説明

蒸気ボイラ装置における復水経路の腐食抑制方法

【目的】復水経路からの復水をボイラ給水と混合して再利用する蒸気ボイラ装置において、復水経路の腐食を効果的にかつ経済的に抑制する。
【構成】給水タンク40から蒸気ボイラ20へ給水経路41を通じてボイラ給水を供給して加熱することにより発生する蒸気を負荷装置2へ供給して利用するとともに、蒸気が凝縮して得られる復水を負荷装置2から延びる復水経路30を通じて給水タンク40へ回収して再利用する蒸気ボイラ装置1の運転において、蒸気とともに発生する炭酸ガスによる復水経路30の腐食を抑制するための中和剤を薬剤供給装置60から給水経路41へ供給する。そして、復水経路30から給水タンク40へ回収される復水における遊離の中和剤の濃度を薬剤濃度測定装置70で測定し、その濃度に基づいて、薬剤供給装置60からの中和剤の供給量を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気ボイラ装置における復水経路の腐食抑制方法、特に、補給水をボイラ給水として給水タンクに貯留し、給水タンクから蒸気ボイラへ給水経路を通じてボイラ給水を供給して加熱することにより発生する蒸気を負荷装置へ蒸気供給配管を通じて供給して利用するとともに、蒸気が凝縮して得られる復水を負荷装置から延びる復水経路を通じて給水タンクへ回収して再利用する蒸気ボイラ装置において、復水経路の腐食を抑制するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気ボイラへ給水タンクからボイラ給水を供給して加熱し、それにより発生する蒸気を負荷装置において利用すると共に、当該蒸気が凝縮して得られる復水を負荷装置から延びる復水経路を通じて給水タンクへ回収してボイラ給水として再利用する蒸気ボイラ装置が知られている。このような蒸気ボイラ装置は、給水タンクへ回収する復水のために、ボイラ給水として用いる補給水量を削減することができ、蒸気ボイラの経済的な運転が可能になる。
【0003】
ところで、上述の蒸気ボイラ装置において、復水を給水タンクへ回収するための復水経路は、炭素鋼などの非不動態化金属を用いて形成されていることが多く、ボイラ給水中に含まれる炭酸水素塩および炭酸塩の分解により発生する炭酸ガスの影響を受け、腐食が生じやすい。この腐食は、復水の円滑な回収を妨げる孔空きを復水経路に引き起こす場合があり、また、ボイラ給水において不純物成分となる鉄イオンその他の金属イオンを復水中に溶出させる可能性がある。
【0004】
そこで、蒸気ボイラ装置の運転では、通常、ボイラ給水、蒸気ボイラから負荷装置へ供給される蒸気若しくは復水経路に対し、復水経路の腐食原因となる炭酸ガスを中和するための中和剤を供給し、復水経路における腐食の進行を抑制している(例えば、特許文献1)。ここで、中和剤は、発生する炭酸ガスの予測量に応じて供給量を制御している。例えば、特許文献1に記載の方法では、蒸気ボイラで発生する蒸気量と炭酸ガスの発生量とが比例するものと予測し、発生する蒸気量に応じて中和剤の供給量を制御している。
【0005】
【特許文献1】特開2002−327904
【0006】
しかし、炭酸ガスの発生量は、蒸気ボイラで発生する蒸気量と対応するとは限らない。これは、炭酸ガスの発生量が炭酸水素塩および炭酸塩の濃度、並びに蒸気ボイラの運転圧力により変化するからである。したがって、発生する蒸気量が少なくても炭酸ガスの発生量が多いときもあるし、発生する蒸気量が多いにもかかわらず炭酸ガスの発生量が少ないときもある。前者の場合、発生する炭酸ガス量に対して中和剤の供給量が少なくなるため、復水配管の腐食が効果的に抑制されにくくなる。逆に、後者の場合は、中和剤を過剰に供給することになるため、経済性を損なう。
【0007】
