料6と固定材17が接触することも考えられる。そこで、好適には、固定材17を薄膜13下面よりも第一の空間11側に具備させると良い。すなわち、固定材17と試料6との間の距離が薄膜13と試料6との間の距離より大きくなるように固定材17が構成されると良い。これにより、試料6と薄膜13間の距離を出来る限り小さくすることが可能となる。
【0062】
また、図7に示すように、固定材17は薄膜保持部10と薄膜保持部支持体47との間に具備されるように構成されてもよい。前述の通り、薄膜保持部10にたまる電荷を逃がす必要があるので、図7に示す固定材17は導電性または半導電性の材質で構成され、第一の空間11と第二の空間12との間の気密性を保つことが可能なように構成されている。こうすることで、薄膜13と試料6との距離をできる限り小さくすることが可能となる。
【0063】
また、薄膜保持部10の外周端に少なくとも一つ以上の位置調整部としての段差部22を備え、該段差を利用し前記薄膜保持部を固定する変形例を図8に示す。図8に示すように、薄膜保持部10の外側側壁に段差部22を形成し、該段差部22と薄膜保持部支持体47との間に固定材を具備するよう構成されている。なお、固定材17は金属板でもよいし、テープや接着材であってもよい。図8では固定材17と薄膜保持部支持体47とを固定する固定用ネジ21を図示しているが、形状はどのようなものでもかまわないし、あってもなくてもよい。但し、好適には、固定材17や固定用ネジ21は薄膜13の下面よりも第一の空間11側にあると良い。この場合、薄膜保持部10と薄膜保持部支持体47との接触部とを密着させる、例えば、薄膜保持部10の図中上面と、薄膜保持部支持体47の図中下面が十分平坦にすることによって、第一の空間11の気密性を保つことが可能である。また、図示しないが、段差部22は段差が一つではなく、複数あっても良く、また、薄膜保持部10の下面などにあってもよく、位置は問わない。この構成の場合、図7と比較し簡単に薄膜保持部10の交換をすることが可能となる。
【0064】
<第三の実施形態>
次に、本発明の第三の実施形態として、試料が傾いた状態で顕微鏡観察をする形態に関して図9を用いて説明する。
【0065】
本実施形態が、第一の実施形態、第二の実施形態と異なる点は、傾斜した試料台25の上に試料6をのせ、且つ、傾斜部を持つ隔壁部としての薄膜保持部支持体27に薄膜保持部10を取り付けるように構成された点である。その他の点は同様である。
【0066】
上述の通り、試料6と薄膜13との距離は出来る限り小さいことが望ましいので、試料6を単純に傾斜することは難しい。そこで、図9に示すように試料を載せるため上面が傾斜した試料台25の上に試料6をのせ、且つ、試料台25の試料載置面と、薄膜13の試料載置面側の面とが平行となるように傾斜部を持つ薄膜保持部支持体27に薄膜保持部10を取り付ける。このような構成の場合、傾斜した試料6に電子線を照射させることができるので、傾斜された試料6の画像を取得することができる。また、検出器3以外の検出器26がある場合には、図9に示すように、検出器26に効率よく信号が入射されるようにすることも可能である。検出器26としては、X線検出器やフォトン検出器などで構成されても良い。
【0067】
<第四の実施形態>
次に、本発明の第四の実施形態として、第一の空間11が真空排気されていることを利用し、薄膜保持部10を保持する実施形態を、図10を用いて説明する。
【0068】
本実施形態が、第一の実施形態,第二の実施形態と異なる点は、固定材17を設けることに代えて、第一の空間11が真空排気されていることを利用し、薄膜保持部10を保持する点であり、その他の点は同様である。図10に示すように、第一の空間11が真空排気されていることを利用し、図10のよう固定材17を使わないで、薄膜保持部支持体47に薄膜保持部10を具備させることも可能である。この場合、第二の実施形態等にて説明したように、薄膜保持部10の図中上面と、薄膜保持部支持体47の図中下面とを十分平坦にすることによって、第一の空間11の気密を保つことが可能となる。取付け方法に関しては、例えば、図11で示すように、第一の空間11と第二の空間12の気圧状態が同じ状態の時に、薄膜保持部10及び薄膜保持部支持体47を、薄膜13の開口部10aに対向する位置がくり貫かれた台28にのせ、その後、仕切り部121と薄膜保持部支持体47とを接触させ、第一の空間11の真空排気を行うと、薄膜保持部10及び薄膜保持部支持体47が真空吸着するので、図10のような構成にすることができる。