説明

蒸気タービン可変間隙パッキング用装置および方法

【課題】第1のパッキングリングセグメント(22)、第2のパッキングリングセグメント(24)、第3のパッキングリングセグメント(26)、第4のパッキングリングセグメント(28)、静止部品の第1の半割り部分、静止部品の第2の半割り部分、および1つまたは複数のシールキー(46)を有するパッキングリングアセンブリを提供すること。
【解決手段】第1のパッキングリングセグメント(22)および第2のパッキングリングセグメント(24)は、静止部品の第1の半割り部分内に配置される。第3のパッキングリングセグメント(26)および第4のパッキングリングセグメント(28)は、静止部品の第2の半割り部分内に配置される。シールキー(46)は、そのそれぞれが第1または第2のパッキングリングセグメント(22)(24)を支持するように、静止部品の第1の半割り部分と第2の半割り部分との間の中間線位置に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、一般に蒸気タービンに関し、より具体的には蒸気タービンの回転部品と静止部品との間のシールに関する。
【背景技術】
【0002】
タービンなどの回転機械では、回転部品と静止部品との間にシールが設けられる。たとえば、蒸気タービンでは、静止部品と回転部品との間にラビリンスシールを形成する複数の弓形パッキングリングセグメント(シールリングセグメントと呼称されることもある)を設けるのが通例である。通常、弓形パッキングリングセグメントは、機械の回転軸と同心の、静止部品の環状溝中に配置され、したがって、回転部品のシール面と同心である。各弓形シールセグメントは、弓形シール面を、回転部品のシール面と対向するように担持する。ラビリンス形式のシールでは、シール面は、軸方向に離隔された一続きの歯を半径方向に向けたものを担持し、それらの歯は、回転部品のシール面を形成する軸方向に離隔された一続きの環状歯から半径方向に離隔される。シール機能は、作動媒体、たとえば蒸気が、シール面の歯と回転部品の対向面とによって画成されるラビリンス内の比較的狭い間隙を通過する時に、作動媒体の乱流を発生させることによって達成される。
【0003】
回転装置と静止部品との間に物理的接触なしに適切な間隙を維持することができると、効果的なシールの形成が可能になる。この、セグメントのシール面と回転部品の対向するシール面との半径方向間隙が、大きくなり過ぎると、乱流が生成され難くなり、シール作用が減殺される。逆にシール間隙が狭すぎると、シールの歯が回転要素に接触する可能性があり、歯がその鋭い輪郭を失い、間隙が広がる結果となり、それ以降、生じる乱流が減少し、やはりシール作用が減殺される。
【特許文献1】米国特許出願第11/287,727号
【特許文献2】米国特許第5,709,388号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、タービンの過渡作動状態では設計点/定常作動状態より大きな間隙が必要なので、可変間隙パッキングリングが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1のパッキングリングセグメント、第2のパッキングリングセグメント、第3のパッキングリングセグメント、第4のパッキングリングセグメント、静止部品の第1の半割り部分、静止部品の第2の半割り部分、および1つまたは複数のシールキーを有するパッキングリングアセンブリが本明細書に開示される。第1のパッキングリングセグメントおよび第2のパッキングリングセグメントは、静止部品の第1の半割り部分内に配置される。第3のパッキングリングセグメントおよび第4のパッキングリングセグメントは、静止部品の第2の半割り部分内に配置される。シールキーが、そのそれぞれが第1または第2のパッキングリングセグメントを支持するように、静止部品の第1の半割り部分と第2の半割り部分との間の中間線位置に配置される。
【0006】
さらに、シャフト、静止部品、パッキングリングアセンブリ、および1つまたは複数のシールキーを有する蒸気タービンが本明細書に開示される。パッキングリングアセンブリは、第1のパッキングリングセグメント、第2のパッキングリングセグメント、第3のパッキングリングセグメント、および第4のパッキングリングセグメントを有する。第1および第2のパッキングリングセグメントは、静止部品の第1の半割り部分内に配置される。第3および第4のパッキングリングセグメントは、静止部品の第2の半割り部分内に配置される。シールキーは、そのそれぞれが第1または第2のパッキングリングセグメントを支持するように、静止部品の第1の半割り部分と第2の半割り部分との間の中間線位置に配置される。
【0007】
