説明

落下式粉体処理装置

【課題】 原料となる粉体を原料供給部から加熱部に供給し、この加熱部内において落下される粉体を加熱処理させた後、このように加熱処理された粉体を冷却部において冷却させるにあたり、原料となる粉体の種類、比重、粒径等が異なる場合においても、原料となる粉体に対応させて、この粉体を加熱部内において落下させながら加熱処理する時間を適切に調整して、原料となる様々な粉体を適切に加熱処理できるようにする。
【解決手段】 原料の粉体Wを供給する原料供給部10と、この原料供給部から供給されて落下される粉体を加熱処理する加熱部20と、加熱処理された粉体を冷却させる冷却部30とを備えた落下式粉体処理装置において、加熱部の下側及び/又は上側からガスを供給させて加熱部内を落下する粉体の落下速度を制御するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素粉末やフェライト粉末等の原料となる粉体を原料供給部から加熱部に供給し、この加熱部内において落下される粉体を加熱処理させた後、このように加熱部内において加熱処理された粉体を冷却部において冷却させるようにした落下式粉体処理装置に関するものである。特に、原料となる粉体の種類、比重、粒径等が異なる場合においても、原料となる粉体に対応させて、この粉体を加熱部内において落下させながら加熱処理する時間を適切に調整できるようにした点に特徴を有するものである。
【背景技術】
【0002】
炭素粉末やフェライト粉末等の原料となる粉体を加熱処理するにあたっては、原料となる粉体をこう鉢に入れて、加熱炉内で加熱処理させるようにしたものの他に、特許文献1,2等に示されるように、原料となる粉体を原料供給部から加熱部に供給し、このように供給された粉体を加熱部内において自由落下させながら加熱処理するようにした落下式粉体処理装置が使用されている。
【0003】
しかし、このように原料となる粉体を加熱部内において自由落下させるようにした場合、原料となる粉体の比重や粒径等によって加熱部内を落下する粉体の落下速度が異なり、加熱部において粉体を加熱処理する時間を適切に調整することができず、また原料となる粉体の種類に応じて、加熱部において加熱処理する時間を適切に調整することもできないという問題があった。
【0004】
また、上記の特許文献1においては、大豆やあずき等の粒径が大きい原料の場合、自由落下する速度が速くなって十分な加熱処理を行うことができなくなるのを防止するため、筒状になった加熱部内にロート状やカサ状のバッフルを設け、このバッフルの傾斜に沿って上記の原料を落下させるようにして、加熱処理する時間を長くすることが提案されている。
【0005】
しかし、このように加熱部内にロート状やカサ状のバッフルを設けた落下式粉体処理装置において、比重や粒径等が小さい粉体を加熱処理する場合には、粉体を加熱処理する時間が長くなりすぎたり、粉体がバッフルに付着して凝集したりするという問題があり、原料となる粉体の比重や粒径等に応じて、加熱部において粉体を加熱処理する時間を適切に調整したり、また原料となる粉体の種類に応じて、加熱部において加熱処理する時間を適切に調整したりすることはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63−79567号公報
【特許文献2】特開2009−84125号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、原料となる粉体を原料供給部から加熱部に供給し、この加熱部内において落下される粉体を加熱処理させた後、このように加熱部内において加熱処理された粉体を冷却部において冷却させるようにした落下式粉体処理装置における上記のような問題を解決することを課題とするものである。
【0008】
すなわち、本発明は、上記のような落下式粉体処理装置において、原料となる粉体の種類、比重、粒径等が異なる場合においても、原料となる粉体に対応させて、この粉体を加熱部内において落下させながら加熱処理する時間を適切に調整して、原料となる様々な粉体を適切に加熱処理できるようにすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明においては、上記のような課題を解決するため、原料の粉体を供給する原料供給部と、この原料供給部から供給されて落下される粉体を加熱処理する加熱部と、加熱処理された粉体を冷却させる冷却部とを備えた落下式粉体処理装置において、上記の加熱部の下側及び/又は上側からガスを供給させて加熱部内を落下する粉体の落下速度を制御するようにした。
【0010】
そして、このように加熱部の下側及び/又は上側からガスを供給させて加熱部内を落下する粉体の落下速度を制御するにあたっては、加熱部の下側及び/又は上側にガスを供給するガス供給装置と、このガス供給装置から加熱部の下側及び/又は上側に供給するガス量を制御する制御装置を設けるようにする。
【0011】
ここで、上記の制御装置においては、加熱部内の圧力に基づいて、ガス供給装置から加熱部の下側及び/又は上側に供給するガス量を制御させるようにすることが好ましい。
【0012】