なお、台28は試料ステージ5を上に載せてもよいし、図示しないが別の駆動機構上にのせてもよい。こうすることで、簡単に薄膜保持部10の交換をすることが可能となる。図11では、薄膜保持部支持体47は予め仕切り部121に取り付けられていてもよい。また、台28を使用する形態として、固定材17があってもよい。薄膜13の開口部10aに対向する位置がくり貫かれた台28の形状は一例に過ぎず、薄膜13の開口部10aに対向する位置の中心はくり貫かれているのではなく、薄膜13の開口部10aに対向する位置を退避可能とするように段差を形成するようにしてもよい。また、図11の台28の上面や側面等にいくつかの段差を形成するように構成されてもよい。
【0069】
<第五の実施形態>
本発明の第五の実施形態を、図12を用いて説明する。本実施形態が第一の実施形態等と異なる点は、図中横方向に電子光学鏡筒2と薄膜13のとの相対位置を移動することができる段差部22と、若しくは/乃至、図中紙面方向に薄膜13位置を移動することができる位置調整部が設けられるように構成されることであり、その他の点は同様である。
【0070】
単にSEM鏡筒下の試料側に薄膜を貼り付けただけでは、SEM光学系の軸と薄膜の中心がまったく合わないという特許文献1〜特許文献3には記載も示唆もない問題もある。
【0071】
薄膜13の厚みは電子線を透過させるために非常に薄いために、薄膜保持部10の第二の空間12側にある開口20は非常に小さい。一方で、薄膜13を含む薄膜保持部10及び薄膜保持部支持体47の取り付けを行った際に、光軸24と薄膜13の中心がずれて設置されることが考えられる。そのため、薄膜13などを取り付けた後で、薄膜13及び薄膜保持部10を電子顕微鏡にて観察しながら薄膜13の位置を調整することが必要不可欠となる。
【0072】
図12では、図中横方向に電子光学鏡筒2と薄膜13のとの相対位置を移動することができる段差部22と、若しくは/乃至、図示されていないが、図中紙面方向に薄膜13位置を移動することができる位置調整部を設けることにより、光軸24と薄膜13との中心をそろえることが可能である。また、薄膜保持部10の位置を変更するための位置調整機構を備えることにより、画像を観察しながら薄膜13位置を変更することが可能となる。
【0073】
尚、図12では段差部22は装置ユーザがアクセスしやすい閉塞部122に具備されている。但し、段差部22を自動駆動するモータなどで駆動させるのであれば、閉塞部122に具備していなくてもよい。また、薄膜保持部支持体47の位置を直接変更することによって位置調整を行っているが、別部品を用いて間接的に位置変更させてもよい。
【0074】
<第六の実施形態>
次に、本発明の第五の実施形態にて説明した位置調整部を備える形態の応用例として、本発明の第六の実施形態を、図13を用いて説明する。本実施形態では、第五の実施形態にて示した位置調整部を備える構成として、装置構成が図3,図7,図8,図9に示した構成にも適用可能である。図13は、薄膜保持部10の取り付け及び薄膜13の位置調整手順示すフローチャート図である。
【0075】
図13に示すように第1のステップ70では、薄膜保持部支持体47に薄膜13が付いた薄膜保持部10を固定材17を用いて取り付ける。薄膜13が試料6側になるようにする。
【0076】
第2のステップ71では、第一の空間11と第二の空間12とを仕切るための一部の部材である第二の仕切り部121に、薄膜保持部支持体47に薄膜13が付いた薄膜保持部10を接触させ、第一の空間11の真空排気を行う。
【0077】
第3のステップ72では、電子線放出を開始する。
【0078】
第4のステップ73では、電子顕微鏡画像を表示させて、薄膜13位置の画像上の位置を確認する。
【0079】
第5のステップ74では、電子顕微鏡画像にて薄膜13位置を確認しながら、段差部22にて薄膜13位置を画像中心に持ってくるよう調整する。
【0080】
段差部22を自動駆動するモータなどで駆動させるので、あれば、図13の前記第3のステップ72から第5のステップ74は自動化することも可能である。
【0081】
<第七の実施形態>
