菓子装飾製造装置、及び菓子装飾製造システム
【課題】本発明は、所望の固形食材A上に熱可塑性食材Bからなる描画を供給可能な流体塗布装置を有する菓子装飾製造機を提供する。
【解決手段】本発明の菓子装飾製造装置は、前記熱可塑性食材Bはチョコレートまたは糖蜜であり、前記流体塗布装置から吐出され固形食材A上に描画される前記熱可塑性食材Bの供給温度を30℃〜50℃の間に制御可能な温度制御装置を、備える。
【解決手段】本発明の菓子装飾製造装置は、前記熱可塑性食材Bはチョコレートまたは糖蜜であり、前記流体塗布装置から吐出され固形食材A上に描画される前記熱可塑性食材Bの供給温度を30℃〜50℃の間に制御可能な温度制御装置を、備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カステラ等の所望の固形食材の表面にチョコレート等の熱可塑性食材からなる文字や模様等の描画を供給可能な流体塗布装置を有する菓子装飾製造装置、及び当該菓子装飾製造装置を用いた菓子装飾製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カステラやビスケット等の固形食材をユーザに提供する際に販促目的のために食材表面に文字や模様等の描画(以下、単に「描画」とも称する)を提供するサービスが存在する。例えばビスケットにチョコレートや糖蜜等(以下、「チョコレート等」とも称する)でユーザの似顔絵をあしらったり、結婚式の引き出物に寿の文字やお祝いメッセージを印字したりするようなサービスである。
【0003】
このようなサービスは概ね大きく2つの方法が考えられてきた。まず第一は菓子職人が固形食材に手作業で描画を提供する方法がある。この方法の場合、菓子職人が経験則による温度管理の下、種々のデザインの描画を固形食材の表面又は側面にあしらうことができる点で有利である。また、描画に用いるチョコレート等の塗布量も菓子職人が調整することができ、立体的な描画を食材上に提供することも可能である。
【0004】
しかしながら、菓子職人による手作業での描画提供は菓子職人個々の技量差が製品に直接反映され、製品間のばらつきが大きい。また、手作業ゆえにコストの点、製作スピードの点でも問題が多く不利である。
【0005】
第二の方法としては、固形食材上に描画を印刷する方法も考えられる。例えば、所謂スクリーン印刷を食品印刷目的で使用する方法であり、迅速に同一描画を提供できる点で有利である(例えば、スクリーン印刷を固形食材に施した技術例として特許文献1を参照)。しかしながら、このスクリーン印刷方式を採用した場合、あらかじめ決められた文字の型を作る必要があり、任意の文字や模様等の描画を印刷することはできないという欠点がある。
【0006】
また、スクリーン印刷以外にインクジェットプリンタの印字技術をそのまま食材への印字として使用するものもある(例えば、インクジェットプリンタで固形食材に印刷した技術例として特許文献2を参照)。これらいずれの印刷方式でもあくまで通常の印刷技術の活用例であり、可食性を有するとは言え印刷用インクを塗料として用いる必要があり、チョコレートや糖蜜のような高粘性の熱可塑性を有する食品材料を塗料として適用することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−136203号公報
【特許文献2】特開2006−180881号公報
【特許文献3】特開2006−185030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような事情に鑑みて本発明は創作されたものであり、本発明はカステラ等の所望の固形食材の表面にチョコレートや糖蜜等の熱可塑性食材からなる文字や模様等の描画を定常的かつ容易に供給可能な流体塗布装置を有する菓子装飾製造装置、及び当該菓子装飾製造装置を用いた菓子装飾製造システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決すべく提供される本発明は、
a)所望の固形食材A上に熱可塑性食材Bからなる描画を供給可能な流体塗布装置を有する菓子装飾製造機であって、
b)前記熱可塑性食材Bはチョコレートまたは糖蜜であり、
c)前記流体塗布装置から吐出され固形食材A上に描画される前記熱可塑性食材Bの供給温度を30℃〜50℃の間に制御可能な温度制御装置を、
d)備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明の菓子装飾製造装置によれば、チョコレートや糖蜜のごとき熱可塑性食材Bを適正な温度調整下で固形食材Aに供給している。すなわち本菓子装飾製造装置は、流体塗布装置からの吐出温度を30℃〜50℃に温度制御しながら描画形成することがチョコレート、糖蜜の特性(美味しさ、光沢等)を損ねないとの知見に基づいて、この温度範囲を維持しながら熱可塑性食材Bを吐出させる。これにより固形食材Aへの描画を機械的に供給することができ、チョコレートや糖蜜のごとき高粘性流体で立体的な描画を同一高品質で迅速に供給することができる。このことは描画装飾を施した菓子の製造時の歩留まりを向上させることも可能とする。さらに、流体塗布装置の移動状態及び吐出状態を変更設定・調整するだけで種々の描画を塗布することもできるため、菓子職人のようなユーザーの希望に応じた描画提供も可能となる。
【0011】
また、本菓子装飾製造装置は、
e)前記流体塗布装置の先端ノズルから吐出される前記熱可塑性食材Bの吐出流速は、前記固形食材Aに対する相対的な該先端ノズルの移動速度と略同一であることが好ましい。
【0012】
チョコレート等を固形食材Aに塗布していく際に、通常の態様すなわち重ね塗り等の特殊な塗布をしない態様では流体塗布装置の先端ノズルの移動速度(=固形食材Aに対する相対的移動速度)と先端ノズルからのチョコレート等の吐出流速とが略同一であることが好ましいという知見に基づくものである。本菓子装飾製造装置によれば通常の塗布態様においてチョコレート等を途切れらせずに高速高精度で描画形成を実行することができる。
【0013】
また、本菓子装飾製造装置の
e’)前記流体塗布装置の先端ノズルから吐出される前記熱可塑性食材Bの吐出流速は、前記固形食材Aに対する相対的な該先端ノズルの移動速度と略同一を基準として可変であっても良い。
【0014】
前述するように通常の塗布態様では流体塗布装置の先端ノズルの移動速度と吐出速度とは略同一であることが好ましいが、流体塗布装置から吐出するチョコレート等は重ね塗りや盛り上げて塗るなどの所謂厚塗りの場合や逆に通常より細い幅の線描画を塗る場合等の特殊なデコレーション態様も考えられる。前述するように先端ノズルの移動速度と吐出速度とは互いに略同一の状態が基準の塗布態様となるが、(1)これより厚く塗るときには移動速度<吐出速度とし、(2)細い幅を塗るときには移動速度>吐出速度となるように、移動速度=吐出速度(略同一)を基準とし、(1)(2)の特殊態様にも対応できるように可変に速度制御することができる。これにより、流体塗布装置の移動速度と吐出速度との相関を制御するだけで所望の立体的な描画を固形食材Aに供給することができる。
【0015】
さらに、本菓子装飾製造装置は、
f)前記流体塗布装置の先端ノズルから固形食材Aに至るまでの距離は、少なくとも前記熱可塑性食材Bの供給温度と外部雰囲気温度との温度差に応じて設定されることが好ましい。
【0016】
流体塗布装置の先端ノズルから固形食材Aまでに到達する間にチョコレート等が固化しないようにするには、先端ノズルから固形食材Aまでの到達時間の方が固化温度までの時間よりも短くなければならない。固形温度までの時間は少なくともチョコレート等が吐出されたときの食材温度と環境温度との温度差に依存する。したがって、先端ノズルから固形食材Aまでの距離は、先端ノズルから固形食材Aまでの到達時間に依存し、ひいてはチョコレート等と環境温度との温度差に依存することとなる。それゆえ、先端ノズルから固形食材Aに至るまでの距離は、少なくともチョコレート等の吐出温度(供給温度)と外部雰囲気温度との温度差に応じて設定されることが好ましい。
【0017】
g)なお、上記菓子装飾製造装置において、
前記先端ノズルから前記固形食材Aに至るまで距離Hと前記先端ノズルの内径φdとは、
φd×0.5 ≦ H ≦ φd×2.0
の関係を有することが好ましい。
【0018】
先端ノズルから固形食材Aまでの適正な距離、すなわち先端ノズル下の適正なクリアランスはその先端ノズルの内径に依拠することが知得された。本菓子装飾製造装置ではさらにチョコレートや糖蜜の場合は、先端ノズル内径の0.5〜2.0倍程度のクリアランスが好ましいことが知得され、これに基づいた最適設計が可能となっている。
【0019】
h)さらに、前記先端ノズルの内径は1mm〜10mmであることが好ましい。前述同様、先端ノズル下の適正なクリアランスはその先端ノズルの内径に依拠し、本菓子装飾製造装置ではチョコレートや糖蜜の場合は、先端ノズル内径が1mm〜10mmであることが好ましいことが知得された。
【0020】
本発明の菓子装飾製造システムは、
A)上述した本発明の菓子装飾製造装置と、
B)発注者が所有しておりインターネット網に接続されたクライアント端末において実行可能なアプリケーションソフトと、
C)前記クライアント端末とインターネット網を介して接続可能なサーバとを有し、
D)前記アプリケーションソフトが、前記クライアント端末おいて取得された画像データの一部を描画領域として画定可能なものであり、
E)前記サーバ及び前記アプリケーションソフトのうち少なくともいずれか一方が、前記描画領域内に含まれる画像データに基づき、描画を構成するための描画データを生成可能であり、
F)前記菓子装飾製造装置が、当該描画データに基づいて生成された動作プログラムに基づいて動作制御され、固形食材A上に熱可塑性食材Bからなる描画を供給可能であることを特徴とするものである。
【0021】
本発明の菓子装飾製造システムにおいては、発注者が所有するクライアント端末においてアプリケーションソフトを実行させることにより、発注者が所望する描画を施した菓子を発注し、製造させることができる。すなわち、発注者がアプリケーションソフトを実行して描画領域を確定すると、描画領域内に含まれている画像データに基づき、菓子への描画に用いる描画データが生成される。また、このようにして作成された描画データに基づき、菓子装飾製造装置を作動させるための動作プログラムが生成され、この動作プログラムに基づいて固形食材A上に熱可塑性食材Bからなる描画が施される。従って、本発明の菓子装飾製造システムによれば、発注者の所有するクライアント端末の操作により、発注者独自の描画を施した菓子を発注し、製造させることが可能となる。
【0022】
上述した本発明の菓子装飾製造システムは、
F)前記動作プログラムが、前記固形食材Aに対する相対的な前記流体塗布装置の先端ノズルの移動、前記熱可塑性食材Bの吐出流速、及び前記熱可塑性食材Bの供給温度を制御するものであることが望ましい。
【0023】
かかる構成とすることにより、菓子装飾製造装置の動作を発注された描画を菓子に施すために最適化できる。これにより、発注者の想定に沿った精度の良い描画を菓子に施すことが可能となる。
【0024】
また、本発明の菓子装飾製造システムは、
G)前記アプリケーションソフトが、前記クライアント端末において、前記描画領域を画定するための描画領域画定枠を前記画像データ上に表示させ、任意の位置に移動させることが可能なものであり、前記画像データにおいて描画領域画定枠によって囲まれた領域を描画領域として画定可能であることを特徴とするものであることが望ましい。
【0025】
かかる構成とすることにより、発注者による描画領域の画定作業が容易かつ精度良く実施可能となる。これにより、菓子に描画を施すための描画データを容易かつ精度良く取得することが可能となり、ひいては描画品質の向上に資することが可能となる。
【0026】
本発明の菓子装飾製造システムは、
H)前記サーバが、菓子装飾を実施する製造業者に設置された前記菓子装飾製造装置によって装飾が施された菓子の製造量に応じて前記菓子製造業者及び発注者を除く第三者に対して支払われる課金情報を導出可能な課金情報導出手段を有するものであることが望ましい。
【0027】
かかる構成によれば、例えば菓子装飾製造システムの提供者のような菓子製造業者及び発注者を除く第三者と、菓子装飾を実施する製造業者との間で、製造量に応じて課金するようなビジネスを展開する場合に、このようなビジネスを円滑に進めることが可能となる。
【0028】
本発明の菓子装飾製造システムは、
I)前記クライアント端末が、モバイル端末によって構成されており、
J)前記アプリケーションソフトが、前記モバイル端末にインストールされたものとすることが可能である。
【0029】
本発明の菓子装飾製造システムにおいては、発注者が携帯しているスマートフォン、携帯電話、タブレット型PC、あるいはPDA(Personal Digital Assistant)と称される携帯情報端末等のモバイル端末がクライアント端末とされ、この端末にインストールされたアプリケーションソフトにより発注者が所望する描画を施した菓子を発注し、製造させることができる。そのため、本発明の菓子装飾製造システムによれば、描画を施した菓子の発注作業をより一層簡単に実行することができる。また、スマートフォン等のモバイル端末がカメラを備えている場合には、このカメラによって撮影した画像を描画発注用として用いることができ、より一層利便性を向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0030】