本発明の目的は、復水経路からの復水をボイラ給水と混合して再利用する蒸気ボイラ装置において、復水経路の腐食を効果的にかつ経済的に抑制することにある。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る蒸気ボイラ装置における復水経路の腐食抑制方法は、補給水をボイラ給水として給水タンクに貯留し、給水タンクから蒸気ボイラへ給水経路を通じてボイラ給水を供給して加熱することにより発生する蒸気を負荷装置へ蒸気供給配管を通じて供給して利用するとともに、蒸気が凝縮して得られる復水を負荷装置から延びる復水経路を通じて給水タンクへ回収して再利用する蒸気ボイラ装置において、復水経路の腐食を抑制するためのものである。この方法は、給水経路、蒸気供給配管および復水経路のうちの少なくとも一つへ復水経路の腐食を抑制するための中和剤を供給する工程Aと、復水経路から給水タンクへ回収される復水の一部を試料として採取し、当該試料に含まれる遊離の中和剤の濃度を測定する工程Bとを含み、工程Aにおいて、工程Bにおいて測定された遊離の中和剤の濃度に基づいて中和剤の供給量を制御する。
【0009】
この方法をより具体的に説明すると、工程Bにおいて測定した遊離の中和剤の濃度が実質的にゼロレベルのとき、蒸気ボイラで発生した蒸気に含まれる炭酸ガスを中和するために工程Aで供給した中和剤の全量が消費されていることになり、復水経路には中和されない炭酸ガスが存在している可能性があるものと判断することができる。したがって、そのような場合は、上記試料から遊離の中和剤が検出される程度まで、工程Aにおいて中和剤の供給量を増す。これにより、中和剤の供給不足が解消され、復水経路の腐食が効果的に抑制される。
【0010】
一方、工程Bにおいて測定した遊離の中和剤の濃度が高いとき、蒸気ボイラで発生した蒸気に含まれる炭酸ガスを中和するために工程Aで供給した中和剤の量が発生している炭酸ガス量に比べて過剰であったものと判断することができる。したがって、そのような場合は、上記試料における遊離の中和剤の濃度が所定濃度へ低下するまで、工程Aにおいて中和剤の供給量を削減する。これにより、中和剤の過剰供給が解消され、復水配管の腐食を経済的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る蒸気ボイラ装置における復水経路の腐食抑制方法は、復水に含まれる遊離の中和剤の濃度に基づいて中和剤の供給量を制御しているため、復水配管の腐食を効果的にかつ経済的に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1を参照して、本発明の実施の一形態を実施可能な蒸気ボイラ装置を説明する。図1において、蒸気ボイラ装置1は、熱交換器、蒸気釜、リボイラ若しくはオートクレーブ等の蒸気使用設備である負荷装置2に対して蒸気を供給するためのものであり、給水装置10、蒸気ボイラ20、復水配管30、薬剤供給装置60、薬剤濃度測定装置70および制御装置80を主に備えている。
【0013】
給水装置10は、蒸気ボイラ20へボイラ給水を供給するためのものであり、ボイラ給水を貯留するための給水タンク40と、ボイラ給水として用いる補給水を給水タンクへ供給するための補給経路50とを主に備えている。給水タンク40は、その底部から蒸気ボイラ20へ延びる給水経路41を有している。給水経路41は、蒸気ボイラ20に連絡しており、給水タンク40内に貯留されたボイラ給水を蒸気ボイラ20へ送り出すための給水ポンプ42を有している。
【0014】
補給経路50は、注水路51を有している。この注水路51は、水道水、工業用水若しくは地下水等の水源から供給される原水が貯留されている原水タンク(図示せず)から給水タンク40へ補給水を供給するためのものであり、給水タンク40へ向けて軟水化装置52および脱酸素装置53をこの順に有している。
【0015】
軟水化装置52は、原水タンクからの補給水をナトリウム型陽イオン交換樹脂により処理し、補給水に含まれる硬度分、すなわち、カルシウムイオンおよびマグネシウムイオンをナトリウムイオンに置換して軟化水へ変換するためのものである。
【0016】
脱酸素装置53は、軟水化装置52において処理された補給水中の溶存酸素を除去するためのものであり、通常、分離膜を用いて溶存酸素を除去する形式のもの、処理水を減圧環境下において溶存酸素を除去する形式のもの、若しくは、処理水を加熱して溶存酸素を除去する形式のものなどの公知の各種の形式のものが用いられる。
【0017】
蒸気ボイラ20は、貫流ボイラであり、図2に示すように、給水経路41から供給されるボイラ給水を貯留可能な環状の貯留部21、貯留部21から起立する多数の伝熱管22(図2では二本のみ示している)、伝熱管22の上端部に設けられた環状のヘッダ23、ヘッダ23から負荷装置2へ延びる蒸気供給配管24およびバーナーなどの燃焼装置25を主に備えている。燃焼装置25は、ヘッダ23側から貯留部21方向へ燃焼ガスを放射し、伝熱管22を加熱可能である。
