説明

葉物野菜の播種機

【課題】葉物野菜の収穫時の利便性を考慮した葉物野菜の播種機を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明による葉物野菜の播種機は、移動可動な機枠に駆動輪1、排土板からなる播種溝を形成する溝切装置2、駆動輪と連動して播種する播種装置5、覆土板で播種した種子を覆土する覆土装置6、および凹形状の鎮圧ローラ7が、この順に配置し、播種し覆土後に鎮圧ローラ7により凸形状畝を形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、葉物野菜の収穫時の利便性を想定した葉物野菜の播種機、特に手押し式播種機に関する。
【背景技術】
【0002】
農作物において、収穫時の利便性を想定した播種方法および播種装置等については、幾つかの方法および装置が提案されている。例えば、球根類、馬鈴薯、甘薯、落花生等の地中作物について、ネットの上に植付け栽培し、収穫時にネットを引き上げることにより、球根類、馬鈴薯、甘薯、落花生等の地中作物の収穫が大幅に省力化できる方法や装置が開示されている(特許文献1、2)。葉菜類については、播種と同時に種子の直上にメッシュ上のテープを敷設しておき、収穫時にテープを巻き取ることにより収穫の省力化を達成する方法が開示されている(特許文献3)。いずれも収穫時にネットやテープを機械で巻き取り収穫するもので、大規模栽培では適した方法および装置である。
【0003】
しかし一般的農家では、従来、田畑の葉物野菜の収穫時には、作業者が収穫すべき野菜を傷付けないように一方の手で押さえた上で、他方の手に持った鎌等により根切りを行っていた。このような手作業を改善する種々の収穫機が開発されてきたが、田畑の凸凹面に十分に対応できない、限られたスペースでは使用し難い、動力原付きであるため機械重量が重い、ビニールハウス等では使用し難い等々の問題点があった。そのため、本発明者らは、先に、安全でかつ軽量で、収穫物の根切りを容易に作業することができ、根切り位置を容易に一定にすることができる根切り収穫装置を開発した(特許文献4)。
【0004】
一方、畝形成と同時に播種する方法及び播種装置についても幾つかの開示があるが(特許文献5,6,7,8)、葉物野菜について、播種し覆土後に鎮圧により凸形状畝を形成させ、葉物野菜の株元の位置を高くし、根切り収穫時に容易に効率良く収穫できるようにした播種機に関する開示はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−304804号公報
【特許文献2】特開昭48−80324号公報
【特許文献3】特開2008−22718号公報
【特許文献4】特開2007−295927号公報
【特許文献5】特公昭64−5842号公報
【特許文献6】特許第4151175号公報
【特許文献7】特許第4120966号公報
【特許文献8】特開2009−11162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
葉物野菜の根切り収穫については、依然として殆どが手作業またはそれに近いものであるため、上記特許文献4にて開示している根切り収穫装置が好ましいが、該根切り収穫装置を実際に使用するに当たって、一定の高さと形状の畝の上に生育した葉物野菜であれば、更に収穫が容易にかつ効率的に出来ることが考えられた。本発明は、葉物野菜について、根切り収穫時の利便性を考慮して、一定の高さと形状の畝に葉物野菜の種子を播種するための播種機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、葉物野菜の種子を播種し、その種子に覆土後、凹形状の鎮圧ローラで鎮圧し畝形成し凸形状畝の隆起部に種子が配置されるようにできる播種機を見出し、さらに、このような播種機にて、播種した葉物野菜は、凸形状畝の上に生育し、畝が崩れることがなく、根切り収穫時には、容易に、かつ効率良く収穫できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
即ち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)葉物野菜の播種機であって、移動可能な機枠に設けられた駆動輪、溝切装置、駆動輪と連動した播種装置、覆土装置、および鎮圧ローラが、この順に配置し、播種し覆土後の鎮圧により凸形状畝を形成することができる凹形状を有する鎮圧ローラを備えたことを特徴とする播種機;
(2)前記鎮圧ローラの鎮圧部分を土付着防止用被覆素材で被覆したものであることを特徴とする(1)記載の播種機;
(3)前記土付着防止用被覆素材がクロロプレンゴムである(1)または(2)記載の播種機;
(4)手押し式であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の播種機;
