説明

落雷電荷量算出システム、落雷電荷量算出方法

【課題】落雷電荷量を評価するシステムにおいて、計測子局から送信された電界波形データ及び磁界波形データと、落雷位置標定装置から取得した落雷位置情報とを対応付けることができるようにする。
【解決手段】計測子局から電界及び磁界の時間変化を示す電界データ及び磁界データを取得し、取得した電界データ又は磁界データに所定の勾配以上のピークを観測すると(S102)、当該ピークを観測した時刻を含むピーク情報を作成し(S104)、落雷位置標定装置から、標定された落雷の時刻と、落雷位置とを含む落雷位置情報を取得し、作成したピーク情報のピークを観測した時刻と、取得した落雷位置情報の落雷の時刻とを、比較することにより、ピーク情報に対応する落雷位置情報を特定し(S110)、ピーク情報に該当するピークを含む前記電界データ及び磁界データと、特定した落雷位置情報に基づき落雷電荷量を算出する(S114〜S122)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、落雷の位置を測定する落雷位置標定装置と、電界波形データ及び磁界波形データを測定する計測装置から送信されたデータに基づき落雷電荷量を算出する落雷電荷評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
落雷は送電設備等に被害を及ぼすことから、従来より、雷の接近を検知するための装置が提案されている。また、本願出願人らは、落雷は電荷量が大きいほど、被害の程度も大きくなることから、電界及び磁界を測定し、測定した電界波形データ及び磁界波形データに基づき、落雷の電荷量を算出するシステムを提案している(例えば、特許文献1参照)。このシステムでは、落雷の発生位置を計測する落雷位置標定装置から取得した落雷位置情報と、電界及び磁界を測定する測定装置から送信された落雷時の電界波形データ及び磁界波形データの波形とに基づき落雷電荷量を算出している。なお、落雷が生じると電界波形データ及び磁界波形データには大きな勾配の変化(以下、ピークという)が生じる。このピークを含む波形データを落雷時のデータとして用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007―315911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1記載のシステムでは、落雷電荷量を算出する際に、落雷位置標定装置により観測された落雷の位置情報と測定装置の設置位置とに基づき、落雷が生じた位置と測定装置との距離を算出し、この距離と測定装置から取得した落雷時の電界波形データ及び磁界波形データとに基づいて落雷電荷量を算出する。
しかしながら、落雷位置標定装置は広範囲における大量の落雷についての位置情報を取得しているため、測定装置から取得した落雷時の電界波形データ及び磁界波形データが落雷標定装置から得られた何れの落雷位置情報に対応するのかを対応付けることで、落雷発生位置までの距離を求める必要がある。
【0005】
本発明は、上記の問題に鑑みなされたものであり、その目的は、落雷電荷量を評価するシステムにおいて、測定された電界波形データ及び磁界波形データと、落雷位置標定装置から取得した落雷位置情報とを対応付けることで、落雷発生位置までの距離を正しく求めることができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の落雷電荷量評価システムは、落雷発生時の落雷電荷量を算出する落雷電荷評価システムであって、測定対象地点における電界及び磁界の時間変化を示す電界データ及び磁界データを取得するデータ取得手段と、前記データ取得手段により取得された電界データ又は磁界データに所定の勾配以上の変化が観測されると、当該変化を観測した時刻を含むピーク情報を作成するピーク情報作成手段と、落雷位置を標定する落雷位置標定装置から、標定された落雷の時刻と、落雷位置とを含む落雷位置情報を取得する落雷位置取得手段と、前記ピーク情報作成手段により作成されたピーク情報の前記変化を観測した時刻と、前記落雷位置取得手段により取得された落雷位置情報の落雷の時刻とを、比較することにより、前記ピーク情報に対応する落雷位置情報を特定するマッチング手段と、前記マッチング手段により特定された落雷位置情報に含まれる落雷位置と、前記測定対象地点との距離を算出し、当該算出した距離と、前記ピーク情報に該当する変化を含む前記電界データ及び磁界データとに基づき落雷電荷量を算出する落雷電荷量算出手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の落雷電荷量評価方法は、落雷位置を標定する落雷