説明

菓子成形機

【課題】厚みの薄い扁平な菓子製品を、所望の形状で良好に型成形する。
【解決手段】塑性変形可能な塊状の菓子材料が一端開口より内部へ供給される円筒状の案内型61と、当該案内型61の最奥端に接して位置させられ、菓子製品の厚みにほぼ等しい深さで当該菓子製品の外形に倣った内周形状とされた成形型62と、案内型61の内径にほぼ等しい外径を有して当該案内型61内に進入させられるピストン部材5と、当該ピストン部材5をその軸周りに回転させる回転駆動モータ21とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は菓子成形機に関し、特にせんべい等の扁平な菓子製品の成形に好適な菓子成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
せんべい等の菓子製品は、蒸したもち米等の菓子材料を扁平なシート状に延ばし、四角形のせんべい等を製造する場合には、シート状の菓子材料に縦横の切り溝を形成して焼成することにより切り溝に沿って四角形に分離させ、円形や異形のせんべい等を製造する場合には、シート状の菓子材料を所定形状に型抜きして、型抜きしたものを焼成することによって菓子製品を得ている。
【0003】
なお、特許文献1には、上側形成用型枠と下側形成用型枠よりなる押し型を使用し、下側形成用型枠内に所定量の米飯を収容して、当該型枠内に上側形成用型枠を嵌入することによって米飯を押圧しておにぎりを成形する装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−312696
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、菓子材料をシート状に延ばした後に切り溝を形成しあるいは型抜きする上記従来の方法では、焼成された菓子製品の外周が切断面になるためにこの部分で米粒が切れて、見栄えが悪いとともに外周が欠けやすいという問題があった。また、円形や異形の菓子製品を型抜きする場合には余材を生じて材料の無駄が多いという問題もあった。そこで、特許文献1に示されるように菓子材料を押圧して型成形することが考えられるが、せんべいのような厚みが数mmの扁平な菓子製品を従来の成形型で製造しようとしても所望の形状を得ることが困難であった。
【0006】
そこで本発明はこのような課題を解決するもので、厚みの薄い扁平な菓子製品を、所望の形状で良好に型成形することが可能な菓子成形機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本第1発明では、塑性変形可能な塊状の菓子材料(CM)が一端開口より内部へ供給される円筒状の案内型(61)と、当該案内型(61)の最奥端に接して位置させられ、菓子製品の厚みにほぼ等しい深さで当該菓子製品の外形に倣った内周形状とした成形型(62)と、前記案内型(61)の内径にほぼ等しい外径を有して当該案内型(61)内に進入させられるピストン部材(5)と、当該ピストン部材(5)をその軸周りに回転させる回転駆動機構(21)とを備える。
【0008】
本第1発明において、ピストン部材がその軸回りに回転しつつ案内型内へ進入させられると、進入量に応じて菓子材料は成形型内で徐々に押し拡げられ、ピストン部材が案内型の最奥端に至ると、菓子材料は成形型内に満遍なく充満させられて成形型の内周形状に倣った形状の菓子製品に成形される。本第1発明ではピストン部材が回転しつつ案内型内へ進入させられるから、菓子材料が成形型内で効果的に押し拡げられて当該成形型内に隙無く充満させられる。これにより、特に米飯のような粘着性のある菓子材料を扁平な菓子製品、例えばせんべい等に所望の形状で良好に成形することができる。
【0009】
本第2発明では、前記ピストン部材(5)はシャフト部(51)とその一端に設けたヘッド部(52)から構成され、前記シャフト部(51)が昇降可能な保持部材(41)に回転可能に保持されて前記回転駆動機構(21)によって回転させられており、前記ヘッド部(52)が前記案内型(61)内に進入させられるようになっている。
【0010】
本第3発明では、前記ヘッド部(52)は弾性力で前記シャフト部(51)の一端から進出させられており、一定以上の押圧力で後退させられるようになっている。
【0011】
本第3発明においては、案内型内に誤って2個の菓子材料が供給される等によって、当該案内型内に進入したヘッド部に過度の押圧力が印加された場合には当該ヘッド部が弾性力に抗して後退し、無理な進入が防止される。これは特にピストン部材を保持部材に複数設けた場合に有利であり、一のピストン部材の案内型内への進入が阻止されている場合にも、他のピストン部材は案内型に進入して菓子材料の成形が続行される。
【0012】
