説明

蒸気式調理機

【課題】 食品の加熱を短時間で効率良く行うことができる蒸気式調理機を提供する。
【解決手段】 蒸気供給手段からケース20内に蒸気を噴射することにより、トレイ10に保持された食品Fを加熱する蒸気式調理機1であって、トレイ10は、底板12aと、互いに対向するように底板12aに間隔をあけて設けられた一対の保持板12b,12bとを備え、各保持板12b,12bに蒸気が通過する連通孔が形成されており、蒸気供給手段は、トレイ10がケース20内に収納された状態で、一対の保持板12b,12bのそれぞれに外側から蒸気を噴射するように対向配置された一対の噴射部31,31を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気により食品の解凍や加熱調理を行う蒸気式調理機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の蒸気式調理機として、例えば、特許文献1に開示された構成が知られている。この調理機は、図7に示すように、調理ケース51と、この調理ケース51内に蒸気を供給する蒸気供給管53とを備えており、蒸気供給管53は、水平に曲げられた部分に蒸気噴射ノズル部53aを有している。調理ケース51内における蒸気噴射ノズル部53aの下方には、上部が開口した食品トレイ55が配置され、蒸気噴射ノズル部53aから下方に向けて蒸気を噴射することで、食品トレイ55内の食品を加熱することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第2515033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記特許文献1に開示された調理機は、食品トレイ55に収容された食品と噴射蒸気との接触面積が十分でないために、解凍や加熱に長時間を要しており、特に業務用として用いる場合に、調理時間の短縮化が求められていた。
【0005】
そこで、本発明は、食品の加熱を短時間で効率良く行うことができる蒸気式調理機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の前記目的は、食品を保持するトレイと、前記トレイを収納するケースと、前記ケース内に蒸気を供給する蒸気供給手段とを備え、前記蒸気供給手段から前記ケース内に蒸気を噴射することにより、前記トレイに保持された食品を加熱する蒸気式調理機であって、前記トレイは、底板と、互いに対向するように前記底板に間隔をあけて設けられた一対の保持板とを備え、前記各保持板に蒸気が通過する連通孔が形成されており、前記蒸気供給手段は、前記トレイが前記ケース内に収納された状態で、一対の前記保持板のそれぞれに外側から蒸気を噴射するように対向配置された一対の噴射部を備える蒸気式調理機により達成される。
【0007】
この蒸気式調理機において、前記トレイは、上部が開口する平面視矩形状の筐体を備えることが好ましく、前記保持板は、前記筐体を構成する長辺側の側壁により構成されていることが好ましい。
【0008】
また、前記蒸気供給手段は、一対の前記保持板間に上方から蒸気を噴射するように配置された補助噴射部を更に備えることが好ましい。
【0009】
また、前記保持板は、チタン製またはチタン合金製の網材からなることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の蒸気式調理機によれば、食品の加熱を短時間で効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る蒸気式調理機の斜視図である。
【図2】図1に示す蒸気式調理機におけるトレイの平面図である。
【図3】図2に示すトレイの側面図である。
【図4】図1に示す蒸気式調理機の要部断面図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係る蒸気式調理機の要部断面図である。
【図6】本発明の更に他の実施形態に係る蒸気式調理機の要部断面図である。
【図7】従来の蒸気式調理機の斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る蒸気式調理機の斜視図である。
【0013】