上述するように本発明の菓子装飾製造装置、及び菓子装飾製造システムによれば、カステラ等の所望の固形食材の表面にチョコレートや糖蜜等の熱可塑性食材からなる文字や模様等の描画を定常的かつ容易に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本菓子装飾製造装置の外観概略図である。
【図2】本菓子装飾製造装置の制御構成を示すブロック図である。
【図3】本菓子装飾製造装置における移動制御を示すフロー図である。
【図4】本菓子装飾製造装置における吐出量制御および温度制御御を示すフロー図である。
【図5】流体塗布装置の一例としての一軸偏心ねじポンプの断面図である。
【図6】流体塗布装置としての一軸偏心ねじポンプを用いる場合における基準となる動作条件を示す図である。
【図7】図6の一軸偏心ねじポンプを用いる場合において図6よりも細い幅の熱可塑性食材Bを塗布する場合の最適な動作条件を示す図である。
【図8】図6の一軸偏心ねじポンプを用いる場合において図6よりも厚みのある熱可塑性食材Bを塗布する場合の最適な動作条件を示す図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る菓子装飾製造システムの構成を示すブロック図である。
【図10】(a)〜(f)はそれぞれ、図9に示す菓子製造システムにおいて、クライアント端末に表示されるインターフェイスの一例を示す画像図である。
【図11】本発明の一実施形態に係る菓子装飾製造システム動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
≪描画に使用する熱可塑性食材及びその温度調整について≫
本発明の菓子装飾製造装置の具体的な実施形態を説明するにあたって前提として固形食材Aに描画として供給されるチョコレート等の熱可塑性食材B及びその温度調整について言及する。
【0033】
本発明で対象とする「熱可塑性食材」は、常温では略個体を形成するが加熱すると軟化し、粘性液体に変化する食材を意味しており、「チョコレート」や「糖蜜」が代表的である。「チョコレート」にはブラウンチョコレート、ホワイトチョコレートを主成分したものである。また「糖蜜」とは前述の「熱可塑性食材」条件の条件を満たすことを前提とした糖分を含んだ食用の粘性液体であるシロップ全般をいうが、原料糖から不純物を除いた「糖液」、水に砂糖を混入し粘性液体とした「白蜜」、糖液や白蜜を焦がした「カラメル」などが含まれる。
【0034】
まず熱可塑性食材Bの代表としてのチョコレートにおける温度調整(テンパリング)について説明する。チョコレートは光沢となめらかな口当たりを確保することが重要であり、これは温度調節によってチョコレートに含まれる油分であるカカオバターの結晶を安定化させることで達成される。このカカオバターは異なる融点の結晶群で構成されているが総じて同様の温度調整を行えば良いことが知得された。
【0035】
まず、最初に一旦、チョコレートの温度を50℃程度に上げて全ての結晶を溶かして液状にする。次に攪拌しながら30℃前後に温度調整し、この温度を維持する。カカオバターの融点が30℃−2〜3℃である一方、カカオバターの結晶が安定化する温度は30℃+2〜3℃であるからである。従って、このことから概ね30℃〜50℃の温度範囲で近辺でチョコレートの温度を維持すれば良いことがわかる。
【0036】
次に、糖蜜における温度調整について言及する。
糖蜜もチョコレートと同様にも、結晶の安定化の安定という視点から温度範囲を調整すべきである。但し、糖蜜の場合、混入される水分比によってその融点も変化する。糖蜜の場合は融点により溶解するだけでなく水溶性が高い糖分が唾液成分で溶解する側面も大きく、種々の糖蜜に定格的な温度調整をするにはその点から口内温度に近い状態を維持することが好ましてことがわかる。従って、糖蜜全般としては概ね40℃±10℃程度すなわちチョコレート同様30℃〜50℃の温度範囲程度で維持されることが好ましい。
【0037】
≪菓子装飾製造装置の概要例≫
次に、本菓子装飾製造装置の概要について説明する。
図1には本菓子装飾製造装置1は外観概略のイメージ図を示している。具体的にここでは流体塗布装置として一軸偏心ねじポンプを採用した場合について例示説明する。図1を参照すれば、本菓子装飾製造装置1は所謂3軸直交ロボットであり、そのアーム4先端に一軸偏心ねじポンプ2を装着している。具体的にアーム4は、第一アーム4a、第二アーム4b、第三アーム4cで構成されている。第一アーム4aは固定の基台3上を前後(紙面垂直方向)に滑動する(矢印Y参照)。第二アーム4bは第一アーム4aに対して横方向に滑動する(矢印X参照)。第三アーム4cは第二アーム4bに対して上下方向に滑動する(矢印Z参照)。一軸偏心ねじポンプ2には動作制御や温度制御等を行う制御装置(後述)が内臓されており、これにより適正な塗布量で固形食材A上にチョコレート等Bの描画塗布する。
【0038】
本菓子装飾製造装置1でチョコレート等を描画する制御構成は例えば以下の通りである。
図2は、本菓子装飾製造装置1の動作制御、温度制御、チョコレート等の吐出量制御を示すブロック図である。図2に示すように本菓子装飾製造装置1には、アクチュエータ10及び位置センサ11、温度調整器12及び温度センサ13、流体塗布装置2及び圧力センサ14が設けられている。
【0039】
アクチュエータ10は本菓子装飾製造装置1の可動部を駆動するためのものである。
本菓子装飾製造装置1には、制御装置6及び解析・設定装置7が接続されている。制御装置6は、動作制御部20と、温度制御部21と、吐出量制御部22とを有している。
まず、動作制御部20は、アクチュエータ10と解析・設定装置7のデータ蓄積部30とに接続される。データ蓄積部30には固形食材Aに供給するそれぞれの描画に応じたアクチュエータ10の所定の動作プログラム(所謂ティーチングプログラム)が予め蓄積されており、このプログラムに従って予め動作制御部20がアクチュエータ10の駆動制御を行うことで本菓子装飾製造装置1の移動制御を行う。
【0040】
上記アクチュエータ10の動作プログラムはパソコン等の入力装置40からの描画データを動作プログラムに変換し、その動作プログラムに基づいてアクチュエータ10を制御する。具体的には、所望する描画データがデータ蓄積部30に入力され、データ蓄積部30に入力された描画データが動作設定部31に入力される。その後。速度位置解析部30において動作プログラムに変換され、動作制御部20に入力された動作情報20bが動作制御情報としてアクチュエータ10に入力される。これによりアクチュエータ10が動作制御され、アーム4ひいてはその先端に配置される流体塗布装置2の移動を制御する。
【0041】
なお、アクチュエータ10により作動する流体塗布装置2には位置センサ11が設けられており、図2では示していないが位置センサ11からの位置信号を解析・設定装置7に入力させて適宜、動作プログラムを再構成(補正)することも想定される。
【0042】
図3には本菓子装飾製造装置1(流体塗布装置2)の動作制御についてのフロー図が示されている。まず、入力装置40に描画データが入力され(S1)、このデータに基づいて速度位置解析部31で本菓子装飾製造装置1の動作プログラムが作成される(S2)。次に、作成された動作プログラムが動作制御部20により移動制御信号に変換され、アクチュエータ10に送信され(S3)、アクチュエータ10が動作する(S4)。
【0043】
次に、上記解析・設定装置7は、吐出量(吐出速度)も算出する。具体的には、前記動作プログラムが算出されると吐出量解析部33が動作プログラムに応じて吐出量情報22aが吐出量制御部22を介して流体塗布装置2に入力される。これにより流体塗布装置2が動作制御され、固形食材Aにチョコレート等が供給される。なお、流体塗布装置2の動作制御においても流体塗布装置2に吐出量を吐出圧力から検出する圧力センサ14を設け、図示しないが圧力センサ14からの圧力信号を解析・設定装置7に入力させて適宜、その時点での圧力状態を踏まえた吐出量制御をすることも想定される。
【0044】
また、本菓子装飾製造装置1は供給されるチョコレート等の熱可塑性食材Aの温度制御も行う。具体的には、流体塗布装置2及び/又は貯留容器9(後述)に設けられた温度センサ13によりチョコレート等の温度が測定され、温度設定部32においてデータ蓄積部30に最適条件として設定されている温度条件に適用するように温度信号21aを送信し、温度制御部21を介して流体塗布装置2及び/又は貯留容器9(後述)に設けられた温度調整器12の動作を制御する。
【0045】
図4には本菓子装飾製造装置1(温度調整器12、流体塗布装置2)の温度制御及び吐出量制御についてのフロー図が示されている。まず、図3で述べたように本菓子装飾製造装置1の動作プログラムの作成がなされると、作成された動作プログラムに基づいて吐出量制御部22により吐出量制御信号に変換され、流体塗布装置2に送信され(S5)、流体塗布装置2が動作する(S6)。また、データ蓄積部30に設定される温度条件に基づいて温度解析部32で算出された温度情報が温度制御部21で温度制御信号に変換され、温度調整器12に送信され(S7)、温度調整器12が動作する(S8)。
なお、ここで温度制御の対象となる熱可塑性食材Bの最適温度条件は上述するように総じて30℃〜50℃である。
【0046】
≪流体塗布装置2について≫
次に流体塗布装置2の構成について説明する。
図5に示すように、流体塗布装置2は、導出管8の一端側に接続されている。
導出管8は図1におけるうアーム4に沿って配置されており、導出管8の他端側はチョコレート等の熱可塑性食材Bを貯留する貯留容器9に接続している。流体塗布装置2は、導出管8によって貯留容器9から導出され供給されてきたチョコレート等Bを吐出圧及び吐出量の吐出状態を調整しつつ吐出させることができる。本実施形態において例示する流体塗布装置2は、図5に示すように一軸偏心ねじポンプ2を主要部とするディスペンサである。
【0047】
本発明の一実施形態に係る一軸偏心ねじポンプ2(以下、単に「ポンプ」2とも称す)について、図面を参照しつつ詳細に説明する。ポンプ2は、いわゆる回転容積型のポンプであり、図5に示すように、ケーシング112の内部にステータ120や、ロータ130、動力伝達機構150などが収容された構成とされている。ケーシング112は、金属製で筒状の部材あり、長手方向一端側に取り付けられたノズル112aにニードル(第1開口部)114aが設けられている。また、ケーシング112の外周部分には、開口部(第2開口部)114bが設けられている。114bは、ケーシング112の長手方向中間部分に位置する中間部112dにおいてケーシング112の内部空間に連通している。
【0048】
ニードル114a,開口部114bは、それぞれポンプ2の吐出口および吸込口として機能する部分である。さらに詳細に説明すると、本実施形態のポンプ2は、ロータ130を正方向に回転させることにより、ニードル114aが吐出口として機能し、開口部114bが吸込口として機能するように流体(チョコレート等)を圧送することが可能である。開口部114bは図1の導出管8と接続しており、これを介して貯留容器9内のチョコレート等が供給される。これとは逆にポンプ2は、ロータ130を逆方向に回転させることにより、ニードル114aが吸込口として機能し、開口114bが吐出口として機能するように流体を圧送させることが可能であるが、本実施形態のポンプ2ではニードル114aからチョコレートを固形食材Aの表面に供給する態様で使用されるため、ニードル114aが吐出口として機能し、開口114bが吸込口として機能するようにロータ130が作動する。
【0049】
ステータ120は、ゴムに代表される弾性体や樹脂などで作成され、略円筒形の外観形状を有する部材である。ステータ120の材質は、ポンプ2を用いて輸送する被搬送物である流体(ここではチョコレートや糖蜜)の種類や性状などにあわせて適宜選択される。ステータ120は、ケーシング112においてニードル114aに隣接する位置にあるステータ取付部112b内に収容されている。ステータ120の外径は、ステータ取付部112bの内径と略同一である。そのため、ステータ120は、その外周面がステータ取付部112bの内周面に略密着するような状態で取り付けられている。また、ステータ120は、一端側がケーシング112の端部においてノズル112aによって挟み込まれている。
【0050】
図5に示すように、ステータ120の内周面124は、2条で多段の雌ねじ形状とされている。さらに具体的には、ステータ120の内部には、ステータ120の長手方向に沿って伸び、前述したピッチでねじれた貫通孔122が設けられている。ステータ120は、内部に形成された雌ねじ形状部分のリードの長さL(ピッチの長さに条数を乗じた長さ)を基準長Sとした場合に、この基準長Sのd倍(d=自然数)の長さを有する多段(d段)の雌ねじ形状とされている。また、貫通孔122は、ステータ120の長手方向のいずれの位置において断面視しても、その断面形状(開口形状)が略長円形となるように形成されている。
【0051】
ステータ120の内周面124によって形成された雌ねじ形状の部分の内径Diは、吸込口となる開口114b側(図5右側)から吐出口となるニードル114a側(図5左側)に向けて長さLだけ長手方向に進む毎に拡径するよう、段状に形成されている。
【0052】