次に、本発明の第四の実施形態にて図11を用いて説明した台28を利用する方法につき、本発明の第五の実施形態にて説明した位置調整部を備える形態の応用例として、本発明の第七の実施形態を、図14に示すフローチャート図を用いて説明する。
【0082】
次に、図11で示した薄膜保持部10をのせる台28を利用して、薄膜保持部10等を取り付けする方法及び位置調整手順に関して図14を用いて説明する。以下では薄膜保持部10をのせる台28は試料6を載せるための試料ステージ5に搭載されることを想定している。
【0083】
第1のステップ75では、真ん中がくり貫かれた台28に、薄膜保持部10,薄膜保持部支持体47を載せる。このとき、薄膜保持部10の中心と薄膜保持部支持体47の中心はあわせておく。予め薄膜保持部支持体47が仕切り部121に取り付けられている時は、薄膜保持部10だけを台28にのせる。
【0084】
第2のステップ76では、薄膜保持部10がのった台28を試料ステージ5に搭載する。
【0085】
第3のステップ77では、薄膜保持部10がのった台28を図11のような位置、つまり電子線の光軸23と薄膜13の中心がある程度合う位置に試料ステージ5を移動させる。
【0086】
第4のステップ78では、薄膜保持部10がのった台28を図11の図中上方向に移動させて、第一の空間11と第二の空間12とを仕切る。
【0087】
第5のステップ71では、第一の空間11の真空排気を行うことにより、薄膜保持部10が真空吸着により、第二の仕切り部と一体となる。
【0088】
第6のステップ72では、電子線放出を開始する。
【0089】
第7のステップ73では、電子顕微鏡画像を表示させて、薄膜13位置の画像上の位置を確認する。
【0090】
第8のステップ74では、電子顕微鏡画像にて薄膜13の位置を確認しながら、段差部22にて薄膜13位置を画像中心に持ってくることが可能となる。
【0091】
尚、ここでは、第一の空間11と第二の空間12は大気状態となっている状態で、薄膜保持部10を移動させて、第一の空間11と第二の空間12を仕切る方法について述べたが、第一の空間11と第二の空間12とが共に真空状態である時に、薄膜保持部10を移動させて、第一の空間11と第二の空間12を仕切った後、第二の空間12を大気圧状態にしてもよい。
【符号の説明】
【0092】
0 荷電粒子源
1 光学レンズ
2 電子光学鏡筒
3 検出器
4 真空排気ポンプ
5 試料ステージ
6 試料
7 第一の筐体
8 第二の筐体
10 薄膜保持部
11 第一の空間
12 第二の空間
13 薄膜
17 固定材
18 帯電除去用パス
19 第一の空間側の開口
20 第二の空間側の開口
22 段差部
23 光軸
70,71,72,73,74,75,76,77,78 ステップ
120 排気口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子源から放出される一次荷電粒子線を試料上に照射する荷電粒子照射部と、
前記荷電粒子照射部を支持し、内部を真空状態に維持可能に構成される第一の筐体と、
該第一の筐体に具備され前記試料を格納する第二の筐体と、
前記第一の筐体内を排気する排気装置と、
前記第一の筐体内で、前記照射により得られる荷電粒子線を検出する検出器と、
少なくとも前記第一の筐体若しくは前記第二の筐体のいずれかの一部か、若しくは別体として構成され、前記第一の筐体内と前記第二の筐体内との間の少なくとも一部を隔てる隔壁部と、
該隔壁部に設けられ、前記荷電粒子照射部側の開口面積が前記試料側の開口面積よりも大きい開口部と、
該開口部の前記試料側を覆い、前記一次荷電粒子線及び前記荷電粒子線を透過あるいは通過させる薄膜と、
を備える荷電粒子線装置。
【請求項2】
前記隔壁部は、少なくとも前記第一の筐体若しくは前記第二の筐体のいずれかの一部と電気的に連通している請求項1の荷電粒子線装置。
【請求項3】
前記開口部の内側側壁がテーパ状に形成されている請求項1の荷電粒子線装置。
【請求項4】
前記開口部の内側側壁に段差が形成されている請求項1の荷電粒子線装置。
【請求項5】
前記開口部の前記試料側を複数に区画する区画部が形成されている請求項1の荷電粒子線装置。
【請求項6】
前記隔壁部は、少なくとも前記第一の筐体若しくは前記第二の筐体のいずれかの一部と前記薄膜とを電気的に連通させている請求項2の荷電粒子線装置。