蒸気式調理機1は、食品を保持するトレイ10と、このトレイ10を収納するケース20と、ケース内に蒸気を供給する複数の蒸気ノズル30とを備えている。本実施形態の蒸気式調理機1は、トレイ10及びケース20をそれぞれ2つずつ備えており、図1においては、一方のトレイ10をケース20に収納する途中の状態を示している。トレイ10及びケース20の数は、特に限定されるものではなく、それぞれ1つまたは3つ以上であってもよい。
【0014】
図2及び図3は、それぞれトレイ10の平面図及び側面図である。トレイ10は、上部に開口を有する平面視矩形状の筐体12と、この筐体12に蓋板13を介して連結された持ち手部14とを備えている。筐体12は、底板12aと、底板12aの縁部に沿って設けられた一対の長辺側側壁12b,12b及び一対の短辺側側壁12c,12cとを備えており、底板12a及び一対の長辺側側壁12b,12bが網材により構成される一方、一対の短辺側側壁12c,12cが薄板により構成されている。筐体12の材料は特に限定されないが、チタン製またはチタン合金製とすることで、軽量化により作業負担を軽減することができると共に、耐久性、耐食性、抗菌性などを良好にすることができる。トレイ10に収容される食品についても特に制限はないが、例えば、パスタ、うどん、そば等の冷凍麺や冷蔵生麺、野菜類などを挙げることができる。
【0015】
ケース20は、前面に形成された開口部21を介して、収納空間22にトレイ10を収納することが可能であり、トレイ10を図1に示す状態から押し込むことにより、トレイ10の蓋板13が開口部21の周縁と当接して収納空間22を封止すると共に、トレイ10の配置がケース20内の中央になるように位置決めを行う。ケース20の底面には、排水口23が形成されていると共に、トレイ10の底板12aを支持する支持部材24が配置されている。
【0016】
蒸気ノズル30は、軸方向に沿って噴射孔30aが複数形成されており、収納空間22内において水平方向に延びるように配置されている。図4に縦断面図で示すように、蒸気ノズル30は、ケース20の左右の内壁に沿って上下方向に間隔をあけて配置されており、収納空間22の中央に向けて蒸気を噴射するように、それぞれの噴射孔30aが対向している。このような蒸気ノズル30の配置により、左右一対の噴射部31,31が構成されている。トレイ10は、一対の長辺側側壁12b,12bの外面側が、各蒸気ノズル30の外表面と同程度の間隔をあけて離れた状態で、一対の噴射部31,31の間に保持される。
【0017】
噴射孔30aからの噴射方向は、トレイ10に保持された食品Fに対して蒸気を均一に供給できる方向であることが好ましく、本実施形態においてはいずれも水平方向としているが、蒸気ノズル30の高さ位置によっては、斜め上方または斜め下方とすることもできる。
【0018】
蒸気ノズル30は、加熱により水蒸気を発生させる蒸気発生器(図示せず)に接続されている。本実施形態においては、タンクの水をヒータで加熱して蒸気を生成するボイラー式の蒸気発生器を使用し、蒸気の安定供給を図っている。但し、蒸気発生器の構成は特に限定されるものではなく、加熱した熱板に水を噴射して瞬間的に蒸気を生成する滴下式など、公知の他の構成を採用することもできる。蒸気発生器と蒸気ノズル30とを接続する流路には、電磁弁が介在されており、蒸気式調理機1の前面側に配置された操作パネル40,40の操作により電磁弁を作動させて、ケース20の収納空間22に高温蒸気を所定時間噴射することができる。
【0019】
収納空間22の上部中央には、水平方向に延びるように洗浄ノズル33が配置されており、洗浄ノズル33は、下方に向けて湯または蒸気を噴射するように、軸方向に沿って噴射孔33aが複数形成されている。洗浄ノズル33は、蒸気ノズル30と同様に蒸気発生器(図示せず)に接続することで、電磁弁の開閉により、収納空間22内に蒸気と共に水または高温水を噴射して洗浄することが可能である。
【0020】
本実施形態の蒸気式調理機1によれば、食品Fを保持するトレイ10をケース20内に収納して、操作パネル40の操作により蒸気の噴射を開始すると、図4に示すように、一対の噴射部31,31は、長辺側側壁12b,12bのそれぞれに外側から蒸気を噴射する。長辺側側壁12b,12bは網材からなるので、噴射された蒸気は長辺側側壁12b,12bを通過して、食品Fの左右に供給される。このように、食品Fの両側から蒸気を噴射することができるので、食品Fの上方のみから蒸気を噴射する従来の構成に比べて、食品Fと噴射蒸気との接触面積を拡大することができ、食品の加熱を短時間で効率良く行うことができる。食品Fに噴射された蒸気は凝縮されて廃水となり、網材からなる底板12aを経て排出され、ケース20底面の排水口23から回収される。