ロータ130は、金属製の軸体であり、1条で多段の偏心した雄ねじ形状とされている。さらに詳細には、ロータ130のリードの長さLは、上述したステータ120と同一である。また、ロータ130は、リードの長さLに相当する基準長Sのd倍(d=自然数)の長さを有する多段(d段)の雄ねじ形状となるように形成されている。ロータ130は、長手方向のいずれの位置で断面視しても、その断面形状が略真円形となるように形成されている。ロータ130は、上述したステータ120に形成された貫通孔122に挿通され、貫通孔122の内部において自由に偏心回転可能とされている。
【0053】
ロータ130の雄ねじ形状に形成された部分の外径Doは、吸込口となる開口114b側(図中右側)から吐出側に設けられたニードル114a側(図中左側)に向けて長さLだけ長手方向に進む毎に縮径するよう、段状に形成されている。
【0054】
ロータ130をステータ120に対して挿通すると、ロータ130の外周面132とステータ120の内周面124とが両者の接線でぴったりと接した状態になり、ステータ120の内周面124とロータ130の外周面との間に流体搬送路140が形成される。流体搬送路140は、上述したステータ120やロータ130のリードの長さLを基準長Sとした場合に、ステータ120やロータ130の軸方向にリードの基準長Sのd倍の長さを有する多段(d段)の流路となっている。また、流体搬送路140は、ステータ120やロータ130の長手方向に向けて螺旋状に伸びている。
【0055】
また、流体搬送路140は、ロータ130をステータ120の貫通孔122内において回転させると、ステータ120内を回転しながらステータ120の長手方向に進む。そのため、ロータ130を回転させると、ステータ120の一端側から流体搬送路140内に流体を吸い込むと共に、この流体を流体搬送路140内に閉じこめた状態でステータ120の他端側に向けて移送し、ステータ120の他端側において吐出させることが可能である。本実施形態のポンプ110は、ロータ130を正方向に回転させることにより、開口114bから吸い込んだ流体を圧送し、ニードル114aから吐出することが可能とされている。
【0056】
動力伝達機構150は、ケーシング112の外部に設けられたモータなどの動力源(図示せず)から上述したロータ130に対して動力を伝達するために設けられている。動力伝達機構150は、動力伝達部152と偏心回転部154とを有する。動力伝達部152は、ケーシング112の長手方向の一端側、さらに詳細には上述したノズル112aやステータ取付部112bが設けられたのとは反対側(以下、単に「基端側」とも称す)に設けられた軸収容部112c内に設けられている。また、偏心回転部154は、軸収容部112cとステータ取付部112bとの間に形成された中間部112dに設けられている。
【0057】
動力伝達部152は、ドライブシャフトを有し、これを介してサーボモータと減速機で構成される駆動機165に接続されている。この駆動機165を作動させることにより、ドライブシャフトを回転させることが可能である。動力伝達部152が設けられた軸収容部112cと中間部112dとの間には、バリシール163やその他メカニカルシールやグランドパッキンなどからなる軸封装置161が設けられており、これにより中間部112d側から駆動機165側に被搬送物たる流体が漏れ出さない構造とされている。
【0058】
偏心回転部154は、ドライブシャフトとロータ130とを動力伝達可能なように接続する部分である。偏心回転部154は、連結軸162と、2つの連結体164,166とを有する。連結軸162は、従来公知のカップリングロッドや、スクリューロッドなどによって構成されいる。連結体164は連結軸162とロータ130とを連結するものであり、連結体166は連結軸162とドライブシャフト156とを連結するものである。連結体164,166は、いずれも従来公知のユニバーサルジョイントなどによって構成されており、ドライブシャフトを介して伝達されてきた回転動力をロータ130に伝達し、ロータ130を偏心回転させることが可能である。
【0059】
《流体塗布装置の移動速度、吐出速度、クリアランスの相関について》
まず、一軸偏心ねじポンプ2の移動速度と熱可塑性食材Bの吐出速度との関係の基本的な考え方について図6を参照しつつ説明する。一軸偏心ねじポンプ2においてはその移動速度とチョコレート等の熱可塑性食材Bの吐出速度とは略同一であることがわかった。
具体的には、移動速度vは、
v= Vn×N/(π(φd/2)2)
= 吐出速度 ・・・式(1)
Vn:一軸偏心ねじポンプのロータの1回転あたりの吐出量
H:先端ノズル114aから固形食材までの高さ
N:一軸偏心ねじポンプのロータ回転速度
φd:先端ノズル114aの内径
であることがわかる。
【0060】
従って、重ね塗りや盛り塗り等の特殊な塗布(以下、「厚塗り」と称する)を行わずに図6のような直線でチョコレート等Bを塗布する場合は、一軸偏心ねじポンプを含む流体塗布装置2の移動速度とニードル114a(先端ノズル)の吐出速度とが略同一になるように設定すればチョコレート等が途中で切れたりせずに塗布可能となる。
【0061】
次に、吐出速度と熱可塑性食材Bの固化時間とニードル114aの先端のクリアランスとの相関について説明する。
チョコレートあるいは糖蜜における表面固化までの時間は、液温とその外部雰囲気温度との温度差から導出されるものである。この表面固化時間Tとすると、ニードル114aから固形食材Aまでの時間はT未満でならない。この条件を図6の一軸偏心ねじポンプ2に適用すると、
T > Vt/(Vn×N) = (π(φd/2)2 ) ×H/(Vn×N) ・・・式(2)
Vn:一軸偏心ねじポンプのロータの1回転あたりの吐出量
H:先端ノズル114aから固形食材までの高さ(クリアランス))
N:一軸偏心ねじポンプのロータ回転速度
φd:先端ノズル114aの内径
Vt:先端ノズル114aから固形食材までの液量
となる。
従って、液温と外部雰囲気との温度差に依存する固化時間Tは吐出速度Vnに反比例し、クリアランスHに比例することがわかる。
【0062】
また、上述する式(1)はチョコレート等の塗布幅を細くする場合や厚塗りする場合の基準式としても利用される。図7ではチョコレート等の塗布幅を細くする場合(φt>φt1)、図8ではチョコレート等を厚く塗布する場合(φt<φt2)、が示されている。
【0063】
ここでチョコレートや糖蜜を塗布する場合において検討すると、図6のような基準的な塗布態様においてはクリアランスとニードル114aの内径は略同一(H=φd)を基準であることが好ましく、図7〜図8のような特殊な塗布態様を考慮すればクリアランスとニードル114aの内径との関係は、
φd×0.5≦H≦φd×2.0
H:先端ノズル114aから固形食材までの高さ(クリアランス))
φd:先端ノズル114aの内径
であることがわかった。
【0064】
さらに、一般的にチョコレートや糖蜜におけるクリアランスHは具体的に概ね2mm〜10mmが好ましいことも知得され、このクリアランスを確保するように種々の流体塗布装置2を設定すれば好ましい描画の形成が可能である。
【0065】
なお、図6では一軸ねじポンプ2自体が移動する場合を例示しているが、上記相関条件は固形食材Aに対する一軸偏心ねじポンプ2の相対速度において満足すれば良く、ステージ5(図1参照)を移動させること固形食材Aを移動させる方法を採用することも考えられる。
【0066】
以上、流体塗布装置2の代表例として一軸偏心ねじポンプ2を説明してきたが本菓子装飾製造装置1における流体塗布装置2は、所定移動速度、所定吐出速度(吐出量)を制御し得るものであれば他の構成のものであっても良い。例えば、汎用のシリンジ式ポンプであっても良く、バルブを介して先端ノズル114とチョコレート等を貯留する液溜を接続し、該バルブの開閉制御により塗布する装置であっても良い。
【0067】
≪菓子装飾製造装置を採用した菓子装飾システムについて≫
続いて、上述した菓子装飾製造装置1を採用した菓子装飾製造システム200について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図9に示すように、菓子装飾製造システム200は、上述した菓子装飾製造装置1と、アプリケーションソフト210と、サーバ220とを備えている。菓子装飾製造システム200は、発注者が所有するスマートフォン、あるいは携帯電話等のクライアント端末230から発注した菓子装飾をサーバ220において受け付け、菓子装飾を実施する製造業者に設置された菓子装飾製造装置1によって菓子に装飾を施すことを可能とするものである。
【0068】
アプリケーションソフト210は、発注者が所有しておりインターネット網に接続されたクライアント端末230において実行可能なソフトウェアである。クライアント端末230としては、所謂スマートフォン、タブレット型PC、携帯電話、あるいはPDA等のモバイル端末等を用いることができる。アプリケーションソフト210は、クライアント端末230にインストールされた状態で実行可能なものとすることができる。また、アプリケーションソフト210は、クライアント端末230にインストールされず、サーバ220等の他の機器においてインストールされた状態でクライアント端末230側において実行可能なものとすることも可能である。
【0069】
さらに具体的には、クライアント端末230としてスマートフォンやタブレット型PCのようにOS(Operating System)を搭載したものを採用した場合には、アプリケーションソフト210を前述したOSの下で作動可能であって、ダウンロード及びインストールすることで実行可能なものとすることができる。アプリケーションソフト210は、菓子装飾を施す菓子製造メーカー等が提供するホームページ、あるいは菓子装飾製造システム200の提供者が提供するホームページや、クライアント端末230にインストールされているOSの提供者、あるいは通信網を提供している携帯電話会社等のキャリアが提供するアプリケーションソフトのダウンロードサイト等の適宜のサイトにおいてダウンロード可能とすることができる。また、アプリケーションソフト210は、有料で配布することとしても良いが、無料で配布することにより本菓子装飾製造システム200を用いた菓子への描画を発注を促進する効果等が期待できる。
【0070】
アプリケーションソフト210は、クライアント端末230に搭載されたカメラによって撮影する等して取得された画像データを画像処理し、画像データ中において描画を形成したい画像領域を描画領域として画定する機能を有する。具体的には、アプリケーションソフト210は、図10に示すような所定の描画領域画定枠212を任意に選択できる機能を有するる。描画領域画定枠212は、描画を施す菓子の形状等を考慮して予め複数種準備されている。図10に示す例においては、丸型、矩形、八角形、六角形からなる4種類の描画領域画定枠212が準備されており、発注者が任意に選択することができる。
【0071】
アプリケーションソフト210は、上述したようにして選択された描画領域画定枠212をクライアント端末230に表示されている画像データに重複表示させることができる。また、アプリケーションソフト210は、描画領域画定枠212を画像データ上の任意の位置に移動させることができる。アプリケーションソフト210は、描画領域画定枠212を所望の位置において画定させることにより、描画領域画定枠212によって囲まれた画像領域を描画領域として決定することができる。また、アプリケーションソフト210は、描画領域内に含まれる画像を菓子装飾製造装置1による描画に用いるために切り出すとうの処理を施したデータ(加工画像データ)として生成することができる。
【0072】
サーバ220は、製造業者、あるいは菓子装飾製造システム200の提供者等の第三者等が保有するものである。サーバ220は、クライアント端末230からインターネット網を介して接続可能とされている。サーバ220は、描画データ生成手段222と、課金情報導出手段224とを有する。
【0073】
描画データ生成手段222は、クライアント端末230の操作により生成された加工画像データに基づき、菓子に描画を施す際に描かれる線図からなる描画データを生成することができる。描画データ生成手段222による描画データの生成方法については、種々の画像処理技術を利用することができるが、例えば次のようなものとすることができる。すなわち、描画データ生成手段222は、加工画像データにアンカーポイントを付す等して、描画対象である画像を線図に変換する機能を有するものとすることができる。
【0074】
また、描画対象を人物の顔等、特定のものに限定している場合には、描画対象である画像を複数のパーツに分類することができることを利用し、加工画像データを線図に置換することも可能である。具体的には、描画対象が人物の顔に限定している場合には、目、鼻、口、耳、眉毛、輪郭線、髪型等のパーツに分類することができる。そのため、各パーツについて予め複数種の線図パターンを準備しておき、加工画像データの画像解析により各パーツについて近似する線図パターンを選択し、これらを組み合わせることにより顔の全体像をなす線図を構築するようにすることも可能である。
【0075】
描画データ生成手段222により生成された描画データは、菓子装飾製造装置1の制御装置6に入力される。制御装置6においては、描画データに基づき、アクチュエータ10を動作制御するための動作プログラム(ティーチングプログラム)が作成される。動作プログラムは、様々な方法によって作成可能であるが、例えば次のようにして作成することが可能である。
【0076】