【0018】
伝熱管22は、非不動態化金属を用いて形成されている。非不動態化金属は、中性水溶液中において自然には不動態化しない金属をいい、通常はステンレス鋼、チタン、アルミニウム、クロム、ニッケルおよびジルコニウム等を除く金属である。具体的には、炭素鋼、鋳鉄、銅および銅合金等である。なお、炭素鋼は、中性水溶液中においても、高濃度のクロム酸イオンの存在下では不動態化する場合があるが、この不動態化はクロム酸イオンの影響によるものであって中性水溶液中での自然な不動態化とは言い難い。したがって、炭素鋼は、ここでの非不動態化金属の範疇に属する。また、銅および銅合金は、電気化学列(emf series)が貴な位置にあるため、通常は水分の影響による腐食が生じ難い金属と考えられているが、中性水溶液中において自然に不動態化するものではないので、非不動態化金属の範疇に属する。
【0019】
復水配管30は、負荷装置2から給水タンク40へ延びており、スチームトラップ31を有している。スチームトラップ31は、蒸気と水とを分離するためのものである。復水配管30は、通常、給水タンク40内に貯留されたボイラ給水に対して空気を巻き込まないようにするため、外気と隔絶されるよう施工されているのが好ましい。具体的には、復水配管30は、先端部がボイラ給水内に配置されているのが好ましく、給水タンク40の底部近傍に配置されているのが特に好ましい。復水配管30は、蒸気ボイラ20の伝熱管22と同じく、非不動態化金属を用いて形成されている。
【0020】
薬剤供給装置60は、給水経路41と連絡しており、給水タンク40から蒸気ボイラ20へ供給されるボイラ給水中へ薬剤を供給するためのものである。薬剤供給装置60は、薬剤を貯留するための薬剤タンク61と、薬剤タンク61から給水経路41へ延びる供給路62と、供給路62に設けられた供給ポンプ63とを有している。供給ポンプ63は、薬剤タンク61に貯留された薬剤を供給路62を通じて給水経路41へ送り出すものであり、流量制御が可能なものである。
【0021】
ここで用いられる薬剤は、後述する炭酸ガスの影響による復水配管30の腐食を抑制するためのものであり、炭酸ガスを中和可能な中和剤、具体的には、モルホリンやシクロヘキシルアミン等の揮発性アミン化合物である。
【0022】
薬剤濃度測定装置70は、分岐路71および計測装置72を主に備えている。分岐路71は、復水経路30を通じて給水タンク40へ回収される、後述する復水の一部を試料として採取するためのものであり、給水タンク40の直近において復水経路30から分岐しており、また、流量制御弁73を備えている。計測装置72は、復水経路30から分岐路61を通じて採取される復水試料に含まれる遊離の中和剤の濃度を自動測定するためのものである。例えば、この計測装置72は、所定量の復水試料に含まれる遊離の中和剤量、すなわち、遊離の揮発性アミン化合物量を、復水試料の酸消費量(pH8.3)に揮発性アミン化合物の種類に応じた係数αを乗じる方法により測定する。ここで、係数αは、揮発性アミン化合物の塩基性の強さを補正するためのものである。また、計測装置72は、所定量の復水試料に含まれる遊離の揮発性アミン化合物量を、復水試料の酸消費量(pH4.8)からIC(無機体炭素量)を減じる方法により測定するものであってもよい。
【0023】
制御装置80は、薬剤供給装置60および薬剤濃度測定装置70を制御するための電子情報処理組織であり、図3に示すように、中央制御装置81、読出専用記録装置82、書換可能記録装置83および入出力ポート84を主に備えている。中央制御装置81は、制御装置80全体の動作を制御するためのものである。読出専用記録装置82は、主に、薬剤供給装置60および薬剤濃度測定装置70の動作プログラムを記録している。書換可能記録装置83は、各種の電子データを一時的に記録するためのものである。さらに、入出力ポート84は、制御装置80において情報の入出力をするためのものであり、入力側に動作指令等を手入力するための入力装置85と計測装置72とが連絡し、また、出力側に供給ポンプ63が連絡している。
【0024】
次に、上述の蒸気ボイラ装置1の動作を説明する。