さらに本明細書には、回転機械のロータシャフトと静止部品との間のラビリンスシールの適切な作動を維持する方法が開示される。第1のパッキングリングセグメントおよび第2のパッキングリングセグメントは、静止部品の第1の半割り部分に取り付けられる。第3のパッキングリングセグメントおよび第4のパッキングリングセグメントは、静止部品の第2の半割り部分に取り付けられる。1つまたは複数のシールキーが静止部品の第1の半割り部分に取り付けられ、それにより、シールキーのそれぞれが、第1または第2のパッキングリングセグメントを静止部品の第1の半割り部分内に支持し含め、第3または第4のパッキングリングセグメントが静止部品の第2の半割り部分内でロータシャフトから半径方向に移動することができるようにする。
【0008】
添付図中、同じ要素には同様に番号が付されている例示的な図面を参照する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1を参照すると、静止部品、たとえば第1の隔壁半割り部分16および第2の隔壁半割り部分18を備えるタービン隔壁14中に配置されたタービンシャフト12を有する蒸気タービン10の一部が示されている。漏洩を防止するために、ラビリンスシールが、タービンシャフトと隔壁との境界面に設けられている。ラビリンスシールは、図1に示すように、タービンシャフト12の周りに延在する4個の弓形セグメントを有する、シールリングアセンブリと呼称されることもあるパッキングリングアセンブリを備える。パッキングリングセグメントは、第1のパッキングリングセグメント22および第2のパッキングリングセグメント24が、第1の隔壁半割り部分16と第2の隔壁半割り部分18との中間線の第1の側方に配置され、第3のパッキングリングセグメント26および第4のパッキングリングセグメント28が、第1の隔壁半割り部分16と第2の隔壁半割り部分18との中間線の第2の側方に配置されるように構成されている。図1のアセンブリおよびその他の図で、セグメントは、始動作動時および最高速度作動時にそれぞれ、タービンシャフト12の周りで最も外側に開いた広い間隙位置と最も内側に閉じた狭い間隙位置との間を移動することができる正圧可変間隙パッキングリングセグメントを備えることが理解されよう。パッキングリングセグメントは、その中に配設されたばね30によって、最も外側に開いた最大径位置まで移動させることができる。パッキングリングセグメントを閉じた小直径位置に移動させるために、流れている媒体、たとえば蒸気をパッキングリングセグメントの外面に沿って導く複数の通路(図示せず)を隔壁またはパッキングリングセグメント中に設け、それによって、パッキングリングセグメントを、ばね30の付勢に対抗してタービンシャフト12に向かって内側に変位させることができる。このタイプの正圧可変間隙パッキングリングセグメントが、米国特許出願第11/287,727号にさらに開示されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0010】
さらに図2および3に示されるように、各パッキングリングセグメントは、シール面38および半径方向に突出した歯40を有し、各シール面38は、互いに離れるように軸方向に延びる1対のセグメントシールフランジ42によって形成される。パッキングリングセグメントの外径部分は、同様に軸方向反対方向に互いに離れるようにパッキングリングセグメントから延びるセグメント位置決めフランジ44を備える。軸方向に細くなった首部45が、セグメントシールフランジ42とセグメント位置決めフランジ44との間に延在する。パッキングリングセグメントは、隔壁14内の全体的にダブテール形状をした環状溝32中に配置される。環状溝32は、軸方向に互いに向かって延びてそれらの間にスロット36を画成する1対の隔壁位置決めフランジ34(図3に示す)により、隔壁14の最も内径側の部分に沿って画成される。パッキングリングセグメントは、軸方向に細くなったその首部45が、隔壁スロット36内に嵌合するように配置される。
【0011】
さらに、1対のシールキー46が、第1の隔壁半割り部分16と第2の隔壁半割り部分18との間の中間線位置で、パッキングリングセグメントの最大半径位置に装着される。シールキー46は、たとえば、ボルト49によって、第1の隔壁半割り部分16に隔壁スロット48中で固定され、内径方向に突出して、第1の隔壁半割り部分16と第2の隔壁半割り部分18との間の中間線に隣接する、パッキングリングセグメントそれぞれの端部に沿って形成されたパッキングリングセグメントスロット50中に延出する。言い換えれば、それぞれのパッキングリングセグメントが、パッキングリングセグメントスロット50を2分の1ずつ画成し、より具体的には、第1のパッキングリングセグメント22および第4のパッキングリングセグメント28が一方のセグメントスロット50を画成し、第2のパッキングリングセグメント24および第3のパッキングリングセグメント26が直径方向反対側の他方のセグメントスロット50を画成する。