すなわち、描画データを構成する線図を描くために必要な軌跡でニードル114a(先端ノズル)を予め移動させることによりアクチュエータ10の動作プログラムに変換する作業(所謂ティーチング)を実施することにより、動作プログラムを作成することが可能である。また、上述したように、加工画像データの画像解析に基づき、予め登録されている線図パターンを組み合わせることにより描画データを構築する場合には、線図パターンを描くために必要な動作パターンを予めしておくことにより、線図パターンの組み合わせからなる線図を描くための動作プログラムを形成することができる。
【0077】
課金情報導出手段224は、製造業者に設置された菓子装飾製造装置1による装飾菓子の製造量に応じて製造業者及び発注者を除く第三者(菓子装飾製造システム200の提供者)に対して支払われる課金情報を導出するためのものである。具体的には、課金情報導出手段224は、予め製造業者(菓子装飾製造装置1の使用者)と菓子装飾製造システム200の提供者との間で装飾を施した菓子の個数単位で設定されている菓子装飾製造システム200の利用料(課金単価α)と、装飾を施した菓子の数量(製造数β)とを乗じて得られる金額を課金額γ(γ=α×β)として導出することができる。
【0078】
続いて、菓子装飾製造システム200の運用方法について、図11に示すフローチャートを参照しつつ詳細に説明する。菓子装飾製造システム200の運用に際しては、先ずステップS101〜ステップS106において、発注者が所有しているクライアント端末230によりアプリケーションソフト210による処理が実行される。
【0079】
具体的には、S101において、菓子装飾製造システム200を用いて描画するために必要な画像データの選択がなされる。画像データの選択は、適宜の方法とすることができるが、例えば図10(a)のようにクライアント端末230に蓄積されている画像集(ギャラリー)に存在する画像、あるいはクライアント端末230が備えているカメラ(図示せず)により撮影した画像を画像データとして選択可能とすることができる。ステップS101において選択された画像データは、サーバ220に向けてアップロードされる。また、アップロード完了後は、図10(b)に示すように、選択した画像データがクライアント端末230に表示され、表示されている画像データで問題ないかが確認される。ここで、表示されている画像データで問題ないことが確認されると、ステップS101における画像データの取得が完了する。
【0080】
上述したようにして画像データの選択及び取得が完了すると、ステップS102において描画領域画定枠212の選択がなされる(図10(c)参照)。本実施形態では、描画する菓子(本例ではクッキー)の形状が描画領域画定枠212の形状とされている。そのため、クライアント端末230に図10(c)に示すようなインターフェイスが表示され、菓子(クッキー)の形状を選択することにより、描画領域画定枠212の選択がなされる。また、菓子(クッキー)の大きさを選択することにより、描画領域画定枠212の大きさを選択することができる。
【0081】
ステップS102において描画領域画定枠212の種類の選択及び決定が完了すると、制御フローがステップS103に進み、描画領域画定枠212の位置調整がなされる。具体的には、図10(d)に示すように、ステップS101において選定された画像データに対し、ステップS102において選定された描画領域画定枠212が重複するように表示される。この状態において、クライアント端末230を操作することにより、画像データ上において描画領域画定枠212を任意の位置に移動させることができる。このようにして発注者が描画を形成したい画像が枠内に収まるように描画領域画定枠212を移動させることにより、描画領域画定枠212の位置調整が完了する。その後、制御フローがステップS104に移行する。
【0082】
ステップS104においては、画像データにおいて、描画領域画定枠212を切り出す画像処理が実行される。これにより、図10(e)に示すような加工画像データが生成される。また、本実施形態のアプリケーションソフト210においては、画像データから切り出した画像データに対して文字等を用いて作成されたメッセージを重複させたものを加工画像データとすることもできる。このようにして加工画像データが作成されると、制御フローがステップS105に移行し、加工画像データの確認処理がなされる。具体的には、クライアント端末230に表示されている図10(e)のようなインターフェイスにおいて、作成された加工画像データで問題ないかを確認するメッセージと選択ボタンが表示される。ステップS104で作成された作成された加工画像データに問題があるとの判断がなされた場合には、制御フローがステップS101に戻される。一方、加工画像データに問題がないとの判断がなされた場合には、制御フローががステップS106に進められる。
【0083】
ステップS106においては、発注情報の設定及び確定がなされる。具体的には、ステップS106においては、図10(f)に示すように、描画を施した菓子(クッキー)の受け取り方法、及び代金の支払い方法を設定するためのインターフェイスが、クライアント端末230に表示される。このインターフェイスにおいて、発注情報を入力して確定すると、その発注情報がサーバ220に入力される。その後、制御フローがステップS107に進められる。
【0084】
ステップS107においては、ステップS104において作成された加工画像データに基づき、サーバ220の描画データ生成手段222によって描画データが作成される。このようにして作成された描画データは、菓子装飾製造装置1に向けて発信される。
【0085】
ステップS108においては、菓子装飾製造装置1の制御装置6が、サーバ220から受信した描画データに基づき、動作プログラムを作成する。動作プログラムの作成が完了すると、ステップS109において、動作プログラムに基づく動作制御の下、菓子装飾製造装置1による菓子への描画が開始される。
【0086】
ステップS109におて菓子への描画開始後、菓子装飾製造装置1は、ステップS110において描画が完了した菓子の数(製造数)が、ステップS108において決定された発注数に到達するまで、菓子への描画を継続する。ステップS109において製造数が発注数に到達したことが確認されると、菓子装飾製造装置1による描画が終了する。描画を施した菓子は、ステップS106で設定された受け取り方法に則って、菓子装飾製造装置1の使用者たる製造業者から発注者に対して届けられる。
【0087】
上述したようにしてステップS110において菓子への描画が完了すると、制御フローがステップS111に進められる。ステップS111においては、サーバ220の課金情報導出手段224により、課金情報が導出され、菓子装飾製造システム200の提供者に対して送信される。すなわち、予め菓子装飾製造装置1の使用者である製造業者と、菓子装飾製造システム200の提供者との間で決定されている課金単価αと、製造数βとを乗じた金額を課金額γ(γ=α×β)として導出し、送信する。
【0088】
上述したように、菓子装飾製造システム200においては、発注者が所有するクライアント端末230においてアプリケーションソフト210を実行させることにより、発注者が所望する描画を施した菓子を発注し、製造させることができる。従って、菓子装飾製造システム200によれば、発注者独自の描画を施した菓子を製造させ、取得することが可能となり、発注者の要求に応じて描画サービスを提供する、いわゆるオンデマンド型のビジネスを展開することが可能となる。
【0089】
また、菓子装飾製造システム200において生成される動作プログラムは、菓子装飾製造装置1を単体で作動させる場合と同様に、固形食材Aに対する相対的な流体塗布装置のニードル114a(先端ノズル)の移動、熱可塑性食材Bたるチョコレートの吐出流速、及び供給温度を制御するものとされる。そのため、菓子装飾製造システム200においては、菓子装飾製造装置1が、発注された描画を菓子に施すために最適化された条件で作動する。従って、菓子装飾製造装置200によれば、発注者の想定に沿った精度の良い描画を菓子に施すことが可能となる。
【0090】
上述したように、菓子装飾製造システム200は、課金情報導出手段224を備えている。そのため、菓子装飾製造システム200によれば、当該システムの提供者と、菓子装飾を実施する製造業者との間で、製造量に応じて課金するようなビジネスを展開する場合に、このようなビジネスを円滑に進めることが可能となる。なお、課金情報導出手段224は、本発明に必須の構成ではなく、課金情報導出手段224を備えていなくても良い。また、課金額γの導出に用いる数式等については、菓子装飾製造システム200の提供者と製造業者との間で設定される取り決め等に基づいて適宜変更することが可能である。
【0091】
本実施形態においては、菓子装飾製造装置1とは別にサーバ220を設けた例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、菓子装飾製造システム200は、サーバ220の機能を、菓子装飾製造装置1の制御装置6を構成するパーソナルコンピュータ等に包含させたものであっても良い。
【符号の説明】
【0092】
1 菓子装飾製造装置
2 流体塗布装置(一軸偏心ねじポンプ)
3 基台
4 アーム
5 ステージ
6 制御装置
7 解析・設定装置
8 導出管
9 貯留容器
10 アクチュエータ
11 慣性センサ
12 温度調整器
13 温度センサ
200 菓子装飾製造システム
210 アプリケーションソフト
212 描画領域画定枠
220 サーバ
222 描画データ生成手段
224 課金情報導出手段
230 クライアント端末
A 固形食材
B 熱可塑性食材
【技術分野】
【0001】
本発明は、カステラ等の所望の固形食材の表面にチョコレート等の熱可塑性食材からなる文字や模様等の描画を供給可能な流体塗布装置を有する菓子装飾製造装置、及び当該菓子装飾製造装置を用いた菓子装飾製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カステラやビスケット等の固形食材をユーザに提供する際に販促目的のために食材表面に文字や模様等の描画(以下、単に「描画」とも称する)を提供するサービスが存在する。例えばビスケットにチョコレートや糖蜜等(以下、「チョコレート等」とも称する)でユーザの似顔絵をあしらったり、結婚式の引き出物に寿の文字やお祝いメッセージを印字したりするようなサービスである。
【0003】
このようなサービスは概ね大きく2つの方法が考えられてきた。まず第一は菓子職人が固形食材に手作業で描画を提供する方法がある。この方法の場合、菓子職人が経験則による温度管理の下、種々のデザインの描画を固形食材の表面又は側面にあしらうことができる点で有利である。また、描画に用いるチョコレート等の塗布量も菓子職人が調整することができ、立体的な描画を食材上に提供することも可能である。
【0004】
しかしながら、菓子職人による手作業での描画提供は菓子職人個々の技量差が製品に直接反映され、製品間のばらつきが大きい。また、手作業ゆえにコストの点、製作スピードの点でも問題が多く不利である。
【0005】
第二の方法としては、固形食材上に描画を印刷する方法も考えられる。例えば、所謂スクリーン印刷を食品印刷目的で使用する方法であり、迅速に同一描画を提供できる点で有利である(例えば、スクリーン印刷を固形食材に施した技術例として特許文献1を参照)。しかしながら、このスクリーン印刷方式を採用した場合、あらかじめ決められた文字の型を作る必要があり、任意の文字や模様等の描画を印刷することはできないという欠点がある。
【0006】
また、スクリーン印刷以外にインクジェットプリンタの印字技術をそのまま食材への印字として使用するものもある(例えば、インクジェットプリンタで固形食材に印刷した技術例として特許文献2を参照)。これらいずれの印刷方式でもあくまで通常の印刷技術の活用例であり、可食性を有するとは言え印刷用インクを塗料として用いる必要があり、チョコレートや糖蜜のような高粘性の熱可塑性を有する食品材料を塗料として適用することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−136203号公報
【特許文献2】特開2006−180881号公報
【特許文献3】特開2006−185030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような事情に鑑みて本発明は創作されたものであり、本発明はカステラ等の所望の固形食材の表面にチョコレートや糖蜜等の熱可塑性食材からなる文字や模様等の描画を定常的かつ容易に供給可能な流体塗布装置を有する菓子装飾製造装置、及び当該菓子装飾製造装置を用いた菓子装飾製造システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決すべく提供される本発明は、
a)所望の固形食材A上に熱可塑性食材Bからなる描画を供給可能な流体塗布装置を有する菓子装飾製造機であって、
b)前記熱可塑性食材Bはチョコレートまたは糖蜜であり、
c)前記流体塗布装置から吐出され固形食材A上に描画される前記熱可塑性食材Bの供給温度を30℃〜50℃の間に制御可能な温度制御装置を、