蒸気ボイラ装置1の運転では、先ず、原水タンクから注水路51を通じて給水タンク40へ補給水を供給し、この補給水をボイラ給水として給水タンク40に貯留する。
【0025】
この際、原水タンクからの補給水は、先ず、軟水化装置52において処理され、軟化水になる。この結果、補給水は、蒸気ボイラ20においてスケールを生成させにくくなる。この軟水化の過程において、補給水は、溶存している塩類がナトリウム塩に変化する。例えば、炭酸水素塩や炭酸塩もナトリウム塩に変化する。
【0026】
軟水化装置52において軟化水となった補給水は、次に、脱酸素装置53において脱酸素処理される。これにより、補給水は、蒸気ボイラ20において伝熱管22等の腐食を促進する溶存酸素が除去される。
【0027】
以上の結果、給水タンク40には、脱酸素処理された軟化水がボイラ給水として貯留されることになる。
【0028】
給水タンク40に補給水が貯留された状態で給水ポンプ42を作動させると、給水タンク40に貯留された補給水、すなわちボイラ給水は、給水経路41を通じて蒸気ボイラ20へ供給される。蒸気ボイラ20へ供給されたボイラ給水は、貯留部21においてボイラ水として貯留される。このボイラ水は、各伝熱管22を通じて燃焼装置25により加熱されながら各伝熱管22内を上昇し、徐々に蒸気になる。そして、各伝熱管22内において生成した蒸気は、ヘッダ23において集められ、蒸気供給配管24を通じて負荷装置2へ供給される。
【0029】
負荷装置2へ供給された蒸気は、負荷装置2を通過して復水配管30へ流れ、そこで潜熱を失って一部が凝縮水に変わり、スチームトラップ31において蒸気と水とが分離されて高温の復水になる。このようにして生成した復水は、復水配管30を通じて給水タンク40へ回収されて貯留された補給水と混合され、ボイラ給水として再利用される。この際、給水タンク40に貯留されたボイラ給水は、高温の復水により加熱されるので、蒸気ボイラ20での加熱負担が軽減される。したがって、蒸気ボイラ装置1は、蒸気ボイラ20を稼動するための燃料コストを抑制することができ、経済的に運転することができる。
【0030】
上述のような蒸気ボイラ装置1の運転中において、蒸気ボイラ20では、ボイラ水に含まれる炭酸水素塩および炭酸塩が加熱時に分解して炭酸ガスを発生する。この炭酸ガスは、蒸気とともに蒸気供給配管24および負荷装置2を経由して復水経路30へ排出される。このため、復水経路30は、この炭酸ガスの影響を受けて腐食が発生しやすい。
【0031】
そこで、蒸気ボイラ装置1は、運転中において、給水経路41へ薬剤供給装置60から中和剤を供給する。
【0032】
次に、図4に示す動作フローチャートに従い、薬剤供給装置60からの腐食抑制剤の供給方法を説明する。この供給方法は、制御装置80の読出専用記録装置82に記録された動作プログラムに基づいて実行される。
【0033】
先ずステップS1において、動作プログラムは、オペレータが動作開始スイッチをONにしたか否かを判断する。オペレータが動作スイッチをONにすると、動作プログラムはステップS2へ移行し、オペレータが中和剤の初期供給量を入力するのを待つ。ここで、初期供給量は、蒸気ボイラ20の蒸気供給量に基づいて蒸気ボイラ20から復水経路30へ排出されるものと予測される量の炭酸ガスを中和するのに必要な中和剤の供給量(単位時間当りの供給量)を意味する。
【0034】
オペレータが初期供給量を入力すると、動作プログラムはステップS3へ移行し、中和剤の初期供給を開始する。ここで、制御装置80は、ステップS2において入力された初期供給量に応じて供給ポンプ63を作動させ、薬剤タンク61に貯留された中和剤を供給路62を通じて給水経路41へ連続的に供給する。給水経路41へ供給された中和剤は、給水タンク40から蒸気ボイラ20へ供給されるボイラ給水中へ混入し、蒸気ボイラ20で加熱されて揮発する。これにより、蒸気ボイラ20において発生する炭酸ガスに揮発した中和剤が作用し、炭酸ガスが中和される。
【0035】
次に、動作プログラムは、ステップS4において、中和剤の供給開始からの経過時間tが所定時間t1に達したか否かを判断する。ここでの所定時間t1は、通常、中和剤により処理された蒸気に由来の復水が給水タンク40へ安定的に回収され始めるまでに要する時間である。
【0036】