上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明の菓子成形機によれば、厚みの薄い扁平な菓子製品を、所望の形状で良好に型成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】菓子成形機の全体正面図である。
【図2】ピストン部材の縦断面図である。
【図3】継手体の平面図である。
【図4】先端体の平面図である。
【図5】下型の全体平面図である。
【図6】図5のVI−VI線に沿った拡大断面図である。
【図7】菓子成形機の要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1には菓子成形機の正面図を示す。菓子成形機はベルトコンベアVC上にこれを跨ぐように設置された門型の架台1を備えており、その横梁11上には回転用の駆動モータ21と昇降用の駆動シリンダ22が設けられている。駆動モータ21に付設された減速機23の出力軸231は架台1の横梁11を下方へ貫通し、当該出力軸231には歯車31が装着されている。歯車31は所定高さの円柱状の歯車体32に噛合している。歯車体32にはその外周全周に歯形が形成されており、歯形の歯溝は歯車体32の高さ方向(上下方向)へ平行に延びている。
【0016】
駆動シリンダ22のロッド221は架台1の横梁11を下方へ貫通して、ロッド221の先端は、水平に延びる保持部材41の中央に固定されている。保持部材41の両端は、架台1の左右の縦梁12,13に上下動可能に装着されたスライダ14(一方のみ示す)に固定されており、これによって保持部材41は水平姿勢を維持した状態で上下動可能である。保持部材41にはその長手方向、すなわちベルトコンベアVCの幅方向へ等間隔で複数(本実施形態では7個)のピストン部材5が垂設されている。各ピストン部材5はシャフト部51とヘッド部52より構成されており、シャフト部51は保持部材41に回転可能な状態で保持されているとともに、シャフト部51の上端には歯車33が装着されている。
【0017】
各ピストン部材5の上端の歯車33は隣接するもの同士が互いに噛合させられているとともに、そのうち一つの歯車33(本実施形態では正面向かって左から2番目)は上記歯車体32の外周歯形に噛合している。これにより、駆動モータ21の回転力が歯車31から歯車体32を経て歯車33へ伝達されて各ピストン部材5がその軸周りに回転させられる。この状態で、駆動シリンダ22によって保持部材41が図1に示す上端位置から下降させられると、各ピストン部材5は保持部材41と一体に下降させられる。この間、下降する歯車33は歯車体32の歯形と噛合した状態を保つから、各ピストン部材5は回転しつつ下降することになる。
【0018】
図2には、ピストン部材5の拡大断面図を示す。ピストン部材5のシャフト部51はベアリング部材42によって保持部材41に回転可能に保持されており、シャフト部51の下端にヘッド部52が装着されている。ヘッド部52は円筒状の鞘体53、鞘体53の下端開口を閉鎖する蓋体54、蓋体54に螺着された継手体55、および継手体55に結合された先端体56より構成されている。
【0019】
シャフト部51の下端は鞘体53の上半筒内に挿入されており、その先端の大径部511が鞘体53の内周段付き部531に当接して抜けが防止されている。また、鞘体53は、シャフト部51の下端外周の一箇所に突設されたキー部512に凹溝が嵌合させられて、シャフト部51と一体に回転させられるとともに軸方向へは相対移動可能となっている。蓋体54は鞘体53の下側開口にボルト541で固着されており、その板面中心には、内周にネジ溝を形成したハブ部542が突出形成されている。そして、ハブ部542の外周とシャフト部51の大径部511との間の、鞘体53の内空間にコイル状のバネ部材57が伸張状態で配設されている。これにより、鞘体53はバネ部材57の弾性力で下方へ進出させられるとともに、一定以上の押圧力を受けると鞘体53はバネ部材57を圧縮変形させつつシャフト部51に対し一定範囲で相対的に後退上昇可能となっている。
【0020】
継手体55は図3に示すように円板体で、その板面中心には結合部551が突出形成されている。結合部551には外周にネジ溝が形成されて、このネジ溝をハブ部542内周のネジ溝内に進入させて継手体55が蓋体54に結合されている。継手体55にはこれと同径の厚肉円板状の先端体56(図4)が、ボルト552によって継手体55に結合されている。先端体56はテフロン(デュポン社登録商標)等のフッ素樹脂製で、これと同径の継手体55と一体に準備されて、後述する案内型61(図1)の内径に合わせて継手体55と共に適宜交換される。
【0021】