d)備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明の菓子装飾製造装置によれば、チョコレートや糖蜜のごとき熱可塑性食材Bを適正な温度調整下で固形食材Aに供給している。すなわち本菓子装飾製造装置は、流体塗布装置からの吐出温度を30℃〜50℃に温度制御しながら描画形成することがチョコレート、糖蜜の特性(美味しさ、光沢等)を損ねないとの知見に基づいて、この温度範囲を維持しながら熱可塑性食材Bを吐出させる。これにより固形食材Aへの描画を機械的に供給することができ、チョコレートや糖蜜のごとき高粘性流体で立体的な描画を同一高品質で迅速に供給することができる。このことは描画装飾を施した菓子の製造時の歩留まりを向上させることも可能とする。さらに、流体塗布装置の移動状態及び吐出状態を変更設定・調整するだけで種々の描画を塗布することもできるため、菓子職人のようなユーザーの希望に応じた描画提供も可能となる。
【0011】
また、本菓子装飾製造装置は、
e)前記流体塗布装置の先端ノズルから吐出される前記熱可塑性食材Bの吐出流速は、前記固形食材Aに対する相対的な該先端ノズルの移動速度と略同一であることが好ましい。
【0012】
チョコレート等を固形食材Aに塗布していく際に、通常の態様すなわち重ね塗り等の特殊な塗布をしない態様では流体塗布装置の先端ノズルの移動速度(=固形食材Aに対する相対的移動速度)と先端ノズルからのチョコレート等の吐出流速とが略同一であることが好ましいという知見に基づくものである。本菓子装飾製造装置によれば通常の塗布態様においてチョコレート等を途切れらせずに高速高精度で描画形成を実行することができる。
【0013】
また、本菓子装飾製造装置の
e’)前記流体塗布装置の先端ノズルから吐出される前記熱可塑性食材Bの吐出流速は、前記固形食材Aに対する相対的な該先端ノズルの移動速度と略同一を基準として可変であっても良い。
【0014】
前述するように通常の塗布態様では流体塗布装置の先端ノズルの移動速度と吐出速度とは略同一であることが好ましいが、流体塗布装置から吐出するチョコレート等は重ね塗りや盛り上げて塗るなどの所謂厚塗りの場合や逆に通常より細い幅の線描画を塗る場合等の特殊なデコレーション態様も考えられる。前述するように先端ノズルの移動速度と吐出速度とは互いに略同一の状態が基準の塗布態様となるが、(1)これより厚く塗るときには移動速度<吐出速度とし、(2)細い幅を塗るときには移動速度>吐出速度となるように、移動速度=吐出速度(略同一)を基準とし、(1)(2)の特殊態様にも対応できるように可変に速度制御することができる。これにより、流体塗布装置の移動速度と吐出速度との相関を制御するだけで所望の立体的な描画を固形食材Aに供給することができる。
【0015】
さらに、本菓子装飾製造装置は、
f)前記流体塗布装置の先端ノズルから固形食材Aに至るまでの距離は、少なくとも前記熱可塑性食材Bの供給温度と外部雰囲気温度との温度差に応じて設定されることが好ましい。
【0016】
流体塗布装置の先端ノズルから固形食材Aまでに到達する間にチョコレート等が固化しないようにするには、先端ノズルから固形食材Aまでの到達時間の方が固化温度までの時間よりも短くなければならない。固形温度までの時間は少なくともチョコレート等が吐出されたときの食材温度と環境温度との温度差に依存する。したがって、先端ノズルから固形食材Aまでの距離は、先端ノズルから固形食材Aまでの到達時間に依存し、ひいてはチョコレート等と環境温度との温度差に依存することとなる。それゆえ、先端ノズルから固形食材Aに至るまでの距離は、少なくともチョコレート等の吐出温度(供給温度)と外部雰囲気温度との温度差に応じて設定されることが好ましい。
【0017】
g)なお、上記菓子装飾製造装置において、
前記先端ノズルから前記固形食材Aに至るまで距離Hと前記先端ノズルの内径φdとは、
φd×0.5 ≦ H ≦ φd×2.0
の関係を有することが好ましい。
【0018】
先端ノズルから固形食材Aまでの適正な距離、すなわち先端ノズル下の適正なクリアランスはその先端ノズルの内径に依拠することが知得された。本菓子装飾製造装置ではさらにチョコレートや糖蜜の場合は、先端ノズル内径の0.5〜2.0倍程度のクリアランスが好ましいことが知得され、これに基づいた最適設計が可能となっている。
【0019】
h)さらに、前記先端ノズルの内径は1mm〜10mmであることが好ましい。前述同様、先端ノズル下の適正なクリアランスはその先端ノズルの内径に依拠し、本菓子装飾製造装置ではチョコレートや糖蜜の場合は、先端ノズル内径が1mm〜10mmであることが好ましいことが知得された。
【0020】
本発明の菓子装飾製造システムは、
A)上述した本発明の菓子装飾製造装置と、
B)発注者が所有しておりインターネット網に接続されたクライアント端末において実行可能なアプリケーションソフトと、
C)前記クライアント端末とインターネット網を介して接続可能なサーバとを有し、
D)前記アプリケーションソフトが、前記クライアント端末おいて取得された画像データの一部を描画領域として画定可能なものであり、
E)前記サーバ及び前記アプリケーションソフトのうち少なくともいずれか一方が、前記描画領域内に含まれる画像データに基づき、描画を構成するための描画データを生成可能であり、
F)前記菓子装飾製造装置が、当該描画データに基づいて生成された動作プログラムに基づいて動作制御され、固形食材A上に熱可塑性食材Bからなる描画を供給可能であることを特徴とするものである。
【0021】
本発明の菓子装飾製造システムにおいては、発注者が所有するクライアント端末においてアプリケーションソフトを実行させることにより、発注者が所望する描画を施した菓子を発注し、製造させることができる。すなわち、発注者がアプリケーションソフトを実行して描画領域を確定すると、描画領域内に含まれている画像データに基づき、菓子への描画に用いる描画データが生成される。また、このようにして作成された描画データに基づき、菓子装飾製造装置を作動させるための動作プログラムが生成され、この動作プログラムに基づいて固形食材A上に熱可塑性食材Bからなる描画が施される。従って、本発明の菓子装飾製造システムによれば、発注者の所有するクライアント端末の操作により、発注者独自の描画を施した菓子を発注し、製造させることが可能となる。
【0022】
上述した本発明の菓子装飾製造システムは、
F)前記動作プログラムが、前記固形食材Aに対する相対的な前記流体塗布装置の先端ノズルの移動、前記熱可塑性食材Bの吐出流速、及び前記熱可塑性食材Bの供給温度を制御するものであることが望ましい。
【0023】
かかる構成とすることにより、菓子装飾製造装置の動作を発注された描画を菓子に施すために最適化できる。これにより、発注者の想定に沿った精度の良い描画を菓子に施すことが可能となる。
【0024】
また、本発明の菓子装飾製造システムは、
G)前記アプリケーションソフトが、前記クライアント端末において、前記描画領域を画定するための描画領域画定枠を前記画像データ上に表示させ、任意の位置に移動させることが可能なものであり、前記画像データにおいて描画領域画定枠によって囲まれた領域を描画領域として画定可能であることを特徴とするものであることが望ましい。
【0025】
かかる構成とすることにより、発注者による描画領域の画定作業が容易かつ精度良く実施可能となる。これにより、菓子に描画を施すための描画データを容易かつ精度良く取得することが可能となり、ひいては描画品質の向上に資することが可能となる。
【0026】
本発明の菓子装飾製造システムは、
H)前記サーバが、菓子装飾を実施する製造業者に設置された前記菓子装飾製造装置によって装飾が施された菓子の製造量に応じて前記菓子製造業者及び発注者を除く第三者に対して支払われる課金情報を導出可能な課金情報導出手段を有するものであることが望ましい。
【0027】
かかる構成によれば、例えば菓子装飾製造システムの提供者のような菓子製造業者及び発注者を除く第三者と、菓子装飾を実施する製造業者との間で、製造量に応じて課金するようなビジネスを展開する場合に、このようなビジネスを円滑に進めることが可能となる。
【0028】
本発明の菓子装飾製造システムは、
I)前記クライアント端末が、モバイル端末によって構成されており、
J)前記アプリケーションソフトが、前記モバイル端末にインストールされたものとすることが可能である。
【0029】
本発明の菓子装飾製造システムにおいては、発注者が携帯しているスマートフォン、携帯電話、タブレット型PC、あるいはPDA(Personal Digital Assistant)と称される携帯情報端末等のモバイル端末がクライアント端末とされ、この端末にインストールされたアプリケーションソフトにより発注者が所望する描画を施した菓子を発注し、製造させることができる。そのため、本発明の菓子装飾製造システムによれば、描画を施した菓子の発注作業をより一層簡単に実行することができる。また、スマートフォン等のモバイル端末がカメラを備えている場合には、このカメラによって撮影した画像を描画発注用として用いることができ、より一層利便性を向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0030】
上述するように本発明の菓子装飾製造装置、及び菓子装飾製造システムによれば、カステラ等の所望の固形食材の表面にチョコレートや糖蜜等の熱可塑性食材からなる文字や模様等の描画を定常的かつ容易に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本菓子装飾製造装置の外観概略図である。
【図2】本菓子装飾製造装置の制御構成を示すブロック図である。
【図3】本菓子装飾製造装置における移動制御を示すフロー図である。
【図4】本菓子装飾製造装置における吐出量制御および温度制御御を示すフロー図である。
【図5】流体塗布装置の一例としての一軸偏心ねじポンプの断面図である。
【図6】流体塗布装置としての一軸偏心ねじポンプを用いる場合における基準となる動作条件を示す図である。
【図7】図6の一軸偏心ねじポンプを用いる場合において図6よりも細い幅の熱可塑性食材Bを塗布する場合の最適な動作条件を示す図である。
【図8】図6の一軸偏心ねじポンプを用いる場合において図6よりも厚みのある熱可塑性食材Bを塗布する場合の最適な動作条件を示す図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る菓子装飾製造システムの構成を示すブロック図である。
【図10】(a)〜(f)はそれぞれ、図9に示す菓子製造システムにおいて、クライアント端末に表示されるインターフェイスの一例を示す画像図である。
【図11】本発明の一実施形態に係る菓子装飾製造システム動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
≪描画に使用する熱可塑性食材及びその温度調整について≫
本発明の菓子装飾製造装置の具体的な実施形態を説明するにあたって前提として固形食材Aに描画として供給されるチョコレート等の熱可塑性食材B及びその温度調整について言及する。
【0033】
本発明で対象とする「熱可塑性食材」は、常温では略個体を形成するが加熱すると軟化し、粘性液体に変化する食材を意味しており、「チョコレート」や「糖蜜」が代表的である。「チョコレート」にはブラウンチョコレート、ホワイトチョコレートを主成分したものである。また「糖蜜」とは前述の「熱可塑性食材」条件の条件を満たすことを前提とした糖分を含んだ食用の粘性液体であるシロップ全般をいうが、原料糖から不純物を除いた「糖液」、水に砂糖を混入し粘性液体とした「白蜜」、糖液や白蜜を焦がした「カラメル」などが含まれる。
【0034】
まず熱可塑性食材Bの代表としてのチョコレートにおける温度調整(テンパリング)について説明する。チョコレートは光沢となめらかな口当たりを確保することが重要であり、これは温度調節によってチョコレートに含まれる油分であるカカオバターの結晶を安定化させることで達成される。このカカオバターは異なる融点の結晶群で構成されているが総じて同様の温度調整を行えば良いことが知得された。
【0035】
まず、最初に一旦、チョコレートの温度を50℃程度に上げて全ての結晶を溶かして液状にする。次に攪拌しながら30℃前後に温度調整し、この温度を維持する。カカオバターの融点が30℃−2〜3℃である一方、カカオバターの結晶が安定化する温度は30℃+2〜3℃であるからである。従って、このことから概ね30℃〜50℃の温度範囲で近辺でチョコレートの温度を維持すれば良いことがわかる。
【0036】
次に、糖蜜における温度調整について言及する。
糖蜜もチョコレートと同様にも、結晶の安定化の安定という視点から温度範囲を調整すべきである。但し、糖蜜の場合、混入される水分比によってその融点も変化する。糖蜜の場合は融点により溶解するだけでなく水溶性が高い糖分が唾液成分で溶解する側面も大きく、種々の糖蜜に定格的な温度調整をするにはその点から口内温度に近い状態を維持することが好ましてことがわかる。従って、糖蜜全般としては概ね40℃±10℃程度すなわちチョコレート同様30℃〜50℃の温度範囲程度で維持されることが好ましい。
【0037】
≪菓子装飾製造装置の概要例≫
次に、本菓子装飾製造装置の概要について説明する。
図1には本菓子装飾製造装置1は外観概略のイメージ図を示している。具体的にここでは流体塗布装置として一軸偏心ねじポンプを採用した場合について例示説明する。図1を参照すれば、本菓子装飾製造装置1は所謂3軸直交ロボットであり、そのアーム4先端に一軸偏心ねじポンプ2を装着している。具体的にアーム4は、第一アーム4a、第二アーム4b、第三アーム4cで構成されている。第一アーム4aは固定の基台3上を前後(紙面垂直方向)に滑動する(矢印Y参照)。第二アーム4bは第一アーム4aに対して横方向に滑動する(矢印X参照)。第三アーム4cは第二アーム4bに対して上下方向に滑動する(矢印Z参照)。一軸偏心ねじポンプ2には動作制御や温度制御等を行う制御装置(後述)が内臓されており、これにより適正な塗布量で固形食材A上にチョコレート等Bの描画塗布する。