(5)土付着防止用被覆素材で被覆された、鎮圧することにより凸形状畝を形成することができる凹形状を有する(1)記載の播種機用鎮圧ローラ;
などを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、葉物野菜の根切り収穫時の利便性を想定した凸形状畝に播種できる播種機、特に手押し式播種機を提供できる。本発明品は、手押し式播種機であるため、ビニールハウス内でも安全で、かつ操作性に優れており、収穫時には、例えば特許文献4記載の収穫装置を利用して、葉物野菜を効率良く収穫できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明による葉物野菜の播種機の実施例を示す全体図である。
【図2】本発明による葉物野菜の播種機の実施例を示す側面図である。
【図3】鎮圧ローラの斜視図である。
【図4】播種し覆土後に鎮圧ローラで凸形状畝を形成した後の模式図である。
【図5】鎮圧ローラの形状の他の例を示す正面図である。
【図6】播種し覆土後に図5で示す鎮圧ローラで凸形状畝を形成した後の模式図である。
【図7】本発明の播種機を用いて葉物野菜の種子を播種し、収穫前の状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下において本発明の詳細を説明する。なお、本発明の播種機で播種し収穫する葉物野菜として、大和マナ、コマツナ、チンゲンサイ、春菊、ミズナ、ホウレンソウ等の軟弱野菜を例示できる。
【0012】
以下において、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。図1は本発明の一実施形態に係る播種機の構成を説明する全体図、図2は本発明の一実施形態に係る播種機の構成を説明する横断面図、図3は鎮圧ローラの斜視図、図4は播種し覆土後に鎮圧ローラで凸形状畝を形成した後の模式図、図5は鎮圧ローラの形状の他の例を示す正面図、ならびに図6は播種し覆土後に図5で示す鎮圧ローラで凸形状畝を形成した後の模式図である。さらに本発明の播種機を用いて、葉物野菜の種子を播種し、収穫前の状態を図7に示す。
【0013】
本発明の播種機は、図1および図2において、移動可能な機枠8に設けられた駆動輪1、溝切装置2、駆動輪と連動した播種装置5(種子タンク3および種子分離装置4からなる)、覆土装置6、および鎮圧ローラ7が、この順に配置されており、排土板からなる溝切装置2で播種溝をつくり、駆動輪1の回転と連動して種子タンク3に入れた種子が種子分離装置4から播種される播種装置5にて播種し、排土板と直角方向に向いている覆土板からなる覆土装置5により播種された種子を覆土し、続いて凹形状鎮圧ローラ7で鎮圧するとともに凸形状の畝を形成し、畝の隆起部(凸形状部)に種子が位置するように構成されている。図4は、本発明の一実施形態に係わる播種機にて播種後畝形成した状態を示す説明図である。なお、本発明において、凸形状は、台形状の形状も含めた形状を意味する。
【0014】
凹形状鎮圧ローラ7の一実施形態を示す斜視図を図3に示すが、その大きさは、対象となる葉物野菜の収穫時の大きさにより異なるため、その対象葉物野菜に応じて鎮圧ローラの大きさ、凹形状の溝幅、深さが異なるものに付け替えることが出来る。鎮圧ローラの大きさは、用いる播種機の大きさにより制限があるが、例えば、凹の溝幅40〜60mm、溝深さ15〜30mmが好ましい。大和マナやホウレンソウの場合、例えば、図2におけるaは約35mm、bは約50mm、cは約20mmおよびdは約200mmである。鎮圧ローラ7の重さは、鎮圧して畝形成できる程度の重さが必要であるが、余り重すぎると操作性に問題が生じる。手押し式播種機の場合、鎮圧ローラ7の重量は、例えば、1.5〜2.0kgが好ましい。
【0015】
また、別の実施形態として、鎮圧ローラ7の凹形状を変えることにより、凸形状を変えた畝を形成させることも可能である。例えば、図5で示す形状の鎮圧ローラ7に置き換えることにより、図6で模式的に示す台形状の凸形状畝を形成させることが可能である。鎮圧ローラの大きさおよび重さは上記と同様であり、fで示される角度は0〜30度である。例えば、図5および図6において、aは約35mm、bは約50mm、cは約20mm、dは約200mm、eは約40mm、および角度(f)は約14度である。
【0016】
鎮圧ローラ7は、覆土を鎮圧し、凸形状畝を形成する機能を持つため、例えば、ローラに土が付着し、その役割を果たすことができなくなるため、土付着防止のための素材でつくるか、そのような素材で鎮圧ローラの接地部分を被覆する必要がある。そのような土付着防止用被覆素材として、合成ゴムや生ゴムなどゴム素材が用いられる。ゴム素材としては、例えば、クロロプレンゴム、スポンジゴム、シリコーンゴムなどが好ましい。特に、クロロプレンゴムが、その性質およびコスト面から好ましい。