図1において、ベルトコンベアVCの搬送ベルトVC1の上面に接するようにこれを横切って下型6が配設されている。下型6はテフロン(デュポン社登録商標)等のフッ素樹脂製の厚肉の長尺板体で、その板面には長手方向へ図5に示すように上記ピストン部材5に対応させて複数(本実施形態では7つ)の案内型61が形成されている。各案内型61は円形の筒状に成形されており(図6)、その内径は、ピストン部材5の先端体56をその周囲に小間隙を成して受け入れる大きさとしてある。また、案内型61の上側開口は一方の周縁が外方へ緩い傾斜面をなすように切除されて、後述する菓子材料を受け入れるための受入れ面612となっている。
【0022】
下型6内には案内型61の最奥端である下端開口611(図6)に接して成形型62が一体に形成されている。成形型62は本実施例では平面視で案内型61の外周に接する一定幅の周壁621に囲まれた正四角形の型空間を有し、周壁621の正四角の内周形状は成形される菓子製品(本実施形態ではせんべい)の外形とほぼ同一(例えば49mm角)としてある。また周壁621内周の高さ(型空間の深さ)は菓子製品の厚みとほぼ同一(例えば6mm)にしてある。このような下型6は、その一方の側縁に突設した取付片63に一定間隔で設けた取付穴631によって昇降ビーム71(図1)に取り付けられている。
【0023】
昇降ビーム71は搬送ベルトVC1の上方を横切るように配設されており、その両端(図1に一方のみ示す)には昇降用駆動シリンダ72のロッド721の先端が結合されている。これにより、下型6はその成形型62が搬送ベルトVC1の上面に接した図1に示す位置から上方位置へ引き上げ可能である。なお、昇降ビーム71には長手方向へ間隔をおいて仕切板711が複数設けられて(図1)隣り合う案内型61の上側開口の間を仕切っている。
【0024】
このような構造の菓子成形機に対し、図7に示すように、上流側の材料供給コンベアVC2によって、米飯を蒸して略立方体形に成形された塊状の菓子材料CMが供給されると、これら菓子材料CMは各案内型61に対応して設けたシュートSHを経て案内型61内へ投入される。投入された菓子材料CMは、成形型62(図6)の下側開口に接してこれを閉鎖する搬送ベルトVC1の上面に落下して、成形型62および案内型61の型内に位置させられる。なお、菓子材料CNの容積は成形型62の内容積よりもやや大きい程度である。
【0025】
この状態で、保持部材41が下降させられて、ピストン部材5が回転させられつつその先端体56が案内型61内へ下降進入させられると、先端体56が案内型61の下側開口へ至る間に菓子材料CMは成形型62内で徐々に押し拡げられ、先端体56が案内型61の下側開口に到達すると、菓子材料CMは正四角形状の成形型62内に満遍なく充満して成形型62の内空間に倣った扁平な正四角形に成形される。
【0026】
この際、いずれかの案内型61内に誤って2個の菓子材料CMが供給される等によって、当該案内型61内に進入した先端体56に過度の押圧力が印加された場合には、保持部材41が下降しても、バネ部材57が収縮変形して先端体56が後退し、無理な進入が防止される。そしてこの間、他のピストン部材5の先端体56は案内型61内に進入して菓子材料CMの成形が続行される。
【0027】
成形完了後には、ピストン部材5を上昇後退させ、さらに下型6を上昇させると、正四角形に成形された菓子製品のみが搬送ベルトVC1上に残るから、搬送ベルトVC1を移動させることによって菓子製品は後段の焼成機等に送られる。
【0028】
なお、上記実施形態において、成形型62の型形状は四角形に限られず、円形、三角形、あるいは各種異形の形状とすることができる。
【符号の説明】
【0029】
21…駆動モータ(回転駆動機構)、22…駆動シリンダ、5…ピストン部材、51…シャフト部、52…ヘッド部、6…下型、61…案内型、62…成形型、CM…菓子材料。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塑性変形可能な塊状の菓子材料が一端開口より内部へ供給される円筒状の案内型と、当該案内型の最奥端に接して位置させられ、菓子製品の厚みにほぼ等しい深さで当該菓子製品の外形に倣った内周形状とした成形型と、前記案内型の内径にほぼ等しい外径を有して当該案内型内に進入させられるピストン部材と、当該ピストン部材をその軸周りに回転させる回転駆動機構とを備える菓子成形機。
【請求項2】
前記ピストン部材はシャフト部とその一端に設けたヘッド部から構成され、前記シャフト部が昇降可能な保持部材に回転可能に保持されて前記回転駆動機構によって回転させられており、前記ヘッド部が前記案内型内に進入させられるようになっている請求項1に記載の菓子成形機。
【請求項3】
前記ヘッド部は弾性力で前記シャフト部の一端から進出させられており、一定以上の押圧力で後退させられるようになっている請求項2に記載の菓子成形機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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