【0038】
本菓子装飾製造装置1でチョコレート等を描画する制御構成は例えば以下の通りである。
図2は、本菓子装飾製造装置1の動作制御、温度制御、チョコレート等の吐出量制御を示すブロック図である。図2に示すように本菓子装飾製造装置1には、アクチュエータ10及び位置センサ11、温度調整器12及び温度センサ13、流体塗布装置2及び圧力センサ14が設けられている。
【0039】
アクチュエータ10は本菓子装飾製造装置1の可動部を駆動するためのものである。
本菓子装飾製造装置1には、制御装置6及び解析・設定装置7が接続されている。制御装置6は、動作制御部20と、温度制御部21と、吐出量制御部22とを有している。
まず、動作制御部20は、アクチュエータ10と解析・設定装置7のデータ蓄積部30とに接続される。データ蓄積部30には固形食材Aに供給するそれぞれの描画に応じたアクチュエータ10の所定の動作プログラム(所謂ティーチングプログラム)が予め蓄積されており、このプログラムに従って予め動作制御部20がアクチュエータ10の駆動制御を行うことで本菓子装飾製造装置1の移動制御を行う。
【0040】
上記アクチュエータ10の動作プログラムはパソコン等の入力装置40からの描画データを動作プログラムに変換し、その動作プログラムに基づいてアクチュエータ10を制御する。具体的には、所望する描画データがデータ蓄積部30に入力され、データ蓄積部30に入力された描画データが動作設定部31に入力される。その後。速度位置解析部30において動作プログラムに変換され、動作制御部20に入力された動作情報20bが動作制御情報としてアクチュエータ10に入力される。これによりアクチュエータ10が動作制御され、アーム4ひいてはその先端に配置される流体塗布装置2の移動を制御する。
【0041】
なお、アクチュエータ10により作動する流体塗布装置2には位置センサ11が設けられており、図2では示していないが位置センサ11からの位置信号を解析・設定装置7に入力させて適宜、動作プログラムを再構成(補正)することも想定される。
【0042】
図3には本菓子装飾製造装置1(流体塗布装置2)の動作制御についてのフロー図が示されている。まず、入力装置40に描画データが入力され(S1)、このデータに基づいて速度位置解析部31で本菓子装飾製造装置1の動作プログラムが作成される(S2)。次に、作成された動作プログラムが動作制御部20により移動制御信号に変換され、アクチュエータ10に送信され(S3)、アクチュエータ10が動作する(S4)。
【0043】
次に、上記解析・設定装置7は、吐出量(吐出速度)も算出する。具体的には、前記動作プログラムが算出されると吐出量解析部33が動作プログラムに応じて吐出量情報22aが吐出量制御部22を介して流体塗布装置2に入力される。これにより流体塗布装置2が動作制御され、固形食材Aにチョコレート等が供給される。なお、流体塗布装置2の動作制御においても流体塗布装置2に吐出量を吐出圧力から検出する圧力センサ14を設け、図示しないが圧力センサ14からの圧力信号を解析・設定装置7に入力させて適宜、その時点での圧力状態を踏まえた吐出量制御をすることも想定される。
【0044】
また、本菓子装飾製造装置1は供給されるチョコレート等の熱可塑性食材Aの温度制御も行う。具体的には、流体塗布装置2及び/又は貯留容器9(後述)に設けられた温度センサ13によりチョコレート等の温度が測定され、温度設定部32においてデータ蓄積部30に最適条件として設定されている温度条件に適用するように温度信号21aを送信し、温度制御部21を介して流体塗布装置2及び/又は貯留容器9(後述)に設けられた温度調整器12の動作を制御する。
【0045】
図4には本菓子装飾製造装置1(温度調整器12、流体塗布装置2)の温度制御及び吐出量制御についてのフロー図が示されている。まず、図3で述べたように本菓子装飾製造装置1の動作プログラムの作成がなされると、作成された動作プログラムに基づいて吐出量制御部22により吐出量制御信号に変換され、流体塗布装置2に送信され(S5)、流体塗布装置2が動作する(S6)。また、データ蓄積部30に設定される温度条件に基づいて温度解析部32で算出された温度情報が温度制御部21で温度制御信号に変換され、温度調整器12に送信され(S7)、温度調整器12が動作する(S8)。
なお、ここで温度制御の対象となる熱可塑性食材Bの最適温度条件は上述するように総じて30℃〜50℃である。
【0046】
≪流体塗布装置2について≫
次に流体塗布装置2の構成について説明する。
図5に示すように、流体塗布装置2は、導出管8の一端側に接続されている。
導出管8は図1におけるうアーム4に沿って配置されており、導出管8の他端側はチョコレート等の熱可塑性食材Bを貯留する貯留容器9に接続している。流体塗布装置2は、導出管8によって貯留容器9から導出され供給されてきたチョコレート等Bを吐出圧及び吐出量の吐出状態を調整しつつ吐出させることができる。本実施形態において例示する流体塗布装置2は、図5に示すように一軸偏心ねじポンプ2を主要部とするディスペンサである。
【0047】
本発明の一実施形態に係る一軸偏心ねじポンプ2(以下、単に「ポンプ」2とも称す)について、図面を参照しつつ詳細に説明する。ポンプ2は、いわゆる回転容積型のポンプであり、図5に示すように、ケーシング112の内部にステータ120や、ロータ130、動力伝達機構150などが収容された構成とされている。ケーシング112は、金属製で筒状の部材あり、長手方向一端側に取り付けられたノズル112aにニードル(第1開口部)114aが設けられている。また、ケーシング112の外周部分には、開口部(第2開口部)114bが設けられている。114bは、ケーシング112の長手方向中間部分に位置する中間部112dにおいてケーシング112の内部空間に連通している。
【0048】
ニードル114a,開口部114bは、それぞれポンプ2の吐出口および吸込口として機能する部分である。さらに詳細に説明すると、本実施形態のポンプ2は、ロータ130を正方向に回転させることにより、ニードル114aが吐出口として機能し、開口部114bが吸込口として機能するように流体(チョコレート等)を圧送することが可能である。開口部114bは図1の導出管8と接続しており、これを介して貯留容器9内のチョコレート等が供給される。これとは逆にポンプ2は、ロータ130を逆方向に回転させることにより、ニードル114aが吸込口として機能し、開口114bが吐出口として機能するように流体を圧送させることが可能であるが、本実施形態のポンプ2ではニードル114aからチョコレートを固形食材Aの表面に供給する態様で使用されるため、ニードル114aが吐出口として機能し、開口114bが吸込口として機能するようにロータ130が作動する。
【0049】
ステータ120は、ゴムに代表される弾性体や樹脂などで作成され、略円筒形の外観形状を有する部材である。ステータ120の材質は、ポンプ2を用いて輸送する被搬送物である流体(ここではチョコレートや糖蜜)の種類や性状などにあわせて適宜選択される。ステータ120は、ケーシング112においてニードル114aに隣接する位置にあるステータ取付部112b内に収容されている。ステータ120の外径は、ステータ取付部112bの内径と略同一である。そのため、ステータ120は、その外周面がステータ取付部112bの内周面に略密着するような状態で取り付けられている。また、ステータ120は、一端側がケーシング112の端部においてノズル112aによって挟み込まれている。
【0050】
図5に示すように、ステータ120の内周面124は、2条で多段の雌ねじ形状とされている。さらに具体的には、ステータ120の内部には、ステータ120の長手方向に沿って伸び、前述したピッチでねじれた貫通孔122が設けられている。ステータ120は、内部に形成された雌ねじ形状部分のリードの長さL(ピッチの長さに条数を乗じた長さ)を基準長Sとした場合に、この基準長Sのd倍(d=自然数)の長さを有する多段(d段)の雌ねじ形状とされている。また、貫通孔122は、ステータ120の長手方向のいずれの位置において断面視しても、その断面形状(開口形状)が略長円形となるように形成されている。
【0051】
ステータ120の内周面124によって形成された雌ねじ形状の部分の内径Diは、吸込口となる開口114b側(図5右側)から吐出口となるニードル114a側(図5左側)に向けて長さLだけ長手方向に進む毎に拡径するよう、段状に形成されている。
【0052】
ロータ130は、金属製の軸体であり、1条で多段の偏心した雄ねじ形状とされている。さらに詳細には、ロータ130のリードの長さLは、上述したステータ120と同一である。また、ロータ130は、リードの長さLに相当する基準長Sのd倍(d=自然数)の長さを有する多段(d段)の雄ねじ形状となるように形成されている。ロータ130は、長手方向のいずれの位置で断面視しても、その断面形状が略真円形となるように形成されている。ロータ130は、上述したステータ120に形成された貫通孔122に挿通され、貫通孔122の内部において自由に偏心回転可能とされている。
【0053】
ロータ130の雄ねじ形状に形成された部分の外径Doは、吸込口となる開口114b側(図中右側)から吐出側に設けられたニードル114a側(図中左側)に向けて長さLだけ長手方向に進む毎に縮径するよう、段状に形成されている。
【0054】
ロータ130をステータ120に対して挿通すると、ロータ130の外周面132とステータ120の内周面124とが両者の接線でぴったりと接した状態になり、ステータ120の内周面124とロータ130の外周面との間に流体搬送路140が形成される。流体搬送路140は、上述したステータ120やロータ130のリードの長さLを基準長Sとした場合に、ステータ120やロータ130の軸方向にリードの基準長Sのd倍の長さを有する多段(d段)の流路となっている。また、流体搬送路140は、ステータ120やロータ130の長手方向に向けて螺旋状に伸びている。
【0055】
また、流体搬送路140は、ロータ130をステータ120の貫通孔122内において回転させると、ステータ120内を回転しながらステータ120の長手方向に進む。そのため、ロータ130を回転させると、ステータ120の一端側から流体搬送路140内に流体を吸い込むと共に、この流体を流体搬送路140内に閉じこめた状態でステータ120の他端側に向けて移送し、ステータ120の他端側において吐出させることが可能である。本実施形態のポンプ110は、ロータ130を正方向に回転させることにより、開口114bから吸い込んだ流体を圧送し、ニードル114aから吐出することが可能とされている。
【0056】
動力伝達機構150は、ケーシング112の外部に設けられたモータなどの動力源(図示せず)から上述したロータ130に対して動力を伝達するために設けられている。動力伝達機構150は、動力伝達部152と偏心回転部154とを有する。動力伝達部152は、ケーシング112の長手方向の一端側、さらに詳細には上述したノズル112aやステータ取付部112bが設けられたのとは反対側(以下、単に「基端側」とも称す)に設けられた軸収容部112c内に設けられている。また、偏心回転部154は、軸収容部112cとステータ取付部112bとの間に形成された中間部112dに設けられている。
【0057】
動力伝達部152は、ドライブシャフトを有し、これを介してサーボモータと減速機で構成される駆動機165に接続されている。この駆動機165を作動させることにより、ドライブシャフトを回転させることが可能である。動力伝達部152が設けられた軸収容部112cと中間部112dとの間には、バリシール163やその他メカニカルシールやグランドパッキンなどからなる軸封装置161が設けられており、これにより中間部112d側から駆動機165側に被搬送物たる流体が漏れ出さない構造とされている。
【0058】
偏心回転部154は、ドライブシャフトとロータ130とを動力伝達可能なように接続する部分である。偏心回転部154は、連結軸162と、2つの連結体164,166とを有する。連結軸162は、従来公知のカップリングロッドや、スクリューロッドなどによって構成されいる。連結体164は連結軸162とロータ130とを連結するものであり、連結体166は連結軸162とドライブシャフト156とを連結するものである。連結体164,166は、いずれも従来公知のユニバーサルジョイントなどによって構成されており、ドライブシャフトを介して伝達されてきた回転動力をロータ130に伝達し、ロータ130を偏心回転させることが可能である。
【0059】
《流体塗布装置の移動速度、吐出速度、クリアランスの相関について》
まず、一軸偏心ねじポンプ2の移動速度と熱可塑性食材Bの吐出速度との関係の基本的な考え方について図6を参照しつつ説明する。一軸偏心ねじポンプ2においてはその移動速度とチョコレート等の熱可塑性食材Bの吐出速度とは略同一であることがわかった。
具体的には、移動速度vは、
v= Vn×N/(π(φd/2)2)
= 吐出速度 ・・・式(1)
Vn:一軸偏心ねじポンプのロータの1回転あたりの吐出量
H:先端ノズル114aから固形食材までの高さ
N:一軸偏心ねじポンプのロータ回転速度
φd:先端ノズル114aの内径
であることがわかる。
【0060】