また、加熱部内おいて粉体を加熱処理した場合に発生する排ガスを粉体と分離させて排出させるようにするため、加熱部の上側に加熱部内の排ガスを外部に排出させる排ガス部を設け、またこの排ガスに含まれる有害成分を除去するように、この排ガス部に排ガスを無害化させる排ガス処理装置を設けることが好ましい。
【0013】
また、このように加熱部の上側に加熱部内の排ガスを外部に排出させる排ガス部を設けた場合において、この排ガス部に加熱部内の圧力を測定するための圧力測定器を設け、この圧力測定器により測定された加熱部内の圧力に基づいて、上記の制御装置により、ガス供給装置から加熱部の下側及び/又は上側に供給するガス量を制御させるようにすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明における落下式粉体処理装置においては、原料供給部から供給されて落下される粉体を加熱部内において加熱処理するにあたり、上記のように加熱部の下側及び/又は上側からガスを供給させて加熱部内を落下する粉体の落下速度を制御するようにしたため、原料となる粉体の種類、比重、粒径等が異なる場合においても、原料となる粉体に対応させて、この粉体を加熱部内において落下させながら加熱処理する時間を簡単かつ適切に調整することができるようになる。
【0015】
この結果、本発明における落下式粉体処理装置においては、原料となる様々な粉体に対応させて加熱処理する時間を調整し、各粉体に対して適切な加熱処理が行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る落下式粉体処理装置を示した概略説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に係る落下式粉体処理装置を添付図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明に係る落下式粉体処理装置は、下記の実施形態に示したものに限定されず、発明の要旨を変更しない範囲において、適宜変更して実施できるものである。
【0018】
この実施形態の落下式粉体処理装置においては、図1に示すように、原料供給部10に設けられた原料供給装置11から加熱処理する原料となる粉体Wをふるい装置12に導き、このふるい装置12により凝集している粉体Wを解砕させて、粉体Wを分散させるようにしている。
【0019】
そして、このように分散させた粉体Wを、原料供給部10における案内管13を通して筒状になった加熱部20内に導き、この加熱部20内において落下させるようにしている。
【0020】
ここで、この加熱部20の外周側には加熱装置21が設けられており、この加熱装置21により加熱部20内を加熱させ、この加熱部20内を落下する上記の粉体Wを加熱処理するようにしている。
【0021】
そして、このように加熱処理されて落下する粉体Wを、上記の加熱部20内からその下方に設けられた冷却部30内に導いて冷却させるようにしている。
【0022】
ここで、この実施形態においては、この冷却部30内に傘状になった案内部材31を設け、この冷却部30内を落下する上記の粉体Wをこの案内部材31に接触させて冷却させると共に、この案内部材31により上記の粉体Wを冷却部30の内壁面に導き、この内壁面との接触によって上記の粉体Wを効率よく冷却させるようにしている。
【0023】
そして、この実施形態においては、粉体Wの処理目的に応じて、窒素,空気,水素,炭化水素等の各種のガスを供給するガス供給装置40を設け、このガス供給装置40から上記のガスを、第1供給路41aを通して上記の冷却部30内に導き、このように冷却部30内に導かれたガスを上記の加熱部20の下側から加熱部20内に導くようにすると共に、第2供給路41bを通して上記の原料供給部10に導き、上記のふるい装置12により分散されて案内管13に導かれた粉体Wをこのガスによって加熱部20内に送り出すようにしている。
【0024】
また、上記の第1供給路41aに第1流量調整弁42aを設けると共に、上記の第2供給路41bに第2流量調整弁42bを設け、この第1流量調整弁42aと第2流量調整弁42bとを制御装置43により制御し、第1供給路41aを通して上記の冷却部30内から加熱部20内に導かれるガスの量を調整すると共に、第2供給路41bを通して上記の原料供給部10における案内管13に導かれるガスの量を調整するようにしている。
【0025】
また、この実施形態においては、上記の加熱部20の上側に加熱部20内の排ガスを外部に排出させる排ガス部50を設け、この排ガス部50に、上記の排ガスに含まれる有害成分を除去して排ガスを無害化させる排ガス処理装置51を設けている。
【0026】
また、この実施形態においては、上記の排ガス部50に、上記の加熱部20内の圧力を測定するための圧力測定器52を設け、この圧力測定器52によって測定された加熱部20内の圧力を上記の制御装置43に出力し、上記のように第1供給路41aを通して上記の冷却部30内から加熱部20内に導かれるガスの量を調整すると共に、第2供給路41bを通して上記の原料供給部10における案内管13に導かれるガスの量を調整するようにしている。
【0027】
ここで、粉体Wの落下速度や落下時間を加熱中に実際に測定することは非常に困難であるが、このように加熱部20内の圧力に基づいて、制御装置43により、冷却部30や案内管13から加熱部20内に導かれるガスの量を調整すると、粉体Wの加熱処理条件の調整や再現が可能になる。