位置標定装置、及び、測定対象地点における電界及び磁界の時間変化を測定する計測装置と通信可能な装置により、落雷発生時の落雷電荷量を算出する方法であって、前記計測装置から電界及び磁界の時間変化を示す電界データ及び磁界データを取得するステップと、前記取得した電界データ又は磁界データに所定の勾配以上の変化を観測すると、当該変化を観測した時刻を含むピーク情報を作成するステップと、落雷位置標定装置から、標定された落雷の時刻と、落雷位置とを含む落雷位置情報を取得するステップと、前記作成したピーク情報の前記変化を観測した時刻と、前記取得した落雷位置情報の落雷の時刻とを、比較することにより、前記ピーク情報に対応する落雷位置情報を特定するステップと、前記特定した落雷位置情報に含まれる落雷位置と、前記計測装置との距離を算出し、当該算出した距離と、前記ピーク情報に該当する変化を含む前記電界データ及び磁界データとに基づき落雷電荷量を算出するステップとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、落雷位置標定装置から多数の落雷位置情報を取得しても、ピーク情報において変化が生じた時刻と、落雷位置情報の落雷時刻とを比較することで、ピーク情報にかかる落雷に該当する落雷位置情報をピーク情報と確実に対応付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態である落雷電荷評価装置を含むシステムの全体構成図である。
【図2】落雷判定部により作成されたピーク情報の一例を示す表である。
【図3】落雷位置取得部により取得された落雷位置情報の一例を示す表である。
【図4】リーダ発生時点の判定方法を説明するための図である。
【図5】ΔEを求める方法を説明するための図である。
【図6】落雷電荷量を算出する流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の電荷量評価システムの一実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態である落雷電荷評価装置2を含むシステム1の全体構成図である。同図に示すように、本実施形態の落雷電荷評価装置2には、雷放電位置標定装置40と、複数の計測子局10とが接続されている。
【0011】
計測子局10は、電界計測部12及び磁界計測部14を備えており、雷の監視対象地域に例えば数十km程度の間隔で各地に配置される。電界計測部12は、計測子局10の設置地点での電界を計測し、電界の時間変化を示すデータ(以下、電界波形データという)を生成する。また、磁界計測部14は、計測子局10の配置された地点での磁界を計測し、磁界の時間変化を示すデータ(以下、磁界波形データという)を生成する。そして、これらの電界波形データ及び磁界波形データは、当該計測子局10の識別情報と共に、落雷電荷評価装置2へ伝送される。
【0012】
また、雷放電位置標定装置40は、雷放電から放射される電磁波を複数の地点で受信し、それらの受信した電磁波を解析することにより、落雷位置を標定する機能を有する周知の装置であり、その詳細は、例えば、岸本保夫、「雷観測システムおよび雷保護規格の最新動向」、[online]、NTTファシリティーズ総合研究所、[平成21年6月17日検索]、インターネット<URL:http://www.ntt-fsoken.co.jp/research/pdf/2005_kish.pdf>等に記載されている。雷放電位置標定装置40により標定された落雷位置は、落雷が発生した落雷時刻と対応付けられ、落雷位置情報として落雷電荷評価装置2へ伝送される。
【0013】
図1に示すように、落雷電荷評価装置2は、データ取得部20、落雷判定部21、データマッチング部29、データ読込部22、落雷位置取得部28、落雷発生時点検知部23、リーダ検知部24、リーダ進展時間算出部25、電荷高度算出部26、及び、落雷電荷算出部27の各機能部と、一時記憶部31と、CRTや液晶等のディスプレイ装置である表示装置30とを備えている。なお、落雷電荷評価装置2は、例えば、コンピュータシステムにより構成され、一時記憶部31は例えば、メモリ上に構築され、また、上記機能部20〜30はコンピュータのCPUがハードディスク装置などの記憶装置に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより実現される。
【0014】
データ取得部20は、計測子局10から伝送されてきた電界波形データ及び磁界波形データを取得する。データ取得部20が取得した電界波形データ及び磁界波形データは、一時記憶部31に記録される。
【0015】