【0012】
シールキー46は、重力下での円周方向変位に対して第1のパッキングリングセグメント22および第2のパッキングリングセグメント24を支持する。シールキー46はさらに、第1のパッキングリングセグメント22および第2のパッキングリングセグメント24が、円周方向変位から生じる力を第3のパッキングリングセグメント26および第4のパッキングリングセグメント28に掛けるのを防止する。シールキー46は、第1パッキングリングセグメント22および第2のパッキングリングセグメント24を第1の隔壁半割り部分16内に拘束し、したがって、シールキー46はまた、第1のパッキングリングセグメント22と第2のパッキングリングセグメント24との間隙を最小限に抑える。さらに、シールキー46は、第1のセグメント22および第2のセグメント24の水平方向変位(水平方向は、第1と第2の隔壁半割り部分の間の中間線とタービンシャフト12の中心軸によって形成される、図1および2の水平面として定義される)を可能にし、第3のセグメント26および第4のセグメント28の半径方向変位を可能にする。第3のパッキングリングセグメント26および第4のパッキングリングセグメント28の半径方向変位は、タービンシャフト12の撓みが最大になるタービンシャフト12の下側垂直方向の半径方向間隙を大きくすることができる。
【0013】
シールキー46は、調節ねじ54と係合するねじ穴52をさらに備える。ねじ穴52は、調節ねじ54を調節すると、第1のパッキングリングセグメント22または第2のパッキングリングセグメント24を変位させるような方向に向けられている。調節ねじ54が、シールキー46から延出するように調節されると、露出した調節ねじ54の先端がパッキングリングセグメントと接触し、そのパッキングリングセグメントをシールキー46から円周方向に押し離す。第1のパッキングリングセグメント22および/または第2のパッキングリングセグメント24を調節することにより、全てのパッキングリングセグメントを真の中心位置に適切に心合わせすることができる。
【0014】
上記の特性により、パッキングリングアセンブリおよびシールキー46を完全にそれぞれの隔壁半割り部分中に収め込むことができ、したがって組立上の問題を防止できる。さらに、パッキングリングアセンブリおよびシールキー46は、いかなる既存のダブテール寸法とでも、またいかなる既存の隔壁アセンブリにでも取り付け、使用することができる。したがって、パッキングリングアセンブリおよびシールキー46は、隔壁構成部品をほとんどまたはまったく改修することなく既存の産業用蒸気タービンに取り付けることができる。さらに、パッキングリングアセンブリおよびシールキー46は、既存の蒸気タービンに改装組み込みを行うことができる。パッキングリングアセンブリおよびシールキー46は、蒸気タービンの整備期間またはオーバホール時に、既存のパッキングリングアセンブリを隔壁から取り外し、それをパッキングリングアセンブリおよびシールキー46と、隔壁をほとんどまたはまったく改修することなく容易に交換することができる望ましい部品およびハードウェアを有するキットとして供給することができる。
【0015】
本発明を、1つまたは複数の好ましい実施形態を参照して記述してきたが、本発明の範囲から逸脱することなくその要素に様々な変更を加えることができ、均等物と置き換えることができることが、当業者には理解されよう。さらに、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、本発明の教示に特定の状況や素材を適合させるために多くの修正を加えることができる。したがって、本発明は、この発明を実施するために考案された最良の形態として開示された特定の実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された範囲に包含される全ての実施形態を含むものとする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態が適用された蒸気タービンの一部分の断面図である。
【図2】本発明の実施形態が適用された図1の例示的蒸気タービンの拡大図である。
【図3】本発明の実施形態が適用された図2の例示的蒸気タービンの横断面図である。
【符号の説明】
【0017】
10 蒸気タービン
12 タービンシャフト
14 タービン隔壁
16 第1の隔壁半割り部分
18 第2の隔壁半割り部分
22 第1のパッキングリングセグメント
24 第2のパッキングリングセグメント
26 第3のパッキングリングセグメント
28 第4のパッキングリングセグメント
30 ばね
32 ダブテール形状をした環状溝
34 フランジ
36 スロット
38 シール面
40 突出した歯
42 シールフランジ
44 セグメント位置決めフランジ