従って、重ね塗りや盛り塗り等の特殊な塗布(以下、「厚塗り」と称する)を行わずに図6のような直線でチョコレート等Bを塗布する場合は、一軸偏心ねじポンプを含む流体塗布装置2の移動速度とニードル114a(先端ノズル)の吐出速度とが略同一になるように設定すればチョコレート等が途中で切れたりせずに塗布可能となる。
【0061】
次に、吐出速度と熱可塑性食材Bの固化時間とニードル114aの先端のクリアランスとの相関について説明する。
チョコレートあるいは糖蜜における表面固化までの時間は、液温とその外部雰囲気温度との温度差から導出されるものである。この表面固化時間Tとすると、ニードル114aから固形食材Aまでの時間はT未満でならない。この条件を図6の一軸偏心ねじポンプ2に適用すると、
T > Vt/(Vn×N) = (π(φd/2)2 ) ×H/(Vn×N) ・・・式(2)
Vn:一軸偏心ねじポンプのロータの1回転あたりの吐出量
H:先端ノズル114aから固形食材までの高さ(クリアランス))
N:一軸偏心ねじポンプのロータ回転速度
φd:先端ノズル114aの内径
Vt:先端ノズル114aから固形食材までの液量
となる。
従って、液温と外部雰囲気との温度差に依存する固化時間Tは吐出速度Vnに反比例し、クリアランスHに比例することがわかる。
【0062】
また、上述する式(1)はチョコレート等の塗布幅を細くする場合や厚塗りする場合の基準式としても利用される。図7ではチョコレート等の塗布幅を細くする場合(φt>φt1)、図8ではチョコレート等を厚く塗布する場合(φt<φt2)、が示されている。
【0063】
ここでチョコレートや糖蜜を塗布する場合において検討すると、図6のような基準的な塗布態様においてはクリアランスとニードル114aの内径は略同一(H=φd)を基準であることが好ましく、図7〜図8のような特殊な塗布態様を考慮すればクリアランスとニードル114aの内径との関係は、
φd×0.5≦H≦φd×2.0
H:先端ノズル114aから固形食材までの高さ(クリアランス))
φd:先端ノズル114aの内径
であることがわかった。
【0064】
さらに、一般的にチョコレートや糖蜜におけるクリアランスHは具体的に概ね2mm〜10mmが好ましいことも知得され、このクリアランスを確保するように種々の流体塗布装置2を設定すれば好ましい描画の形成が可能である。
【0065】
なお、図6では一軸ねじポンプ2自体が移動する場合を例示しているが、上記相関条件は固形食材Aに対する一軸偏心ねじポンプ2の相対速度において満足すれば良く、ステージ5(図1参照)を移動させること固形食材Aを移動させる方法を採用することも考えられる。
【0066】
以上、流体塗布装置2の代表例として一軸偏心ねじポンプ2を説明してきたが本菓子装飾製造装置1における流体塗布装置2は、所定移動速度、所定吐出速度(吐出量)を制御し得るものであれば他の構成のものであっても良い。例えば、汎用のシリンジ式ポンプであっても良く、バルブを介して先端ノズル114とチョコレート等を貯留する液溜を接続し、該バルブの開閉制御により塗布する装置であっても良い。
【0067】
≪菓子装飾製造装置を採用した菓子装飾システムについて≫
続いて、上述した菓子装飾製造装置1を採用した菓子装飾製造システム200について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図9に示すように、菓子装飾製造システム200は、上述した菓子装飾製造装置1と、アプリケーションソフト210と、サーバ220とを備えている。菓子装飾製造システム200は、発注者が所有するスマートフォン、あるいは携帯電話等のクライアント端末230から発注した菓子装飾をサーバ220において受け付け、菓子装飾を実施する製造業者に設置された菓子装飾製造装置1によって菓子に装飾を施すことを可能とするものである。
【0068】
アプリケーションソフト210は、発注者が所有しておりインターネット網に接続されたクライアント端末230において実行可能なソフトウェアである。クライアント端末230としては、所謂スマートフォン、タブレット型PC、携帯電話、あるいはPDA等のモバイル端末等を用いることができる。アプリケーションソフト210は、クライアント端末230にインストールされた状態で実行可能なものとすることができる。また、アプリケーションソフト210は、クライアント端末230にインストールされず、サーバ220等の他の機器においてインストールされた状態でクライアント端末230側において実行可能なものとすることも可能である。
【0069】
さらに具体的には、クライアント端末230としてスマートフォンやタブレット型PCのようにOS(Operating System)を搭載したものを採用した場合には、アプリケーションソフト210を前述したOSの下で作動可能であって、ダウンロード及びインストールすることで実行可能なものとすることができる。アプリケーションソフト210は、菓子装飾を施す菓子製造メーカー等が提供するホームページ、あるいは菓子装飾製造システム200の提供者が提供するホームページや、クライアント端末230にインストールされているOSの提供者、あるいは通信網を提供している携帯電話会社等のキャリアが提供するアプリケーションソフトのダウンロードサイト等の適宜のサイトにおいてダウンロード可能とすることができる。また、アプリケーションソフト210は、有料で配布することとしても良いが、無料で配布することにより本菓子装飾製造システム200を用いた菓子への描画を発注を促進する効果等が期待できる。
【0070】
アプリケーションソフト210は、クライアント端末230に搭載されたカメラによって撮影する等して取得された画像データを画像処理し、画像データ中において描画を形成したい画像領域を描画領域として画定する機能を有する。具体的には、アプリケーションソフト210は、図10に示すような所定の描画領域画定枠212を任意に選択できる機能を有するる。描画領域画定枠212は、描画を施す菓子の形状等を考慮して予め複数種準備されている。図10に示す例においては、丸型、矩形、八角形、六角形からなる4種類の描画領域画定枠212が準備されており、発注者が任意に選択することができる。
【0071】
アプリケーションソフト210は、上述したようにして選択された描画領域画定枠212をクライアント端末230に表示されている画像データに重複表示させることができる。また、アプリケーションソフト210は、描画領域画定枠212を画像データ上の任意の位置に移動させることができる。アプリケーションソフト210は、描画領域画定枠212を所望の位置において画定させることにより、描画領域画定枠212によって囲まれた画像領域を描画領域として決定することができる。また、アプリケーションソフト210は、描画領域内に含まれる画像を菓子装飾製造装置1による描画に用いるために切り出すとうの処理を施したデータ(加工画像データ)として生成することができる。
【0072】
サーバ220は、製造業者、あるいは菓子装飾製造システム200の提供者等の第三者等が保有するものである。サーバ220は、クライアント端末230からインターネット網を介して接続可能とされている。サーバ220は、描画データ生成手段222と、課金情報導出手段224とを有する。
【0073】
描画データ生成手段222は、クライアント端末230の操作により生成された加工画像データに基づき、菓子に描画を施す際に描かれる線図からなる描画データを生成することができる。描画データ生成手段222による描画データの生成方法については、種々の画像処理技術を利用することができるが、例えば次のようなものとすることができる。すなわち、描画データ生成手段222は、加工画像データにアンカーポイントを付す等して、描画対象である画像を線図に変換する機能を有するものとすることができる。
【0074】
また、描画対象を人物の顔等、特定のものに限定している場合には、描画対象である画像を複数のパーツに分類することができることを利用し、加工画像データを線図に置換することも可能である。具体的には、描画対象が人物の顔に限定している場合には、目、鼻、口、耳、眉毛、輪郭線、髪型等のパーツに分類することができる。そのため、各パーツについて予め複数種の線図パターンを準備しておき、加工画像データの画像解析により各パーツについて近似する線図パターンを選択し、これらを組み合わせることにより顔の全体像をなす線図を構築するようにすることも可能である。
【0075】
描画データ生成手段222により生成された描画データは、菓子装飾製造装置1の制御装置6に入力される。制御装置6においては、描画データに基づき、アクチュエータ10を動作制御するための動作プログラム(ティーチングプログラム)が作成される。動作プログラムは、様々な方法によって作成可能であるが、例えば次のようにして作成することが可能である。
【0076】
すなわち、描画データを構成する線図を描くために必要な軌跡でニードル114a(先端ノズル)を予め移動させることによりアクチュエータ10の動作プログラムに変換する作業(所謂ティーチング)を実施することにより、動作プログラムを作成することが可能である。また、上述したように、加工画像データの画像解析に基づき、予め登録されている線図パターンを組み合わせることにより描画データを構築する場合には、線図パターンを描くために必要な動作パターンを予めしておくことにより、線図パターンの組み合わせからなる線図を描くための動作プログラムを形成することができる。
【0077】
課金情報導出手段224は、製造業者に設置された菓子装飾製造装置1による装飾菓子の製造量に応じて製造業者及び発注者を除く第三者(菓子装飾製造システム200の提供者)に対して支払われる課金情報を導出するためのものである。具体的には、課金情報導出手段224は、予め製造業者(菓子装飾製造装置1の使用者)と菓子装飾製造システム200の提供者との間で装飾を施した菓子の個数単位で設定されている菓子装飾製造システム200の利用料(課金単価α)と、装飾を施した菓子の数量(製造数β)とを乗じて得られる金額を課金額γ(γ=α×β)として導出することができる。
【0078】
続いて、菓子装飾製造システム200の運用方法について、図11に示すフローチャートを参照しつつ詳細に説明する。菓子装飾製造システム200の運用に際しては、先ずステップS101〜ステップS106において、発注者が所有しているクライアント端末230によりアプリケーションソフト210による処理が実行される。
【0079】
具体的には、S101において、菓子装飾製造システム200を用いて描画するために必要な画像データの選択がなされる。画像データの選択は、適宜の方法とすることができるが、例えば図10(a)のようにクライアント端末230に蓄積されている画像集(ギャラリー)に存在する画像、あるいはクライアント端末230が備えているカメラ(図示せず)により撮影した画像を画像データとして選択可能とすることができる。ステップS101において選択された画像データは、サーバ220に向けてアップロードされる。また、アップロード完了後は、図10(b)に示すように、選択した画像データがクライアント端末230に表示され、表示されている画像データで問題ないかが確認される。ここで、表示されている画像データで問題ないことが確認されると、ステップS101における画像データの取得が完了する。
【0080】
上述したようにして画像データの選択及び取得が完了すると、ステップS102において描画領域画定枠212の選択がなされる(図10(c)参照)。本実施形態では、描画する菓子(本例ではクッキー)の形状が描画領域画定枠212の形状とされている。そのため、クライアント端末230に図10(c)に示すようなインターフェイスが表示され、菓子(クッキー)の形状を選択することにより、描画領域画定枠212の選択がなされる。また、菓子(クッキー)の大きさを選択することにより、描画領域画定枠212の大きさを選択することができる。
【0081】
ステップS102において描画領域画定枠212の種類の選択及び決定が完了すると、制御フローがステップS103に進み、描画領域画定枠212の位置調整がなされる。具体的には、図10(d)に示すように、ステップS101において選定された画像データに対し、ステップS102において選定された描画領域画定枠212が重複するように表示される。この状態において、クライアント端末230を操作することにより、画像データ上において描画領域画定枠212を任意の位置に移動させることができる。このようにして発注者が描画を形成したい画像が枠内に収まるように描画領域画定枠212を移動させることにより、描画領域画定枠212の位置調整が完了する。その後、制御フローがステップS104に移行する。
【0082】
ステップS104においては、画像データにおいて、描画領域画定枠212を切り出す画像処理が実行される。これにより、図10(e)に示すような加工画像データが生成される。また、本実施形態のアプリケーションソフト210においては、画像データから切り出した画像データに対して文字等を用いて作成されたメッセージを重複させたものを加工画像データとすることもできる。このようにして加工画像データが作成されると、制御フローがステップS105に移行し、加工画像データの確認処理がなされる。具体的には、クライアント端末230に表示されている図10(e)のようなインターフェイスにおいて、作成された加工画像データで問題ないかを確認するメッセージと選択ボタンが表示される。ステップS104で作成された作成された加工画像データに問題があるとの判断がなされた場合には、制御フローがステップS101に戻される。一方、加工画像データに問題がないとの判断がなされた場合には、制御フローががステップS106に進められる。