一時記憶部31は、データ取得部20が取得した電界波形データ及び磁界波形データと、落雷位置取得部28が取得した落雷位置情報を所定の時間分記憶しており、これらデータは常時更新される。
【0016】
データ取得部20が取得した磁界波形データ及び電界波形データには、落雷時だけでなく、降雨降雪等よっても装置に不要な起動(トリガ)がかかるようなピークが生じる。これに対して、本願出願人らは、落雷時及び降雨時等における電界波形データ及び磁界波形データのピークの相関係数を比較検討することにより、落雷時の相関係数は大きな値(絶対値)となるが、降雨時等の相関係数は非常に小さな値となることを利用して、電界波形データ及び磁界波形データのピークが落雷によるものであるか否かを判定する方法を提案している(特願2009−239585号)。
【0017】
以下に説明するように、落雷判定部21は、この方法を用いて、ピークを含む微小時間における電界データと磁界データの相関係数に基づき、ピークが落雷によるものか否かを判定する。
落雷判定部21には、予め、後述する判定の基準値となる基準相関係数が設定されている。なお、この基準相関係数は、落雷時に観測された磁界波形データ及び電界波形データの短時間に急激に大きさが変化するピークを含む程度の所定時間(例えば、ピークを0msとして、−0.1ms〜0.3ms)の相関係数の絶対値に基づき設定された基準値(例えば、強い相関があるといえる0.7)である。
【0018】
落雷判定部21は、電界波形データにおいて、短時間に急激に大きさが変化するピークが生じた場合に、具体的には、予めメモリに判定基準値として勾配及び電界レベル差が記録されており、電界の変化勾配が基準となる勾配以上、かつ、電界レベル差が基準となる電界レベル差以上である場合に、上記の所定時間の電界波形データと磁界波形データの相関係数の絶対値を算出する。そして、算出した相関係数の絶対値が基準相関係数以上の場合には、ピークは落雷によるものと判定し、相関係数の絶対値が基準相関係数未満の場合には、ピークは降雨・降雪等のノイズによるものであり、落雷は発生していないと判定する。
【0019】
また、落雷判定部21は、電界波形データのピーク時の電位差(以下、トリガ電位差という)と、予め設定された基準電位差とを比較し、トリガ電位差が基準電位差を超えた場合のみ、電荷量評価の対象とする有効データとして扱い、所定の値を超えていない場合には、電荷量評価の対象としない無効データとして扱う。
【0020】
なお、本実施形態では、電界の変化勾配が基準となる勾配以上、かつ、電界レベル差が基準となる電界レベル差以上である場合に、相関係数の絶対値を算出しているが、これに限らず、所定の勾配以上の電界変化が生じた場合に、相関係数の絶対値を算出してもよい。
【0021】
また、落雷判定部21は、ピークが観測されると以下に詳述するピーク情報を作成する。すなわち、落雷判定部21は特許請求の範囲におけるピーク情報作成手段に該当する。
図2は、落雷判定部21により作成されたピーク情報の一例を示す表である。同図に示すように、ピーク情報は、ピークが観測された時刻(すなわち、所定の勾配以上の変化が生じた時刻:以下、トリガ時刻という)を少なくとも含む。なお、同図に示すピーク情報には、電界波形データと磁界波形データの相関係数の絶対値が基準相関係数以下のノイズと判定されたデータ及びトリガ電位差が所定値以下の無効データも含んでおり、これらの判定結果(同図中、波形判定の欄)がトリガ時刻に対応付けられて記録されている。
【0022】
落雷位置取得部28は、雷放電位置標定装置40から伝送されてきた落雷位置情報を取得する。
図3は、落雷位置取得部28により取得された落雷位置情報の一例を示す表である。同図に示すように、落雷位置情報は、落雷が発生した落雷時刻と、落雷発生位置(緯度、経度)を少なくとも含む。
【0023】
データマッチング部29は、落雷判定部21により作成されたピーク情報における有効データのトリガ時刻と、落雷位置取得部28により取得された落雷位置情報における落雷時刻とを比較して、これらのデータのマッチングを行う。
【0024】
すなわち、ピーク情報における有効データのトリガ時刻と、落雷位置情報に含まれる各データの落雷時刻とを比較する。そして、有効データのトリガ時刻と、落雷時刻との差が最も小さくその差が許容できるデータを、有効データに対応する落雷位置情報であるとしてこれらを対応付けてデータ読込部22へ送信する。
【0025】
データ読込部22は、データマッチング部29により有効データのピーク情報及びこれに対応付けられた落雷位置情報を受信すると、このピークを含む電界波形データ及び磁界波形データとを取得する。
【0026】