【0017】
駆動輪1は、鎮圧ローラ7と同様に土付着防止用ゴム素材で接地部分が、被覆されているのが好ましい。また、駆動輪1は、後述の播種装置5(特に種子分離装置4)とギアとチェーンにより連動しており、駆動輪1の回転に連動して均一に播種できるような構成となっている。ギアの大きさを変えることで、播種間隔を調節することが可能である。
【0018】
播種装置5は、種子タンク3と種子分離装置4からなり、種子分離装置4と駆動輪1とは、例えば、チェーンにより連結されており、駆動輪1の回転に連動した種子分離装置は、種子タンクに蓄えられた種子を所定量ずつ分離して、溝切装置2で形成した播種溝に均一に播種できるような構成となっている。一般に種子タンク3と結合した種子分離装置4としては、回転目皿式、ロール式およびベルト式があり、図1で示す種子分離装置は、ロール式である。種子分離装置4は、種子の大きさに応じたものに取り替えることが可能で、多種多様な種子に対応できる。
【0019】
溝切装置2は、駆動輪および鎮圧ローラに対して直角方向に、かつ鎮圧ローラの凹形状の中央に位置する部分に必要な深さの播種溝を形成しうるようになっている。溝切装置と
しては、例えば、コーレター型とディスク型があり、図1で示す溝切装置2は、先端が角錐形状を有するコーレター型である。溝切装置は深さを調節することが可能であり、種子の土中の播種深度を調節できる。
【0020】
覆土装置5は、溝切装置3と直角方向に向いており、例えば、図1で示すような板状物であり、溝切装置にて形成された播種溝に種子を播種後、種子を覆土する機能を有する。
【0021】
以上詳しく説明した収穫時の利便性を考慮した葉物野菜の播種機は、本発明の範囲内で種々の変形を施すことができる。例えば、手押し式播種機の例を示したが、原動機を用いてもよい。また、機枠内の溝切装置、播種装置、覆土装置および鎮圧ローラは、脱着可能であり、別の型式に変更可能である。また、上記に説明したように鎮圧ローラの形を変えることにより、凸形状の形を変えた畝形成も可能である。さらに、播種装置5の種子分離装置4および溝切装置2等を、必要に応じて上記にて説明した別の型式に変更することができる。
【0022】
さらに、図1および2で具体的に説明した例は、1条播種機であるが、該1条播種機を横に連結した形の播種機にすると複数条播種することができる。例えば、2個連結した形のものであれば、2条播種、4個連結した形のものであれば4条播種が可能となり、本発明には、2条播種機、4条播種機など複数条播種機も包含される。
【0023】
以上のように、本発明の播種機を用いて、葉物野菜の種子を播種した場合の収穫前の状態は、図7に示す通りで、凸形状の畝の上に生育した状態の葉物野菜は、例えば特許文献4にて開示された根切り収穫装置にて、従来より、さらに効率よく収穫することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0024】
収穫時の利便性を考慮した本発明による葉物野菜の播種機により、農業分野において、労働条件の改善及び作業効率の向上に寄与できる。
【符号の説明】
【0025】
1 駆動輪
2 溝切装置(排土板)
3 種子タンク
4 種子分離装置
5 播種装置
6 覆土装置(覆土板)
7 鎮圧ローラ
8 機枠
9 保持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
葉物野菜の播種機であって、移動可能な機枠に設けられた駆動輪、溝切装置、駆動輪と連動した播種装置、覆土装置、および鎮圧ローラが、この順に配置し、播種し覆土後に鎮圧により凸形状畝を形成することができる凹形状を有する鎮圧ローラを備えたことを特徴とする播種機。
【請求項2】
前記鎮圧ローラの鎮圧部分を土付着防止用被覆素材で被覆したものであることを特徴とする請求項1記載の播種機。
【請求項3】
前記土付着防止用被覆素材がクロロプレンゴムである請求項1または請求項2記載の播種機。
【請求項4】
手押し式であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の播種機。
【請求項5】
土付着防止用被覆素材で被覆された、鎮圧することにより凸形状畝を形成することができる凹形状を有する請求項1記載の播種機用鎮圧ローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−254715(P2011−254715A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−129677(P2010−129677)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【出願人】(000225142)奈良県 (42)
【出願人】(592081483)三晃精機株式会社 (7)
【Fターム(参考)】