【0083】
ステップS106においては、発注情報の設定及び確定がなされる。具体的には、ステップS106においては、図10(f)に示すように、描画を施した菓子(クッキー)の受け取り方法、及び代金の支払い方法を設定するためのインターフェイスが、クライアント端末230に表示される。このインターフェイスにおいて、発注情報を入力して確定すると、その発注情報がサーバ220に入力される。その後、制御フローがステップS107に進められる。
【0084】
ステップS107においては、ステップS104において作成された加工画像データに基づき、サーバ220の描画データ生成手段222によって描画データが作成される。このようにして作成された描画データは、菓子装飾製造装置1に向けて発信される。
【0085】
ステップS108においては、菓子装飾製造装置1の制御装置6が、サーバ220から受信した描画データに基づき、動作プログラムを作成する。動作プログラムの作成が完了すると、ステップS109において、動作プログラムに基づく動作制御の下、菓子装飾製造装置1による菓子への描画が開始される。
【0086】
ステップS109におて菓子への描画開始後、菓子装飾製造装置1は、ステップS110において描画が完了した菓子の数(製造数)が、ステップS108において決定された発注数に到達するまで、菓子への描画を継続する。ステップS109において製造数が発注数に到達したことが確認されると、菓子装飾製造装置1による描画が終了する。描画を施した菓子は、ステップS106で設定された受け取り方法に則って、菓子装飾製造装置1の使用者たる製造業者から発注者に対して届けられる。
【0087】
上述したようにしてステップS110において菓子への描画が完了すると、制御フローがステップS111に進められる。ステップS111においては、サーバ220の課金情報導出手段224により、課金情報が導出され、菓子装飾製造システム200の提供者に対して送信される。すなわち、予め菓子装飾製造装置1の使用者である製造業者と、菓子装飾製造システム200の提供者との間で決定されている課金単価αと、製造数βとを乗じた金額を課金額γ(γ=α×β)として導出し、送信する。
【0088】
上述したように、菓子装飾製造システム200においては、発注者が所有するクライアント端末230においてアプリケーションソフト210を実行させることにより、発注者が所望する描画を施した菓子を発注し、製造させることができる。従って、菓子装飾製造システム200によれば、発注者独自の描画を施した菓子を製造させ、取得することが可能となり、発注者の要求に応じて描画サービスを提供する、いわゆるオンデマンド型のビジネスを展開することが可能となる。
【0089】
また、菓子装飾製造システム200において生成される動作プログラムは、菓子装飾製造装置1を単体で作動させる場合と同様に、固形食材Aに対する相対的な流体塗布装置のニードル114a(先端ノズル)の移動、熱可塑性食材Bたるチョコレートの吐出流速、及び供給温度を制御するものとされる。そのため、菓子装飾製造システム200においては、菓子装飾製造装置1が、発注された描画を菓子に施すために最適化された条件で作動する。従って、菓子装飾製造装置200によれば、発注者の想定に沿った精度の良い描画を菓子に施すことが可能となる。
【0090】
上述したように、菓子装飾製造システム200は、課金情報導出手段224を備えている。そのため、菓子装飾製造システム200によれば、当該システムの提供者と、菓子装飾を実施する製造業者との間で、製造量に応じて課金するようなビジネスを展開する場合に、このようなビジネスを円滑に進めることが可能となる。なお、課金情報導出手段224は、本発明に必須の構成ではなく、課金情報導出手段224を備えていなくても良い。また、課金額γの導出に用いる数式等については、菓子装飾製造システム200の提供者と製造業者との間で設定される取り決め等に基づいて適宜変更することが可能である。
【0091】
本実施形態においては、菓子装飾製造装置1とは別にサーバ220を設けた例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、菓子装飾製造システム200は、サーバ220の機能を、菓子装飾製造装置1の制御装置6を構成するパーソナルコンピュータ等に包含させたものであっても良い。
【符号の説明】
【0092】
1 菓子装飾製造装置
2 流体塗布装置(一軸偏心ねじポンプ)
3 基台
4 アーム
5 ステージ
6 制御装置
7 解析・設定装置
8 導出管
9 貯留容器
10 アクチュエータ
11 慣性センサ
12 温度調整器
13 温度センサ
200 菓子装飾製造システム
210 アプリケーションソフト
212 描画領域画定枠
220 サーバ
222 描画データ生成手段
224 課金情報導出手段
230 クライアント端末
A 固形食材
B 熱可塑性食材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望の固形食材A上に熱可塑性食材Bからなる描画を供給可能な流体塗布装置を有する菓子装飾製造装置であって、
前記熱可塑性食材Bはチョコレートまたは糖蜜であり、
前記流体塗布装置から吐出され固形食材A上に描画される前記熱可塑性食材Bの供給温度を30℃〜50℃の間に制御可能な温度制御装置を、備えたことを特徴とする菓子装飾製造装置。
【請求項2】
前記流体塗布装置の先端ノズルから吐出される前記熱可塑性食材Bの吐出流速は、前記固形食材Aに対する相対的な該先端ノズルの移動速度と略同一であることを特徴とする請求項1に記載の菓子装飾製造装置。
【請求項3】
前記流体塗布装置の先端ノズルから吐出される前記熱可塑性食材Bの吐出流速は、前記固形食材Aに対する相対的な該先端ノズルの移動速度と略同一を基準として可変であることを特徴とする請求項2に記載の菓子装飾製造装置。
【請求項4】
前記流体塗布装置の先端ノズルから固形食材Aに至るまでの距離は、少なくとも前記熱可塑性食材Bの供給温度と外部雰囲気温度との温度差に応じて設定されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の菓子装飾製造装置。
【請求項5】
前記先端ノズルから前記固形食材Aに至るまで距離Hと前記先端ノズルの内径φdとは、
φd×0.5 ≦ H ≦ φd×2.0
の関係を有する、ことを特徴とする請求項1〜4に記載の菓子装飾製造装置。
【請求項6】
前記先端ノズルの内径は、1mm〜10mmである、ことを特徴とする請求項1〜4に記載の菓子装飾製造装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の菓子装飾製造装置と、
発注者が所有しておりインターネット網に接続されたクライアント端末において実行可能なアプリケーションソフトと、
前記クライアント端末とインターネット網を介して接続可能なサーバとを有し、
前記アプリケーションソフトが、前記クライアント端末おいて取得された画像データの一部を描画領域として画定可能なものであり、
前記サーバ及び前記アプリケーションソフトのうち少なくともいずれか一方が、前記描画領域内に含まれる画像データに基づき、描画を構成するための描画データを生成可能であり、
前記菓子装飾製造装置が、当該描画データに基づいて生成された動作プログラムに基づいて動作制御され、固形食材A上に熱可塑性食材Bからなる描画を供給可能であることを特徴とする菓子装飾製造システム。
【請求項8】
前記動作プログラムが、前記固形食材Aに対する相対的な前記流体塗布装置の先端ノズルの移動、前記熱可塑性食材Bの吐出流速、及び前記熱可塑性食材Bの供給温度を制御するものであることを特徴とする請求項7に記載の菓子装飾製造システム。
【請求項9】
前記アプリケーションソフトが、前記クライアント端末において、前記描画領域を画定するための描画領域画定枠を前記画像データ上に表示させ、任意の位置に移動させることが可能なものであり、
前記画像データにおいて描画領域画定枠によって囲まれた領域を描画領域として画定可能であることを特徴とする請求項7又は8に記載の菓子装飾製造システム。
【請求項10】
前記サーバが、菓子装飾を実施する製造業者に設置された前記菓子装飾製造装置によって装飾が施された菓子の製造量に応じ、前記菓子製造業者及び発注者を除く第三者に対して支払われる課金情報を導出可能な課金情報導出手段を有することを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の菓子装飾製造システム。
【請求項11】
前記クライアント端末が、モバイル端末によって構成されており、
前記アプリケーションソフトが、前記モバイル端末にインストールされていることを特徴とする請求項7〜10のいずれかに記載の菓子装飾製造システム。
【請求項1】
所望の固形食材A上に熱可塑性食材Bからなる描画を供給可能な流体塗布装置を有する菓子装飾製造装置であって、
前記熱可塑性食材Bはチョコレートまたは糖蜜であり、
前記流体塗布装置から吐出され固形食材A上に描画される前記熱可塑性食材Bの供給温度を30℃〜50℃の間に制御可能な温度制御装置を、備えたことを特徴とする菓子装飾製造装置。
【請求項2】
前記流体塗布装置の先端ノズルから吐出される前記熱可塑性食材Bの吐出流速は、前記固形食材Aに対する相対的な該先端ノズルの移動速度と略同一であることを特徴とする請求項1に記載の菓子装飾製造装置。
【請求項3】
前記流体塗布装置の先端ノズルから吐出される前記熱可塑性食材Bの吐出流速は、前記固形食材Aに対する相対的な該先端ノズルの移動速度と略同一を基準として可変であることを特徴とする請求項2に記載の菓子装飾製造装置。
【請求項4】
前記流体塗布装置の先端ノズルから固形食材Aに至るまでの距離は、少なくとも前記熱可塑性食材Bの供給温度と外部雰囲気温度との温度差に応じて設定されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の菓子装飾製造装置。
【請求項5】
前記先端ノズルから前記固形食材Aに至るまで距離Hと前記先端ノズルの内径φdとは、
φd×0.5 ≦ H ≦ φd×2.0
の関係を有する、ことを特徴とする請求項1〜4に記載の菓子装飾製造装置。
【請求項6】
前記先端ノズルの内径は、1mm〜10mmである、ことを特徴とする請求項1〜4に記載の菓子装飾製造装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の菓子装飾製造装置と、
発注者が所有しておりインターネット網に接続されたクライアント端末において実行可能なアプリケーションソフトと、
前記クライアント端末とインターネット網を介して接続可能なサーバとを有し、
前記アプリケーションソフトが、前記クライアント端末おいて取得された画像データの一部を描画領域として画定可能なものであり、
前記サーバ及び前記アプリケーションソフトのうち少なくともいずれか一方が、前記描画領域内に含まれる画像データに基づき、描画を構成するための描画データを生成可能であり、
前記菓子装飾製造装置が、当該描画データに基づいて生成された動作プログラムに基づいて動作制御され、固形食材A上に熱可塑性食材Bからなる描画を供給可能であることを特徴とする菓子装飾製造システム。
【請求項8】
前記動作プログラムが、前記固形食材Aに対する相対的な前記流体塗布装置の先端ノズルの移動、前記熱可塑性食材Bの吐出流速、及び前記熱可塑性食材Bの供給温度を制御するものであることを特徴とする請求項7に記載の菓子装飾製造システム。
【請求項9】
前記アプリケーションソフトが、前記クライアント端末において、前記描画領域を画定するための描画領域画定枠を前記画像データ上に表示させ、任意の位置に移動させることが可能なものであり、
前記画像データにおいて描画領域画定枠によって囲まれた領域を描画領域として画定可能であることを特徴とする請求項7又は8に記載の菓子装飾製造システム。
【請求項10】
前記サーバが、菓子装飾を実施する製造業者に設置された前記菓子装飾製造装置によって装飾が施された菓子の製造量に応じ、前記菓子製造業者及び発注者を除く第三者に対して支払われる課金情報を導出可能な課金情報導出手段を有することを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の菓子装飾製造システム。
【請求項11】
前記クライアント端末が、モバイル端末によって構成されており、
前記アプリケーションソフトが、前記モバイル端末にインストールされていることを特徴とする請求項7〜10のいずれかに記載の菓子装飾製造システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図10】
【公開番号】特開2013−13402(P2013−13402A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−114356(P2012−114356)
【出願日】平成24年5月18日(2012.5.18)
【出願人】(000239758)兵神装備株式会社 (76)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年5月18日(2012.5.18)
【出願人】(000239758)兵神装備株式会社 (76)
【Fターム(参考)】
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