落雷発生時点検知部23は、落雷が発生したと判定した場合には、ピークが現れた場合に、そのピークの発生時点を、落雷発生時点とする。すなわち、磁界波形データ及び電界波形データのピーク情報のトリガ時刻に対応する点を落雷発生時点とする。
【0027】
リーダ検知部24は、データ読込部22が取得した磁界波形データに基づいて、落雷発生に先行して起こるリーダの発生時点を検知する。なお、リーダとは、落雷発生前に、放出された一部の雷電荷が放電する前駆現象であり、雷雲から生じたリーダが地上に向けて進展することにより落雷に至ることとなる。リーダ検知部24は、落雷発生時点検知部23が検知した落雷発生時点より前の所定期間における電界波形データ又は磁界波形データを参照し、その期間内で磁界波形に、短時間の間に電界の大きさの急激な変化やピークが現れた場合に、急激な変化やピークの発生時点を、リーダ発生時点であると判定する。より具体的には、落雷発生時点を判定する場合と同様に、所定の勾配かつ所定の強度を超える急峻な電界変化あるいは磁界変化が生じた時点を、リーダ発生時点と判定する。図4に示すように、数十マイクロ秒程度の微小時間の間に電界の大きさが急激に変化するピークが現れた場合においては、符号Xの時点がリーダ発生時点と判定される。なお、図4では、電界波形のピークは符号A,B,C,D等で示すように、複数回生じているが、これは、1回の落雷が複数回の放電に分かれて起きることによるものである。
【0028】
リーダ進展時間算出部25は、リーダ検知部24が検知したリーダ発生時点から、落雷発生時点検知部23が検知した落雷の発生時点までの時間をリーダ進展時間として算出する。
【0029】
電荷高度算出部26は、リーダ進展時間算出部25で算出されたリーダ進展時間と、リーダ進展速度とに基づいて落雷電荷の高度を算出する。上述のように、雷雲から放出されたリーダが地表に向けて進展して、地上に到達することにより落雷が発生するのであるが、その際にリーダが雷雲から地表に向けて進展する際の速度がリーダ進展速度であり、一般に、0.2m/μsである。したがって、電荷高度算出部26は、リーダ発生時点から落雷時点までの時間であるリーダ進展時間に、リーダ進展速度を乗ずることにより、落雷電荷の高度(地上からの高さ)を求めることができる。
【0030】
落雷電荷算出部27は、上記のように電荷高度算出部26で求めた落雷電荷の高さと、落雷位置情報に含まれる落雷発生位置と、電界波形データとに基づいて落雷電荷量を算出する。
一般に、雷の電荷に関して、雷の有する電荷量Q(C)は次式(1)で表されることが知られている。
【数1】

ただし、πは円周率、ε0は空気の誘電率であり、ΔE(V/m)は落雷の前後での電界の変化量、D(m)は落雷が地上に到達した落雷地点から観測地点までの水平距離、H(m)は雷発生直前の電荷の高度を示している。
【0031】
落雷電荷量Qを求めるのに必要なパラメータのうち、落雷電荷の高さHは、上記のように、電荷高度算出部26により算出でき、距離Dは、電界波形データ及び磁界波形データの送信元である計測子局10の位置情報と、上記のように発生時刻により対応付けた落雷位置情報とから算出できる。また、落雷による電界変化ΔEは電界波形データから求めることができる。なお、落雷電荷評価装置2は、各計測子局10の識別情報と、位置情報との対応関係を保持するデータベースを備えており、電荷高度算出部26は、電界波形データ及び磁界波形データと共に送られてきた識別情報に基づき、上記データベースを参照して、計測子局10の位置情報を取得することができる。
【0032】
以下において、電界波形データから落雷による電界変化ΔEを求める手法について説明する。
図5は、落雷が発生したときの電界及び磁界の波形を、上記図4よりも時間スケールを千倍程度に拡大して示す図である。一般に、落雷は電荷が複数回に分けて地上に放電して起こることが多く、図4に示す電界波形にも、複数回の放電に対応する複数回の変化が生じている。このうち、同図の電界波形に現れる電界変化ΔE1、ΔE2、ΔE3、ΔE5、ΔE6、ΔE7は急峻に立ち上がっており、落雷に伴う電界変化であると判断できる。これに対して、電界変化ΔE4は、比較的小さな緩やかな勾配で電界が上昇することにより生じている。このような緩やかな電界の変化は、ノイズによって生ずることもあり、この電界変化ΔE4は落雷による放電によるものかどうか、電界波形から直ちに判定することは困難である。
【0033】
これに対して、本実施形態では、落雷電荷算出部27は、以下のように、磁界波形データを参照することにより、電界変化ΔE4のような緩やかな変化が落雷によるものか否かを正確に判定できるようにしている。
【0034】