【0021】
図1に示す蒸気式調理機1を実際に試作して冷凍麺の解凍を行ったところ、解凍時間は約20秒程度であり、解凍までに40〜50秒を要していた従来機と比較して、解凍時間を半分以下に短縮することが可能であった。また、この試作機の電気容量は従来機と同等であるので、解凍時間の短縮により省電力化も可能であった。
【0022】
本実施形態の蒸気式調理機1において、一対の長辺側側壁12b,12bは、蒸気が通過可能であると共に、両者の間に食品Fを保持する一対の保持板として機能する。このような一対の保持板は、蒸気が通過する連通孔を有するものであれば良く、例えば、ワイヤーメッシュ、メタルラス、パンチングメタル、エキスパンドメタルなどの各種網材から構成することができる。トレイ10が、平面視矩形状の筐体を備える一般的な形状の場合には、本実施形態のように、長辺側側壁12bに連通孔を形成して保持板として機能させることにより、短辺側側壁12cを保持板とする場合に比べて食品Fと噴射蒸気との接触面積を大きくすることができるので、好ましい。但し、トレイ10の形状は必ずしも筐体状である必要はなく、食品Fを確実に保持することが可能であれば、底板に一対の保持板のみが設けられた構成であってもよい。
【0023】
また、本実施形態の蒸気式調理機1は、一対の噴射部31,31から蒸気を噴射することに加えて、洗浄ノズル33からも蒸気を噴射することが可能である。このように、洗浄ノズル33を補助噴射部として機能させることにより、左右両側及び上側の3方向から蒸気を噴射することができ、加熱効率をより高めることができる。なお、食品Fの下方から蒸気を噴射すると、食品Fの一部が混じった廃水が重力でノズルに落下して、噴射孔の詰まりを生じ易いことから、トレイ10の下方には蒸気ノズルを設置しないことが好ましい。
【0024】
また、本実施形態においては、一対の噴射部31,31における各蒸気ノズル30の設置高さを左右で同じ高さとなるように設定しているが、左右で異なる高さ位置に蒸気ノズル30を設置してもよい。例えば、図5に示すように、一方の噴射部31において上下方向に隣り合う2つの蒸気ノズル30,30の略中央と同じ高さ位置に、他方の噴射部31の蒸気ノズル30を配置してもよい。
【0025】
また、一対の噴射部31,31の構成は、本実施形態のものに限定されず、例えば図6に示すように、ケース20の左右両側に配置したジャケット34,34により構成してもよい。そして、これらジャケット34,34と連通するようにケース20の壁面に噴射孔34a,34aをマトリクス状に形成することで、本実施形態の構成と同様に、食品Fの両側から蒸気を噴射することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 蒸気式調理機
10 トレイ
12 筐体
12a 底板
12b 長辺側側壁(保持板)
12c 短辺側側壁
20 ケース
30 蒸気ノズル
31 噴射部
33 洗浄ノズル(補助噴射部)
F 食品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品を保持するトレイと、前記トレイを収納するケースと、前記ケース内に蒸気を供給する蒸気供給手段とを備え、前記蒸気供給手段から前記ケース内に蒸気を噴射することにより、前記トレイに保持された食品を加熱する蒸気式調理機であって、
前記トレイは、底板と、互いに対向するように前記底板に間隔をあけて設けられた一対の保持板とを備え、前記各保持板に蒸気が通過する連通孔が形成されており、
前記蒸気供給手段は、前記トレイが前記ケース内に収納された状態で、一対の前記保持板のそれぞれに外側から蒸気を噴射するように対向配置された一対の噴射部を備える蒸気式調理機。
【請求項2】
前記トレイは、上部が開口する平面視矩形状の筐体を備え、
前記保持板は、前記筐体を構成する長辺側の側壁により構成されている請求項1に記載の蒸気式調理機。
【請求項3】
前記蒸気供給手段は、一対の前記保持板間に上方から蒸気を噴射するように配置された補助噴射部を更に備える請求項1又は2に記載の蒸気式調理機。
【請求項4】
前記保持板は、チタン製またはチタン合金製の網材からなる請求項1から3のいずれかに記載の蒸気式調理機。










【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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