45 軸方向に細くなった首部
46 シールキー
48 隔壁スロット
50 リングセグメントスロット
52 ねじ穴
54 調節ねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静止部品の第1の半割り部分内に配設された第1のパッキングリングセグメント(22)および第2のパッキングリングセグメント(24)と、
静止部品の第2の半割り部分内に配設された第3のパッキングリングセグメント(26)および第4のパッキングリングセグメント(28)と、
前記静止部品の前記第1の半割り部分と前記第2の半割り部分との間の中間線位置に配設され、それぞれが前記第1または第2のパッキングリングセグメント(22)(24)を支持する1つまたは複数のシールキー(46)と
を備えるパッキングリングアセンブリ。
【請求項2】
前記1つまたは複数のシールキー(46)のそれぞれが、前記静止部品の前記第1の半割り部分に固定されている、請求項1記載のパッキングリングアセンブリ。
【請求項3】
前記1つまたは複数のシールキー(46)のそれぞれが、前記第1または第2のパッキングリングセグメント(22)(24)に隣接するねじ穴(52)と、前記ねじ穴(52)に係合する調節ねじとをさらに備える、請求項1記載のパッキングリングアセンブリ。
【請求項4】
前記1つまたは複数のシールキー(46)が、2本のシールキー(46)である、請求項1記載のパッキングリングアセンブリ。
【請求項5】
シャフトと、
静止部品と、
前記静止部品の第1の半割り部分内に配設された第1のパッキングリングセグメント(22)および第2のパッキングリングセグメント(24)、ならびに前記静止部品の第2の半割り部分内に配設された第3のパッキングリングセグメント(26)および第4のパッキングリングセグメント(28)を有するパッキングリングアセンブリと、
前記静止部品の前記第1の半割り部分と前記第2の半割り部分との間の中間線位置に配設された1つまたは複数のシールキー(46)であって、それぞれが前記第1または第2のパッキングリングセグメント(22)(24)を支持する1つまたは複数のシールキー(46)と
を備える蒸気タービン(10)。
【請求項6】
前記静止部品の前記第1および第2の半割り部分が、前記静止部品の前記第1の半割り部分と前記第2の半割り部分との間の中間線位置に配設された1対の半径方向スロット(48)をさらに備える、請求項5記載の蒸気タービン(10)。
【請求項7】
前記静止部品のスロット(48)の1つと整列するスロット(50)を形成するために、前記第1および第4のパッキングリングセグメント(22)(28)が、それぞれスロット(50)の2分の1ずつをさらに備える、請求項6記載の蒸気タービン(10)。
【請求項8】
回転機械のロータシャフトと静止部品との間のラビリンスシールの適切な作動を維持する方法であって、
静止部品の第1の半割り部分に第1のパッキングリングセグメント(22)および第2のパッキングリングセグメント(24)を取り付けるステップと、
静止部品の第2の半割り部分に第3のパッキングリングセグメント(26)および第4のパッキングリングセグメント(28)を取り付けるステップと、
1つまたは複数のシールキー(46)のそれぞれが、前記第1または第2のパッキングリングセグメント(22)(24)を前記静止部品の前記第1の半割り部分内に支持し且つ収容し、前記第3または第4のパッキングリングセグメント(26)(28)が前記静止部品の前記第2の半割り部分内で前記ロータシャフトから半径方向に移動することができるよう、1つまたは複数のシールキー(46)を前記静止部品の前記第1の半割り部分に取り付けるステップと
を有する方法。
【請求項9】
前記1つまたは複数のシールキー(46)を取り付ける前記ステップが、前記第1または第2のパッキングリングセグメント(22)(24)が前記第3または第4のパッキングリングセグメント(26)(28)に力を掛けるのを防止するように前記シールキー(46)を配設するステップをさらに含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記1つまたは複数のシールキー(46)を取り付ける前記ステップが、前記シールキー(46)を前記静止部材の前記第1の半割り部分に固定するステップをさらに含む請求項8記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−146845(P2007−146845A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−319409(P2006−319409)
【出願日】平成18年11月28日(2006.11.28)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】