本願出願人らが行った調査・研究によると、落雷により電界変化が生じている間、図5に符号S1、S2、S3、S5、S6、S7等で示すように、磁界も間欠的に変化することが分っている。そこで、落雷電荷算出部27は、上記電界変化ΔE4のように緩やかな電界変化が生じている期間の磁界波形データにノイズレベルを超える変化が生じているか否かを判定し、磁界に変化が生じていれば(図5においては、符号S4)、当該電界変化は落雷による電界変化であると判断する。そして、落雷による最初に電界変化(図5の例では、ΔE1)が起きる直前の電界の値E0から、最後の電界変化(図5の例ではΔE7)が終了した時点での電界の値Eeまでの各雷撃による実効的な電界変化の総量Etotal(=ΔE+ΔE+ΔE+ΔE+ΔE+ΔE+ΔE)を落雷による電界変化ΔEとし、これを(1)式に代入して、落雷電荷量Qを算出する。なお、ここでは、図5に示す電界変化ΔE7の後、一定時間をおいても落雷による電界変化が現れていなかったものとして、このΔE7を今回の落雷による最後の電界変化であると判断している。
【0035】
落雷電荷算出部27は、上記の式Etotal=ΔE+ΔE+ΔE+ΔE+ΔE+ΔE+ΔEにより計算されるEtotalを、落雷による電界変化量ΔEとして求める。
【0036】
そして、落雷電荷算出部27は、上記求めた電界変化量ΔEと、電荷高度算出部26により求められた電界高度Hと、計測子局10の位置情報と、落雷位置情報とから算出される距離Dとを(1)式に代入することにより、落雷電荷量Qを計算する。
【0037】
表示装置30は、落雷高度算出部30で算出した落雷高度や、落雷電荷算出部27で算出した落雷電荷を表示し、必要に応じて、データ取得部20で取得したデータと、落雷位置取得部28で取得した位置情報も表示する。
【0038】
以下、落雷電荷量評価システム1により、落雷電荷量を算出する流れを図6に示すフローチャートを参照しながら説明する。
常時、計測子局10の電界計測部12及び磁界計測部14が、それぞれ設置された地点での電界及び磁界を測定し、電界及び磁界に応じた電界波形データ及び磁界波形データを落雷電荷量評価装置1へ送信する。そして、落雷電荷量評価装置1は、データ取得部20により電界波形データ及び磁界波形データを取得し、取得された電界波形データ及び磁界波形データは一時記憶部31に一時的に記録され、常時更新される。
また、常時、雷放電位置標定装置40が、落雷の発生を検知し、落雷位置情報を作成する。そして、落雷位置取得部28が雷放電位置標定装置40から伝送されてきた落雷位置情報を取得する。
【0039】
落雷電荷量評価装置1は、常時、落雷判定部21により電界波形データを監視し(STEP100)、電界波形データにおいてピークを観測すると(STEP102)、落雷判定部21により、このピークについてトリガ時刻を含むピーク情報を作成し(STEP104)、このピークがノイズであるか否かを判定する(STEP106)。すなわち、まず、ピークを含む所定時間の電界波形データと磁界波形データの所定時間の相関係数の絶対値を算出し、算出した相関係数の絶対値が基準相関係数よりも大きい場合には落雷によるものと判定し、算出した相関係数の絶対値が基準相関係数よりも小さい場合には、落雷以外の原因によるもの、すなわち、ノイズであると判定する。
【0040】
落雷判定部21によりノイズによるものと判定された場合には(STEP106でYES)、STEP100に戻り、電界波形データを監視する。
【0041】
落雷判定部21によりピークがノイズによるものではない(すなわち、落雷によるもの)と判定された場合(STEP106でNO)には、STEP108において、トリガ電位差と基準電位差とを比較する。トリガ電位差が基準電位差以下である場合(STEP8でNO)には、電荷評価の対象としない無効データであると判定して、STEP100に戻り、電界波形データを監視する。
【0042】
また、トリガ電位差が基準電位差を超える場合(STEP108でYES)には、電荷評価の対象としない有効データであると判定して、有効データのピーク情報と、落雷位置情報とのデータマッチングを行う(STEP110)。すなわち、落雷判定部21は、有効データのピーク情報のトリガ時刻と、各落雷位置情報の落雷時刻とを比較し、有効データのトリガ時刻と、落雷時刻との差が最も小さいデータを、有効データに対応する落雷位置情報であるとしてこれらを対応付けて、データ読込部22へ送信する。
【0043】
次に、データ読込部22により、一時記憶部31から、落雷判定部21から受信した有効データのピーク情報にかかるピークを含む電界波形データ及び磁界波形データを取得する(STEP112)。
【0044】
次に、落雷発生時点検知部23により、ピーク情報のトリガ時刻を、落雷発生時点とする(STEP114)。
次に、リーダ検知部24により、データ読込部22が取得した磁界波形データに基づいて、落雷発生に先行して起こるリーダの発生時点を検知する(STEP116)。