【請求項7】
前記隔壁部は少なくともその一部が前記薄膜を保持する薄膜保持部で構成され、該薄膜保持部の少なくとも表面の一部または全部が導電性または半導電性の部材で構成されている請求項1又は請求項2の荷電粒子線装置。
【請求項8】
前記隔壁部は、前記薄膜を保持する薄膜保持部と、該薄膜保持部を固定する固定材とで少なくとも構成されており、
前記固定材と前記試料との間の距離が前記薄膜と前記試料との間の距離より大きくなるように前記固定材が構成される請求項1の荷電粒子線装置。
【請求項9】
前記隔壁部は、前記薄膜を保持する薄膜保持部と、該薄膜保持部を支持する薄膜保持部支持体とで少なくとも構成されており、前記薄膜保持部と前記薄膜保持部支持体との接触部とが密着している請求項1の荷電粒子線装置。
【請求項10】
前記隔壁部は、前記薄膜を保持する薄膜保持部が少なくとも構成されており、該薄膜保持部の外周端に少なくとも一つ以上の段差部を備え、該段差部を利用し前記薄膜保持部を固定する請求項1の荷電粒子線装置。
【請求項11】
前記隔壁部を前記第二の筐体側から前記第一の筐体側に移動させる移動機構を備える請求項1の荷電粒子線装置。
【請求項12】
前記移動機構が前記試料を載せるための試料ステージである請求項11の荷電粒子線装置。
【請求項13】
前記薄膜の位置を調整するための位置調整機構を備える請求項1の荷電粒子線装置。
【請求項14】
前記位置調整機構が前記第二の筐体の試料出入口を閉塞する閉塞部に具備されている請求項13の荷電粒子線装置。
【請求項15】
前記試料を載せるため上面が傾斜するように構成された試料台と、該試料台の試料載置面と前記薄膜の該試料載置面側の面が平行となるように前記隔壁部には傾斜部が備えられる請求項1の荷電粒子線装置。
【請求項16】
荷電粒子照射部の荷電粒子源から放出される一次荷電粒子線を、内部を真空状態に維持した第一の筐体から該第一の筐体に具備された第二の筐体に格納された試料に対し照射する試料の観察方法であって、
少なくとも前記第一の筐体若しくは前記第二の筐体のいずれかの一部か、若しくは別体として構成され、前記第一の筐体内と前記第二の筐体内との間の少なくとも一部を隔てる隔壁部に設けられ、前記荷電粒子照射部側の開口面積が前記試料側の開口面積よりも大きい開口部を前記一次荷電粒子線が通過し、
前記開口部の前記試料側を覆った薄膜を前記一次荷電粒子線が透過あるいは通過し、前記試料に対し一次荷電粒子線を照射し、前記薄膜を前記試料からの荷電粒子線が透過あるいは通過し、前記荷電粒子線が前記開口部を通過し、前記第一の筐体内で、前記荷電粒子線を検出器が検出する試料の検査若しくは試料の観察方法。
【請求項17】
荷電粒子源から放出される一次荷電粒子線を試料上に照射する荷電粒子照射部と、
前記荷電粒子照射部を支持し、内部を真空状態に維持可能に構成される第一の筐体と、
該第一の筐体に具備され前記試料を格納する第二の筐体と、
前記第一の筐体内を排気する排気装置と、
前記第一の筐体内で、前記照射により得られる荷電粒子線を検出する検出器と、
少なくとも前記第一の筐体若しくは前記第二の筐体のいずれかの一部か、若しくは別体として構成され、前記第一の筐体内と前記第二の筐体内との間の少なくとも一部を隔てる隔壁部と、
該隔壁部に設けられ、前記荷電粒子照射部側の開口面積が前記試料側の開口面積よりも大きい開口部と、
該開口部の前記試料側を覆い、前記一次荷電粒子線及び前記荷電粒子線を透過あるいは通過させる薄膜と、を備える荷電粒子線装置の調整方法であって、
前記第一の筐体内と前記第二の筐体内の気圧状態が同じ状態で、
前記隔壁部を移動させて、前記第一の筐体と第二の筐体とを仕切るステップと、
第二の筐体内よりも第一の筐体内の圧力を小さくするステップと、
荷電粒子を放出させるステップと、
荷電粒子を少なくとも前記薄膜に照射するステップと、
前記隔壁部の位置を移動させるステップを、有する荷電粒子線装置の調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−69443(P2013−69443A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205499(P2011−205499)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】