【0028】
また、この実施形態においては、上記の加熱部20や排ガス部50の周囲に断熱材Dを設けている。
【0029】
そして、この実施形態の落下式粉体処理装置によって粉体Wを加熱処理するにあたり、粉体Wを加熱部20内において加熱処理する時間を長くする場合には、上記の制御装置43によって上記の第1流量調整弁42aと第2流量調整弁42bとを制御し、上記の第1供給路41aを通して上記の冷却部30内から加熱部20内に導かれるガスの量を多くする一方、上記の第2供給路41bを通して原料供給部10における案内管13に導かれるガスの量を少なくし、或いはガスを導かないようにする。このようにすると、比重や粒径が大きくて加熱部20内において自由落下する速度が速い粉体Wであっても、上記の冷却部30内から加熱部20内に導かれるガスによってその落下速度が遅くなり、粉体Wを加熱部20内において加熱処理する時間を長くすることができる。また、自由落下する速度が遅い粉体Wを用いた場合において、さらに落下速度を遅くすることもできる。
【0030】
一方、粉体Wを加熱部20内において加熱処理する時間を短くする場合には、上記の制御装置43によって上記の第1流量調整弁42aと第2流量調整弁42bとを制御し、上記の第1供給路41aを通して上記の冷却部30内から加熱部20内に導かれるガスの量を少なくし、或いはガスを導かないようにする一方、上記の第2供給路41bを通して原料供給部10における案内管13に導かれるガスの量を多くする。このようにすると、比重や粒径が小さくて加熱部20内において自由落下する速度が遅い粉体Wであっても、上記の案内管13に導かれるガスによって、加熱部20内において落下する速度が速くなり、粉体Wを加熱部20内において加熱処理する時間を短くすることができる。また、自由落下する速度が速い粉体Wを用いた場合において、さらに落下速度を速くすることもできる。
【0031】
このため、この実施形態の落下式粉体処理装置においては、原料となる粉体Wの種類、比重、粒径等が異なる場合においても、原料となる粉体Wに対応させて、この粉体Wを加熱部20内において落下させながら加熱処理する時間を簡単かつ適切に調整することができ、原料となる様々な粉体Wを適切に加熱処理できるようになる。
【0032】
なお、上記のガス供給装置40から供給するガスの種類は特に限定されず、空気や窒素などの一般に使用されるガスの他に、粉体Wと反応して粉体Wに対して処理を行うための特殊なガスなど、様々なガスを使用することができる。
【符号の説明】
【0033】
10 原料供給部
11 原料供給装置
12 ふるい装置
13 案内管
20 加熱部
21 加熱装置
30 冷却部
31 案内部材
40 ガス供給装置
41a 第1供給路
41b 第2供給路
42a 第1流量調整弁
42b 第2流量調整弁
43 制御装置
50 排ガス部
51 排ガス処理装置
52 圧力測定器
D 断熱材
W 粉体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料の粉体を供給する原料供給部と、この原料供給部から供給されて落下される粉体を加熱処理する加熱部と、加熱処理された粉体を冷却させる冷却部とを備えた落下式粉体処理装置において、上記の加熱部の下側及び/又は上側からガスを供給させて加熱部内を落下する粉体の落下速度を制御することを特徴とする落下式粉体処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載した落下式粉体処理装置において、上記の加熱部の下側及び/又は上側にガスを供給するガス供給装置と、このガス供給装置から加熱部の下側及び/又は上側に供給するガス量を制御する制御装置を設けたことを特徴とする落下式粉体処理装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載した落下式粉体処理装置において、上記の制御装置は、加熱部内の圧力に基づいて、ガス供給装置から加熱部の下側及び/又は上側に供給するガス量を制御することを特徴とする落下式粉体処理装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載した落下式粉体処理装置において、上記の加熱部の上側に加熱部内の排ガスを外部に排出させる排ガス部を設けると共に、この排ガス部に上記の排ガスを無害化させる排ガス処理装置を設けたことを特徴とする落下式粉体処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載した落下式粉体処理装置において、上記の排ガス部に加熱部内の圧力を測定するための圧力測定器を設けたことを特徴とする落下式粉体処理装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−228631(P2012−228631A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−96737(P2011−96737)
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【出願人】(000211123)中外炉工業株式会社 (170)
【Fターム(参考)】