【0045】
次に、リーダ進展時間算出部25により、リーダ検知部24が検知したリーダ発生時点から、落雷発生時点検知部23が検知した落雷の発生時点までの時間をリーダ進展時間として算出する(STEP118)。
次に、電荷高度算出部26により、リーダ進展時間算出部25で算出されたリーダ進展時間と、リーダ進展速度とに基づいて落雷電荷の高度を算出する(STEP120)。
【0046】
次に、落雷電荷算出部27により、電荷高度算出部26により算出された落雷電荷の高度と、落雷位置情報と、データ読込部22が一時記憶部31から読み込んだ電界波形データとに基づいて落雷電荷量を算出する(STEP122)。
【0047】
このようにして算出された落雷電荷量は、データ読込部22が読み込んだ電界波形データ及び磁界波形データや、落雷位置取得部28が取得した位置情報ともに表示装置30により画面表示する(STEP124)。
【0048】
本発明によれば、落雷電荷評価装置2は、落雷位置標定装置から多数の落雷位置情報を取得することとなるが、有効データのピーク情報のトリガ時刻と、各落雷位置情報の落雷時刻とを比較して、データマッチングを行うことで、有効データのピーク情報にかかる落雷に該当する落雷位置情報をピーク情報と確実に対応付けることができる。
【符号の説明】
【0049】
1 落雷電荷評価システム、2 落雷電荷評価装置、
10 計測子局、12 電界計測部、
14 磁界計測部、20 データ取得部、
21 落雷判定部、22 データ読込部
23 落雷発生時点検知部、24 リーダ検知部、
25 リーダ進展時間算出部、26 電荷高度算出部、
27 落雷電荷算出部、28 落雷位置取得部、
29 データマッチング部、30 表示部、
31 一時記憶部、40 雷放電位置標定装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
落雷発生時の落雷電荷量を算出する落雷電荷評価システムであって、
測定対象地点における電界及び磁界の時間変化を示す電界データ及び磁界データを取得するデータ取得手段と、
前記データ取得手段により取得された電界データ又は磁界データに所定の勾配以上の変化が観測されると、当該変化を観測した時刻を含むピーク情報を作成するピーク情報作成手段と、
落雷位置を標定する落雷位置標定装置から、標定された落雷の時刻と、落雷位置とを含む落雷位置情報を取得する落雷位置取得手段と、
前記ピーク情報作成手段により作成されたピーク情報の前記変化を観測した時刻と、前記落雷位置取得手段により取得された落雷位置情報の落雷の時刻とを、比較することにより、前記ピーク情報に対応する落雷位置情報を特定するマッチング手段と、
前記マッチング手段により特定された落雷位置情報に含まれる落雷位置と、前記測定対象地点との距離を算出し、当該算出した距離と、前記ピーク情報に該当する変化を含む前記電界データ及び磁界データとに基づき落雷電荷量を算出する落雷電荷量算出手段とを備えることを特徴とする落雷電荷評価システム。
【請求項2】
落雷位置を標定する落雷位置標定装置、及び、測定対象地点における電界及び磁界の時間変化を測定する計測装置と通信可能な装置により、落雷発生時の落雷電荷量を算出する方法であって、
前記計測装置から電界及び磁界の時間変化を示す電界データ及び磁界データを取得するステップと、
前記取得した電界データ又は磁界データに所定の勾配以上の変化を観測すると、当該変化を観測した時刻を含むピーク情報を作成するステップと、
落雷位置標定装置から、標定された落雷の時刻と、落雷位置とを含む落雷位置情報を取得するステップと、
前記作成したピーク情報の前記変化を観測した時刻と、前記取得した落雷位置情報の落雷の時刻とを、比較することにより、前記ピーク情報に対応する落雷位置情報を特定するステップと、
前記特定した落雷位置情報に含まれる落雷位置と、前記計測装置との距離を算出し、当該算出した距離と、前記ピーク情報に該当する変化を含む前記電界データ及び磁界データとに基づき落雷電荷量を算出するステップとを含むことを特徴とする落雷電荷量算出方法。

【図1】
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【図6】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−103209(P2012−103209A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254138(P2010−254138)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)