経過時間tが所定時間t1に達したとき、動作プログラムはステップS5へ移行し、復水中に含まれる中和剤の濃度の測定を開始する。ここでは、先ず、流量制御弁73を制御し、復水配管30を給水タンク40に向けて流れる復水の一部が分析用の試料として分岐路71へ連続的に流れるように設定する。そして、分岐路71へ流れた復水試料に含まれる遊離の中和剤の濃度を計測装置72で連続的に測定する。
【0037】
次に、動作プログラムは、ステップS6へ移行し、ステップS5で測定した遊離の中和剤の濃度Cが所定濃度Xを超えるか否かを判断する。ここで、所定濃度Xは、0よりも大きい範囲において任意に設定することができるが、通常は、0よりも僅かに大きい程度に設定するのが好ましい。
【0038】
遊離の中和剤の濃度Cが所定濃度Xよりも大きいとき、動作プログラムはステップS7へ移行し、中和剤の供給量を削減する。具体的には、供給ポンプ63を制御し、薬剤タンク61から給水経路41へ供給される中和剤の量を削減する。この結果、蒸気ボイラ装置1では、中和剤の過剰供給が防止され、復水経路30の腐食を経済的に抑制することができる。
【0039】
一方、遊離の中和剤の濃度Cが所定濃度X以下のとき、動作プログラムはステップS8へ移行し、中和剤の供給量を増加させる。具体的には、供給ポンプ63を制御し、薬剤タンク61から給水経路41へ供給される中和剤の量を増加する。この結果、蒸気ボイラ装置1では、中和剤の供給不足が防止され、復水経路30の腐食を効果的に抑制することができる。
【0040】
ステップS7、S8の後、動作プログラムはステップS9へ移行し、オペレータが動作スイッチをOFFにしたか否かを判断する。オペレータが動作スイッチをOFFにすると、動作プログラムは修了し、中和剤の供給等の動作を停止する。一方、オペレータが動作スイッチをOFFにしないとき、動作プログラムはステップS6へ戻り、ステップS6〜S9を繰り返す。この結果、蒸気ボイラ装置1では、復水における遊離の中和剤の濃度に基づいて、継続的に中和剤の供給量が制御される。
【0041】
[変形例]
(1)上述の実施の形態では、薬剤濃度測定装置70において復水試料における遊離の中和剤の濃度を自動的に測定し、その結果に基づいて薬剤供給装置60から給水経路41への中和剤の供給量を自動制御しているが、復水試料における遊離の中和剤の濃度の測定と中和剤の供給量の制御とは手操作で実施することもできる。
【0042】
(2)上述の実施の形態では、給水経路41へ中和剤を供給しているが、中和剤は、蒸気供給配管24若しくは復水配管30へ供給することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施の一形態に係る蒸気ボイラ装置の概略図。
【図2】前記蒸気ボイラ装置において用いられる蒸気ボイラの一部断面概略図。
【図3】前記蒸気ボイラ装置において用いられる制御装置の概略図。
【図4】前記制御装置の動作フローチャート。
【符号の説明】
【0044】
1 蒸気ボイラ装置
2 負荷装置
20 蒸気ボイラ
24 蒸気供給配管
30 復水経路
40 給水タンク
41 給水経路
60 薬剤供給装置
70 薬剤濃度測定装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
補給水をボイラ給水として給水タンクに貯留し、前記給水タンクから蒸気ボイラへ給水経路を通じて前記ボイラ給水を供給して加熱することにより発生する蒸気を負荷装置へ蒸気供給配管を通じて供給して利用するとともに、前記蒸気が凝縮して得られる復水を前記負荷装置から延びる復水経路を通じて前記給水タンクへ回収して再利用する蒸気ボイラ装置において、前記復水経路の腐食を抑制するための方法であって、
前記給水経路、前記蒸気供給配管および前記復水径路のうちの少なくとも一つへ前記復水経路の腐食を抑制するための中和剤を供給する工程Aと、
前記復水経路から前記給水タンクへ回収される前記復水の一部を試料として採取し、前記試料に含まれる遊離の前記中和剤の濃度を測定する工程Bとを含み、
工程Aにおいて、工程Bにおいて測定された遊離の前記中和剤の濃度に基づいて前記中和剤の供給量を制御する、
蒸気ボイラ装置における復水経路の腐食抑制方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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